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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) A63F
管理番号 1113066
審判番号 無効2002-35193  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2005-04-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-05-15 
確定日 2005-03-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第2148009号実用新案「スロットマシン」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第2148009号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第一.手続の経緯・本願発明
本件実用新案登録第2148009号の請求項1乃至2に係わる考案は、昭和62年10月21日に出願され、平成5年8月24日に公告され、平成9年3月12日に設定登録され、その後、平成14年5月15日に株式会社オリンピアより実用新案登録無効審判が提起され、それ以外に4件の実用新案登録無効審判が提起されたものであるが、いずれの審判事件についても訂正は行われなかったものであるから、前記公告された公報の実用新案登録請求の範囲の請求項1乃至2に記載された次のとおりのものである。

請求項1(以下「本件考案1」という)
「1回のゲームの実行につき所定の割当時間が設定されたスロットマシンであって、
前記割当時間の時間消費を計時するための計時手段と、
この割当時間内に次回のゲームへの進行を禁止するための禁止手段と、
割当時間が消費されたとき禁止手段の禁止動作を解除するための解除手段と、
割当時間内に次回のゲームの開始操作が行われたとき禁止手段の禁止解除を受けて次回のゲームを自動的に開始させるための開始制御手段
とを具備して成るスロットマシン。」

請求項2(以下「本件考案2」という)
「前記計時手段、禁止手段、解除手段および、開始制御手段は、マイクロコンピュータ回路で構成されている実用新案登録請求の範囲第1項記載のスロットマシン。」


第二.請求人の主張
請求人は甲第1乃至甲第22号証の6を提出し、下記の理由1?理由3により本件の実用新案登録を無効にするとの審決を求めるものである。
理由1(実用新案法第5条第3項または第4項違反)
実用新案登録請求の範囲の記載(前者)と実施例の記載(後者)とを比較すると、割当時間に関して、前者では「1回のゲームの実行につき設定されている時間」であるのに対し、後者では「ステップ3の始動レバースイッチオンから、ステップ8のドラムスタートまでの間に設定されている時間」であり、計測手段に関して、前者では「割当時間の時間消費を計時する」のに対し、後者では「始動レバースイッチオンからドラムスタートまでを計時する」ことであり、禁止手段に関して、前者では「割当時間内に次回のゲームへの進行を禁止する。」のに対し、後者では「割当時間内にドラムスタートを禁止する」ことであり、解除手段に関して、前者は「割当時間が消費されたとき禁止手段の禁止動作を解除する」のに対し、後者は「割当時間が消費されたときにドラムスタート禁止を解除する」ことであり、開始制御手段に関して、前者は「割当時間内に次回のゲームの開始操作が行われたとき禁止手段の禁止解除を受けて次回のゲームを自動的に開始させる。」のに対し、後者は「割当時間内に行える次回のゲームの開始操作はない。割当時間経過によってドラムスタートとなるが、単に時間経過によってスタートするものであり、開始制御手段なる手段はない」ことであり、両者の記載は一致せず、矛盾しているものである。
このことは、実施例の記載に言及すると、当業者が容易に実施できる程度に考案が記載されていないこととなり、実用新案登録請求の範囲に記載された発明に言及すると、明細書に開示された考案の必須の構成要件が記載されていないこととなる。
したがって、本件登録実用新案は、実用新案法第5条第3項または第4項に違反するものであるから、無効とされるべきである。

理由2(実用新案法第5条第3項違反)
詳細な説明に「いま6.7秒タイマがタイムアップする前の段階でその回のゲームが完了して、・・・今回のゲームにつきメダルの払出しがあったか否かがチェックされる。」(甲第1号証第7欄第28行?第36行)と記載されている。
(1).当該記載中「6.7秒タイマがタイムアップする前の段階でその回のゲームが完了」との点は、ステップ45で6.7秒タイマがタイムアップして初めて、ステップ8のドラムがスタートに至ることから、「6.7秒タイマがタイムアップする前の段階でその回のゲームが完了」することはない。
(2).当該記載中「スタート禁止フラグがセット中である」点については、割込ルーチンを経ている以上、割込時間中にスタート禁止フラグがセット中であることはあり得ないから、「ステップ5の判定が“YES”となってステップ9へ進み」とのステップもあり得ない。
(3).当該記載中「今回のゲームにつき払出しがあったか否かがチェックされる。」の点は、未だステップ8のドラムスタートが行われる前に、「今回のゲームにつき払出しがあった」ということはあり得ない。
(4).したがって、本件登録実用新案は、実用新案法第5条第3項に違反するものであるから、無効とされるべきである。

理由3(実用新案法第3条第2項違反)
本件考案明細書の詳細な説明に、従来技術として「そこで近年、法律によりゲームの進行速度に制限を加え、1回のゲームの実行につき所定の割当時間を設定して、その割当時間内に次のゲームへの進行するのを禁止する方式のスロットマシンが提案された」(甲第1号証第2欄第22行?第3欄第1行)と記載されているように、本件考案の出願時には、スロットマシンについて、1回当たりのゲーム時間に制限を設け、その制限時間に達しない場合には、次ゲームが行えないようにすることは、業界内部で周知の技術であったから、「1回のゲームの実行につき所定の割当時間が設定されたスロットマシンであって、
前記割当時間の時間消費を計時するための計時手段と、
この割当時間内に次回のゲームへの進行を禁止するための禁止手段と、
割当時間が消費されたとき禁止手段の禁止動作を解除するための解除手段とを有するスロットマシン。」は、本件出願前周知技術であり、
また、
「割当時間内に次回のゲームの開始操作が行われたとき禁止手段の禁止解除を受けて次回のゲームを自動的に開始させるための開始制御手段を具備して成るスロットマシン」は、単に「開始操作信号と時間経過信号とをAND回路に入力し、両信号が共に存在した場合に開始信号を出力する」周知な制御技術であることは、甲第6号証?甲第9号証から明らかである。
しかも、前記周知技術を組み合わせることは当業者が容易に為し得るもので、組み合わせたことによる効果も格別のもではない。
したがって本件考案は実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。


第三.被請求人の主張
理由1(実用新案法第5条第3項または第4項違反)
[1].請求項1記載の本件考案を構成要件に分説する。
(1).1回のゲームの実行につき所定の割当時間が設定されたスロットマシンであって、
(2).前記割当時間の時間消費を計時するための計時手段と、
(3).この割当時間内に次回のゲームへの進行を禁止するための禁止手段と、
(4).割当時間が消費されたとき禁止手段の禁止動作を解除するための解除手段と、
(5).割当時間内に次回のゲームの開始操作が行われたとき禁止手段の禁止解除を受けて次回のゲームを自動的に開始させるための開始制御手段と
(6).を具備して成るスロットマシン。

[2].請求項2記載の本件考案を構成要件に分説する。
請求項2記載の実用新案登録の構成要件は、前記(1)?(6)に次の(7)を加えたものである。
(7).前記計時手段、禁止手段、解除手段および開始制御手段は、マイクロコンピュータ回路で構成されている。

[3].前記構成要件(1)?(7)と詳細な説明の対応
(ア).構成要件(1)、(6)については、「第2図は、・・・スロットマシンを示し」(第3欄末行?第4欄1行)、「時間表示器8は、・・・つぎのゲームへの進行が禁止される。」(第4欄第25?30行)
(イ).構成要件(2)については、「このスタート禁止フラグは、・・・、まずステップ31で6.7秒タイマがスタートし、」(第6欄28?40行)
(ウ).構成要件(3)については、「6.7秒タイマがタイムアップ前であるから、・・・遊技者へ報知する。」(第8欄第6?10行)
(エ).構成要件(4)については、「割当時間の6.7秒を計時したか否かがチェックされ、・・・、また6.7秒タイマもリセットされる。」(第7欄21?27行)
(オ).構成要件(5)については、「点滅動作は6.7秒タイマがタイムアップして・・・。次回のゲームへの移行が自動的に行われることになる。」(第8欄12?17行)
(カ).構成要件(7)については、「第5?7図は上記スロットマシンの動作、・・・、マイクロコンピュータ回路により実現される。」(第5欄40行?第6欄8行)に各々記載されている。

