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審決分類 審判 訂正 発明同一 訂正しない F16K
審判 訂正 2項進歩性 訂正しない F16K
管理番号 1098178
審判番号 訂正2003-39025  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2004-07-30 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2003-02-14 
確定日 2004-06-08 
事件の表示 実用新案登録第2078022号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 [第1].手続の経緯
本件訂正請求の趣旨は、昭和62年7月10日付出願の実願昭62-106067号に係る、実用新案登録2078022号の願書に添付した明細書(以下、「明細書」という)を、本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるというものであるが、この訂正請求に対して、当審より、訂正請求に係る請求項の考案は、実用新案法第3条第2項に係る[理由A]及び、実用新案法第3条の2に係る[理由B]の、いずれの理由によっても、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録をうけることができるものとはいえず、本件訂正請求を認めることはできない旨の訂正拒絶理由を通知したところ、平成15年6月11日付で意見書が提出されたものである。

[第2].本件訂正の要旨、及び訂正目的等の適否
1.訂正の要旨
本件訂正の要旨は、審判請求書及び同書に添付した訂正明細書によれば、登録時の明細書の実用新案登録請求の範囲(請求項1)において、次の下線部の記載を加入しようとするものである。
「互いの軸線を一致させた流入通路および流出通路とこれらの間に形成された栓挿入孔とを有するコック本体と、このコック本体の栓挿入孔に回動自在に挿入され、回動軸線が前記流入通路および流出通路の軸線と直交し、回動軸線と直交する方向に貫通するガス通路が形成された栓とを備え、前記ガス通路の両端部が流入通路と前記流出通路とにそれぞれ連通した開状態と、この開状態から正逆方向へそれぞれ所定位置まで回動させることにより、前記ガス通路の両端部が前記栓挿入孔の内周面によって遮蔽されるとともに、前記流入通路と前記流出通路とが前記栓によって遮断された閉状態とに切り換えられるガスコックにおいて、前記コック本体の外面に、円筒面をなす外周部に柔軟性を有する検査用のガス用ゴム管が挿入される突出部を一体に形成し、この突出部が、前記流入通路および流出通路の軸線と直交するとともに前記栓の回動軸線と直交する方向に突出し、その突出方向における前記コック本体の外寸法より短く、前記コック本体に、一端が前記突出部の先端面に開口するとともに、他端が前記栓挿入孔の内周面に開口し、栓挿入孔の内周面における開口部が閉状態時には前記ガス通路と連通する検査用の流出孔を形成し、この流出孔を遮蔽する閉栓を、流出孔にねじ込むことにより前記コック本体の突出部に着脱自在に設け、前記栓に、一端が前記ガス通路の内面に開口し、他端が栓の外周面に開口し、外周面における開口部が、開状態時には前記流出孔と連通し、閉状態時には前記栓の回動位置に応じて前記流入通路と前記流出通路とのいずれか一方と対向して連通し、他方に対して遮断される連通孔を形成したことを特徴とするガスコック。」(この訂正請求に係る考案を、以下、「訂正考案」という)
2.訂正の目的、新規事項及び拡張・変更の有無
上記の訂正事項は、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものと認められ、また、上記訂正事項は、登録時における明細書に記載された事項の範囲内において、訂正しようとするものと認められる。
更に、上記訂正事項の内容は、登録時における明細書に記載されている考案の目的の範囲を逸脱するところはなく、実用新案登録請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものとはいえない。
以上のとおりであるから、上記訂正事項は、平成5年法律第26号附則第4条第1項の規定によって、本件に関してなおその効力を有するとされる、同法律による改正前の実用新案法(前記法律第26号附則第4条第2項、及び平成11年法律第41号附則第14条の規定による一部読み替え後のものであって、以下、「実用新案法」という)第39条第1項第1号に掲げる事項を目的とし、同条第1項柱書き中のただし書きの規定と、同条第2項の規定には適合している。
