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審決分類 審判    B43K
管理番号 1106050
審判番号 無効2003-40016  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2004-12-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-10-22 
確定日 2004-10-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第3095777号実用新案「シャープペンシルの芯ケース」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第3095777号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続きの経緯

本件登録第3095777号実用新案の請求項1に係る考案は、平成15年2月7日に実用新案登録出願され、平成15年5月28日にその実用新案権の設定の登録がなされたものである。
これに対して、平成15年10月22日付けで株式会社トンボ鉛筆より無効審判の請求がなされ、被請求人海健企業股扮有限公司に審判請求書副本を送達し、答弁書提出の機会を与えたところ、被請求人からは何らの応答もなかったものである。

2.本件考案

本件登録第3095777号実用新案の請求項1に係る考案は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】主に外ケース体、内ケース体、上蓋により構成し、
該外ケース体側面には、弧状スライドレール、ガイドスリットを形成し、側面には長孔を設置し、
該内ケース体は該外ケース体内に収容し、内部はシャープペンシルの芯収容室を形成し、シャープペンシルの芯を収容し、該内ケース体外側面の適当な位置には可動接続ブロックを設置し、該可動接続ブロックは該外ケース体のガイドスリットに対応して摺動可能に嵌合し、別に該内ケース体の側面にはプッシュブロックを設け、該プッシュブロックは該外ケース体側面の長孔に対応し、
該上蓋は、該内ケース体と可動接続して該外ケース体上に蓋合するべく、該上蓋側面の適当な位置には突起ブロックを設置し、該突起ブロックは該外ケース体の弧状スライドレール中に対応して摺動可能に嵌合し、さらに該上蓋下方には可動接続孔を設けて該内ケース体の可動接続ブロックに対応して摺動可能に嵌合し、
上記構造においてシャープペンシルの芯を取り出す時には、指で該内ケース体のプッシュブロックを上向きに押して該内ケース体及び該上蓋を上方へと動かし、該上蓋は該突起ブロックにより該外ケース体の弧状スライドレールに沿って開き、この時、該芯の上端は外部へと露出し、使用者は非常に便利に該芯を取り出すことができるようにしたことを特徴とするシャープペンシルの芯ケース。」

3.請求人の主張

審判請求人は「実用新案登録第3095777号の請求項1に係る実用新案登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由として、本件請求項1に係る考案は、本件の出願前に頒布された刊行物に記載された考案に基づいて、当業者が極めて容易に考案することができたものであるから、本件考案の登録は実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、実用新案法第37条第1項第2号の規定により無効とすべきである旨主張し、その主張を立証すべく、下記の甲第1号証乃至甲第4号証を提出している。
・甲第1号証:特開平10-272885号公報
・甲第2号証:実用新案登録第2576938号公報(公開日 1995.3.28)
・甲第3号証:実開平3-93197号公報
・甲第4号証:実用新案登録第2556277号公報(公開日 1992.12.16)