[4].理由1の結論
以上のように、実用新案登録請求の範囲に記載された考案が、考案の詳細な説明に記載された考案であることは明らかであるから、請求人の主張は失当である。

理由2(実用新案法第5条第3項違反)
スロットマシンの技術分野において、コンピュータ制御によるスロットマシンを製作しようとする当業者においては、「割込ルーチン」が、コンピュータ処理において常用される処理であり、メインルーチンの実行中に割込によって実行されるルーチンであることは自明である。
また、割込みルーチンが見かけ上メインルーチンと同時に実行され、割込みにより複数の処理ルーチンが見かけ上同時に実行されることが「並列処理」と呼ばれていることも当該技術分野の当業者には周知の事項であるから、第5図のメインルーチンと第7図の割込ルーチンとが見かけ上同時に進行することは、考案の詳細な説明の記載全体から明らかである。
したがって、考案の詳細な説明には、考案を容易に実施できる程度に記載されているから、実用新案法第5条第3項に違反するものではない。

理由3.(実用新案法第3条第2項:容易性)について、
[1].証拠に関する主張要旨
<1>.甲第5号証について、
(1).甲第10号証の1には、甲第5号証と同じ文書が添付書類2として添付されており、それには押印が認められるが、このことは甲第10号証の1の添付書類2が当該無効審判申立ての後に作成された(印鑑が押印された)文書である可能性を示唆している。(平成15年3月7日付上申書 第2頁[1]甲第5の文書の真正に対する疑問)
(2).仮に、甲第5号証が昭和60年12月5日に作成されていたとしても、この書面が組合員に配付されたいう証拠はない。すなわち、甲第10号証の2第8項には、当該書面が組合員に配付された旨の記載が認められるが、18年以上の前のことを明確に記憶している者はいないのみならず、配付の根拠も示されていない。(平成15年3月7日付上申書 第3頁 [1]甲第5号証の配付事実の未証明)
(3).甲第5号証には、「スロットマシンについて、1回当たりのゲーム時間に制限を設け、その制限時間に達しない場合には、次ゲームが行えないようにすること」は、記載されていないから、前記事項は、甲第5号証を以て「業界内部での周知事項」ということはできない。(平成15年3月7日付上申書 第3頁 [2]甲第5号証の評価)

<2>.甲第22号証の5、甲第22号証の6、甲第14号証の1、乙第10号証について、
(1).甲第22号証の5、甲第22号証の6、甲第14号証の1、乙第10号証には、各々次の記載、すなわち、「1ゲーム毎に何秒(5.5秒等)で制限する。機種毎に詳細計算書を提出すること。」、「先ず一番の大問題であった1分間おおむね400円の件ですが、1ゲーム毎に何秒(6秒とか5.5秒)以上の制限をもうけてゲームを進行させる方式とすることと致しました。」、「1ゲーム毎の制限秒数について、その時間の配分の内わけ(タイミングの取り方)を書類で提出すること」、「1ゲームの制限時間計算書の提出」が認められ、前記記載中の「1ゲーム当りの制限時間」の趣旨は、1分間概ね400円の規制を遵守するために必要な1ゲーム当りの動作時間を計算し、スロットマシンをそのように設計するための設計基準としての時間である。
言い換えるなら、スロットマシンの設計にあたり、各メーカーが、1ゲーム当りの動作時間がその時間よりも短くならないように設計を制限する。その時間を制限時間と呼んでいるもので、このことは乙第12号証の2の計算式から明らかである。
以上のように、「1ゲーム当りの制限時間」は、1ゲームの実行時間が制限時間より短くならないようにすること(設計すること)を意味するものであって、本件考案のように、1回のゲームの実行に割当時間を設定して割当時間が消費するまで次回のゲームへの進行を禁止する意義の時間ではない。」(平成15年3月18日付上申書 第2頁 (1)1ゲーム当りの制限時間の技術的意義、平成15年3月17日付上申書 、平成15年3月7日付上申書 [3]甲第14号証の1の評価)

<3>.甲第20号証の1?4について
(1).甲第20号証の1?4によれば、「回胴式遊技機の機能及び構造等(日電協内規)」において、「22.遊技料金について」の欄が設けられ、昭和61年9月8日訂正版までは「1分間に24枚を超える遊技メダルを投入して遊技ができる構造でないこと」と定められていたのに対し、昭和62年7月1日訂正版ではそれが「口頭説明とする」となったことが示されているが、当該「口頭説明とする」の記載は、内規として「1回のゲームの実行につき所定の割当時間が設定されたこと」を意味しない。(平成15年3月7日付上申書 第9頁 [5]甲第20号証の1?4の評価)

<4>.甲第8号証について、
(1).技術分野に関して言えば、
本件考案はスロットマシンに関するものであり、一方、甲第8号証記載の考案はパチンコ玉を打球するコイン遊技機に関するものであるから、両者はゲーム操作、ゲーム内容、ゲーム制御において相違し、技術分野を異にするものである。
(2).技術課題及び解決手段に関して言えば、
本件考案は、ゲームに関して、割当時間という時間概念を基礎とする技術的課題および解決手段に着目した考案であるのに対し、甲第8号証の考案は、ゲームに関して一定個数のパチンコ玉を打球することを基礎とした、時間概念とは無関係の、遊技玉数の確保を基礎とし、技術的課題および解決手段に着目した考案であるから、両者の技術的解決手段は異なるものである。
(3).ゲームの開始、開始操作等に関して言えば、
甲第8号証における「ゲームの開始操作」は、パチンコ玉の打球を開始するために打球装置を操作することで、「ゲーム操作」、すなわちパチンコ玉を遊技盤面のどの入賞孔に入れるかを狙いながら打球装置を操作することを兼ねており、一定個数のパチンコ玉が放出されただけではゲームは始まらず、実際にパチンコ玉が打球されることによってゲームが始まるのである。
一方、本件考案においても複数のドラムを実際に回転開始させることによってゲームが開始するものであり、ドラムというゲーム要素や、パチンコ玉というゲーム要素が動作を開始していない状態では、ゲームが開始されたとはいえないものであり、さらに、スロットマシンの場合、ゲーム開始操作(始動レバー操作)とゲーム操作(停止ボタン操作)とは別の操作である。
そこで、両者のゲーム操作の対応関係を見ると、
本件考案における、(i)「ゲーム」、(ii)「ゲーム操作」、(iii)「ゲームの開始」、(iv)「ゲームの開始操作」、(v)「ゲーム開始の準備操作」は、各々(i)「ドラム始動?絵柄合わせ」、(ii)「停止釦操作」、(iii)「ドラム始動」、(iv)「始動レバー操作」、(v)「メダル投入」であり、甲第8号証においては、各々(i)「打球?入賞」、(ii)「全ての打球操作」、(iii)「1発目の打球」、(iv)「一発目の打球操作」、(v)「コイン投入」となる。(平成15年3月7日付上申書 第10頁第1行?第13頁第10行)

[2]容易性に関する主張
前記のように、提示された証拠には、1回のゲームの実行に割当時間を設定して割当時間が消費するまで次回のゲームへの進行を禁止することが業界内部での周知技術であることは証明されておらず、しかも甲第8号証に記載された考案は、ゲームの進行時間をコントロールしたり、ゲームを自動的に開始させるとの内容ではないから、遊技時間の制御のための技術として、周知技術と組み合わされるものではないから、本件考案は、実用新案登録要件を備えている。(平成15年3月7日付上申書 第14頁 第4 周知技術と甲第8号証考案との組合わせについて)


第四.当審の判断
理由3(進歩性)について検討する。
[1]証拠記載事項

<1>.回胴式遊技機の規制・型式認可等に関する経緯
(A).甲第2号証(国家公安委員会規則第一号 昭和六十年一月十一日)(以下「証拠A」という)記載事項
(A-1).「一 一分間におおむね四百円の遊技料金に相当する数を超える数の遊技メダル(遊技の用に供するメダルをいう。以下この項において同じ。)を使用して遊技をさせることができる性能を有する遊技機であること。」(第132頁、第7条 回胴式遊技機の欄)