そこで、以下において、実用新案法第39条第3項の規定に係る、訂正考案の独立登録要件について検討する。

[第3].独立登録要件の検討(その1、[理由A]について)
1.引用例及び主要な引用例記載事項の概要
(1)当審において通知した訂正拒絶理由では、本件登録に係る出願前に頒布された刊行物として、次のものを引用した。
[引用刊行物]
第1引用例:実願昭51-41252号(実開昭52-132335号)のマイクロフィルム
第2引用例:G・Hピアソン「弁の設計」(昭和36年9月10日、日本弁工業会発行)第10?11頁
第3引用例:実願昭53-85254号(実開昭55-3039号)のマイクロフィルム
第4引用例:実公昭36-25259号公報
第5引用例:「都市ガス工業 器具編」(昭和47年3月20日、社団法人日本瓦斯協会発行) 第172頁
参考文献:実願昭47-57395号(実開昭49-18136号)のマイクロフィルム、
同:特公昭40-20306号公報
(2)第1引用例の記載事項(a?f)
第1引用例には、「三方バルブ」に関して、次のとおりの記載がある。
<a> 「(1)は中心部に円筒状のバルブ室(1A)が空設されたバルブ本体であって、上記バルブ室(1A)の筒軸を中心として放射状にそれぞれ90°の間隔で吸入口(2)、第1排出口(3)および第2排出口(4)が穿設されている。
なお、上記吸入口(2)にはガス供給源(図示しない)に連通するパイプ(P1)が、第1排出口(3)には燃焼器(図示しない)に連通するパイプ(P2)がそれぞれ螺着されている。」(明細書部分第3頁第1?9行)
<b> 「(5)はニップル状のホースエンドであって、その基端が上記第2排出口(4)に螺着され、パイプ(P3)を介して圧力計(図示しない)に連通している。」(同第3頁第10?12行)
<c> 「(7)は上記ゴムパッキン(6)のテーパ面(6A)に対して摺転可能に嵌合された閉子で、その外周面に上記ゴムパッキン(6)のテーパ面(6A)に対応するテーパ面を有し、その中高部位には水平にT字状の切換孔(8)が上記バルブ本体(1)の吸入口(2)、第1排出口(3)および第2排出口(4)に対応して穿設され、また該閉子(7)中央上端には角状の凸部(7B)が突成されている。」(同第4頁第4?11行)
<d> 「操作レバー(13)の回動操作によって閉子(7)を適宜位置に摺転させる。」(同第6頁第6?8行)
<e> 「連通の態様には3通りの方法があり、以下その詳細を第3図?第5図にしたがって説明する。
(イ)まず、・・・(第3図参照)、該閉子(7)の切換口(8)は吸 入口(2)と第1排出口(3)とのみに連通するため、・・・ガス燃焼が 可能である。
(ロ)次に、・・・(第4図参照)、該閉子(7)の切換口(8)は吸 入口(2)、第1排出口(3)および第2排出口(4)の全ての口に連通 するため ・・・圧力計へも供給される。したがって、・・・燃焼時にお けるガス圧力の測定が可能である。
(ハ)また、・・・(第5図参照)、該閉子(7)の切換口(8)は吸 入口(2)および第1排出口(3)のみに連通するため、燃焼器へのガス の供給が絶たれた状態で燃焼器とバルブ本体間の配管気密検査が可能であ る。」(同第7頁第2行?第8頁第7行)
<f> 「しかも第2排出口(4)にはホースエンド(5)が螺着されているため、圧力計等に付属のゴムホースを随時直接挿し込むことができきわめて便利である。」(同第8頁第7?10行)

2.考案の対比
上記[第2]1.に掲げた訂正考案の構成事項と、第1引用例の記載事項とを対比すると、第1引用例記載の「三方バルブ」は、上記a、e等でガス供給やガス圧力に言及しているところから、<ガスコック>とみることができ、したがって、同引用例記載の「バルブ本体」は、訂正考案における<コック本体>に相当するものといえる。また、同引用例第3?5図の記載も併せ参酌すると、上記「バルブ本体」に穿設されている「吸入口(2)」及び「第1排出口(3)」は、それぞれ訂正考案における<流入通路>及び<流出通路>に相当し、以下同様に、「バルブ室」は<栓挿入孔>に、「摺転可能に嵌合され」る「閉子」は<回動自在に挿入され>る<栓>に、それぞれ相当する。
そして、第1引用例上記d及びeの記載と第3?5図の記載から、上記の「閉子」は、<回動軸線が前記流入通路および流出通路の軸線と直交し、回動軸線と直交する方向に貫通するガス通路が形成され>、当該<ガス通路>の両端部が、<流入通路(吸入口)>と<流出通路(第1排出口)>とに、<それぞれ連通した開状態>と、前記閉子によって<遮断された閉状態>とに切り換えることが可能になっているものと認められる。
