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審決分類 審判 全部無効   B29C
管理番号 1137800
審判番号 無効2004-80212  
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2006-07-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-11-02 
確定日 2006-05-24 
事件の表示 上記当事者間の登録第2594537号実用新案「樹脂成形体」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯及び本件考案
本件実用新案登録第2594537号は、平成 3年 8月26日の出願に係り、平成11年 2月26日に設定登録されたものであり、その後、平成13年 3月5日に日本ウエーブロック株式会社により第1回無効審判請求がされ、平成15年 5月1日に実用新案登録無効審判請求の特許維持の審決がされ、その後、平成16年11月 2日に日本ウエーブロック株式会社により本件第2回無効審判請求がされ、平成17年 4月27日に面接審理(場所:特許庁小審判廷)が非公開で実施され、無効審判請求の無効理由を整理し、合意された事項について同日口頭審尋記録・確認メモを作成した。その後、合意された事項に従い、平成17年 6月 9日に弁駁書(請求人側)が提出され、平成17年10月 7日に第2答弁書(被請求人側)が提出されたものである。

請求項1及び2に係る考案(以下、「本件考案1」及び「本件考案2」という。)は、実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2に記載された下記のとおりのものである。
「【請求項1】復元性のある丸線の外周面にポリエステル系融着性ワニスを塗布焼付して融着層を形成し、その外周上に樹脂を所定の形状に押出すると共に、押出時の熱により前記融着層を溶融し丸線と樹脂を接着させてなることを特徴とする樹脂成形体。
【請求項2】復元性のある丸線の外周面に融着性ワニスを塗布焼付して融着層を有する融着丸線とし、前記融着丸線を押出ラインに供給して前記融着丸線の外周上に樹脂を所定の形状に押出すると共に、押出時の熱により前記融着層を溶融し丸線と樹脂を接着させてなることを特徴とする樹脂成形体。」

2.請求人の主張及び提出した証拠方法
「1.手続の経緯」において記載したとおり、請求人及び被請求人、両当事者出席の下で、面接審理を行い、無効理由及び証拠について審尋を行ったところ、審判請求書中で請求人が主張している「本件考案1及び2に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第1項第3号の規定に違反する。」との無効とすべき理由の主張については錯誤によるもので、「本件考案1及び2に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反する。」ことのみ主張するものであり、また、提出された証拠方法の甲第4号証については参考資料とすることが、当事者間で合意事項として確認され、口頭審尋記録と確認メモとしてまとめられた。
その後、請求人が提出した弁駁書中で口頭審尋記録・確認メモのとおり無効理由が整理されたことにより、下記「2-1.請求人の主張」のとおり、実用新案法第3条第2項の規定に違反するのみの主張となった。

2-1.請求人の主張
請求人 日本ウエーブロック株式会社(以下、「請求人」という。)は、「第2594537号実用新案登録はこれを無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、下記甲第1?第8号証(ただし、甲第4号証を除く)並びに参考資料(甲第4号証の1、甲第4号証の2)を提出して、本件考案1及び2に係る実用新案登録は下記(1)の理由により、実用新案法第37条第1項第2号の規定によって無効すべきであると主張している。
なお、請求人から、審判請求時に甲第9ないし第13号証、弁駁書提出時に参考資料2ないし4の提出があった。
(1)本件考案1及び2は、甲第1?8号証(ただし、甲第4号証を除く)に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件考案1及び2に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものである。

2-2.証拠方法及び記載事項
a.甲第1号証:実願昭51-126213号(実開昭53-44808号)のマイクロフィルム
(a1)「合成樹脂を押出成形して作られるモールデイング材本体1が、その押出成形時に一体的に押出されて内包されている屈曲可能な金属線2と、該モールデイング材の全長にわたつて一体的に結合されている自動車用合成樹脂製モールデイング材」(実用新案登録請求の範囲請求項1)
(a2)「本考案のモールデイングは、合成樹脂材を押出成形するに当り屈曲可能な金属線を芯材として内包させた形に押出成形し、該金属線と合成樹脂製モールデイング材本体とを一体的に結合させることにより、該金属線の無収縮性によつて合成樹脂材の経年収縮を抑止させたことを特徴とする。」(明細書第2頁14?19行)
(a3)「第1図のモールデイング材本体1内には1本の合成樹脂用接着材の塗被加工を施した金属線2aが芯材として埋込まれている。21は、該金属線に予め施された上記の塗被加工層である。」(明細書第3頁6?9行)
(a4)「本考案で用いる芯材用の金属線は、容易に屈曲させ得る比較的軟質の金属線である限りその材質は自由であるが、合成樹脂材との結合を良好にするため、予め所要の予備加工を施して用いるのがよい。」(明細書第3頁17行?第4頁1行)
(a5)「第3図は、各種異なる予備加工を施した金属線を例示しており、(a)は第1図のモールデイング材に内包させた金属線2aを示し、合成樹脂用接着剤の塗被加工層21を有する。」(明細書第4頁2?5行)
(a6)「上記金属線2(・・・)は、下記のようにしてモールデイング材に内包させる。
合成樹脂製モールデイング材を押出成形する押出しダイ(図示せず)は、押出し口と反対側に金属線導入口を有し、導入される金属線2を、合成樹脂材と共に押出し口から押出して、所定断面形内に金属線2を内包する合成樹脂製モールデイング材1として押出成形する。」(明細書第5頁3?11行)
(a7)「このように押出成形されたモールデイング材において、第1図製品のように金属線に接着材が塗被加工されている場合は、モールデイング材本体と金属線とが接着剤を介して一体的に結合される。」(明細書第5頁12?15行)
(a8)昭和52年2月2日付け手続補正書(方式)における第3図(a)には、塗被加工層21を有する断面円形の線材2aが図示されており、また、第1図には、当該線材が長手方向に埋設された物品が図示されている。