4.当審の判断

(1)甲第1号証及び甲第2号証に記載された事項
甲第1号証(特開平10-272885号公報、以下「引用例1」という。)は、シャープペンシル芯用容器に関するものであり、図面と共に以下の記載がある。
a.「【請求項1】容器カバーの一面に、直線ガイド溝を先後方向に設けるとともに、その後端近傍においては前記直線ガイド溝に対して略平行となるとともに、先端近傍においては同じく略垂直となるよう屈曲してなる開閉ガイド溝を設け、容器本体に設けられた係合突起が蓋体の突出部に設けられた貫通孔を介して直線ガイド溝に移動自在に嵌合し、且つ、蓋体の突出部に設けられた開閉支持突起が前記開閉ガイド溝に移動自在に嵌合してなるシャープペンシル芯用容器。」(特許請求の範囲)
b.「【従来の技術】従来、略長方体形状のシャープペンシルの芯の保管容器においては、収容される鉛芯の取出しのために、最小面が開放されるように構成されていた。...他の構成として、容器の外側に突出して形成された操作部材と蓋体とを連通する構成もあり、その場合その操作部材を操作して蓋体の開閉を行っていた。」(【0002】欄)
c.「【発明が解決しようとする課題】...容器の外部に突出した操作部材を操作して蓋体の開閉操作を行う構成の場合には、その操作部材が小さくて操作し難いというだけでなく、逆にその操作部材が容器から突出していることによって、他の物に引っ掛かったりあるいは多数個の梱包等に無駄が生じたりする等の欠点があった。」(【0003】欄)
d.「シャープペンシル芯用容器(1)は容器本体(2)と蓋体(3)と容器カバー(4)からなる。そして、容器本体(2)は略長方体であって、先端部は開放口(5)となるとともに、その両側に対向する幅広の面の内、容器カバー(4)と重合する面の先端側には、蓋体(3)に設けられた突出部(6)の摺動する突出部摺動段差部(7)が設けられ、又、その対向面の先端側には、蓋体端部(8)の摺動する蓋体端部摺動段差部(9)が設けられる。又、容器本体(2)の蓋体端部摺動段差部(9)を有する面上には、同段差部(9)の後方に滑り止め(10)が設けられるとともに、突出部摺動段差部(7)内の側端部には外側へ向けて突出する係合突起(11)が設けられる。...蓋体(3)の突出部(6)は蓋体端部(8)よりも後端側へより突出している。一方、蓋体(3)の一側面は、前述した蓋体端部(8)を構成し、この蓋体端部(8)の後端は、前記蓋体端部摺動段差部(9)の後端の曲線と重合するように斜めに下降する曲線に形成され、又、その蓋体端部(8)に対向する面は、前述した突出部(6)を構成し、この突出部(6)の後端は蓋体端部(8)の後端に形成される曲線とは逆方向に傾斜して形成されるとともに、その後端近傍には、突出部摺動段差部(7)内に設けられた係合突起(11)が貫通できる貫通孔(12)が、又、その貫通孔(12)の略中央側斜め先端側には外側へ向けて突出する開閉支持突起(13)が設けられる。容器カバー(4)は断面略コ字形状に形成され、そのコ字形状の背面部分に容器本体(2)の幅広の面が重合し、この重合面の先端側側端部には縦方向に有底の直線ガイド溝(14)が設けられ、その直線ガイド溝(14)の略中央側斜め先端側には、直線ガイド溝(14)とは反対側へ屈曲する有底の開閉ガイド溝(15)が設けられる。そして、この開閉ガイド溝(15)はその後端側から、平行部(16)・斜部(17)・垂直部(18)となるよう屈曲している。」(【0007】欄)
e.「シャープペンシル芯用容器(1)は以上の構成を具えるので、容器本体(2)の突出部摺動段差部(7)及び蓋体端部摺動段差部(9)にそれぞれ蓋体(3)の突出部(6)及び蓋体端部(8)を重合させて、容器本体(2)と蓋体(3)とを係合し、その際、突出部(6)内の貫通孔(12)に...係合突起(11)を貫通させ、更に、その係合突起(11)を容器カバー(4)の直線ガイド溝(14)に嵌合させる。同時に、突出部(6)に設けられた開閉支持突起(13)を容器カバー(4)の開閉ガイド溝(15)に嵌合させる。なお、容器本体(2)に対して蓋体(3)が重合した状態、すなわち容器本体(2)が蓋体(3)によって蓋をされた状態で、貫通孔(12)を貫通した係合突起(11)が直線ガイド溝(14)の後端に、又、開閉支持突起(13)が開閉ガイド溝(15)の平行部(16)の後端にそれぞれ嵌合するよう、位置決めがされている。そして容器本体(2)は、蓋体端部摺動段差部(9)を有する側面両端部に、先後方向に摺動段差部(19)が設けられ、容器カバー(4)の両側端縁に設けられた、内側へ屈曲する係合爪部(20)がその摺動段差部(19)と係合することにより、容器カバー(4)に対して先後方向へ移動自在に係合固定され、又、容器カバー(4)の後端に設けられた止め壁(21)によって、容器カバー(4)の後端からの離脱が確実に防止されている。」(【0008】欄)
f.「容器本体(2)を開放状態にするには、操作者が容器本体(2)の滑り止め(10)を指の腹部によって先端側へ押圧することで足りる。すなわち、容器本体(2)が先端側へ移動することにより、容器本体(2)の係合突起は貫通孔(12)を介して直線ガイド溝(14)内を先端側へ移動し、同時に、蓋体(3)の開閉支持突起(13)は開閉ガイド溝(15)に導かれて、その平行部(16)から斜部(17)を経由して垂直部(18)へと至ることとなり、それにつれて蓋体(3)は貫通孔(12)を中心として回動して、容器カバー(4)に設けられた開放部(22)の外側に位置することとなるからである。又、逆にその容器本体(2)に対して蓋体(3)が重合した状態へ戻すには、操作者が前記と逆の操作を行うことで足りる。」(【0009】)

