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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) D06F
管理番号 1129017
判定請求番号 判定2005-60038  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案判定公報 
発行日 2006-02-24 
種別 判定 
判定請求日 2005-06-06 
確定日 2006-01-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第3102692号の判定請求事件について、次のとおり判定する。   
結論 イ号図面並びにその説明書に示す「物干し台」は、登録第3102692号実用新案の技術的範囲に属しない。
理由 1.請求の趣旨
本件審判請求の趣旨は、イ号図面及びその説明書に示す「物干し台」(以下、「イ号物干し台」という。)が、請求人所有の第3102692号登録に係る登録実用新案(以下、「本件考案」という。)の技術範囲に属するとの判定を求めるものである。

2,本件考案
本件考案は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「(1)左右一対の側面支持脚体と
(2)その一対の側面支持脚体の中間に立設される引き上げ脚体と
(3)前記側面支持脚体と引き上げ脚体とを連結する上連結フレームと下連結ビームと
(4)側面支持脚体上部に架け渡す物干竿からなり、
(5)左右側面支持脚体が近接状態に折り畳まれる物干し台において、
(6)接続リンクはその一端が上連結フレームと連結され、
(7)他端が引き上げ脚体における上連結フレーム連結部と下連結ビーム連結部の間を上下移動するリンク連結具に回動可能に連結されることにより、
(8)左右の接続リンクがV字形に形成されることを特徴とする
(9)折り畳み式物干し台。」
なお、(1)ないし(9)は、分説のために付した記号である。

3.イ号物干し台
これに対して、イ号図面及びその説明書によれば、イ号物干し台は、次のとおり分説できる。
「(a)左右一対の枠体(101)と
(b)その一対の枠体(101)の中間に配置される前後一対の垂直帯状板(102)と
(c)前記垂直帯状板(102)の上端部及び下端部と前記枠体(101)とを連結する上連結フレーム(103)と下連結フレーム(104)と
(d)左右の枠体(101)上部間に架け渡す物干竿(105)からなり、
(e)左右枠体(101)が近接状態に折り畳まれる物干し台において、
(f)接続リンク(106)はその一端が上連結フレーム(103)と連結され、
(g)他端が垂直帯状板(102)における縦スリット(107)内を上下移動するリンク連結ネジ(108)により回動可能に連結されることにより、
(h)左右の接続リンク(106)がV字形に形成される
(i)折り畳み式物干し台。」

請求人は、審判請求書において、上記(g)について、「他端が垂直帯状板(102)における縦スリット(107)内を上下移動し任意位置で固定可能なリンク連結ネジ(108)により回動可能に連結され」としているが、イ号物干し台の構成からみて、展開時に、リンク連結ネジ(108)が垂直帯状板(102)における縦スリット(107)の上端側に向けて移動し、上連結フレーム(103)と下連結フレーム(104)がすべて水平となる位置で、縦スリット(107)の上端に当接して停止するものと解され、左右一対の枠体(101)が開ききらず、かつ上連結フレーム(103)と下連結フレーム(104)が山形の状態(イ号図面並びにその説明書第5頁の状態)で、リンク連結ネジを固定し、物干し台を使用することは、通常の常識に照らして想定し得ないことであるので、リンク連結ネジ(108)が縦スリットの任意の位置で固定可能であると解すべき必然性は見当たらない。
そこで、上記のように認定した。
なお、(a)?(i)は、分説のため付した記号であり、( )内は、イ号図面に付された対応する図示番号を示す。

4.対比
イ号物干し台と本件考案を対比すると、イ号物干し台における「左右一対の枠体(101)」は、その機能、形状、配置などからみて、本件考案の「左右一対の側面支持脚体」に相当し、以下同様に、「物干竿(105)」は「物干竿」に、「上連結フレーム(103)」は「上連結フレーム」に、「下連結フレーム(104)」は「下連結ビーム」に、それぞれ相当するものと認める。
してみると、イ号物干し台の構成は、文言上、次の相違点1及び2で、本件考案の構成要件を充足しない。
〈相違点1〉
左右一対の側面支持脚体の中間に設けられる部材について、本件考案においては「立設される引き上げ脚体」であるのに対して、イ号物干し台においては「前後一対の垂直帯状板(102)」である点。
〈相違点2〉
リンクを連結する部材について、本件考案においては「上連結フレーム連結部と下連結ビーム連結部の間を上下移動するリンク連結具」であるのに対して、イ号物干し台においては「垂直帯状板(102)における縦スリット(107)内を上下移動するリンク連結ネジ(103)」である点。

