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審決分類 審判 全部無効   B65D
管理番号 1102931
審判番号 無効2004-35013  
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2004-10-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-01-08 
確定日 2004-08-16 
事件の表示 上記当事者間の登録第1412281号実用新案「包装用皿状容器」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
登録第1412281号実用新案の実用新案登録は、昭和51年9月20日に出願され、昭和56年4月28日に出願公告された後、昭和56年12月25日にその設定登録なされ、平成3年4月28日に存続期間が満了している。
これに対して、平成16年1月9日付けで、審判請求人鈴木健夫より、実用新案登録無効審判の請求がなされ、被請求人に対して期間を指定して答弁の機会を与えたが、被請求人からは何らの答弁はなされていない。
そこで、以下、請求人の主張の是非について検討する。

2.審判請求の理由の概要
請求人は、本件登録実用新案に係る明細書(以下、「本件明細書」という。)及び図面(以下、「本件図面」という。)の記載事項を立証するために、
甲第1号証として、実公昭56-18169号公報、
を提出し、甲第1号証によれば、本件図面第4図に、先端が巻き込まれた形のトレーが記載されており、同トレーは製造することができない旨主張し、従って、本件登録実用新案に係る考案は、希望的事項を羅列したものであり、特許法第29条第1項柱書きにいう、産業上利用することができる発明に該当しないもの(実用新案法第3条第1項柱書きにいう産業上利用することができる考案に該当しないものの誤記と認める。)であるから、無効とすべき旨主張している。
さらに請求人は、後日、
甲第2号証として、鈴木健夫宛の「相談について(回答)」と表題される書面(大阪府立産業技術総合研究所作成)及び「相談内容」と表題される書面(鈴木健夫作成)
を提出して、甲第1号証に記載されるトレーの端部を作成できない旨述べるとともに、
甲第3号証として、「訴状」
を提出して、大阪府立産業技術総合研究所作成の文書の入手が遅れた旨を述べている。

