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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) A01C
管理番号 1113060
審判番号 無効2003-35036  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2005-04-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-02-03 
確定日 2004-12-13 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の登録第1957711号実用新案「施肥播種機の位置調節装置」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 訂正を認める。 実用新案登録第1957711号の考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1.手続の経緯
本件実用新案登録第1957711号の考案は、昭和61年4月15日に実願昭61-57189号として出願され、平成4年6月12日に実公平4-24887号として出願公告がなされ、平成5年3月24日にその設定登録がなされ、その後、平成15年2月3日付けでサン機工株式会社より本件無効審判の請求がなされ、平成15年4月28日付けで被請求人より審判事件答弁書が提出され、平成15年6月11日付けで職権による無効理由通知がなされ、平成15年8月13日付けで被請求人より意見書及び訂正請求書が提出されたものである。

第2.当審無効理由通知
当審が平成15年6月11日付けで職権により通知した当審無効理由は、以下のとおりである。
本件実用新案登録第1957711号の考案(以下、「本件考案」という)は、下記の引用刊行物に記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定に違反して登録されたものであるから、本件実用新案登録は、同法第37条第1項の規定により無効にすべきものである。
第1引用例:実願昭59-46195号(実開昭60-156902号)
のマイクロフィルム
第2引用例:実願昭59-22342号(実開昭60-133718号)
のマイクロフィルム
第3引用例:実願昭56-37056号(実開昭57-149702号)
のマイクロフィルム
第4引用例:実願昭58-156300号(実開昭60-64002号)
のマイクロフィルム
第5引用例:実願昭56-21299号(実開昭57-134604号)
のマイクロフィルム

第3.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
平成15年8月13日付けの訂正請求の内容は、以下のとおりである。
i.訂正事項a
実用新案登録第1957711号明細書における実用新案登録請求の範囲の第1項の記載を、
「取付ビーム8上において、施肥播種フレーム58を左右に摺動可能に構成し、施肥・播種位置を調整する構成において、取付ビーム8上面に目盛8aを表示すると共に、該取付ビーム8に施肥播種フレーム58を締め付け固定する締め付けブラケット58aを、枢支軸58cにより回動可能に支持し、該締め付けブラケット58aの略中央部に、播種位置と一致させて、該目盛8aの読み取り孔を開口したことを特徴とする施肥播種機の位置調節装置。」と訂正する。
ii.訂正事項b
明細書第3頁第29行?第4頁第4行(公告公報第2頁第3欄第6?11行)の記載を、
「取付ビーム8上において、施肥播種フレーム58を左右に摺動可能に構成し、施肥・播種位置を調整する構成において、取付ビーム8上面に目盛8aを表示すると共に、該取付ビーム8に施肥播種フレーム58を締め付け固定する締め付けブラケット58aを、枢支軸58cにより回動可能に支持し、該締め付けブラケット58aの略中央部に、播種位置と一致させて、該目盛8aの読み取り孔を開口したものである。」と訂正する。
iii.訂正事項c
明細書第14頁第7?8行(公告公報第4頁第8欄第2?3行)に記載の「読み取り孔58ea」を「読み取り孔58eを」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張変更の存否
上記訂正事項aは、「施肥播種フレーム58の締め付けブラケット58a」及び「読み取り孔」の構成を限定するものであるから、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、上記訂正事項bは、前記実用新案登録請求の範囲の減縮に伴って、減縮された実用新案登録請求の範囲の記載と考案の詳細な説明の記載とを整合させるための明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、さらに、上記訂正事項cは、図面第6図に関連する「読み取り孔」について誤記の訂正を目的とするものであり、そして、これらの訂正事項a乃至cは、明細書に記載された事項の範囲内において訂正するものであるから新規事項の追加に該当せず、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する平成5年法律第26号附則第4条第2項の規定及び平成11年法律第41号の規定により読み替えるものとされる、実用新案法第40条第2項の規定、及び同条第5項の規定により準用する同法第39条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第4.無効事由についての判断
1.本件考案
本件実用新案登録第1957711号の考案は、訂正が認められるから、本件の訂正明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の第1項(以下、「本件考案」という。)に記載された事項(前記第3.1.i.訂正事項a参照)により特定されるものである。

