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審決分類 審判    E01F
管理番号 1098174
審判番号 無効2003-40015  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2004-07-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-09-10 
確定日 2004-05-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第3090017号実用新案「忍び返し付き防雪柵用連結材」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第3090017号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
本件登録第3090017号実用新案(以下「本件実用新案登録」という。)は、平成14年4月26日に実用新案登録出願された実願2002-3330号(以下「本件出願」という。)に係り、その考案について平成14年9月4日に設定登録され、その後、三英鋼業株式会社(以下「請求人」という。)により本件実用新案登録について無効審判が請求され、それに対し、理研興業株式会社(以下「被請求人」という。)より平成15年11月10日付けの審判事件答弁書及び平成15年12月3日付けの審判事件上申書が提出され、請求人より平成16年2月4日付けの審判事件弁駁書が提出されたものである。
なお、前記審判事件弁駁書において、請求の理由における周知・慣用技術の主張を立証する書証として甲第6号証が補充提示されている。

第2 本件実用新案登録に係る考案
本件実用新案登録の請求項1に係る考案(以下「本件考案」という。)は、本件実用新案登録に係る登録実用新案公報の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 吹止式防雪柵用の防雪板同志を斜交いに連結している連結材の両端部に防雪板の端に突出している連結ピンと嵌合させるための穴が孔いているが、忍び返し付き防雪柵上部の忍び返し部に位置する防雪板を繋いでいる連結材の嵌合穴は長穴となっている事を特徴とする連結材。」

第3 当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は、第3090017号実用新案の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、下記の書証を提出し、以下の無効理由を主張する。その無効理由の要点は、次のとおりである。
無効理由:本件考案は、下記の甲第3号証の1ないし甲第6号証に記載の公知技術及び周知・慣用技術に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反するものであるから、同法第37条第1項第2号の規定に基づき無効とされるべきものである。

(1)甲第3号証の1:特開平10-219629号公報
(2)甲第3号証の2:実願平1-43369号(実開平2-136112号)のマイクロフイルム
(3)甲第4号証:「昭和56(1981).12.25発行 特許庁公報 56(1981)-230〔3212〕 周知・慣用技術集(金属時計バンド)」第2ページ、「1.名称 伸縮時計バンド」の項
(4)甲第5号証:実願昭62-111837号(実開昭64-18019号)のマイクロフイルム
(5)甲第6号証:実願平5-60561号(実開平7-24991号)のCD-ROM

2.被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、請求人の前記主張に対し、請求人の主張する無効理由は妥当ではなく、本件実用新案登録には前記無効理由はないから、本件実用新案登録は維持されるべきであると主張する。

