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審決分類 審判 訂正 2項進歩性 訂正しない A63H
管理番号 1122961
審判番号 訂正2003-39172  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2005-10-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2003-08-18 
確定日 2005-09-27 
事件の表示 実用新案登録第2129601号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯

本件実用新案登録第2129601号の請求項1に係る考案は、平成3年10月8日に実願平3-91093号として出願され、平成7年7月12日に出願公告され、その後平成8年8月1日に設定登録(請求項の数1)がなされたものである。
これに対して、平成15年8月18日に訂正審判の請求がなされ、平成15年11月25日付けで訂正拒絶の理由が通知され、その後15年12月9日付けで上申書が提出され、また平成16年2月12日付け、平成16年2月20日付け、及び平成16年2月27日付けで意見書が提出されたものである。

2.審判請求の要旨
本件審判の請求の趣旨は、実用新案登録第2129601号考案の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり、すなわち、下記1)?4)のとおりに訂正することを求めるものである。

1) 訂正事項1:
実用新案登録請求の範囲について、
「外部との通気口及びファスナー開閉口を有する内部中空のぬいぐるみエアバッグと、該ぬいぐるみエアバッグ内の人間が着用する電源バッテリー付きでモーター直結の送風機などを備えた送気ユニットと、該送気ユニットの送風機の吸気口が通気口に係脱自在に嵌装された吸気管とからなり、モーターの駆動で送風機によって吸気口から外気を吸入し送風口から絶えずぬいぐるみエアバッグ内に送気してバルーン状にふくらませることを特徴とするイベント用着用ぬいぐるみ。」を
「外部との通気口及びファスナー開閉口を有する内部中空のぬいぐるみエアバッグと、該ぬいぐるみエアバッグ内の人間が着用する電源バッテリー付きでモーター直結の送風機などを備えた送気ユニットと、該送気ユニットの送風機の吸気口が通気口に係脱自在に嵌装固止されたベロー式吸気管とからなり、モーターの駆動で送風機によって吸気口から外気を吸入し送風口から絶えずぬいぐるみエアバッグ内に送気してバルーン状にふくらませることを特徴とするイベント用着用ぬいぐるみ。」と訂正する。
2) 訂正事項2:明細書段落【0008】について
「即ちこの考案のイベント用着用ぬいぐるみは、外部との通気口及びファスナー開閉口を有する内部中空のぬいぐるみエアバッグと、該ぬいぐるみエアバッグ内の人間が着用する電源バッテリー付きでモーター直結の送風機などを備えた送気ユニットと、該送気ユニットの送風機の吸気口が通気口に係脱自在に嵌装された吸気管とからなり、モーターの駆動で送風機によって吸気口から外気を吸入し送風口から絶えずぬいぐるみエアバッグ内に送気してバルーン状にふくらませることを特徴とするものである。」を、
「即ちこの考案のイベント用着用ぬいぐるみは、外部との通気口及びファスナー開閉口を有する内部中空のぬいぐるみエアバッグと、該ぬいぐるみエアバッグ内の人間が着用する電源バッテリー付きでモーター直結の送風機などを備えた送気ユニットと、該送気ユニットの送風機の吸気口が通気口に係脱自在に嵌装固止されたベロー式吸気管とからなり、モーターの駆動で送風機によって吸気口から外気を吸入し送風口から絶えずぬいぐるみエアバッグ内に送気してバルーン状にふくらませることを特徴とするものである。」と訂正する。
3) 訂正事項3:明細書段落【0010】について
「【実施例】先ず1は、例えばナイロンシートまたはビニールシートなどの素材で構成された内部中空のウサギのぬいぐるみエアバッグで、該ぬいぐるみエアバッグ1の背面には縦方向のファスナー開閉口2及びその僅か下方の外部との通気口3が夫々設けられている。次に4は、上記ぬいぐるみエアバッグ1内に入る人間11が着用する電源バッテリー(12V軽量バッテリー)10付きでモーター9直結の送風機6などをフレーム5に備えた送気ユニットである。なお13は下端が吸気口7となった上記送風機6のベロー式吸気管で、また8は同送風口である。」を、
「【実施例】先ず1は、例えばナイロンシートまたはビニールシートなどの素材で構成された内部中空のウサギのぬいぐるみエアバッグで、該ぬいぐるみエアバッグ1の背面には縦方向のファスナー開閉口2及びその僅か下方の外部との通気口3が夫々設けられている。次に4は、上記ぬいぐるみエアバッグ1内に入る人間11が着用する電源バッテリー(12V軽量バッテリー)10付きでモーター9直結の送風機6などをフレーム5に備えた送気ユニットである。なお13は下端が吸気口7となった上記送風機6のベロー式吸気管所謂可撓性を有する蛇腹管で、また8は同送風口である。」と訂正する。
4) 訂正事項4:明細書段落【0012】について
「【考案の効果】この考案のイベント用着用ぬいぐるみは、上述したように内部中空のぬいぐるみエアバッグを使用してその内部に入った人が着用した送気ユニットの作用で外気を吸入し送風口から絶えずぬいぐるみエアバッグ内に送気してバルーン状にふくらませるようにしたものであるから、従来の着用ぬいぐるみに比較してきわめて軽量で軽快な動作が容易に行えると共にぬいぐるみエアバッグ内には絶えず空気が流動しているものでエアバッグ内の人は中に長時間入っていても蒸し暑いようなことが全くなくてたいへんに涼しく快適である。またこの考案の着用ぬいぐるみはナイロンやビニールのシートで作られるエアバッグであるため、折畳みコンパクト化できるもので、不使用時における移動、運搬、格納が容易で甚た重宝である。さらに比較的製作が容易でかつ量産となれば製作コストも嵩まない。」を、
「【考案の効果】この考案のイベント用着用ぬいぐるみは、上述したように内部中空のぬいぐるみエアバッグを使用してその内部に入った人が着用した送気ユニットの作用で外気を吸入し送風口から絶えずぬいぐるみエアバッグ内に送気してバルーン状にふくらませるようにしたものであるから、従来の着用ぬいぐるみに比較してきわめて軽量で軽快な動作が容易に行えると共にぬいぐるみエアバッグ内には絶えず空気が流動しているものでエアバッグ内の人は中に長時間入っていても蒸し暑いようなことが全くなくてたいへんに涼しく快適である。またこの考案の着用ぬいぐるみはナイロンやビニールのシートで作られるエアバッグであるため、折畳みコンパクト化できるもので、不使用時における移動、運搬、格納が容易で甚た重宝である。さらに比較的製作が容易でかつ量産となれば製作コストも嵩まない。
又この考案は特に下端が吸気管となった送風機の吸気管がベロー式吸気管にしたことから、所謂可撓性を有する蛇腹管を使用したので、ぬいぐるみエアバック内の人間がイベント実演のために軽快な動作が容易に行える。したがって、イベント用着用ぬいぐるみとして好適なものである。且又、ベロー式吸気管の下端吸気口が通気口に係脱自在に嵌装固止したから、ぬいぐるみエアバック内にて人間が軽快な動作を行ってもベロー式吸気管の吸気口が通気口より抜けることがない。故に実演中にぬいぐるみエアバックの空気漏れによるエアバックの萎みが全くない。 なお、かつ、ベロー式吸気管の吸気口を通気口へ係脱自在にしたから、人間が着用した送気ユニットをぬいぐるみエアバックへの取り付け、取り外しが迅速且容易に行えるようになった。」と訂正する。

