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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する B23K
審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する B23K
審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する B23K
管理番号 1146415
審判番号 訂正2006-39082  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2006-12-22 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2006-05-23 
確定日 2006-10-13 
訂正明細書 有 
事件の表示 実用新案登録第2506402号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第2506402号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。
理由 第1.手続きの経緯
本件訂正審判事件に関する手続の経緯は、以下のとおりである。
平成 3年10月11日 本件実用新案登録出願(実願平3-91512号)
平成 7年 5月 1日 手続補正書の提出
平成 7年 7月26日 拒絶査定
平成 7年 9月 6日 拒絶査定不服審判請求(不服平成7-19351号)
平成 7年10月 4日 手続補正書の提出
平成 8年 5月16日 実用新案登録(第2506402号)
平成 9年 2月 7日 異議申立(異議平成9-70524号)
平成 9年 6月20日 訂正請求書の提出
平成10年 4月20日 異議決定(訂正を認めて維持)
平成16年 3月 1日 無効審判請求(無効2004-35120号、その後取下げ)
平成16年 7月 8日 無効審判請求(無効2004-80095号)
平成17年 4月15日 無効審判一次審決(無効とする)
平成17年 5月26日 第1の審決取消訴訟(平成17年(行ケ)10501号)
平成17年 8月22日 第1の訂正審判請求(訂正2005-39149号、その後、無効審判の訂正請求により、みなし取り下げ)
平成18年 1月24日 無効審判二次審決(訂正を認めて無効とする)
平成18年 3月 2日 第2の審決取消訴訟(平成18年(行ケ)10093号)
平成18年 5月23日 本件訂正審判請求

第2.請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、実用新案登録第2506402号の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものである。
請求人の求める訂正の内容は、以下のとおりである。
1.訂正事項
本件実用新案登録の願書に添付した明細書の訂正前の請求項(以下、「旧請求項」という。)を、以下のとおり訂正する。

「【請求項1】スポット溶接ガンと,該スポット溶接ガンに対向配置された2つのチップの一方のみを駆動する電動式サーボ機構と,該電動式サーボ機構制御部を有するロボットコントローラと,前記電動式サーボ機構により駆動される一方のチップの位置を検出するチップ位置検出器と、ロボット位置を検出するロボット位置検出器とからなり,該ロボットコントローラにより,前記スポット溶接ガンによるスポット溶接が制御され,かつ前記ロボット位置検出器により得られるロボットの位置と,前記チップ位置検出器により得られるチップ位置とに基づいて,前記電動式サーボ機構が前記電動式サーボ機構制御部を介してロボットの1軸として制御されることにより,スポット溶接ガンの前記一方のチップを駆動する電動式サーボ機構が,ロボットの他の軸と同期制御可能とされることで,前記対向配置された2つのチップの間隔がロボットの他の軸の動作中においても無段階的に所望開度に制御されること,およびロボットが溶接点に到達してその動きを停止する時点で前記2つのチップがワークを挟み込むとともに,所定の押圧力で押圧動作するよう制御され,さらに溶接点到達後,前記ロボットコントローラからスポット溶接ガンヘ溶接開始の指示がなされることを特徴とするスポット溶接ロボット用制御装置。」(下線は、当審が付加したものである。)

そして、旧請求項は、平成10年4月20日の異議決定により訂正が認められた平成9年6月20日付け訂正請求書の実用新案登録請求の範囲に記載された以下のとおりのものであった。
「【請求項1】スポット溶接ガンと、該スポット溶接ガンのチップを駆動する電動式サーボ機構と、該電動式サーボ機構制御部を有するロボットコントローラとからなり、該ロボットコントローラにより、前記スポット溶接ガンによるスポット溶接が制御され、かつ前記電動式サーボ機構が前記電動式サーボ機構制御部を介してロボットの1軸として制御されることにより、スポット溶接ガンのチップを駆動する電動式サーボ機構が、ロボットの他の軸と同期制御可能とされるとともに、ロボットの他の軸の動作中においても無段階的に所望開度に制御されること、および押圧動作するよう制御され、さらに溶接点到達後、前記ロボットコントローラからスポット溶接ガンへ溶接開始の指示がなされることを特徴とするスポット溶接ロボット用制御装置。」

