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審決分類 審判    G11B
管理番号 1122959
審判番号 無効2004-40006  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2005-10-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-10-04 
確定日 2005-08-31 
事件の表示 上記当事者間の登録第3064179号実用新案「テ?プデッキ用の駆動モ?タノイズ対策機構」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第3064179号の請求項1乃至請求項4に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
1.手続の経緯
本件実用新案登録第3064179号の請求項1乃至請求項4に係る考案についての出願は、平成11年5月24日に実用新案登録出願され、平成11年(1999年)9月8日にその考案について実用新案の設定登録(請求項の数4)がなされたものである。
これに対し、平成16年10月4日付けで大宇電子ジャパン株式会社(以下、「請求人」という。)より実用新案登録無効審判の請求がなされ、平成16年12月2日付けで被請求人船井電機株式会社(以下、「被請求人」という。)より審判事件答弁書が提出された。

2.本件考案
本件実用新案登録第3064179号の請求項1乃至請求項4に係る考案は、実用新案登録された明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1乃至請求項4に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
(A) デッキシャーシに取り付けられた、キャプスタン軸を駆動するダイレクトPWM駆動のモータと、ヘッドを有する回転シリンダ及び固定シリンダから成るシリンダドラムとを備えたテープデッキにおいて、
(B) 前記ダイレクトPWM駆動モータのステータコアと前記デッキシャーシ又は前記シリンダドラムとの間を電気的に絶縁した
(C) ことを特徴とするテープデッキ用の駆動モータノイズ対策機構。
【請求項2】
(B') 前記ダイレクトPWM駆動モータのステータコアを、絶縁体を介して前記デッキシャーシに取り付けた
(C) ことを特徴とする請求項1に記載のテープデッキ用の駆動モータノイズ対策機構。
【請求項3】
(B") 前記ダイレクトPWM駆動モータは、キャプスタン軸となる回転軸と、前記ステータコアを保持すると共に前記キャプスタン軸を軸支する軸受けホルダとを有し、前記軸受けホルダを介して、前記ダイレクトPWM駆動モータを前記デッキシャーシに取り付け、前記軸受けホルダ又はビス締め部に絶縁材料を用いた
(C) ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のテープデッキ用の駆動モータノイズ対策機構。
【請求項4】
(B''') 前記シリンダドラムを、絶縁体を介して前記デッキシャーシに取り付けた(C) ことを特徴とする請求項1に記載のテープデッキ用の駆動モータノイズ対策機構。」

なお、請求項1において、「デーキシャーシ」とあるのは、「デッキシャーシ」の誤記であることが明らかであるので、請求項1の記載を上記のとおり認定した。
また、請求項1乃至請求項4の符号は、当審で便宜上付与した。

3.審判請求人の主張

〔3-1〕無効とすべき理由の概要
本件審判請求人は、以下の証拠方法を提出するとともに、
(1) 実用新案登録第3064179号(以下、「本件実用新案登録」という)は、実用新案登録請求の範囲の記載が、平成10年法律第51号改正昭和34年法律第123号実用新案法(以下、「実用新案法」という)第5条6項2号に規定する要件を満たさないにもかかわらず看過されて登録されたものであるから、同法第37条1項4号の規定に該当し、無効である旨、
(2) 本件実用新案登録は、考案の詳細な説明の記載が、実用新案法第5条4項に規定する要件を満たしていないにもかかわらず看過されて登録されたものであるから、同法第37条1項4号の規定に該当し、無効である旨、
(3) 本件実用新案登録は、実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る登録実用新案(以下、「本件登録実用新案1」という)、実用新案登録請求の範囲の請求項2に係る登録実用新案(以下、「本件登録実用新案2」という)、実用新案登録請求の範囲の請求項3に係る登録実用新案(以下、「本件登録実用新案3」という)が甲第2号証に記載の考案であるにもかかわらず看過され、実用新案法第3条1項3号の規定に違反してなされたものであるから、同法第37条1項2号の規定に該当し、無効である旨、
(4) 本件実用新案登録は、本件登録実用新案1?3が、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証及び第5号証に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるにもかかわらず看過され、実用新案法第3条2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第37条1項2号の規定に該当し、無効である旨、
(5) 本件実用新案登録は、実用新案登録請求の範囲の請求項4に係る登録実用新案(以下、「本件登録実用新案4」という)が甲第2号証、甲第3号証及び第5号証に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるにもかかわらず看過され、実用新案法第3条2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第37条1項2号の規定に該当し、無効である旨、
主張する。

<証拠方法>
甲第1号証:実用新案登録第3064179号公報
甲第2号証:特開平5-191958号公報
甲第3号証:実開平5-21342号公報
甲第4号証:特開平1-235091号公報
甲第5号証:特開平8-190784号公報
甲第6号証:IEEE電気・電子用語辞典956頁
甲第7号証:注解:改正特許・実用新案法の運用のてびき 特許庁調整課
審査基準室長 平山孝二編、136頁13行から137頁8行
甲第8号証:実用新案登録出願平11-03540書類目録
甲第9号証:平成16年(ワ)第12975号 実用新案権侵害行為差し止め
等請求事件 原告(本審判の被請求人、以下同じ)訴状
甲第10号証:平成16年(ワ)第12975号 実用新案権侵害行為差し止め
等請求事件 平成16年7月14日提出の被告(本審判の請
求人、以下同じ)答弁書及び証拠説明書
甲第11号証:平成16年(ワ)第12975号 実用新案権侵害行為差し止め
等請求事件 平成16年8月27日提出の被告準備書面(1)
及び証拠説明書

〔3-2〕具体的無効理由
請求人は、審判請求書において、具体的に本件実用新案登録を無効にすべき理由を、概要以下のとおり主張する。

【本件登録実用新案1について】
(1)本件登録実用新案
本件登録実用新案は、登録査定時の実用新案登録請求の範囲の請求項1乃至請求項4に記載されたとおりのものである(上記「2.」を参照。)。

(2)実用新案法第5条6項2号違反について
本件登録実用新案1において、構成要件(B)は「ステータコアとデッキシャーシ又はシリンダドラムとの間を電気的に絶縁した」と作用的に記載されているだけで、どのような構成で電気的に絶縁するのか特定されておらず、不明瞭である。「絶縁した」とは、「電流が通るのに高い抵抗を提供する誘電体(空気を含む)により他の導体表面から隔離された状態」(甲第6号証:IEEE電気・電子用語辞典956頁)をいう。つまり、構成要件(B)は、状態を規定しているだけであって、実用新案法の保護対象である物品の構造、形状又は組み合わせに係る考案(実用新案法第1条)の構成を特定していない。
実用新案登録出願の登録実務における考案の特定に際して、作用的な記載が認められるとしても、作用的な記載以外に特定の方法がない場合に限られるべきであって、構成を特定できる場合にまで作用的な記載が認められているわけではない。「電気的に絶縁」する状態とは、当業者であれば容易に具体的な構成を記載できないものではないから、作用的な記載は本来ならば認められるべきではなく、その意味では、本件登録実用新案1の記載は不明確である。
実用新案法の保護対象は、「物品の形状、構造又は組み合わせに係る考案」(実用新案法第1条)であり、「形状とは線や面などで表現された外形的形象をいい、例えばカムの形、歯車の歯形、工具の刃型のようなものである。構造とは空間的、立体的に組み立てられた構成で、物品の外観だけでなく、平面図と立面図とにより、場合によっては更に側面図や断面図を用いて表現されるような構成である。組み合わせとは、物品の使用時又は不使用時においてその物品の二個あるいはそれ以上のものが空間的に分離した形態にあり、またそれらのものは、独立して一定の構造又は形状を有し使用によりそれらのものが機能的に互いに関連して使用価値を生む場合を…いう」(甲第7号証;注解:改正特許・実用新案法の運用のてびき 特許庁調整課審査基準室長 平山孝二編、136頁l3行から137頁8行)。このような視点からすれば、「電気的に絶縁した」なる本件登録実用新案1の記載からは、物品の形状、構造又は組み合わせのいずれも観念できず、実用新案法の保護対象である考案の構成を特定することができないということになる。
なお、平成五年改正実用新案法においては、「実体審査を経ることなく実用新案権の設定登録を受けるために実用新案登録出願が満たすべき要件(基礎的要件)」として、「実用新案登録出願にかかる考案が物品の形状、構造または組み合わせにかかるものでないとき」、「その実用新案登録出願の願書に添付した明細若しくは図面に必要な事項が記載されておらず、又はその記載が著しく不明確であるとき」には、特許庁長官が補正すべきことを命ずることが可能となった(平成5年改正実用新案第6条の2)。
しかし、基礎的要件に関する特許庁の具体的な運用は、「第5条に規定された記載不備のうち、不備の程度が著しいものだけを対象としている。したがって、基礎的要件不備に該当しない記載不備であっても第5項違反により無効事由となる場合がある。」(甲第7号証・141頁*7部分1行目から4行目)とされており、出願段階において基礎的要件不備が指摘されなかったことを理由に、本件実用新案登録1の記載が記載要件を満たしているとはいえない。
以上のように、本件登録実用新案1の記載は、実用新案法第5条6項2号に規定する要件を満たしていない。よって、本件実用新案登録は、同法第37条1項4号の規定により無効にすべきである。

(3) 実用新案法第5条4項違反について
本件登録実用新案1の構成要件(B)として「ステータコアとデッキシャーシ又はシリンダドラムとの間を電気的に絶縁した」と記載されている一方、本件実用新案公報の考案の詳細な説明には、「ダイレクトPWM駆動モータを用いた場合、……(略)……駆動コイルに与えられる電圧は高く、その電流を断続するために、図4に示すように、矩形電流の立ち上がり、立下り時に高調波成分が発生し、これが大きなスイッチングノイズ成分となり、このノイズ成分の電流がステータコアに誘起される。ここに、モータが導電材料のデッキシャーシに電気的に導通状態で取り付けられているために、ノイズ成分の電流は、デッキシャーシに伝播され……(略)……高周波ノイズがヘッドアンプ等に飛び込む」(甲第1号証・4頁20行目から5頁2行目)という記載だけでなく、「ダイレクトPWM駆動モータが動作したときに、比較的に高電圧の電流が断続されるため、同モータのステータコアには高調波成分を含んだスイッチングノイズが発生するが、ステータコアとデッキシャーシ又はシリンダドラムとの間を電気的に絶縁しているので、スイッチングノイズがデッキシャーシ又はシリンダドラムに伝播することはなくなり」(甲第1号証・5頁18行目から22行目)との記載もなされている。また、同考案の詳細な説明には、「ダイレクトPWM駆動モータのステータコアを、電気的に絶縁するために、絶縁体を介してデッキシャーシに取り付け」(甲第1号証・5頁33行目から34行目)、絶縁体として「樹脂成形品」(甲第1号証・6頁6行目)を用いることが記載されている。
これらの記載から、本件登録実用新案1は、『ダイレクトPWM駆動モータを用いる場合に発生する高調波成分がスイッチングノイズ成分となり、このスイッチングノイズ成分の電流がステータコアからデッキシャーンを介してシリンダドラムに伝播することによって、高周波ノイズがヘッドアンプ等に飛び込むことになる』という問題を解決するため、『ステータコアを樹脂成形品からなる絶縁体を介してデッキシャーシ又はシリンダドラムに取り付け』ることで、このノイズ成分を含む電流の伝播を電気的に絶縁したノイズ対策機構を意図するものであると解釈することができる。
本件実用新案登録公報においては、「電気的に絶縁した」と記載され、フィルタリングとは異なることが示されており、具体的にはどのような構成で「電気的に絶縁した」ことによってノイズ成分の伝播を阻害できたのかが明らかではない。本件実用新案公報の詳細な考案の説明の欄には、ステータコアからデッキシャーシ又はシリンダドラムへの伝播を阻害すべき「高周波ノイズ成分」がどの程度の高周波であるか明記されていない。また、本件実用新案公報の詳細な考案の説明において「絶縁体」とされている「樹脂成形品」がいかなる電気抵抗を有するものであるのか、どの程度の高周波ノイズ成分の伝播を阻害するのか、同考案の詳細な説明の欄には何ら明記されていない。さらに、本件実用新案公報のどこにも、ステータコアからデッキシャーシ又はシリンダドラムへの高周波ノイズ成分の伝播が阻害されたことを示すデータは記載されていない。
このように、本件実用新案登録公報の記載内容からは、ステータコアで発生する高調波成分を含んだスイッチングノイズがデッキシャーシ又はシリンダドラムに伝播することを防止するための具体的な構成及びその作用効果は不明であって、当業者が過度の試行錯誤を繰り返さずに本件登録実用新案1に係る考案を実施することは不可能である。
以上のように、本件実用新案登録公報の考案の詳細な説明の欄の記載内容からは、樹脂成形品である絶縁体によって電気的に絶縁したとされる電流には高周波ノイズ成分は含まれず、高周波ノイズ成分はデッキシャーシ及びシリンダドラムに伝播すると解することが合理的であって、本件登録実用新案1に係る考案を当業者が過度の試行錯誤を繰り返さずに容易に実施できる程度にまで明確かつ十分に記載されているとはいえない。
したがって、本件実用新案登録公報の考案の詳細な説明は、実用新案法第5条4項に規定する要件を満たしていない。よって、本件実用新案登録は、同法第37条1項4号の規定により無効にすべきである。