3. 当審の判断
1) 訂正要件について
1)?1.訂正事項1について
訂正事項1は、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とし、実用新案登録請求の範囲の「嵌装」を「嵌装固止」に、かつ「吸気管」を「ベロー式吸気管」に訂正することを求めるものであり、しかもこれらについては、願書に最初に添付された明細書の段落【0010】及び【0011】に記載されているから、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
1)?2.訂正事項2について
訂正事項2は、明りょうでない記載の釈明を目的として、考案の詳細な説明の記載の中の「嵌装された吸気管」を「嵌装固止されたベロー式吸気管」と訂正することを求めるものであり、上記訂正事項1と整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
1)?3.訂正事項3について
訂正事項3は、明りょうでない記載の釈明を目的として、発明の詳細な説明の記載の中の「ベロー式吸気管で」を「ベロー式吸気管所謂可撓性を有する蛇腹管で」と訂正することを求めるものであり、上記訂正事項1と整合を図るものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
1)?4.訂正事項4について
訂正事項4は、明りょうでない記載の釈明を目的として、考案の詳細な説明の記載の中の効果についての記載を補足する訂正をすることを求めるものであり、上記訂正事項1と整合を図るものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
2) 独立登録要件について
刊行物1.株式会社ベンチャー・リンク 平成元年10月15日発行「VENTURE LINK ベンチャー・リンク」1989年11月号第18頁
(本件登録実用新案に係る無効審判2002-35410号の、証拠として提出された甲第1号証参照)
刊行物2.米国特許第3525334号明細書及びその抄訳
(同じく甲第2号証参照)