2.訂正事項の分説
上記訂正事項を詳述すると、以下のとおりである。

訂正事項(1)
「電動式サーボ機構」に関して、
「該スポット溶接ガンのチップを駆動する電動式サーボ機構」を、
「該スポット溶接ガンに対向配置された2つのチップの一方のみを駆動する電動式サーボ機構」と訂正する。

訂正事項(2)
「チップ位置検出器」と「ロボット位置検出器」に関して、
「前記電動式サーボ機構により駆動される一方のチップの位置を検出するチップ位置検出器と、ロボット位置を検出するロボット位置検出器」を加入する。

訂正事項(3)
電動式サーボ機構の制御に関して、
「かつ前記電動式サーボ機構が前記電動式サーボ機構制御部を介してロボットの1軸として制御されることにより」を、
「かつ前記ロボット位置検出器により得られるロボットの位置と,前記チップ位置検出器により得られるチップ位置とに基づいて,前記電動式サーボ機構が前記電動式サーボ機構制御部を介してロボットの1軸として制御されることにより」と訂正する。

訂正事項(4)
スポット溶接ガンのチップの開度の制御に関して、
「スポット溶接ガンのチップを駆動する電動式サーボ機構が、ロボットの他の軸と同期制御可能とされるとともに、ロボットの他の軸の動作中においても無段階的に所望開度に制御されること」を、
「スポット溶接ガンの前記一方のチップを駆動する電動式サーボ機構が,ロボットの他の軸と同期制御可能とされることで,前記対向配置された2つのチップの間隔がロボットの他の軸の動作中においても無段階的に所望開度に制御されること」と訂正する。

訂正事項(5)
押圧動作の制御に関して、
「および押圧動作するよう制御され」を、
「およびロボットが溶接点に到達してその動きを停止する時点で前記2つのチップがワークを挟み込むとともに,所定の押圧力で押圧動作するよう制御され」と訂正する。

第3.判断
1.訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、実用新案登録請求の範囲の減縮・変更の有無

上記訂正事項(1)は、
電動式サーボ機構を「対抗配置された2つのチップの一方のみを駆動する」と限定するものであるから実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、明細書の段落【0011】には、「電動式サーボ機構1は、サーボ増幅器11と電動式サーボモータ12とこのサーボモータ12に結合されているスポット溶接用チップ駆動部(以下、チップ駆動部という)13とからなり、スポット溶接ガンGの本体に適宜手段により保持されている。・・・チップ駆動部13は、電動式サーボモータ12の回転軸の先端部に形成された雄ねじに螺合する雌ねじが一端に形成され、他端にはチップ保持部が形成された昇降部材と、この昇降部材を昇降自在に保持する保持部材とから構成されている。」と記載され、また、図3の記載を参照すれば、チップ駆動部13がチップG1のみを駆動すること、および、対向する他方のチップはスポット溶接ガンGに取り付けられていることが看取できるから、上記訂正事項(1)は、願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内のものであり、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものでない。

上記訂正事項(2)は、
実用新案登録請求の範囲の記載に「チップ位置検出器」と「ロボット位置検出器」を加入するものであるから、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、明細書の段落【0010】には、「図1は本考案の一実施例の機能ブロック図、図2は本考案の一実施例の電気的構成の概略図、図3は本考案の一実施例の概略図である。図において、1は電動式サーボ機構、2はロボットコントローラ、3はチップ位置検出器、Gはスポット溶接ガン、Wはワークである。」と記載され、同【0014】には、「また、電動式サーボモータ12の後端部にはチップ位置検出器3が配設されている。このチップ位置検出器3は、電動式サーボモータ12の回転数を検出する回転数検出器と、検出された回転数をロボットコントローラ2に出力する出力装置とからなっている。」と記載され、同【0013】には、「ロボットコントローラ2は、演算処理装置(CPU)とRAMとROMとタイマーと入出力インターフェースとからなっている。このロボットコントローラ2は、電動式サーボ機構1および位置検出器3と接続されているほか、入力装置、ロボット駆動機構、ロボット位置検出器とも接続されている。ロボットコントローラ2は、サーボ機構1の制御に必要なプログラム等が付加されているほかは、従来のロボットコントローラと同様であるので、その構成の詳細な説明は省略する。」と記載され、また、図1ないし3の記載を参照すれば、チップ位置検出器が、電動式サーボ機構により駆動される一方のチップの位置を検出することは看取できる。
また、ロボット位置検出器がロボット位置を検出することは明らかであり、図2の記載を参照すれば、ロボット位置を検出するロボット位置検出器(番号なし)も、ロボットコントローラ2に接続される旨記載されている。
以上のとおりであるから、上記訂正事項(2)は、願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内のものであり、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものでない。