b.甲第2号証:「日本工業規格 エナメル線 JIS C 3202-1988 」、財団法人 日本規格協会、昭和63年10月31日発行、エナメル線 JIS C 3202-1988の項、附属書6 ポリウレタン銅線(第21頁)、附属書7 融着性ポリウレタン銅線(第25頁)、奥付き
甲第2号証は、日本工業規格JISの「エナメル線」の項の抜粋として、「1.適用範囲」の項に、「この規格は、電気機器の巻線及び配線に用いるエナメル線(以下、線という。)について規定する。」、「表1」としてエナメル線の種類毎に、記号、導体形状及び附属書番号の項目が挙げられ、融着性ポリウレタン銅線に関する記載があり、「附属書7 融着性ポリウレタン銅線」には、次のとおり記載されている。
「1.適用範囲 この附属書は、融着性ポリウレタン銅線について規定する。
2.温度指数 120℃
3.絶縁皮膜及び融着皮膜 絶縁皮膜は、JIS C 2351(エナメル線用ワニス)に規定するポリウレタン線用ワニス又はこれと同等以上の品質をもつポリウレタン線用ワニスを導体表面に一様に焼付けたものとし、その上に融着層として、融着性ワニスを一様に焼き付けたものとする。」

c.甲第3号証:「工業塗装(第64号)」、昭和58年9月15日発行、表紙、米本広憲外1名「電線用絶縁塗料」、第57頁?第63頁、奥付け)
甲第3号証には次のとおり記載されている。
(c1)「自己融着電線は絶縁層の上に、さらに融着ワニスを二重コーティングしたもので、この融着電線をコイル成形後加熱溶融して接着させるものである。…融着ワニスに使われる樹脂は熱可塑性の高分子で、ポリビニルブチラール、熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、……が使用されている。」(第62頁右欄の「4-5自己融着ワニス」の項)
(c2)「電線用ワニスの60%は有機溶剤であり、……ホットメルトワニスが大部分を占めるものと思われる。」(第63頁左欄の「5.あとがき」の項)

e.甲第5号証:特開昭57-187074号公報
甲第5号証は、樹脂被覆金属線に関するものであって、次のとおり記載されている。
(e1)「1 空乾性官能基を有する自己硬化性不飽和ポリエステル樹脂組成物100重量部及び有機溶剤0.5?40重量部から成るホットメルト樹脂組成物を該有機溶剤の沸点以下の温度で溶融させ金属線表面に塗装後該金属線を該有機溶剤の沸点以上の温度に加熱することを特徴とする樹脂被覆金属線の製造方法。」(特許請求の範囲 第1項)
(e2)「5 空乾性官能基を有する自己硬化性不飽和ポリエステル樹脂組成物及び有機溶剤から成るホットメルト樹脂組成物が、該有機溶剤の沸点以下で、かつ該ホットメルト樹脂組成物の硬化前の軟化点より10℃高い温度において、10?20,000センチポイズの溶融粘度をもつものである特許請求の範囲第1項記載の製造方法。」(特許請求の範囲 第5項)
(e3)「近年、鉄線、銅線、真鍮線、・・・などの金属線は、建築材料や日用品の分野に、さらには電気良導体の金属線は電線として幅広く用いられている。」(第2頁左上欄2?5行)
(e4)「ホットメルト樹脂組成物と有機溶剤から成り、該有機溶剤の沸点以下の温度で溶融されたホットメルト樹脂組成物により塗装された金属線は、次に該有機溶剤の沸点以上の温度で加熱され、該有機溶剤の揮発と共に樹脂組成物が硬化し、金属線表面に強靱な皮膜が形成される。」(第5頁左下欄9?14行)
(e5)「本発明の製造方法で得られる樹脂被覆金属線は、防錆性に優れているだけでなく、三次元硬化したポリエステルは耐溶剤性、耐熱性に優れており、しかも金属との密着性が良好であり、また可撓性も良好である。更に電気絶縁性も極めて良好であるので電線としても有効に利用できる。」(第6頁右上欄2?7行)

f.甲第6号証:特開昭57-47903号公報
甲第6号証は、金属線に関するもの(発明の名称)であり、次のとおり記載されている。
(f1)「1. ホットメルト接着性の熱可塑性樹脂を被覆した金属線」(特許請求の範囲 第1項)
(f2)「本発明はホットメルト接着性の熱可塑性樹脂を被覆した金属線であって、この金属線はホットメルト接着作用によって容易に互いが又は他のものと接着しうるため、応用範囲が非常に広い。」(第1頁左下欄13?17行)
(f3)「金属線は使用目的に応じて、適宜の太さ、材質を選択する。材料としては、鉄、銅、アルミニウム等が一般的であり、形状としては角棒、丸棒、平帯、パイプ等が含まれる。」(第1頁右下欄17?20行)
(f4)「茎或いは枝となるべき金属線をポリアミド系、変性ポリエチレン系、EVA系、或いはアイオノマー系等の一般に80?130℃近辺に融点を持つホットメルト接着剤として利用される熱可塑性樹脂を0.08?1.0mm程度・・・の肉厚で被覆し花或いは葉の取りつけに際してそれらを取りつける部分の樹脂皮膜をノズルから吹き出す熱風等を利用して熔融させ花或いは葉を直接押しつけて冷却することにより固定するか・・・が非常に能率が良いことを見出した。」(第2頁右上欄6行?同頁左下欄1行)
(f5)「実施例
市販の3.2径の亜鉛びき鉄線に押出し被覆法によりナイロン系ホットメルト接着用樹脂ナイロン12を肉厚400μに被覆しこの被覆鉄線に0.5m径の亜鉛びき鉄線を取りつけた花10輪、及び葉50枚を・・・取りつけた後とりつけ部に熱風を吹きつけその部分の樹脂皮膜を熔融させ引き続き放置冷却して固化させた。」(第2頁左下欄15行?同頁右下欄3行)