5.均等についての検討及び判断
最高裁平成6年(オ)第1083号判決(平成10年2月24日判決言渡)は、文言上充足しない構成要件、すなわち相違点に均等論が適用される場合について、次の5つの条件を付して認める旨判示している。
(1)相違部分が、特許発明の本質的な部分でない。
(2)相違部分を対象製品の対応部分と置き換えても、特許発明の目的を達成することができ、同一の作用効果を奏する。
(3)対象製品等の製造時に、異なる部分を置換することを当業者が容易に想到できる。
(4)対象製品等が、出願時における公知技術と同一又は当業者が容易に推考することができたものではない。
(5)対象製品等が特許発明の出願手続において、特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たる等の特段の事情がない。
(以下、「条件(1)」、「条件(2)」・・・などという。)

そこで、上記条件のうち、特に条件(2)及び(4)について、次に検討する。

5-1.条件(2)について
(1)本件考案の「引き上げ脚体」について
本件考案の「引き上げ脚体」について検討すると、本件明細書によれば、「引き上げ脚体」に関連して次のように記載されている。
(a)「【0003】
しかしながら、垂直杆に上下リンクを固定し、上下連結枠を連結させ接続リンクを枢着架設する前記技術においては、使用時に中央部に荷重がかかると変形する恐れがあり、安定性を充分に確保しているとはいえない。また、接続リンクをX状に枢着架設する構造は多少の変形および歪曲が接続リンク全体に不具合を起こす可能性がある。」(段落【0003】)
(b)「【0005】
本考案は、このような問題点を解決しようとするもので、引き上げ脚体におけるリンク接続具と上連結フレームを連結する左右の接続リンクをV字形に形成し、引き上げ脚体の下部を地面に当接させ、一方の側面支持脚体の下部にアジャスター、他方の側面支持脚体の下部にキャスターを取付けることで安定性を向上させるとともに、不使用時に物干竿を側面支持脚体に支持固定できるよう固定具を設けることで収納を容易とする折り畳み式物干し台を提供することを目的とする。」(段落【0005】)
(c)「【0010】「本考案の折り畳み式物干し台は、引き上げ脚体のリンク連結具と上連結フレームを連結する左右の接続リンクをV字形に形成することにより、展開及び折り畳み作業を円滑にするとともに展開時に平衡状態を維持し、引き上げ脚体の下部が地面に当接するように構成することで、使用時に中心部に過度の荷重がかかっても変形や歪曲が発生することを防止している。」(段落【0010】)
(d)0012】「・・・・・前記引き上げ脚体の下部が地面に当接するよう構成される構造とした。」 (段落【0012】)
(e)【0013】「・・・・・、引き上げ脚体2は側面支持脚体1・1の中間部に立設され下部が地面に当接し、・・・・・」(段落【0013】)
ここで、本件明細書段落【0003】に従来技術として示された特許3355359号折り畳み物干し具においては、側脚枠1、2の中間に配置される垂直杆(10)の下端は、地面に当接しておらず、そのために、使用時に中央部に荷重がかかると、変形する恐れが生じるものと解されることから、本件考案において、引き上げ脚体の下部が地面に当接していなければ、上記従来技術の問題点が解決されず、本件考案の作用、効果が奏されないのは明白である。
さらに、広辞苑第5版によれば、「脚」は、「物の下部にあり支えの用をするもの。」であることから、本件登録考案の「引き上げ脚体」は、一対の側面支持脚体の中間に立設されるものであり、折り畳み式物干し台を展開したとき、下部が地面に当接して、一端が側面支持脚体に連結された上連結フレーム)と下連結ビームを、他端側の連結部で支えるものと解すべきである。
これに対して、イ号物干し台の「垂直帯状板(102)」は、イ号各図面に明示されているように、その上端部が上連結フレーム(103)の中央側端部に、下端部が下連結フレーム(104)の中央側端部に連結されており、その下部が地面に当接するものではない。
そうすると、本件考案の「引き上げ脚体」をイ号物干し台の「垂直帯状板(102)」に置き換えると、本件考案の目的を達成することができないことになる。

