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審決分類 審判 判定 審理一般(別表) 属さない(申立て不成立) E21D
管理番号 1098182
判定請求番号 判定2003-60080  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案判定公報 
発行日 2004-07-30 
種別 判定 
判定請求日 2003-10-17 
確定日 2004-06-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第2127530号の判定請求事件について、次のとおり判定する。   
結論 イ号図面及びその説明書に示すパイプは、登録第2127530号実用新案の技術的範囲に属しない。
理由 第1 判定請求人の請求の趣旨及び被請求人の答弁の趣旨

判定請求人は、判定請求書に添付したイ号説明書に示す装置(イ号物件)は、実用新案登録第2127530号の技術的範囲に属するとの判定を求め、一方、被請求人は、答弁書において、「答弁書の趣旨」として、被請求人のいない事件として処理すべきか、または、イ号物件は実用新案登録第2127530号の技術的範囲に属しないとの判定を求めている。

第2 本件考案

実用新案登録第2127530号の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された考案(以下、本件考案という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】削岩機によって穿孔された孔内に埋設される地盤強化用のパイプであって、少なくとも一方の端部にはねじ部が形成され、中間部にはパイプの内外に連通する複数の小孔が穿設され、前記ねじ部のねじは、ねじ山の高さをh、ピッチをpとすると、6h≦p≦10hの関係を有する断面角型のねじであることを特徴とする地盤強化用パイプ。」
本件考案を分説すると次のとおりである。
A 削岩機によって穿孔された孔内に埋設される地盤強化用のパイプであって、
B 少なくとも一方の端部にはねじ部が形成され、
C 中間部にはパイプの内外に連通する複数の小孔が穿設され、
D 前記ねじ部のねじは、ねじ山の高さをh、ピッチをpとすると、6h≦p≦10hの関係を有する断面角型のねじである
E ことを特徴とする地盤強化用パイプ。
(以下、分説したAないしEを、本件考案の構成要件AないしEという。)。

第3 イ号物件の特定

イ号物件の特定については、請求人は、判定請求書に添付したイ号説明書、その図面及び写真にて特定しており、他方、被請求人は、イ号装置の特定について、答弁書2?3頁において、2条ネジであること、「牽引式パイプ敷設工法」によって敷設されるものであることから、請求人の特定とは異なる趣旨の主張をし、請求人は、弁駁書において2条ねじであることを認めている。
被請求人は、請求人特定のイ号物件については、上記の点のみ争っていることから、当審は、両当事者の主張及び図面を参考にして、イ号物件を次のように特定すべきものと考える。

イ号図面及びイ号写真に示すパイプ(以下「イ号パイプ」という)は、鋼管であり、削岩機で穿孔した孔内に埋設され、地盤強化用に使用されるものである。
このイ号パイプPは、外径Dが114.3mmで長さは約3mであり、両端部はパイプ継ぎ足し用の接合部となっていて、その一方の接合部に雌ねじ部Sfが、他方の接合部に雄ねじ部Smがそれぞれ形成されている。 図1に示すパイプおPは、複数のパイプを直列に継ぎ合わせて使用する場合に、パイプ同士の間に配置される中間パイプである。 この他にも、一方の端部にのみねじ部(雄ねじ部又は雌ねじ部)が形成された端部用パイプもある。 端部用パイプは、パイプ列の先端部又は後端部に接続して使用されるものである。
イ号パイプの長手方向中間部には、内外に通じる複数の小孔Hが穿設されている。
イ号パイプのねじ部を有する接合部の長さは82mm(有効ねじ長さはこれよりも短い)であり、そのねじの縦断面形状は、図2(a)、(b)に示すとおりである。 図2(a)は雌ねじ部Sfの断面形状を表すもので、ねじ山の高さhは1.3mm、ピッチpは10mm、ねじ山の長さCは3.6mmの2条ねじである。ねじ山の両側面は傾斜面となっていて、その傾斜角度αは18度である。
また、図2(b)は雄ねじ部Smの断面形状を表すもので、ねじ山の高さhは1.1mm、ピッチpは10mm、谷の長さdは5mmの2条ねじである。ねじ山の両側面は傾斜面となっていて、その傾斜角度βは16度である。