2.刊行物に記載の考案
(1)第1引用例に記載の考案
i.第1引用例〔実願昭59-46195号(実開昭60-156902号)のマイクロフィルム〕には、以下の事項が記載されている。
「T1は播種機のツールバーで、ロータリ機5から出るフレームバー15に連結装置(後記)を介して水平に吊持される。Sはユニット式の播種機で上下巾のある1枚の板材を側方よりみて逆への字形に屈曲させてフレーム20を作り、これの前上方への起上がり部21の前部に2本のリンク22,22を介してロの字形の締着金具23を連結し、この金具をツールバーT1にかぶせて把手付きの締付けボルト(図示なし)で固定し、4台のユニット式播種機SをツールバーT1に着脱自在に装着する。」(第3頁第17行?第4頁第6行)、
「T2は施肥機のツールバーで、ロータリ機5から出るフレームバー15に連結装置(後記)を介して水平に支持される。Fは施肥機で、ツールバーT2の中間部に固定されたU字形のフレーム32から出る支持片33に肥料箱34を取付け、」(第5頁第4?8行)。
ii.第1引用例に記載の播種機についての前記摘示の記載及び図面第1図乃至第6図によれば、農作業における播種の種類に応じて播種位置を任意に調整できるように、ツールバーT1に対して播種機のフレーム20が左右に摺動可能に構成されていることが技術常識として当然理解されるから、第1引用例には、以下の考案(以下、「引用考案」という。)が記載されていると認められる。
「ツールバーT1上において、播種機のフレーム20を左右に摺動可能に構成し、播種位置を調整する構成において、該ツールバーT1に対して播種機フレーム20を締め付け固定するロの字形の締着金具23を把手付きの締付けボルトにより着脱自在に装着可能とした播種機の位置調節装置。」

(2)第2引用例に記載の考案
i.第2引用例〔実願昭59-22342号(実開昭60-133718号)のマイクロフィルム〕には、以下の事項が記載されている。
「第1図において、(1)は施肥播種機の全体を示しており、トラクタに3点リンク機構を介して装着されたロータリ耕転機の後部のゲージ輪(2)を装着している支持枠(3)に着脱自在に装着される。施肥播種機(1)は支持枠(3)に嵌合して取付けられる取付具(4)と、この取付具(4)に平行リンク(5)を介して連結された本体(6)とを有し、本体(6)はツールバー(7)幅方向に2連又は4連等の多連に配置されている。本体(6)はツールバー(7)に着脱自在及び幅方向位置調整自在に取付けられた固定フレーム(8)に操出し装置(9)が取付けられ、この繰出し装置(9)の上部にはタンク(10)が固定され、その下方には案内筒(11)が配置されている 。」(第3頁第7?20行)。
ii.第2引用例に記載の施肥播種機についての前記摘示の記載及び図面第1図によれば、農作業における作物や肥料の種類に応じて施肥播種位置を任意に調整できるように、ツールバー(7)に対して施肥播種機の本体(6)が左右に摺動可能に構成されるとともに、該ツールバー(7)に対して施肥播種機の固定フレーム(8)を着脱自在に固定する取付け手段を具備することが技術常識として当然理解されるから、第2引用例には、以下の考案が記載されていると認められる。
「ツールバー(7)上において、施肥播種機の固定フレーム(8)を左右に摺動可能に構成し、施肥・播種位置を調整する構成において、該ツールバー(7)に対して施肥播種機の固定フレーム(8)を着脱自在に固定する取付け手段を具備した施肥播種機の位置調節装置。」

(3)第5引用例に記載の考案
第5引用例〔実願昭56-21299号(実開昭57-134604号)のマイクロフィルム〕には、以下の事項が記載されている。
「巻尺クリップ部材と、前記巻尺クリップ部材の一端部より水平に突設したアームと、前記アームに垂設した逆円錐形の測定単子と、前記測定単子上端面の測定単子中心軸相当位置に設けられ測定単子上端面との間に巻尺ベルトを挿通できるようにした指針と、前記巻尺クリップ部材に設置され前記測定単子上端面と指針との間に巻尺ベルトを挿通した巻尺とを備えた孔位置測定器。」(第1頁第5?12行)、
「このように構成したため、第4図に示すように一方の測定基準点Aに巻尺ベルト2bの先端を合わせるとともに、被測定孔pに対し前記測定単子4の下端部を嵌入して、測定針部材5の指針5bが指す巻尺ベルト2bの目盛を読むことにより、そのままA点からの孔pの距離lを簡単に測定することができる。」(第4頁第1?7行)。

