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審決分類 |
審判 A47L |
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管理番号 | 1146416 |
審判番号 | 無効2005-40006 |
総通号数 | 84 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2006-12-22 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2005-07-08 |
確定日 | 2006-10-11 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第3096928号実用新案「拭き掃除用シートの改良構造」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 実用新案登録第3096928号の請求項1ないし3に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件実用新案登録第3096928号の請求項1?3に係る考案についての出願は、平成15年4月3日の出願であって、平成15年7月23日にその実用新案権の設定登録がなされ、その後、その請求項1?3についての実用新案登録に対して、請求人より、平成17年7月8日に、実用新案登録無効審判の請求がなされたものである。 なお、被請求人に対して、期間を指定して答弁の機会を与えたが、指定期間内に被請求人からは何らの答弁もなされなかった。 第2 本件考案 本件請求項1?3に係る考案(以下順に、「本件考案1」?「本件考案3」という。)は、実用新案登録請求の範囲の請求項1?3に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。 1 本件考案1 一種立体型の拭き掃除用シートの構造に係わり、主に設置層、中心層、数個のリブ片により構成し、 該中心層の両側に各設置層を設け、該設置層内に数個の設置空間を設け、主に汚れ、塵、埃を該設置空間内へ推進し、且該設置空間に異なる方向へ延びるリブ片を設け、該リブ片は高周波粘着により設置層へ設け、該リブ片と設置空間は互いに対応する効果となり、且該設置層の両側に各粘着部を設 け、該拭き掃除用シートは桿本体へ粘着固定し、また該設置層の両側に外へ向かって延びる数個の凸部を設け、該凸部は隙間へ入り込み、徹底的に清掃することを特徴とする拭き掃除用シートの改良構造。 2 本件考案2 前記リブ片の片端に斜め方向へ延びる引っ掛けリブを設け、該引っ掛けリブとリブ片の間に設置溝を設け、該設置溝は塵、埃をためておくことを特徴とする請求項1記載の拭き掃除用シートの改良構造。 3 本件考案3 前記設置空間の別の片端へリブ片を設け、該リブ片は2つずつ相対応し、該リブ片は塵、埃を設置空間内へ推進することを特徴とする請求項1記載の拭き掃除用シートの改良構造。 第3 請求人の主張 1 無効理由1(実用新案法第5条第6項第2号違反) (1)本件考案1について 「異なる方向」の記載について、何と何とが「異なる」のか明らかとされておらず、「異なる方向」の比較の基準又は程度が不明確である。 「該リブ片は高周波粘着により接地層へ設け」の記載について、考案の詳細な説明には、「高周波粘着」により該リブ片を設置することにより得られる特定の形態について、具体的構成が記載されていないから、「高周波粘着による設置方法」という記載の技術的意味が理解できない。 「互いに対応する効果」の記載について、「互いに対応する効果」の定義が詳細な説明中に記載されておらず、「互いに対応する効果」の基準又は程度が不明確である。 「該設置層の両側に外へ向かって延びる数個の凸部」の記載について、「該設置層の両側に外へ向かって延びる数個の凸部」の技術的意味が理解できない。 したがって、本件考案1は不明確である。 (2)本件考案2について 「斜め方向へ延びる」の記載について、「斜め方向」は、無限大に存在 し、いずれの方向を指すのかについて、詳細な説明中に記載されていない。 したがって、本件考案2は不明確である。 (3)本件考案3について 「相対応し」の記載について、「相対応し」の定義が詳細な説明中に記載されていないから、何が、どのように「相対応」するのか不明確である。 したがって、本件考案3は不明確である。 以上のとおり、本件考案1?3は不明確となっているから、本件考案1?3についての実用新案登録は、実用新案法第5条第6項第2号に規定する要件を満たしていない実用新案登録出願に対してされたものであり、実用新案法第37条第1項第4号の規定により無効にされるべきものである。 2 無効理由2(実用新案法第5条第4項違反) 本件考案1?3は、各請求項及び考案の詳細な説明から把握できない。 また、請求項2記載の「斜め方向へ延びる」について、考案の詳細な説明には当業者がその実施をできる程度に明確かつ十分に説明されていない。 したがって、本件考案1?3についての実用新案登録は、実用新案法第5条第4項に規定する要件を満たしていない実用新案登録出願に対してされたものであり、実用新案法第37条第1項第4号の規定により無効にされるべきものである。 3 無効理由3(実用新案法第3条第2項違反) 本件考案1、3は、甲第1?5号証に記載された考案に基いて、本件考案2は甲第1?6号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案できたものであるから、本件考案1?3についての実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであり、実用新案法第37条第1項第2号の規定により無効にされるべきものである。 【証拠方法】 甲第1号証:特開平10-328107号公報 甲第2号証:特開平7-250797号公報 甲第3号証:特開平9-98920号公報 甲第4号証:実開平7-44162号公報 甲第5号証:特開平10-179486号公報 甲第6号証:特開2001-292612号公報 第4 当審の判断 1 無効理由3について (1)甲各号証の記載事項 甲各号証には、以下の事項が図面とともに記載されている。 ア 甲第1号証(以下、「刊行物1」という。) (ア)「拭き取り具2は、2枚の重なり合う同形同大のシート状の拭き取り材1をそれらの周縁に沿って延び、かつ該周縁から内側へ適宜離間して位置する第1接合線4で接合することにより形成されている。拭き取り具2は、底部5が半円形を呈し、深さDと、幅Wとを有する袋であって、汚れ拭き取り面6と、鋸歯状の周縁7と、ホルダー挿入口8とを有する。…(略)…。」(段落【0009】) (イ)「図2は、図1のII-II線断面図である。図においてホルダー3を介して重なり合う上側と下側の拭き取り材1のそれぞれは、汚れを拭き取るためのフラップ18と、複数条のフラップ18が取り付けられている支持シート17と、支持シート17を補強するための裏打ちシート16とによって構成されていて、フラップ18が袋の外側に、裏打ちシート16が袋の内側に位置している。…(略)…」(段落【0010】) (ウ)「フラップ18は、その長さ方向が袋の幅方向へ延びていて、袋と同じ寸法Wを有する一対の側縁26,27と、これら側縁26,27と交差する方向へ延びている一対の端縁66,67を有しており、端縁66,77(図1参照)が鋸歯状を呈している。各フラップ18は、両側縁26,27間に、袋の深さ方向へ延びる寸法Hを有しており、互いの側縁26どうし、および27どうしを対向させている。側縁26とその近傍の部分は、第2接合線22において支持シート17に接合しており、もう一方の側縁27を含む残余の部分は、支持シート17に対して非接合状態にある。それぞれのフラップ18は、側縁26が固定された状態で双頭矢印P方向へ、すなわち支持シート17に対して離間または当接するように起伏可能であって、離間したときには、支持シート17との間のポケット28が開口する。