また、第1引用例の上記fに記載の「圧力計等に付属のゴムホース」は、<柔軟性を有する検査用のガス用ゴム管>といえる。そして、第1図、第3?5図の記載を参酌すると、「ゴムホースを随時直接挿し込むことができ」るホースエンド(5)の基端が「螺着」(上記b参照)される部分は、ホースエンドを介して上記ゴムホースを接続するために<コック本体の外面>に<一体に形成>された<突出部>とみることができるし、当該<突出部>とみることができる部分は、<前記流入通路の軸線と直交するとともに前記栓の回動軸線と直交する方向に突出し>て形成されているといえる。
しかも、第1引用例(上記a)記載の、バルブ本体に穿設された「第2排出口(4)」は、<一端が前記突出部の先端面に開口するとともに、他端が前記栓挿入孔の内周面に開口>する<検査用の流出孔>に相当し、当該第2排出口の<栓挿入孔の内周面における開口部>は、閉状態(第5図に示される状態)時には、後述する訂正考案でいう<連通孔>に相当する部分を介してではあるが、<前記ガス通路と連通する>ものとみることができる。
更に、第1引用例上記eの内の、「(ロ)」及び「ハ」(第4図及び第5図参照)の記載から、上記「閉子」には、<一端が前記ガス通路の内面に開口し、他端が栓(閉子)の外周面に開口し、外周面における開口部が、開状態時(第4図参照)には前記流出孔(第2排出口)と[ガス通路に相当する部分を介して]連通し、閉状態時(第5図参照)には前記流出通路と[ガス通路に相当する部分を介して]対向して連通し、他方(流入通路)に対して遮断される連通孔>が形成されているといえる。
以上の対比関係から、訂正考案と第1引用例記載の考案との一致点及び相違点を次のように認定できる。
[一致点] 「流入通路および流出通路とこれらの間に形成された栓挿入孔とを有するコック本体と、このコック本体の栓挿入孔に回動自在に挿入され、回動軸線が前記流入通路および流出通路の軸線と直交し、回動軸線と直交する方向に貫通するガス通路が形成された栓とを備え、前記ガス通路の両端部が流入通路と前記流出通路とにそれぞれ連通した開状態と、前記流入通路と前記流出通路とが前記栓によって遮断された閉状態とに切り換えられるガスコックにおいて、前記コック本体の外面に、柔軟性を有する検査用のガス用ゴム管を、直接または間接的に挿入して接続できるようにするための、突出部を形成し、この突出部が、前記流入通路の軸線と直交するとともに前記栓の回動軸線と直交する方向に突出し、前記コック本体に、一端が前記突出部の先端面に開口するとともに、他端が前記栓挿入孔の内周面に開口し、栓挿入孔の内周面における開口部が閉状態時には前記ガス通路と連通する検査用の流出孔を形成し、前記栓に、一端が前記ガス通路の内面に開口し、他端が栓の外周面に開口し、外周面における開口部が、開状態時には前記流出孔と連通し、閉状態時には前記流出通路と対向して連通し、他方(流入通路)に対して遮断される連通孔を形成したガスコック」といえる点。
[相違点1] 流入通路と流出通路との配置関係が、訂正考案では「互いの軸線を一致」すると共に、突出部(及び検査用の流出孔)が「流入通路および流出通路の軸線と直交する」関係となっているのに対し、第1引用例記載の考案では流入通路と流出通路とが「90°の間隔」(互いの軸線が直交する状態)となっており、突出部(及び<検査用の流出孔>に相当する第2排出口)は、<流入通路(吸入口)の軸線>とは直交して、<流出通路(第1排出口)の軸線>とは一致する関係となっている点。
[相違点2] 訂正考案における「開状態から正逆方向へそれぞれ所定位置まで回動させることにより、前記ガス通路の両端部が前記栓挿入孔の内周面によって遮蔽される」閉状態に切り換えられる構成と、連通孔の栓外周面における開口部が、「閉状態時には前記栓の回動位置に応じて前記流入通路と前記流出通路とのいずれか一方と対向」する構成について、第1引用例に言及がない点。
[相違点3] 検査用のゴム管と、コック本体に形成される突出部との接続関係が、訂正考案では、ゴム管を、前記コック本体に「突出方向における前記コック本体の外寸法より短く」形成された、「突出部」の「円筒面をなす外周部」に直接挿入して接続するのに対し、第1引用例記載の考案では、<突出部>に螺着される「ニップル状のホースエンド」を介して間接的にゴム管を挿入接続しており、また、当該ホースエンドの長さを短くすることや外周部の形状を円筒状にすることについては格別の言及はない点。
[相違点4] 訂正考案における、「流出孔を遮蔽する閉栓を、流出孔にねじ込むことにより前記コック本体の突出部に着脱自在に設け」る構成について、第1引用例に言及がない点。

3.相違点の検討
[相違点1]について