g.甲第7号証:特公昭52-22646号公報
甲第7号証は接着剤に関するものであり、次のとおり記載されている。
(g1)「本発明は、線状共重合ポリエステル樹脂を含有する接着剤に関し、その目的は、・・・工業用有機溶剤に可溶なホットメルト型および溶剤型接着剤用の線状共重合ポリエステル樹脂を提供することにある。
一般に加熱圧着型接着剤として使用する熱可塑性重合体に要求される性質は、・・・(5)作業面、接着法、接着剤一般の特性などの点から工業用有機溶剤に可溶性であること、貯蔵性がよいこと
などが望まれる性質である。」(第1頁左欄28行?同頁右欄8行)
(g2)「ホットメルト型接着剤として用いるときには、・・・予め被着体に溶融状態もしくは有機溶剤に溶解させた線状共重合ポリエステルを塗布し、冷却もしくは乾燥させた後、任意の時期に加熱融着する方法など接着方法、接着の対象などにより最適の方法を採用できる。なお、接着に際して、接着部分の耐熱性、耐溶剤性を向上させるためにイソシアネート化合物、エポキシ化合物などポリエステルに三次元構造を導入しうる化合物を添加して架橋させることも可能である。」(第3頁左欄第18?32行)

h.甲第8号証:特開平3-34832号公報
甲第8号証は、金属、樹脂複合モールデイングの製造方法に関するものであり(発明の名称)、次のとおり記載されている。
(h1)「第11図は従来のモールデイングの製造方法を示す系統図である。従来のモールディング1の製造方法は、まずアンコイラ11から金属ストリップ材12を送り出し、ロールコータ13で接着剤を塗布し、高周波加熱器14で加熱して接着剤を焼付ける。水槽15で冷却後、ロール成形機16で折曲成形して異形材4を形成し、高周波加熱器17において加熱して接着剤を活性化し、押出成形型18に供給する。」(第2頁左上欄11?18行)
(h2)「まずアンコイラ11から鉄、塩ビ鋼板、亜鉛メッキ鋼板等の金属ストリップ材12を送り出し、ロールコータ13で接着剤を塗布し、高周波加熱器14で加熱して接着剤を焼付け、水槽15で冷却する。そして金属ストリップ材12の走行速度に合せて一定区間走行しながら切断するプレス21により、金属ストリップ材12を打抜いて、第7図に示すように、欠除部としての切欠6aおよび切抜7aを形成する。・・・その後、ロール成形機16で折曲成形して横断面を異形とした異形材4を形成し、高周波加熱器17において加熱して接着剤を活性化し、押出成形型18に供給する。ここで、PVC、PVA、EVA等の合成樹脂の押出成形を行い、異形材4の周囲ならびに切欠6aおよび切抜7aを被覆するように樹脂層5を形成するとともに、リップ3a、3bを形成する。」(第3頁左下欄1行?同頁右下欄1行)

i.甲第9号証:平成16年(ヨ)第22073号 実用新案権に基づく製造等差し止め仮処分命令申立事件における昭和電線電纜株式会社 外1名たる債権者(本件における被請求人に同じ。)作成の平成16年10月28日付け「第5準備書面(債権者)」

j.甲第10号証:特許技術用語委員会編「特許技術用語集」、日刊工業新聞社、2000年8月28日発行、表紙、第176-177頁、奥付け
「融着」について「溶かし互いに付けること」「(例)ガラス管を融着により連結する。ガラス容器に取手が融着される。」と記載されている(第177頁)。

k.甲第11号証:永井 進監修「実用プラスチック用語辞典 第三版」,1989.9.10,(株)プラスチックス・エージ,表紙、p351「接着」の項、奥付
(k1)「接着 adhesion,glueing:接着剤を媒介とし、化学的もしくは物理的な力、又はその両者によって2個の被着体を結合(接合)させること。通常、接着剤を溶液又は溶液状態にするか、モノマーやオリゴマーのような流動体として被着体に塗布し、次いで溶剤の揮散、反応、冷却などにより接着剤を固化させることにより接着が行われる。
接着力は接着剤と被着体の間に働く結合力と接着剤自身の凝集力によって支配される。前者の結合力の内容は、化学結合、水素結合、ファンデルワールス力などや投錨効果などによる機械的な力が主なものであり、被着体表面上における接着剤のぬれが重要な因子となる。一方、接着剤自身の凝集力はポリマー分子間力に依存し、ポリマーの種類によって決まる。
接着剤には天然高分子から合成高分子まで数多く使用されているが、現在では後者がほとんどを占めている。接着剤を大きく分類すると、1)蒸着型(ゴム系、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニルなどの溶液又はエマルション)、2)反応型(熱硬化性樹脂、シアノアクリレート系、複合系など)、3)感圧型(粘着テープなど)、4)ホットメルト型(エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリアミドなど)がある。」

l.甲第12号証:「JIS 塗料用語 JIS K 5500-1977」、財団法人日本工業規格、昭和52年7月30日発行、表紙、第12、16、28、45、46頁、奥付け
甲第12号証には、「ワニス:樹脂などを溶剤に溶かして作った塗料の総称。顔料は含まれていない。」と記載されている(第16頁)