3.本件考案と引用考案との対比検討
(1)本件考案と引用考案との対比
引用考案が播種機であるのに対して、本件考案が施肥播種機であるから、引用考案における「ツールバーT1」、「播種機のフレーム20」、「ロの字形の締着金具23」は、それぞれ、本件考案における「取付ビーム8」、「施肥播種フレーム58」、「締め付けブラケット58a」と対比して、いずれも、「取付ビーム8」、「播種フレーム58」、「締め付けブラケット58a」であることにおいて一致する。
そうすると、本件考案と引用考案は、以下の点でそれぞれ、一致ならびに相違するものと認められる。
一致点.「取付ビーム8上において、播種フレーム58を左右に摺動可能に構成し、播種位置を調整する構成において、該取付ビーム8に播種フレーム58を締め付け固定する締め付けブラケット58aを具備した播種機の位置調節装置。」
相違点A.本件考案が施肥播種機であるのに対して、引用考案が播種機である点。
相違点B.本件考案は、締め付けブラケット58aを枢支軸58cにより回動可能に支持した構成であるのに対し、引用考案は、ロの字形の締着金具23(締め付けブラケット58a)を把手付きの締付けボルトにより装着可能とした構成である点。
相違点C.本件考案は、取付ビーム8上面に目盛8aを表示すると共に、締め付けブラケット58aの略中央部に、播種位置と一致させて、該目盛8aの読み取り孔を開口した構成を具備するのに対し、引用考案は、該構成を具備しない点。

(2)相違点Aの検討
i.農業機械の技術分野において、施肥播種機は、周知技術(例えば、第2引用例〔実願昭59-22342号(実開昭60-133718号)のマイクロフィルム〕、実願昭57-265号(実開昭58-103815号)のマイクロフィルム、実願昭57-197148号(実開昭59-105814号)のマイクロフィルム参照、以下「周知技術A」という。)である。
ii.そうすると、引用考案に示される播種機を対象とする「ツールバーT1」、「播種機のフレーム20」及び「ロの字形の締着金具23」からなる構成について、前記周知技術Aに基づいて施肥播種機を対象とする「取付ビーム8」、「施肥播種フレーム58」及び「締め付けブラケット58a」からなる構成に適宜変更して、相違点Aに係る本件考案の構成のようにすることは、当業者がきわめて容易に想到できることである。

(3)相違点Bの検討
i.一般に、一方の構造部材に他方の構造部材を接続固定する場合に、該他方の構造部材の端部に設けた締め付け固定用の取付け手段を枢支軸により回動可能に支持した構成とすることは、特定の技術分野に限定されない周知慣用技術(例えば、実公昭49-5488号公報、実願昭52-157179号(実開昭54-82274号)のマイクロフィルム、実願昭57-79287号(実開昭58-182004号)のマイクロフィルム〕参照、以下「周知慣用技術B」という。)である。
ii.そして、農業機械の技術分野において、トラクターや耕耘機等に設けられたツールバーあるいは主軸に作業機あるいは施肥播種機を固定するときの取付け手段として、締め付けブラケットを枢支軸により回動可能に支持した構成は、周知技術(例えば、実願昭48-99002号(実開昭50-45211号)のマイクロフィルム、実願昭57-197148号(実開昭59-105814号)のマイクロフィルム参照、以下「周知技術B」という。)というべきものである。
iii.そうすると、取付け手段としての締め付けブラケット58aについて、引用考案に示される、ロの字形の締着金具23を把手付きの締付けボルトにより装着可能とした構成に代えて、前記周知慣用技術Bあるいは前記周知技術Bに示される、取付け手段を枢支軸により回動可能に支持した構成を採用して、相違点Bに係る本件考案の構成のようにすることは、当業者がきわめて容易に想到できることである。

