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審決分類 審判    A63C
管理番号 1114710
審判番号 無効2004-40003  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2005-05-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-05-10 
確定日 2005-03-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第3092574号実用新案「滑走面の劣化防止並びに固形ワックスの均一な浸透塗布に用いる簡易均一浸透塗布器具」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
本件登録実用新案第3092574号(平成14年5月30日出願)は、平成14年12月25日に実用新案権の設定登録後、平成16年5月10日付で請求人・ロックス株式会社より請求項1ないし請求項3に係る考案の実用新案登録につき登録無効の審判請求を受けたものであって、無効の理由が通知され、その指定期間内である平成16年7月26日に答弁書の提出がなされたものである。

2.本件考案
本件登録実用新案第3092574号の請求項1ないし請求項3に記載された考案は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし請求項3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】略四角形の中空体であって、滑走面の劣化防止並びに固形ワックスの均一な浸透塗布に用いるものであり、上部開口部(2)および側面開口部(3)を有する保温容器(1)に発熱体(4)で構成される簡易均一浸透塗布器具。
【請求項2】上部開口部(2)および側面開口部(3)を有する保温容器(1)を特徴とする請求項1記載の簡易均一浸透塗布器具
【請求項3】保温容器(1)に柔軟性を有する保温層および断熱層を形成してなる請求項1記載の簡易均一浸透塗布器具」(以下、それぞれ「本件考案1」ないし「本件考案3」といい、まとめて「本件考案」という。)

3.請求人の主張
請求項1ないし請求項3に係る考案は、その出願の日前の出願であって、その出願後に出願公開がされた甲第1号証の出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の考案者が甲第1号証の出願の発明者と同一でなく、且つこの出願の時において、その出願人が甲第1号証の出願の出願人と同一ではないので、実用新案法第3条の2の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、その実用新案登録は実用新案法第37条第1項第2号の規定に該当し無効とすべきである。

(証拠方法)
甲第1号証:特願2002-35012号(特開2003-230655号)

4.被請求人の主張
本件考案に係る滑走面の劣化防止並びに固形ワックスの均一な浸透塗布に用いる簡易均一浸透塗布器具は、スキーおよびスノーボードの滑走面に、電熱アイロンにより固形ワックスを溶かしながら浸透塗布する事前に用いて、前記スキーおよびスノーボードを固形ワックスの溶ける中程度の温度に均一に加熱保温することにより、前記スキーおよびスノーボードの滑走面に、前記固形ワックスの溶ける中程度の温度の電熱アイロンにより、固形ワックスを溶かしながら簡易に均一な浸透塗布ができると共に、前記スキーおよびスノーボードの滑走面を、高温の電熱アイロンにより固形ワックスと同時に温めながら溶かし、幾度も繰り返す浸透塗布に原因する滑走面の劣化防止を目的としたものである。
しかしながら、甲第1号証に記載された発明は、事前に用いる均一な浸透塗布器具とは考えられない。
本件考案は、保温容器に収容のための開口部とは別に、保温効果の低下が予想された側面開口部を設けることによって、本器具を小型軽量、並びに容易に移動できる効果を奏する。そして、締め具装着状態のスキーおよびスノーボードの形状に対応し、屋外であっても若干の対応を有することから使用範囲が広い。
したがって、請求人の主張する無効理由には理由がない。