2)-1.本件考案について
本件考案は、本件訂正明細書における実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項より特定されるとおりのものである。

2)-2.刊行物
2)-2-1.刊行物1(株式会社ベンチャー・リンク 平成元年10月15日発行「VENTURE LINK ベンチャー・リンク」1989年11月号第18頁)には、以下の点が記載されている。

a.「米国生まれの新しい宣伝ツールが登場!人間が入って動くバルーン『ウォークアラウンド』」(第18頁第1段左側)

b.「ただ、普通のぬいぐるみの場合に難点となるのは、その重量。かなりの重さがあるだけに、中に入って動く人間の苦労もさることながら、軽快なアクションや細かな動きをするのは、なかなか難しい。
この人間入りのぬいぐるみを特殊素材を用いて大きくしたのが、株式会社イベントサービスの『ジャイアントバルーン』。米国・エンターテイメント・リサーチ・グループと総輸入販売代理店契約を結び、『ウォークアラウンド』という商品名で販売を開始した。
その名のとおり、仕組みは風船をぬいぐるみにしたもので、バルーン用の新素材『リップストップ』を生地にして、背中に付けた小型バッテリー式の扇風機で中に風を送り込むというもの。外部の装置から空気を送り込んだり、電源を供給しなくてもすむため、人間が中に入って自由に動き回れるというわけだ。内部は常時風が入るので、中に入る人も涼しい状態で動くことができるという。『いままでのぬいぐるみにはなかった軽やかさが大きな魅力です。また、重量も軽いので人間の等身大より大きくでき、インパクトがあります。......」(第18頁第2段1?30行)

2)-2-2.刊行物2(米国特許第3525334号明細書及びその抄訳)には以下の点が記載されている。

c.「この衣服アセンブリは、着用者に支持され、モータを服地の内側に保持し、服地の外側に空気吸入器を備え、服地の内側に空気排出器を備えた、送風機のような空気流入手段を備える。」(第1欄第68?72行、抄訳第1頁2行?5行)

d.「本衣服アセンブリには送風機51が設けられる。図3に示すように、着用者のウエストと首を囲むストラップ46からなるハーネスにより、送風機51が着用者の体の中央で支持される。送風機51は流入手段である吸入口52を備え、これは、送風機からジャケット12の開口58を通り、流体が流れないようしっかりと突出するよう適合される。吸入口52には、所望であれば、格子窓、或いは吸入口フィルタ52aを設置することができる。送風機51はストラップ46に吊されたハウジング54と、バッテリ62により給電され出口59から排気するよう設置されたファン63からなる。一般的に、送風機の容量は、空気を服地の内側に入れ、かつ、服地内で頭が動かない状態で通常の呼吸が可能な割合で、服地のフィルタから排気するのに充分な容量であるべきである。毎分5?15立方フィートの空気の流れは、(それより)幾分少ないか多い流れであっても充分である。送風機51は、吸入口52以外はジャケット12内に完全に収容されている。」(第3欄第45?61行及び図面第3図、抄訳第1頁14行?第2頁3行)

e.「使用にあたり、着用者は最初に送風機51にストラップ46を取り付ける。ヘルメット17と一体になったジャケット10が着用され、吸入口52がジャケット12の開口58に圧入される。」(第4欄第61?63行、抄訳第2頁12行?15行)

f.「送風機51が作動され、空気が服地内に流入する。流入により、現在の内部の気圧で、通常5?15c.f.mである空気の流入率が、フィルタ32と56の空気輩出率を越える。内部気圧が上昇するにつれ、排気量率は、気圧と比例するので、圧力バランスが達成されるまで上昇する。同様に、内部気圧と反比例する流入率は、内部気圧が上昇するにつれ、ファンが高圧に対して作動するので減少する。」(第4欄第68?75行、抄訳第2頁16行?21行)

