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審決分類 審判 全部無効 発明同一 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) F16K
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) F16K
管理番号 1099778
審判番号 無効2002-35050  
総通号数 56 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2004-08-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-02-14 
確定日 2004-06-08 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の登録第2078022号実用新案「ガスコツク」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 訂正を認める。 実用新案登録第2078022号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 一.手続の経緯
本件実用新案登録(以下、「本件登録」という)は、昭和62年7月10日出願の実願昭62-106067号に係り、出願公告(平成6年2月23日、実公平6-7224号)後、実用新案登録異議の申立てがあったが、当該異議の申立てには理由がないとして、平成7年9月4日に設定登録されたものである。この本件登録について、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求めて、平成14年2月14日付で株式会社藤井合金製作所より本件審判が請求されたが、これに対して被請求人より、平成14年7月4日付で、願書に添付した明細書についての訂正請求がされると共に、本件審判の請求は成り立たないとの審決を求める趣旨の答弁がされている。

二.訂正請求の適否
1.訂正の要旨
平成14年7月4日付訂正請求における訂正の要旨は、次のイ?ニのとおりである。
イ、 願書に添付した明細書(以下、「登録時明細書」という)の実用新案登録請求の範囲冒頭で、「流入通路と流出通路」と記載されているのを、「互いの軸線を一致させた流入通路および流出通路」と訂正する。
ロ、 同じく、実用新案登録請求の範囲の「ガス用ゴム管が挿入される突出部」という記載を、「検査用のガス用ゴム管が挿入される突出部」と訂正する。
ハ、 同じく「流出孔を形成し、」という記載を、「検査用の流出孔を形成し、」と訂正する。
ニ、 同じく「この流出孔を遮蔽する閉栓を前記コック本体の突出部に着脱自在に設け、」という記載を、「この流出孔を遮蔽する閉栓を、流出孔にねじ込むことにより前記コック本体の突出部に着脱自在に設け、」と訂正する。
2.訂正事項の検討
(1)訂正の目的
上記イ?ニの訂正事項は、いずれも実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
(2)新規事項の有無
先ず、上記イの訂正事項は、登録時明細書の第5頁第3行?第4行(公告公報第4欄8行?10行参照)及び図面に記載された事項の範囲内において訂正しようとするものと認められる。
次にロ及びハの訂正事項は、同明細書の第11頁第5行?第11行(同公報第6欄24?29行参照)及び図面に記載された事項の範囲内において訂正しようとするものと認められる。
また、上記ニの訂正事項は、同明細書の第9頁第13行?第15行(同公報第5欄45?48行参照)及び図面に記載された事項の範囲内において訂正しようとするものと認められる。
(3)拡張、変更の有無
上記イ?ニの各訂正事項の内容は、その訂正の趣旨からみて、登録時明細書に記載されている考案の目的の範囲を逸脱するところはなく、実用新案登録請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものとはいえない。
(4)訂正事項の適法性と訂正請求の認容
上記(1)?(3)で検討したところによれば、上記各訂正事項は、平成5年法律第26号附則第4条第1項の規定によって、本件に関してなおその効力を有するとされる、同法律第26号による改正前の実用新案法(以下、単に「実用新案法」という)であって、平成11年法律第41号附則第14条で一部改正された、上記法律第26号附則第4条第2項の表下欄のとおりに読み替えるとされる実用新案法第40条第2項の規定に関して、当該読み替え後の実用新案法第40条第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであって、同項柱書き中のただし書きの規定と、同条第5項の規定により準用される実用新案法第39条第2項の規定に適合しているので上記訂正の請求は認容される。

三.請求人の提出した証拠と主張の概要
1.請求人の提出した証拠等
甲第1号証:実願昭51-41252号(実開昭52-132335号)のマイクロフィルム
甲第2号証:実願昭62-11142号(実開昭63-118463号)のマイクロフィルム
甲第3号証:G・Hピアソン「弁の構造」(昭和36年9月10日、日本弁工業会発行)第10?11頁
甲第4号証:実願昭53-85254号(実開昭55-3039号)のマイクロフィルム
甲第5号証:実公昭36-25259号公報
甲第6号証:「都市ガス工業 器具編」(昭和47年3月20日、社団法人日本瓦斯協会発行) 第256頁
甲第7号証:実願昭60-106186号(実開昭62-15664号)のマイクロフィルム
参考文献:実願昭47-57395号(実開昭49-18136号)のマイクロフィルム、
同:特公昭40-20806号公報
2.請求人の主張する無効理由
(1)<無効理由その1>
本件考案は、甲第1号証に記載された考案に基づいて当業者が極めて容易に考案することができたものであり、本件登録は実用新案法第3条第2項の規定に違反して受けたものである。
