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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) G02B
管理番号 1094775
判定請求番号 判定2004-60002  
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案判定公報 
発行日 2004-05-28 
種別 判定 
判定請求日 2004-01-09 
確定日 2004-04-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第2547660号の判定請求事件について、次のとおり判定する。   
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「光コネクタ」は、登録第2547660号実用新案の技術的範囲に属しない。
理由 1.請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号図面及びその説明書に示す光コネクタは、登録第2547660号実用新案の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

2.本件登録実用新案
本件登録実用新案は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載されたとおりのものであり、その考案を構成要件に分説すると、次のとおりである。
(A)互いに結合分離されるプラグ10とレセプタクル100を備えた光コネクタにおいて、
(B)前記プラグ10は、
(B1)外周に球体係合溝16が設けられた円筒状のシェル11と、
(B2)該シェル11の外周に軸方向に摺動可能として同軸状に設けられるとともに、常時はスプリング29により前記レセプタクル100との接続側に押圧弾持され、かつ前記レセプタクル100との接続側に向かって内径を大きくした内斜面27を有するスライドスリーブ26と、
(B3)該スライドスリーブ26の外周にそのねじ部34を位置させるとともに、その先端部31は前記シェル11の小径部13の先端よりもやや長くのばし位置させて同軸状に設けられ、かつ先端部近傍の内周軸方向に突起部32が設けられた接続リング30と、
(B4)該接続リング30のねじ部34に対するねじ部36のねじ込みにより前記スプリング29を覆って同軸状に固着された接続リング35とを含み、
(C)前記レセプタクル100は、
(C1)その外周軸方向に前記ブラグ10との結合時において、前記接続リング30の突起部32に位置決め挿入される挿入用案内長溝107が設けられた円筒状のシェル101と、
(C2)該シェル101における前記挿入用案内長溝107の前方部位の周方向に貫設の球体嵌合孔108に抜け出ないようにし、かつ半径方向に進退して該シェル101の内側あるいは外側にその一部分が突出するように遊嵌されて、前記プラグ10との結合時において、その外側に突出した部分で前記プラグ10側のスライドスリーブ26の内斜面27を押圧して該スライドスリーブ26を摺動させる球体109と、
(C3)前記シェル101の内周面にして、かつ前記プラグ10側シェル11との結合部分に設けられた内周溝110内に嵌装され、前記プラグ10との結合時には、該プラグ10側シェル11の外周面と接触して防水性を保持するOリング111とを含んでなる構成を特徴とする光コネクタ。

3.イ号
イ号は、判定請求書に添付されたイ号図面及びその説明書に記載されるとおりであるが、本件考案との対比を容易にするべく分説して記載すると、次のとおりのものと認められる。
(a)互いに結合分離されるプラグ1とレセプタクル20を備えた光コネクタであって、
(b)前記プラグ1は、
(b1)外周に球体係合溝5が設けられた円筒状のシェル2と、
(b2)該シェル2の外周に軸方向に摺動可能として同軸状に設けられるとともに、常時はスプリング9により前記レセプタクル20との接続側に押圧弾持され、かつ前記レセプタクル20との接続側に向かって内径を大きくした内斜面7を有するスライドスリーブ6と、
(b3)該スライドスリーブ6の外周に、その先端部11は前記シェル2の小径部4の先端よりもやや長くのばし位置させて同軸状に設けられ、かつ先端部近傍の内周軸方向に突起部12が設けられ、前記スプリング9を覆う接続リング10とを含み、
(c)前記レセプタクル20は、
(c1)その外周軸方向に前記プラグ1との結合時において、前記接続リング10の突起部12に位置決め挿入される挿入用案内長溝25が設けられた円筒状のシェル21と、
(c2)該シェル21における前記挿入用案内長溝25の前方部位の周方向に貫設の球体嵌合孔26に抜け出ないようにし、かつ半径方向に進退して該シェル21の内側あるいは外側にその一部分が突出するように遊嵌されて、前記プラグ1との結合時において、その外側に突出した部分で前記プラグ1側のスライドスリーブ6の内斜面7を押圧して該スライドスリーブ6を摺動させる球体28と、
(c3)前記シェル21の内周面にして、かつ前記プラグ1側シェル2との結合部分に設けられた内周溝27内に嵌装され、前記プラグ1との結合時には、該プラグ1側シェル2の外周面と接触して防水性を保持するOリング29とを含んでなる構成の光コネクタ。