第4 当審の判断
請求人が主張する上記無効理由について検討する。
1.甲号各証の記載事項
(1)本件実用新案登録出願前に頒布された刊行物である甲第3号証の1には、忍び返し付き防風・防雪柵及びその折畳・架設方法に関して、次の事項が記載されている。
「【0004】本発明は、前記のような課題を解決するために開発されたものであつて、その目的とする処は、支柱間に多数の防風・防雪板を折り畳み格納及び昇降可能な上部防風・防雪板群と上部防風・防雪板群として架設し、折畳・架設手段を付設して、また、支柱上部を倒立可能にして、折り畳み格納性能及び再架設性能を向上した忍び返し付き防風・防雪柵及びその折畳・架設方法を提供するにある。」
「【0008】【発明の実施の形態】図1ないし図4に本発明の忍び返し付き防風・防雪柵とその折畳・架設方法の各実施例を示している。図中1は支柱、1aは下部支柱、1bは上部支柱、1cは支柱の上部(上部支柱)に形成した斜傾部、2,2a,2bは支柱又は下部支柱及び上部支柱を補強したラチス材、3は下部支柱上に上部支柱を倒立可能に連結した連結金具、5a,5bは支柱(下部支柱,上部支柱)の垂直部と斜傾部に配置した防風・防雪板又は下部防風・防雪板群と上部防風・防雪板群、6は防風・防雪板の両端軸部、7は防風・防雪板を折り畳みかつ展開可能に連結したリンク、8a,8bは支柱(上部支柱)に設けた中段滑車と上端滑車、9は下部防風・防雪板群及び上部防風・防雪板群を展開状態に固定する固定金具、11は支柱の下部(下部支柱)に着脱可能に装着されるウインチ、12a,12bはウインチで操作されて各防風・防雪板群を個別に昇降するワイヤである。」
「【0009】図示の実施例は、複数の斜傾部1c付き支柱1に多数の防風・防雪板5a,5bを架設した忍び返し付き防風・防雪柵において、支柱1の垂直部間に折り畳み可能に連結した下部防風・防雪板群5aを上下可能に嵌装して架設し、支柱1の斜傾部1c間に折り畳み可能に連結した上部防風・防雪板群5bを上下可能に嵌装して架設するとともに、支柱1に中段滑車8aと上端滑車8bを設けて、防風・防雪板群5a,5bの昇降用ワイヤ12a,12bのウインチ11を組み合わせたことを特徴とする忍び返し付き防風・防雪柵になつている。」
「【0015】防風・防雪板5a,5bは、図示のように各種の鉄板や合成樹脂板等に複数本の折曲線を設けて補強し、支柱1の間隔に対応させて比較的に長尺に形成している。また、必要に応じ多孔板に形成して風・雪Fの遮蔽機能を高め、好ましくは中央部に軸を付設して補強し、両端に突出したスライド部材6a付き両端軸部6を設けて支柱1(下部支柱1a,上部支柱1b)の溝部に遊嵌し、各防風・防雪板5a,5bの両端側を支柱の両側溝部で上下可能に嵌装して架設している。さらに、支柱(下部支柱,上部支柱)の垂直部の間に架設される各防風・防雪板5a間に、リンク7を順次に斜めに軸支し組み合わせてX状に連結した蛇腹状とし(図1B参照)、折り畳み格納(図2A参照)及び展開させ架設(図1A参照)可能な下部防風・防雪板群5aとし、支柱の斜傾部1cの間に架設される各防風・防雪板5b間を、同様にリンク7で順次に連結し蛇腹状とし(図2A参照)、折り畳み格納(図2B参照)及び展開させ架設(図1A参照)可能な上部防風・防雪板群5bにして、この下部防風・防雪板群5a及び上部防風・防雪板群5bは、ウインチ11,ワイヤ12a,12b,中段滑車8a及び上端滑車8bからなる折畳・架設手段で個別に昇降操作して折り畳み格納及び展開させて架設する構造にしている。」
「【0026】【発明の効果】本発明は、前述のように構成し複数の斜設部付き支柱の間に多数の防風・防雪板を架設した忍び返し付き防風・防雪柵において、支柱の垂直部間に複数の防風・防雪板を折り畳みかつ上下可能に嵌装して架設した下部防風・防雪板群とし、支柱の斜傾部間に複数の防風・防雪板を折り畳みかつ上下可能に嵌装して架設した上部防風・防雪板群として、折畳・架設手段(支柱に装着するウインチとワイヤと支柱に設けた中段滑車及び上端滑車)により、下部防風・防雪板群と上部防風・防雪板群を、個別に吊支して下降する簡単な2段階の操作で支柱の下部にコンパクトに折り畳み格納して容易に能率良く視界を広めることができる。また、その折畳・架設手段により、支柱下部の上部防風・防雪板群と下部防風・防雪板群を個別に吊支して上昇し展開せしめて固定する簡単な2段階の操作で、支柱の斜傾部と直線部に各防風・防雪板を容易に能率良く展開させ固定し張り詰めて再び架設できるなど、施工性とともに折畳及び架設性能を著しく向上している。」
そして、甲第3号証の1の【図1】の本発明の一実施例を示す架設時の側視図(A)及び下部防風・防雪板群の折畳工程を示す側視図(B)、並びに、【図2】の本発明の一実施例を示す上部防風・防雪板群の折畳工程を示す側視図(A)及び下部防風・防雪板群と防雪板上段群の折畳状態を示す側視図(B)には、上記摘記事項を裏付ける忍び返し付き防風・防雪柵が記載されている。