甲第2号証(実用新案登録公報第2576938号)は、替芯容器に関するものであり、図面と共に以下の記載がある。
g.「【請求項1】容器本体の内部に摺動自在に保持される収容筒と、容器本体の先端開口部を自在に閉塞してなる蓋体から構成されると共に、上記容器本体内の収容筒側方に設けるラックギアに対して、蓋体と一体となる半円部の円弧状に配設するピニオンギアを噛合させ、収容筒より容器本体外に突出する突起部の摺動に伴って蓋体を支点を中心として回動させて容器本体の先端開口部を開閉自在としてなる替芯容器。」(実用新案登録請求の範囲の請求項1)
h.「図1において、(1)は、この考案の第一実施例である替芯容器であり、この替芯容器(1)は、容器本体(2)の内部(3)に摺動自在に保持され、その内部に替芯(5)を収容する収容筒(4)と、この収容筒(4)を保持する内部(3)の先端を自在に閉塞してなる蓋体(6)から構成される。」(【0011】欄)
i.「容器本体(2)の内部(3)で摺動自在に保持される収容筒(4)において容器本体(2)外に一体に突設してなる突起部(11)をもって、容器本体(2)に溝設したガイド溝(12)に沿って移動させることにより、替芯(5)を収容してなる収容筒(4)は、容器本体(2)の内部(3)を摺動する」(【0013】欄)

(2)甲第1号証に記載された考案
上記摘示の記載a.?f.を含む明細書の全記載及び図面によれば引用例1には、以下の考案が記載されている。
「容器カバー4、容器本体2、蓋体3からなり、
該容器カバー4の一面には、直線ガイド溝14を先後方向に設けるとともに、その後端近傍においては前記直線ガイド溝に対して略平行となるとともに、先端近傍においては同じく略垂直となるよう屈曲してなる開閉ガイド溝15を設け、
容器本体2は、容器カバー4と重合しない面には滑り止め10が設けられ、その側面両端部に、先後方向に摺動段差部19が設けられ、容器カバー4の両側端縁に設けられた、内側へ屈曲する係合爪部20がその摺動段差部19と係合することにより、容器カバー4に対して先後方向へ移動自在に係合固定され、容器カバー4の後端に設けられた止め壁21によって、容器カバー4の後端からの離脱が確実に防止され、
内部はシャープペンシルの芯を収容し、
又、容器本体2の容器カバー4と重合する面には、係合突起11が設けられ、該係合突起11は該容器カバー4の直線ガイド溝14に移動自在に嵌合し、
該蓋体3は、該容器本体2に対して重合するべく、該蓋体3の突出部6には開閉支持突起13を設け、該開閉支持突起13は、該容器カバー4の開閉ガイド溝15中に移動自在に嵌合し、
さらに該蓋体3の突出部6には、容器本体2に設けられた係合突起11が貫通して容器カバー4の直線ガイド溝14に移動自在に嵌合する貫通孔12を設け、
シャープペンシルの芯を取り出す時には、容器本体2の滑り止め10を指の腹部によって先端側へ押圧すると、容器本体2が先端側へ移動することにより、容器本体2の係合突起11は貫通孔12を介して直線ガイド溝14内を先端側へ移動し、同時に、蓋体3の開閉支持突起13は開閉ガイド溝15に導かれて、その平行部16から斜部17を経由して垂直部18へと至ることとなり、それにつれて蓋体3は貫通孔12を中心として回動して、容器カバー4に設けられた開放部22の外側に位置し、
該芯を取り出すことができるようにしたシャープペンシル芯用容器1。」(以下、「引用考案」という。)