(B).乙第3号証(パチンコ・パチスロ総合資料)(以下「証拠B」という)記載事項
(B-1).「1985年(昭和60年)に施行された風適法によりパチスロは「指定品目」とされ、全国統一基準が示されると次第にパチンコと同じように扱われていく。ボーナスゲームの扱いや、コンピュータ基板制御による出玉率制御など現在のパチスロの基本となる部分は、おおむねこの時期に決まっている。風適法施行後、初めて型式認定を受けたことからこのときのパチスロは『1号機』と呼ばれる。
パチスロ1号機のROMは現在のような日電協の刻印のついた特殊なROMではなく、封印シールも存在しなかったため、不正ROMが多く出回った。」(第18頁左欄第22?32行)
(B-2).「このため、ROMを日電協の提供するものに統一化し、封印シールを貼ったパチスロを1.5号機と呼ぶが、1.5号機独自の基準が存在するわけではなく、外観上も機種名表示のパネルにシールを貼っただけのものだった。例:ペガサス→ニューペガサス トロピカーナ7→トロピカーナ7X」(第18頁第5?11行)
(B-3).「回動式遊技機 1.5号機 当時多数横行していた裏ROM対策として、ROMを日電協ROMに統一化して封印シールを貼った1号機を『1.5号機』と呼ぶ。基準は1号機と同じ。このとき各種攻略法を封じるためプログラム変更した機種も多数存在する。」(第22頁左欄第1?6行)
(B-4).「一号機の認定有効期限は3年と定められ、各メーカー1機種のみの販売とされていたため、1988年(昭和63年)より『2号機』と呼ばれる新機種が登場する。」(第18頁右欄第12?15行)
(B-5).「回動式遊技機 2号機 1号機(1.5号機)の認定有効期限の切れる1988年(昭和63年)から登場するパチスロ機。1メーカー2機種までの発売に自主規制された。・・・。特徴としては、50枚までのクレジット機能が付加されたこと、1ゲームの消化時間が4秒以上となったこと、抽選方式が完全確率方式になったこと、ビッグボーナス時の純増枚数が350枚になったことなどがあげられる。」(第22頁右欄第1?11行)

(C).乙第2号証(日電協10年史)(以下「証拠C」という)記載事項
(C-1).61年(1986年)の欄の7/16?7/30の間で「警察庁の風俗営業の担当所轄課が従来の防犯課から保安課に移る」(第38頁)
(C-2).61年(1986年)の欄の7/30?11/20の間で「日電協封印シール偽造事件発生 偽造犯人7名が逮捕される」(第38頁)
(C-3).61年(1986年)の欄の11/20?年末の間で「警察庁が回胴式遊技機の改造防止のための措置として3項目を通達する」(第38頁)
(C-4).63年の欄に「●2/16トップの2号機、保通協の検定に合格し、2号機時代到来」(第39頁)
(C-5).高砂電器産業株式会社の2号機として「★ウィンクル (交付日/昭和63年2月16日)」(第88頁)

<2>.日本電動式遊技機工業協同組合(「日電協」という)における国家公安委員会規則への対応経緯。
(D).甲第4号証(NDK第3回技術委員会 昭和60年11月12日付)(以下「証拠D」という)記載事項
(D-1).「警察庁より要望事項 1.・・・。2.1分間に400円を前提に考えて人が投入して如何なる条件でも9回のゲームを超えない様にして欲しい。 3.・・・。 4.ROMに封印シールを貼ってほしい。(日電協シール)」(3/2頁)
(D-2).「組合側回答案 要望-1:・・・。 要望-2:現在の機械でデーターを取った所中級以下が30分間で平均1分間7.7?8.3回で、上級クラスが1時間で10.6回?10.8回だった。但し当たりが無い状態では12回?15回が可能である。
・要望の回数にするのであれば払出しに関係せずゲームが出来る様にしてほしい。 要望-3:・・・。 要望-4:日電協シールを貼る。又は、組合で統一ROMを作り各社に供給する。このROMには日電協の刻印を打ち1回しか書き込みが出来ないタイプを使用する。 ・但し、遊技条件及び、いろいろな制約が付加されるので今後は64KまでROM容量を認めてほしい。」(3/2?3/3頁)

(E)甲第5号証(警察庁保安防犯課長 石瀬 博宛昭和60年12月5日付 「回胴式遊戯機の認定要件についてお願い(陳情)」(以下「証拠E」という)記載事項
(E-1).「つきましては、新要件機の現状をふまえたうえで貴庁よりご下問のありました事項等について組合員とも協議した結果、下記の条件でご承認いただきたくお願い申し上げます。なお、下記要件が決定いたしませんと内規のみなおし、改正等もできかねますのでよろしくご高配賜りますよう重ねてお願い申し上げます。」(第2頁第12?16行)
(E-2).「つきましては、次のような措置を構ずることで、従来通りの要件で容認いただくようお願い致します。
ア.ROMについては当組合の考案した、カスタムROMを使用する、本件ROMは富士通(株)の富士通(株)製のセラミック製のワンタイムEPROMとし組合で一括購入(組合のマーク印)し組合員はこれを使用する。
イ.ROMを基板に固定したあと、組合のシールで封印する。 本件封印の材質は、水溶性で粘着性に優れ、封印後ROMを取りはずすには、封印を破棄する以外に方法がないので、ホール業者や遊技機の改造業者がROMを改造したり性能の異なるものを使用するなどして悪用することを防止できるものと確信いたします。」(第3頁第16行?第4頁第4行)
(E-3).「2.1分間に400円を超えないゲームであること、如何なる条件においても1分間に9回(メダル3枚使用の場合)を超えないこと
回胴式遊技機の特性は、一般遊技機についても言えることでありますが、メダルの投入及び受入れ、一般遊技の入賞や連続役物増加装置の入賞等によるメダルの払い出し等を組合わせたリズムにのって遊技することにあります。」(第5頁第1?6行)
(E-4).「当組合で実際に打込みテストをしたところ30分ないし1時間のデータをとり1分間に換算したところ
中級者クラス 7?8回
上級者クラス 9?11回
超上級者クラス 11?12回
となっており、これを1分間に9回以上のゲームができないようにするためには
(1)メタルを受け付けないようにする
(2)回胴が回転しないようにする
などの方法しかなくこの場合ゲームがだれてリズミカルな遊技が出来ないため折角定着しつつある顧客が機械離れすることは明らかであります。」(第5頁第21行?第6頁第8行)