(4)実用新案法第3条1項3号及び同2項違反について
<甲第2号証(特開平5-191958号公報:平成5年(1993年)7月30日公開)>
ア) 甲第2号証の記載
甲第2号証には、同公報記載の発明の出願日である平成3年(1991年)1l月26日以前の従来技術として、ビデオテープレコーダー等においてテープやメカニズムを駆動するキャプスタンモータが用いられていることが記載されており、さらに「一般に周知のキャプスタンモータは、図3に示すように駆動コイル1を外周部に巻回したステータコア2をステータとし、その内周部分は軸受ホルダー3の鍔部3aの低い部分に、駆動コイル1に通電する駆動電流を制御する回路等を構成した回路基板4とともにねじ止め固定されている。また、軸受ホルダーの鍔部3aの高い部分には、図示しないテープレコーダのメカシャーシ14にねじ止め固定される。この軸受ホルダー3は、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォーン等の樹脂によって形成され、強度を高めるために30%のガラスファイバーが添加されていて、体積固有抵抗値は10^(16)Ωcmの非導電性である。……(略)……軸受ホルダー3の中心孔内部には、上下一対の軸受5、5が圧入嵌着され、キャプスタン軸6を支持している。」(甲第2号証・2頁左欄20行目から36行目:段落0002)と記載されている。
このように、甲第2号証には、『ビデオテープデッキ用のキャプスタン駆動モータにおいて、キャプスタン軸の軸受ホルダーを非導電性樹脂で形成し、キャプスタン軸の軸受ホルダーは、キャプスタン軸6を包囲して、メカシャーシl4とキャプスタン軸6とステータコアとが直接接触しないように設けられており、ステータコアとメカシャーシ(デッキシャーシ)との間を電気的に絶縁している』ことが記載されている。すなわち、甲第2号証には、本件登録実用新案1の構成(A)キャプスタン軸を駆動するキャプスタンモータを備えたテープデッキであって、(B)ダイレクト駆動モータのステータコアと前記デッキシャーシとの間を電気的に絶縁した点が記載されている。
イ) 甲第2号証に記載の考案と本件登録実用新案1との対比
甲第2号証には、本件登録実用新案1の構成(A)デッキシャーシに取り付けられた、キャプスタン軸を駆動するキャプスタンモータを備えたテープデッキである点、構成(B)前記キャプスタンモータのステータコアと前記デッキシャーシとの間を電気的に絶縁した点で一致し、甲第2号証には(イ)デッキシャーシ上にシリンダドラムが設けられていると明記されていない点、(口)キャプスタンモータがPWM駆動モータであると明記されていない点、並びに(ハ)駆動モータノイズ対策機構であると明記されていない点で異なる。
ウ) 以下、相違点について検討する。
a) まず、デッキシャーシの上にシリンダドラムが設けられているとは明記されていない点について検討する。
本件登録実用新案の出願時において、ビデオテープデッキのデッキシャーシの上にシリンダドラムを設けることは周知である。例えば、甲第4号証(特開平1-235091号公報:公開日平成元年(1989年)9月20日)には、メカシャーシ15に立設された固定ドラムと回転軸ヘッドを実装してなる磁気ヘッド装置が取り付けられた回転ドラムとを同軸上に設けた、ヘリカルスキャン方式の磁気記録再生装置が示されている(甲第4号証・1頁左下欄末行から右下欄8行目及び第1図から第3図)。また、甲第5号証(特開平8-190784号公報:公開日平成8年(1996年)11月29日)には、「磁気テープを記録媒体とするヘリカルスキャン方式の磁気記録再生装置では、たとえばメカシャーシ上に配置され、磁気ヘッドを搭載した回転ドラムによって、磁気テープ上に信号の記録あるいは再生を行っている」(甲第5号証・3欄40行目から44行目:段落0002)ことが記載されている。このように、甲第2号証においてシリンダドラムが明記されていないとしても、当業者にはその常識の範囲内として、ビデオテープのデッキシャーシ上にはシリンダドラムが設けられているとと解することに何ら困難もない。そして、キャプスタンモータのステータコアとデッキシャーシとが電気的に絶縁されているならば、デッキシャーシ上に載置されるシリンダドラムとも電気的に絶縁されることは当業者には自明である。
b) 次に、キャプスタンモータがPWM駆動モータであるか否か不明である点について検討する。
本件実用新案登録公報の従来技術の欄には、ビデオテープデッキ用のキャプスタン駆動モータとしてPWM駆動モータを用いることが一般的であることが記載されている(甲第1号証・4頁9行目から16行目)以上、当業者には、甲第2号証においてキャプスタンモータの駆動方式としてPWM方式を採用することに何らの困難もない。
c) 最後に、駆動モータノイズ対策機構であるか否か不明である点について検討する。
一般に、キャプスタンモータがPWM駆動方式であるか否かにかかわらず、駆動モータからノイズが発生することは当業者の技術常識である。甲第2号証には駆動モータノイズ対策機構について言及がないとしても、キャプスタン軸を包囲してメカシャーシとキャプスタン軸とステータコアとが直接接触しないように設けるキャプスタン軸の軸受ホルダーを非導電性樹脂で形成することが一般的であったことは少なくとも記載されている。これは、本件実用新案登録公報に記載の「軸受けホルダを介して、ダイレクトPWM駆動モータをデッキシャーシに取り付け」、「軸受けホルダを(絶縁材料である)樹脂成形品とす」(甲第1号証・6頁2行目から6行目)る構成と同一の構成である。そうであるならば、甲第2号証の特許出願明細書に記載の技術において、本件登録実用新案1と同一の作用効果が得られるはずであり、「駆動モータノイズ対策機構」であることはかかる効果の単なる追認に過ぎない。
d) まとめ
以上のように、本件実用新案登録出願時における当業者の技術常識を勘案すれば、甲第2号証の特許出願明細書には、実質的に本件登録実用新案1が既に開示されていたといえる。一歩譲ったとしても、本件実用新案登録出願時の技術常識を加味すれば、当業者は甲第2号証に記載の考案に基づいてきわめて容易に本件登録実用新案1をなしえたといえる。つまり、本件実用新案登録1は、当業者が本件実用新案登録出願(平成11年(l999年)5月24日)前に日本国内又は外国において頒布された刊行物(甲第2号証[公開日:平成5年(1993年)7月30日]に記載の考案であるか、又は少なくとも甲第2号証に記載の考案に基づいて周知技術(甲第4号証[公開日:平成元年(1989年)9月20日]及び甲第5号証[公開日:平成8年(1996年)11月29日])を組み合わせることによって当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。
よって、本件登録実用新案1は、実用新案法第3条1項3号に規定する考案であるか、又は少なくとも同法第3条2項の規定に該当する考案である以上、これに違反して登録されたものであって、同法第37条1項2号の規定により無効にすべきである。

<甲第3号証(実開平5-21342:平成5年(1993)3月19日公開)>
ア) 甲第3号証の記載
甲第3号証には、「テープを駆動するためにキャプスタンシャフトが設けられたフライホイールを直接駆動する、いわゆるダイレクトドライブ式カセットテープレコーダの構造に関する」(甲第3号証・4頁3行目から6行目、段落0001)考案が記載されている。同公報の図1ないし図3には同公報記載の考案であるダイレクトドライブ式カセットテープレコーダの一実施例の平面図、側面図及び要部断面図が示されており、「キャプスタンシャフト2はフライホイール4に一体的に固定されており、シャーシ1に固定された軸受6に回転自在に保持されている。一方前記フライホイール4のシャーシ1に面した側には、S極、N極に交互に着磁されたマグネット3が固着されモータのロータとしての役目も同時に果たしている。シャーシ1は鉄板、亜鉛ダイキャスト、プラスチック等で構成され、リール9、ヘッドスペース12などを安定に保持するのに十分な強度を有している。また、前記シャーシ1の前記フライホイール4に固定されたマグネット3に相対する面には前記フライホイール4の回転を制御するのに必要な制御用回路パターン7が絶縁層8を介してエッチング等により形成されている。この形成法はまず、シャーシ1にポリイミド等の絶縁材を接着し、更にその上に銅箔を前面に亘って接着することによって素材を作りその上から必要パターンをスクリーン印刷法、ホトレジストネ去等により形成し、しかる後、エッチング液に浸して不要部分の銅箔を化学的に削り落として最終パターンにした後、半田付けに必要な銅箔以外は保護膜として絶縁レジストを塗布して作る方法が一般的である」(甲第3号証・7頁3行目から22行目:段落0020?0024)と記載されている。また、シャーシ1上に載置されるものとして「シャーシ1には一対のリール9をそれぞれ回転自在に保持するためのシャフト17、モーターユニットのキャプスタンシャフト2を安定に保持するための軸受け6、録再ヘッド11及びテープ駆動用ピンチローラ10が取り付けられたヘッドベースl2、ヘッドベース12を上下方向に移動するためのアシストベース13、アシストベース13を駆動するための欠歯部を有する駆動ギア16が取り付けられている」(甲第3号証・5頁6行目から11行目:段落0009)と記載されている。
このように、甲第3号証には、『シャーシ1の一面にポリイミド等の絶縁材を接着させることによって、キャプスタン軸を駆動するダイレクト駆動モータの駆動コイル5と、シャーシ1とを電気的に絶縁し、ひいてはシャーシ1上に載置されている録再ヘッド11とを電気的に絶縁する』ことが記載されている。
イ) 本件登録実用新案1と甲第3号証に記載の考案との対比
甲第3号証には、本件登録実用新案1の構成(A)デッキシャーシに取り付けられた、キャプスタン軸を駆動するダイレクト駆動のモータを備えたテープデッキである点、及び構成(B)ダイレクト駆動モータのロータとデッキシャーシ又は録再ヘッドとの間を電気的に絶縁する点で一致し、甲第3号証においては、(a)デッキシャーシ上に備えられているのが録再ヘッドであり、ヘッドを有する回転シリンダ及び固定シリンダからなるシリンダドラムとは明記されていない点、及び(b)モータ駆動方式がPWMであると明記されていない点で相違する。
ウ) 以下、相違点について検討する。
a) まず、甲第3号証に記載の録再ヘッドと、本件登録実用新案1と記載のシリンダドラムとの相違点について検討する。
本件実用新案登録出願時において、ビデオテープデッキのデッキシャーシの上にシリンダドラムを設けることは当業者にとって、周知である。例えば、甲第4号証(特開平l-235091号公報:公開日平成元年(1989年)9月20日)には、メカシャーシ15に立設された固定ドラムと回転軸ヘッドを実装してなる磁気ヘッド装置が取り付けられた回転ドラムとを同軸上に設けた、ヘリカルスキャン方式の磁気記録再生装置が示されている(甲第4号証・1頁左下欄末行から右下欄8行目及び第1図から第3図)。甲第5号証(特開平8-190784号公報:公開日平成8年(1996年)11月29日)には、「磁気テープを記録媒体とするヘリカルスキャン方式の磁気記録再生装置では、たとえばメカシャーシ上に配置され、磁気ヘッドを搭載した回転ドラムによって、磁気テープ上に信号の記録あるいは再生を行っている」(甲第5号証・3欄40行目から44行目:段落0002)ことが記載されている。甲第3号証に記載の録再ヘッドも甲第4号証及び甲第5号証に記載のシリンダドラムも共に磁気テープの録再ヘッドである点において変わりなく、当業者にとって、甲第3号証に記載の録再ヘッドを甲第4号証又は甲第5号証に記載のシリンダドラムに置換することに何らの困難もない。
b) 次に、甲第3号証に記載のダイレクト駆動モータがPWM駆動モータであるか否か不明である点について検討する。
本件実用新案登録公報の従来技術の欄には、ビデオテープデッキ用のキャプスタン駆動モータとしてPWM駆動モータを用いることが一般的であることが記載されている(甲第1号証・4頁9行目から16行目)以上、当業者にとって、甲第3号証においてダイレクト駆動モータの駆動方式としてPWM方式を採用することに何らの困難もない。
c) 最後に、駆動モータノイズ対策機構であるか否か不明である点について検討する。
一般に、ダイレクト駆動モータがPWM駆動方式であるか否かにかかわらず、駆動モータからノイズが発生することは当業者の技術常識である。甲第3号証に記載のカセットテープレコーダにおいては、同公報の図1(カセットテープレコーダの平面図)に示されているように、また一般的なカセットテープレコーダとビデオテープレコーダとの寸法の相違を考慮すれば自明であるように、録再ヘッド11と駆動モータ(フライホイール4)との距離は、本件実用新案登録公報図1に示されているシリンダドラム3とダイレクト駆動モータ20との距離よりも短い。このことから、甲第3号証に記載の考案において、駆動モータから発生するスイッチングノイズの問題はより深刻であると考えられる。かかる甲第3号証で明らかにされた考案においても、本件登録実用新案1と同様に駆動モータのロータとデッキシャーシとの間を電気的に絶縁しているのであるから、本件登録実用新案1でノイズ対策が可能であるならば甲第3号証においても当然にノイズ対策は可能であったはずである。よって、本件登録実用新案1が、ノイズ対策機構である点については、既に先行の実用新案登録出願明細書にも明らかな公知の技術の効果の単なる追認に過ぎず、構成上の相違点とはなりえない。
エ)まとめ
以上のように、本件登録実用新案1は、当業者が実用新案登録出願(平成11年(1999年)5月24日)前に日本国内又は外国において頒布された刊行物(甲第3号証[公開日:平成元年(1989年)9月20日]、甲第4号証[公開日:平成5年(1993年)3月19日]及び甲第5号証[公開日:平成8年(1996年)11月29日])に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条2項の規定に該当する考案である。よって、本件登録実用新案1は、実用新案法第3条2項の規定に違反して登録されたものであるから、同法第37条1項2号の規定により無効にすべきである。