当該技術分野においては、流入通路及び流出通路の配置関係に関して、第1引用例に示されるような、上記二つの通路を「90°の間隔」とするもの(<突出部>及び<検査用の流出孔>を、流入通路又は流出通路の一方のみの軸線と直交する関係とするもの)と、訂正考案のように流入通路と流出通路の「互いの軸線を一致させた」もの(「突出部」及び「検査用の流出孔」を、「流入通路および流出通路の軸線と直交する」関係とするもの)との、いずれもが、通常採用されている形態であって、一方の形態を他方の形態に変更することは、当業者が必要に応じて容易になしうる設計事項といえる。
[相違点2]について
「開状態から正逆方向へそれぞれ所定位置まで回動させる」ことによる、「ガス通路の両端部が前記栓挿入孔の内周面によって遮蔽される」態様や、連通孔の栓外周面における開口部が「閉状態時には前記栓の回動位置に応じて前記流入通路と前記流出通路とのいずれか一方と対向」できる態様について、第1引用例に直接的な明示はないが、第2引用例第10頁第2.2図や第5引用例第172頁第5-5図等に示されているように、当該技術分野において、上記のような態様をとれる構成とするのは極めて常識的なことであり、第1引用例記載の三方バルブについても、そのような常識的な構成を採用することに、全く困難性が認められない。
[相違点3]について
ガス用ゴム管をコック本体と接続する場合に、第1引用例記載のように、コック本体とは別部材のホースニップルを介して接続する手段と、訂正考案のように、コック本体(と一体)に形成した突出部の外周にゴム管を直接挿入する手段とは、いずれも周知の接続手段である。つまり、ゴム管接続用のホースニップルを、第1引用例記載のようにコック本体とは別部材のものとするか、上記の第3及び第4引用例(これらの他、実開昭57-33367号公報、実開昭57-46169号公報、実開昭58-91073号公報)にも開示されるように、コック本体、またはその主要部と一体に形成される突出部とするかは、いずれも周知の手段であって、どちらを採用するかは通常の選択的設計事項である。
また、コック本体とゴム管との接続を確実にするという優位性や必要性を無視してもよいのであれば、ホースニップルの長さを短いものにしたり、通常採用される波形の外周形状に代えて、「円筒面をなす」形状とすること自体は、当業者が容易になしうる設計変更というべきである。
[相違点4]について
コックや弁等に設けた、通常使用しない開口や使用頻度が少ない開口を、「閉栓」を「ねじ込むことにより」遮蔽することは、上記の二つの参考文献(実願昭47-57395号(実開昭49-18136号)のマイクロフィルム、特公昭40-20306号公報)にも示されるように、当該技術分野における常套手段といえるものであり、第1引用例記載の圧力検査に使用される「第2排出口」、あるいは当該「第2排出口」に続く開口は、通常使用する必要はないから、そのような頻繁に使用する必要がない開口に対して、上記の常套手段を採用することに困難性は認められらない。

4.相違点の評価と訂正考案の作用効果について
以上のとおり、上記いずれの相違点も格別のものとはいえない。
そして、訂正明細書の記載によれば、上記相違点で指摘したそれぞれの構成を併せ備える訂正考案の作用効果は、
「ガスコック自体の操作によって空気抜き、ガス圧検査および漏洩検査を行うことができ」て、「三方向分岐管を設置する必要がなく、その分コストを低減することができるとともに、作業労力を軽減することができる」、
「ガスの漏洩検査に際しては、元栓からガス器具までの間、ガスコックから上流側およびガスコックから下流側にガスの漏洩があるか否かをそれぞれ検出することができる」、
「ガス圧検査時、あるいは漏洩検査時には、検査器に取り付けられたガス管を突出部に嵌め込むだけで」よいから「検査器の接続を容易に」できる、
「通常の使用時には、流出孔が閉栓によって遮蔽されるので、流出孔からガスが漏れることはない」、というものである。
上記作用効果について検討すると、たしかに、検査器の接続等に関して、第1引用例記載のものと訂正考案に係るものでは、その作業能率が全く同じとはいえないが、上記いずれの作用効果も、第1引用例及びその他の周知技術等を開示した文献の記載から予測しがたいものではなく、格別の作用効果と評価することはできない。

5.請求人の主張について
(1)請求人は、「第1引用例の突出部は、ホースエンド螺着用のねじ代を稼ぐためにコック本体から突出している」のであって、「ガス用ゴム管の挿入とは無関係」で、「突出部がガス用ゴム管を挿入して接続できるようにするためのもの」とするのは「論理に飛躍がある」旨主張する。
しかし、第1引用例の記載事項から明らかなように、同引用例記載の<突出部>も、「ホースエンド」を介して間接的にではあるものの、ゴム管の挿入接続と密接に関連する機能を発揮している以上、当該突出部を「ホースエンドを介して上記ゴムホースを接続するために<コック本体の外面>に<一体に形成>された<突出部>とみることができる」(上記2.考案の対比)とする判断に論理の飛躍があるとはいえない。