(2)<無効理由その2>
本件考案と、甲第2号証に係る、実願昭62-11142号(以下、「先願」という)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された考案(以下、「先願考案」という)とを対比すると、実質上相違するところがなく、しかも、本件考案の考案者が先願考案の考案者と同一であるとも、また、本件登録に係る出願時において、その出願人が先願の出願人と同一であるとも認められないので、本件登録は実用新案法第3条の2の規定に違反して受けたものである。

四.被請求人の主張の概要
1.<無効理由その1>に対して
本件考案と甲第1号証記載の考案とを比較すると、甲第1号証記載のガスコックは、第1排出口3(本件考案の流出通路に対応する)と吸入口2(本件考案の流入通路に対応する)の軸線とが直交しており、本件考案のように流入通路と流出通路の軸線を一致させる一般的な開閉式ガスコックの構造と異なるし、甲第1号証には、本件考案におけるような「2つの閉じ状態」を実現して、「元栓からガス器具までの間、ガスコックから上流側,ガスコックから下流側の漏洩をそれぞれ検出できる」ようにすることについての記述もない。
また、「本件考案では、コック本体と一体をなす突出部が、外周に検査用ゴム管を装着する構造と、検査用流出孔を塞ぐための閉栓をねじ込み装着させる構造とを兼ね備えており、」このような特徴構成は、どの証拠にも開示がないから、本件考案が甲第1号証に記載された考案に基づいて当業者が極めて容易に考案することができたものとはいえない。
2.<無効理由その2>に対して
甲第2号証に記載される先願考案は、「流出孔にねじ込まれるプラグを介してガス用ゴム管を流出孔に接続」するもので、本件考案のように「ガス用ゴム管を直接装着できる突出部を備え」るものではないし、「開状態での漏洩検査を開示」するものでもないから、「本件考案と同一でないことは明らか」である。

五.当審の判断
1.本件登録考案の認定
上記二.のとおり、訂正請求が認容されることによって、上記平成14年7月4日付の訂正請求書に添付された訂正明細書を願書に添付した明細書として、本件登録考案の要旨は、当該明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。
「互いの軸線を一致させた流入通路および流出通路とこれらの間に形成された栓挿入孔とを有するコック本体と、このコック本体の栓挿入孔に回動自在に挿入され、回動軸線と直交する方向に貫通するガス通路が形成された栓とを備え、前記ガス通路の両端部が流入通路と前記流出通路とにそれぞれ連通した開状態と、この開状態から正逆方向へそれぞれ所定位置まで回動させることにより、前記ガス通路の両端部が前記栓挿入孔の内周面によって遮蔽されるとともに、前記流入通路と前記流出通路とが前記栓によって遮断された閉状態とに切り換えられるガスコックにおいて、前記コック本体の外面に、外周部に柔軟性を有する検査用のガス用ゴム管が挿入される突出部を一体に形成し、前記コック本体に、一端が前記突出部の先端面に開口するとともに、他端が前記栓挿入孔の内周面に開口し、栓挿入孔の内周面における開口部が閉状態時には前記ガス通路と連通する検査用の流出孔を形成し、この流出孔を遮蔽する閉栓を、流出孔にねじ込むことにより前記コック本体の突出部に着脱自在に設け、前記栓に、一端が前記ガス通路の内面に開口し、他端が栓の外周面に開口し、外周面における開口部が、開状態時には前記流出孔と連通し、閉状態時には前記栓の回動位置に応じて前記流入通路と前記流出通路とのいずれか一方と対向して連通し、他方に対して遮断される連通孔を形成したことを特徴とするガスコック。」(以下、「本件考案」という)

2.<無効理由その1>について
(1)甲第1号証の記載事項(a?f)
甲第1号証には、「三方バルブ」に関して、次のとおりの記載がある。
a 「(1)は中心部に円筒状のバルブ室(1A)が空設されたバルブ本体であって、上記バルブ室(1A)の筒軸を中心として放射状にそれぞれ90°の間隔で吸入口(2)、第1排出口(3)および第2排出口(4)が穿設されている。
なお、上記吸入口(2)にはガス供給源(図示しない)に連通するパイプ(P1)が、第1排出口(3)には燃焼器(図示しない)に連通するパイプ(P2)がそれぞれ螺着されている。」(明細書部分第3頁第1?9行)
b 「(5)はニップル状のホースエンドであって、その基端が上記第2排出口(4)に螺着され、パイプ(P3)を介して圧力計(図示しない)に連通している。」(同第3頁第10?12行)
c 「(7)は上記ゴムパッキン(6)のテーパ面(6A)に対して摺転可能に嵌合された閉子で、その外周面に上記ゴムパッキン(6)のテーパ面(6A)に対応するテーパ面を有し、その中高部位には水平にT字状の切換孔(8)が上記バルブ本体(1)の吸入口(2)、第1排出口(3)および第2排出口(4)に対応して穿設され、また該閉子(7)中央上端には角状の凸部(7B)が突成されている。」(同第4頁第4?11行)
d 「操作レバー(13)の回動操作によって閉子(7)を適宜位置に摺転させる。」(同第6頁第6?8行)
e 「連通の態様には3通りの方法があり、以下その詳細を第3図?第5図にしたがって説明する。
(イ)まず、・・・(第3図参照)、該閉子(7)の切換口(8)は吸入口(2)と第1排出口(3)とのみに連通するため・・・ガス燃焼が可能である。
(ロ)次に、・・・(第4図参照)、該閉子(7)の切換口(8)は吸入口(2)、第1排出口(3)および第2排出口(4)の全ての口に連通するため・・・圧力計へも供給され・・・燃焼時におけるガス圧力の測定が可能である。
(ハ)また、・・・(第5図参照)、該閉子(7)の切換口(8)は吸入口(2)および第1排出口(3)のみに連通するため、燃焼器へのガスの供給が絶たれた状態で燃焼器とバルブ本体間の配管気密検査が可能である。」(同第7頁第2行?第8頁第7行)