…(略)…」(段落【0012】) (エ)「図3は、図2の第2接合線22とその近傍の拡大図である。重なり合う裏打ちシート16、支持シート17、および各フラップ18の側縁26とその近傍が、第2接合線22において圧縮され互いに溶着している。…(略)…」(段落【0013】) (オ)「このように構成された拭き取り具2は、ホルダーの柄3Bを持って拭き取り面6のうちの下側拭き取り面6A(図2,4参照)で器物や床面等を軽く擦り、それらの汚れを拭き取ることができる。拭き取り具2は、フラップ18が延びる方向に対して垂直な方向へ動かせば、ポケット28の中へ塵埃を取り入れることができる。ポケット28は、互いに反対の方向へ開口しているから、垂直方向へ往復する動きのそれぞれで塵埃を取り入れることができる。ポケット28の中の塵埃は、拭き取り具2を使用しているときにも、またそれを廃棄するときにも飛散しにくい。拭き取り具2の鋸歯状を呈する周縁とその近傍では、器物の狭隘な部位の塵埃を捕捉することができ る。」(段落【0015】) (カ)「この発明に係る汚れ拭き取り材1は、図示例のような袋の形態で使用する他に、少なくとも支持シート17とフラップ18とで構成されるシートの形態で使用することもできる。…(略)…」(段落【0018】) (キ)図1には、袋状の拭き取り具2が、ホルダー3の挿入部分3Aの挿入によりホルダー3に取り付けられている状態が、図2には、支持シート17にフラップ18が相対向して設けられていて、フラップ18間にポケット28が形成されている拭き取り具2が図示されている。 上記(ア)?(オ)(キ)の記載事項からみて、刊行物1には次の考案(以下、「引用考案」という。)が記載されていると認められる。 「拭き取り具2は、2枚の重なり合う同形同大のシート状の拭き取り材1 を、周縁から内側へ適宜離間して位置する第1接合線4で接合することにより形成され、上側と下側の拭き取り材1のそれぞれは、汚れを拭き取るためのフラップ18と、複数条のフラップ18が溶着により取り付けられている支持シート17と、支持シート17を補強するための裏打ちシート16とによって構成されていて、フラップ18は支持シート17に相対向して設けられ、フラップ18間にポケット28が形成されていて、拭き取り具2の周縁は鋸歯状となっており、袋状の拭き取り具2は、ホルダー3の挿入部分3Aが挿入されことによりホルダー3に取り付けられる拭き取り具2。」 イ 甲第3号証(以下、「刊行物3」という。) (ア)「【発明の属する技術分野】本発明は、掃除用シートにかかり、詳しくは生産性に優れ、低コスト化が可能な掃除用シートに関する。」(段落【0001】) (イ)「【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ま ず、図1に基づいて本発明の実施例1を説明する。本発明の実施例1の掃除用シートAは、繊維交絡後に加熱されて立体捲縮された、非融着繊維であるポリエステル繊維の表裏層10,20と、熱融着繊維製の中間層30とからなる積層不織布シートである。」(段落【0011】) (ウ)「また、立体捲縮される熱融着繊維からなる中間層30の両面にポリエステル繊維からなる表裏層10,20を積層したので、中間層で掃除用シートとしての充分な強度を確保し、自由度の高い繊維の絡みよりなる表裏層で塵や埃を吸着し、これを保持できるという効果が得られる。」(段落【0021】) ウ 甲第4号証(以下、「刊行物4」という。) (ア)「(イ)床拭き用に使う掃除棒の先にノリ付きペーパータオルを付ける。(ロ)掃除棒の先にはゴム板が付いている、先が鋭角になっている。以上の如く構成された、床拭き掃除棒。」(【実用新案登録請求の範囲】の【請求項1】) (イ)「【作用】ノリ付きペーパータオルのシールをはがしてゴム板に張り付ける。」