また、上記要件(b3)の接続リング10の先端部と反対側に位置する端部(イ号図面における図1右側端部)の構造について、イ号図面の説明書には明記されていないが、イ号図面の図1、図3や被請求人がイ号製品の特許として提出した乙第1号証(特許公報第3495039号)の記載(例えば、第5頁第10欄第20行「端部を内側にかしめる」、第35?36行「端部をかしめによって形成する」、第9頁第17欄第44?46行「(手順5)巻きバネ213を圧縮し、スライドカバー215の底側の端部215bを所定の位置でかしめることにより、かしめ部210を形成する。」、第10頁第19欄第5?7行「本発明ではスライドカバーの端部をかしめることによりスライドカバーを一体で形成する」との記載)を参照すれば、この部分は、被請求人が判定答弁書第7頁第17行及び第22?25行に記載するとおり、接続リング10をイ号図面中左側からプラグ1側シェル2に挿入した後、その右側端部をかしめて形成されたものであると認められる。

4.対比・判断
【1】イ号の各構成が本件考案の各構成要件を充足するかの判断
本件考案とイ号を対比するに、本件考案の構成要件(A)、(B1)、(B2)、(C)、(C1)、(C2)、(C3)とイ号の構成要件(a)、(b1)、(b2)、(c)、(c1)、(c2)、(c3)の間に差異はなく、イ号は、本件考案のこれらの構成要件を充足している。
一方、本件考案において、構成要件(B3)の突起部が設けられた接続リング30と構成要件(B4)のスプリングを覆う接続リング35は、別体構造であり、ねじ込みにより固着されているのに対し、イ号の接続リング10は、突起部が設けられた部分とスプリングを覆う部分が一体構造となっており、イ号は、本件考案の構成要件(B3)及び(B4)を充足しない。
この点について、請求人は、本件において接続リング30と接続リング35がねじ込みにより固着されている点は、本件考案の必須構成要件ではないから、イ号は、本件考案の技術的範囲に属する旨の主張をしているが、本件明細書の実用新案登録請求の範囲は、平成6年改正前実用新案法第5条第5項第2号の「実用新案登録を受けようとする考案の構成に欠くことができない事項のみを記載した項(以下「請求項」という。)に区分してあること。」との規定のもとに記載されているのであるから、そこに記載された構成について必須構成要件ではないとの主張は採用できない。

【2】均等の判断
また、請求人は、本件考案において接続リング30と接続リング35がねじ込みにより固着されたものは、イ号の一体構造の接続リング10と均等であるから、イ号は、本件考案の技術的範囲に属するとの主張をしているので、この点について検討する。
最高裁判所平成6年(オ)第1083号(平成10年2月24日判決言渡)判決によれば、特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても、
(1)右部分が特許発明の本質的部分ではなく、
(2)右部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって、
(3)右のように置き換えることに、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、
(4)対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから右出願時に容易に推考できたものではなく、かつ、
(5)対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは、
右対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当であるとされている。