m.甲第13号証:深井 寛 著「新高分子文庫 16 ホットメルト接着の実際」,(株)高分子刊行会,1979.5.20,表紙、p10?11、64?65、奥付
(m1)「一般の接着剤は溶剤の揮散や化学反応などにより硬化して接着するのに対し、ホットメルト接着剤は加熱溶融し冷却によって硬化し接着力を発揮するので、硬化機構の特異さから接着のセットタイムも数秒ですみ、硬化の最も早い工業的接着剤であることが最大の特徴である。」(第10頁第2?5行)
(m2)「ホットメルト用ベースポリマーとして用いる熱可塑性ポリエステルは、ポリエステルフィルム、金属、プラスチックなど広範囲な被着体に対し接着性がすぐれている。」
(第64頁第5?6行)

参考資料1-1
2004年11月01日付けの、株式会社フジクラのホームページ;http://www.fujikura.co.jp/の技報第100号の技術の目次の画面印刷。
参考資料1-2
参考資料1-1から取得した「巻線事業部」のPDFファイル;「フジクラ技報」2001年4月号の印刷物、第73頁から第76頁であって、
自己融着エナメル線が1957年から製造、販売されていること(第73頁の年表)及び自己融着エナメル線が「エナメル皮膜の最外層に融着性の皮膜を設けたもので,巻線後加熱処理,もしくは溶剤活性によりコイルを固着させて使用する.加熱処理は熱風,通電加熱,外部加熱等様々である。」(第74頁の左欄1.2.2の項)と記載されている。
参考資料2:
沢田慶司著「ポリマー選書丸4 複合・異形を中心とした押出技術と製品開発」、株式会社ラバーダイジェスト社、昭和58年11月1日初版発行、207頁から218頁、奥付け
「これらの木材の被覆成形には、図11-6に示すようなダイが使用される。この図に示すように硬質PVCの流路は一般の被覆ダイと同じであるが、接着剤塗布機構がダイに内蔵されているのが特長である。このプロセスでは押出機によって接着剤圧入口から圧入されたホットメルト材は、ダイ内の二つのマニホールドで均一な圧力でスリットから押出され、これが木材の表面に塗布される。その直後、溶融PVCが圧着・被覆されることになる。」(213頁10?25行)と複合化の成型、圧着方法が出願前に開示されている。

参考資料3:
古谷正之著「プラスチック材料講座丸18 塩化ビニル樹脂」、日刊工業新聞社、昭和49年5月30日3版発行、244頁から255頁、奥付き
「塩ビ混和物の押出被覆条件は,配合,線種,サイズなどによって異なるが,表8・5の配合(1)一般絶縁用で,押出機シリンダ後部 100℃,中部 120?140℃,前部160?170℃,ヘッド 170℃,ダイ 180℃ ぐらいが標準となろう.押出機内のストック温度は 160?180℃, 背圧は 70?150kg/cm^(2)と推定される.」(第247頁9?13行)

参考資料4:
実用プラスチック成形加工事典編集委員会編「実用プラスチック成形加工事典」、株式会社産業調査会事典出版センター、1997年3月24日初版、194頁?195頁、198頁?199頁、奥付け

なお、平成17年4月27日の面接審理における審尋に基づいて請求人・被請求人の合意の上で作成された確認メモ及び当該面接審理における審尋を踏まえて請求人が提出した弁駁書のとおり、甲第4号証の1(平成16年11月 2日提出)及び甲第4号証の2(平成16年11月 2日提出)を参考資料1とした(それぞれ「参考資料1-1」及び「参考資料1-2」とする)。
「丸+数字」;丸付き数字は使用文字に制限があり、「丸n」(nは数字)と記した。

3.被請求人の主張及び提出した証拠方法
3-1.被請求人の主張
被請求人 昭和電線電纜株式会社及び日本プライ株式会社(以下、「被請求人」という。)は、平成17年 1月21日付け答弁書において、乙第1ないし第6号証を提出して、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、その後、上記「1.手続の経緯」のとおり面接審理が行われ、面接審理の口頭審尋記録・確認メモを踏まえて請求人が提出した弁駁書中で口頭審尋記録・確認メモのとおり無効理由が整理されたことに伴い、被請求人から第2回答弁書が提出され、被請求人は請求人が主張する上記(1)本件考案1及び2は、甲第1ないし第8号証(ただし、甲第4号証は除く)に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではない旨主張している。

3-2.証拠方法及び記載事項
(乙1)乙第1号証:無効2001-35093(本件実用新案登録に係る第1回登録無効審判請求事件)の「審決」の写し
(乙2)乙第2号証(特開昭48-58380号公報〉(第1回無効審判請求事件の証拠;甲第14号証)
(乙3)乙第3号証(特開昭48-58381号公報)(第1回無効審判請求事件の証拠;甲第15号証)
これらの文献は、無効理由通知において職権引用された文献で、導体上に塗料(ワニス)を塗布焼付けしてなる自己融着性電線について、これをコイル巻した後、加熱することにより自己融着硬化しコイル成形体が得られること(乙第2号証の第3頁右上欄第4?6行、乙第3号証の第3頁右上欄第4?7行)が記載されており、特に乙第3号証には、このような融着性塗料としてポリエステル系の塗料を用いること(特許請求の範囲)も記載されている。
(乙4)乙第4号証:甲第11号証に同じ。