(段落【0005】) エ 甲第5号証(以下、「刊行物5」という。) (ア)「【請求項1】柄(2)の長さ方向一端部に装着体(3)を支持した掃除用具(1)における前記装着体(3)に装着する雑巾であって、少なくとも前記装着体(3)の下面を覆える大きさとした雑巾本体(4)と、係止部を有する雄側ファスナー片(5a)及びこの係止部に係合可能な係合部を有する雌側ファスナー片(5b)を備えた面ファスナー(5)とから成り、前記雑巾本体(4)を厚手の布材から形成する一方、面ファスナー(5)を構成する少なくとも一方のファスナー片を、雑巾本体(4)の相対向する両側縁部にそれぞれ設けて、これらファスナー片に対する他方のファスナー片の係合により、前記雑巾本体(4)を前記装着体(3)に着脱可能としたことを特徴とする雑巾。 【請求項2】雌側ファスナー片(5b)を、雑巾本体(4)の相対向する両側縁部の表裏両面に設けている請求項1記載の雑巾。 【請求項3】雑巾本体(4)の相対向両側縁部の一方側に雌側ファスナー片(5b)を、他方側に雄側ファスナー片(5a)をそれぞれ設けている請求項1記載の雑巾。 【請求項4】雌側ファスナー片(5b)を雑巾本体(4)の表面に、雄側ファスナー片(5a)を雑巾本体(4)の裏面にそれぞれ設けている請求項3記載の雑巾。」(【特許請求の範囲】) (イ)「以上の雑巾の使用に伴い、雑巾本体4の一方の面が汚れた場合に は、連結片6を雑巾本体4から取り外して、雑巾本体4を裏返した状態で、前記したように再度装着体3の外面に重合させるのであって、雌側ファスナー片5bが、装着体3の裏面にも逢着されているため、前記連結片6を介して雑巾本体4の両端部を連結して雑巾本体4を装着体3に装着することが出来、従って雑巾本体4の表裏両面を清掃作業に使用することが出来る。」(段落【0016】) (2)対比、判断 ア 本件考案1について 本件考案1と引用考案とを比較する。 引用考案の「支持シート17」、「ポケット28」、「フラップ18」、「鋸歯状」は、その機能、構造からみて、本件考案1の「設置層」、「設置空間」、「リブ片」、「外に向かって延びる数個の凸部」に各々相当し、引用考案の「拭き取り具2」と本件考案1の「一種立体型の拭き掃除用シート」は、一種立体型の拭き掃除用具である点で共通し、引用考案の「複数条のフラップ18が溶着により取り付けられている支持シート17」と本件考案1の「リブ片は高周波粘着により設置層へ設け」は、リブ片を設置層へ固定している点で共通している。そして、引用考案のフラップ18、ポケット28と本件考案1のリブ片、設置空間とは、主に汚れ、塵、埃を相対向するフラップ18(リブ片)間に形成されたポケット28(設置空間)内へ推進するものであるから、本件考案1でいう互いに対応する効果となるものである点で同じである。 また、引用考案の「支持シート17にフラップ18が相対向して設けられてい」ることは、フラップ18(リブ片)が異なる方向に延びていると云えるから、本件考案1でいう「設置空間に異なる方向へ延びるリブ片を設け」るということに相当する。 更に、引用考案の「袋状の拭き取り具2は、ホルダー3の挿入部分3Aが挿入されことによりホルダー3に取り付けられる」ことと本件考案1の「設置層の両側に各粘着部を設け、拭き掃除用シートは桿本体へ粘着固定し」は、拭き掃除用具を掃除用具取り付け具へ取り付けている点で共通し、引用考案の「鋸歯状」と本件考案1の「外に向かって延びる数個の凸部」は、支持シート17(設置層)の端部に設けられていて、隙間へ入り込み、徹底的に清掃するものである点で同じである。 そうすると、両者は、本件考案1の用語を用いて表現すると、 「一種立体型の拭き掃除用具の構造に係わり、設置層、数個のリブ片を有し、設置層内に数個の設置空間を設け、主に汚れ、塵、埃を該設置空間内へ推進し、且該設置空間に異なる方向へ延びるリブ片を設け、該リブ片は設置層へ固定され、該リブ片と設置空間は互いに対応する効果となり、該拭き掃除用具は掃除用具取り付け具へ固定し、また該設置層の端部に外へ向かって延びる数個の凸部を設け、該凸部は隙間へ入り込み、徹底的に清掃することを特徴とする拭き掃除用具の改良構造。」で一致し、次の点で相違する。 <相違点1> 一種立体型の拭き掃除用具の構造に関し、本件考案1は、主に設置層、中心層、数個のリブ片により構成し、該中心層の両側に各設置層を設けたシートであるのに対して、引用考案は、2枚の拭き取り材1を第1接合線4で接合することにより形成され、拭き取り材1のそれぞれは、フラップ18と、フラップが取り付けられている支持シート17と、支持シート17を補強するための裏打ちシート16とによって構成された拭き取り具である点。 <相違点2> リブ片の設置層への固定に関し、本件考案1は、高周波粘着によるのに対して、引用考案は、溶着による点。 <相違点3> 一種立体型の拭き掃除用具の掃除用具取り付け具への取り付けに関し、本件考案1は、設置層の両側に各粘着部を設け、粘着固定しているのに対して、引用考案は、汚れ拭き取り具2の内部に、ホルダー3(掃除用具取り付け具)の挿入部分3Aを挿入することにより取り付けている点。 <相違点4> 外へ向かって延びる数個の凸部の設置箇所に関し、本件考案1は、設置層の両側に設けているのに対して、引用考案は、拭き取り具2の周縁に設けている点。 上記相違点1?4について以下検討する。 (ア)相違点1について 刊行物1には、引用考案の他に、「この発明に係る汚れ拭き取り材1は、図示例のような袋の形態で使用する他に、少なくとも支持シート17とフラップ18とで構成されるシートの形態で使用することもできる。」ことが記載されている(第4 1(1)ア(カ)の記載参照)。 また、刊行物3には、中間層30の両面に、塵や埃を吸着する表裏層10,20を積層して清掃用シートを構成する考案が記載されている。 そうすると、これらの記載に接した当業者ならば、拭き掃除用具の構造を、中心層の両側に設置層を設けてシート状とすることはきわめて容易に考え得ることであり、また、引用考案は、リブ片を設置層に固定し、塵や埃をためる設置空間を形成しているから、一種立体型の拭き掃除用具を、設置層、中心層、数個のリブ片により構成し、本件考案1の上記相違点1に係る考案特定事項とすることは、引用考案、上記刊行物1記載事項及び刊行物3に記載された考案から当業者がきわめて容易に想到し得たことである。 (イ)相違点2について 本件考案1でいう高周波粘着は、技術常識からみて高周波溶着のことを意味していると解される。 ところで、固定手段として高周波溶着を用いることは通常行われていることであるから(必要なら、甲第2号証の記載参照)、リブ片の設置層への固定に関し、本件考案1の相違点2に係る考案特定事項とすることは、当業者の適宜なし得た設計的事項である。 (ウ)相違点3について 刊行物4には、ペーパタオル4を掃除棒の先にノリ付けすることが記載されており、刊行物5には、雑巾本体4の相対向する両端部にファスナー片を設け、柄(2)の一端部に取り付けられた装着体3に雑巾本体4をファスナーによって装着することが記載されている。 そして、刊行物4記載のペーパタオル4、刊行物5記載の雑巾本体4は、拭き掃除用具であり、また、刊行物4記載の掃除棒、刊行物5記載の柄(2)の一端部に取り付けられた装着体3は、掃除用具取り付け具であるから、刊行物4には、拭き掃除用具を掃除用具取り付け具にノリ付け(粘着固定)する考案が、刊行物5には、拭き掃除用具の両端部にファスナー(掃除用具取り付け具への取り付け手段)を設ける考案が記載されていると云える。 そうすると、刊行物4,5記載の考案に接した当業者ならば、設置層の両側に掃除用具取り付け具への取り付け手段を設けること、そして、固定手段として粘着固定を採用することは容易に考え得ることであると云えるから、本件考案1の相違点3に係る考案特定事項は、引用考案、刊行物4、5に記載された考案から当業者がきわめて容易に想到し得たことである。 (エ)相違点4について 外へ向かって延びる数個の凸部を拭き取り具2の周縁に設けるか両側に設けるか当業者が必要に応じて適宜なし得る設計的事項であるから、本件考案1の相違点4に係る考案特定事項は当業者が適宜なし得た設計的事項であ る。 そして、上記相違点1?4によって本件考案が奏する作用、効果も、引用考案、刊行物1記載事項、刊行物3?5記載の考案及び慣用手段から予測される範囲のものであって、格別なものではない。 