f 「しかも第2排出口(4)にはホースエンド(5)が螺着されているため、圧力計等に付属のゴムホースを随時直接挿し込むことができきわめて便利である。」(同第8頁第7?10行)
(2)考案の対比
本件考案の構成事項と甲第1号証の記載事項とを対比すると、甲第1号証記載の「三方バルブ」は、上記a、e等でガス供給やガス圧力に言及しているところから、「ガスコック」とみることができ、したがって、甲第1号証記載の「バルブ本体」は、本件発明における「コック本体」に相当するものといえるし、第3?5図の記載も併せ参酌すると、上記「バルブ本体」に穿設されている「吸入口(2)」及び「第1排出口(3)」は、それぞれ本件考案における「流入通路」及び「流出通路」に相当し、以下同様に、「バルブ室」は「栓挿入孔」に、「摺転可能に嵌合され」る「閉子」は「回動自在に挿入され」る「栓」に、それぞれ相当する。
そして、甲第1号証における上記d及びeの記載と第3?5図の記載からみて、上記の「閉子」は、「回動軸線と直交する方向に貫通するガス通路が形成され」て、当該ガス通路の両端部が、「吸入口(2)」と「第1排出口(3)」とに「それぞれ連通した開状態」と、前記閉子によって「遮断された閉状態」とに切り換えられることが明らかである。
また、甲第1号証の上記fに記載の「圧力計等に付属のゴムホース」は、「柔軟性を有する検査用のガス用ゴム管」といえる。そして、第1図、第3?5図の記載を参酌すると、「ゴムホースを随時直接挿し込むことができ」るホースエンド(5)の「基端」が「螺着」(上記b参照)される部分は、ホースエンドを介して上記ゴムホースを挿入して接続できるようにするために「バルブ本体」の外面に「一体に形成」された「突出部」とみることができるし、当該「突出部」に穿設された「第2排出口(4)」は、「一端が前記突出部の先端面に開口するとともに、他端が前記栓挿入孔(バルブ室)の内周面に開口し、栓挿入孔の内周面における開口部が閉状態(第5図に示される状態)時には前記ガス通路と連通する検査用の流出孔」に相当する。
更に、甲第1号証上記eの内の、「(ロ)」及び「ハ」(第4図及び第5図参照)の記載から、上記「閉子」には、「一端が前記ガス通路の内面に開口し、他端が栓(「閉子」)の外周面に開口し、外周面における開口部が、開状態時(第4図参照)には前記流出孔(「第2排出口」)と連通し、閉状態時(第5図参照)には前記流出通路と対向して連通し、他方(流入通路)に対して遮断される連通孔」が形成されているといえる。
以上の対比関係から、本件考案と甲第1号証記載の考案との一致点及び相違点を次のように認定できる。
<一致点> 「流入通路および流出通路とこれらの間に形成された栓挿入孔とを有するコック本体と、このコック本体の栓挿入孔に回動自在に挿入され、回動軸線と直交する方向に貫通するガス通路が形成された栓とを備え、前記ガス通路の両端部が流入通路と前記流出通路とにそれぞれ連通した開状態と、前記流入通路と前記流出通路とが前記栓によって遮断された閉状態とに切り換えられるガスコックにおいて、前記コック本体の外面に、柔軟性を有する検査用のガス用ゴム管を挿入して接続できるようにするための突出部を形成し、前記コック本体に、一端が前記突出部の先端面に開口するとともに、他端が前記栓挿入孔の内周面に開口し、栓挿入孔の内周面における開口部が閉状態時には前記ガス通路と連通する検査用の流出孔を形成し、前記栓に、一端が前記ガス通路の内面に開口し、他端が栓の外周面に開口し、外周面における開口部が、開状態時には前記流出孔と連通し、閉状態時には前記流出通路と対向して連通し、他方(流入通路)に対して遮断される連通孔を形成したガスコック」といえる点。
<相違点1> 流入通路と流出通路との配置関係が、本件考案では「互いの軸線を一致させた」としているのに対し、甲第1号証記載の考案では「90°の間隔」(互いの軸線が直交する)としている点。
<相違点2> 本件考案における、「開状態から正逆方向へそれぞれ所定位置まで回動させることにより、前記ガス通路の両端部が前記栓挿入孔の内周面によって遮蔽された」閉状態に切り換えられる構成と、「前記栓の回動位置に応じて」連通孔が「前記流入通路」とも「対向して連通」できる構成について、甲第1号証に言及がない点。
<相違点3> 検査用のガス用ゴム管と突出部の接続関係が、本件考案では、ゴム管を突出部の外周部に直接挿入して接続するのに対し、甲第1号証記載の考案では、ホースニップルを介して挿入接続する点。
<相違点4> 本件考案における、「流出孔を遮蔽する閉栓を、流出孔にねじ込むことにより前記コック本体の突出部に着脱自在に設け」る構成について、甲第1号証に言及がない点。
(3)相違点の検討
<相違点1>について
甲第1号証に記載されているような三方バルブにおいては、流入通路と流出通路の配置関係に関して、同号証に示される「90°の間隔」とするものと、本件発明のように「互いの軸線を一致させた」ものとは、いずれも通常採用されている形態であって、一方の形態を他方の形態に変更することは、当業者が必要に応じて容易になしうる設計事項といえる。
<相違点2>について
「開状態から正逆方向へそれぞれ所定位置まで回動させる」ことによって「ガス通路の両端部が前記栓挿入孔の内周面によって遮蔽される」態様や、「前記栓の回動位置に応じて」連通孔が「流入通路」にも「対向して連通」できる態様について、甲第1号証に直接的な明示はないが、甲第3号証第10頁第2.2図や、甲第6号証第172頁第5-5図等に示されるとおり、三方バルブ(三方コック)において、上記のような態様をとれる構成とするのは極めて常識的なことであり、甲第1号証記載の三方バルブについて上記構成を採用することには、全く困難性が認められない。
<相違点3>について
ガス用ゴム管をコックに接続するに際しての、本件考案のようにゴム管を突出部の外周に直接挿入する手段と、甲第1号証記載のようにホースニップルを介して接続する手段とは、いずれも周知の接続手段であって、いずれの接続手段を採用するかは、通常の選択的な設計事項である。
<相違点4>について