【本件登録実用新案2について】
(1)本件登録実用新案2について
本件登録実用新案2は、登録査定時の実用新案登録請求の範囲請求項2の記載によれば、「前記ダイレクトPWM駆動モータのステータコアを、絶緑体を介して前記デッキシャーシに取り付けたことを特徴とする請求項1に記載のテープデッキ用の駆動モータノイズ対策機構」(甲第1号証・2頁左上欄10行目から13行目:実用新案登録請求の範囲請求項2)である。
本件登録実用新案2は、本件登録実用新案1の従属項であるから、本件登録実用新案1の構成(A)?(C)をすべて含む。よって、本件登録実用新案2を構成要件に分説すると、以下のようになる。
(A) デッキシャーシに取り付けられた、キャプスタン軸を駆動するダイレクトPWM駆動のモータと、ヘッドを有する回転シリンダ及び固定シリンダから成るシリンダドラムとを備えたテープデッキにおいて、
(B') 前記ダイレクトPWM駆動モータのステータコアを、絶縁体を介して前記デッキシャーシに取り付け
(B) 前記ダイレクトPWM駆動モータのステータコアと前記デッキシャーシ又は前記シリンダドラムとの間を電気的に絶縁した
(C) ことを特徴とするテープデッキ用の駆動モータノイズ対策機構。
ところで、本件登録実用新案1に関して上述したように、構成(A)は、従来公知の構成にすぎないから、本件登録実用新案2の特徴は、構成(B')(B)にある。

(2)実用新案法第3条1項3号及び同2頃違反について
<甲第2号証(特開平5-191958号公報:平成5年(1993年)7月30日公開)>
ア)甲第2号証の記載
甲第2号証には、同公報記載の発明の出願日である平成3年(1991年)11月26日以前の従来技術として、ビデオテープレコーダー等においてテープやメカニズムを駆動するキャプスタンモータが用いられていることが記載されており、さらに「一般に周知のキャプスタンモータは、図3に示すように駆動コイル1を外周部に巻回したステータコア2をステータとし、その内周部分は軸受ホルダー3の鍔部3aの低い部分に、駆動コイル1に通電する駆動電流を制御する回路等を構成した回路基板4とともにねじ止め固定されている。また、軸受ホルダーの鍔部3aの高い部分には、図示しないテープレコーダのメカシャーシ14にねじ止め固定される。この軸受ホルダー3は、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォーン等の樹脂によって形成され、強度を高めるために30%のガラスファイバーが添加されていて、体積固有抵抗値は10^(l6)Ωcmの非導電性である。……(略)……軸受ホルダー3の中心孔内部には、上下一対の軸受5、5が圧入嵌着され、キャプスタン軸6を支持している。」(甲第2号証・2頁左欄20行目から36行目)と記載されている。
このように、甲第2号証には、ビデオテープデッキ用のキャプスタン駆動モータにおいて、キャプスタン軸の軸受ホルダーを非導電性樹脂で形成し、キャプスタン軸の軸受ホルダーは、キャプスタン軸6を包囲して、メカシャーシ14とキャプスタン軸6とステータコアとが直接接触しないように設けられていることが記載されている。換言すれば、甲第2号証には、『構成(A)デッキシャーシに取り付けられた、キャプスタン軸を駆動するダイレクト駆動モータを備えたテープデッキにおいて、構成(B')ダイレクト駆動モータ(キャプスタンモータ)のステータコア2を、絶縁体(非導電性軸受けホルダー3)を介してデッキシャーシ(メカシャーシ14)に取り付け、構成(B)ステータコア2とデッキシャーシ14との間を電気的に絶縁した』ことが記載されている。
イ) 本件登録実用新案2の構成と甲第2号証記載の発明との対比
甲第2号証には、本件登録実用新案2の構成(A)デッキシャーシに取り付けられた、キャプスタン軸を駆動するキャプスタンモータを備えたビデオテープデッキである点、構成(B')ダイレクト駆動モータ(キャプスタンモータ)のステータコア2を、絶縁体(非導電性軸受けホルダー3)を介してデッキシャーシ(メカシャーシ14)に取り付ける点、及び構成(B)ステータコア2とデッキシャーシ14との間を電気的に絶縁している点で一致し、(a)甲第2号証に記載のデッキシャーシ上にシリンダドラムが設けられていると明記されていない点、(b)キャプスタンモータがPWM駆動モータであると明記されていない点、並びに(c)駆動モータノイズ対策機構であると明記されていない点で異なる。しかし、本件登録実用新案1について上述したように、相違点(a)は本件登録実用新案の出願時における周知技術にすぎず(例えば、甲第4号証[特開平1-235091号公報:公開日平成元年(1989年)9月20日]及び甲第5号証[特開平8-19078号公報:公開日:平成8年(1996年)11月29日])、相違点(b)は本件実用新案登録公報の従来技術の欄にも記載されているように周知技術にすぎず(甲第1号証・4頁9行目から16行目)、相違点(c)は単なる効果の追認にすぎない。よって、相違点(a)(b)(c)は、構成上の相違点とはなり得ない。
ウ)まとめ
以上のように、本件実用新案登録出願時における当業者の技術常識を勘案すれば、甲第2号証の特許出願明細書には、実質的に本件登録実用新案2が既に開示されていたといえる。一歩譲ったとしても、本件実用新案登録出願時の技術常識を加味すれば、当業者は甲第2号証に記載の発明に基づいてきわめて容易に本件登録実用新案2をなしえたといえる。つまり、本件実用新案登録2は、当業者が本件実用新案登録出願(平成l1年(1999年)5月24日)前に日本国内又は外国において頒布された刊行物(甲第2号証[公開日:平成5年(1993年)7月30日])に記載の考案であるか、又は少なくとも甲第2号証に甲第4号証[公開日:平成元年(1989年)9月20日]及び甲第5号証[公開日:平成8年(1996年)11月29日]を組み合わせることにより同刊行物に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。
よって、本件登録実用新案2は、実用新案法第3条1項3号に規定する考案であるか、又は少なくとも同法第3条2項の規定に該当する考案である。本件登録実用新案2は、これに違反して登録されたものであって、同法第37条1項2号の規定により無効にすべきである。

<甲第3号証(実開平5-21342:平成5年(1993)3月19日公開)>
ア) 甲第3号証の記載
甲第3号証には、「テープを駆動するためにキャプスタンシャフトが設けられたフライホイールを直接駆動する、いわゆるダイレクトドライブ式カセットテープレコーダの構造に関する」(甲第3号証・4頁3行目から6行目)考案が記載されている。同公報の図1ないし図3には同公報記載の考案であるダイレクトドライブ式カセットテープレコーダの一実施例の平面図、側面図及び要部断面図が示されており、「キャプスタンシャフト2はフライホイール4に一体的に固定されており、シャーシ1に固定された軸受6に回転自在に保持されている。一方前記フライホイール4のシャーシ1に面した側には、S極、N極に交互に着磁されたマグネット3が固着され、モータのロータとしての役目も同時に果たしている。シャーシ1は鉄板、亜鉛ダイキャスト、プラスチック等で構成され、リール9、ヘッドスペース12などを安定に保持するのに十分な強度を有している。また、前記シャーシ1の前記フライホイール4に固定されたマグネット3に相対する面には前記フライホイール4の回転を制御するのに必要な制御用回路パターン7が絶縁層8を介してエッチング等により形成されている。この形成法はまず、シャーシ1にポリイミド等の絶縁材を接着し、更にその上に銅箔を前面に亘って接着することによって素材を作りその上から必要パターンをスクリーン印刷法、ホトレジスト法等により形成し、しかる後、エッチング液に浸して不要部分の銅箔を化学的に削り落として最終パターンにした後、半田付けに必要な銅箔以外は保護膜として絶縁レジストを塗布して作る方法が一般的である」(甲第3号証・7頁3行目から22行目)と記載されている。また、甲第3号証図2及び図3には、モータ4の駆動コイル5を、絶縁層8を介してシャーシ1に取り付けている状態が明記されている(甲第3号証・2頁から3頁)。
このように、甲第3号証には、『キャプスタン軸を駆動するダイレクト駆動モータの駆動コイル5を、ポリイミド等の絶縁材8を介してシャーシ1に取り付け、両者を電気的に絶縁する』ことが記載されている。
イ) 本件登録実用新案2と甲第3号証に記載の考案との対比
甲第3号証記載の考案は、本件登録実用新案2の構成(A)デッキシャーシに取り付けられた、キャプスタン軸を駆動するダイレクト駆動モータを有するテープデッキである点、構成(B')ダイレクト駆動モータのステータコアを、絶縁体を介してデッキシャーシに取り付ける点、及び構成(B)ダイレクト駆動モータのステータコアとデッキシャーシ又は前記シリンダドラムとの間を電気的に絶縁した点で一致し、甲第3号証においては、(a)デッキシャーシ上に備えられているのがヘッドを有する回転シリンダ及び固定シリンダからなるシリンダドラムとは明記されていない点、(b)モータ駆動方式がPWMであると明記されていない点、及び(c)駆動モータノイズ対策機構であると明記されていない点で異なる。
しかし、本件登録実用新案1について上述したように、相違点(a)は本件登録実用新案の出願時における周知技術にすぎず(例えば、甲第4号証(特開平1-235091号公報:公開日平成元年(1989年)9月20日)及び甲第5号証[特開平8-19078号公報:公開日:平成8年(1996年)11月29日])、相違点(b)は本件実用新案登録公報の従来技術の欄にも記載されているように周知技術にすぎず(甲第1号証・4頁9行目から16行目)、相違点(c)はダイレクト駆動モータと録再ヘッド11との距離がより短い甲第3号証に記載のカセットテープレコーダにおいて駆動モータノイズ対策はより深刻であることを考慮すれば構成(A)(B)及び(B')で一致する以上、当然に同一の効果を奏するのであるから単なる効果の追認にすぎない。よって、相違点(a)(b)(c)は構成上の相違点とはなり得ない。
ウ) まとめ
以上のように、本件登録実用新案2は、当業者が実用新案登録出願(平成11年(1999年)5月24日)前に日本国内又は外国において頒布された甲第3号証[公開日:平成元年(1989年)9月20日]に、甲第4号証[公開日:平成5年(1993年)3月19日]及び甲第5号証[公開日:平成8年(1996年)11月29日]を組み合わせることにより当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条2項の規定に該当する考案である。
よって、本件登録実用新案1は、実用新案法第3条2項の規定に違反して登録されたものであるから、同法第37条1項2号の規定により無効にすべきである。