(F).甲第20号証の4(回胴式遊技機の機能及び構造等(日電協内規)」(以下「証拠F」という)記載事項
(F-1).表紙に、丸囲の「秘」文字、及び「昭和61年5月10日訂正済案 日本電動式遊技機工業協同組合」(表紙)
(F-2).「回胴式遊技機の機能及び構造等に関する日電協内規について・・・。組合員は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律及び国家公安委員会規則を始め、日電協内規を基準に回胴式遊技機の製造にあたらなければならない。・・・。昭和60年3月29日 日本電動式遊技機工業協同組合」(表紙から2頁目)
(F-3).「日電協内規の一部改正について 昭和63年3月29日、日電協内規を作成し、第一号機の製造に着手してきたのであるが、各社の遊技機が保通協の型式試験中に指摘された事項や基準等を内規の追加として整理してきたところである。
しかるに遊技機がホールに設置されてから僅か6ヶ月を経過したに過ぎない段階で、遊技機設計上の欠陥や盲点をつかれ改造機具等が出廻るようになったことなど種々の問題が現出したのでこれらを防止するため、ここに日電協内規全般について検討を加え整理統合したので遊技機製造上誤りのないようせられたい。 本内規は 月 日から実施する。 昭和61年 月 日 日本電動式遊技機工業協同組合」(表紙から3頁目)
(F-4).「6.遊技方法等」の項「2.1分間に概ね400円の遊技料金を超えないこと。(11頁 22を参照)」(第3頁)
(F-5).「22.遊技料金について」の項「1.1分間に24枚を超える遊技メダルを投入して遊技ができる構造ではないこと」(第11頁)
(F-6).「22.遊技料金について」の項「(2)1分間タイマーが、タイムアップする以前に24枚のメダルに達したら1分間タイマーがタイムアップするまで次の遊技が出来ないこと」(第11頁)
(F-7).「23.部品等の制限 1)ROM RAM」の項「1.ROMは日電協指定のものを使用すること」(第12頁)
(F-8).「23.部品等の制限 5)その他」の項に「5.ROMのシールについては白紙でなく、符号を記載し,ROMの品名、記号等を表示していない部分に貼付すること。」、「6.口頭説明」(第12頁)
(G).甲第20号証の3(回胴式遊技機の機能及び構造等(日電協内規)」(以下「証拠G」という)記載事項
(G-1).表紙に、「日本電動式遊技機工業協同組合 昭和61年9月8日訂正版」
(G-2).「日電協内規の一部改正について 昭和60年3月29日、日電協内規を作成し、第一号機の製造に着手してきたのであるが、各社の遊技機が保通協の型式試験中に指摘された事項や基準等を内規の追加として整理してきたところである。
しかるに遊技機がホールに設置されてから僅か6ヶ月を経過したに過ぎない段階で、遊技機設計上の欠陥や盲点をつかれ改造機具等が出廻るようになったことなど種々の問題が現出したのでこれらを防止するため、ここに日電協内規全般について検討を加え整理統合したので遊技機製造上誤りのないようせられたい。 本内規は 5月23日から実施する。 昭和61年5月23日 日本電動式遊技機工業協同組合」(表紙から3頁目)
(G-3).「6.遊技方法等」の項「2. 1分間に概ね400円の遊技料金を超えないこと。(11頁 22を参照)」(第3頁)
(G-4).「22.遊技料金について」の項「1.1分間に24枚を超える遊技メダルを投入して遊技ができる構造ではないこと」(第11頁)
(G-5).「22.遊技料金について」の項「(2)1分間タイマーが、タイムアップする以前に24枚のメダルに達したら1分間タイマーがタイムアップするまで次の遊技が出来ないこと」(第11頁)
(G-6).「23.部品等の制限 1)ROM RAM」の項「1.ROMは日電協指定のものを使用すること」(第12頁)
(G-7).「23.部品等の制限 5)その他」の項「5.ROMのシールについては白紙でなく、符号を記載し,ROMの品名、記号等を表示していない部分に貼付すること。」、「6.ROMは基板に日電協のシールで封印すること」、「7.メイン基板はケースに納め、ケースの開閉部を日電協のシールで封印する。ケースは日電協のROMを確認できる程度の窓をもうけておくこと。」(第12頁)

(H).甲第22号証の5(口頭説明(案)62年6月23日付)(以下「証拠H」という)記載事項
(H-1).「P11、 22 遊技料金について 口頭説明 1ゲーム毎に何秒(5.5秒等)で制限する。 機種毎に詳細計算書を提出すること。」(第10?13行)

(J).甲第22号証の6(62.6.26全体会議 2号機の内規説明 62年6月25日付)(以下「証拠J」という)記載事項
(J-1).「昨年半ばに決定した内規ではあまり1号機との差がありすぎて造っても売れないのではないかとの疑問が続出して開発が頓挫しておりましたが、こゝ1?2ヶ月技術委員会を中心に関係筋に陳情・説明等鋭意折衝を重ねた結果、規則の許す範囲で広く解釈していたゞく等、我々の要望にある程度答えて戴いた内規が略、内定致しましたので、この案の要点を御説明申し上げますが詳細は読んでいたゞいてこの案で不都合な点や疑問点等があれば、来週火曜の6月末迄に、Fax等で組合に御知らせ願いたいと思います。支障がなければこれを内規と定めたいと思っています。」(第1頁第3?13行)
(J-2).「では変更があった部分ついて説明致します。
マル1.先づ一番の大問題であった1分間おおむね400円の件ですが、
1ゲーム毎に何秒(6秒とか5.5秒)以上の制限をもうけてゲームを進行させる方式とすることゝ致しました。
これの考え方は、平均して大ボーナスが一回出るまでの一連の遊技を考え、その中から払出しに要する時間、役物や連続役物に要する時間を差引き残りが一般ゲームに割当てられる時間と考え、1回当り6秒とか5.5秒で制限をすることで了解が得られたわけです。たゞし各機種毎にメダル払出し時間や、役物等に要する時間が異なりますので、一機種毎に詳細計算書を提出してチェックを受けることとなりました。」(第1頁末行?第2頁第13行)
(K).甲第20号証の2(回胴式遊技機の機能及び構造等(日電協内規)」(以下「証拠K」という)記載事項
(K-1).表紙に、「日本電動式遊技機工業協同組合 {昭和61年9月8日訂正版}、62.6.26一部訂正案」(注:{}箇所は見え消し)
(K-2).「日電協内規の一部改正について 昭和60年3月29日、日電協内規を作成し、第一号機の製造に着手してきたのであるが、各社の遊技機が保通協の型式試験中に指摘された事項や基準等を内規の追加として整理してきたところである。
しかるに遊技機がホールに設置されてから僅か{6ヶ月}数ヶ月を経過したに過ぎない段階で、遊技機設計上の欠陥や盲点をつかれ改造機具等が出{廻}回るようになったことなど種々の問題が現出したのでこれらを防止するため、ここに日電協内規全般について検討を加え整理統合したので遊技機製造上誤りのないようせられたい。 本内規は5月23日から実施する。 昭和6162年5月23日 日本電動式遊技機工業協同組合」(表紙から3頁目 注:{}箇所は見え消し)
(K-3).「6.遊技方法等」の項「2. 1分間に概ね400円の遊技料金を超えないこと。(11頁 22を参照)」(第3頁)
(K-4).「22.遊技料金について」の項「{1.1分間に24枚を超える遊技メダルを投入して遊技ができる構造ではないこと。}口頭説明とする。」(第11頁 注:{}箇所は見え消し))
(K-5).「22.遊技料金について」の項「{(2)1分間タイマーが、タイムアップする以前に24枚のメダルに達したら1分間タイマーがタイムアップするまで次の遊技ができないこと}」(第11頁 注:{}箇所は見え消し)
(K-6).「23.部品等の制限 1)ROM RAM」の項「1.ROMは日電協指定のものを使用すること」(第12頁)
(K-7).「23.部品等の制限 5)その他」の項「5.ROMのシールについては白紙でなく、符号を記載し,ROMの品名、記号等を表示していない部分に貼付すること。」、「6.ROMは基板に日電協のシールで封印すること」、「7.メイン基板はケースに納め、ケースの開閉部を日電協のシールで封印する。ケースは日電協のROMを確認できる程度の窓をもうけておくこと。」、及び手書きの「8,ROM用ソケットは底が見えるものとし、ROM以外は基板に直付けとすること」(第12頁)

(L)甲第20号証の1(回胴式遊技機の機能及び構造等(日電協内規)」(以下「証拠L」という)記載事項
(L-1).表紙に、マル秘、及び「日本電動式遊技機工業協同組合 昭和62年7月1日訂正版」
(L-2).「日電協内規の一部改正について 昭和60年3月29日、日電協内規を作成し、第一号機の製造に着手してきたのであるが、各社の遊技機が保通協の型式試験中に指摘された事項や基準等を内規の追加として整理してきたところである。
しかるに遊技機がホールに設置されてから僅か数ヶ月を経過したに過ぎない段階で、遊技機設計上の欠陥や盲点をつかれ改造機具等が出回るようになったことなど種々の問題が現出したのでこれらを防止するため、ここに日電協内規全般について検討を加え整理統合したので遊技機製造上誤りのないようせられたい。 本内規は7月1日から実施する。 昭和62年7月1日 日本電動式遊技機工業協同組合」(表紙から3頁目)
(L-3).「6.遊技方法等」の項「2. 1分間に概ね400円の遊技料金を超えないこと。(9頁 22を参照)」(3頁) (L-4).「22.遊技料金について」の項「口頭説明とする」(9頁)
(L-5).「23.部品等の制限 5)その他」の項「5.ROMのシールについては白紙でなく、符号を記載し,ROMの品名、記号等を表示していない部分に貼付すること。」、「6.ROMは基板に日電協のシールで封印すること」、「7.メイン基板はケースに納め、ケースの開閉部を日電協のシールで封印する。ケースは日電協のROMを確認できる程度の窓をもうけておくこと。」、及び「8.ROM用ソケットは底が見えるものとし、ROM以外は基板に直付けとすること」(第10頁)