弁等に設けた通常使用しない開口や、使用頻度が小さい開口を、「閉栓」を「ねじ込むことにより」遮蔽することは、請求人の挙げた二つの参考文献(実願昭47-57395号(実開昭49-18136号)のマイクロフィルム、特公昭40-20806号公報)にも示されるように当該技術分野において常套手段といえるものであり、甲第1号証記載の、圧力検査に使用される「第2排出口」のように、頻繁に使用する必要がない開口に対して、上記の常套手段を採用することに格別の困難性は認められらない。
(4)相違点の評価と本件考案の作用効果について
以上のとおり、上記いずれの相違点も格別のものとはいえない。
そして、本件明細書の記載によれば、上記相違点で指摘したそれぞれの構成を併せ備える本件考案の作用効果は、
「ガスコック自体の操作によって空気抜き、ガス圧検査および漏洩検査を行うことができ」て、「三方向分岐管を設置する必要がなく、その分コストを低減することができるとともに、作業労力を軽減することができる」、
「ガスの漏洩検査に際しては、元栓からガス器具までの間、ガスコックから上流側およびガスコックから下流側にガスの漏洩があるか否かをそれぞれ検出することができる」、
「ガス圧検査時、あるいは漏洩検査時には、検査器に取り付けられたガス管を突出部に嵌め込むだけで検査器をガスコックに接続することができ」るから、「検査器の接続を容易に取り付けることができる」、
「通常の使用時には、流出孔が閉栓によって遮蔽されるので、流出孔からガスが漏れることはない」、
というものであるが、上記いずれの作用効果も、甲第1号証及びその他の周知技術等を開示した文献の記載から予測しがたいものではない。
(5)<無効理由その1>に対する当審の見解のまとめ
以上のとおり、本件考案は、甲第1号証記載の考案に基づいて、当業者が極めて容易に考案することができたものといえるから、本件登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反して受けたことになる。

3.<無効理由その2>について
(1)甲第2号証の記載事項(g?i)
先願の願書に最初に添付した明細書及び図面を開示している甲第2号証には、「ガスコック」に関する次のとおりの記載がある。
g 「図は本考案の実施例を示し、1はガスコック本体にして、この構成は水平方向にガスが流れるガス流路2を内部に形成し、このガス流路2に対して垂直方向に栓組込テーパ穴3を形成し、更に栓組込テーパ穴3の上方開口部縁4に180°と90°の回転角αとα'の形成用のストッパー5、5'を突設すると共に前記ガス流路2の栓組込テーパ穴3に対して水平直角方向にテスト穴6を分岐して設けて成るものである。
7は前記ガスコック本体1の栓組込テーパ穴3内に垂直に組み込まれた栓にして、この構成は前記ガスコック本体1のガス流路2と同軸に貫通する貫通穴8と、この貫通穴8に対して水平直角方向に分岐した分岐穴9をT字状に設けて成るものである。
10はハンドルにして、このハンドルの構成は下面に前記栓7との結合部11を形成し、水平方向に前記ガスコック本体1の180°回転角α'内に頭部13が位置するストッパーネジ12を挿入し、更に90°回転角α'間に垂直方向から係脱自在にストッパーピン14を取り付けて成るものである。
15は前記ガスコック本体1のテスト穴6を閉塞している閉塞具、16は前記閉塞具15を外ずしたあとにねじ込んで取り付けられるコンセント接続用のプラグである。」(明細書部分第6頁第3行?第7頁第8行)
h 「ガス導管の端末にガスコック本体1を取り付け、このガスコック本体1とガス器具とを鉄管を介して接続したなら、次の方法により漏洩検査とエアーパージを行う。
・ 漏洩検査
(1)下流側の場合
先ず、ハンドル10側のストッパーピン14を90°回転角ストッパー5、5'間から逃がし(第7図)、更にガスコック本体1のテスト穴6から閉塞具15を取り外ずし、ここにプラグ16(テストガス管接続具)を取り付け、このプラグ16にコンセント17を利用して漏洩検査器具(図示せず)を接続する。
次にハンドル10を廻して栓7の貫通穴8とテスト穴6及び分岐穴9と下流側(ガス器具側)を連通し漏洩検査器具から下流側に圧力例えば空気圧をかけ、この降下を調べる(第8図)。
(2)上流側の場合
この場合にはハンドル10を廻して栓7の貫通穴8とテスト穴6、及び分岐穴9と上流側とを連通し、前記下流側と同じ方法により行なう(第9図)。」(同第7頁第10行?第8頁第12行)
i 「上記漏洩検査及びエアーパージが終了したなら、ハンドル10側のストッパーピン14を90°回転角ストッパー5、5'間に係合させ、ハンドル10を90°左又は右に回転することにより栓7の開(第11図)、閉(第5図)を行なう。」(同第9頁第3?8行)
(2)考案の対比
本件考案の構成事項と甲第2号証の記載事項とを対比すると、甲第2号証記載のガスコック本体に形成された「ガス流路2」は、同号証の第5図及び第8?11図等の記載も参酌すると、「互いの軸線を一致させた流入通路および流出通路」を含むものといえるし、同号証記載の「栓組込テーパ穴3」は、本件考案でいう、流入通路と流出通路との間に形成された「栓挿入孔」に相当している。
そして、甲第2号証記載の「栓7」も、ストッパーネジ12やストッパーピン14を取り外した状態では、本件考案の「栓」と同様に、栓組込テーパ穴3に「回動自在」に挿入されることは明らかであり、上記の「栓7」に設けられた「ガス流路2と同軸に貫通する貫通穴8」は、本件考案の「回動軸線と直交する方向に貫通するガス通路」に相当している。また、甲第2号証上記iの記載は、「ガス通路(貫通穴8)の両端部が流入通路と前記流出通路とにそれぞれ連通した開状態と、この開状態から正逆方向へそれぞれ所定位置まで回動させることにより、前記ガス通路の両端部が前記栓挿入孔の内周面によって遮蔽されるとともに、前記流入通路と前記流出通路とが前記栓によって遮断された閉状態とに切り換えられる」状態を開示したものといえる。