【本件登録実用新案3について】
(1)本件登録実用新案3について
ア)本件登録実用新案3は、登録査定時の実用新案登録請求の範囲請求項3の記載によれば、「前記ダイレクトPWM駆動モータは、キャプスタン軸となる回転軸と、前記ステータコアを保持すると共に前記キャプスタン軸を軸支する軸受けホルダとを有し、前記軸受けホルダを介して、前記ダイレクトPWM駆動モータを前記デッキシャーシに取り付け、前記軸受けホルダ又はビス締め部に絶縁材料を用いたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のテープデッキ用の駆動モータノイズ対策機構」(甲第1号証・2頁左上欄14行目から21行目:実用新案登録請求の範囲請求項3)である。
イ)本件登録実用新案3は、本件登録実用新案1又は2の従属項であるから、本件登録実用新案1の構成(A)?(C)をすべて含む。よって、本件登録実用新案3を構成要件に分説すると、以下のようになる。
(A) デッキシャーシに取り付けられた、キャプスタン軸を駆動するダイレクトPWM駆動のモータと、ヘッドを有する回転シリンダ及び固定シリンダから成るシリンダドラムとを備えたテープデッキにおいて、
(B") 前記ダイレクトPWM駆動モータは、キャプスタン軸となる回転軸と、前記ステータコアを保持すると共に前記キャプスタン軸を軸支する軸受けホルダとを有し、前記軸受けホルダを介して、前記ダイレクトPWM駆動モータを前記デッキシャーシに取り付け、前記軸受けホルダ又はビス締め部に絶縁材料を用い、
(B) 前記ダイレクトPWM駆動モータのステータコアと前記デッキシャーシ又は前記シリンダドラムとの間を電気的に絶縁した
(C) ことを特徴とするテープデッキ用の駆動モータノイズ対策機構。
ウ)ところで、本件登録実用新案1に関して上述したように、構成(A)は、従来公知の構成にすぎないから、本件登録実用新案3の特徴は、構成(B)及び(B")にある。

(2)実用新案法第3条1項3号及び同2項違反について
<甲第2号証(特開平5-191958号公報:平成5年(1993年)7月30日公開)>
ア)甲第2号証の記載
甲第2号証には、同公報記載の発明の出願日である平成3年(1991年)11月26日以前の従来技術として、ビデオテープレコーダー等においてテープやメカニズムを駆動するキャプスタンモータが用いられていることが記載されており、さらに「一般に周知のキャプスタンモータは、図3に示すように駆動コイル1を外周部に巻回したステータコア2をステータとし、その内周部分は軸受ホルダー3の鍔部3aの低い部分に、駆動コイルーに通電する駆動電流を制御する回路等を構成した回路基板4とともにねじ止め固定されている。また、軸受ホルダーの鍔部3aの高い部分には、図示しないテープレコーダのメカシャーシ14にねじ止め固定される。この軸受ホルダー3は、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォーン等の樹脂によって形成され、強度を高めるために30%のガラスファイバーが添加されていて、体積固有抵抗値は10^(16)Ωcmの非導電性である。……(略)……軸受ホルダー3の中心孔内部には、上下一対の軸受5、5が圧入骸着され、キャプスタン軸6を支持している。」(甲第2号証・2頁左欄20行目から36行目)と記載されている。
このように、甲第2号証には、ビデオテープデッキ用のキャプスタン駆動モータの構成として、「駆動コイル1を外周部に巻回したステータコア2をステータとし、その内周部分は軸受ホルダー3の鍔部3aの低い部分に、駆動コイル1に通電する駆動電流を制御する回路等を構成した回路基板4とともにねじ止め固定されている」こと、及び「軸受ホルダー3の中心孔内部には、上下一対の軸受5、5が圧入嵌着され、キャプスタン軸6を支持している」ことが甲第2号証の出願(平成3年11月26日)以前に周知であったことが記載されている。また、『キャプスタン軸の軸受ホルダーは非導電性樹脂で形成されている』こと、『キャプスタン軸の軸受ホルダーは、キャプスタン軸6を包囲して、メカシャーシ14とキャプスタン軸6とステータコアとが直接接触しないように設けられて、ステータコアとメカシャーシ(デッキシャーシ)との間を電気的に絶縁している』こと、『非導電性樹脂で一体に形成されている軸受けホルダー3の鍔部3aは、メカシャーシ14とのビス締め部である』ことが記載されている。換言すれば、甲第2号証には、『構成(A)デッキシャーシに取り付けられた、キャプスタン軸を駆動するダイレクト駆動のモータを備えたテープデッキであって、構成(B'')ダイレクト駆動モータは、キャプスタン軸となる回転軸と、ステータコアを保持すると共にキャプスタン軸を軸支する軸受けホルダとを有し、軸受けホルダを介して、ダイレクト駆動モータをデッキシャーシに取り付け、軸受けホルダ又はビス締め部に絶縁材料を用い、(B)ダイレクト駆動モータのステータコアとデッキシャーシとの間を電気的に絶縁した』ことが記載されている。
イ)本件登録実用新案3の構成と甲第2号証記載の発明との比較
甲第2号証記載の発明は、本件登録実用新案3の構成(A)デッキシャーシに取り付けられた、キャプスタン軸を駆動するダイレクト駆動のモータを備えたテープデッキである点、構成(B")ダイレクト駆動モータは、キャプスタン軸となる回転軸と、ステータコアを保持すると共にキャプスタン軸を軸支する軸受けホルダとを有し、軸受けホルダを介して、ダイレクト駆動モータをデッキシャーシに取り付け、軸受けホルダに絶縁材料を用いた点、(B)ダイレクト駆動モータのステータコアとデッキシャーシとの間を電気的に絶縁した点で一致し、本件登録実用新案1について上述したように、(a)甲第2号証に記載のデッキシャーシ上にシリンダドラムが設けられていると明記されていない点、(b)キャプスタンモータがPWM駆動モータであると明記されていない点、並びに(c)駆動モータノイズ対策機構であると明記されていない点で異なる。
しかし、本件登録実用新案1について上述したように、相違点(a)は本件登録実用新案の出願時における周知技術にすぎず(例えば、甲第4号証(特開平1-235091号公報:公開日平成元年(1989年)9月20日)及び甲第5号証[特開平8-19078号公報:公開日:平成8年(1996年)11月29日])、相違点(b)は本件実用新案登録公報の従来技術の欄にも記載されているように周知技術にすぎず(甲第1号証・4頁9行目から16行目)、相違点(c)は単なる効果の追認にすぎない。よって、相違点(a)(b)(c)は構成上の相違点とはなり得ない。
ウ) まとめ
以上のように、本件実用新案登録出願時における当業者の技術常識を勘案すれば、甲第2号証の特許出願明細書には、実質的に本件登録実用新案3が既に開示されていたといえる。一歩譲ったとしても、本件実用新案登録出願時の技術常識を加味すれば、当業者は甲第2号証に記載の発明に基づいてきわめて容易に本件登録実用新案3をなしえたといえる。
つまり、本件実用新案登録3は、当業者が本件実用新案登録出願(平成11年(1999年)5月24日)前に日本国内又は外国において頒布された甲第2号証[公開日:平成5年(1993年)7月30日]に記載の考案であるか、又は少なくとも甲第2号証に甲第4号証[公開日:平成元年(1989年)9月20日]及び甲第5号証[特開平8-19078号公報:公開日:平成8年(1996年)11月29日]を組み合わせることにより同刊行物に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。
よって、本件実用新案登録3は、実用新案法第3条1項3号に規定する考案であるか、又は少なくとも同法第3条2項の規定に該当する考案である。本件登録実用新案3は、これに違反して登録されたものであって、同法第37条1項2号の規定により無効にすべきである。

【本件登録実用新案4について】
(1)本件登録実用新案4について
ア)本件登録実用新案4は、登録査定時の実用新案登録請求の範囲請求項4の記載によれば、「前記シリンダドラムを、絶縁体を介して前記デッキシャーシに取り付けたことを特徴とする請求項1に記載のテープデッキ用の駆動モータノイズ対策機構」(甲第1号証・2頁左上欄22行目から右上欄3行目:実用新案登録請求の範囲請求項4)である。
イ)本件登録実用新案4は、本件登録実用新案1の従属項であるから、本件登録実用新案1の構成(A)~(C)をすべて含む。よって、本件登録実用新案4を構成要件に分説すると、以下のようになる。
(A) デッキシャーシに取り付けられた、キャプスタン軸を駆動するダイレクトPWM駆動のモータと、ヘッドを有する回転シリンダ及び固定シリンダから成るシリンダドラムとを備えたテープデッキにおいて、
(B"') 前記シリンダドラムを、絶縁体を介して前記デッキシャーシに取り付け
(B) 前記ダイレクトPWM駆動モータのステータコアと前記デッキシャーシ又は前記シリンダドラムとの間を電気的に絶縁した
(C) ことを特徴とするテープデッキ用の駆動モータノイズ対策機構。
ウ)ところで、本件登録実用新案1に関して上述したように、構成(A)は、従来公知の構成にすぎないから、本件登録実用新案4の特徴は、構成(B"')及び(B)にある。