(2)請求人は「コック本体に円筒面の外周部を有する短い突出部を一体に形成する構造は、周知でも公知でもない」旨も主張するが、上述([相違点3]について)のとおり、コック本体にガス管接続用の突出部を<一体に形成する>構造は周知のものといえるし、ガス管の不確実な接続状態をも許容するというのであれば、「円筒面の外周部を有する短い」形状の突出部でも、ゴム管の一応の接続が可能になるのは明らかであって、そのような形状を選択することに困難性があるとはいえない。
(3)請求人は、上記相違点4の評価に関して、「第1引用例の第2排出口を閉塞するのに閉栓を用いて遮蔽する場合には、ホースエンドを取り外して閉栓をねじ込むことになる」から、訂正考案に比べて検査の「作業性が悪くなる」旨主張する。
たしかに上記主張に係る不都合は否定できないが、訂正考案のような接続手段を採る場合には、上述のとおり、ガス管の接続が不確実になるという問題を生じかねないことを考慮すれば、上記の作業性が悪いという不都合は相対的なものでしかないという評価が可能である。
しかも、第1引用例記載のものも、ガス管接続用のホースエンドをコック本体と<一体に形成する>という周知の構造を採用すれば、上記の閉栓は、必然的にホースエンドの先端近傍に設けることになり、「ホースエンドを取り外」す必要はなくなるのであるから、上記作業性の改善は当然予測しうる範囲内の事項といえる。
なお、当審からの訂正拒絶理由で上記閉栓に関して引用した、実願昭47-57395号(実開昭49-18136号)のマイクロフィルムは、請求人指摘のとおり、弁軸嵌挿口を閉塞するプラグを開示するものであって、当該プラグは「ガス流通のための開口」を閉じる閉栓とはいえないが、「通常使用しない開口」を遮蔽するためのねじ込み式「閉栓」とみることができ、引用例として「不適切」とする請求人の非難は当たらない。
(4)請求人は更に、「訂正考案による作業効率上の利点は、相違点3と相違点4の有機的結合によって生じる」が、当審の判断は、前記の有機的結合に対する「評価が抜け落ちている」旨主張しているので、この点について検討する。
訂正考案が、前記の相違点3で指摘した構成と、相違点4で指摘した構成とを、併せ備えていることは明らかであるが、そうであるからといって、それら二つの構成が「有機的結合」をなしているか否かは必ずしも明確とはいえないし、そのような根拠が示されているともいえない。
もっとも、請求人は、上記(3)で言及した、通常使用しない開口を「閉栓を用いて遮蔽する場合」に、訂正考案では、第1引用例記載のもののように「ホースエンドを取り外して」閉栓をねじ込む必要がない点を、上記の有機的結合による効果というのかも知れないが、上述のように、第1引用例記載のものでも、ホースエンドをコック本体と<一体>に形成する周知の構造を採用しうることは明らかで、その場合、「ホースエンドを取り外」すということ自体が不可能となるのであるから、上記の「有機的結合」とする評価を採用しうる余地はない。
(5)請求人はまた、訂正考案に係る突出部では、検査用ゴム管の接続が「一時的」なもので、「検査者が常時接続状態を監視している状況下」にあるから、「接続が不完全であっても許容され」るし、「短い円筒形状の突出部にガス用ゴム管をチョイ付けするという発想」は、「検査という状況下で適用されることに着目した逆転の発想である」旨も主張する。
上記の主張について検討すると、先ず、検査用ゴム管の接続が「不完全であっても許容され」るか否かは、当業者が検査の状況や目的・態様に応じて適宜決定すればよいことであって、そのような判断を下すこと自体に格別の技術的意義や困難性をみいだすことはできない。そして、「逆転の発想」とは、当該発想の結果、常識的には全く予測しがたいような作用効果が実現される場合に用いられるべき表現であって、「ガス用ゴム管をチョイ付け」する結果として、検査用ゴム管の「不完全」な接続状態が実現されるというのでは当然予測されるところでしかなく、これをもって「逆転の発想」とする評価は明らかに適切を欠く。

6.[理由A]についてのまとめ
以上のとおり、訂正考案は、第1引用例記載の考案に基づいて当業者が極めて容易に考案することができたものといえるから、訂正考案については、実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録をうけることができない。

[第4].独立特許要件の検討(その2、[理由B]について)
引用例 実願昭62-11142号(以下、「先願」という)
1.先願明細書等の記載事項(g?i)
先願の願書に最初に添付した明細書及び図面を開示している、実願昭62-11142号(実開昭63-118463号)のマイクロフィルムには、「ガスコック」に関する次のとおりの記載がある。