(4)相違点Cの検討
i.農業機械の技術分野において、トラクターや耕耘機等の後部に固設した取付ビームに付属の農用作業機を連結する際に、その取付位置が判別できるように取付ビームの周辺に目盛を付することは周知慣用技術(例えば、第3引用例〔実願昭56-37056号(実開昭57-149702号)のマイクロフィルム〕、第4引用例〔実願昭58-156300号(実開昭60-64002号)のマイクロフィルム〕参照、以下「周知慣用技術C」という。)である。
ii.しかして、引用考案に示される、取付ビーム8に施肥播種フレーム58の締め付けブラケット58aにより播種機を取り付ける構成において、取付ビーム8上に目盛8aを直接に表示することは、前記周知慣用技術に基づいて当業者が適宜に採用する単なる設計的事項のものと認められるところ、取付け手段としての締め付けブラケット58aが播種位置にある場合には、該取付ビーム8上に目盛を表示するだけでは、該締め付けブラケット58a自体が播種位置を特定する被測定点の目盛を隠してしまうことは、当業者にとって当然予想できることである。
iii.ところで、一般に位置測定器の技術分野において、被測定点を特定する測定部材を目盛付き巻尺上で摺動可能としたときに、該測定部材に目盛の読み取り孔を開口して、該測定部材が被測定点の位置を示す目盛を隠さないようにした構成が、第5引用例〔実願昭56-21299号(実開昭57-134604号)のマイクロフィルム〕に示されている。
iv.そうすると、引用考案に示される、取付ビーム8に播種機を取り付ける取付け手段としての締め付けブラケット58aの構成において、播種機の取付位置が判別できるように前記周知慣用技術Cを適用して目盛を付する場合に、該締め付けブラケット58aが被測定点を特定する目盛を隠してしまうことがないように、前記第5引用例に示される被測定点に目盛の読み取り孔を開口する構成を採用して、相違点Cに係る本件考案の構成のようにすることは、当業者がきわめて容易に想到できることである。

(4)本件考案の作用効果の検討
施肥播種機は前記周知技術Aに示されるように周知の形態であるから、本件考案における、施肥播種機を脱着する作業が簡単にできるという作用効果は、引用考案に前記周知慣用技術Bあるいは前記周知技術Bを採用したものにおいて、また、施肥播種位置を正確に確認できるという作用効果は、前記周知慣用技術Cあるいは前記周知技術Cを背景に、引用考案に第5引用例に記載の考案を採用したものにおいて、いずれも当業者がきわめて容易に予測できることである。

(5)まとめ
よって、本件考案は、第1引用例及び第5引用例に記載の考案並びに前記周知(慣用)技術に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。