2)-3.対比・判断
本件考案と刊行物1記載のものとを対比すると、刊行物1記載のものは、「背中に付けた小型バッテリー式の扇風機で中に風を送り込む」との記載から、ぬいぐるみの中に風を送り込むための外部との通気口を当然備えているものと認められ、また「人間入りのぬいぐるみ」、「人間が中に入って自由に動き回れる」との記載から、ぬいぐるみに人間が出入りするための開閉口や開閉手段が設けられているものと認められる。このことから、刊行物1記載のものにおける「風船をぬいぐるみにしたもの」は、本件考案の「外部との通気口及び開閉口を有する内部中空のぬいぐるみエアバッグ」に対応する。

次に、刊行物1記載のものにおける「扇風機」も、「小型バッテリー」を備え、かつバッテリーにより扇風機を動かすためのモータを当然備えているものと解されることから、刊行物1記載のものにおける「小型バッテリー式の扇風機で中に風を送り込む」構成は、本件考案の「電源バッテリー付きでモーター直結の送風機などを備えた送気ユニット」に対応し、同様に、刊行物1記載のものにおいて「扇風機で中に風を送り込む」ことは、本件考案における「モーターの駆動で送風機によって外気を吸入」し「送気」することに対応する。

さらに、刊行物1記載のものは「内部は常時風が入る」との記載から、ぬいぐるみ内に絶えず空気が送られているものと認められ、また、刊行物1における「バルーン用の新素材『リップストップ』を生地にして、背中に付けた小型バッテリー式の扇風機で中に風を送り込む」という記載から、ぬいぐるみ内に風を送り込んでバルーン状に膨らませるものと解されることから、刊行物1における「風船をぬいぐるみにしたもの」に「常時」「風を送り込む」ことは、本件考案における「絶えずぬいぐるみエアバッグ内に送気」することに対応する。

したがって、両者は「外部との通気口及び開閉口を有する内部中空のぬいぐるみエアバッグと、電源バッテリー付きでモーター直結の送風機などを備えた送気ユニットとからなり、モーターの駆動で送風機によって外気を吸入し、絶えずぬいぐるみエアバッグ内に送気してバルーン状にふくらませるイベント用着用ぬいぐるみ。」である点で一致し、以下の点で相違している。

(i)開閉口が、本件考案はファスナー開閉口であるのに対し、刊行物1記載のものはファスナーを有している旨の記載が無い点
(ii)送気ユニットが、本件考案はぬいぐるみエアバック内の人間が着用するものであるが、刊行物1記載のものは「背中に付けた小型バッテリー式の扇風機」と記載されているのみで、「扇風機」が取り付けられているのが「ぬいぐるみ」の背中なのか、エアバック内の人間の背中なのか不明である点
(iii)送気ユニットの吸気及び送気の構造が、本件考案は、送気ユニットの送風機の吸気口が通気口に係脱自在に嵌装固止されたベロー式吸気管からなり、送風機によって吸気口から外気を吸入し送風口から送気するものであるのに対し、刊行物1記載のものは吸気及び送気のための具体的構成が不明である点
上記相違点(i)、(ii)、(iii)について検討する。

(相違点(i)について)
刊行物1記載のイベント用ぬいぐるみは、「内部は常時風が入る」、「仕組みは風船をぬいぐるみにしたもの」との記載から、風船の状態を保つように内部に入れた空気が保持されることが必要であり、かつ、人の出入口を具備するのであるから、この人の出入口の開閉口を塞ぐ開閉手段も当然有しているものと解される。そして、一般に人間が着用する衣服等において、着用のための開口部を塞ぎ、また開閉するための手段としてファスナーは極めてよく知られた技術手段であり、その採用は当業者が適宜行う設計的事項である。さらに、刊行物1記載のものにあっても、その開閉口を塞ぐ開閉手段としてファスナーを適用することに何ら支障は認められない。したがって相違点(i)は、当業者が適宜になし得ることと認められる。