(M).甲第22号証の2(62年7月31日付 日電協発第16号 日電協理事長から各組合員宛、 2号機に関する連絡事項 )(以下「証拠M」という)記載事項
(M-1).「1.2号機の準備については、各社とも順調に進展しているものと思われるが、組合としても準備の都合があるので、早急に持込み予定日及び機種名、性能区分(A,B,C型の別)を連絡されたい。」(No1)
(M-2).「3.日電協内規について(62.7.1付) マル1 1ゲーム毎の制限秒数について、その時間配分の内わけ(タイミングの取り方)を書類で提出すること。」(No.2 第1?3行)

(N).甲第22号証の3(文書発送簿)(以下「証拠N」という)記載事項
(N-1).発刊番号、年月日、発信名、あて、件名、備考欄に各々「16、62.7.31、理事長、各組合員、2号機に関する連絡事項、全2枚」

(P).乙第10号証(昭和62年9月1日制定 回胴式遊技機 組合検査基準)(以下「証拠P」という)記載事項
(P-1).「1.提出資料 A書類」の項「(1)組合検査申請書(保通協申請時の添付1.2.3.添付)」(第1頁第4行)
(P-2).「1.提出資料 B機械」の項「(1)試験用遊技機6台」(第1頁第9行)
(P-3).「2.組合検査 B動作試験」の項「(1)1ゲームの制限時間」(第2頁第4行)
(P-4).「2.組合検査 C遊技機の提出」の項「当該回胴式遊技機が保通協の型式試験に合格した時点で、その1台を日電協へ提出すること。」(第2頁第15?16行)」
(P-5).「基本設計基準」の項「2. 1ゲーム当りの制限時間 秒」

(Q).甲第18号証(昭和62年11月13日 日電協発 マル保 第6号 日電協理事長から組合員宛 「2号機検定に関する保通協からの指摘事項について」)(以下「証拠Q」という)記載事項
(Q-1).「高砂電器の2号機“ウインクル”は11月12日付で型式試験申請を受理されたが、その際次の諸点につき保通協から指摘されたので間違いのないようにされたい。」(第10?16行)

(R).乙第11号証(昭和63年1月27日付 日電協発 マル保 第7号 日電協理事長から各組合員宛 「2号機に関する関係当局への質疑応答結果と保通協からの連絡事項について」)(以下「証拠R」という)記載事項
(R-1).「2号機(特例機)の基準の解釈等につき最近までの間に関係当局と折衝した結果、及び保通協からの連絡事項を次のとおり取りまとめたので十分了知の上間違いのないようにお願いします。」(第11?17行)

(S).「パチンコ業界用語辞典」(平成7年9月20日 株式会社プレイグラフ社 発行)記載事項
(S-1).「パチスロ1.5号機 86年春の要件を満たしたパチスロのこと。85年の風適法施行のもと登場した1号機だったが、ホール間の競合激化により、差別化を図るため、射幸性を高めようとカバン屋による違法改造が続出した。その防止対策として、日電協ROMに統一し、封印を行ったのが1.5号機。基準は1号機と同様だった。」(第83頁 パチスロ1.5号機)

[2].以上の記載より、国家公安委員会の規制と、日電協との対応は以下のとおりと認められる。
すなわち、
(T-1).前記(C-4)、(C-5)、(Q-1)、(B-5)の記載より、昭和62年11月12日付で保通協の型式申請が受理された2号機は、1ゲームの消化時間が4秒以上とする点を特徴として、昭和63年2月16日に2号機のトップが保通協の検定に合格したこと、及び、当該保通協の試験申請に際して日電協が行う自主審査の為の組合検査基準(昭和62年9月1日制定)には、前記(P-3)、(P-5)に記載されるように、1ゲームの制限時間を記載することが明記されていること。
(T-2).また、回胴式遊技機の機能、構造の自主的製造基準であることが前記(F-2)の記載から明らかである、昭和62年7月1日付日電協内規(証拠L)は、その遊技料金について、前記(L-4)に記載されるように口頭説明とされているが、当該説明の内容は、1ゲームの制限時間に関するものであることは以下の理由により明らかであること。
すなわち、
証拠Jは、内規である証拠Lの直前の内規である証拠G(昭和61年9月8日付内規、昭和61年5月23日実施)を一部変更するための、「62.6.26全体会議 2号機の内規説明」資料であることが前記(J-1)の記載より明らかであり、そこには、1分間おおむね400円の件について、前記(J-2)に記載されるように、1ゲーム毎に制限時間を設定すること、及び当該制限時間計算書を提出することが記載され、当該制限時間、及び計算書については、当該全体会議前の62年6月23日付口頭説明案に、前記(H-1)のように「22 遊技料金について」の項に記載され、当該「遊技料金」については、前記全体会議と同日付の内規の一部訂正案に、前記(K-4)のように「口頭説明」と変更記載されている。
さらに、2号機に関する連絡事項として日電協から発せられた証拠Mには、日電協内規(62.7.1付)、即ち内規である証拠Lに関連付けて、前記(M-2)に記載される、1ゲーム毎の時間制限、及び、その時間配分を書類で提出する旨記載されているが、当該証拠lには前記(T-1)のように、2号機の特徴である、1ゲームの消化時間、すなわち、1ゲームの制限時間に関する直接的記載は認められないから、当該1ゲームの制限時間については、当該証拠Lに記載された規定では、口頭説明事項となっていることは明らかである。
してみると、証拠Pの組合検査基準に見られる1ゲームの制限時間は、前記(J-1)記載のように、関係当局への陳情等により、証拠Gに記載された内規の一部、すなわち、「22 遊技料金について」を、前記(H-1)、(J-2)の口頭説明のように変更した証拠Lの内規に基づいたものであることは、当該内規の性格、すなわち、前記(F-2)に記載されるように、日電協内規が日電協の組合員に対する回胴式遊技機の製造基準であるとの性格に照らして、明らかである。
以上のように、内規である証拠Lに記載された「遊技料金」の口頭説明の内容が1ゲーム毎の制限時間に関することは明らかである。
(T-3).また、遊技料金に関して、内規である証拠Lの変更前の規定は、前記(G-4)、(G-5)に記載されるように、1分以内にメダル数24枚を越える遊技が出来ないこと、及び1分以内に24枚のメダルに達したら、当該1分が経過するまで次の遊技ができない旨の規定であり、当該規定は証拠Eの陳情書に記載された前記(E-4)の、1分間に9回(メダル3枚使用の場合)を超えるゲームができないようにする為の解決手段として記載されている、回胴が回転しないようにすることと軌を一にするもの、すなわち、1分以内に、3枚×8回=24枚に達したら、次のゲームの開始となる回胴の回転を不能にするものであること。
(T-4).さらに、陳情書に前記(E-2)として記載されている、組合統一ROM、及び封印シールに関しても、それに対応する規定が、前記(G-6),(G-7)として内規に記載されていること。
(T-5).そして、監督官庁からその所管団体への通達、当該団体から監督官庁への陳情等は通常行われることで、このことは日電協の監督官庁である警察庁と、その所管団体である日電協においても変わるものでないことは、前記(C-1)、(C-3)、(J-1)の所轄課、通達等の記載から明らかであるから、前記(B-1)、(B-3)、(S-1)に記載の不正ROM対策として、警察庁から前記(D-1)のような要望を受け、当該要望に対して証拠Eに記載されるような回答、陳情を行うこと、及び回答に従って、前記(B-2)、(B-3)、(S-1)のように封印シール等の自主規制を、製造基準である証拠Gに示される内規として規定すること等は自然なことと認められること。
(T-6).以上のことをさらに、国家公安委員会規則、日電協内規、及び2号機の型式検定について時系列的に整理して要約すると以下のように纏めることができる。
すなわち、
(i).昭和60年に施行された風適法によりパチスロは指定品目とされ、風適法に基づいて型式認定された1号機のROMには、不正ROMが出回った。
(ii).警察庁は、当該不正ROM対策としての封印シール、及び1分間に概ね400円、9回のゲームを越えないことを日電協に要望。
(iii).日電協は、前記要望を受けて、技術委員会で検討し、関係当局に陳情・交渉の後、昭和61年9月8日付訂正済の日電協内規を証拠Gのように作成
(iv).当該証拠Gの内規では売れないのではないかとの疑問の下に開発が頓挫していたが、関係筋に対する、陳情・折衝により、1分間に概ね400円の件については、1ゲーム毎に制限時間を設けること、及びその計算書の提出により合意し、当該合意内容を、昭和62年7月1日付内規(証拠L)に「22 遊技料金について 口頭説明」として取り入れた。
(v).当該「1ゲーム毎に制限時間を設ける」との内容は、保通協が行う型式認定に先立つ組合検査基準として、昭和62年9月1日付で制定され、当該組合検査基準には、マル秘は記載されていない。
(vi).当該組合検査基準に基づいて製造された「ウインクル」が、2号機のトップとして保通協の型式検査に昭和63年2月16日合格