(3)対比・判断
請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)と引用考案とを対比すると、
引用考案の「容器本体2」、「蓋体3」、「直線ガイド溝14」、「係合突起11」、「開閉支持突起13」、「貫通孔12」及び「シャープペンシル芯用容器1」がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
本件考案の「内ケース体」、「上蓋」、「ガイドスリット」、「可動接続ブロック」、「突起ブロック」、「可動接続孔」及び「シャープペンシルの芯ケース」に相当するものと認められ、
引用考案の「開閉ガイド溝15」は、平行部16・斜部17・垂直部18とからなるが、本件考案の「弧状スライドレール」も、図示された実施例によれば、平行部分と斜部分と垂直部分とからなるため、本件考案の「弧状スライドレール」に相当する。
また、引用考案においては実施例における容器本体2をその内部に移動自在に係合固定させる部品番号4が付されたものを、その断面がコ字状であること(前記摘示の記載d.「容器カバー(4)は断面略コ字形状に形成され」)から、容器本体2を覆うものと捉え、容器カバーと呼称しているが、引用考案の前記摘示の記載e.(「容器本体(2)は...側面両端部に、先後方向に摺動段差部(19)が設けられ、容器カバー(4)の両側端縁に設けられた内側へ屈曲する係合爪部(20)が係合することにより、容器カバー(4)に対して先後方向へ移動自在に係合固定され、容器カバー(4)の後端に設けられた止め壁(21)によって、容器カバー(4)の後端からの離脱が防止され」前記摘示の記載e.)からみて、「容器カバー4」は、その内部に内ケース体(容器本体2)を収容するものであり、「内ケース体の容器」といえる点において、本件考案の「外ケース体」と共通する。そして、引用考案の「内ケース体の容器」である容器カバー4にも、その側面に弧状スライドレール(開閉ガイド溝15)及びガイドスリット(直線ガイド溝14)が形成されている。
引用考案においても可動接続ブロック(係合突起11)が内ケース体外側面の適当な位置に設置されガイドスリット(直線ガイド溝14)に対応して摺動可能に嵌合していること、同じく突起ブロック(開閉支持突起13)が上蓋(蓋体3)側面の適当な位置に設置され弧状スライドレール(開閉ガイド溝15)中に対応して摺動可能に嵌合していること、同じく可動接続孔(貫通孔12)が上蓋下方に設置され可動接続ブロックに対応して摺動可能に嵌合していること、上蓋が内ケース体(容器本体2)と可動接続していること、
シャープペンシルの芯を取り出す時、内ケース体及び上蓋を上方へと動かし(内ケース体の係合突起11が直線ガイド溝14内を先端側に移動し、同時に、蓋体の開閉支持突起13が開閉ガイド溝15に導かれて、その平行部(16)を移動する)、上蓋は突起ブロックにより弧状スライドレールに沿って開き(蓋体の開閉支持突起13が斜部(17)を経由して垂直部(18)へと至り、蓋体3が開放部22の外側に位置する)、この時、芯の上端は外部へと露出し、使用者は非常に便利に該芯を取り出すことができることは自明のことである。
引用考案の容器本体2の内部はシャープペンシルの芯を収容するのであるからシャープペンシルの芯収容室であることは自明である。
したがって、
両者は「主に、内ケース体、内ケース体の容器、上蓋により構成し、
該「内ケース体の容器」の側面には、弧状スライドレール、ガイドスリットを形成し、該内ケース体は該「内ケース体の容器」内に収容し、内部はシャープペンシルの芯収容室を形成し、シャープペンシルの芯を収容し、該内ケース体外側面の適当な位置には可動接続ブロックを設置し、該可動接続ブロックは該「内ケース体の容器」のガイドスリットに対応して摺動可能に嵌合し、該上蓋は、該内ケース体と可動接続し、該上蓋側面の適当な位置には突起ブロックを設置し、該突起ブロックは該「内ケース体の容器」の弧状スライドレール中に対応して摺動可能に嵌合し、さらに該上蓋下方には可動接続孔を設けて該内ケース体の可動接続ブロックに対応して摺動可能に嵌合し、
上記構造においてシャープペンシルの芯を取り出す時には、内ケース体及び該上蓋を上方へと動かし、該上蓋は該突起ブロックにより該「内ケース体の容器」の弧状スライドレールに沿って開き、この時、該芯の上端は外部へと露出し、使用者は非常に便利に該芯を取り出すことができるようにしたシャープペンシルの芯ケース。」で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
本件考案では「内ケース体の容器」が「外ケース体」であるのに対して、引用考案では断面コ字状に形成された「容器カバー」であり、