<g> 「図は本考案の実施例を示し、1はガスコック本体にして、この構成は水平方向にガスが流れるガス流路2を内部に形成し、このガス流路2に対して垂直方向に栓組込テーパ穴3を形成し、更に栓組込テーパ穴3の上方開口部縁4に180°と90°の回転角αとα'の形成用のストッパー5、5'を突設すると共に前記ガス流路2の栓組込テーパ穴3に対して水平直角方向にテスト穴6を分岐して設けて成るものである。
7は前記ガスコック本体1の栓組込テーパ穴3内に垂直に組み込まれた栓にして、この構成は前記ガスコック本体1のガス流路2と同軸に貫通する貫通穴8と、この貫通穴8に対して水平直角方向に分岐した分岐穴9をT字状に設けて成るものである。
10はハンドルにして、このハンドルの構成は下面に前記栓7との結合部11を形成し、水平方向に前記ガスコック本体1の180°回転角α内に頭部13が位置するストッパーネジ12を挿入し、更に90°回転角α'間に垂直方向から係脱自在にストッパーピン14を取り付けて成るものである。
15は前記ガスコック本体1のテスト穴6を閉塞している閉塞具、16は前記閉塞具15を外ずしたあとにねじ込んで取り付けられるコンセント接続用のプラグである。」(明細書部分第6頁第3行?第7頁第8行)
<h> 「ガス導管の端末にガスコック本体1を取り付け、このガスコック本体1とガス器具とを鉄管を介して接続したなら、次の方法により漏洩検査とエアーパージを行う。
・ 漏洩検査
(1)下流側の場合
先ず、ハンドル10側のストッパーピン14を90°回転角ストッパー 5、5'間から逃がし(第7図)、更にガスコック本体1のテスト穴6か ら閉塞具15を取り外ずし、ここにプラグ16(テストガス管接続具)を 取り付け、このプラグ16にコンセント17を利用して漏洩検査器具(図 示せず)を接続する。
次にハンドル10を廻して栓7の貫通穴8とテスト穴6及び分岐穴9と 下流側(ガス器具側)を連通し漏洩検査器具から下流側に圧力例えば空気 圧をかけ、この降下を調べる(第8図)。
(2)上流側の場合
この場合にはハンドル10を廻して栓7の貫通穴8とテスト穴6、及び 分岐穴9と上流側とを連通し、前記下流側と同じ方法により行なう(第9 図)。」(同第7頁第10行?第8頁第12行)
<i> 「上記漏洩検査及びエアーパージが終了したなら、ハンドル10側のストッパーピン14を90°回転角ストッパー5、5'間に係合させ、ハンドル10を90°左又は右に回転することにより栓7の開(第11図)、閉(第5図)を行なう。」(同第9頁第3?8行)

2.考案の対比
訂正考案の構成事項と先願明細書等の記載事項を対比すると、先願明細書記載のガスコック本体に形成された「ガス流路2」は、先願第5図及び同第8?11図等の記載も参酌すると、<互いの軸線を一致させた流入通路および流出通路>を含むものといえるし、同様に、「栓組込テーパ穴3」は、訂正考案でいう、流入通路と流出通路との間に形成された<栓挿入孔>に相当している。
そして、先願明細書等記載の「栓7」も、ストッパーネジ12やストッパーピン14を取り外した状態では、訂正考案の<栓>と同様に、栓組込テーパ穴3に<回動自在に挿入され、回動軸線が前記流入通路および流出通路の軸線と直交>していることは明らかであり、上記「栓7」に設けられた「ガス流路2と同軸に貫通する貫通穴8」は、訂正考案の<回動軸線と直交する方向に貫通するガス通路>に相当している。また、先願明細書上記iの記載は、<ガス通路(貫通穴8)の両端部が流入通路と前記流出通路とにそれぞれ連通した開状態と、この開状態から正逆方向へそれぞれ所定位置まで回動させることにより、前記ガス通路の両端部が前記栓挿入孔の内周面によって遮蔽されるとともに、前記流入通路と前記流出通路とが前記栓によって遮断された閉状態とに切り換えられる>ことを開示しているといえる。
また、先願第5図には、ガスコック本体1の外面に、<突出部>といえるものが<一体に形成され>、<この突出部が、前記流入通路および流出通路の軸線と直交するとともに前記栓の回動軸線と直交する方向に突出し、その突出方向における前記コック本体の外寸法より短>いものであることが示されているし、上記gでいう「テスト穴6」が、<コック本体>に形成された<一端が前記突出部の先端面に開口するとともに、他端が前記栓挿入孔(栓組込テーパ穴3)の内周面に開口し、栓挿入孔の内周面における開口部が閉状態時には前記ガス通路(貫通穴8)と連通する検査用の流出孔>に相当するものであることも示されている。
そして、先願明細書(上記h)記載の「漏洩検査」用の器具に接続される部材には、技術常識等を勘案すれば、通常は、<柔軟性を有する><ガス用ゴム管>が採用されるといえるし、同じく上記gで、コンセント接続用のプラグが「前記閉塞具15を外ずしたあとにねじ込んで取り付けられる」とされているところから、「テスト穴6を閉塞している閉塞具」は、<流出孔にねじ込むことにより前記コック本体の突出部に着脱自在に設け>る<閉栓>に相当するといえる。