(2)本件考案の「リンク連結具」について
本件考案の「リンク連結具」について検討すると、上述のように、展開時「引き上げ脚体」は、その下部が地面に当接するものであるから、その時点で「引き上げ脚体」が停止し、「リンク連結具」の移動も停止するものと解される。
したがって、「リンク連結具」は、引き上げ脚体における上連結フレーム連結部と下連結ビーム連結部の間を自由に上下移動することができればよく、その上下移動を縦スリット等で制限する必要はないものである。
これに対して、イ号物干し台の「リンク連結ネジ(108)」は、上述のように、「垂直帯状板(102)」の下部が地面に当接するものではないから、リンク連結ネジ(108)の上下移動を垂直帯状板(102)における縦スリット(107)が制限しなければ、垂直帯状板(102)は地面に当接するまで下降してしまい、上連結フレーム(103)及びが下連結フレーム(104)が谷型に落ち込んで、物干し台としての体をなさないものと解される。
してみると、イ号物干し台においては、「リンク連結ネジ(108)」は「垂直帯状板(102)における縦スリット(107)内を上下移動する」ものでなければならないものというべきである。
そうすると、本件考案の「上連結フレーム連結部と下連結ビーム連結部の間を上下移動するリンク連結具」を、イ号物干し台の「垂直帯状板(102)における縦スリット(107)内を上下移動するリンク連結ネジ(108)」に置き換えることは、そもそも技術的必然性を欠き、接続リンクの円滑な移動を妨げ、さらには、縦スリット(107)による上下移動の制限が、引き上げ脚体の地面への当接を妨げる要因にもなり得ることから、本件考案の目的の達成を阻害することになる。

(3)条件(2)についてのむすび
以上のとおりであるから、イ号物干し台と本件考案との関係において、上記(1)、(2)のいずれの理由によっても、前記条件(2)を満たしていないので、均等論を適用することはできない。

5-2.条件(4)について
次に、イ号物干し台が、前記条件(4)を満たすか否かについて検討する。
(1)公知技術
被請求人が提出した、中華人民共和国国家知的財権局から発行された実用新案登録第2225817号登録書(以下、「引用文献」という。)は、本件考案に係る実用新案登録出願前に外国において頒布された刊行物であると認められ、次のような考案(以下、「引用考案」という。)が記載されているものと認められる。
「(a')左右一対の枠体(1,2)と
(b')その一対の枠体(1,2)の中間に配置される前後一対の垂直帯状板(7)と
(c')前記垂直帯状板(7)の上端部及び下端部と前記枠体(1,2)とを連結する上連結フレーム(3,4)と下連結フレーム(5,6)と
(d')左右の枠体(1,2)上部間に架け渡す物干竿(10)からなり、
(e')左右枠体(1,2)が近接状態に折り畳まれる物干し台において、
(f')接続リンク(8,9)はその一端が上連結フレーム(3,4)と連結され、
(g')他端が垂直帯状板(7)における縦スリット(71)内を上下移動するリンク連結部により回動可能に連結されることにより、
(h')左右の接続リンク(8,9)がV字形に形成される
(i')折り畳み式物干し台。」
なお、(a')?(i')は、分説のため付した記号である。

(2)対比・判断
イ号物干し台と引用考案とを対比すると、引用考案における「左右一対の枠体(1,2)」は、その機能、形状、配置等からみて、イ号物干し台の「左右一対の枠体(101)」に相当し、以下同様に、「前後一対の垂直帯状板(7)」は「前後一対の垂直帯状板(102)」に、「 物干竿(10)」は「物干竿(105)」に、「接続リンク(8,9)」は「接続リンク(106)」に、そして、
「縦スリット(71)」は「縦スリット(107)」に、それぞれ相当する。
そして、リンク連結部としてネジを使用することは、引用文献に記載されているに等しい、周知慣用技術の選択に過ぎないものである。
そうすると、イ号物干し台は、実質的に、引用考案に係る物干し台にほかならない。

(3)条件(4)についてのむすび
よって、イ号物干し台は、本件考案に係る実用新案登録出願前に外国において頒布された刊行物に記載された考案であるから、前記条件(4)を満たさない。

5-3.相違点についての検討及び判断のむすび
したがって、他の条件(1)、(3)及び(5)について検討するまでもなく、イ号物干し台と本件考案との関係において、均等論を適用することはできない。

6.むすび
以上のとおりであるから、イ号物干し台は、文言上本件考案の技術的範囲に属さず、また、均等論が適用される余地もないから、イ号物干し台は、本件考案の技術的範囲に属しない。
なお、本件の実用新案登録請求の範囲の請求項2ないし4は、請求項1を引用するものであるから、イ号物干し台は、検討するまでもなく、本件の実用新案登録請求の範囲の請求項2ないし4に係る考案の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
判定日 2005-12-19 
出願番号 実願2004-46(U2004-46) 
審決分類 U 1 2・ 1- ZB (D06F)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 阿部 寛
柳 五三
登録日 2004-04-14 
登録番号 実用新案登録第3102692号(U3102692) 
考案の名称 折り畳み式物干し台  
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