(乙5)乙第5号証:永井 進 監修「実用プラスチック用語辞典 第三版」,1989.9.10,(株)プラスチックス・エージ,表紙、p351「接着剤」の項、奥付
「接着剤 adhesive: 被着体の二つの面の間に介在して結合(接合)するのに用いる接着性物質。・・・また、流動状態の接着剤が固化する過程の面から分類すると、次のようになる。
1)蒸発型:デキストリン、ゴムなどのように、接着後に水又は溶剤が合わせ目の端から揮散するか、被着体に移行吸収されて被着体を結合するもの。
2)感圧型:粘着テープ用接着剤のように、押えつけると粘性流動して被着体を結合するもの。
3)感温型:エチレン-酢酸ビニル共重合体のように、加熱すると軟化又は溶融し被着体同志を結合するもの。」
(乙6)乙第6号証:深井 寛著「新高分子文庫 16 ホットメルト接着の実際」,1979.5.20,(株)高分子刊行会,表紙、p10?11、64?65、奥付
「一般の接着剤は溶剤の揮散や化学反応などにより硬化して接着するのに対し、ホットメルト接着剤は加熱溶融し冷却によって硬化し接着力を発揮するので、硬化機構の特異さから接着のセットタイムも数秒ですみ、硬化の最も早い工業的接着剤であることが最大の特徴である。」(第10頁第2?5行)
「ホットメルト用ベースポリマーとして用いる熱可塑性ポリエステルは、ポリエステルフィルム、金属、プラスチックなど広範囲な被着体に対し接着性がすぐれている。」
(第64頁第5?6行)
「ホットメルト用ポリエステル樹脂は,表3-23に示す2塩基酸および2価アルコールに,2種あるいはそれ以上の成分をランダム共重合することによって融点,結晶性,二次転位点,溶剤に対する溶解性および機械的性質を改良することができ,非晶性の柔軟な可撓性に富んだものから結晶性の硬いものなど巾広い域の樹脂が得られる。」(第64頁12行?第65頁2行)