また、甲第2号証第5図には、同号証記載のガスコック本体1の外面に、「突出部」といえるものが「一体に形成され」ることが示されているし、同号証上記gでいう「テスト穴6」は、「一端が前記突出部の先端面に開口するとともに、他端が前記栓挿入孔(栓組込テーパ穴3)の内周面に開口し、栓挿入孔の内周面における開口部が閉状態時には前記ガス通路(貫通穴8)と連通する検査用の流出孔」に相当するものであることも示されている。
そして、同号証上記hで、「プラグ16にコンセント17を利用して」漏洩検査器具に接続されるとする部材は、技術常識を勘案すれば、「柔軟性を有する検査用のガス用ゴム管」とみることができるし、同号証上記gで、コンセント接続用のプラグが「前記閉塞具15を外ずしたあとにねじ込んで取り付けられる」とされているところから、「テスト穴6を閉塞している閉塞具」は、「流出孔にねじ込むことにより前記コック本体の突出部に着脱自在に設け」る「閉栓」に相当するといえる。
更に、同号証上記gに記載の「貫通穴8に対して水平直角方向に分岐した分岐穴9」は、上記hの記載も参酌すると、「一端が前記ガス通路(貫通穴8)の内面に開口し、他端が栓の外周面に開口し」、「外周面における開口部が」、「閉状態時には前記栓の回動位置に応じて前記流入通路と前記流出通路とのいずれか一方と対向して連通し、他方に対して遮断される連通孔」といえるものである。
以上の対比関係から、本件考案と先願考案とは、
「互いの軸線を一致させた流入通路および流出通路とこれらの間に形成された栓挿入孔とを有するコック本体と、このコック本体の栓挿入孔に回動自在に挿入され、回動軸線と直交する方向に貫通するガス通路が形成された栓とを備え、前記ガス通路の両端部が流入通路と前記流出通路とにそれぞれ連通した開状態と、この開状態から正逆方向へそれぞれ所定位置まで回動させることにより、前記ガス通路の両端部が前記栓挿入孔の内周面によって遮蔽されるとともに、前記流入通路と前記流出通路とが前記栓によって遮断された閉状態とに切り換えられるガスコックにおいて、前記コック本体の外面に、柔軟性を有する検査用のガス用ゴム管が接続できるようにした突出部を一体に形成し、前記コック本体に、一端が前記突出部の先端面に開口するとともに、他端が前記栓挿入孔の内周面に開口し、栓挿入孔の内周面における開口部が閉状態時には前記ガス通路と連通する検査用の流出孔を形成し、この流出孔を遮蔽する閉栓を、流出孔にねじ込むことにより前記コック本体の突出部に着脱自在に設け、前記栓に、一端が前記ガス通路の内面に開口し、他端が栓の外周面に開口し、外周面における開口部が、閉状態時には前記栓の回動位置に応じて前記流入通路と前記流出通路とのいずれか一方と対向して連通し、他方に対して遮断される連通孔を形成したガスコック」である点では、明らかに一致するといえる。
一方、次の各点では、本件考案と先願考案との間で一応の相違が認められる。
<検査用のガス用ゴム管と突出部の接続関係について、本件考案では、ゴム管を突出部の外周部に直接挿入して接続する構成をとるのに対し、先願考案では、プラグやコンセントを介して接続する構成をとる点>(以下、「一応の相違点1」という)。
<本件考案における「(連通孔が)開状態時には前記流出孔と連通」する構成が、先願明細書又は図面に明確には開示されていない点>(以下、「一応の相違点2」という)。
(3)一応の相違とした点の検討
先ず、上記の一応の相違点1としたところについて検討すると、ガス用ゴム管をコック等の突出部に接続するための構成として、本件考案のようなゴム管を当該突出部の外周に直接挿入する構成と、先願考案のようなプラグやコンセントを介して接続する構成とは、いずれも周知かつ互いに置換可能なものであって、上記の一方の構成を他方の構成に変更することは、単なる周知技術の置換に相当し、実質上の相違点とはいえない。
次に、一応の相違点2としたところについて検討すると、甲第3号証第10頁の第2.2図、甲第6号証第172頁第5-5図等に示されるように、三方コックにおいて「三方開放」の状態をとることは、極く一般的な通常の使用態様である。そして、先願考案に係るガスコックも「三方コック」としての機能をもつことは明らかであり、しかも、既に指摘したように、先願考案における「栓7」も、ストッパーネジ12やストッパーピン14を取り外した状態では、本件考案の「栓」と同様に、栓組込テーパ穴3中に「回動自在」に挿入されるものである以上、先願考案においても上記「三方開放」の状態、即ち、「(連通孔が)開状態時には前記流出孔と連通」する状態を実現できることは自明の事項というべきであって、当該自明の事項が先願明細書等に直接的に明示されていないことをもって、本件考案との間の実質的な相違点とすることはできない。
(4)<無効理由その2>に対する当審の見解のまとめ
以上のとおり、本件考案と先願考案との間で、一応の相違が認められるとした上記の点は、いずれも実質上の相違とはいえないものであるから、本件考案と先願考案とは同一のものとみることができる。
したがって、本件登録は、実用新案法第3条の2の規定に違反して受けたことになる。

4.被請求人の主張について
被請求人は、<無効理由その1>に対して、「本件考案では、コック本体と一体をなす突出部が、外周に検査用ゴム管を装着する構造と、検査用流出孔を塞ぐための閉栓をねじ込み装着させる構造とを兼ね備えており、この特徴は、どの証拠にも開示されていない」こと、また、<無効理由その2>に対して、先願考案は「ガス用ゴム管を直接装着できる突出部を備え」るものではない旨を主張している。
たしかに、「コック本体と一体をなす突出部が、外周に検査用ゴム管を装着する構造と、検査用流出孔を塞ぐための閉栓をねじ込み装着させる構造とを兼ね備え」るようにしたものは、請求人が提出したいずれの証拠にも開示はない。
しかし、上述のとおり、コック本体に「ガス用ゴム管を直接装着できる突出部」を設けること、及び、不使用時の開口を「閉栓」の「ねじ込み」により遮蔽することは、いずれも当該技術分野における周知あるいは常套の手段であるというだけでなく、プラグやコンセント等を介することなくゴム管を直接装着するという接続手段は最も基本的なものであって、これら周知の手段や基本的な手段を併せ採用することによる格別の技術的な意義や作用効果があるともいえないから、被請求人の主張するところを根拠にして、本件考案の公知技術に対する進歩性や先願考案に対する新規性を認定することは妥当とはいえない。

