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審決分類 |
審判 E04D |
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管理番号 | 1106049 |
審判番号 | 無効2004-40001 |
総通号数 | 60 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2004-12-24 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2004-03-29 |
確定日 | 2004-10-18 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第3091833号実用新案「外断熱用の屋上防水層多重脱気構造とこれに用いる脱気筒。」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 実用新案登録第3091833号の請求項3に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 (1-1)本件実用新案登録第3091833号の請求項1ないし7に係る考案(以下、「本件考案1」等という。)は平成14年8月1日に出願され、その実用新案登録は平成14年11月20日にその設定登録がなされた。 (1-2)これに対して、請求人は、本件考案1、2、5及び6が甲第1号証記載の考案であり、本件考案3が甲第2号証記載の考案であり、本件考案4が甲第1、3号証記載の考案に基いて当業者が容易に考案をすることができたものであり、本件考案7が甲第1、4号証記載の考案に基いて当業者が容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第1項第3号または同条第2項の規定により、実用新案登録を受けることができないものである、さらに、本件考案1ないし7が、被請求人の出願(甲第5号証参照)に係る発明と同一であるから、実用新案法第7条第3項の規定により実用新案登録を受けることができないものであると主張している。 (1-3)一方、被請求人は、平成16年6月8日付けの実用新案登録請求書において、本件請求項1、2、4ないし7を削除し、同日付けの答弁書において、本件考案3は、甲第2号証記載の考案ではなく、甲第5号証に係る発明と同一でもない旨の主張をしている。 (1-4)次いで、請求人は、弁駁書において、本件考案3は、甲第2号証記載の考案であり、甲第5号証に係る発明と同一である旨の主張をしている。 2.本件考案3 本件請求項1、2、4ないし7を削除する訂正は、平成16年8月10日に登録され、本件は、請求項3に係る考案(本件考案3)のみが登録されたものとみなされるので、以下、本件考案3について検討する。 本件考案3は、請求項1を引用した請求項3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】屋上の下地コンクリートと、屋上の下地コンクリート上に積層される複数の被覆層と、屋上の下地コンクリートとこれに接する被覆層との間および互いに接する各被覆層の間にそれぞれ連通して水分、ガスその他を大気中に放散する脱気装置とを具え、前記脱気装置は、屋上の下地コンクリートとこれに接する被覆層との間に連通する第1脱気手段と、互いに接する各被覆層の間に連通する第2脱気手段と、前記両脱気手段の雨カバーとからなることを特徴とする外断熱用の屋上防水層多重脱気構造。 【請求項3】請求項1において、屋上の下地コンクリート上に積層される複数の被覆層は、屋上の下地コンクリート上面に設置される第1および第2の防水層であり、脱気装置の第1脱気手段は両端開口する内筒体と前記内筒体の一方開口端の外周縁に形成された支持基板とからなり、脱気装置の第2脱気手段は両端開口して前記内筒体を遊嵌できる外筒体とこの外筒体の一方開口端の外周縁に形成された支持基板とからなり、前記両脱気手段の雨カバーは外筒体の上端開口部に所定の間隙を有して被冠される一端が開口する筒状キャップからなり、第1脱気手段はその支持基板を屋上の下地コンクリート上面に固定し、下地と第1防水層との間に発生する水蒸気その他のガスを前記内筒体に誘導して筒状キャップを介して排気するとともに、第2脱気手段はその支持基板を防水層下面に固定し、第1防水層上面と第2防水層下面との間に発生する水蒸気その他のガスを前記外筒体に誘導して筒状キャップを介して排気するようにしたことを特徴とする外断熱用の屋上防水層多重脱気構造。」 