上記訂正事項(3)は、
電動式サーボ機構の制御が「ロボット位置検出器により得られるロボットの位置と,前記チップ位置検出器により得られるチップ位置とに基づいて」行われることを限定するものであり、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、明細書の段落【0013】には、「ロボットコントローラ2は、演算処理装置(CPU)とRAMとROMとタイマーと入出力インターフェースとからなっている。このロボットコントローラ2は、電動式サーボ機構1および位置検出器3と接続されているほか、入力装置、ロボット駆動機構、ロボット位置検出器とも接続されている。ロボットコントローラ2は、サーボ機構1の制御に必要なプログラム等が付加されているほかは、従来のロボットコントローラと同様であるので、その構成の詳細な説明は省略する。」と記載され、同【0014】には、「また、電動式サーボモータ12の後端部にはチップ位置検出器3が配設されている。このチップ位置検出器3は、電動式サーボモータ12の回転数を検出する回転数検出器と、検出された回転数をロボットコントローラ2に出力する出力装置とからなっている。」と記載され、同【0016】には、
「ステップ1:ロボットは原点で待機している。
ステップ2:軸1および軸2が起動されロボットが溶接点近くの逃げ点に
移動する。
ステップ3:ロボットが溶接点近くの逃げ点に到達すると、電動式サーボ
機構が起動されチップ間の間隔が狭められる。
ステップ4:ロボットが溶接点に達する時点には、チップは所定の押圧力
でワークを保持している。
ステップ5:溶接が開始される。
ステップ6:溶接が終了する。
ステップ7:電動式サーボ機構による押圧状態が終了すると共にチップ間
の間隔が広げられ、ロボットが溶接点近くの逃げ点まで後退
する。
ステップ8:ロボットが溶接点近くの逃げ点に到達すると共にチップ間隔
が初期値に復帰し、電動式サーボ機構が停止される。
ステップ9:ロボットが原点に復帰し、軸1および軸2が停止される。」と記載され、同【0017】には、「このように、ロボットの動作とスポット溶接ガンのチップの開閉動作および押圧動作を同期させることができるので、溶接に要する時間を短縮することができる(図4および図7参照)。」と記載され、また、図4の記載を参照すれば、電動式サーボ機構の制御に伴う「ガン開度」と、ロボットの制御軸である「軸1移動速度」と「軸2移動速度」が、ともに「溶接点」に収束するように同期して制御されていることが看取できる。
そして、このような同期制御のために、制御入力として「ロボットの位置」及び「チップの位置」が必要なのは自明な事項であり、これらの位置に基づき、電動式サーボ機構が制御されるのは、自明な事項の限定であるものと認められる。その際、「電動式サーボ機構が前記電動式サーボ機構制御部を介してロボットの1軸として制御される」のは、訂正前の実用新案登録請求の範囲に記載されていた事項である。
したがって、上記訂正事項(3)は、願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内のものであり、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものでない。

上記訂正事項(4)は、
電動式サーボ機構が駆動するチップが「前記一方の」チップであることを限定するもの、及び、所望開度に制御されるのが「前記対向配置された2つのチップの間隔」であることを限定するものであるから、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件考案の電動式サーボ機構がスポット溶接ガンに対向配置された2つのチップの一方のみを駆動することによって、対向配置された2つのチップの間隔を制御するのは明らかであるから、上記訂正事項(1)に関して述べたのと同様の理由と合わせて、上記訂正事項(4)は、願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内のものであり、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものでない。