六.むすび
以上のとおり、上記五.で指摘したいずれの無効理由によっても、本件登録は実用新案法第37条第1項第1号に規定されるものに該当し、無効とすべきものである。
また、本件審判に関する費用の負担については、実用新案法第41条の規定によって準用される特許法第169条第2項の規定により、民事訴訟法第61条の規定を準用する。
よって、結論のとおり審決する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
ガスコック
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 互いの軸線を一致させた流入通路および流出通路とこれらの間に形成された栓挿入孔とを有するコック本体と、このコック本体の栓挿入孔に回動自在に挿入され、回動軸線と直交する方向に貫通するガス通路が形成された栓とを備え、前記ガス通路の両端部が流入通路と前記流出通路とにそれぞれ連通した開状態と、この開状態から正逆方向へそれぞれ所定位置まで回動させることにより、前記ガス通路の両端部が前記栓挿入孔の内周面によって遮蔽されるとともに、前記流入通路と前記流出通路とが前記栓によって遮断された閉状態とに切り換えられるガスコックにおいて、前記コック本体の外面に、外周部に柔軟性を有する検査用のガス用ゴム管が挿入される突出部を一体に形成し、前記コック本体に、一端が前記突出部の先端面に開口するとともに、他端が前記栓挿入孔の内周面に開口し、栓挿入孔の内周面における開口部が閉状態時には前記ガス通路と連通する検査用の流出孔を形成し、この流出孔を遮蔽する閉栓を、流出孔にねじ込むことにより前記コック本体の突出部に着脱自在に設け、前記栓に、一端が前記ガス通路の内面に開口し、他端が栓の外周面に開口し、外周面における開口部が、開状態時には前記流出孔と連通し、閉状態時には前記栓の回動位置に応じて前記流入通路と前記流出通路とのいずれか一方と対向して連通し、他方に対して遮断される連通孔を形成したことを特徴とするガスコック。
【考案の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
この考案は、空気抜きあるいは漏洩検査を容易に行うことができるガスコックに関する。
[従来の技術]
最近、ガスの使用器具が1つだけ、例えば給湯器だけであるワンルームマンションが増えつつある。このようなワンルームマンションにおいては、ガスメータと給湯器との間のガス管路にその開閉をするガスコックを設置する以外、それらガスメータと給湯器とを直結している。ところが、ガスメータと給湯器とを直結した場合には、ゴムホースを接続するためのホースコックが設置されないため、従来ホースコックを介して行っていた空気抜き、圧力検査あるいは漏洩検査ができなくなってしまう。
そこで、ガスメータとガス器具との間に、1つの分岐管部に閉栓が着脱自在に取り付けられ、残りの2つの分岐管部がガスメータ側とガス器具側とにそれぞれ接続された三方向分岐管を設置し、閉栓を取り外すことによって空気抜きをし、またその分岐管部に検査機器を取り付けて圧力検査あるいは漏洩検査を行っている。
[考案が解決しようとする問題点]
ところが、三方向分岐管を設置すると、その分だけコストが高騰し、また取り付け作業に手間が掛かるという問題があった。
[考案の目的]
この考案は、上記問題を解決するためになされたもので、三方向分岐管を設置することなく空気抜き、圧力検査および漏洩検査を行うことができ、したがって設備費の低減および労力の軽減を図ることができるガスコックを提供することを目的とする。
[考案の構成]
この考案は、上記の目的を達成するために、流入通路と流出通路とこれらの間に形成された栓挿入孔とを有するコック本体と、このコック本体の栓挿入孔に回動自在に挿入され、回動軸線と直交する方向に貫通するガス通路が形成された栓とを備え、前記ガス通路の両端部が流入通路と前記流出通路とにそれぞれ連通した開状態と、この開状態から正逆方向へそれぞれ所定位置まで回動させることにより、前記ガス通路の両端部が前記栓挿入孔の内周面によって遮蔽されるとともに、前記流入通路と前記流出通路とが前記栓によって遮断された閉状態とに切り換えられるガスコックにおいて、前記コック本体の外面に、外周部に柔軟性を有するガス用ゴム管が挿入される突出部を形成し、前記コック本体に、一端が前記突出部の先端面に開口するとともに、他端が前記栓挿入孔の内周面に開口し、栓挿入孔の内周面における開口部が閉状態時には前記ガス通路と連通する流出孔を形成し、この流出孔を遮蔽する閉栓を前記コック本体に着脱自在に設け、前記栓に、一端が前記ガス通路の内面に開口し、他端が栓の外周面に開口し、外周面における開口部が、開状態時には前記流出孔と連通し、閉状態時には前記栓の回動位置に応じて前記流入通路と前記流出通路とのいずれか一方と対向して連通し、他方に対して遮断される連通孔を形成したことを特徴とするものである。
[実施例]
以下、この考案の一実施例について第1図ないし第11図を参照して説明する。なお、第1図はこの考案に係るガスコックの平断面図であり、第2図はその縦断面図である。
この実施例のガスコックは、コック本体1、栓2およびハンドル3を主な構成要素としている。
第3図ないし第5図に示すように、コック本体1の内部には、それぞれコック本体1の外面に開口する流入通路11および流出通路12が互いの軸線を一致させて形成されている。これら流入通路11と流出通路12との間には、それらの軸線と直交するテーパ孔部(栓挿入孔)13が形成されている。このテーパ孔部13は、栓2のテーパ部21が挿入されるものであり、その寸法は交叉部における通路11,12の寸法より大きくなっている。また、テーパ孔部13の上方のコック本体1には、環状壁部14がその軸線をテーパ孔部13の軸線と一致させて形成されている。この環状壁部の内周には、環状凸部15が形成されており、この環状凸部15には、ほぼ点対称に位置する2つの切欠部16,16がそれぞれ形成されている。また、環状壁部14の上面部は、周方向へほぼ90度の範囲に亙って切り落とされており、これによってハンドル3の回動範囲を規制する規制凹部17が形成されている。