4.当審の判断
4-1.本件考案1について
甲第1号証には、「合成樹脂を押出成形して作られるモールデイング材本体が、その押出成形時に一体的に押出されて内包されている屈曲可能な金属線と、該モールデイング材の全長にわたって一体的に結合されている自動車用合成樹脂製モールデイング材。」(摘示(a1))が記載されており、この金属線としては断面円形の線材(摘示(a8))が用いられ、また、金属線には、合成樹脂用接着材の塗被加工が施され(摘示(a3))、このようにした場合は、モールデイング材本体と金属線とが接着剤を介して一体的に結合される(摘示(a7))ことも記載されている。
したがって、甲第1号証には、「モールデイング材本体を形成するための合成樹脂を押出成形する時に、金属丸線に合成樹脂用接着剤を塗被加工し、予め形成された合成樹脂用接着剤の塗被加工層を有する屈曲可能な金属丸線を芯材として押出し、金属丸線が内包されるとともに、モールデイング材本体が全長にわたって合成樹脂用接着剤の塗被加工層を介して金属丸線と一体的に結合されている自動車用合成樹脂製モールデイング材。」の考案(以下、「甲第1号証考案」という。)が記載されているものと認められる。
そこで、本件考案1(以下、「前者」ということもある。)と甲第1号証考案(以下、「後者」ということもある。)とを対比すると、
後者の「自動車用合成樹脂製モールデイング材」、「屈曲可能な金属丸線」は、それぞれ、本件考案1における「樹脂成形体」、「復元性のある丸線」に相当するものである。そして、後者の「自動車用合成樹脂製モールディング材」は、所定形状を有するものであり、合成樹脂を押出成形して作られるものであることから、前者の「樹脂を所定の形状に押出」されるものに相当し、また、後者は、モールディング材は金属丸線が内包され、金属丸線の外周面に予め形成された合成樹脂用接着剤の塗被加工層を介して金属丸線とモールデイング材本体を構成する合成樹脂とを一体的に結合するものであり、一方、前者は、融着層を溶融し丸線と樹脂を接着させてなるもので、丸線と樹脂を融着層を介して一体的に結合させてなるものと認められることから、
両者は、「復元性のある丸線の外周面に樹脂を所定の形状に押出すると共に、丸線と樹脂を丸線の外周面に形成された層を介して一体的に結合させてなる樹脂成形体」に係る発明である点で一致し、下記の点で相違している。
相違点1:丸線の外周面に形成された層が、前者では「ポリエステル系融着性ワニスを塗布焼付して形成される融着層」であるのに対し、後者では「合成樹脂用接着剤を塗被加工し、予め形成された合成樹脂用接着剤の塗被加工層」である点、及び
相違点2:樹脂と丸線とを丸線の外周面に形成された層を介して一体的に結合する手段が、前者では樹脂の「押出時の熱により前記融着層を溶融し丸線と樹脂を接着させ」るのに対し、後者では「モールディング材本体と金属丸線とが接着剤を介して一体的に結合される」点
上記各相違点について以下に検討する。
(1)相違点1について
甲第2号証は、摘示b.の記載によれば、導体上に絶縁被膜(ワニス)を塗布焼付けし、その上に融着層として融着性ワニスを焼き付けた融着性ポリウレタン銅線について、甲第3号証は、摘示(c1)、(c2)の記載によれば、導体の絶縁層(ワニス)の上にさらに熱可塑性ポリエステル等の融着ワニスを二重コーティングしてなる自己融着性電線について記載するものであって、甲第2、第3号証に記載のものは、共に、金属丸線ではあるが、導線であって押し出される合成樹脂中に埋め込むことを意図するものではない。また、共に「融着性ワニス」が周知であることを示すものの、該「融着性ワニス」は絶縁被覆金属丸線であるエナメル線の表面にさらに塗布焼付けされているもので、直接金属線に「ポリエステル系融着性ワニス」を塗布焼付して形成するものでもない。さらに、甲第2号証に記載のものは、巻線、配線のエナメル線にすぎず、甲第3号証に記載の「融着性ワニス」に係る融着層は、コイル成形体の成形材料であって、融着性ワニスに係る融着層同士が融着し、エナメル電線同士を接着一体化するためのもので、コイルと他の被着材とを接着することは全く予定されていないもので、合成樹脂と金属丸線とを融着一体化するものではない。
そして、「ワニス」とは、甲第12号証の「JIS 塗料用語 K 5500-1977」第16頁「ワニス」の項に記載のとおり、樹脂などを溶剤に溶かして作った塗料の総称であり、塗料分野の樹脂組成物を指す用語で、特に「顔料は含まれていない。塗膜は概して透明である。」ことを意味する塗料である。それゆえ、「融着性ワニス」は、このような塗料の一種である以上、まず、被塗装面に特定の性状(耐油性、耐薬品性、耐候性、光沢等)を付与するという塗料本来の機能を有するものであると解すべきであり、「融着性」は、被塗装面に形成される塗料層が熱により溶融して接着性を帯びるという性質をも有するものであることを意味するものと理解するのが相当である。したがって、融着性ワニスと接着剤とは同一視できないものである。
そうすると、このような自己融着性電線用の融着性ワニスが本件の出願前に周知であったといえたとしても、融着性ワニスの接着性にだけ着目し、融着性ワニスを甲第1号証考案の合成樹脂用接着剤として利用することを想到し得るものではなく、「ポリエステル系融着性ワニス」を甲第1号証考案における合成樹脂と金属丸線とを一体的に結合させる合成樹脂用接着剤に代えて適用すること、しかも、「ポリエステル系融着性ワニス」を金属丸線の表面に直接適用する接着剤として採用することを想到し得るものではないから、上記相違点1は甲第2、第3号証に記載された事項に基づいて当業者がきわめて容易に想到し得たものとすることはできない。
また、甲第5号証には、摘示(e1)ないし(e5)の記載によれば、自己硬化性不飽和ポリエステル樹脂組成物及び溶剤からなるホットメルト樹脂組成物を溶融させ、金属線上に塗装後3次元硬化させることで、金属線上に硬化皮膜を形成することが記載されているものの、当該自己硬化性不飽和ポリエステル樹脂組成物及び溶剤からなるホットメルト樹脂組成物が本件考案1にいうポリエステル系融着性ワニスであるとの記載もなく、当該ホットメルト樹脂組成物から形成される硬化皮膜が融着性を有するとの記載もないものであるから、該ホットメルト樹脂組成物が本件考案1にいう「ポリエステル系融着性ワニス」であるといえないし、該硬化皮膜は本件考案1にいう「融着層」であるともいえないものである。甲第6号証には、摘示(f1)ないし(f5)の記載によれば、ホットメルト接着性の熱可塑性樹脂を金属丸線に被覆し、被覆したホットメルト接着剤により該金属丸線に他の被着体を接着することが記載され、該被覆法については実施例(摘示(f5)参照)に押出被覆法であることが記載されている。甲第6号証は、被着体を接着する接着剤としてホットメルト接着剤が記載されているにすぎず、本件考案1にいう「ポリエステル系融着性ワニス」について記載も示唆もないものである。甲第7号証には、摘示(g1)、(g2)の記載によれば、線状共重合ポリエステル樹脂を含有するホットメルト接着剤が記載されているものの、「ポリエステル系融着性ワニス」について記載するところはない。
このように甲第6、第7号証は、「ホットメルト接着剤」に関するもので、甲第1号証考案における合成樹脂用接着剤としてホットメルト接着剤を採用することは必要に応じて適宜選択し得ることといえるが、ホットメルト接着剤と融着性ワニスとは同じものではないから、甲第1号証考案の合成樹脂用接着剤をホットメルト接着剤とし、さらに、そのホットメルト接着剤を融着性ワニスに置き換えることは、きわめて容易に想到し得ることではなく、しかも、甲第5ないし第7号証には、いずれも「ポリエステル系融着性ワニス」について記載も示唆もするところがないものであるから、上記相違点1は、甲第5ないし第7号証に記載された事項に基づいて当業者がきわめて容易に想到し得ることではない。
甲第8号証には、摘示(h1)、(h2)の記載によれば、金属ストリップ材に接着剤を塗布し、加熱して接着剤を焼付け、その後、ロール成形機で折曲成形して横断面を異形とした異形材を形成し、高周波加熱器において加熱して接着剤を活性化し、押し出し成形型に供給し、押出成形を行い、異形材の周囲に樹脂層を被覆することが記載されているものであり、接着剤層を介して押し出された合成樹脂と金属とを一体化する技術を開示するものの、金属丸線の外周面に融着層を形成するものではない。ここにいう「加熱して接着剤層を活性化する」との記載によると、接着剤を溶融することを意味すると解せることから、金属の外周面にホットメルト接着剤層、すなわち「融着層」を形成することが記載されているものといえるものの、甲第8号証には、接着剤の具体的な記載がなく、「ポリエステル系融着性ワニス」について何ら記載するところもないもので、ホットメルト接着剤と融着性ワニスとは同じものではないから、甲第1号証考案の合成樹脂用接着剤をホットメルト接着剤とし、さらに、そのホットメルト接着剤をポリエステル系融着性ワニスに置き換えることはきわめて容易に想到し得ることではないので、上記相違点1は、当業者が甲第8号証に記載された事項に基づいてきわめて容易に想到し得ることではない。
以上のとおり、相違点1については、甲第2、第3、第5ないし第8号証のいずれにも記載も示唆もないから、甲第2、第3、第5ないし第8号証の記載から、相違点1は導き出すことはできないし、きわめて容易に想到し得ることでもない。