(2)実用新案法第3条2項違反について
<甲第3号証(実開平5-21342:平成5年(1993)3月19日公開)>
ア)甲第3号証の記載
甲第3号証には、「テープを駆動するためにキャプスタンシャフトが設けられたフライホイールを直接駆動する、いわゆるダイレクトドライブ式カセットテープレコーダの構造に関する」(甲第3号証・4頁3行目から6行目)考案が記載されている。同公報の図1ないし図3には同公報記載の考案であるダイレクトドライブ式カセットテープレコーダの一実施例の平面図、側面図及び要部断面図が示されており、「キャプスタンシャフト2はフライホイール4に一体的に固定されており、シャーシ1に固定された軸受6に回転自在に保持されている。一方前記フライホイール4のシャーシ1に面した側には、S極、N極に交互に着磁されたマグネット3が固着され、モータのロータとしての役目も同時に果たしている。シャーシ1は鉄板、亜鉛ダイキャスト、プラスチック等で構成され、リール9、ヘッドスペース12などを安定に保持するのに十分な強度を有している。また、前記シャーシ1の前記フライホイール4に固定されたマグネット3に相対する面には前記フライホイール4の回転を制御するのに必要な制御用回路パターン7が絶縁層8を介してエッチング等により形成されている。この形成法はまず、シャーシ1にポリイミド等の絶縁材を接着し、更にその上に銅箔を前面に亘って接着することによって素材を作りその上から必要パターンをスクリーン印刷法、ホトレジスト法等により形成し、しかる後、エッチング液に浸して不要部分の銅箔を化学的に削り落として最終パターンにした後、半田付けに必要な銅箔以外は保護膜として絶縁レジストを塗布して作る方法が一般的である」(甲第3号証・7頁3行目から22行目)と記載されている。また、甲第3号証図2及び図3には、モータ4の駆動コイル5を、絶縁層8を介してシャーシ1に取り付けている状態が明記されている(甲第3号証・2頁から3頁)。
このように、甲第3号証には、『キャプスタン軸を駆動するダイレクト駆動モータの駆動コイル5を、ポリイミド等の絶縁材8を接着させたシャーシ1に取り付け、両者を電気的に絶縁する』ことが記載されている。
イ)本件登録実用新案4と甲第3号証に記載の考案との対比
甲第3号証に記載の考案は、本件登録実用新案4の構成(A)デッキシャーシに取り付けられた、キャプスタン軸を駆動するダイレクト駆動モータを有するテープデッキである点、及び構成(B)ダイレクト駆動モータのステータコアとデッキシャーシ又は前記シリンダドラムとの間を電気的に絶縁した点で一致し、甲第3号証においては、(a)デッキシャーシ上に備えられているのがヘッドを有する回転シリンダ及び固定シリンダからなるシリンダドラムとは明記されていない点、よって(a')絶縁体を介して前記デッキシャーシに取り付けられているのがシリンダドラムであるとは明記されていな点、(b)モータ駆動方式がPWMであると明記されていない点、及び(c)駆動モータノイズ対策機構であると明記されていない点、及びで異なる。しかし、相違点(a)及び(c)は下記に示すように甲第5号証に記載されている。

<甲第5号証(特開平8-190784号公報:平成8年(1996年)11月29日公開)>
ア)甲第5号証の記載
甲第5号証には、「本発明は上記のような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、装置の小型化を達成しつつ、作業性や生産性をできるだけ損なうことなく、モータドライバー回路による発熱やノイズによる性能への悪影響を排除し得る磁気記録再生装置を提供することにある」(甲第5号証・5欄3行目から8行目:段落0009)として、甲第5号証記載の発明が、『駆動モータノイズ対策機構』(本件登録実用新案4構成(C)に相当する)を具備した磁気記録再生装置であることが記載されている。つまり、甲第3号証における相違点(c)が記載されている。
また、甲第5号証には、従来の磁気記録再生装置の説明として「磁気テープを記録媒体とするヘリカルスキャン方式の磁気記録再生装置では、たとえばメカシャーシ上に配置され、磁気ヘッドを搭載した回転ドラムによって、磁気テープ上に信号の記録あるいは再生を行っている」(甲第5号証・3欄40行目から44行目:段落0002)と記載され、また、従来の磁気記録再生装置を示す第12図の説明として、「51はメカニズム部を搭載するメカシャーシ、52はモータ類とこれらを駆動制御する電気回路を搭載したサブ基板であり、…メカシャーシ51上には、磁気ヘッド(図示せず)を搭載した回転ドラム53、…などが配置されている。また、サブ基板52上には、…磁気テープを走行駆動させるキャプスタンモータ55、…などが搭載されている」(甲第5号証・4欄10行目から25行目:段落0004及び8頁第4図)と記載されている。このように、甲第5号証記載の発明の出願日である平成7年5月18日(甲第5号証)以前には、『デッキシャーシに取り付けられた、キャプスタン軸を駆動するモータと、ヘッドを有する回転シリンダ及び固定シリンダから成るシリンダドラムとを備えたテープデッキ』(本件登録実用新案4構成要件(A)にほぼ相当する)が公知であったことが記載されている。つまり、甲第3号証における相違点(a)が記載されている。
さらに、甲第5号証記載の発明に係るドライブユニットを示す第1図の説明として、「21はメカニズム系の主体部を搭載した金属板製のメカシャーシで、磁気ヘッド(図示せず)を搭載した回転ドラム22や、回転ドラム22に磁気テープ(図示せず)を巻回すると共に所定のテープ走行路を形成し、磁気テープの走行を案内するガイドローラ、傾斜ピンなどのガイド部材やガイド部材を所定位置まで移動させる移動手段等々を搭載している」(甲第5号証・6欄33行目から40行目:段落0018)及び「24はメカシャーシ21の下側の前方よりに配設されたサブ基板(メカサブ基板)で、このサブ基板24は、金属板に絶縁被覆を施しこの絶縁被覆上に回路パターンを形成したもので構成されている」(甲第5号証・6欄44行目から47行目:段落0019)として、『駆動モータノイズ対策機構として、絶縁被覆を利用する』思想が記載されている。つまり、本件登録実用新案4の基本的な技術思想が開示されている。

<甲第3号証と甲第5号証との組み合わせ>
甲第3号証及び甲第5号証は共に、デッキシャーシに取り付けられたキャプスタン軸を駆動するモータを有するテープデッキである点で共通する。また、モータ駆動によるテープデッキにおいてモータにより発生するノイズ対策は、きわめてありふれた課題である。よって、当業者には、甲第3号証と甲第5号証とを組み合わせることはきわめて容易である。
上述のように、甲第5号証には、甲第3号証と本件登録実用新案4との相違点(a)及び(c)が記載されている。相違点(a')は、甲第3号証の再録ヘッドに代えて甲第5号証のシリンダヘッドを使用すると、相違点ではなくなる。
本件登録実用新案1について上述したように、相違点(b)は本件実用新案登録公報の従来技術の欄にも記載されているように周知技術にすぎない(甲第1号証・4頁9行目からl6行目)。また、モータから発生するノイズ対策は、当該技術分野においてきわめてありふれた課題である。してみると、甲第3号証に明記されていないモータの種類をPWM駆動モータとすることは本件実用新案登録出願当時、きわめてありふれた構成であり、PWM駆動モータにより発生するノイズ対策は当然に考慮されるべき事項であり、ノイズ対策として絶縁体を用いることは甲第4号証に記載されている。
以上のように、本件登録実用新案4の構成要件はすべて、甲第3号証と甲第5号証に記載されている。
さらに付け加えれば、本件登録実用新案1について上述したように、相違点(a)は本件登録実用新案の出願時における周知技術にすぎず(例えば、甲第4号証(特開平1-235091号公報:公開日平成元年(1989年)9月20日)及び甲第5号証[特開平8-19078号公報:公開日:平成8年(1996年)11月29日])、相違点(b)は本件実用新案登録公報の従来技術の欄にも記載されているように周知技術にすぎず(甲第1号証・4頁9行目から16行目)、相違点(c)はダイレクト駆動モータと録再ヘッド11との距離がより短い甲第3号証に記載のカセットテープレコーダにおいて駆動モータノイズ対策はより深刻であることを考慮すれば構成(A)(B)及び(B')で一致する以上、当然に同一の効果を奏するのであるから単なる効果の追認にすぎない。よって、相違点(a)(b)(c)は構成上の相違点になり得ない。
以上のように、本件登録実用新案4は、当業者が実用新案登録出願(平成11年(l999年)5月24日)前に日本国内又は外国において頒布された甲第3号証[公開日:平成元年(1989年)9月20日]と甲第5号証[公開日:平成8年(1996年)11月29日](必要であれば、甲第4号証[公開日:平成5年(1993年)3月19日])に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条2項の規定に該当する考案である。
よって、本件登録実用新案4は、実用新案法第3条2項の規定に違反して登録されたものであるから、同法第37条1項2号の規定により無効にすべきである。

4.被請求人の主張
被請求人(特許権者)は、答弁書において、概要以下のとおり答弁する。

〔4-1〕答弁の概要
後述するように、本件登録実用新案は、実用新案法5条6項2号に規定する要件を満たすものである。
後述するように、本件登録実用新案は、実用新案法5条4項に規定する要件を満たすものである
後述するように、本件明細書の請求項1ないし3に係る考案は、甲第2号証に記載の発明とは構成が異なるものであるから、実用新案法3条1項3号に規定する考案には該当せず、登録要件を具備するものである
後述するように、本件明細書の請求項1ないし3に係る考案は、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたとはいえないから、実用新案法3条2項に規定する考案には該当せず、登録要件を具備するものである。
後述するように、本件明細書の請求項4に係る考案は、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたとはいえないから、実用新案法3条2項に規定する考案には該当せず、登録要件を具備するものである。

〔4-2〕答弁の具体的理由

【本件登録実用新案1について】
(1)本件登録実用新案の出願時において、一般に「ダイレクトPWM駆動モータを用いられることが知られて」(甲第1号証4頁12行目から13行目;段落[0002])いたが、これをビデオテープデッキに実用的に用いるために、特有の困難性を伴っていた。すなわち、「ダイレクトPWM駆動モータを用いた場合、…矩形電流の立ち上り、立下がり時に高調波成分が発生し、これが大きなスイッチングノイズ成分となり、このノイズ成分がステータコアに誘起される。…このスイッチングノイズ成分は、映像帯域や音声帯域の周波数成分をも含むため、ビデオ画面ノイズやオーディオノイズの原因になる。即ち、ダイレクトPWM駆動モータを使用することにより、高周波ノイズがヘッドアンプ等に飛び込むために視聴に耐えない状態となる」(同頁20行目から5頁2行目;段落[0003])というダイレクトPWM駆動モータに特有の問題が生じていた。
このような特有の問題点を解決することが本件登録実用新案の技術課題である以上、ダイレクトPWM駆動モータを使用していることが、本件登録実用新案の前提となっており、「請求項1における構成要件(A)は「キャプスタン軸を駆動するダイレクトPWM駆動のモータ」というのは、従来公知のものにすぎない」(審判請求書10頁6行目から8行目)とする請求人の主張は失当である。
ダイレクトPWM駆動モータを使用していることが、本件登録実用新案の前提となっており、「構成要件(A)…は従来技術にすぎず」とする請求人の主張は失当であり、本件登録実用新案1は、構成要件(B)だけに特徴があるわけではない。

(2)実用新案法第5条6項2号違反について
ア) 本件登録実用新案の請求項1の構成要件(B)の「前記ダイレクトPWM駆動モータのステータコアと前記デッキシャーシ又は前記シリンダドラムとの間を電気的に絶縁した」構成は、甲第1号証の平面図(図3)及び断面図(図2(b))に表現されているように、ステータコア26とデッキシャーシ2との間に絶縁性の軸受けホルダ22を介在させる構造、または、甲第4号証の段落[0017]に記載されているようなデッキシャーシ2とヘッドシリンダ3との間に別部品でなる樹脂スペーサを介在させる構造等を例示して、具体的に述べられている。
したがって、「作用的に記載されているだけで、どのような構成で電気的に絶縁するのか特定されておらず、不明瞭である。」(審判請求書10頁19行目から21行目)とする請求人の主張は失当である。
イ) 構成要件(B)は、上記ア)で述べたように物品の構造に係る考案の構成を特定したものであるから、「構成要件(B)は、…実用新案法の保護対象である物品の構造、形状又は組み合わせに係る考案(実用新案法第1条)の構成を特定していないことになる。」(同頁23行目から26行目)とする請求人の主張は、明らかに間違っている。
ウ) 上記ア)で述べたように、構成要件(B)の「電気的に絶縁した」という構成は、当業者であれば,明細書中の他の記載と相まって、十分に理解可能であるから、本件登録実用新案1の記載からは、物品の構造が観念され、実用新案の保護対象である考案の構成を特定できることは、極めて明らかである。
エ)本件登録実用新案1の記載は、実用新案法第5条6項2号に規定する要件を満たすものであり、無効理由を有するものではない。