[3].前記証拠のまとめ
してみると、1ゲーム毎に制限時間を設定した回胴式遊技機は、本件考案出願(昭和62年10月21日)前に、当業者にとって周知の回胴式遊技機(以下「周知回胴式遊技機」という)であると認められる。
また、このことは本件考案の詳細な説明の記載、すなわち、「そこで近年、法律によりゲームの進行速度に制限を加え、1回のゲームの進行速度に制限を加え、1回のゲームの実行につき所定の割当時間を設定して、その割当時間内につぎのゲームへ進行するのを禁止する方式のスロットマシンが提案された。<考案が解決しようとする問題点>ところがこの種スロットマシンの場合、割当時間の残存期間中は次回のゲーム開始操作を行ってもその操作が無効となるため、遊技者は割当時間の消費後に同じゲーム開始操作を再度行う必要があり、操作が煩雑かつ客サービスに欠けるという問題があった」(甲第1号証第2欄第22行?第3欄第8行)とも合致するものである。

[4].本件考案出願当時の技術
(U).甲第8号証(実願昭56-132193号(実開昭57-131780号)のマイクロフィルム)(以下「証拠U」という)の記載事項
(U-1).「この考案はコイン遊技機に関し、特に1回のゲームで打球できるパチンコ玉数が制限されたコイン遊技機の改良に関する。
たとえば、コイン遊技機においては、コインまたは硬貨の投入に応じて一定個数のパチンコ玉を打球できるようにし、その打球されたパチンコ玉がセーフ穴または入賞装置(ヤクモノ)へ或る確率で入賞したときその入賞状態に応じて所定の景品を払い出すものである。」(第3頁第1?9行)
(U-2).「このようなコイン遊技機は、一定個数のパチンコ玉が貯留されているときのみコイン投入に応じて遊技盤前面の打球待機樋へパチンコ玉を払い出すようにしなければ、所定数だけ打球できず、遊技客に不利益を与えるという問題点がある。
そこで、一定数のパチンコ玉が貯留されている状態においてのみ打球遊技を能動化でき、1回のゲームにおいて確実に一定数のパチンコ玉を打球できるようなコイン遊技機が要望される。」(第3頁第12?末行)
(U-3).「ところで、遊技客によっては、1回のゲーム中に誤ってコインを投入したり、直前のゲームにおいて最後に打球した玉が貯留経路21まで回収される前にコインを投入する場合がある。この場合は、この実施例によれば、次のように動作する。
すなわち、貯留経路21に一定数のパチンコ玉が貯留されていない状態においてコインが投入された場合は、コイン投入検出スイッチ112が投入コインを検出してフリップフロップ41をセットさせても、それまでにスイッチ30の出力がないので、ANDゲート42が「H」信号を導出しない。このため、ソレノイド24が付勢されず、かつ従って貯留経路21に貯留されている一定数に満たないパチンコ玉の放出が行なわれない。このとき、コイン投入検出スイッチ112の出力はフリップフロップ41で記録保持されている。そして、遊技客が1回のゲームで一定数のパチンコ玉が打球終了した後、スイッチ30が検出出力を導出すると,ANDゲート42が「H」信号を導出する。これに応じて、貯留経路21に一定数のパチンコ玉が貯留されている場合の動作と同様の動作が行なわれる。
これによって、遊技客が遊技中に誤ってコインを投入したり、1回のゲームで打球した最後の玉が貯留経路21へ回収される前にコインを投入した場合であっても、一定数の玉を検出するまで次のゲームを開始することなく、遊技者が不利益を受けるのを防止できる利点がある。」(第13頁第7行?第14頁第14行)
(U-4).以上の記載、及び第4図から総合的に判断すると、証拠Uには以下の事項が記載されていることとなる。
すなわち、
一定数のパチンコ玉を打球してセーフ穴または入賞装置(ヤクモノ)へ入賞させるゲームにおいて、ゲーム中に誤ってコインを投入した場合、一定数のパチンコ玉の打球が終了し、貯留経路に一定数のパチンコ玉が貯留されたことが検出される迄、当該一定個数のパチンコ玉は放出されず、次のゲームが開始されないこと。

(V).特開昭61-259685号公報(周知例として、)(以下「証拠V」という)記載事項
(V-1).「上記のごとく構成された可変表示装置4は、前記特定入賞口7および8への入賞球を検出する前記スタートスイッチSW1(第3図)によって起動(トリガー)される。」(第9頁右上欄第16?19行)
(V-2).「可変表示装置4が起動されると、その内部に配設されている上記可変表示部材47,48の4つの表示器LEDA,LEDB,LEDC、LEDDの表示内容が静止状態から変動状態に変化させられる。・・・この表示の変化が停止したときの各表示LEDA,LEDB,LEDC、LEDDに出現した4つの数字が特定の組合せ(出目)になっていること、これによって特別の利益を与える特定態様が発生される。」(第9頁右上欄第19行?同頁左下欄第17行)
(V-3).「また、可変表示装置4の下部の記憶表示ランプLED1?LED4は、上記可変表示部の保留数だけ点灯するように制御される。」(第9頁右下欄第15?17行)
(V-4).「その起動された可変表示装置4の可変表示動作が停止するまでの間に入賞した球の数すなわちスタートスイッチSW1の作動回数を記憶する。この作動回数の記憶があると、つまりその記憶値が1以上になっていると、可変表示装置4は、その可変表示動作が一通り完了した後に再度起動される。そして、可変表示装置4が再起動されると、これに伴って上記記憶値が1ずつ減進(デクリメント)されるようになっている。つまり、この処理ルーチンでは、前記特定入賞口7,8(第2,3図)への入賞により生じたゲーム開始の権利を保全する処理を行う。」(第18頁右上欄第19行?同頁左下欄第13行)
(V-5).してみると、可変表示装置の動作中に、可変表示装置のスタートスイッチが動作した場合、当該スタートスイッチの動作回数を記憶し、可変表示装置の可変表示動作が一通り完了した後に再度起動されること、 すなわち、
現在動作中の動作と同様の動作を開始させる動作開始指示が発せられた場合、当該動作開始指示を記憶しておき、現在の動作終了後に当該記憶に基づいて当該動作を自動的に開始させることは、他にも特開昭61-265161号公報に示されるように周知の技術である。