第5.むすび
以上のとおりであるから、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであり、平成5年改正法施行前の旧実用新案法第37条第1項第1号に該当し、無効にすべきものである。
審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定で準用する特許法第169条第2項の規定によりさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
施肥播種機の位置調節装置
(57)【実用新案登録請求の範囲】
(1).取付ビーム8上において、施肥播種フレーム58を左右に摺動可能に構成し、施肥・播種位置を調整する構成において、取付ビーム8上面に目盛8aを表示すると共に、該取付ビーム8に施肥播種フレーム58を締め付け固定する締め付けブラケット58aを、枢支軸58cにより回動可能に支持し、該締め付けブラケツト58aの略中央部に、播種位置と一致させて、該目盛8aの読み取り孔を開口したことを特徴とする施肥播種機の位置調整装置。
(2).実用新案登録請求の範囲第1項記載の読み取り孔の、播種位置に該当する部分の幅を、特に狭く構成したことを特徴とする施肥播種機の位置調節装置。
【考案の詳細な説明】
(イ)産業上の利用分野
本考案はトラクターの後部や歩行形耕耘機の後部に付設した施肥播種機に関するものである。
(ロ)従来技術
従来からトラクターや歩行形耕耘機の後部に付設して、施肥・播植を同時に行う装置は公知とされているのである。
例えば実開昭60-133718号公報や実開昭58-103815号公報の如くである。
(ハ)考案が解決しようとする問題点
本考案の目的は、該施肥播種機において、作物の種類や肥料の種類により、施肥・播種位置を変更する場合の、位置の確認を容易にする為の構成に関するものである。
従来においても、該施肥・播種位置を変更可能にすべく、トラクター側に固設した取付ビーム上で施肥播種フレームを左右に摺動可能とする構造は公知とされているのである。
しかし、従来も取付ビームの上に目盛が表示されていたのであるが、該目盛を締め付けプラケットが覆って隠してしまい、該施肥播種フレームの中央の位置が確認出来ないという不具合いが有ったのである。
特に、播種の位置は該施肥播種フレームの中央の真下に配置されているので、締め付けブラケットの端の位置の目盛であると、播種の位置を表示しないこととなり、締め付けブラケットの幅の半分を引いたり加えたりして、播種の位置を算出し、且つ該位置を基準にして隣の施肥播種フレームの位置を計算していたのである。
本考案は締め付けブラケットの端部において読み取る目盛が、播種の位置と異なっていたという従来の不貝合いを解消すべく、施肥播種フレームの中央の位置即ち播種の位置が、正確に読み取れる位置の締め付けブラケット面に、読み取り孔を開口したものである。
また該読み取り孔の播種位置に該当する部分を特に狭く構成することにより、更に正確に播種位置を確認可能としたものである。
(ニ)問題を解決するための手段
本考案の目的は以上の如くであり、次に該目的を達成する為の構成を鋭明すると。
取付ビーム8上において、施肥播種フレーム58を左右に摺動可能に構成し、施肥・播種位置を調整する構成において、取付ビーム8上面に目盛8aを表示すると共に、該取付ビーム8に施肥播種フレーム58を締め付け固定する締め付けブラケット58aを、枢支軸58cにより回動可能に支持し、該締め付けブラケツト58aの略中央部に、播種位置と一致させて、該目盛8aの読み取り孔を開口したものである。
また、読み取り孔の、播種位置に該当する部分の幅を、特に狭く構成したものである。
(ホ)実施例の構成
本考案の目的・構成は以上の如くであり、次に添付の図面に示した実施例の構成を説明すると。
第1図は本考案の施肥播種機の側面図、第2図は取付ビーム8と締め付けブラケットを締め付けた状態の側面図、第3図は同じく取り外す為に緩めた状態の側面図、第4図は取付ビーム8と締め付けブラケット部の平面図、第5図・第6図・第7図は読み取り孔の他の実施例を示す平面図である。
第1図において施肥播種機の全体的な構成を説明すると。
本考案の施肥播種機は、ロータリー耕耘装置の尾輪を支持する尾輪横杆に後方から装着するものである。
即ち、ヒッチ13部分の「コ」形部を尾輪横杆50の後部作業機装着用角形部に後方から嵌入して、ヒッチピン13aにより連結するのである。
該ヒッチピン13aにより係止したのみでは、後部作業機装着用角形部とヒッチ13の間にガタが発生するので、締め付けボルト13cにより押圧体13bを押して、ヒッチ13と後部作業機装着用角形部の間のガタを無くしているのである。
該ヒッチ13より上方に調節フレーム52を突出し、該調節フレーム52に設けた枢支軸52aに回動フレーム25を枢支している。該調節フレーム52と回動フレーム25の間に回動調節螺子14が介装されており、該回動調節螺子14を回動することにより、枢支軸52aを中心に施肥播種機全体が後方を上下に回動し、土壌面との水平状態を調整するのである。