次に、栓2について説明すると、第6図ないし第8図に示すように、栓2はテーパ孔部13に対応したテーパ部21を主体とするものであり、テーパ部21がテーパ孔部13に回動自在に挿入されている。このテーパ部21の内部には、その一側面から他側面まで貫通するガス通路22が形成されている。このガス通路22の寸法は、テーパ孔部13と通路11,12との交叉部における各通路11,12の寸法とほぼ等しくなっており、栓2を回動させて、ガス通路22を各通路11,12と対向させると、各通路11,12がガス通路22を介して連通し、これによって開状態となり、その状態から栓2を正逆方向へほぼ90°回動させると、ガス通路22の両端開口部がテーパ孔部13の内周面によって遮蔽させるとともに、通路11,12が栓2によって遮断され、これによって閉状態となるようになっている。ただし、この実施例では、後述するように、通常の使用時には開状態から閉状態とする場合、一方向へのみ回動可能であり、他方向への回動は係合ボルト5によって阻止されている。また、栓2の上面には、2つの突起23,23がそれぞれ形成されている。
また、ハンドル3は、第9図および第10図に示すように、略円盤状をなすものであり、その下面の周縁部には環状凸部31が形成され、下面の中央部には断面円形の大凸部32が形成されている。そして、環状凸部31と大凸部32との間に形成される環状の空間にコック本体1の環状壁部14が回動自在に挿入されるようになっている。大凸部23の先端面中央部には、小凸部33が形成されている。この小凸部33の先端部外周には、ほぼ点対称に位置する2つの係合突起34,34がそれぞれ形成されている。係合突起34は、その寸法がコック本体1の切欠部16より若干小さく形成されている。したがって、係合突起34は、切欠部16を通って環状凸部15の下側に位置することができ、その状態でハンドル3を回動すると、係合突起34と環状凸部15とが対向し、これによってハンドル3がコック本体1から抜け出るのを阻止するようになっている。また、小凸部33の先端面には、係合凹部35が形成されている。この係合凹部35には、栓2の突起23が嵌まり込み、これによってハンドル3の回動に追随して栓2が回動するようになっている。
なお、ハンドル3と栓2との間には、圧縮コイルばね4が装着されており、このばね4の押圧力によってハンドル3の係合突起34がコック本体1の環状凸部15に押し付けられるとともに、栓2のテーパ部21がコック本体1のテーパ孔部13の内周に押し付けられている。
また、大凸部32には、その外周から内部へ向かって延びるねじ孔36が形成されており、このねじ孔36には、係合ボルト5がねじこまれている。この係合ボルト5の一端部は、大凸部32から突出し、コック本体1の規制凹部17内に入り込むようになっている。そして、係合ボルト5が規制凹部17の一方の側壁部17aに突き当たると、流入通路11と流出通路12とがガス通路22を介して連通して開状態となり、係合ボルト5が規制凹部17の他方の側壁部17bに突き当たると閉状態となる。なお、環状凸部31にもねじ孔36と軸線を一致させたねじ孔37が形成されている。このねじ孔37は、係合ボルト5をねじ孔36にねじ込むために形成されたものであり、係合ボルト5がねじ孔36から抜け出るのを防止するために、ボルト6ねじ込まれている。
ここで、仮にガスコックが上記構成からなるものであると、単なる開閉を行うだけであり、空気抜きあるいは漏洩検査等を行うことができない。そこで、この考案においては、上記構成にさらに次のような構成を付加している。
すなわち、第11図に示すように、コック本体1の外面には、軸線を流入通路11の軸線およびテーパ孔部13の軸線と直交させた突出部18が形成されている。この突出部18は、ガス用ゴム管等の柔軟性を有するガス管Gを嵌め込むためのものであり、十分な抜け防止力と気密性を確保し得るようにその長さが設定されている。また、突出部18の先端面中央部には、その先端面からテーパ孔部13へ至る流出孔19が形成されている。この流出孔19の突出部18側端部には、ねじ孔19aが形成されている。このねじ孔19aには、閉栓7がねじ込まれている。この閉栓7は、突出部18とほぼ同径の頭部71と、脚部72とを有しており、脚部72の先端部にはねじ部72aが形成されている。そして、閉栓7は、そのねじ部72aがねじ孔19aにねじ込まれることによってコック本体1に固定されており、脚部72と流出孔19との間に装着されたOリング73、頭部71と突出部18の先端面との間に装着されたパッキン74、および頭部71の周縁部と突出部18の先端面との接触によって流出孔19の気密性を確保している。
また、栓2の外周面中央部には、外周面からガス通路22へ至る連通孔24が形成されている。この連通孔24は、栓2を開状態にしたときには流出孔19と対向し、栓2を閉状態にしたときには、第1図において2点鎖線で示すように、流出通路12と対向するように配置されている。したがって、栓2を開状態にすると、流入通路11および流出通路12と流出孔19とが、ガス通路22および連通孔24を介して連通することになる。一方、栓2を閉状態にすると、流出通路12と流出孔19とはガス通路22および連通孔24を介して連通するが、流入通路11と流出孔19とは栓2によって遮断されることになる。
上記構成のガスコックにおいて、それが取り付けられたガス管路内の空気抜きを行う場合には、予め閉状態にしておき、閉栓7を流出孔19から取り外す。その後、栓2を回動させて開状態にし、空気を流出孔19から流出させる。適宜時間経過後、閉状態にし、閉栓7を流出孔19に固定して空気抜きを完了する。また、ガス圧検査を行う場合には、閉栓7を取り外した後、ガス圧検査器のゴム管等からなるガス管Gを突出部18に嵌め込む。その後、栓2を開状態になるまで回動させ、ガスコック内部のガスの圧力を連通孔24および流出孔19を介してガス圧検査器に導入し、ガスの圧力を検査する。