そうすると、甲第3号証の1の上記摘記事項及び図面の記載からみて、甲第3号証の1には、「各防風・防雪板5a,5bの両端に突出するスライド部材6a付き両端軸部6を複数の斜傾部1c付き支柱1の溝部に遊嵌させて多数の防風・防雪板5a,5bを支柱1に架設した忍び返し付き防風・防雪柵において、支柱1の垂直部の間に架設される各防風・防雪板5a間をリンク7で順次に斜めに軸支して組み合わせ、X状の蛇腹状に折り畳み可能に連結した下部防風・防雪板群5aを、支柱1の垂直部間に折り畳み格納及び展開させて上下可能に嵌装して架設し、また、支柱1の斜傾部1cの間に架設される各防風・防雪板5b間をリンク7で順次に斜めに軸支し組み合わせて、X状の蛇腹状に折り畳み可能に連結した上部防風・防雪板群5bを、支柱1の斜傾部1c間に折り畳み格納及び展開させて上下可能に嵌装して架設するとともに、支柱1に中段滑車8aと上端滑車8bを設けて、防風・防雪板群5a,5bの昇降用ワイヤ12a,12bのウインチ11を組み合わせた忍び返し付き防風・防雪柵」の考案(以下「引用考案1」という。)が記載されているということができる。

(2)本件実用新案登録出願前に頒布された刊行物である甲第3号証の2には、尾状防雪板収納部を持つ吹払防雪柵に関して、次の事項が記載されている。
「本考案は、不要時期に於ける防雪板部の収納に特徴を持つ吹払防雪柵に関するものである。吹払防雪柵は降雪地域の冬期道路交通に於ける吹溜りの防止,視程の向上等の効果によって、道路雪害防止対策の中でも大きな地位を占めている。その設置方式は、冬期間に建込んでおき、不要時期には解体撤去しておくいわゆる仮設式は、維持管理費が嵩むので近年採用されなくなり、代りにコンクリート基礎を用いた固定式のものが通年設置される場合が多い。吹払式防雪柵は道路に隣接して設置するための柵構造物にありがちな遮蔽感、見通しが悪い等の道路運転者にとっての弊害が生じる。不要時期にはそれらの弊害を解消するため、防雪板支持部にパンタグラフ状リンク機構を採用して、防雪板部を上方あるいは下方に折り畳み収納するもの、又、下方に収納するものには、支柱を上部と下部に分割し蝶番で連結した構造とし、収納後、上支柱を側方に折り畳むもの等が近年開発され、広く用いられている。」(明細書1頁15行?2頁14行)
「リンク材A(1)、リンク材B(2)を中心でX字状に交差させ、ピン(3)で互いに回転し得るように結合してパンタグラフ状リンク機構を構成し、上下方向に伸縮可能にする。リンク材A(1)には山型鋼等を用いフランジ部に防雪板(7)をボルトナットで固定する。リンク材の中心の交点にあるピン(3)には、断面がH字状をなす支柱のフランジ部に内接して回転し得るようにガイドローラー(4)を設ける。最下段のガイドローラー(4)を支持しているピン(3)にはワイヤーロープ(12)の一端を連結し、支柱の最上部に設けた滑車(13)を介して支柱の後部に引き出しておく。支柱は上支柱(5)と下支柱(6)に分割し蝶番(8)によって連結して、上支柱(5)を側方に折り畳めるようにする。下支柱(6)のガイドローラー(4)が内設する断面がH字状をなす支持部は、下方にいくに従って後方に大きく湾曲させ、四半円状の尾状防雪板収納部(17)を構成させる。そのとき、湾曲部は、ガイドローラー(4)が防雪板部折り畳み状態で通過し向きを変え得るように幅を広くする。」(明細書3頁8行?4頁8行)
「本考案の吹払防雪柵は以上のように構成されているので、不要時期に防雪板部を尾状防雪板収納部(17)に収納するには以下の手順で行なう。ウインチ固定台(11)を上支柱(5)の背部に取り付け、ウインチドラムにワイヤーロープ(12)を引っかけ、ウインチハンドル(10)を回転させてワイヤーロープ(12)を巻き上げる。巻き上げ力は、ワイヤーロープ(12)を介して最下段のガイドローラー(4)を支持しているピン(3)に伝達され、各防雪板(7)は折り畳まれながら引き上げられる。その後、最上段および最下段のガイドローラー(4)を支持しているピン(3)が、防雪板部正規展開時に落下しないよう設けた上部ストッパー(14)、下部ストッパー(15)のボルトナットを外してから、ウインチハンドル(10)を逆転させ、防雪板部を折り畳んだ状態で下方に巻き下げる。その際、上支柱(5)を過ぎ、ガイドローラー(4)が下支柱(6)の湾曲部を通過するとき、防雪板部は横に並列になった状態から縦に並列にその向きを変えられ、尾状防雪板収納部(17)に収納される。しかる後、ウインチドラムからワイヤーロープ(12)を外し、上支柱(5)からウインチ固定台(11)を取り去り、支柱連結ボルト(16)を外して、上支柱(5)を側方に折り倒す。」(明細書4頁9行?5頁12行)
そして、甲第3号証の2の収納手順を説明するための防雪板正規展開時の側面図である第8図及び防雪板収納時の側面図である第9図には、各防雪板(7)をリンク材A(1)、リンク材B(2)を中心でX字状に交差させ、ピン(3)で互いに回転し得るように結合してパンタグラフ状リンク機構を構成し、上支柱(5)と下支柱(6)からなる支柱に上下方向に伸縮可能にした吹払防雪柵、が図示されている。