5.甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、下記の事項が記載されている。
a.「【請求項1】スキー板の収容部を設け、前記収容部の構成面内に面状発熱体を収装して成るスキー板用ワックス浸透装置。
【請求項2】前記収容部を縦に2つに仕切り、その仕切壁内に前記面状発熱体を収装した請求項1に記載のスキー板用ワックス浸透装置。
【請求項3】前記収容部を布製とすることにより、折畳み及び/又は、丸め込みを可能にした請求項1又は2に記載のスキー板用ワックス浸透装置。
【請求項4】前記収容部の内面に、遠赤外線放射繊維その他の蓄熱保温素材を配した請求項1乃至3のいずれかに記載のスキー板用ワックス浸透装置。
【請求項5】開閉自在の蓋を備えた請求項1乃至4のいずれかに記載のスキー板用ワックス浸透装置。
【請求項6】前記収容部の前記面状発熱体収装面以外の構成面内に、断熱材を内包した請求項1乃至5のいずれかに記載のスキー板用ワックス浸透装置。
【請求項7】前記収容部内にスキー板支持部材を配した請求項1乃至6のいずれかに記載のスキー板用ワックス浸透装置。」(特許請求の範囲)。
b.「【発明の属する技術分野】本発明はスキー板用ワックス浸透装置、より詳細には、スキー板のワクシングに当たり、ワックスを十分に浸透させるためのスキー板用ワックス浸透装置に関するものである。」(段落【0001】)。
c.「本発明の実施の形態を添付図面に依拠して説明する。図1は、本発明に係るスキー板用ワックス浸透装置の外観例を示すもので、図中1、2はスキー板の収容部を示す。収容部1、2は単室であってもよいが、通例、収容部を縦に2分し、その仕切壁を以て加熱側面3とする。」(段落【0006】)。
d.「収容部1、2は、好ましくは、厚手の布製として全体を折畳み及び/又は丸め込み可能にする。更に好ましくは、収容部1、2の内面に遠赤外線放射繊維その他の蓄熱保温素材を配する。そのためには、収容部1、2自体を遠赤外線放射繊維布等で構成することとしてもよいし、収容部1、2の内面に該繊維布を縫着することとしてもよい。」(段落【0007】)。
e.「6は収容部1、2を開閉する蓋で、ファスナー、面ファスナー等の係着手段を介し、開閉可能にする。また、7は手提部で、必要に応じて設ける。上記構成の装置は、折畳んだり、丸めたりして小さくして携帯することができる。使用に際しては、蓋6を開き、固形ワックスを擦り付けたスキー板10を、その裏面が加熱側面3に当接するようにして収容部1、2内に入れ、蓋6を閉めて、スキー板10の裏面を面状発熱体4で加熱する。面状発熱体4にはサーモスタットを装備させ、その加熱温度は、例えば、60℃に設定する。この状態で、例えば7?8時間放置しておくと、その間にワックスが溶けて、徐々にスキー板10に浸透していく。その浸透は、スキー板10の全長に亘って迅速に、ほぼ均一に進行し、ワックスの毛羽立ちや白化状態が起こらずに、良好な浸透状態が得られる。」(段落【0009】?【0011】)。
f.「また、上面(蓋)を加熱側面として、スキー板を裏返しに収容するようにすることも可能である。その場合は、収容部を単室にし、スキー板を安定させるために、図3に示すような、板保持部8aを有するスキー板支持部材8を収容部内に装入することもある。このスキー板支持部材8は、携帯性を考慮して、分割可能にすることもある(図3(B))。」(段落【0014】)。
g.図1、図2からみて、スキー板の収容部を設けて成るスキー板用ワックス浸透装置が、略四角形の中空体である点、および該中空体の上面(蓋6)が、その3辺の部分でファスナー等の係着手段を介して開閉される点が見てとれる。

6.当審の判断
6-1.本件考案1について
上記甲第1号証の記載a?gを含む明細書及び図面の記載からみて、甲第1号証には、下記の発明が記載されている。
「略四角形の中空体であって、スキー板のワクシングに当たり、ワックスを十分に浸透させるためのスキー板用ワックス浸透装置であり、該中空体の上面の蓋6が、該蓋6の3辺の部分に設けられたファスナー、面ファスナー等の係着手段を介し開閉する保温機能を有する収容部1、2に面状発熱体4で構成されるスキー板用ワックス浸透装置。」(以下、「先願発明」という。)
そこで、本件考案1と先願発明とを対比する。
先願発明の「略四角形の中空体」、「保温機能を有する収容部1、2」、「面状発熱体4」、「スキー板用ワックス浸透装置」は、それぞれ本件考案1の「略四角形の中空体」、「保温容器(1)」、「発熱体(4)」、「簡易均一浸透塗布器具」に相当する。
本件考案1の「上部開口部(2)」と、先願発明の「蓋6の3辺の部分に設けられたファスナー、面ファスナー等の係着手段を介し開閉される部分」とは、「スキー板等を保温容器に収容するために設けられた上部開口部」である点で共通する。
そうすると、両者は、
「略四角形の中空体であって、スキー板等を保温容器に収容するために設けられた上部開口部を有する保温容器に発熱体で構成される簡易均一浸透塗布器具。」で一致し、次の各点で相違する。
相違点1:本件考案1では、側面開口部(3)を有するとしているのに対して、先願発明では、側面開口部を有していない点。
相違点2:簡易均一浸透塗布器具について、本件考案1では、滑走面の劣化防止並びに固形ワックスの均一な浸透塗布に用いるものであるとしているのに対して、先願発明では、スキー板のワクシングに当たり、ワックスを十分に浸透させるためのものであるとしている点。