図面及び写真の説明
イ号図面中、図1はイ号パイプの一部を断面で表した正面図、図2はそのねじ部の拡大断面図である。イ号写真は、複数本のイ号パイプを束ねた状態を表す。

第4 属否の検討

1.本件考案の構成要件Dの「断面角型のねじ」について
(1)明細書における記載の検討
本件考案の構成要件Dの「断面角型のねじ」の「角型のねじ」については、「角ねじ」(被請求人提出の乙第4号証には、角ねじとして、ねじ山が正方形断面を持つねじと記載され、コロナ社発行の機械用語辞典においては、ねじ山の断面が正方形またはこれに近い長方形を基本として定められているものをいう、と記載されている)という技術用語はあるが、「角型ねじ」という技術用語はないため、その技術的意味が明確でないので明細書における記載を検討する。
本件実用新案登録願に添付された明細書及び図面には「断面角型のねじ」に関して、実用新案登録請求の範囲以外には次の記載が認められる。
(i) 「【0004】【考案が解決しようとする課題】上記のように、掘削に先立ってパイプを埋設し地山を強化する工法では、埋設するパイプの長さがある程度長い方が好ましいので、複数本のパイプをねじでつなぎ合わせ、20m程度の長さで埋め込んでいるが、この種のパイプの肉厚は薄いので、ねじ部が変形したり損傷することが多く、従来のパイプでは、複数本をつなぎ合わせて打ち込むのが困難であった。そこで本考案は、従来のパイプのねじ形状を改良し、複数本のパイプをつなぎ合わせて打ち込むことができるようにすることを課題としている。」
(ii) 「【0005】【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本考案は、次のような構成を採用した。すなわち、本考案にかかるパイプは、削岩機によって穿孔された孔内に埋設される地盤強化用のパイプであって、少なくとも一方の端部にはねじ部が形成され、中間部にはパイプの内外に連通する複数の小孔が穿設され、前記ねじ部のねじは、ねじ山の高さをh、ピッチをpとすると、6h≦p≦10hの関係を有する断面角型のねじであることを特徴としている。」
(iii) 「【0006】【作用】このパイプは、ロックビットを取り付けたさく孔ロッドに外嵌して削岩機によるさく孔とともに、削岩機の打撃力と推力を受けて地山に挿入されて行く。先行のパイプが挿入されたら、その後端部に形成されているねじ部に次のパイプを螺着し、所定の埋設長さとなるまで引続き穿孔とパイプの挿入を行う。このパイプの端部に設けられているねじは、ねじ山の高さをh、ピッチをpとすると、6h≦p≦10hの関係を有する断面角型のねじであるから、削岩機の打撃や軸方向の推力がかかっても螺合部に変形や損傷が生じにくい。パイプの埋め込みが終わったら、該パイプの内側を通してビットとロッドを引き抜き、パイプの後端部から地盤強化用の薬液を注入する。」
(iv) 「【0009】おねじ部2のねじ形状は、図4に示すように、ピッチPがねじ山の高さhの6倍以上の断面矩形状の角型ねじである。このねじのピッチPとねじ山の高さhとの関係は、7h≦P≦10hとするのが好ましく、8h≦P≦9hとするのがより好ましい。ピッチPが小さ過ぎると、さく孔装置の打撃力と推力によってねじ山が早期に損傷するので好ましくない。また、ピッチPが大き過ぎると、ねじのリード角が大きくなり過ぎ、打撃力と推力の伝達がうまく行われなくなる。図示例のパイプは、ピッチPが6.6mm,ねじ山の高さhが0.75mmである。なお、ねじ形状は、螺合を円滑にするため、図5に示すように、エッジ部に若干(0.3mm以下)の面取りeを施しておいてもよい。」
(v) 「【0016】【考案の効果】以上の説明から明らかなように、本考案にかかる地盤強化用パイプは、その接合端部に、ねじ山の高さをh、ピッチをpとすると、6h≦p≦10hの関係を有する断面角型のねじが設けられているので、複数のパイプをこのねじを利用して継ぎ足すことが可能であり、長尺のパイプとして地盤を強化することが可能となった。しかも上記のようなねじ形状であるから、強度的にすぐれ、削岩機の打撃力や推力を受けても容易に損傷しないものとなった。」
(vi) 図面の図4、図5には、おねじとめねじの断面拡大図が示されており、ここでは各ねじは、断面が横に長い矩形となっており、また、図6には、断面が横に長い矩形のねじのおねじにおいて、0.3mm以下の面取りがされた図が示されている。