(相違点(ii)について)
刊行物2には、上記2)-2-2のc、d及びeの記載にもあるように、気密性を保つ着衣(この場合衣服アセンブラ)を着用するにあたり、ストラップを取り付けた送風機を、着衣の着用者が直接装着することが記載されている。そして、刊行物1記載のイベント用ぬいぐるみと、刊行物2記載の衣服アセンブリとは、それぞれぬいぐるみと衣服アセンブリという、人が着用する衣服に類するものである点で共通し、また、両者は、人が頭部を含む体全体を覆うように着用できること、着用して使用する際に気密性を保つこと、及び中に入る人が呼吸できるようにするものであることから、人が呼吸可能な状態で体全体を覆うように着用するという点においても、技術的に共通の分野に属するものといえる。
してみると、刊行物1記載のイベント用ぬいぐるみにおける「小型バッテリー式の扇風機」の支持方法として、刊行物2記載の構成を適用し、エアバック内に入る人間が着用し支持するようにすることは、当業者であれば極めて容易に想到し得るものである。

(相違点(iii)について)
刊行物2の上記2)-2-2のd及びeには、送風機51上の空気流入手段である吸入口52とジャケット12上の開口58とは、使用に際し着用者が送風機51をストラップ46により身に付けジャケットを着用する時に、吸入口52が開口58に突出するように圧入されることで接合されるものであることが記載されており、また図1、3及び4には、吸入口52が、送風機51のハウジング54上に設けられた管の形状を有するものであることが示されている。このことから、刊行物2に記載のものにおける「開口」は本件考案における「通気口」に相当し、また刊行物2に記載のものにおける「吸入口」は本件考案における「吸気口」を備えた「吸気管」に相当する。そして、刊行物2に記載のものにおける「出口59」は本件考案における「送風口」に相当する。