更に、上記gの「栓」における「貫通穴8に対して水平直角方向に分岐した分岐穴9」は、上記hの記載も参酌すると、<一端が前記ガス通路(貫通穴8)の内面に開口し、他端が栓の外周面に開口し>、<外周面における開口部が><閉状態時には前記栓の回動位置に応じて前記流入通路と前記流出通路とのいずれか一方と対向して連通し、他方に対して遮断される連通孔>といえるものである。
上記の対比したところから、訂正考案と、先願明細書等に記載された考案(以下、「先願考案」という)とは、
「互いの軸線を一致させた流入通路および流出通路とこれらの間に形成された栓挿入孔とを有するコック本体と、このコック本体の栓挿入孔に回動自在に挿入され、回動軸線が前記流入通路および流出通路の軸線と直交し、回動軸線と直交する方向に貫通するガス通路が形成された栓とを備え、前記ガス通路の両端部が流入通路と前記流出通路とにそれぞれ連通した開状態と、この開状態から正逆方向へそれぞれ所定位置まで回動させることにより、前記ガス通路の両端部が前記栓挿入孔の内周面によって遮蔽されるとともに、前記流入通路と前記流出通路とが前記栓によって遮断された閉状態とに切り換えられるガスコックにおいて、前記コック本体の外面に、柔軟性を有する検査用のガス用ゴム管が直接または間接的に接続できるようにした突出部を一体に形成し、この突出部が、前記流入通路および流出通路の軸線と直交するとともに前記栓の回動軸線と直交する方向に突出し、前記コック本体に、一端が前記突出部の先端面に開口するとともに、他端が前記栓挿入孔の内周面に開口し、栓挿入孔の内周面における開口部が閉状態時には前記ガス通路と連通する検査用の流出孔を形成し、この流出孔を遮蔽する閉栓を、流出孔にねじ込むことにより前記コック本体の突出部に着脱自在に設け、前記栓に、一端が前記ガス通路の内面に開口し、他端が栓の外周面に開口し、外周面における開口部が、閉状態時には前記栓の回動位置に応じて前記流入通路と前記流出通路とのいずれか一方と対向して連通し、他方に対して遮断される連通孔を形成したガスコック」
である点では、明らかに一致するといえる。
一方、次の(1)及び(2)各点では、訂正考案と先願考案との間で一応の相違が認められる。
(1)[検査用のガス用ゴム管と突出部の接続関係について、訂正考案では、ゴム管を突出部の「円筒面をなす外周部」に直接挿入して接続すると共に、前記の突出部を、「その突出方向における前記コック本体の外寸法より短く」しているのに対して、先願考案では、プラグやコンセントを介して突出部に接続する構成をとり、突出部がどのように突出しているかについては特段の言及がない点](以下、「一応の相違点1」という)
(2)[訂正考案における、「(連通孔が)開状態時には前記流出孔と連通」する構成が、先願明細書又は図面に明確には開示されていない点](以下、「一応の相違点2」という)

3.一応の相違とした点の検討
(1)先ず、上記一応の相違点1としたところについて検討すると、ガス用ゴム管をコック等の突出部に接続するための構成として、訂正考案のようにゴム管を当該突出部の外周に直接挿入する構成と、先願考案のようにプラグやコンセントを介して接続する構成とは、いずれも周知かつ互いに置換可能なものであって、上記の一方の構成を他方の構成に変更することは、突出部の突出状態を含めて、単なる周知技術の置換あるいは設計変更に該当し、実質上の相違点とはいえない。
(2)次に、一応の相違点2としたところについて検討すると、上記第2引用例第10頁の第2.2図、同第5引用例第172頁第5-5図等に示されるように、三方コックでは「三方開放」の状態をとることは、極めて一般的な通常の使用態様である。そして、先願考案に係るガスコックも「三方コック」としての機能をもつことは明らかであり、しかも、既に指摘したように、先願考案における「栓7」も、ストッパーネジ12やストッパーピン14を取り外した状態では、訂正考案の「栓」と同様に、栓組込テーパ穴3中に「回動自在」に挿入されるものである以上、上記「三方開放」の状態、即ち、<開状態時には前記流出孔と連通>する状態を実現できることは自明の事項というべきであって、当該自明の事項が先願明細書等に直接的に明示されていないことをもって、訂正考案と先願考案との間の実質的な相違点とすることはできない。

4.請求人の主張について
(1)請求人は、「先願ガスコックの突出部は、確かに図5の横断面図でみると訂正考案のガスコックの突出部と似ているが、実際には図4の縦断面図に示すように、栓の回動軸線とほぼ平行に延びている」もので、訂正考案の突出部の形状とは相違する旨主張する。