以上の記載から、明細書の詳細な説明において、本件考案の「断面角型のねじ」としては、「断面矩形状の角型ねじ」のみが記載されており、図面においても、断面形状が矩形のねじのみが記載されているにすぎない。また、明細書において、実施例のほかに、断面形状が矩形以外のねじ(例えば、断面形状が台形)が含まれるような記載は一切認められない。また、本件考案は、「断面角型のねじ」を採用したことによって、「削岩機の打撃や軸方向の推力がかかっても螺合部に変形や損傷が生じにくい。」、「強度的にすぐれ、削岩機の打撃力や推力を受けても容易に損傷しないものとなった。」という作用効果を奏するものであり、断面形状が矩形の場合には、断面形状が台形である場合に比べ、上記作用効果をより一層期待できるものである。
そうすると、本件考案における「断面角型のねじ」は、断面形状が矩形のねじを意味する用語として用いられていると解される。

(2)出願経過の検討
請求人は、本件実用新案登録出願時における拒絶理由通知に対する平成7年3月20日提出の意見書2頁?3頁において、引用例2(請求人提出の甲第2号証の106頁)と比較して次のように主張している。
「上記引用例2には、JISのいわゆる修正角ねじが記載されているが、このねじは、ひっかかりの高さh(ねじ山の高さとほぼ同じである)がピッチpの1/2となっており、・・・この修正角ねじの採用も当然ながら検討したのであるが、協力(注、強力の誤り)な力を受ける埋設管のねじとしては強度的に不十分であり、実用には不適であった。・・・ねじ形状の選択に際しては、その結合力、強度、螺合の容易さ等の要因を検討し、最適なものが選ばれる・・・本願考案は独特のねじ形状を開発することにより、これを解決した」
この意見書において、修正角ねじを検討したが、強力な力を受ける埋設管のねじとして不適であったと述べていることは、修正角ねじのような傾斜面をもったねじでは、強力な力を受けることができないので、本願考案では、傾斜面のない角ねじとし、強力な力を受けることができるようにした(傾斜面を有する修正角ねじに比べ、傾斜面を有さない角ねじのほうが、強力な(軸方向の)力を受けることができるのは自明である)ことを、主張していると考えられる。
請求人の主張がそのような趣旨であるとすれば、本件考案の「断面角型のねじ」は、断面形状が矩形のねじを意味すると、主張していたことになる。