(3)本件実用新案登録出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には、伸縮時計バンドに関して、次の事項が記載されている。
「1.名称 伸縮時計バンド
2.技術の説明
各連鎖単位は,夫々上部連鎖片1の中央軸孔2に,下部連鎖片1′の中央筒軸2’を嵌合して,互に回動自在に枢支結合し,筒軸2′の中心孔内には弾機3を装入すると共に,上下各連鎖片1,1′に,夫々覆蓋4,4′を施して構成されている。
次に各連鎖単位に於ける下部連鎖片1′の両端関着部には鍵止頭部5′を有する関着軸6を突設すると共に同じく,上部連鎖片1の両端関着部には前記鍵止頭部5′を挿入する鍵孔5を穿設し,この鍵孔5に鍵止頭部5′を挿入した後鍵孔5及び鍵止頭部5’の関係位置を交又させることにより,関着軸6を介して,互に隣接する連鎖片1,1′を関着連結し,前記鍵孔5及び鍵止頭部5′の互鍵作用により両者の連結部の離脱を防止する。而して鍵孔5に対する鍵止頭部5′は,第3図及び第5図に示す如く,両者の長手方向が一直線上に合致した状態に於てベルトを,其の通常使用状態の湾曲方向(第8図及び其の矢符の方向)と反対の方向(第7図及び其の矢符の方向)に湾曲させた時だけ其の嵌脱が可能である様にした。なお図示の実施例に於てはバンドを伸張した状態で鍵孔5と鍵止頭部5′との長手方向が一直線上に合致する場合を示してあるが,この合致は,バンドの伸縮状態の何れの場合に起る様にしてもよい,又鍵止頭部5′の長さは,鍵孔5の長さより稍長くし,これを第7図の様に斜めにした場合に鍵孔を通過することが出来る様にした方がよい。」(左欄1行?右欄13行)

(4)本件実用新案登録出願前に頒布された刊行物である甲第5号証には、ローラコンベアに関して、次の事項が記載されている。
「本考案は、多数のローラを順次並置してしてなるローラコンベアに関し、さらに詳しくはローラコンベア上を移送される物品の移送方向を変更するための物品移送方向変更用のローラコンベアに関するものである。」(明細書2頁4行?同頁8行)
「本考案は上記した従来の物品移送方向変更用ローラコンベアの問題点に鑑み、物品の移送方向を広範囲の方向に自由に変更することができるようにしたローラコンベアを提供することを目的としている。」(明細書3頁3行?同頁7行)
「第1図ないし第6図を参照して本考案の実施例を説明すると、この実施例のローラコンベアKは、適宜長さ(例えば30?50cm程度)を有するローラ2をその下面側から保持枠3で保持し且つ該保持枠8の長さ方向中間部に該保持枠3の長さ方向に対して左右両側にそれぞれ適宜長さづつ突出する連絡片4A,4B(左側連結片A、右側連結片4B)を取付けてなる多数本のローラ組付体1,1・・を、相互に隣接される一方のローラ組付体1の左側連結片4Aと他方のローラ組付体1の右側連結片4Bの端部同士を順次相互に屈曲自在なる如く枢着してコンベア状に連結するとともに、各ローラ組付体1,1・・の保持枠3,3・・に相互に隣接する各ローラ組付体1,1の屈曲可能範囲を規制する屈曲可能範囲規制機構5を設けて構成されている。」(明細書4頁9行?5頁4行)
「各ローラ組付体1,1・・の保持枠3には、相互に隣接する2つのローラ組付体1,1の屈曲可能範囲を規制するための屈曲可能範囲規制機構5が設けられているが、この屈曲可能範囲規制機構5は、相互に1つおきに位置する2つのローラ組付体1,1を連絡する長尺細板材からなる多数本の長尺連結杆51,51・・と隣接する2つのローラ組付体1,1を連絡する比較的短尺細板材からなる合計2本の短尺連結杆52A,52Bを有している。
各長尺連結杆51,51・・は、1つおきに位置する2つのローラ組付体1,1間においてその一方のローラ組付体1の保持枠3の長さ方向一端3a寄り位置と長尺連結杆51の一端51aをビン53で枢着し且つその他方のローラ組付体1の保持枠3の長さ方向他端3b寄り位置と当該長尺連結杆51の他端51bをピン54で枢着するようにしてそれぞれ取付けられている。長尺連結杆51の両端51a,51bには適宜小長さ範囲の長穴55,55が設けられていて各ピン53,54が該各長穴55,55の範囲内で移動可能となっている。この長穴55は、該各ローラ組付体1,1の屈曲角度を変化させるときに長尺連結杆51で連結されている両ピン53,54間の間隔が変化するのを許容するためのものである。このように1つおきに位置する2つのローラ組付体1,1における相互に反対側の端部寄り位置をそれぞれ長尺連結杆51,51・・で連結するようにすれば、各ローラ組付体1,1・・が隣接する他のローラ組付体1,1に対して単独で屈曲することがなくなり、ローラコンベアK全体が安定した姿勢に維持されるようになる。尚、このように1つおきのローラ組付体1,1を長尺連結杆51で連結しても、ローラコンベアK全体を左右に屈曲させることは可能である。」(明細書7頁7行?9頁1行)