上記訂正事項(5)は、
電動式サーボ機構の制御を、ロボットの動作と、スポット溶接ガンのチップの開閉動作および押圧動作の関連に関して、時間軸上での同期の態様を限定したものであり、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同記載において、「その動き」が示すところは、「ロボットの動き」にほかならないが、その「ロボット」が、ロボットの1軸として制御される電動式サーボ機構を含むのか、否かは明らかではない。
しかしながら、「ロボット」に電動式サーボ機構が含まれている場合、「溶接点に到達してその動きを停止する時点」に向かって動作が収束していくのであるから、その時点で、電動式サーボ機構の制御により、スポット溶接ガンに対向配置された2つのチップが溶接点において、ワークを挟み込んでいることになり、他方、「ロボット」に電動式サーボ機構が含まれていない場合においても、「ロボット」が溶接点に到達した時点では、電動式サーボ機構の制御により、スポット溶接ガンに対向配置された2つのチップは、ワークを挟み込んでいることになり、いずれにしても、溶接点に到達した時点、つまり溶接点においては、電動サーボ機構による前記2つのチップもワークを挟み込んでいる、ということを表しているのは明らかである。
また、「前記2つのチップがワークを挟み込む」ことと、「所定の押圧力で押圧動作する」こととは、同時にはできないことであるから、「挟み込むとともに」との記載の意味するところは、「ロボットが溶接点に到達してその動きを停止する時点で前記2つのチップがワークを挟み込」み、その後、直ちに、「所定の押圧力で押圧動作する」よう制御される、と解すべきことも明らかである。
そして、このことに関して、明細書の段落【0016】には、
「・・・
ステップ4:ロボットが溶接点に達する時点には、チップは所定の押圧力でワークを保持している。
・・・
」と記載され、図4の記載を参照すれば、ロボットの各軸(第1軸、及び、第2軸)の動きとガン開度が、同期制御されて、溶接点に向かって収束していくことが示されている。
これらのことから、ロボットが溶接点に到達してその動きを停止する時点で2つのチップがワークを挟み込むとともに、所定の押圧力で押圧動作するように制御していると解される。
したがって、上記訂正事項(5)は、願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内のものであり、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものでない。

2.独立登録要件

上記訂正事項は、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものであるので、訂正後における実用新案登録請求の範囲に記載された考案が、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができる考案であるか(いわゆる独立登録要件を備えるか)について検討する。

(1)本件考案
上記訂正事項による訂正後の本件考案は、前記第2.の1.のとおりである。

(2)刊行物及び先願考案
関連する無効審判(無効2004-80095)において、以下の証拠、
甲第1号証:社団法人日本溶接協会誌「溶接技術」1988年 第36巻 第3号
甲第2号証:特開平3-207580号公報
甲第3号証:Heramnn Selzle著、Hans-Jorg Schilder(当審注:「Jorg」中の文字oについて、原文はoウムラウトの表記である。)編「ROBOTER technik Sonderpublikation der Zeitschrift Roboter」 1991年版 (1991年8月15日特殊法人日本科学技術情報センター受入れ) 及び、その全文訳
甲第5号証:国際公開90/14920号パンフレット 及び、その全文訳
が引用されている。

このうち、甲第3号証には次の考案が記載されていると認められる。
「スポット溶接ガンと、
該スポット溶接ガンのチップを駆動する電動機と、
該電動機を制御するガン制御装置を有するロボット制御装置とからなり、
該ロボット制御装置により、
溶接電流の制御を除くすべての操作が制御され、
かつ前記電動機が前記ガン制御装置を介してロボットの補助軸として制御されることにより、
スポット溶接ガンのチップを駆動する電動機が、
一部では2つの溶接スポット間の移動と同時に制御可能とされるとともに、
ロボットの他の軸の動作中においても開度が制御されること、
および押圧動作するよう制御されるスポット溶接ロボット用制御装置。」

本件考案と甲第3号証記載の考案を対比すると、両者は、本件考案が、少なくとも、「スポット溶接ガンに対向配置された2つのチップの一方のみを駆動する電動式サーボ機構が、ロボットが溶接点に到達してその動きを停止する時点で前記2つのチップがワークを挟み込むとともに、所定の押圧力で押圧動作する」という構成を具備している点で相違している。
そして、その他のいずれの証拠にも、上記構成は記載も示唆もされていない。