2.イ号物件は、本件考案の構成要件Dの「断面角型のねじ」を充足するか
(1)イ号物件のねじは、「第3」に記載したように、ねじの縦断面形状は、図2(a)、(b)に示すように雌ねじ部Sfのねじ山の両側面は傾斜角度αが18度の傾斜面となっており、雄ねじ部Smのねじ山の両側面は傾斜角度βが16度の傾斜面となっている。つまり、イ号物件のねじは、断面形状がその両側面が傾斜したいわゆる「台形ねじ」の一種であるといえる。
(2)そうすると、イ号物件の「ねじ」は、本件考案の構成要件Dの「断面角型のねじ」、すなわち、断面形状が矩形のねじに相当しないのであって、イ号物件は、少なくとも本件考案の構成要件Dの「断面角型のねじ」を充足しない。
(3)請求人は、請求書において、本件考案の構成要件Dの「断面角型のねじ」とイ号物件の「ねじ」について概ね次のように主張する。
(i) 本件考案の「断面角型のねじ」とは、断面の外形線が直線であるねじのことであり、いわゆる「角ねじ」や「台形ねじ」が広く知られている。本件考案において、「断面角型のねじ」としたのは、「角ねじ」、「台形ねじ」等、外形線が直線である種々のねじを包含するためである、断面台形状のねじは含まれないとすることはできない(請求書3頁)。
(ii) 本件考案における「断面角型のねじ」とは、外形線が本質的に直線である概略四角形のねじを指すのであり、台形もこの中に含まれる。外形線が直線で表される四角形の一種である台形を除外する理由はない(弁駁書2頁)。
しかしながら、明細書においては、先に検討したように、本件考案における「断面角型のねじ」は、断面形状が矩形のねじを意味する用語として用いられていると解されるのであって、請求人主張のように、断面が矩形以外の台形をも含むようには定義されていないのであるから、請求人の主張は採用できない。
(本件考案において「断面角型のねじ」とし、「角ねじ」としなかったのは、矩形断面形状が、ねじ山の高さをh、ピッチをpとすると、6h≦p≦10hの関係を有する断面形状であって、正方形でもなく、また、正方形に近い矩形でもないことから、あえて「断面角型のねじ」と表現したものとも考えられる。)

第5 まとめ

以上のように、イ号物件は、少なくとも本件考案の構成要件Dの「断面角型のねじ」を充足しない。
したがって、本件考案のその余の構成要件について検討するまでもなく、イ号物件は本件考案の技術的範囲に属するとすることはできない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲 イ号説明書

イ号図面及びイ号写真に示すパイプ(以下「イ号パイプ」という)は、鋼管であり、削岩機で穿孔した孔内に埋設され、地盤強化用に使用されるものである。
このイ号パイプPは、外径Dが114.3mmで長さは約3mであり、両端部はパイプ継ぎ足し用の接合部となっていて、その一方の接合部に雌ねじ部Sfが、他方の接合部に雄ねじ部Smがそれぞれ形成されている。 図1に示すパイプおPは、複数のパイプを直列に継ぎ合わせて使用する場合に、パイプ同士の間に配置される中間パイプである。 この他にも、一方の端部にのみねじ部(雄ねじ部又は雌ねじ部)が形成された端部用パイプもある。 端部用パイプは、パイプ列の先端部又は後端部に接続して使用されるものである。
イ号パイプの長手方向中間部には、内外に通じる複数の小孔Hが穿設されている。
イ号パイプのねじ部を有する接合部の長さは82mm(有効ねじ長さはこれよりも短い)であり、そのねじの縦断面形状は、図2(a)、(b)に示すとおりである。 図2(a)は雌ねじ部Sfの断面形状を表すもので、ねじ山の高さhは1.3mm、ピッチpは10mm、ねじ山の長さCは3.6mmの2条ねじである。ねじ山の両側面は傾斜面となっていて、その傾斜角度αは18度である。
また、図2(b)は雄ねじ部Smの断面形状を表すもので、ねじ山の高さhは1.1mm、ピッチpは10mm、谷の長さdは5mmの2条ねじである。ねじ山の両側面は傾斜面となっていて、その傾斜角度βは16度である。

図面及び写真の説明
イ号図面中、図1はイ号パイプの一部を断面で表した正面図、図2はそのねじ部の拡大断面図である。イ号写真は、複数本のイ号パイプを束ねた状態を表す。

判定日 2004-05-20 
出願番号 実願平3-84180 
審決分類 U 1 2・ 0- ZB (E21D)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 山田 忠夫
伊波 猛
登録日 1996-07-15 
登録番号 実用新案登録第2127530号(U2127530) 
考案の名称 地盤強化用パイプ  
代理人 菊池 新一  
代理人 菊地 徹  
代理人 菅原 弘志  
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