そこで、本件について、まず、上記(3)の要件について検討する。
すなわち、突起部が設けられた接続リング30とスプリングを覆う接続リング35が別体構造であり、ねじ込みにより固着されている本件考案において、これをイ号のように、突起部が設けられた部分とスプリングを覆う部分が一体構造となっている接続リング10とすることについて、当業者が容易に想到することができたかどうかについて検討する。
本件考案の構成要件(B2)?(B4)は、具体的には、本件実用新案登録公報の第【0007】段落に記載されるように、スプリング29をスライドスリーブ26の後端とプラグ側シェル11の環状突部14との間に圧縮弾装した上で、これを接続リング30,35で覆った構造とするものであり、この構造を実現するために、本件考案では、接続リング30,35を別体の分割構造としていることが当業者に明らかである。
仮に、接続リング30と35が最初から固着され一体となっているならば、本件実用新案登録公報の図1、図2に示される構造を実現することが容易でないことは明らかである。
一方、イ号では、これに相当する構造を実現するために、前記のとおり、一体構造の接続リング10をイ号図面中左側からプラグ1側シェル2に挿入して、スプリング9を覆った後、その右側端部をかしめて形成しているものと認められる。
したがって、イ号の接続リングは、一体構造となっているだけでなく、前記のとおり、右側端部がかしめて形成されているものであるから、本件考案の接続リング30,35をイ号の接続リング10とするためには、単に分割構造のものを一体構造にするだけでは足りず、プラグ1側シェル2に挿入してスプリング9を覆った後、その端部をかしめることが必要になるものである。
請求人は、資料2(実公昭52-36239号公報)、資料3(実願昭53-40671号(実開昭54-144090号)のマイクロフィルム)及び資料4(実願昭63-163224号(実開平2-84282号)のマイクロフィルム)を提出して、これらの資料には一体構造の接続リングを有するコネクタが開示されているから、本件考案のねじ込みによる分割構造の接続リングをイ号の一体構造の接続リングに置き換えることは、当業者が容易に想到することができたとの主張をしているが、イ号の接続リング10は、前記のとおり、本件考案の分割構造の接続リングを単に一体構造としただけのものではなく、プラグ1側シェル2に挿入してスプリング9を覆った後、その右側端部をかしめて形成したものであるところ、資料2ないし4には、一体構造の接続リングでスプリングを覆った後、その一端をかしめて接続リングを形成することについての記載はないから、本件考案の接続リング30,35をイ号の接続リング10とすることについて、当業者が容易に想到することができたということはできない。
よって、上記要件(3)が満たされているとはいえない。

また、上記(5)の要件についても検討するに、本件の接続リング30と接続リング35がねじ込みにより固着されている点は、本件の審査過程において、平成8年10月4日付けで実願昭63-163224号(実開平2-84282号)のマイクロフィルム及び特開昭53-20586号公報(いずれにも、分割構造の接続リングは記載されていない。)を引用例とする実用新案法第3条第2項の規定に係る拒絶理由が通知されたのに対し、平成8年11月20日付け手続補正書により「該スライドスリーブの外側に前記シェルを囲繞して設けられた接続リングとを含み、」との記載を「該スライドスリーブ26の外周にそのねじ部34を位置させるとともに、その先端部31は前記シェル11の小径部13の先端よりもやや長くのばし位置させて同軸状に設けられ、かつ先端部近傍の内周軸方向に突起部32が設けられた接続リング30と、該接続リング30のねじ部34に対するねじ部36のねじ込みにより前記スプリング29を覆って同軸状に固着された接続リング35とを含み、」と補正して、接続リングをねじ込み構造とする限定を行ったものであるから、これ以外の構成の接続リング、例えば、イ号のような一体構造の接続リングは、上記手続補正に伴って実用新案登録請求の範囲から除外されたものと外形的に解せられるところであり、上記要件(5)が満たされているとはいえない。

以上のとおり、本件考案とイ号は、少なくとも上記要件の(3)及び(5)を満たしていないから、これらが均等であるとの請求人の主張は採用できない。

5.むすび
以上のとおりであって、イ号は、文言上本件登録実用新案の技術的範囲に属しておらず、また、均等論が適用される余地もないから、イ号が本件登録実用新案の技術的範囲に属するとはいえない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲 イ号図面の説明書

1.名 称
光コネクタ

2.図面の説明
図1は、プラグ側の半断面図である。
図2は、レセプタクル側の半断面図である。
図3は、プラグ側とレセプタクル側との結合状態での半断面図である。

3.符号の説明
1 プラグ
2 シェル
3 大径部
4 小径部
5 球体係合溝
6 スライドスリーブ
7 内斜面
8 環状突部
9 スプリング
10 接続リング
11 先端部
12 突起部
20 レセプタクル
21 シェル
22 大径部
23、24 小径部
25 挿入用案内長溝
26 球体嵌合孔
27 内周溝
28 球体
29 0リング