さらに、拒絶査定において引用された以下の各刊行物、
刊行物1:実願昭62-102610号(実開平1-9085号)のマイクロフィルム
刊行物2:特公昭45-19644号公報
刊行物3:特開平1-15806号公報
刊行物4:特開昭63-216689号公報
刊行物5:欧州特許出願公開第0278185号明細書
のいずれにも、上記構成は記載も示唆もされていない。

そして、上記構成は自明な事項や周知・慣用事項ではなく、本件考案はこの構成に基づき、明細書の考案の効果の欄に記載された作用効果を奏するものであるから、本件考案は、上記各号証、各刊行物、に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。

また、関連する本件実用新案登録出願の異議申立事件において提出された、甲第1号証である特開平5-138366号公報に係る出願、特願平4-114290号の願書に最初に添付された明細書または図面にも、上記の構成は記載されていないから、当該先の出願に係る考案と同一であるとすることもできない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件考案は、上記の証拠、刊行物、及び先の出願によっては、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができない考案であるとすることはできない。

第4.むすび
したがって、本件訂正は、平成5年法律第26号附則第4条第2項(平成15年改正法附則第12条の規定による改正後のもの)の規定により読み替えられる旧実用新案法(平成5年法律第26号による改正前のもの)40条の2第1項に適合し、旧実用新案法第40条の2第5項において読み替えて準用する同法第39条第3項、第4項及び第5項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
スポット溶接ロボット用制御装置
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】スポット溶接ガンと,該スポット溶接ガンに対向配置された2つのチップの一方のみを駆動する電動式サーボ機構と,該電動式サーボ機構制御部を有するロボットコントローラと,前記電動式サーボ機構により駆動される一方のチップの位置を検出するチップ位置検出器と,ロボット位置を検出するロボット位置検出器とからなり,該ロボットコントローラにより,前記スポット溶接ガンによるスポット溶接が制御され,かつ前記ロボット位置検出器により得られるロボットの位置と,前記チップ位置検出器により得られるチップ位置とに基づいて,前記電動式サーボ機構が前記電動式サーボ機構制御部を介してロボットの1軸として制御されることにより,スポット溶接ガンの前記一方のチップを駆動する電動式サーボ機構が,ロボットの他の軸と同期制御可能とされることで,前記対向配置された2つのチップの間隔がロボットの他の軸の動作中においても無段階的に所望開度に制御されること,およびロボットが溶接点に到達してその動きを停止する時点で前記2つのチップがワークを挟み込むとともに,所定の押圧力で押圧動作するよう制御され,さらに溶接点到達後,前記ロボットコントローラからスポット溶接ガンへ溶接開始の指示がなされることを特徴とするスポット溶接ロボット用制御装置。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案はスポット溶接ロボット用制御装置に関する。さらに詳しくは、油圧制御装置や空気圧制御装置を介することなく直接スポット溶接ガンのチップの開閉動作の制御が行えるスポット溶接ロボット用制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車の生産ラインなどではスポット溶接用ロボットが使用されている。このスポット溶接用ロボットにおいては、図6に示すような油圧や空気圧を利用したスポット溶接ガンが用いられている。図において、101は空気圧若しくは油圧式チップ昇降装置、102はチップ昇降部材、103は空気圧若しくは油圧制御装置、104はロボットコントローラを示す。このため、この油圧や空気圧制御装置(以下、流体系制御装置という)103が必要となる。この流体系制御装置103は、主として電気的素子から構成されているロボットコントローラ104と構成が根本的に異なるため、ロボットコントローラ104と一体的に構成することが出来ず、別個独立に設置されている。そして、ロボットコントローラ104は流体系制御装置103の制御素子を制御することにより、間接的にもスポット溶接ガンGの制御を行っている。そのため、制御系が複雑になるとともにコスト上昇の要因ともなっている。
【0003】