前記回動調節螺子14による調節は回動による調節であるが、その他に施肥播種機全体を水平状態で上下に調節する播種深度調節レバー15が斜め前方に向けて配置されている。該播種深度調節レバー15の下端はジョイントを介して調節螺子杆16に連結されており、該調節螺子杆16が回動することにより、スライド筒26,26内に固設した雌螺子体を上下させ、施肥播種機を水平に上下するのである。該播種深度調節レバー15による上下に際しては、回動フレーム25に付設されガイド杆53に嵌装したスライド筒26が上下に水平状態を維持して移動するのである。該スライド筒26,26の下側からブラケットを突出して取付ビーム8の下側を溶接固定している。該取付ビーム8に駆動フレーム38を摺動・締結自在に配置している、
また該取付ビーム8上を摺動固定可能に施肥播種フレーム58が配置されている。
該施肥播種フレーム58の後部に施肥繰り出し装置Aを付設し、該施肥繰り出し装置Aにワンタッチ装着具により、播種繰り出し装置Bを装着可能に構成しているのである。
また施肥播種フレーム58より上下の平行リンク24,23を回動自在に突設し、該平行リンク24,23の後端にローラーフレーム36を付設している。該平行リンク24,23の下方への回動幅を規制するストッパー55が施肥播種フレーム58に設けられている。また平行リンク24,23の付勢バネ力を調整するバネ力調整レバー35が設けられている。更に該ローラーフレーム36より下方に作溝ディスク10の支持杆54を突出し、該支持杆54の下端で作溝ディスク10の回動軸を軸受支持している。該作溝ディスク10は前方で密着した、ステンレス製の平面視楔形の2枚のディスクにより構成されており、該作溝ディスク10の後部の楔形の広がった部分内に、播種ガイドパイプ20が嵌入しているのである。故に、播種ガイドパイプ20の下端の位置はローラーフレーム36の中央位置であり、ひいては施肥播種フレーム58の中央の位置が、播種位置となっている。
また播種ガイドパイプ20の前部に配置された施肥ガイドパイプ19は、該作溝ディスク10の外側に、掻き落とし板41により保護した位置に配置されて肥料を落下している。播種した種子と重複するように肥料を配置すると、発芽後の作物が肥料焼けを発生するので、該肥料焼けを発生しない程度の側条に施肥を行っているのである。
しかし発芽後に生育した場合に、位置が問題となるのは播種した位置であり、オペレーターが計算するのは播種位置なのである。
またローラーフレーム36より、作溝ディスク10の播種部の後方に覆土ディスク11を突設支持している。該覆土ディスク11により、楔形の作溝ディスク10により作った溝内に播種された種子の上を、軽く覆土するものである。
更にローラーフレーム36により支持杆12aを突出して、覆土ローラー12を支持している。
覆土ローラー12は施肥位置と播種位置の両者にわたる広さのローラーに構成しており、該覆土ローラー12が肥料と溝内の種子を鎮圧して行くのである。
以上の構成において、ローラーフレーム36に付設された作溝ディスク10と覆土ディスク11と覆土ローラー12は、土壌面の凹凸に従い、自由に平行リンク24,23部分を回動して上下動するので、トラクターの機体が上下動しても、播種深度を一定にすることができるのである。
これに対して、上部のホッパーと繰り出し装置部分は、取付ビーム8に固定されており土壌面の凹凸に対して追随しないものであるから、繰り出し装置とローラーフレーム36の間に、蛇腹ゴムパイプ17,18を介装して、繰り出し装置部とローラーフレーム36部分の間の間隙の変化を吸収可能としているのである。
接地輪9は駆動フレーム38に繰り出し軸7を枢支軸として枢支されている。そして駆動フレーム38の後端と接地輪9のチェーンケース47との間に、ガイドロット21と付勢バネ22を介装して、常に接地輪9を土壌面に接地しているのである。
該接地輪9の回転によりチェーンケース47内のチェーンを介して、繰り出し軸7が回転するのである。該繰り出し軸7は6角軸に構成されており、施肥播種ユニットが取付ビーム8の上を左右にスライドされるのに合わせて、施肥繰り出し装置Aは繰り出し軸7の上を左右に摺動可能に構成しているのである。
施肥繰り出し装置Aは、施肥播種フレーム58の後端に固設されており、該施肥繰り出し装置Aの後面に、左右のワンタッチ装着具30,30を介して播種繰り出し装置Bを装着しているのである。
また施肥繰り出し装置Aの上に同じく、左右のワンタッチ装着具31,31を介して、施肥ホッパー1を固設している。そして播種ホッパー2は、下部を播種繰り出し装置Bの上に、左右のワンタッチ装着具32,32により固設し、更に前部を、左右のワンタッチ装着具29,29により施肥ホッパー1と固設しているのである。更に、施肥ホッパー1と播種ホッパー2の連結を確実にする為に、蓋体45,46の蝶番部分を重合して、横から連結ピンを挿入して、両者を連結することが可能に構成しているのである。該ワンタッチ装着具30,31,32,29はそれぞれ対応する位置に配置された係止具65,43,44,42に係合されるのである。
また施肥ホッパー1と播種ホッパー2の下部にはホッパーシャッター40,39が構成されており、該ホッパーシャッター40,39の開閉により、施肥ホッパー1及び播種ホッパー2を、施肥繰り出し装置A及び播種繰り出し装置Bから取り外した場合には、持ち運び可能な容器とすることができるのである。