[5].用語の定義
本件考案において関係する次の用語、すなわち、「ゲーム」、「ゲームの開始」、「ゲームの開始操作」、「回胴式遊技機」の意義を予め明らかにしておく。
<1>.本件考案おける前記用語の関連記載
(1).本件登録実用新案の<産業上の利用分野>欄に、「この考案は、複数のドラムを始動させた後、停止ボタン等により全てのドラムを停止させた際、所定の停止ライン上に並ぶ各ドラムの絵柄が所定の配列をとるか否かでゲームの勝敗を決するスロットマシンに関する。」と記載され、
(2).本件登録実用新案の<従来の技術>欄に、「そしてゲームの実施に際し、まず遊技者はメダルをメダル投入口へ投入し、ついで始動レバーを操作して各ドラムを一斉回転させた後、回転中のドラムを見て適当なタイミングで停止ボタンを押操作して、各ドラムを順次停止させるものである。」と記載され、(第2欄第5?10行)
(3).本件登録実用新案の<考案が解決しようとする問題点>欄に「ところがこの種スロットマシンの場合、割当時間の残存期間中は次回のゲーム開始操作を行ってもその操作が無効となるため、遊技者は割当時間の消費後に同じゲーム開始操作を再度行う必要があり、操作が煩雑かつ客サービスに欠けるという問題があった。」と記載され、(第3欄第3?8行)
(4).本件登録実用新案の<作用>欄に、「もし割当時間内にスロットマシンのゲーム開始操作部により次回のゲーム開始操作を行ったとき、開始制御手段Dは禁止手段Bの禁止解除を受けてその操作を有効化するもので、このときスロットマシンの駆動部は自動的に作動して次回のゲームが開始される。従って遊技者は割当時間の消費後にあらためてゲーム開始操作を行う必要はない。」と記載されている。(第3欄第35?42行)

<2>.用語意義のまとめ
(1).「ゲーム」は、上記<1>.(1)の記載から、複数のドラムを始動させた後、停止ボタンなどにより全てのドラムを停止させ、そのときの停止ライン上の絵柄の組合せを競うもので」あり、
(2).「ゲームの開始」は、上記<1>.(4)の記載から、複数のドラムを始動させることであり、
(3).「ゲームの開始操作」とは、上記<1>.(2)の記載から、メダルを投入口に投入し、始動レバーを操作すること、すなわち、ドラムを始動させる為の操作と認められる。
(4).しかも、当該各用語の意義は、周知のスロットマシンにおいて用いられている用語の意義と同様である
例えば「ゲームの開始」についていえば、実願昭55-126926号(実開昭57-48986号)のマイクロフィルムに記載された、「ゲームの開始を指示するスタートボタンとを有し・・・、上記スタートボタンが操作されたとき上記複数のドラム図形が円周方向に回転を開始し」(実用新案登録請求の範囲第3?9行)、さらには、実願昭60-107563号(実開昭62-18778号)のマイクロフィルムに記載された、「フロントドア2に設けられたメタル投入口3からメダルを投入し、スタートレバー4を引くとリール5?7が回転してゲームが開始される」(第5頁第17?20行)等に見られるように同様である。
(5).回胴式遊技機は、「風適法規制上のパチスロ機の呼称。国家公安委員会規則第4号「遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則」の中で定められている」もので、パチスロは、「原型はスロットマシン。パチンコの島サイズにおさまるようにコンパクトにしたことから、パチンコとスロットが合成してパチスロと呼ばれるようになった。パチスロ専門店もあるがパチンコと比べて機種数も少なく市場規模は小さい。風適法規制上の名称は回胴式遊技機」(「パチンコ業界用語辞典」、平成7年9月20日 株式会社プレイグラフ社 発行 第22頁、第82頁参照)であるから、回胴式遊技機と本件スロットマシンとは同様のものであると認める。


[6].前記[3]に記載された周知回胴式遊技機と本件考案1との対比
<1>.構成の対応関係
前者の「制限時間」は、前記(J-2)、(B-5)に記載されるように、ゲームを進行させる方式として、一般ゲームに割当てられる時間を1回当り6秒とか5.5秒で制限する時間であるから、同様に1回のゲームを実行するのに割り当てられた時間である、後者の「割当時間」に相当する。

<2>.前記周知回胴式遊技機と本件考案1との一致点、相違点
両者は、1回のゲームを実行するための割当時間が設定されたスロットマシンにおいて一致し、その為の具体的手段について、前者は格別記載されていないのに対し、後者は、下記(1)?(4)の手段が記載されている点において相違する。
相違点
(1).後者は、割当時間の時間消費を計時するために計時手段を具備してしている点、
(2).後者は、割当時間内では次回ゲームへの進行を禁止する禁止手段を具備している点、
(3).後者は、割当時間が消費された時は、次回へのゲーム進行禁止手段を、解除手段にて解除する点、
(4).後者は、割当時間内に次回の開始操作が行われた場合、割当時間が消費されたときに、次回のゲームを自動的に開始させるものである点、
なお、何らかの動作を実行する際には、当該動作を実行させる為の具体的実行手段を伴うものであることは当業者にとっては周知の技術事項であるが、本件考案1には当該具体的実行手段は記載されていないので、本件考案1に記載されている各種手段は、当業者が宜為し得るものと認める。

<3>.相違点の検討
相違点(1)について、
1回のゲームの実行に要する時間が割り当てられている以上、当該時間を計時するための計時手段が必要となることは、当業者ならば、当然想到する程度の技術的事項である。
したがって、当該相違点は格別のものではない。

相違点(2)について、
当該周知回胴式遊技機は、前記の様に1分間に9回を越えるゲームができないようにする旨の規制をクリアする為に、1回のゲームの実行に要する時間が制限されたものであるから、割当時間消化前に次回のゲームが実行されてはならないことは、当該割当時間を設定した趣旨、及び、同様の規制をクリアする為に複数回のゲームではあるがゲームの実行時間が割り当てられた時間経過前には次回のゲームを実行させないことが前記(E-4)、(G-5)に記載されているように当業者にとっては明らかなことであり、その為の具体的担保手段として、当該割当時間内に次回のゲームを実行させない禁止手段を具備させる程度のことは当業者がきわめて容易に想到できることである。
したがって、当該相違点は格別のものではない。

相違点(3)について、
当該禁止手段は、割当時間内に次回のゲームへの進行を禁止するものであるが、ゲームは1回で終了するものではなく、1日に何回も実行されるものである。
したがって、ゲームの進行禁止を解除しなければ、割当時間消費後の次回ゲームが実行できないことは明らかであるから、1回のゲームが終了したときに進行禁止を解除する解除手段を具備させることは、当業者ならばきわめて容易に想到する事項である。
したがって、当該相違点も格別のものではない。

相違点(4)について、
現在動作中の動作と同様の動作を開始させる動作開始指示が発せられた場合、当該動作開始指示を記憶しておき、現在の動作終了後に当該記憶に基づいて当該動作を自動的に開始させることは、前記(V-5)に見られるように周知の技術であるから、割当時間内に次回の動作開始指示を受けても次回の動作を直ちに開始できない前記周知回式胴遊技機が、割当時間内に次回の動作開始指示を受けた場合の対応として、前記周知の技術を採用することは当業者ならばきわめて容易に為し得る程度の事項である。
さらには、ゲーム中に次回のゲーム用にコインを投入した場合に、一定数のパチンコ玉を検出するまで、すなわち、現在のゲームが終了した後、次回のゲームを人手を介さずに開始させることも前記(U-4)に記載されているように既に行われている事項である。
しかも、当該事項を前記周知回胴式遊技機に適用する点に困難性は認められない。
したがって、当該相違点は、前記(V-5)に記載される周知の技術、または証拠(U)に記載された事項に基づいて当業者がきわめて容易に為し得る程度の事項であり、格別のものではない。