よって、本件考案1は、引用考案、刊行物1記載事項、刊行物3?5記載の考案及び慣用手段に基いて当業者がきわめて容易に考案することができたものであ る。 イ 本件考案2について 本件考案2と引用考案を比較すると、上記一致点で一致し、相違点1?4で相違し、更に次の点で相違している。 <相違点5> 本件考案2は、リブ片の片端に斜め方向へ延びる引っ掛けリブを設け、該引っ掛けリブとリブ片の間に設置溝を設け、該設置溝は塵、埃をためておくのに対して、引用考案は、そのような構成を備えていない点。 上記相違点1?4については、「第4 1(2)ア」で述べたとおりである。 上記相違点5について以下検討する。 引用考案は、ポケット28(設置空間)の中に塵埃を取り入れ、フラップ18(リブ片)により塵埃が落ちることを防止するものであり、これに加えて、更に塵埃をためるために、リブ片の片端に斜め方向へ延びる引っ掛けリブを設け、該引っ掛けリブとリブ片の間に設置溝を設ける程度のことは当業者が必要に応じてなし得ることであると云えるから、本件考案2の相違点5に係る考案特定事項とすることは当業者が必要に応じてなし得た設計的事項である。 また、上記相違点1?5によって本件考案が奏する作用、効果も、引用考案、刊行物1記載事項、刊行物3?5記載の考案及び慣用手段から予測される範囲のものであって、格別なものではない。 よって、本件考案2は、引用考案、刊行物1記載事項、刊行物3?5記載の考案及び慣用手段に基いて当業者がきわめて容易に考案することができたものである。 ウ 本件考案3について 本件考案3は、本件考案1に「設置空間の別の片端へリブ片を設け、該リブ片は2つずつ相対応し、該リブ片は塵、埃を設置空間内へ推進する」という考案特定事項を限定するものである。 本件考案3と引用考案を比較すると、引用考案の「支持シート17にフラップ18が相対向して設けられていて、フラップ18間にポケット28が形成されてい」ることは、その構成、機能からみて、本件考案3の「設置空間の別の片端へリブ片を設け、該リブ片は2つずつ相対応し、該リブ片は塵、埃を設置空間内へ推進する」に相当するから、結局のところ、両者は、「第4 1(2)ア」で述べた相違点1?4のみで相違している。 そして、上記相違点1?4については、「第4 1(2)ア」で述べたとおりである。 したがって、本件考案3は、引用考案、刊行物1記載事項、刊行物3?5記載の考案及び慣用手段に基いて当業者がきわめて容易に考案することができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本件考案1?3は、引用考案、刊行物1記載事項、刊行物3?5に記載された考案及び慣用手段に基いて当業者がきわめて容易に考案できたものであるから、本件考案1?3についての実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、他の無効理由を検討するまでもなく、本件考案1?3についての実用新案登録は、実用新案法第37条第1項第2号の規定により無効にされるべきものである。 審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定で準用する特許法第169条第2項の規定で更に準用する民事訴訟法第61条の規定によ り、被請求人の負担とする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-05-17 |
結審通知日 | 2006-05-19 |
審決日 | 2006-06-01 |
出願番号 | 実願2003-1818(U2003-1818) |
審決分類 |
U
1
114・
121-
Z
(A47L)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
阿部 寛 |
特許庁審判官 |
芦原 康裕 柳 五三 |
登録日 | 2003-07-23 |
登録番号 | 実用新案登録第3096928号(U3096928) |
考案の名称 | 拭き掃除用シートの改良構造 |
代理人 | 太田 明男 |
代理人 | 正林 真之 |