その結果、シャープペンシルの芯を取り出す時に内ケース体を上方へと動かすのに、本件考案では外ケース体側面に長孔を設置し、内ケース体の側面に設けた該長孔に対応するプッシュブロックを、指で上向きに押して動かすのに対して、
引用考案では、内ケース体の一側面が外部に表出しているため、該外部に表出した一側面に滑り止め10を設け、滑り止めを指の腹部によって上方へ押圧して動かしている点。
[相違点2]上蓋が、引用考案では内ケース体に重合しているのに対して、本件考案では外ケース体上に蓋合している点。
[相違点の検討]
以下、相違点1について検討する。
相違点を検討するために、甲第2号証をみるに、甲第2号証には、上方が開口された長方体形状(図1と図2参照)の容器本体2の内部で摺動自在に保持される収納筒4の容器本体2外に突設する突起部11を、容器本体2に溝設したガイド溝12に沿って移動させることにより、替芯5を収容してなる収納筒4が容器本体2の内部を摺動するとともに蓋体6も回動し容易に替芯を取り出せる替芯容器が記載されている。
そして、甲第2号証の「容器本体2」、「収納筒4」、「突起部11」、「ガイド溝12」、「替芯容器」が、それぞれその機能に照らして、
本件考案の「外ケース体」、「内ケース体」、「プッシュブロック」、「長孔」、「シャープペンシルの芯ケース」に相当するから、
甲第2号証には、本件考案の上記相違点に係る「内ケース体を外ケース体に収容し、該外ケース体側面に長孔を設置し、内ケース体の側面に、該長孔に対応するプッシュブロックを突設し、指で該プッシュブロックを上向きに押して外ケース体の長孔に沿って移動させることにより、内ケース体を上方に動かす」構成が記載されている。
そして、「内ケース体の容器」にどのような形状のものを用いるかは、当業者が適宜選択すべき事項にすぎず、内ケース体を上方へと動かすのに、どのような構成を採用するかは、選択した外ケース体の形状に応じて適宜決定できるものであり、引用考案に、甲第2号証記載の上記構成を適用することに阻害要因も、技術的困難性も認められない。
なお、引用考案に、従来、略長方体形状のシャープペンシルの芯の保管容器においては、容器の外側に突出して形成された操作部材と蓋体とを連通し、操作部材を操作して蓋体の開閉を行っていた(前記摘示の記載b参照)との記載がみられる如く、引用考案においては、長方体形状の外ケース体を用いる選択肢があることを踏まえた上で、長方体形状の外ケース体を用いた場合、内ケース体の側面に外ケース体に設置した長孔に対応するプッシュブロック等の操作部材を突設しなければならず、操作部材を突設することによって生ずる種々の欠点を解消するために、より進歩した容器として、断面コ字状の容器を用いているのである。
相違点2について検討する。
上蓋が、引用考案では内ケース体に重合しているのに対して、本件考案では外ケース体上に蓋合しているが、甲第2号証には、図面等に、蓋体6が容器本体2上に蓋合したものが示されており、これを相違点1の判断で述べた甲第2号証の適用に伴って引用考案に適用することに阻害要因はない。
以上のとおりであるから、上記相違点1及び相違点2は当業者がきわめて容易になし得る程度のものであり、上記相違点1、2に係る構成を採用したことにより、本件考案と引用考案に格別の作用効果の差違も生じない。

5.むすび

したがって、本件の請求項1に係る考案は引用考案及び甲第2号証に記載された考案に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものであるから、当該実用新案登録は実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、実用新案法第37条第1項第2号の規定により、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、実用新案法第41条で準用する特許法第169条第2項の規定でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2004-06-08 
結審通知日 2004-06-09 
審決日 2004-06-22 
出願番号 実願2003-563(U2003-563) 
審決分類 U 1 111・ 121- Z (B43K)
最終処分 成立    
特許庁審判長 小沢 和英
特許庁審判官 藤井 靖子
砂川 克
登録日 2003-05-28 
登録番号 実用新案登録第3095777号(U3095777) 
考案の名称 シャープペンシルの芯ケース  
代理人 湯浅 正彦  

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