3.当審の判断
登録第1412281号実用新案の実用新案登録に係る考案(以下、「本件考案」という。)の構成に欠くことのできない事項を記載する本件明細書の実用新案登録請求の範囲には、
「プラスチツクシート乃至フイルムを圧空、真空成型してなる容器において、容器の底面に左右両端部付近にわたる突条又は凹溝条の複数のリブを適間隔をおいて配し、該リブ間の底面には凹溝又は突条に形成した略V形を複数個一列に配列したV形列を形成し、かつ該V形列は底面全体に複数列形成してなる、容器上周縁に外下側に巻込んだ形態の耳部を有し側面四隅部に補強縦筋を有した包装用皿状容器。」
と記載されているので、本件考案は、構成の一部として、請求人が指摘するとおり、「容器上周縁に外下側に巻込んだ形態の耳部」を有するものとして記載されている。
さらに、本件明細書の第3欄第16?20行に、「次いで第4図に示す如く、この垂下縁片部10’を適宜カール機によつて曲折内方に巻込ませて・・丸みのある耳部10を形成するものである。」と記載されることから、請求人が主張するように第4図の記載は、本件考案の容器の耳部を説明するものである。
そこで、請求人が主張する第4図に示される先端が巻き込まれた「耳部」の形状の製作の可能性を検討する前に、本件考案について検討を加えると、本件明細書は、従来技術の問題点として、同第1欄第32行?第2欄24行に、「従来一般にミートトレイ(通称)等皿状容器を用いたパック製品の包装作業は自動化したラインシステムで行われている。・・この際上記フィルムを包着させる時には、・・全体を下方にたわみ折るような圧力が加わる。この為に・・フイルムが破体するか容器がつぶれ或いは折れる等損傷するかいずれにしても包装不全を引起しやすい・・その結果包装製品の内かなりの量のものが損傷してしまっており、資材、労力等かなりの損失が生じているのである。一方、フィルム包着の際・・容器の上縁端特に四隅上縁端でフィルムを切つてしまうことがあった。」と記載し、皿状容器を用いた包装作業時に発生する皿状容器の問題点をあげ、考案の目的として、同第2欄25行?第3欄第1行「本考案は・・容器自体の強度が大となり、・・フィルム、容器共に損傷を起すことがないような効果を奏するようにし、・・スタッキング防止を果すようにすることを目的としてなしたものであり、この為に所定構成の容器の上周縁耳部を外下方に巻込んで成型した容器を提供せんとするものである。」とその目的を記載している。
さらに、同第3欄第21行?第4欄第32行に、「以上のように構成してなる容器によれば、第2図に示す如く、・・上下方向加圧A、及び・・変形加圧Bのいずれに対しても、耳部10の丸みのある巻込形が強固な保形力を発揮して容器全体を保形保持し、更に加圧Aに対しては縦条8,8……が強固に対抗して、・・変形加圧Bに対してはV字形凹溝5群と突条7……との保形力が強固に対抗して容器全体の破折等損傷を防止する。
・・容器全体が非常に破折し難い強固なものとなるのである。
一方、上記耳部10は第5図に示す如く、容器複数枚の積合せた際、丸い耳部同志が重なり合う為・・スタッキング防止を完遂する。
・・
以上のようにして本考案によれば、構造的に損傷し難い容器を提供することができ、かつ容器が強度大であるので、包装作業においてフィルム自体と容器自体の強度を勘案しつつフィルムの張りを微調整する必要もなく、・・両者共に損傷を生じさせるおそれが僅少になる。又スタッキングが完全に防止されるので、・・生産性向上に大きく寄与する。
更に、・・本考案では耳部が丸く巻込んであるので当りはやわらかく、上記欠点を皆無にし安全性を高める。」と考案の作用効果が記載されている。
従って、本件考案は、包装用皿状容器に係る考案であって、その提案される形状・構造の一部である「容器上周縁に外下側に巻込んだ形態の耳部」を含めて、その製造方法はさておき、記載される「耳部」の形状であれば、実用新案登録請求の範囲に記載された「包装用皿状容器」が、従来の皿状容器を用いて包装作業等を行う場合の問題点を解決し、上記目的を達成する上記の作用効果を奏することは、「包装用皿状容器」としての物品の形状・構造に係る考案として、明細書記載の作用効果を奏することは明らかであり、「包装用皿状容器」としての物品の形状、構造に係る考案がその範囲においては、目的を達成するための構成が、所期の目的を達成しうる形状・構造を開示することにより、実施可能に記載されているのであるから、単なる願望の開示とすることも、実施不能とすることもできない。
また、請求人が指摘する図面に記載される形状は、物品として存在し得ない形状とは認められない。
次に、請求人が主張する「耳部」の製造方法について検討する。まず、本件考案は、上記のとおり、製造された容器を用いて包装作業等を行う場合の問題点を解決する「包装用皿状容器」の形状・構造に係る考案であって、容器の製造方法に係る考案ではない。したがって、明細書に記載される形状構造のものが所期の目的を達成するものであれば、その製造が不可能でない限り、実用新案法第3条柱書きにいう「産業上利用することができる考案」に該当しないとすることはできない。一般に、経済的に量産することの願望を抱くことは当業者にとって当然の事項であるとしても、例えそれが、1品毎の手作業による製造によるとしても、その物品の形状・構造が物品として存在し得るものであれば、製造を不能とすることはできず、その製造が新たな製造方法の提案がない限り、コスト適に問題があり、歩留まりに問題があり、製造工程の煩雑さ等に問題があるとしても、それら問題点を解決する製造方法の提案は、本件考案とは別異の発明・考案を構成するとしても、その提案がないことをもって、産業上利用することができる考案ではないとすることはできず、その考案の物品を経済的に製造できる方法がなくとも、一応製造することができるものであれば、物品の形状構造に係る考案として完成しているというべきである。
その範囲においては、本件図面第4図の「耳部」の製造方法として、本件明細書第3欄第14?20行に記載される「然して、上記容器は第3図に示す如く、その上周縁を外側下方に曲折垂下させ、この垂下縁片部10′が十分な長さとなるように当初成型しておき、次いで第4図に示す如く、この垂下緑片部10′を適宜カール機によって曲折内方に巻込ませて容器周側面3の上縁外側に丸みのある耳部10を形成するものである。」と記載され第1図には隅部はアールを有するものであるので、巻込むための長さを有するものをカール機により巻込ませれば、実施可能というべきものである。
なお、請求人が提出した甲第2号証に記載される「トレー容器の端部は、研究所が有する装置では製作できない」なる回答は、実用新案法が規定する、物品の形状・構造等に係る考案についての「産業上利用することができる」なる事項を前提とした判断を記載するものとは認められないので、甲第2号証をみても請求人の主張は、採用できない。

4.むすび
以上説示の通り、請求人の主張は、採用できない。
また、他に、本件実用新案登録を無効とすべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2004-06-07 
結審通知日 2004-06-08 
審決日 2004-07-05 
出願番号 実願昭51-126274 
審決分類 U 1 113・ 14- Y (B65D)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 山口 允彦  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 溝渕 良一
山崎 豊
登録日 1981-12-25 
登録番号 実用新案登録第1412281号(U1412281) 
考案の名称 包装用皿状容器  

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