(3)実用新案法第5条4項違反について
ア)本件明細書の段落[0016]には、「本実施形態では、軸受けホルダ22を樹脂化したものとする。又は、軸受けホルダ22の樹脂化に代えて、ビス34を樹脂化し、かつ、デッキシャーシ2と軸受けホルダ22とのと当接面に絶縁シートを介在させてもよい。」(甲第1号証8頁13行目16行目)という記載があり、また、段落[0017]には、「デッキシャーシ2のヘッドシリンダ3を取り付けるための傾斜4a、4bに、別部品で成る樹脂スペーサを用いて、ステータコア26すなわちデッキシャーシ2とヘッドシリンダ3との間を電気的に絶縁すればよい」(同8頁26行目から29行目)という記載があり、「電気的に絶縁した」具体的構成が明示されている。
したがって、「具体的にはどのような構成で「電気的に絶縁した」ことによってノイズ成分の伝播を除去することができたのか明らかではない」(審判請求書13頁23行目から25行目)とする請求人の主張は、明らかに失当である。
上記したように、本件明細書には、段落[0016]、[0017]等に「スイッチングノイズがデッキシャーシ又はシリンダドラムに伝播することを防止するための具体的な構成」が開示されている。
また、かかる構成による作用効果については、段落[0019](甲第1号証9頁8行目から15行目)に明示されている。
したがって、「ステータコアで発生する…スイッチングノイズが…伝播することを防止するための具体的な構成及びその作用効果は不明であって、当業者が過度の試行錯誤を繰り返さずに本件登録実用新案1に係る考案を実施することは不可能である。」(審判請求書14頁6行目から10行目)とする請求人の主張は失当である。
本件明細書の考案の詳細な説明の記載は、実用新案法第5条4項に規定する要件を具備しており、無効理由を有するものではない。

(4) 実用新案法第3条1項3号及び同2項違反について
<甲第2号証(特開平5-191958号公報:平成5年(1993年)7月30日公開)について>
ア)甲第2号証に記載の発明と本件登録実用新案1との対比
甲第2号証に「キャプスタンモータのステータコアと前記デッキシャーシとの間を電気的に絶縁した」構成が開示されていることは認めるが、甲第2号証にはキャプスタンモータがダイレクトPWM駆動モータである旨の開示がないのであるから、この構成と本件登録実用新案1の構成(B)(「前記ダイレクトPWM駆動モータのステータコアと前記デッキシャーシ又は前記デッキシリンダとの間を絶縁した」構成)とは異なるものである。
したがって、「構成(B)前記キャプスタンモータのステータコアと前記デッキシャーシとの間を電気的に絶縁した点で一致し」(審判請求書15頁25行目から26行目)とする請求人の主張は失当である。
イ)本件明細書によれば、「ビデオテープデッキ用のキャプスタン駆動モータには、全波又は半波電流リニア駆動式のものが一般に用いられている」(甲第1号証4頁9行目から10行目;段落[0002]のであって、ビデオテープデッキにおいてダイレクトPWM駆動モータを用いることが一般的であるとの記載はない。
確かに、前述のとおり、本件登録実用新案の出願時において、一般的に「ダイレクトPWM駆動モータを用いられることが知られて」(甲第1号証4頁12行目から13行目;段落[0002])いたが、これをビデオテープデッキに実用的に用いるために、特有の困難性を伴っていた。(同頁20行目から5頁2行目:段落[0003]参照)。
したがって、本件登録実用新案の出願時において、「当業者には、甲第2号証においてキャプスタンモータの駆動方式としてPWM方式を採用することに何らの困難もない」(審判請求書16頁29行目から17頁1行目)とする請求人の主張は失当である。
ウ)本件登録実用新案の技術課題は,ダイレクトPWM駆動方式のキャプスタンモータを用いた場合に生じる大きなスイッチングノイズが引き起こす特有の問題点(甲第1号証4頁20行目から5頁2行目:段落[0003]参照)を解決することであるから、「一般に、キャプスタンモータがダイレクトPWM駆動方式であるか否かにかかわらず、駆動モータからノイズが発生することは当業者の技術常識である」(審判請求書17頁4行目から6行目)と主張する請求人は、本件登録実用新案の本質を理解していないものと思われる。
また、甲第2号証には、キャプスタンモータがダイレクトPWM駆動モータである旨の開示がないのであるから、「(甲第2号証に記載の構成が、)本件実用新案登録公報に記載の「軸受けホルダを介して、ダイレクトPWMモータをデッキシャーシに取り付け」、…る構成と同一の構成である」(審判請求書17頁9行目から12行目)とする請求人の主張は失当である。
エ)まとめ
したがって、本件登録実用新案1は、甲第2号証に開示されていたとはいえず、かつ、甲第2号証に記載の発明に基づいてきわめて容易になしえた考案でもない。
また、甲第2号証に記載の考案に甲第4号証及び甲第5号証に記載の技術を組み合わせることによって当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件登録実用新案1は、実用新案法第3条1項3号又は同条2項に規定する考案のいずれにも該当するものではない。

<甲第3号証(実開平5-21342:平成5年(1993年)3月19日公開)について>
ア)シャーシ1に接着されるポリイミド等の絶縁材は、シャーシ1の所定の面に回路パターン(制御用回路パターン7)を形成するための絶縁材であって、ダイレクト駆動モータの駆動コイル5とシャーシ1との間の導通・絶縁とは、何ら関係がない。したがって、甲第3号証には、「ダイレクト駆動モータの駆動コイル5と、シャーシ1とを電気的に絶縁」することも、「シャーシ1上に載置されている録再ヘッド11とを電気的に絶縁する」ことも、いずれも記載されてはいない。
イ)上記したのと同じ理由により、「構成(B)ダイレクト駆動モータのロータとデッキシャーシ又は録再ヘッドとの間を電気的に絶縁する点で一致」(審判請求書19頁9行目から11行目)するとはいえない。
ウ)本件明細書によれば、「ビデオテープデッキ用のキャプスタン駆動モータには、全波又は半波電流リニア駆動式のものが一般に用いられている」(甲第1号証4頁9行目から10行目;段落[0002])のであって、ビデオテープデッキにおいてダイレクトPWM駆動モータを用いることが一般的であるとの記載はない。
確かに、本件登録実用新案の出願時において、一般的に「ダイレクトPWM駆動モータを用いられることが知られて」(甲第1号証4頁12行目から13行目;段落[0002])いたが、これをビデオテープデッキに実用的に用いるために、特有の困難性を伴っていた(同頁20行目から5頁2行目:段落[0003]参照。)。
したがって、「当業者には、甲第2号証においてキャプスタンモータの駆動方式としてPWM方式を採用することに何らの困難もない」(審判請求書16頁29行目から17頁1行目)とする請求人の主張は失当である。
エ)本件登録実用新案の技術課題は、ダイレクトPWM駆動方式のキャプスタンモータを用いた場合に生じる大きなスイッチングノイズが引き起こす特有の問題点(甲第1号証4頁20行目から5頁2行目;段落[0003]参照。)を解決することであるから、「一般に、キャプスタンモータがダイレクトPWM駆動方式であるか否かにかかわらず、駆動モータからノイズが発生することは当業者の技術常識である」(審判請求書20頁26行目から28行目)と主張する請求人は、本件登録実用新案の本質を理解していないものと思われる。
また、請求人は、甲第3号証に記載のカセットテープレコーダにおいては「録再ヘッド11と駆動モータ(フライホイール4)との距離は、本件実用新案登録公報図1に示されているシリンダドラム3とダイレクト駆動モータ20との距離より短い。このことから甲第3号証に記載の考案において、駆動モータノイズ対策はより深刻である」(同頁15行目から17行目)と主張するが、ビデオテープレコーダとカセットテープレコーダとでは、根本的に構成が違うのであるから(例えば、前者では画像信号と音声信号に対するノイズ対策が必要となるが、後者では音声信号に対するノイズ対策だけで良い)、単純に配置距離に基づいて「ノイズ対策が深刻」と主張するのは、明らかに失当である。
さらに、甲第3号証には、上記ア)と同じ理由により、駆動モータのロータとデッキシャーシとの間を電気的に絶縁した構成は開示されていないから、「甲第3号証で明らかにされた考案においても、本件登録実用新案1と同様に本件実用新案登録公報に記載の「軸受けホルダを介して、ダイレクトPWMモータをデッキシャーシに取り付け」、…る構成と同一の構成である」(審判請求書17頁9行目から12行目)とする請求人の主張は失当である。
オ)まとめ
したがって、本件登録実用新案1は、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載の技術を組み合わせることによって当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとはいえず、実用新案法第3条2項に規定される考案には該当しない。

【本件登録実用新案2について】
(1) 本件登録実用新案2について
本件登録実用新案の出願時において、一般的に「ダイレクトPWM駆動モータを用いられることが知られて」(甲第1号証4頁12行目から13行目;段落[0002])いたが、これをビデオテープデッキに実用的に用いるために、特有の困難性を伴っていた(同頁20行目から5頁2行目;段落[0003]参照)。
このような特有の困難性を解決することが本件登録実用新案の技術課題である以上、ダイレクトPWM駆動モータを使用していることが、本件登録実用新案の前提となっており、「構成要件(A)は、従来公知の構成にすぎない」(審判請求書10頁6行目から8行目)とする請求人の主張は失当である。
したがって、本件登録実用新案2の特徴は(B')(B)だけにあるわけではない。

(2) 実用新案法第3条1項3号及び同2項違反について
ア)甲第2号証に「ダイレクト駆動モータ(キャプスタンモータ)のステータコア2を、絶縁体(非導電性軸受けホルダー3)を介してデッキシャーシ(メカシャーシ14)に取り付ける」構成及び「ステータコア2とデッキシャーシ14との間を電気的に絶縁している」構成が開示されていることは認めるが、甲第2号証にはキャプスタンモータがダイレクトPWM駆動モータである旨の開示がないのであるから、これら構成と本件登録実用新案2の構成(B')及び(B)とは異なるものである。
したがって、「構成(B')ダイレクト駆動モータ(キャプスタンモータのステータコア2を、絶縁体(非導電性軸受けホルダー3)を介してデッキシャーシ(メカシャーシ14)に取り付ける点、及び構成(B)ステータコア2とデッキシャーシ14との間を電気的に絶縁している点で一致し」(審判請求書23頁23行目から27行目)とする請求人の主張は失当である。
イ)相違点(b)については、ダイレクトPWM駆動モータを用いるために、特有の困難性を伴っていた(同頁20行目から5頁2行目;段落[0003]参照)。
この困難性を解消しようとするのが、本件登録実用新案の技術課題であるから、「相違点(b)は、本件実用新案登録公報の従来技術にも記載されているように周知技術にすぎず、…相違点(a)(b)(c)は、構成上の相違点とはなり得ない。」(審判請求書24頁6行目から9行目)とする請求人の主張は失当である。
ウ)まとめ
本件登録実用新案2は、甲第2号証に開示されていたとはいえず、かつ、甲第2号証に記載の発明に基づいてきわめて容易になしえた考案でもない。
また、甲第2号証に記載の考案に甲第4号証及び甲第5号証に記載の技術を組み合わせることによって当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとはいえない。
したがって、本件登録実用新案2は、実用新案法第3条1項3号又は同条2項に規定する考案のいずれにも該当するものではない。

<甲第3号証(実開平5-21342;平成5年(1993年)3月19日公開)について>
ア)「シャーシ1に接着されるポリイミド等の絶縁材」は,シャーシ1の所定の面に回路パターン(制御用回路パターン7)を形成するための絶縁材であって、ダイレクト駆動モータの駆動コイル5とシャーシ1との間の導通・絶縁とは、何ら関係がない。したがって、甲第3号証に、「ダイレクト駆動モータの駆動コイル5を、ポリイミド等の絶縁材8を介してシャーシ1に取り付け、両者を電気的に絶縁する」ことが記載されているとする請求人の主張は失当である。
イ)上記ア)と同じ理由により、「構成(B')ダイレクト駆動モータのステータコアを、絶縁体を介してデッキシャーシに取り付ける点,及び構成(B)ダイレクト駆動モータのステータコアとデッキシャーシ又は前記シリンダドラムとの間を電気的に絶縁した点で一致」(審判請求書26頁3行目から6行目)するとはいえない。
ウ)相違点(b)については、ダイレクトPWM駆動モータを用いるために、特有の困難性を伴っていた(甲第1号証4頁20行目から5頁2行目;段落[0003]参照)。
この困難性を解消しようとするのが、本件登録実用新案の技術課題であるから、「相違点(b)は、本件実用新案登録公報の従来技術にも記載されているように周知技術にすぎず、…相違点(a)(b)(c)は、構成上の相違点とはなり得ない。」(審判請求書26頁16行目から23行目)とする請求人の主張は失当である。
エ)甲第3号証に記載の考案と本件登録実用新案2とでは、甲第3号証にはキャプスタン軸を駆動するダイレクト駆動モータがPWM方式である点が開示されていないので、構成要件(A)では一致しておらず、また、上記イ)と同様、構成(B')及び(B)でも一致していない。
したがって、「構成(A)(B)及び(B')で一致する」(審判請求書26頁19行目から20行目)とする請求人の主張は失当であり、かつ「当然同一の効果を奏する」(同頁20行目)とする請求人の主張も根拠を欠くものである。
オ)まとめ
本件登録実用新案2は、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載の技術を組み合わせることにより当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとはいえず、実用新案法第3条2項に規定される考案には該当しない。