さらに、流体系制御装置103には、配管、シリンダ、弁など一定の容積を有する素子が用いられているので、時間遅れが生じやすい。従って、主として電気的素子により構成され時間遅れの少ないロボットコントローラと、同期制御を行うことが困難である。このため、図7に示すようにロボットコントローラにて、ロボットを所定位置に移動した後、流体系制御装置103によりスポット溶接ガンGのチップG1を駆動しスポット溶接を行っている。さらに、スポット溶接が完了した後、再度ロボットコントローラ104によりロボットを所定位置に復帰させている。このため、スポット溶接に時間がかかることになる。これは、生産ラインの生産能率の更なる向上が望まれている自動車産業にとっては大きな問題である。
【0004】
かかる流体系制御装置103を用いたスポット溶接ガンGの欠点を解消すべく、誘導電動機を用いたスポット溶接ガンが提案されている(特公平3-50631号明細書)。
【0005】
しかしながら、誘導電動機を用いたスポット溶接ガンでは、サーボ機構が従来のロボットのものと異なるため、ロボットの制御と同期をとるにはスポット溶接ガンとロボットコントローラの間に別の制御装置が必要となり、コスト上昇の要因となるとともに依然として制御が複雑になるという問題があり、ロボットコントローラと容易に同期制御を行うことができず、また、溶接時間の短縮もいま一歩である。したがって、このスポット溶接ガンをただちにスポット溶接用ロボットに適用することには困難がある。
【0006】
【考案が解決しようとする課題】
本考案はかかる従来技術の問題点に鑑みなされたもので、スポット溶接ガンのチップの開閉動作の制御機構が簡略化されると共にロボットの他の動作機構と容易に同期制御ができ、それにより溶接時間を著しく短縮することができるスポット溶接ロボット用制御装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本考案のスポット溶接ロボット用制御装置は、スポット溶接ガンと、該スポット溶接ガンのチップを駆動する電動式サーボ機構と、該電動式サーボ機構制御部を有するロボットコントローラとからなり、ロボットの1軸としてスポット溶接ガンをロボットと同期制御できることを特徴としている。
【0008】
【作用】
本考案のスポット溶接ロボット用制御装置においては、従来のロボットと同様な電動式サーボ機構によりスポット溶接ガンの制御を行っているので、ロボットの制御とスポット溶接ガンの同期制御が行え、スポット溶接に要する時間を著しく短縮することができる。
【0009】
【実施例】
以下、添付図面を参照しながら本考案の一実施例について説明するが、本考案はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0010】
図1は本考案の一実施例の機能ブロック図、図2は本考案の一実施例の電気的構成の概略図、図3は本考案の一実施例の概略図である。図において、1は電動式サーボ機構、2はロボットコントローラ、3はチップ位置検出器、Gはスポット溶接ガン、Wはワークである。
【0011】
電動式サーボ機構1は、サーボ増幅器11と電動式サーボモータ12とこのサーボモータ12に結合されているスポット溶接用チップ駆動部(以下、チップ駆動部という)13とからなり、スポット溶接ガンGの本体に適宜手段により保持されている。サーボ増幅器11は、サーボモータを指令値どおりの回転角や回転速度で回転させるためのパワーを供給できる機能を有するものならいかなるものも用いることができ、その構成に特に限定はなく、従来よりサーボ機構に用いられているものを用いることができる。その具体例として、サイリスタ増幅器、トランジスタ増幅器等を挙げることができる。電動式サーボモータ12は、所望の溶接条件に応じてチップ駆動部13を駆動できるものならいかなるものも用いることができ、その構成に特に限定はなく、従来よりサーボ機構に用いられているものを用いることができる。その具体例として、溶接条件が複雑で、一定でないようなときは、ブラシレスDCモータ等を用いることができる。チップ駆動部13は、電動式サーボモータ12の回転軸の先端部に形成された雄ねじに螺合する雌ねじが一端に形成され、他端にはチップ保持部が形成された昇降部材と、この昇降部材を昇降自在に保持する保持部材とから構成されている。この保持部材は適宜手段により電動式サーボモータ12により保持されている。使用するねじは、電動式サーボモータ12の高速回転に対する追従性の良さ、耐久性および精度の点から、ボールスクリューを用いるのが好ましい。なお、チップ保持部の構成は従来の空気式や油圧式のものと同様であるので、その構成の詳細な説明は省略する。
【0012】
サーボ機構1はこのように構成されているので、ロボットコントローラ2の指令により、ワークWを挟み込みむと共に所定の押圧力を確保することができる。
【0013】