(2)相違点2について
上記(1)に記載のとおり、甲第2号証に記載のものは、巻線、配線のエナメル線にすぎず、甲第3号証は、自己融着性電線をコイル成形後、加熱することにより融着性ワニスを加熱溶融して融着電線同士を接着させることについて記載するものであって、また、甲第5ないし第7号証は、それぞれ、金属線に硬化皮膜、ホットメルト接着剤又は共重合ポリエステル樹脂を含有するホットメルト接着剤を形成するものであって、これら甲各号証からは、加熱手段で融着性の層を溶融しその融着性の層を接着に利用することは導き出せるものの、甲各号証には融着層を形成した金属丸線の外周面に合成樹脂を押出被覆すること、及び合成樹脂を押出被覆する時の押出時の熱を利用して融着層を溶融することについて記載も示唆もするところがないから、上記相違点2が甲第2、第3、第5ないし第7号証に基づいて当業者がきわめて容易に想到することができるということはできない。
また、甲第8号証には、上述したとおり、金属ストリップ材に接着剤を塗布し、加熱して接着剤を焼付け、その後、ロール成形機で折曲成形して横断面を異形とした異形材を形成し、高周波加熱器において加熱して接着剤を活性化し、押し出し成形型に供給し、押出成形を行い、異形材の周囲に樹脂層を被覆することが記載されているが、ここにいう「高周波加熱器において加熱して接着剤を活性化し」は、予め、高周波加熱器という加熱手段を用いて接着剤を溶融することを意味すると解せるものの、押出時の熱で接着剤を活性化すること、すなわち、押出時の熱により前記融着層を溶融し丸線と樹脂を接着させることを記載も示唆もするものではない。
以上のとおり、相違点2は、甲第2、第3号証、第5ないし第8号証のいずれにも記載も示唆もない。

(3)まとめ
したがって、本件考案1は、甲第1ないし第3号証、甲第5ないし第8号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。

4-2.本件考案2
甲第1号証の摘示(a6)の「合成樹脂製モールデイング材を押出成形する押出しダイ(図示せず)は、押出し口と反対側に金属線導入口を有し、導入される金属線2を、合成樹脂材と共に押出し口から押出して、所定断面形内に金属線2を内包する合成樹脂製モールデイング材1として押出成形する」との記載事項は、本件考案2の「押出ラインに供給して樹脂を所定形状に押出す」点に相当するから、本件考案2と甲第1号証考案とを対比すると、以下の点で相違している。
相違点1’:丸線の外周面に形成された層が、前者では「融着性ワニスを塗布焼付して形成される融着層」であるのに対し、後者では「合成樹脂用接着剤を塗被加工し、予め形成された合成樹脂用接着剤の塗被加工層」である点、及び
相違点2:樹脂と丸線とを丸線の外周面に形成された層を介して一体的に結合する手段が、前者では、樹脂の「押出時の熱により前記融着層を溶融し丸線と樹脂を接着させ」るのに対し、後者では「モールディング材本体と金属丸線とが接着剤を介して一体的に結合される」点。
しかしながら、上記4-1.において説示した理由により、相違点1及び相違点2がきわめて容易に想到し得たものとすることができないのと同様に、上記相違点1’及び相違点2は、甲第2、第3号証、第5ないし第8号証に記載された事項に基づいて、きわめて容易に想到し得たものとすることができないから、本件考案2も甲第1ないし第3号証、甲第5号証ないし第8号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。

4-3.請求人の主張について
4-3-1.請求人の主張
(1)請求人は、甲第1号証の「合成樹脂用接着剤の塗被加工層」を「液状の熱可塑性樹脂組成物を塗布して形成されたもの」である旨主張している。
(2)請求人は、弁駁書第4頁7行?第5頁2行において、甲第1号証の摘示事項「(ク)」、「(ケ)」の記載を根拠にし、「押出成形だけで『モールディング材本体と金属線とが接着剤を介して一体的に結合される』ためには当然に接着剤が溶融していなければならないことになるのであるから、相違点(イ)(上記相違点2に相当)の「押出時の熱で丸線に形成した接着剤層を溶融する」ことについは甲第1号証に実質的に記載されている。」、「甲第1号証には「押出時の熱で丸線に形成した接着剤層を溶融する」ことで金属線と樹脂モールディング材を一体的に結合していることは実質的に記載されていると見ることが出来る。」(弁駁書第4頁21?第5頁2行)と主張している。
(3)請求人は、甲第9号証の前記仮処分事件の準備書面、本件の答弁書に基づいて、被請求人も「溶剤に溶解した液状のホットメルト型接着剤」は実質的に「融着性ワニス」に該当すると解釈している旨、及び請求人も同様の解釈である旨主張している。
(4)参考資料2、213頁下線部分、参考資料3の247頁下線部分の記載及び発行日は出願後であるが参考資料4を根拠に、接着剤をコートしておき、金型へ導き、金型内で概ね120℃以上に加熱された樹脂と合流させ、樹脂圧とその熱で圧着することにより複合化することが本件考案の出願前からの技術常識であるから、被請求人の『甲第1号証には前記電線や金属線の融着層を成形体を構成する樹脂の押出時の熱により溶融し該成形体構成樹脂と丸線とを接着することが全く記載されておらず、又示唆すらされていない。』という主張は、あたらない旨主張する。