請求人が主張するように、両者の突出部の形状に相違があるとしても、そのような相違は、上記の「一応の相違点1」として挙げた、ゴム管のコック本体に対する接続の態様に起因するもので、当該形状の相違は、上記「一応の相違点1」に吸収されるとみるべきであるし、その結果の判断も上述したところと変わらない。
(2)請求人は、「先願ガスコックの突出部は、閉栓およびプラグを螺着するための部位であり、螺着用のねじ代を稼ぐためにコック本体から突出している」のであって、「ガス用ゴム管の接続とは無関係」で、先願考案に係る突出部を、「ガス用ゴム管を接続できるようにした突出部」とするのは、「論理に飛躍がある」旨主張する。
しかし、先願明細書記載の<突出部>も、「コンセント」及び「プラグ」を介して間接的にではあるものの、ゴム管の接続に関する機能を果たしている以上、上記認定の論理に飛躍があるとはいえない。
(3)上記「一応の相違点1」に関して、訂正拒絶理由では「訂正考案のようにゴム管を当該突出部の外周に直接挿入する構成と、先願考案のようにプラグやコンセントを介して接続する構成とは、いずれも周知かつ互いに置換可能なものであって、上記の一方の構成を他方の構成に変更することは、単なる周知技術の置換に相当し、実質上の相違点とはいえない」とした。
これに対して請求人は、この記載では、「先願考案と訂正考案が実質同一である」論理の道筋を詳細に示したことにならない旨を主張しているので、当審の見解について更に補足しておく。
請求人は「円筒面の外周部を有する短い突出部を一体に形成し、ガス用ゴム管の直接接続に供することは、周知でも公知でもない」というが、「円筒面」は、ゴム管等を接続する対象物の形状としては、最も基本的な形態のものと考えられる。(そして、単なる円筒形状では、接続状態が不完全になったり、わずかな力で抜け落ちてしまう恐れがあるところから、外周面の形状を波形とする工夫がされ、更に、そのような波形形状では、ゴム管着脱のために強い力が必要になったり、手間がかかるという問題があるために、先願考案で採用されているようなコンセントを用いる接続方式が開発されるに至ったというのが技術進歩の流れとみるべきである。)
しかも、先願考案においては、コック本体とゴム管の接続態様には中核的な技術的意義がなく、必ずしもコンセント式の接続態様を採用する必要がないのは明らかであるから、先願明細書に、上記の進歩した形態の実施例の開示がある以上、それより前の形態の接続態様をとる実施例についても、実質上の開示があるとみるのが相当である。
また、突出部が「短い」か否かは、ガス管の接続状態が不完全になる恐れを甘受しても、装置の小型化を優先するか否かの問題に帰着し、このような選択的事項は、技術上格別の意味をもつものとはいえない。(上述[第3]5.(5)参照)

5.[理由B]についてのまとめ
以上のとおり、訂正考案と先願考案との間で、一応の相違が認められるとした上記の点は、いずれも実質上の相違とはいえないものであるから、訂正考案と先願考案とは同一のものとみることができる。
しかも、訂正考案の考案者が先願考案の考案者と同一であるとも、また、その出願人が先願の出願人と同一であるとも認められないので、訂正考案については実用新案法第3条の2の規定により、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録をうけることができない。

[第5].むすび
以上のとおり、本件訂正に係る考案は、上記A、Bいずれの理由によっても、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録をうけることができるものではないから、本件訂正請求は、上述([第2]2.)の改正前実用新案法第39条第3項の規定を満たすものとはいえず、本件訂正請求を容認することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2003-06-27 
結審通知日 2003-07-02 
審決日 2003-07-15 
出願番号 実願昭62-106067 
審決分類 U 1 41・ 161- Z (F16K)
U 1 41・ 121- Z (F16K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 浅野 長彦  
特許庁審判長 神崎 潔
特許庁審判官 藤井 俊明
ぬで島 慎二
登録日 1995-09-04 
登録番号 実用新案登録第2078022号(U2078022) 
考案の名称 ガスコツク  
代理人 原田 三十義  
代理人 渡辺 昇  
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