(5)本件実用新案登録出願前に頒布された刊行物である甲第6号証には、足型キャリッジに関して、次の事項が記載されている。
「【0009】本考案である足型キャリッジGは、靴下仕上機の軌道3上を、その軌道3に沿って走行可能に設けた走行部材Hと、隣接する走行部材H上の端部に回動自在に掛け渡し前記走行部材Hを拡開、集合可能に設けた足型支持部材Iと、前記走行部材Hと足型支持部材Iとの拡開を適宜な間隔に調整する間隔調整部材Jとより構成したものである。
【0010】走行部材Hは、図1、図4、図5、図6に示すように、先頭走行板4aと後尾走行板4bとの間に複数の中間走行板4cまたは4dまたは4eを一列に配列したもので、それぞれの走行板4の下面部で且つその長さ方向の略中央部位置には、図2、図3に示すように、案内部材5を植設し、靴下仕上機の軌道3の中央部に設けた通し溝を形成したガイド部6に沿って軌道3上を走行可能に設けたものである。」(9頁9行?同頁21行)
「走行板4は、実施例1、実施例2では、図1、図5に示すように、走行板4の長さ方向の中心部位置に調整板18をピン19にて回動自在に植設しており、実施例3では、図6に示すように、走行板4の中央部より適宜に離れた位置(即ち適宜な距離偏心させた位置)に、調整板18の長孔17にピン19を遊合させて植設し、調整板18がピン19をガイドとして該長孔17に沿って移動可能に設けている。」(9頁25行?10頁1行)
「実施例1では、図1及び図2に示すように、足型支持板10の長さ方向の一端部を、走行板4の長さ方向端部にピン14aにて回動可能で且つ足型支持板10の長孔10aに沿って長孔寸法移動可能に植設し、足型支持板10の長さ方向の他端部を別の走行板4の長さ方向端部にピン14aにて回動可能で且つ足型支持板10の長孔10aに沿って長孔寸法移動可能に植設して、図1、図4に示すように、伸縮する折尺状に形成している。」(10頁6行?同頁12行)