【本件登録実用新案3について】
(1)本件登録実用新案3について
本件登録実用新案の出願時において、一般的に「ダイレクトPWM駆動モータを用いられることが知られて」(甲第1号証4頁12行目から13行目;段落[0002])いたが、これをビデオテープデッキに実用的に用いるために、特有の困難性を伴っていた(同頁20行目から5頁2行目:段落[0003]参照。)。
このような特有の困難性を解決することが本件登録実用新案の技術課題である以上、ダイレクトPWM駆動モータを使用していることが、本件登録実用新案の前提となっており、「構成要件(A)は、従来公知の構成にすぎない」(審判請求書10頁6行目から8行目)とする請求人の主張は失当である。
したがって、本件登録実用新案3の特徴は(B)及び(B")だけにあるわけではない。
(2) 実用新案第3条1項3号及び同2項違反について
<甲第2号証(特開平5-191958号公報:平成5年(1993年)7月30日公開)について>
ア)甲第2号証に「ダイレクト駆動モータは、キャプスタン軸となる回転軸と、ステータコアを保持すると共にキャプスタン軸を軸支する軸受けホルダとを有し,軸受けホルダを介して、ダイレクト駆動モータを取り付け、軸受けホルダに絶縁材料を用いた」構成、及び「ダイレクト駆動モータのステータコアとデッキシャーシとの間を電気的に絶縁した」構成が開示されていることは認めるが、甲第2号証にはキャプスタンモータがダイレクトPWM駆動モータである旨の開示がないのであるから、これら構成と本件登録実用新案3の構成(B")及び(B)とは異なるものである。
したがって、「構成(B")ダイレクト駆動モータは、キャプスタン軸となる回転軸と、ステータコアを保持すると共にキャプスタン軸を軸支する軸受けホルダとを有し、軸受けホルダを介して、ダイレクト駆動モータを取り付け、軸受けホルダに絶縁材料を用いた点、(B)ダイレクト駆動モータのステータコアとデッキシャーシとの間を電気的に絶縁した点で一致し」とする請求人の主張は失当である。
イ)相違点(b)については、ダイレクトPWM駆動モータを用いるために、特有の困難性を伴っていた(同頁20行目から5頁2行目:段落[0003]参照。)。
この困難性を解消しようとするのが、本件登録実用新案の技術課題であるから、「相違点(b)は本件実用新案登録公報の従来技術にも記載されているように周知技術にすぎず、…相違点(a)(b)(c)は、構成上の相違点とはなり得ない。」(審判請求書30頁5行目から8行目)とする請求人の主張は失当である。
ウ)まとめ
本件登録実用新案3は、甲第2号証に開示されていたとはいえず、かつ、甲第2号証に記載の発明に基づいてきわめて容易になしえた考案でもない。
また、甲第2号証に記載の考案に甲第4号証及び甲第5号証に記載の技術を組み合わせることによって当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとはいえない。
したがって、本件登録実用新案3は、実用新案法第3条1項3号又は同条2項に規定する考案のいずれにも該当するものではない。

【本件登録実用新案4について】
(1) 本件登録実用新案4について
本件登録実用新案の出願時において、一般的に「ダイレクトPWM駆動モータを用いられることが知られて」(甲第1号証4頁12行目から13行目;段落[0002])いたが、これをビデオテープデッキに実用的に用いるために、特有の困難性を伴っていた。(同頁20行目から5頁2行目;段落[0003]参照。)。
このような特有の困難性を解決することが本件登録実用新案の技術課題である以上、ダイレクトPWM駆動モータを使用していることが、本件登録実用新案の前提となっており、「構成要件(A)は、従来公知の構成にすぎない」(審判請求書10頁6行目から8行目)とする請求人の主張は失当である。
したがって、本件登録実用新案4の特徴は(B''')及び(B)だけにあるわけではない。
(2) 実用新案法第3条2項違反について
<甲第3号証(特開平5-21342号公報;平成5年(1993年)3月19日公開)について>
ア)「シャーシ1に接着されるポリイミド等の絶縁材」は、シャーシ1の所定の面に回路パターン(制御用回路パターン7)を形成するための絶縁材であって、ダイレクト駆動モータの駆動コイル5とシャーシ1との間の導通・絶縁とは何ら関係がない。したがって、甲第3号証に、「ダイレクト駆動モータの駆動コイル5を、ポリイミド等の絶縁材8を接着させたシャーシ1に取り付け、両者を電気的に絶縁」(審判請求書32頁18行目から20行目)することが記載されているとする請求人の主張は失当である。
イ)上記ア)と同じ理由により、「構成(B)ダイレクト駆動モータのステータコアとデッキシャーシ又は前記シリンダドラムとの間を電気的に絶縁した点で一致」(審判請求書32頁24行目から26行目)するとはいえない。

<甲第5号証(特開平8-190784号公報;平成8年(1996年)11月29日公開)について>
甲第5号証の「絶縁被覆」は、サブ基板24に回路パターンを形成するための絶縁被覆であって、駆動モータノイズ対策機構ではない。したがって、「『駆動モータノイズ対策として、絶縁被覆を利用する』思想が記載されている。つまり、本件登録実用新案4の基本的な技術的思想が開示されている。」(審判請求書34頁14行目から16行目)という請求人の主張は失当である。
なお、甲第5号証には、「ノイズ対策」である旨の記載がある(4頁左欄3行目から8行目;段落[0009]参照)が、モータドライバ回路と信号処理回路部27との距離を大きくとることによるものであって(5頁右欄26行目から31行目;段落[0026]参照)、本件登録実用新案における「ノイズ対策」とは技術的思想が根本的に異なるものである。

<甲第3号証と甲第5号証との組み合わせについて>
ア)本件登録実用新案は、ダイレクトPWM駆動モータを使用した場合に特に問題となるノイズ(甲第1号証4頁20行目から5頁2行目;段落[0003]参照。)への対策を技術課題とするものであるから、「モータ駆動によるテープデッキにおいてモータにより発生するノイズ対策は,きわめてありふれた課題である。」(審判請求書34頁20行目から21行目)とする請求人の主張は、甲第3号証及び甲第5号証においてモータ駆動がダイレクトPWM駆動であるとされていない以上、本件登録実用新案の技術的思想とは完全にかけ離れた主張である。
「よって,当業者には、甲第3号証と甲第5号証とを組み合わせることはきわめて容易である。」(同頁21行目から22行目とする請求人の主張もまた、根拠を欠くものと言わざるを得ない。
イ)本件登録実用新案の出願時において、一般的に「ダイレクトPWM駆動モータを用いられることが知られて」(甲第1号証4頁12行目から13行目;段落[0002])いたが、これをビデオテープデッキに実用的に用いるために、特有の困難性(ノイズの発生)を伴っていた(同頁20行目から5頁2行目;段落[0003]参照)。これを解決することが、本件登録実用新案の技術課題であって、「ダイレクトPWM駆動モータによるノイズ対策は当然に考慮されるべき事項」(審判請求書35頁4行目から5行目)と主張する請求人は、本件登録実用新案の本質を理解していないものと思われる。
(b) 請求人は、「ノイズ対策として絶縁体を用いることは甲第4号証に記載されている。」(同頁5行目から6行目)とするが、甲第4号証のいずれの箇所にも、かかる記載はない。
また、「甲第4号証」は、「甲第5号証」の誤記とも考えられるが、仮にそうであるとしても、甲第5号証における「ノイズ対策」は、モータドライバ回路と信号処理回路部27との距離を大きくとることによるものであって(5頁右欄26行目から31行目;段落[0026]参照)、「ノイズ対策として絶縁体を用い」たものでないことは明らかである。
ウ) 本件登録実用新案4の(1)構成要件(A)のうち、キャプスタン軸を駆動するモータがダイレクトPWM駆動であること、(2)構成要件(B)、及び、(3)構成要件(B")は、甲第3号証及び甲第5号証のいずれにも記載されていない。
エ) 請求人は、甲第3号証に記載のカセットテープレコーダにおいては「ダイレクト駆動モータと録再ヘッド11との距離がより短い甲第3号証に記載のカセットテープレコーダにおいて駆動モータノイズ対策はより深刻である」(審判請求書35頁15行目から17行目)と主張するが、ビデオテープレコーダとカセットテープレコーダとでは、根本的に構成が違うのであるから(例えば、前者では画像信号と音声信号に対するノイズ対策が必要となるが、後者では音声信号に対するノイズ対策だけで良い)、単純に配置距離に基づいて「ノイズ対策が深刻」と主張するのは、明らかに失当である。
オ) 本件登録実用新案4の構成要件(A)及び(B)及び(B''')については、上記ウ)同様、甲第3号証及び甲第5号証のいずれにも記載されていないのであるから、「構成(A)(B)及び(B')((B''')の誤記であると思われる。)で一致する以上、当然に同一の効果を奏する」(35頁17行目から18行目)とする請求人の主張は失当である。
カ) 相違点(b)については、ダイレクトPWM駆動モータを用いる場合に必然的に生ずる特有の困難性を伴っていた(同頁20行目から5頁2行目;段落[0003]参照)。
これを解決するのが本件登録実用新案の技術課題である以上、「相違点(a)(b)(c)は構成上の相違点になり得ない」(審判請求書35頁19行目)とする請求人の主張は失当である。
キ) 本件登録実用新案4は、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載の考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとはいえない。
したがって、本件登録実用新案4は、実用新案法第3条1項3号又は同条2項に規定する考案のいずれにも該当するものではない。

【むすび】
(1) 本件明細書の考案の詳細な説明の記載は実用新案法第5条4項に規定する要件を具備するものであり、かつ実用新案登録請求の範囲の記載は同条6項2号に規定する要件を具備するものである。
また、本件実用新案登録は、実用新案法第3条1項柱書に規定する要件を満たす出願に対してなされたものである。
したがって、本件登録実用新案は無効理由を有するものではない。
(2) 本件登録実用新案1ないし3は、甲第2号証に記載された発明とはいえず、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をなしえたものともいえない。
したがって、本件登録実用新案1ないし3は、実用新案法第3条1項3号に規定する考案又は同条2項に規定する考案のいずれにも該当するものではない。
(3) また、本件登録実用新案4は、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証(被請求人代理人注:請求人は「甲第2号証,甲第3号証及び甲第5号証に記載された考案に基づいて…」(36頁10行目から11行目)と主張するが、35頁20行目から28行目の記載によれば、「甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証」の誤記であると思われる。)に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をなしえたものとはいえない。
したがって、本件登録実用新案4は、実用新案法第3条2項に規定する考案には該当しない。

5.当審の判断
-実用新案法第3条第2項違反について-

〔5-1〕本件考案
本件実用新案登録第3064179号の請求項1乃至請求項4に係る考案は、実用新案登録された明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1乃至請求項4に記載されたとおりのものである(上記「2.」を参照。)。