ここで、刊行物2における吸入口と開口との接合方法に関して述べると、刊行物2の上記2)-2-2のeには「吸入口52がジャケット12の開口58に圧入される」と記載されている。この「圧入」という語句の意味は、広辞苑(岩波書店)によれば「強い圧力で物を押し込むこと」、また特許技術用語集(日刊工業新聞社)によれば「圧力を加えて押し込むこと」とあり、これらより「圧力を加えて物を押し込むこと」の意味であるものと解される。この点に関し、刊行物2の上記2)-2-2のdには、「...吸入口52を備え、これは、送風機からジャケット12の開口58を通り、流体が流れないようしっかりと突出するよう適合される。」と記載されており、当該記載には、流体である空気が外に漏れることのないよう「圧入」することが示されており、その接合状態は、使用時に容易に外れることで流体が漏れることない、しっかりとしたとりつけを要件としていると解される。
一方、本件考案は、吸気口と通気口の接合方法として「嵌装固止」と規定するものであり、この「嵌装」及び「固止」について本件明細書中には何ら定義されておらず、その技術的意義も明確でない。そして、前記広辞苑にも掲載されていないが、「嵌装」については特許技術用語集(日刊工業新聞社)に「嵌めた状態に備え付けること」とされていること、さらに「嵌」は「くぼみにはめこむこと、はまること」、及び「装」は「とりつけること」(共に広辞苑)であることを考え合わせると、「嵌装」という語句は「はめこむことでとりつけること」とするのが妥当であると考えられ、一方「固止」については特許技術用語集に示されておらず、「固」は「かたいこと、かためること」、及び「止」は「とまること、とまること」(共に広辞苑)であることを考え合わせて「かたくとめること」と解釈するのが妥当であると考えられる。この点に関し、本件明細書の記載には、「送風機6の吸気管13の吸気口7を通気口3に係脱自在に嵌装固止する。それから……ぬいぐるみエアバック1内に送気してぬいぐるみエアバッグ1を送気中、常にボリュームたっぷりふくらませるものである。」(公告公報、【0011】)との記載があるのみで、当該記載には、ぬいぐるみエアバックを常にボリュームたっぷりに膨らませるもので、送気中に外れることのないよう「嵌装」して「固止」することが示されており、本件考案における「嵌装固止」による接合状態は、送気中などの使用時には容易に外れることのないとりつけを要件としていると解される。したがって、本件考案における「嵌装固止」は、送気中などの使用時には容易に外れることないしっかりとした状態、すなわち「はめこむことでとりつけ」て「かたくとめる」という意味で用いられているものと認められる。
そこで、「嵌装固止」である本件考案と「圧入」である刊行物2を対比すると、両者はいずれも係脱自在あるいははめはずし自在であり、かつ容易に外れないしっかりとした結合であることを前提として、これをとりつけた後の状態として表現するか、とりつけ時の状態として表現するかの差異であると認められる。さらに敷衍すると、前記「圧入」の意味のうち「圧力を加えて」という文言は、押し込む際に圧力を付加するという意味であり、一方「嵌装固止」は容易に外れることのないように「はめこむことでとりつけ」て「かたくとめる」ものであればよいから、圧力の要否にかかわらず接合した結果の構成・度合において両者に格別の相違があるものとは解されない。同じく「圧入」の意味のうち「押し込む」という文言も、「無理に入る」(広辞苑)という意味であることから、「嵌装固止」に係る操作と同様に、接合した結果の構成・度合において両者に格別の差異を生じさせるものであるとは解されない。したがって、刊行物2における「圧入」は、本件考案における「嵌装固止」に含まれるものである。
さらに、吸気管の構造に関して述べると、本件考案の吸気管の如く気密状態を連結する管状の構造において、その形状をベロー式、すなわち蛇腹式にすることは、極めてよく知られた技術であり、当業者が必要に応じ適宜行う事項に過ぎない。
この点に関し、請求人は、平成16年2月27日付け意見書において、「本件考案の使命、特徴は、さらにエアバック中の人間がイベント実演のため軽快な動作(エアバック中にて跳んだり跳ねたり)ができなければ、何にもならない。もっとはっきり言えば、軽快動作ができるようになっていなければ、本件考案は成立しない。よって、本件考案はエアバック内の人間が着用する電源バッテリー付きでモーター直結の送風機などを備えた送機ユニットの送風機の吸気口が通気口に係脱自在に嵌装固止したベロー式吸気管からなるようにしたもの故、訂正事項3、訂正事項4は、本件考案をただ明瞭しただけのものであることは洵に明白である。」と主張している。しかし、そもそも「エアバック中の人間がイベント実演のため軽快な動作」を可能としているのは、本件考案の詳細な説明中の記載である「内部中空のぬいぐるみエアバックを使用してその内部に入った人が着用した送気ユニットの作用で外気を吸入し送風口から絶えずぬいぐるみエアバック内に送気してバルーン状にふくらませるようにしたものであるから、従来の着用ぬいぐるみに比較して軽量で軽快な動作が容易に行える」(【0012】)との記載から見ても「内部中空のぬいぐるみエアバックを使用してその内部に入った人が着用した送気ユニットの作用で外気を吸入し送風口から絶えずぬいぐるみエアバック内に送気してバルーン状にふくらませるようにした」ことによるものであり、刊行物1記載のものも同様である。そして、本件考案におけるエアバックが人間が入って動作することを前提としているぬいぐるみ状のものである以上、エアバックと人間との間に動作中の極端かつ頻繁な離間を許容する必要はなく、送機ユニットの送風機の吸気口が通気口に「係脱自在に嵌装固止したベロー式吸気管」という構成は、単にエアバックと、人間が着用する電源バッテリー付きでモーター直結の送風機などを備えた送機ユニットとの、相対的位置の変化をある程度許容させるために機能するものであると考えるのが自然であり、ぬいぐるみエアバック内の人間がイベント実演のために軽快な動作が容易に行える、という作用効果を、送機ユニットの送風機の吸気口が通気口に係脱自在に嵌装固止したベロー式吸気管を備えたことにより奏する格別の作用効果とすることはできない。

また、本件考案により奏する作用効果も、上記刊行物1及び2に記載された考案から当業者が予測し得る程度のものであって格別のものとは認められない。
以上のことから、刊行物1記載のイベント用ぬいぐるみにおける扇風機のための吸気及び送気構造として、刊行物2記載の構成を適用することは、当業者であればきわめて容易に想到し得るものである。

2)-4.まとめ

以上のとおりであって、本件実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案は、刊行物1及び刊行物2に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められるから、実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである。

4. むすび

以上のとおりであるから、当該訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号)附則第14条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされ、同附則第4条第2項の規定により読み替えて適用される改正前の実用新案法第39条第1項ただし書き、および同条第3項の規定に適合しない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2004-07-13 
結審通知日 2004-07-15 
審決日 2004-08-05 
出願番号 実願平3-91093 
審決分類 U 1 41・ 121- Z (A63H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐田 洋一郎吉村 尚  
特許庁審判長 吉村 宅衛
特許庁審判官 仲間 晃
千葉 輝久
登録日 1996-08-01 
登録番号 実用新案登録第2129601号(U2129601) 
考案の名称 イベント用着用ぬいぐるみ  
代理人 大矢 須和夫  
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