2.対比、判断
(1)本件考案と引用考案1との対比及び一致点・相違点
本件考案と引用考案1とを対比すると、引用考案1の「防風・防雪板5a,5b」「斜めに軸支」「リンク7」「忍び返し付き防風・防雪柵」「支柱1の斜傾部1c」「支柱1の斜傾部1cの間に架設される上部防風・防雪板群5b」が、それぞれ本件考案の「防雪板」「斜交いに連結」「連結材」「忍び返し付き防雪柵」「忍び返し部」「忍び返し付き防雪柵上部の忍び返し部に位置する防雪板」に対応する。
また、引用考案1における「忍び返し付き防風・防雪柵」は、甲第3号証の1の【図1】(A)に図示されているように、防風・防雪板5aが支柱1の垂直部に路面の直上から直立状に架設される、いわゆる吹止式の構造であるから、引用考案1の前記「忍び返し付き防風・防雪柵」も、本件考案と同じ「吹止式防雪柵」であるということができる。
さらに、引用考案1における「リンク7」の嵌合穴については、甲第3号証の1の【図1】及び【図2】に図示されているのみであるが、引用考案1の「忍び返し付き防風・防雪柵」においては、各防風・防雪板5a,5b間をリンク7で順次に斜めに軸支して組み合わせ、X状の蛇腹状に折り畳み可能に連結しているのであるから、各リンク7を各防風・防雪板5a,5bの端部のピンに回動可能に連結するための嵌合穴がリンク7に穿孔されていることは、自明のことというべきであり、引用考案1の各防風・防雪板5a,5bは、本件考案と同じく、防雪板の端に突出している連結ピンを有し、また、引用考案1のリンク7には、本件考案と同じく、連結材の両端部に防雪板の端に突出している連結ピンと嵌合させるための穴が孔いているということがいえる。
そうすると、本件考案と引用考案1の両者は「吹止式防雪柵用の防雪板同志を斜交いに連結している連結材の両端部に防雪板の端に突出している連結ピンと嵌合させるための穴が孔いている連結材」である点で一致し、次の点で構成が相違する。
相違点:本件考案の連結材が「忍び返し付き防雪柵上部の忍び返し部に位置する防雪板を繋いでいる連結材の嵌合穴は長穴となっている」のに対して、甲第3号証の1に、上部防風・防雪板群5bをX状の蛇腹状に折り畳み可能に連結しているリンク7の嵌合穴の形状についての明示的な記載はなく、引用考案1のリンク7では前記嵌合穴の形状が不明である点。

(2)相違点についての検討
パンタグラフ機構等のリンク機構におけるリンク材に「長孔」又は「長穴」を設けて、リンクと連結される他の部材との間の連動時のリンク機構の機械的な拘束を回避するための「逃げ」を確保することにより、リンク機構が連動時に嵌合穴に拘束されることなく、「長孔」又は「長穴」という与えられた自由度の範囲でリンク機構が変形しながらリンク材が回動できるようにしておくことは、例えば、甲第4号証、甲第5号証及び甲第6号証に記載されているように、本件実用新案登録出願時の周知・慣用技術である。
そして、甲第4号証、甲第5号証及び甲第6号証に示されている技術は、甲第4号証、甲第5号証及び甲第6号証に示されている技術分野に限られることなく、他の一般技術の分野にも利用できる汎用技術手段であって、当業者が必要に応じて適宜採用できる周知・慣用技術ということができる。しかも、引用考案1に上記周知・慣用技術を適用するに際しての相互に阻害する要因を、前記甲第4号証、甲第5号証及び甲第6号証に示されている技術に認めることができない。
そうしてみると、引用考案1のリンク7に対し、上記周知・慣用技術を付加して、支柱1の斜傾部1cの間に架設される上部防風・防雪板群5bを連結するリンク7の両端部に穿孔される嵌合穴を長穴に形成することにより、本件考案の相違点に係る前記「忍び返し付き防雪柵上部の忍び返し部に位置する防雪板を繋いでいる連結材の嵌合穴は長穴となっている」の構成を得ることは、当業者が困難を要することなくきわめて容易に想到できることである。
そして、本件考案の奏する作用効果は、引用考案1及び前記周知・慣用技術から推測できる範囲内のものであり、格別のものということができない。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件考案は、引用考案1及び周知・慣用技術に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反して登録されたものであり、実用新案法第37条第1項第2号に該当する。
審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定において準用し、特許法第169条第2項の規定においてさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2004-03-12 
結審通知日 2004-03-17 
審決日 2004-03-30 
出願番号 実願2002-3330(U2002-3330) 
審決分類 U 1 111・ 121- Z (E01F)
最終処分 成立    
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 佐藤 昭喜
藤原 伸二
登録日 2002-09-04 
登録番号 実用新案登録第3090017号(U3090017) 
考案の名称 忍び返し付き防雪柵用連結材  
代理人 曾我 道照  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 古川 秀利  
代理人 中村 直樹  
代理人 曾我 道治  
代理人 梶並 順  

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