4.構造の説明
レセプタクル20と互いに結合分離されるプラグ1は、円筒状のシェル2と、シェル2の外周に、軸方向に摺動可能として同軸状に設けられたスライドスリーブ6と、スライドスリーブ6の外周に設けられた接続リング10を含んでいる。
シェル2は、同心状の大径部3と小径部4を一体に有し、外周には球体係合溝5を有している。
スライドスリーブ6は、レセプタクル20との接続側に向かって内径を大きくした内斜面7を有し、後端とシェル2の環状突部8との間に圧縮弾装されたスプリング9によって常時はレセプタクル20との接続側に抑圧弾持されている。
接続リング10は、先端部11の近傍内周軸方向に突起部12を有し、先端部11をシェル2の小径部4の先端よりもやや長くのばし位置させてスライドスリーブ6の外周にシェル2と同軸状に設けられている。
図1において、13はインサート、14はアダブタ、15はインサート13内においてスプリング16により弾持された光フェルールである。
レセプタクル20は、円筒状のシェル21と球体28及びOリング29を含んでいる。
シェル21は、大径部22と小径部23、24を有し、大径部22の外面軸方向には、プラグ1との結合時において、接続リング10の突起部12に位置決め挿入される挿入用案内長溝25を有し、大径部22の前方部位(プラグとの接続側)の周方向には、等角度で複数の球体嵌合孔26を有し、大径部22における内周面にして、かつプラグ1側シェル2との結合部分にはOリング29が嵌装される内周溝27を有している。
球体28は、球体嵌合孔26に抜け出ないようにし、かつ半径方向に進退してシェル21の内側あるいは外側にその一部分が突出するように遊嵌されて、プラグ1との結合時において、その外側に突出した部分でプラグ1側のスライドスリーブ6の内斜面7を押圧してスライドスリーブ6を摺動させる。
Oリング29は、シェル21の内周溝27に嵌装され、プラグ1との結合時にはプラグ1側シェル2の外周面と接触して防水性を保持する。
図2において、30はインサート、31はインサート30内においてスプリング32により弾持された光フェルールである。

5.動作の説明
プラグ1とレセプタクル20を結合させる場合、レセプタクル20がプラグ1に押し込まれると、挿入用案内長溝25が接続リング10の突起部12に沿いながらシェル大径部22が軸方向に押し込まれて、球体28がスライドスリーブ6の内斜面7に当る。
更に押し込まれると、スプリング9が圧縮されてスライドスリーブ6が図3右方向に移動し、球体28が球体嵌合孔26の落ち込み位置に達すると、スプリング9の反発力によって球体28が球体嵌合孔26に落ち込む。
すると、スライドスリーブ6がスプリング9の復帰力によって図3左方向へ移動し、球体28がスライドスリーブ6の内周面にて押圧保持され、プラグ1とレセプタクル20との結合がロックされ、同時に、光フェルール15と光フェルール31が突合わせ接触されて結合が完了する(図3参照)。
結合状態からプラグ1とレセプタクル20を分離させるには、接続リング10が図3右方向に移動して、スライドスリーブ6がスプリング9を圧縮させながら同方向に移動すると、スライドスリーブ6の内周面による球体28の押圧が解除される。
この状態でプラグ1又レセプタクル20を引っ張り続けると、球体28は球体係合溝5を乗り越えて外れ、プラグ1とレセプタクル20は分離される。

判定日 2004-03-29 
出願番号 実願平4-47551 
審決分類 U 1 2・ 1- ZB (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大渕 統正  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 石川 昇治
稲積 義登
登録日 1997-05-23 
登録番号 実用新案登録第2547660号(U2547660) 
考案の名称 光コネクタ  
代理人 藤谷 修  
代理人 笹沢 和夫  
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