上記相違点について検討する。
相違点1について。
請求人は、上部開口部(2)および側面開口部(3)について、「その明細書全体及び図面を参酌しても、上部開口部(2)及び側面開口部(3)は共に、スキー及びスノーボードを収容するために開閉されるものであること以外に記載がなく、それ以上の作用効果を奏するものではないことが明らかであるので、それは、甲第1号証におけるファスナー等の係着手段が取り付けられる蓋6と収容部1,2との間に形成される開口部と機能的に何ら変わりのないものである。バッグ等の収容体に、収容作業の便を考えて複数の開口部を設けることは、周知・慣用技術である。従って、2つの開口部を有するとの点は、周知・慣用技術の付加に過ぎず、しかも、請求項1に係る考案は、そのことによって、何ら新たな効果を奏するものではないので、上記「2つの開口部を有する」との点は、課題解決のための微差に過ぎず、請求項1に係る考案は、甲第1号証の出願の当初の明細書又は図面に実質的に記載されていたと考えるのが至当である。」(平成16年5月10日付け審判請求書 第5頁25行?第6頁2行)旨主張する。
しかしながら、本件考案1は、相違点1のように、保温容器が上部開口部に加えて側面開口部を有することにより、滑走面を備える各種寸法のスキーやスノーボード等を収納させる際に、締め具が装着されているか否かに応じて使用する開口部を選択できる作用効果だけでなく、滑走面以外の部分や滑走面の一部をはみ出して収納可能にすることにより、保温容器の小型軽量化並びに容易に移動できる作用効果をも奏するものと認められる。
ところで、バッグ等の収容体に、収容作業の便を考えて複数の開口部を設けることは、確かに、周知・慣用技術であるが、それは複数の開口部のそれぞれに対して個別の収容空間が存在する場合の事である。複数の開口部のそれぞれから同一の収容空間に対してアクセスできるような複数の開口部を設けること、保温効果の低下が予測されるにもかかわらず複数の開口部を設けることまでもが、周知・慣用技術であるとはいえない。そして、後者の技術に対して、請求人からは周知・慣用技術である旨の具体的な刊行物等の提出はなされていない。
また、上記甲第1号証の明細書又は図面には、上部開口部に加えて側面開口部を有する構成及び上記作用効果について何らの記載も示唆もなく、また、上部開口部に加えて側面開口部を有する構成は、当該技術分野において周知のものでもない。
してみると、請求人が主張するように、一般に、バッグ等の収容体に、収容作業の便を考えて複数の開口部を設けることが周知・慣用技術であったとしても、側面開口部を設ければ保温効果の低下が予測される先願発明に、上記周知・慣用技術を適用する動機付けが存在しない。
したがって、相違点1は、単なる周知・慣用技術の付加とはいえないから、問題解決のための設計上の微差ということができず、上記請求人の主張は採用することができない。