3.甲第2号証記載の考案 請求人の提出した実公平6-8181号公報(甲第2号証)には第8図とともに次の事項が記載されている。 「(従来の技術) 一般に下地に防水シートを敷設する場合、日射等の環境温度によって下地に含まれる水分が蒸発し、水蒸気となって防水シートに膨れを生ぜしめる。 この膨れは直接、防水機能に関係はないとは云え、建築物の美観を損なうのみならず、防水シートの接着性能の低下を誘発し,あるいは膨れの伸縮により防水層の劣化を促進させていた。 そこで,従来、かかる防水シートの膨れを防止すべく、不織布あるいは連続気泡の発泡プラスチック体を用いて下地と防水シートの端末や脱気用装置に連絡し、防水シートと下地間に内存する気体を外部に排出することが行われていた。 なかでも、上記脱気用装置を防水シートに連絡させる構造はよく用いられるところであり、第8図に示すように筒状体(14)の円盤体(15)を下地(16)に設置すると共に筒状体(14)を脱気シート付の防水シート(17)に貫通させてこの上に脱気筒(18)を設置し、その上部にキャップ(19)を被せて外部からの雨水の進入を防止する構造からなっている。」(2欄9行ないし3欄13行)、 また、第8図によれば、防水シート(17)上に最外層を積層することが記載されている。 上記記載によれば、甲第2号証には、次の考案が記載されていると認められる。 「下地16と、下地16上に積層される複数の被覆層と、下地16とこれに接する被覆層との間および互いに接する各被覆層の間にそれぞれ連通して水分、ガスその他を大気中に放散する脱気用装置とを具え、前記脱気用装置は、下地16とこれに接する被覆層との間に連通する筒状体14と、互いに接する各被覆層の間に連通する脱気筒18と、前記両脱気手段のキャップ19とからなる防水層脱気構造において、下地16上に積層される複数の被覆層は、下地16上面に設置される防水シート17及びその上方に積層された最外層であり、脱気用装置の筒状体14は両端開口する内筒体と前記内筒体の一方開口端の外周縁に形成された円盤体15とからなり、脱気用装置の脱気筒18は両端開口して前記内筒体を遊嵌できる外筒体とこの外筒体の一方開口端の外周縁に形成された円盤体とからなり、前記筒状体14及び脱気筒18のキャップ19は外筒体の上端開口部に所定の間隙を有して被冠される一端が開口する筒状キャップからなり、筒状体14はその円盤体15を下地16上面に固定し、下地と防水シート17との間に発生する水蒸気その他のガスを前記内筒体に誘導して筒状キャップを介して排気するとともに、脱気筒18はその円盤体を最外層下面に固定し、防水シート17上面と最外層下面との間に発生する水蒸気その他のガスを前記外筒体に誘導して筒状キャップを介して排気するようにした防水層脱気構造。」 4.当審の判断 本件考案3と甲第2号証記載の考案とを対比すると、甲第2号証記載の考案の「下地16」、「脱気用装置」、「筒状体14」、「円盤体」、「脱気筒18」、「キャップ19」、「防水シート17」が本件考案3の「下地コンクリート」、「脱気装置」、「第1脱気手段」、「支持基盤」、「第2脱気手段」、「雨カバー」、「第1の防水層、第1防水層」にそれぞれ相当し、本件考案3の「第2の防水層」は最外層といえ、甲第2号証記載の考案の下地は屋上のものであることは技術常識であるから、両者は、 「屋上の下地コンクリートと、屋上の下地コンクリート上に積層される複数の被覆層と、屋上の下地コンクリートとこれに接する被覆層との間および互いに接する各被覆層の間にそれぞれ連通して水分、ガスその他を大気中に放散する脱気装置とを具え、前記脱気装置は、屋上の下地コンクリートとこれに接する被覆層との間に連通する第1脱気手段と、互いに接する各被覆層の間に連通する第2脱気手段と、前記両脱気手段の雨カバーとからなる屋上防水層脱気構造において、屋上の下地コンクリート上に積層される複数の被覆層は、屋上の下地コンクリート上面に設置される第1の防水層及び最外層であり、脱気装置の第1脱気手段は両端開口する内筒体