さらに、ガスの漏洩検査を行う場合において、元栓からガス器具までの間にガスの漏洩があるか否かを検出する場合には、上記と同様にしてガス圧検査器にガス圧を導入した後、元栓を閉じる。勿論、ガス器具も閉じておく。その状態で所定時間経過させ、所定時間経過前後におけるガス圧の低下が所定値以下であるか否かを検出することにより、ガスの漏洩があるか否かが判る。この場合、ガスコックが開状態にあり、ガス圧検査器元栓からガス器具までの管路全体と連通しているから、元栓からガス器具までの間にガスの漏洩があるか否かが判る。
ガスコックからガス器具までの間にガスの漏洩があるか否かを検出する場合には、栓2を図1において2点鎖線で示す閉状態にする。この閉状態においては、流出孔19が、ガス通路22および連通孔24を介してガスコックからガス器具側の管路(以下、下流側という。)に連通する一方、ガスコックから元栓までの間の管路(以下、上流側という。)に対しては栓2によって遮断される。したがって、上記状態で所定時間経過させ、所定時間経過前後におけるガス圧の低下が所定値以下であるか否かを検出することにより、下流側にガスの漏洩があるか否かを検出することができる。
ガスコックから元栓までの上流側にガスの漏洩があるか否かを検出する場合には、栓2を第1図において2点鎖線で示す状態から180°回動させ、上記とは別の閉状態にする。このようにした場合には、流出孔19が、ガス通路22および連通孔24を介して上流側に連通する一方、下流側に対しては栓2によって遮断される。したがって、その状態で所定時間経過前後におけるガス圧の低下が所定値以下であるか否かを検出することにより、上流側にガスの漏洩があるか否かを検出することができる。
なお、栓2を第1図において2点鎖線で示す状態から180°回動させる場合には、ハンドル3の回動が規制されないよう、係合ボルト5をハンドル3から取り外しておく。
このように、この考案のガスコックにおいては、元栓からガス器具までの間、元栓からガスコックまでの上流側、およびガスコックからガス器具までの下流側にガスの漏洩があるか否かをそれぞれ検出することができる。
また、第12図はこの考案の他の実施例を示すものであり、この図に示すガスコックは、流出孔19の中途部にテーパ孔状をなすシール孔部19bを形成する一方、シール孔部19bに対応したシール部81を有するシールボルト8をねじ孔部19aにねじ込むことにより、流出孔19の気密性をより一層向上させたものである。
なお、上記の実施例においては、通常の使用の際の開状態時に連通孔24を流出孔19と対向させているが、通常の使用の際の開状態時には連通孔24を流出孔19と180°逆側を向かせておき、空気抜き、漏洩検査等を行う場合にのみ回動範囲の規制を解除し、栓体2を180°回動させて開状態にすることにより、連通孔24を流出孔19と対向させるようにすることもできる。
[考案の効果]
以上説明したように、この考案のガスコックによれば、コック本体の外面にガス管が接続される突出部を形成するとともに、この突出部の先端面から栓挿入孔に至り、閉状態時にはガス通路の一端開口部と連通する流出孔をコック本体に形成し、栓に一端がガス通路に開口し、他端が栓の外周面に開口し、開状態時には栓の外周面における開口部が流出孔と連通し、閉状態時には流入路と流出路とのいずれか一方と連通する連通孔を形成したものであるから、ガスコック自体の操作によって空気抜き、ガス圧検査および漏洩検査を行うことができる。したがって、三方向分岐管を設置する必要がなく、その分コストを低減することができるとともに、作業労力を軽減することができる。しかも、ガスの漏洩検査に際しては、元栓からガス器具までの間、ガスコックから上流側およびガスコックから下流側にガスの漏洩があるか否かをそれぞれ検出することができる。さらに、ガス圧検査時、あるいは漏洩検査時には、検査器に取り付けられたガス管を突出部に嵌め込むだけで検査器をガスコックに接続することができ、したがって検査器の接続を容易に取り付けることができる等の効果が得られる。なお、ガスコックの通常の使用時には、流出孔が閉栓によって遮蔽されるので、流出孔からガスが漏れることはない。
【図面の簡単な説明】
第1図ないし第11図はこの考案の一実施例を示し、第1図はその平断面図、第2図はその縦断面図、第3図ないし第5図はコック本体を示し、第3図はその縦断面図、第4図はその平面図、第5図はその平断面図、第6図ないし第8図は栓を示し、第6図はその縦断面図、第7図はその側面図、第8図はその平面図、第9図および第10図はハンドルを示し、第9図はその縦断面図、第10図は第9図のX矢視図、第11図は第1図の要部の拡大図、第12図はこの考案の他の実施例を示す拡大平断面図である。
1……コック本体、2……栓、7……閉栓、11……流入通路、12……流出通路、13……テーパ孔部(栓挿入孔)、18……突出部、19……流出孔、22……ガス通路、24……連通孔。
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2002-10-28 
出願番号 実願昭62-106067 
審決分類 U 1 112・ 161- ZA (F16K)
U 1 112・ 121- ZA (F16K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 浅野 長彦  
特許庁審判長 神崎 潔
特許庁審判官 ぬで島 慎二
蓑輪 安夫
登録日 1995-09-04 
登録番号 実用新案登録第2078022号(U2078022) 
考案の名称 ガスコツク  
代理人 渡辺 昇  
代理人 宮崎 栄二  
代理人 原田 三十義  
代理人 原田 三十義  
代理人 渡辺 昇  
代理人 園田 敏雄  
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