次に相違点2について。
本件考案1を特定する事項である「滑走面の劣化防止並びに固形ワックスの均一な浸透塗布に用いるもの」に関して、本件実用新案登録明細書には、「スキーおよびスノーボードの滑走面を高温の電熱アイロンにより、固形ワックスと同時に温めながら溶かし、幾度も繰り返す浸透塗布に原因する滑走性および操作性に悪影響をおよぼす滑走面の劣化」(段落【0006】)、「スキーおよびスノーボードの滑走面に、電熱アイロンにより固形ワックスを溶かしながら浸透塗布する事前に、前記簡易均一浸透塗布器具を用いて、前記スキーおよびスノーボードを固形ワックスの溶ける中程度の温度に均一に加熱保温することにより、前記スキーおよびスノーボードの滑走面に、前記固形ワックスの溶ける中程度の温度の電熱アイロンにより、固形ワックスを溶かしながら簡易に均一な浸透塗布ができる。」(段落【0002】)と記載されている。
そして、被請求人は、「本考案は、ワクシングの事前に滑走面を均一に加熱することで、安定したアイロン温度でワックスをむらなく溶かし、滑走面のアイロンの範囲をむらなく溶けたイソパラフィンで密封し、アイロンを押し付けながら移動する荷重と熱伝導によって、アモルファスにイソパラフィンを吸収及び接着させることが簡易にできるとしたものである。」(平成16年7月26日付け審判事件答弁書第10頁第17?20行参照)旨、主張する。
しかしながら、ワクシングの事前に滑走面を均一に加熱する、という、浸透塗布器具の使用方法は、実用新案登録請求の範囲の記載に基づく主張とは認められない。
一方、先願発明も、上記記載eからみて、ワックスをほぼ均一に浸透させるものであり、固形ワックスの均一な浸透塗布に寄与するものであると共に、加熱温度も例えば60℃に設定されているので、高温の電熱アイロンにより固形ワックスと同時に温めながら溶かし、幾度も繰り返す浸透塗布に原因する滑走面の劣化防止にも効果的であると解される。
ところで、甲第1号証の上記記載eには、特許請求の範囲に記載された発明の一実施態様として、スキー板に固形ワックスを擦り付けた状態で、これをワックス浸透装置に収容する旨の記載があるが、先願発明ないしは甲第1号証の特許請求の範囲に記載された発明は、あくまでもワックス浸透塗布器具の収容体の内部に面状発熱体を設けることをその発明の要旨とするものである。
そして、ワクシングの前後の何れの段階で簡易均一浸透塗布器具を使用するかは、使用者が適宜選択し得るものである。さらに、先願発明のワックス浸透装置は、ワクシングの前後の何れの段階においても使用可能であると考えるのが自然であるから、仮に本件考案1が「ワクシングの事前に滑走面を均一に加熱する」ものであったとしても、先願発明との間に差異はない。
してみれば、相違点2は実質的な相違点とはいえず、単なる表現上の差異にすぎない。

尚、被請求人は、発熱体(4)の設置部位について、「本件明細書には、発熱体4上面にスキーおよびスノーボード9が置かれ前記本容器に収容されると記載されているが、甲第1号証の明細書全体及び図面を参酌しても、面状発熱体の位置は、加熱側面として、側面及び上面と記載されており、下面の記載がないことから、発熱体が下面にあり、ワックスを付着した滑走面を下向きに置いた状態で当接加熱することによって、溶けたワックスは当接した発熱体上面を流れ出し滑走面に十分に浸透しないことから、甲第1号証の出願の当初の明細書又は図面に実質的に記載されていないと考えるのが至当である。」(平成16年7月26日付け審判事件答弁書第8頁第17?26行参照)旨主張するが、本件実用新案登録請求の範囲の請求項1には、発熱体(4)の設置部位については何らの限定も付されていない。
したがって、被請求人の上記主張は、実用新案登録請求の範囲の記載に基づくものとは認められず、これを採用することはできない。

以上より、本件考案1は先願発明と同一であるとはいえない。

6-2.本件考案2及び本件考案3について
上記のとおり、本件考案1が先願発明と同一であるとはいえない以上、本件考案2及び本件考案3も先願発明と同一であるとはいえない。

7.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由および提出した証拠方法によっては、本件考案1乃至本件考案3に係る実用新案登録を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、実用新案法第41条において準用する特許法第169条第2項の規定でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2005-01-07 
結審通知日 2005-01-12 
審決日 2005-01-25 
出願番号 実願2002-4089(U2002-4089) 
審決分類 U 1 114・ 16- Y (A63C)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 砂川 克
特許庁審判官 番場 得造
谷山 稔男
登録日 2002-12-25 
登録番号 実用新案登録第3092574号(U3092574) 
考案の名称 滑走面の劣化防止並びに固形ワックスの均一な浸透塗布に用いる簡易均一浸透塗布器具  
代理人 齋藤 晴男  
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