〔5-2〕引用例に記載された考案
<引用例(甲第2号証):特開平5-191958号公報>
請求人が提出した、本願出願前に頒布された刊行物である甲第2号証(特開平5-191958号公報。以下、「引用例」という。)は、ビデオテープレコーダ等において、テープやメカニズムを駆動するキャプスタンモータに関するもので、図面とともに以下の技術事項からなる考案が記載されている。
(i)「【産業上の利用分野】
本発明は、2分の1インチ或いは8mmビデオテープレコーダ等において、テープやメカニズムを駆動するキャプスタンモータに関する。」(段落[0001])
(ii)「【従来の技術】
従来この種のキャプスタンモータは、2分の1インチ或いは8mmのビデオテープを走行駆動する他、テープレコーダのメカニズムを駆動する駆動源として利用されている。一般に周知のキャプスタンモータは、図3に示すように駆動コイル1を外周部に巻回したステータコア2をステータとし、その内周部分は軸受ホルダー3の鍔部3aの低い部分に、駆動コイル1に通電する駆動電流を制御する回路等を構成した回路基板4と共にねじ止め固定されている。また、軸受ホルダー3の鍔部3aの高い部分には、図示しないテープレコーダのメカシャシー14にねじ止め固定される。この軸受ホルダー3は、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォーン等の樹脂によって形成され、強度を高めるために30%のガラスファイバーが添加されていて、体積固有抵抗値は10^(16)Ωcmの非導電性である。そして、略中空円筒状に形成されていて側面に後述するピンチローラを挿入するための切り欠き部3bを形成している。さらに、軸受ホルダー3の中心孔内部には、上下一対の軸受5、5が圧入嵌着され、キャプスタン軸6を支持している。」(段落[0002])

〔5-3〕請求項1乃至請求項4に係る考案と引用例に記載された考案との対 比・判断
【請求項1に係る考案について】
(1)対比
請求項1に係る考案と引用例に記載された考案とを対比する。
引用例に記載された考案における「ビデオテープレコーダ」は、請求項1に係る考案における「(ビデオ)テープデッキ」のことである。
引用例に記載された考案における「メカシャシー14」は、請求項1に係る考案における「デッキシャーシ」に相当する。
引用例に記載された考案における「キャプスタンモータ」は、メカシャシー14(デッキシャーシ)に取り付けられ、キャプスタン軸6となる回転軸を駆動する「モータ」であり、その限りで、請求項1に係る考案における「ダイレクトPWM駆動モータ」と共通する。
引用例に記載された考案は、キャプスタンモータのステータコア2とメカシャシー14(デッキシャーシ)との間に介在して設けられ、キャプスタン軸6(回転軸)を軸支する軸受ホルダ3をポリカーボネート等の非導電性樹脂で形成し、軸受ホルダー3の低い部分でステータコア2の内周部分に、軸受ホルダー3の鍔部3aの高い部分でメカシャシー14に、それぞれねじ止め固定されるものであるから、キャプスタンモータのステータコア2とメカシャシー14(デッキシャーシ)との間は電気的に絶縁されるものであることは明らかである。

そうすると、請求項1に係る考案と引用例に記載された考案とは、次の点で一致する。
<一致点>
デッキシャーシに取り付けられた、キャプスタン軸を駆動するモータを備えたテープデッキにおいて、
前記モータのステータコアと前記デッキシャーシとの間を電気的に絶縁した
テープデッキ。

そして、次の各点で相違する。
<相違点>
(a) キャプスタン軸を駆動するモータに関し、請求項1に係る考案においては、「ダイレクトPWM駆動モータ」と特定されているのに対し、引用例に記載された考案においては、モータの種類が特に明示されていない点(以下、「相違点a」という。)。
(b) 請求項1に係る考案は、デッキシャーシに「ヘッドを有する回転シリンダ及び固定シリンダから成るシリンダドラム」も取り付けられるものであるのに対し、引用例に記載された考案においては、このことが特に明示されていない点(以下、「相違点b」という。)。
(c) 請求項1に係る考案は、テープデッキ用の「駆動モータノイズ対策機構」であるのに対し、引用例に記載された考案は、「駆動モータノイズ対策機構」については特に明示されていない点(以下、「相違点c」という。)。

(2)判断
そこで、上記各相違点について検討する。
(相違点aについて)
ビデオテープレコーダのキャプスタン軸をブラシレスモータで直接(ダイレクトに)駆動することは、例えば、実願昭58-9181号(実開昭59-117284号)のマイクロフィルム(なお、この例は、本件の登録実用新案明細書において「従来の技術」として挙げられているものである)、及び、特開平10-201207号公報にもみられるように本願出願前に周知の技術である。また、PWM(パルス幅変調)駆動方式のブラシレスモータも、例えば、特開昭50-7013号公報(特に、第7、8図)、及び、特開平4-42763号公報にもみられるように本願出願前に周知のものであるから、引用例に記載された考案においても、キャプスタン軸を直接駆動するモータとして、周知のPWM駆動ブラシレスモータを用いることは当業者がきわめて容易に想到できたものである。

(相違点bについて)
ビデオテープレコーダ(テープデッキ)のメカシャシー(デッキシャーシ)の上にヘッドを有する回転シリンダドラムと固定シリンダドラムから成るシリンダドラムを取り付けることは、特開平1-235091号公報(甲第4号証。特に、公報第1頁左下欄末行?同頁右下欄第8行目、及び第1図?第3図を参照。)、及び、特開平8-190784号公報(甲第5号証。特に、段落[0002]を参照。)にもみられるように本願出願前に周知の技術であるから、引用例に記載された考案において、シリンダドラムが明示されていないとしても、当業者の技術常識によれば、ビデオテープレコーダ(テープデッキ)のメカシャシー(デッキシャーシ)には、回転シリンダと固定シリンダからなるシリンダが設けられているものと解される。

(相違点cについて)
シリンダモータ制御に用いられるPWM(パルス幅変調)波からの高周波成分が、磁気ヘッドに対するノイズの原因となることは、特開平4-358345号公報にもみられるように本願出願前によく知られている技術事項である。また、一般に、駆動モータからノイズが発生すること自体は当業者の技術常識である。
一方、上記(2)で示したように、引用例に記載された考案は、キャプスタンモータのステータコア2とメカシャシー14(デッキシャーシ)との間に介在して設けられ、キャプスタン軸6(回転軸)を軸支する軸受ホルダ3をポリカーボネート等の非導電性樹脂で形成し、軸受ホルダー3の鍔部3aの低い部分でステータコア2の内周部分に、軸受ホルダー3の鍔部3aの高い部分でメカシャシー14(デッキシャーシ)にねじ止め固定されるものであるから、キャプスタンモータのステータコア2とメカシャシー14(デッキシャーシ)との間は電気的に絶縁されるものであることは明らかである。
したがって、引用例に記載された考案において、キャプスタン軸を直接駆動するモータとして、周知のPWM駆動ブラシレスモータを用いた場合、モータを駆動するPWM波からの高周波成分によるノイズ成分は、上記のようにキャプスタンモータのステータコア2とメカシャシー14(デッキシャーシ)との間は電気的に絶縁されているため、伝播が防止されることになる、すなわち、「駆動モータノイズ対策機構」として機能もしくは作用することは明らかである。
なお、上記(相違点bについて)で示したように、引用例に記載された考案が、ビデオテープレコーダ(テープデッキ)のメカシャシー14(デッキシャーシ)に、回転シリンダと固定シリンダからなるシリンダが設けられているものとした場合、キャプスタンモータのステータコア2とメカシャシー14(デッキシャーシ)とが電気的に絶縁されていれば、ステータコア2とシリンダとの間も電気的に絶縁されていることになることは明らかである。

そして、上記各相違点の判断を総合しても、請求項1に係る考案が奏する効果は、引用例、周知技術から当業者が十分に予測可能なものであり、格別のものとはいえない。

(3)まとめ
したがって、請求項1に係る考案は、引用例に記載された考案、及び、周知技術に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められ、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。

【請求項2に係る考案について】
請求項2に係る考案は、請求項1に係る考案に対し、「前記ダイレクトPWM駆動モータのステータコアを、絶縁体を介して前記デッキシャーシに取り付けた」ことを付加するものである。
そこで、この点について検討すると、引用例に記載された考案における「軸受ホルダー3」は、キャプスタンモータのステータコア2とメカシャシー14(デッキシャーシ)との間に介在して設けられ、ポリカーボネート等の非導電性樹脂で形成され、該ホルダー3の鍔部3aの低い部分でステータコア2の内周部分に、該ホルダー3の鍔部3aの高い部分でメカシャシー14(デッキシャシー)に、それぞれねじ止め固定されるものであり、キャプスタンモータのステータコア2とメカシャシー14(デッキシャーシ)との間は電気的に絶縁されるものであるから、引用例に記載された「軸受ホルダー3」は、請求項2に係る考案における「絶縁体」に相当する。
その他の相違点についての判断は、請求項1に係る考案について示したのと同様である。
したがって、請求項2に係る考案は、引用例に記載された考案、及び、周知技術に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められ、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。

【請求項3に係る考案について】
請求項3に係る考案は、請求項1又は請求項2に係る考案に対し、
「前記ダイレクトPWM駆動モータは、キャプスタン軸となる回転軸と、前記ステータコアを保持すると共に前記キャプスタン軸を軸支する軸受けホルダとを有し、前記軸受けホルダを介して、前記ダイレクトPWM駆動モータを前記デッキシャーシに取り付け、前記軸受けホルダ又はビス締め部に絶縁材料を用いた」ことを付加するものである。
そこで、この点について検討すると、引用例に記載された考案における「軸受ホルダー3」は、キャプスタンモータのステータコア2とメカシャシー14(デッキシャーシ)との間に介在して設けられ、ポリカーボネート等の非導電性樹脂で形成され、該ホルダー3の鍔部3aの低い部分でステータコア2の内周部分に、該ホルダ3の鍔部3aの高い部分でメカシャシー14(デッキシャーシ)に、それぞれねじ止め固定されるものであるから、キャプスタンモータのステータコア2とメカシャシー14(デッキシャーシ)との間は電気的に絶縁されるものであることは明らかである。さらに、該「軸受ホルダー3」の中心孔内部には、上下一対の軸受5、5が圧入嵌着され、キャプスタン軸6を軸支している。
その他の相違点についての判断は、請求項1又は請求項2に係る考案について示したのと同様である。
したがって、請求項3に係る考案は、引用例に記載された考案、及び、周知技術に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められ、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。

【請求項4に係る考案について】
請求項4に係る考案は、請求項1に係る考案に対し、「前記シリンダドラムを、絶縁体を介して前記デッキシャーシに取り付けた」ことを付加するものである。
そこで、この点について検討すると、ビデオテープレコーダのシャーシにシリンダを合成樹脂で形成されたシリンダベース(「絶縁体」に相当する。)を介して取付けることは、本願出願前の特開平5-81745号公報、特開平7-182744号公報、及び、特開平8-321101号公報などにみられるように従来より周知の技術である。
したがって、引用例に記載された考案においても、上記周知技術のようにシリンダドラムを絶縁体である樹脂製のシリンダベースを介してメカシャシー(デッキシャーシ)に取付けることは、当業者がきわめて容易に想到できたものである。
その他の相違点についての判断は、請求項1に係る考案について示したのと同様である。
したがって、請求項4に係る考案は、引用例に記載された考案、及び、周知技術に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められ、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。

〔5-4〕むすび
以上のとおりであって、本件の請求項1乃至請求項4に係る考案は、引用例(甲第2号証)に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、本件の請求項1乃至請求項4に係る考案についての実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反して登録されたものであるから、本件審判請求人が主張する他の無効理由を検討するまでもなく、同法第37条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、実用新案法第41条で準用する特許法第169条第2項でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2005-06-07 
結審通知日 2005-06-13 
審決日 2005-07-20 
出願番号 実願平11-3540 
審決分類 U 1 111・ 121- Z (G11B)
最終処分 成立  
特許庁審判長 片岡 栄一
特許庁審判官 江畠 博
山田 洋一
登録日 1999-09-08 
登録番号 実用新案登録第3064179号(U3064179) 
考案の名称 テ?プデッキ用の駆動モ?タノイズ対策機構  
代理人 安江 邦治  
代理人 本多 泰介  
代理人 佐久間 幸司  
代理人 牧野 利秋  
代理人 松山 美奈子  
代理人 大塚 就彦  
代理人 矢部 耕三  
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