以上のような全体的な構成において、本考案の要部は、第2図より第7図に開示したごとく、取付ビーム8の上に摺動自在に締め付け固定した施肥播種フレームの位置を、容易に読み取り可能に構成したものである。
第2図・第3図にて開示するごとく、施肥播種フレーム58の先端部に角孔の半分を設け、該部分に角パイプにより構成した取付ビーム8を嵌装し、上下の締め付けブラケット58a,58bにより締め付けているのである。上方から締め付けブラケット58aは枢支軸58cにより回動可能に支持されており、下方からの締め付けブラケット58bは枢支軸58kによりそれぞれ施肥播種フレーム58に枢支されているのである。
上下の締め付けブラケット58a,58bにより取付ビーム8を抱持して、締め付けハンドル37の螺子により締結しているのである。故に締め付けハンドル37を回動して緩めることにより、施肥播種フレーム58は取付ビーム8の上を左右に調節摺動することが出来るのである。
該施肥播種フレーム58の後部に施肥繰り出し装置Aが固設され、その後部に播種繰り出し装置Bが固設されているのである。そして前述の如く、播種繰り出し装置Bから繰り出して播種ガイドパイプ20から落下する種子は、施肥播種フレーム58の略中央の位置に播種されるので、正確な播種位置を得る為には、施肥播種フレーム58の略中央の位置をしる必要があるのである。
しかし、従来の構成においては、目盛8aは表示されていても、締め付けブラケット58aが覆っている為に、その端部の位置しか読み取ることが出来ず、オペレーターは締め付けブラケット58aの両端の目盛8aの値から、中央の播種位置を計算していたのである。
締め付けブラケット58aの端の位置の値でも、他の施肥播種フレーム58の位置を読む場合にも同じ位置を読み取れば、隣合う播種条の位置は正確に知ることができるのであるが、播種作業を行う場合には、トラクターを往復させながら植付するので、次の行程でトラクターの操向位置を決定する為には、既に植付終了した前条の位置との関係を計算する必要があり、この場合に締め付けブラケット58aの端部の位置どうしで計算すると複雑な作業となり、やはり播種位置を目盛8aの上で正確に確認しておく必要があるのである。本考案はこの目的を達成する為に、締め付けブラケット58aの中央部に第4図の如く読み取り孔58mを開口したものである。
第4図の実施例においては、該読み取り孔58mを楕円形の孔としているが、第5図から第7図の実施例においては、該読み取り孔において、より播種の位置が明確になるように、該播種の位置即ち播種ガイドパイプ20の下端の位置の中央部に該当する部分を幅を狭くなる如く構成しているのである。
第5図の実施例においては読み取り孔58dを三角形に構成し、第6図においては読み取り孔58eを菱形に構成し、第7図においては読み取り孔58fを土星形に構成しているのである。
(ヘ)考案の効果
本考案は以上の如く構成したので、次のような効果を奏するのである。
第1に、従来の施肥播種機においては、目盛は表示されていたが、締め付けブラケットにより覆われている為に、正確な播種位置が確認できなかったのである。故にブラケットの幅の半分を計算して引いたり、加えたりして算出していたのである。
これに対して本考案の場合には、ブラケットの中央に読み取り孔を設け、該読み取り孔と播種位置を一致させることにより、簡単に正確な播種位置を確認することができるのである。
第2に、播種位置を正確に知ることにより、トラクターを往復して植付を行う場合に、施肥播種機の左右が入れ替わっても、常に条間を一定にする為の、トラクターの次行程への侵入位置の計算が容易に行えるのである。
【図面の簡単な説明】
第1図は本考案の施肥播種機の側面図、第2図は取付ビーム8と締め付けブラケットを締め付けた状態の側面図、第3図は同じく取り外す為に緩めた状態の側面図、第4図は取り付けビーム8と締め付けブラケット部の平面図、第5図・第6図・第7図は読み取り孔の他の実施例を示す平面図である。
A・・・施肥繰り出し装置
B・・・播種繰り出し装置
1・・・施肥ホッパー
2・・・播種ホッパー
8・・・取付ビーム
58・・・施肥播種フレーム
58a・58b・・・締め付けブラケット
58c・58k・・・枢支軸
58d・58e・58f・58m・・・読み取り孔
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2003-09-12 
結審通知日 2003-09-18 
審決日 2003-09-30 
出願番号 実願昭61-57189 
審決分類 U 1 112・ 121- ZA (A01C)
最終処分 成立    
前審関与審査官 本郷 徹  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 瀬津 太朗
藤井 俊二
登録日 1993-03-24 
登録番号 実用新案登録第1957711号(U1957711) 
考案の名称 施肥播種機の位置調節装置  
代理人 緒方 雅子  
代理人 松本 司  
代理人 加藤 久  
代理人 矢野 寿一郎  
代理人 矢野 寿一郎  
代理人 松本 司  
代理人 緒方 雅子  

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