4-3-2.当審の判断
(1)について
甲第1号証の金属丸線に予め形成された合成樹脂用接着剤は、「合成樹脂用接着剤」と記載があるだけで、その接着剤として、具体的な例示がなく、合成樹脂用接着剤として、被着体間に適用させ、両者を接着させてしまうことで接着剤としての機能をすでに使いきってしまうタイプの接着剤、及び熱で溶融し、融着性を発現させ、その融着性により接着するホットメルト型の接着剤等が知られ、材料面から熱硬化性、光硬化性などの硬化性のもの、熱可塑性のものなど各種材料からなるものがあるから、合成樹脂用の接着剤であれば何でも使用してもよいものと解される。また、当該接着剤が如何なる状態で塗被されるのか記載がなく、一般的に、ホットメルト接着剤を含む合成樹脂用接着剤層を形成する際、樹脂が溶剤に溶けた液状のもの、粉末状のもの、熱で溶融状態のものなど各種形態で適用されており、請求人が主張する「液状」とか、合成樹脂用接着剤が溶融しているなどと、直ちに、いうことはできない。
とすると、甲第1号証の押出成形時に金属丸線が合成樹脂と一体的に押出されて、金属丸線と合成樹脂とが合成樹脂用接着剤を介して一体的に結合との記載からは、接着剤が、液状であるとか、熱で溶融するなどといえないだけでなく、熱可塑性組成物であるともいうことはできない。したがって、請求人の(1)の主張は、妥当なものとはいえない。
(2)について
「融着性ワニス」と「ホットメルト型接着剤」とは本来使用目的が異なり、機能も相違する別の概念の材料であって、異種の被着体同士の接着を目的としない「融着性ワニス」について、その融着性という属性の観点で捉え、「融着性ワニス」を「接着剤」として捉えることは、技術の本質を看過するものいうべきである。また、「融着性ワニス」と「ホットメルト型接着剤」とは、この「溶融して接着性を帯びる」という点が、現象的に「ホットメルト型接着剤」と似ているとしても、本来、被着体の接着を目的としていない「融着性ワニス」と、逆に、被塗装面に塗料としての特定の性状を付与するという目的も機能も有していない「接着剤」とは、技術的に明確に区別し得るものというべきであり、同一視することはできない。
上記4-1.で説示したとおり、甲第1号証の記載から、直ちに、「押出時の熱で丸線に形成した接着剤層を溶融する」ことで金属線と樹脂モールディング材を一体的に結合しているとはいえないことから、当該事項が実質的に記載されているとはいえない。したがって、当該主張は根拠のないことである。

(3)について
被請求人が答弁書の中で、「そもそも、被請求人がそのような解釈又は主張は一切しておらず、この主張は明らかに根拠のない失当なものである。」旨主張しているとおり、答弁書等で被請求人は当該主張を行っておらず、請求人の主張は勝手な解釈であって、採用できない。
また、上記(2)で説示したとおり、本来、被着体の接着を目的としていない「融着性ワニス」と、逆に、被塗装面に塗料としての特定の性状を付与するという目的も機能も有していない「接着剤」とは、技術的に明確に区別し得るものというべきであり、、「溶剤に溶解した液状のホットメルト型接着剤」が「融着性ワニス」に該当するなどとはいえないから、請求人の当該主張は採用できない。

(4)について
参考資料2の該当箇所には、確かに木材の被覆成形に関することが記載され、木材表面にホットメルト接着剤を塗布した直後に、溶融PVCを圧着被覆することが記載されているが、請求人が主張するような「接着剤をコートしておき、金型へ導き、金型内で概ね120℃以上に加熱された樹脂と合流させ、樹脂圧とその熱で圧着することにより複合化する」ものではない。そして、参考資料2にはホットメルト接着剤が塗布された直後に溶融PVCを圧着被覆するものであるから、ホットメルト接着剤自体が溶融状態にあるところに、溶融樹脂が供給されるので、樹脂圧とその熱とが相まって、複合化するものと解される。参考資料2に、押出時の熱で接着剤層を溶融することが記載されているとはいえないし、あるいはそのことが周知であるともいえない。また、参考資料3には塩ビ電線の押出被覆に関する技術事項が記載されているだけで、請求人の前記主張を裏付ける事項についての記載はない。参考資料4には金属箔に接着剤をコートしておき金型内で樹脂と合流させ、樹脂圧とその熱で圧着し複合化すると記載はあるものの、接着剤が溶融することも、合流した樹脂の熱で溶融することも何ら記載するところがなく、甲第1号証に記載されている事項と大差のないものであり、しかも、当該文献自体が本出願前公知のものではない。いずれの参考資料も、樹脂の押出時の熱により融着層を溶融し、成形体の樹脂と丸線とを接着することが記載されているものとも、示唆されているものともいえないから、請求人の当該主張は妥当なものとはいえない。

5.結 論
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件考案1及び2の実用新案登録を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定により準用する特許法第169条第2項の規定で更に準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2006-03-16 
結審通知日 2006-03-23 
審決日 2006-04-06 
出願番号 実願平3-67562 
審決分類 U 1 113・ 121- Y (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 友也  
特許庁審判長 石井 淑久
特許庁審判官 野村 康秀
鈴木 由紀夫
登録日 1999-02-26 
登録番号 実用新案登録第2594537号(U2594537) 
考案の名称 樹脂成形体  
代理人 松村 貞男  
代理人 後藤 憲秋  
代理人 後藤 憲秋  
代理人 植村 元雄  
代理人 稲元 富保  
代理人 瀧野 秀雄  
代理人 植村 元雄  
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