ロボットコントローラ2は、演算処理装置(CPU)とRAMとROMとタイマーと入出力インターフェースとからなっている。このロボットコントローラ2は、電動式サーボ機構1および位置検出器3と接続されているほか、入力装置、ロボット駆動機構、ロボット位置検出器とも接続されている。ロボットコントローラ2は、サーボ機構1の制御に必要なプログラム等が付加されているほかは、従来のロボットコントローラと同様であるので、その構成の詳細は説明は省略する。
【0014】
また、電動式サーボモータ12の後端部にはチップ位置検出器3が配設されている。このチップ位置検出器3は、電動式サーボモータ12の回転数を検出する回転数検出器と、検出された回転数をロボットコントローラ2に出力する出力装置とからなっている。
【0015】
次に、このように構成されたスポット溶接ロボット用制御装置を用いて、2軸の駆動軸を有するロボットによりスポット溶接を行う場合のロボットの動作について、図4に示すタイムチャートに基づいて説明する。
【0016】
ステップ1:ロボットは原点で待機している。
ステップ2:軸1および軸2が起動されロボットが溶接点近くの逃げ点に移動する。
ステップ3:ロボットが溶接点近くの逃げ点に到達すると、電動式サーボ機構が起動され、チップ間の間隔が狭められる。
ステップ4:ロボットが溶接点に達する時点には、チップは所定の押圧力でワークを保持している。
ステップ5:溶接が開始される。
ステップ6:溶接が終了する。
ステップ7:電動式サーボ機構による押圧状態が終了すると共にチップ間の間隔が広げられ、ロボットが溶接点近くの逃げ点まで後退する。
ステップ8:ロボットが溶接点近くの逃げ点に到達すると共にチップ間隔が初期値に復帰し、電動式サーボ機構が停止される。
ステップ9:ロボットが原点に復帰し、軸1および軸2が停止される。
【0017】
このように、ロボットの動作とスポット溶接ガンのチップの開閉動作および押圧動作を同期させることができるので、溶接に要する時間を短縮することができる(図4および図7参照)。
【0018】
図5は他の実施例のタイムチャートである。図5より明らかなように、本考案の制御装置を用いれば、スポット溶接ガンのチップを必ずしも全開にする必要はなく、ロボットの動作状況に応じて必要開度に制御できるので、溶接点が多数存在する場合、溶接時のスポット溶接ガンの動作時間を著しく短縮することができる。したがって、溶接に要する時間も著しく短縮することができる。
【0019】
【考案の効果】
以上説明したように、本考案においては電動式サーボ機構を用いてスポット溶接ガンのチップの開閉動作および押圧動作と、ロボットの移動動作とを同期させているので、溶接に要する時間を短縮することができる。この効果は、溶接点数が多い場合に一層顕著となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本考案の一実施例の機能ブロック図である。
【図2】
本考案の一実施例の電気的構成の概略図である。
【図3】
本考案の一実施例の概略図である。
【図4】
本考案の制御装置を用いたロボットの動作のタイムチャートの一例である。
【図5】
本考案の制御装置を用いたロボットの動作のタイムチャートのその他の例である。
【図6】
従来のスポット溶接ロボット用制御装置の概略図である。
【図7】
従来の制御装置を用いたロボットの動作のタイムチャートの一例である。
【符号の説明】
1 電動式サーボ機構
2 ロボットコントローラ
3 チップ位置検出器
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2006-10-02 
出願番号 実願平3-91512 
審決分類 U 1 41・ 854- Y (B23K)
U 1 41・ 856- Y (B23K)
U 1 41・ 841- Y (B23K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川端 修  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 佐々木 正章
中島 昭浩
野村 亨
菅澤 洋二
登録日 1996-05-16 
登録番号 実用新案登録第2506402号(U2506402) 
考案の名称 スポット溶接ロボット用制御装置  
代理人 岡田 さなゑ  
代理人 岡田 さなゑ  
代理人 茂木 鉄平  
代理人 藤本 英二  
代理人 曽々木 太郎  
代理人 茂木 鉄平  
代理人 畑 郁夫  
代理人 藤本 英二  
代理人 畑 郁夫  
代理人 曽々木 太郎  
代理人 茂木 鉄平  
代理人 畑 郁夫  
代理人 曽々木 太郎  
代理人 藤本 英二  
代理人 岡田 さなゑ  
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