と前記内筒体の一方開口端の外周縁に形成された支持基板とからなり、脱気装置の第2脱気手段は両端開口して前記内筒体を遊嵌できる外筒体とこの外筒体の一方開口端の外周縁に形成された支持基板とからなり、前記両脱気手段の雨カバーは外筒体の上端開口部に所定の間隙を有して被冠される一端が開口する筒状キャップからなり、第1脱気手段はその支持基板を屋上の下地コンクリート上面に固定し、下地と第1防水層との間に発生する水蒸気その他のガスを前記内筒体に誘導して筒状キャップを介して排気するとともに、第2脱気手段はその支持基板を最外層下面に固定し、第1防水層上面と最外層下面との間に発生する水蒸気その他のガスを前記外筒体に誘導して筒状キャップを介して排気するようにした屋上防水層脱気構造。」である点で一致するが、次の各点で一応相違する。 (相違点1) 本件考案3は、最外層が第2の防水層であり、結果として防水層脱気構造が防水層多重脱気構造となっているのに対し、甲第2号証にはこの点が明確には記載されていない点。 (相違点2) 本件考案3が、外断熱用の防水層脱気構造であるのに対し、甲第2号証記載の考案は、外断熱用との限定のない点。 上記相違点1について検討する。被請求人は「甲第2号証の第8図に開示されるものにあっては、脱気は、下地16上面と防水シート17下面との間および防水シート17上面と防水層保護層下面との間の脱気をなすように構成されている。・・・実際に、第8図では脱気筒18の基部は防水シート17と防水層保護層(と思われる)との間に設定されているのであり、」(答弁書3頁18ないし25行)と主張する。確かに、甲第2号証には、防水シート17及びその上方に積層された最外層(防水層保護層)が、防水層であるとの直接的な記載はないが、この最外層がなかった場合、脱気筒10の支持基盤の外周と防水シート17との境目から雨水がしみこむこととなるから、この最外層は技術常識からみて防水シート17の防水機能をより確実にするために更に積層したものと考えられ、また、実願昭58-72729号(実開昭59-177623号)のマイクロフィルムなどにみられるように、屋上防水層脱気構造において最外層を防水層とすることは周知であり、被請求人も自認しているように(答弁書3頁15ないし17行)防水層を複数設けることは慣用されていることであるから、甲第2号証記載の考案は、その最外層は特別の事情がない限り防水層であり、結果として防水層多重脱気構造と認められる。 次に、上記相違点2について検討すると、本件考案3と同様の屋上防水層脱気構造において、外断熱構造とすることは、前記実願昭58-72729号(実開昭59-177623号)のマイクロフィルムに、第3図断熱材9、及び、同明細書5頁8ないし12行「・・・近時多く用いられる断熱防水層・・・」として記載されているように周知慣用のことであるから、甲第2号証記載の考案の防水層脱気構造を本件考案3のように外断熱用とすることは、単なる設計的事項にすぎない。 したがって、本件考案3は、実質的に甲第2号証に記載された考案である。 5.むすび 以上のとおり、本件考案3は、甲第2号証に記載された考案であるから、実用新案法第3条第1項第3号に該当し、本件実用新案登録は、他の無効理由を検討するまでもなく、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定において準用する特許法第169条第2項の規定において更に準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-08-25 |
結審通知日 | 2004-08-26 |
審決日 | 2004-09-07 |
出願番号 | 実願2002-4811(U2002-4811) |
審決分類 |
U
1
111・
113-
ZA
(E04D)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
木原 裕 |
特許庁審判官 |
田中 弘満 山田 忠夫 |
登録日 | 2002-11-20 |
登録番号 | 実用新案登録第3091833号(U3091833) |
考案の名称 | 外断熱用の屋上防水層多重脱気構造とこれに用いる脱気筒。 |
代理人 | 藤谷 史朗 |
代理人 | 杉村 興作 |
代理人 | 大内 康一 |
代理人 | 徳永 博 |