<4>.被請求人の主張、それに対する当審の見解
(1).甲第5号証、及び甲第10号証の1について、
被請求人は、「甲第5号証は、押印がされておらず、文書の真正は推定されない(民事訴訟法第228条第4項)。一方、弁護士法第23条に基づく照会申出書に添付した甲第10号証の1は、甲第5号証と一見同じ文書を添付(添付書類2)している。
このことは、甲第10号証の1の添付書類2は、当該無効審判申立ての後に作成された(印鑑が押印された)文書である可能性を示唆している」旨を主張する。(平成15年3月7日付上申書 第2頁 [1]甲第5の文書の真正に対する疑問)
*当審の見解
甲第10号証の1には、被請求人が引用する民事訴訟法第228条第4項の規定に則った押印が認められ、しかも被請求人は、単に可能性がある旨主張するに留まり、推定を覆す証拠は提出されていないから、被請求人の当該主張は理由がない。

(2)甲第20号証の1?4について、
被請求人は、「甲第20号証の1?4によれば、「回胴式遊技機の機能及び構造等(日電協内規)」において「22.遊技料金について」の欄が設けられ、昭和61年9月8日訂正版までは「1分間に24枚を超える遊技メダルを投入して遊技ができる構造でないこと」と定められていたのに対し、昭和62年7月1日付訂正版では、それが「口頭説明とする」となったことが示されているが、当該「口頭説明とする」の記載は、内規として「1回のゲームの実行につき所定の割当時間が設定されたこと」を意味しない」旨を主張する。(平成15年3月7日付上申書 第9頁 [5]甲第20号証の1?4の評価)
*当審の見解
「回胴式遊技機の機能及び構造等(日電協内規)」の昭和62年7月1日訂正版における「22.遊技料金について」の項に記載された「口頭説明とする」との内容が、内規として「1回のゲームの実行につき所定の割当時間が設定されたこと」を意味するものであることは、前記(T)に記載したとおりであるから、当該主張は理由がない。

(3)「1ゲーム当りの制限時間」について、
被請求人は、「「1ゲーム当りの制限時間」は、1ゲームの実行時間が制限時間より短くならないようにすること(設計すること)を意味するものであって、1回のゲームの実行に割当時間を設定して割当時間が消費するまで次回のゲームへの進行を禁止する意義の時間ではない」旨を主張する。(平成15年3月18日付上申書 第2頁 (1)1ゲーム当りの制限時間の技術的意義)」
*当審の見解
1ゲームの実行時間が制限時間より短くならないとの規定から、1ゲームは当該制限時間より前に終了しないことは明らかなことであるから、当該制限時間中は必然的に次回のゲームが進行しないこととなり、その意義は本件考案1と相違しない。
仮に、被請求人の主張の如く、1ゲームの実行時間が制限時間より短くならないように設計することを意味するものであるとしても、設計どおりに動作しない場合には設計どおりの動作となる様に手直しすることは周知の技術的事項であり、その手直し手段として、例えば、前記(E-4)、(G-5)に記載される様に、制限時間が経過するまで回胴の回転を止めることも当業者ならば適宜為し得る手段である。
したがって、「1ゲーム当りの制限時間」を「1ゲームの実行時間が制限時間より短くならないように設計する」意味としても、上記の様に実質的に変わるものではないから、当該主張は理由がない。

(4)「ゲームの開始操作」について、
被請求人は、「甲第8号証における「ゲームの開始操作」は、パチンコ玉の打球を開始するために打球装置を操作することであり、一定個数のパチンコ玉が放出されただけではゲームは始まらず、実際にパチンコ玉が打球されることによってゲームが始まるのである。
そこで、両者のゲーム操作の対応関係を見ると、
本件考案1における、(i)「ゲーム」、(ii)「ゲーム操作」、(iii)「ゲームの開始」、(iv)「ゲームの開始操作」、(v)「ゲーム開始の準備操作」は、各々(i)「ドラム始動?絵柄合わせ」、(ii)「停止釦操作」、(iii)「ドラム始動」、(iv)「始動レバー操作」、(v)「メダル投入」であり、甲第8号証においては、各々(i)「打球?入賞」、(ii)「全ての打球操作」、(iii)「1発目の打球」、(iv)「ゲームの開始操作」、(v)「ゲーム開始の準備操作」となる」旨を主張する。(平成15年3月7日付上申書 第10頁 第1行?第13頁第10行)
*当審の見解
本件考案における「ゲーム」が、複数のドラムを始動させた後、停止ボタンなどにより全てのドラムを停止させ、そのときの停止ライン上の絵柄の組合せを競うもので、「ゲームの開始」は、ドラムを停止ボタンで停止できる状態となるように、複数のドラムを始動させることであることは、前記[5].<2>.用語意義のまとめに記載したとおりである。
一方
証拠(U)においては、「ゲーム」が、放出された一定数のパチンコ玉を打球し、セーフ穴、ヤクモノへ入賞させるものであるから、「ゲームの開始」は、打球できる状態となること、すなわち、一定個数のパチンコ玉が放出されることとなる。
このことは、証拠(U)の記載からも明らかである。
すなわち、
前記(U-4)には、遊技中に誤ってコインと投入した場合であっても、パチンコ玉を全て打球し終わった後、一定数のパチンコ玉を検出するまで次のゲームを開始しないこと、そして、一定数のパチンコ玉が検出されるとパチンコ玉が放出されること等が記載されている。
してみると、ゲームの手順は、(i)コインが投入されたか否かを判断し、(ii)投入されたならば一定個数のパチンコ玉が貯留されているか否かを判断し、(iii)一定個数のパチンコ玉が貯留されている場合は、一定個数のパチンコ玉が放出され、(iv)パチンコ玉を打球し、(v)打球されたパチンコ玉が、セーフ穴、ヤクモノへの入賞するか否かを判断することとなる。
一方、本件考案1の手順は、(i)コインが投入されたか否かを判断し、(ii)投入されていれば始動レバーを操作し、(iii)ドラムが回転し、(iv)回転しているドラムを停止ボタンを操作して停止させ、(v)停止したドラムの絵柄が所定絵柄か否かを判断することとなる。
してみれば、一定個数のパチンコの放出が、ドラムの回転に対応するものとなる。
したがって、当該主張は理由がない。

<5>.本件考案1のまとめ
本件考案1は、周知回胴式遊技機、前記(V-5)に記載された周知の技術、及び証拠Uに記載された事項に基づいて当業者がきわめて容易に考案できたものである

[7].請求項2の検討
請求項2に記載された本件考案2は、請求項1に記載された本件考案1を、さらに、計時手段、禁止手段、解除手段、開始手段をマイクロコンピュータ回路で構成する点を限定したものである。
しかしながら、
各種実行手段をマイクロコンピュータ、及びその回路を用いて構成することは、例を挙げるまでもなく周知の技術的事項であるから、本件考案2も、前記周知回式胴遊技機、前記(V-5)に記載された周知の技術、及び証拠(U)に記載された事項に基づいて当業者がきわめて容易に為し得る程度の事項である。


第五.結論
本件考案1,2は、以上のように、前記周知回胴遊技機、前記(V-5)に記載された周知の技術、及び証拠(U)に記載された事項に基づいて当業者がきわめて容易に考案できたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定に違反して実用新案登録されたものであり、同法第37条第1項第2号に該当し、その余の理由を検討するまでもなく無効とすべきものである。
審判に関する費用については、同法第41条の規定で準用する特許法第169条第2項の規定においてさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2003-05-07 
結審通知日 2003-05-12 
審決日 2003-06-05 
出願番号 実願昭62-161617 
審決分類 U 1 112・ 121- Z (A63F)
最終処分 成立    
前審関与審査官 長谷部 善太郎尾崎 淳史  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 村山 隆
瀬津 太朗
登録日 1997-03-12 
登録番号 実用新案登録第2148009号(U2148009) 
考案の名称 スロットマシン  
代理人 黒田 博道  
代理人 室谷 和彦  
代理人 尾崎 英男  
代理人 稲岡 耕作  
代理人 藤本 昇  
代理人 三山 峻司  
代理人 薬丸 誠一  
代理人 山上 和則  
代理人 鈴木 由充  

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