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審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て成立) A01K
管理番号 1146419
判定請求番号 判定2005-60084  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案判定公報 
発行日 2006-12-22 
種別 判定 
判定請求日 2005-11-30 
確定日 2006-10-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第3069788号の判定請求事件について、次のとおり判定する。   
結論 イ号写真及びイ号図面に示す「ハウスコーナートイレ」は、登録第3069788号実用新案の技術的範囲に属する。
理由 1.請求の趣旨
本件判定の請求は、株式会社ファンタジーワールドが販売しているところのイ号写真及びイ号図面に示す「ハウスコーナートイレ」(以下、「イ号物件」という。)が、判定請求人が所有する実用新案登録第3069788号の請求項3に係る考案の技術的範囲に属するとの判定を求めるものである。

2.本件考案
本件実用新案登録第3069788号の請求項3に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、その実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定されるものであり、これを分説すると、次の構成要件(a)?(d)からなるものである。

(本件考案)
「(a)便床トレイと該便床トレイの上部を覆うフードとの間にペットが出入りする空間が形成され、前記フードの周壁に出入口が開設されたペット用トイレにおいて、
(b)少なくとも前記出入口が設けられた前記周壁の壁面を下方へ向かうに従って外方へ向けて傾斜させる一方、
(c)前記出入口を開閉する扉を、前記出入口の上部に揺動自在に吊り下げ支持し、
(d)前記扉が垂下した状態で、該扉の下縁が前記壁面より内側に位置するよう配設した
(e)ことを特徴とするペット用トイレ。」

3.イ号物件
これに対して、判定請求書添付のイ号写真及びイ号図面並びに判定請求書第2頁第21行目?第4頁第6行目に記載された「イ号物件の説明」の項に示される「ハウスコーナートイレ」(以下、イ号物件という。)は、被請求人の提出した答弁書及びこれに添付された乙第1号証ないし乙第3号証を参酌すると、次の構成を備えるものと認めるのが相当である。

(イ号物件の構成)
「(a’)便床トレイ2と該便床トレイ2の上部を覆うフード1との間にペットが出入りする空間が形成され、前記フード1の周壁10に形成された出入り口7に扉部材3が配設されているハウスコーナートイレにおいて、
(b’)前記出入口7が設けられたフード1の周壁10の壁面(ヒサシ状前壁6部分を含む前壁5)を下方へ向かうに従って外方へ向けて傾斜させる一方、
(c’)前記出入口7を開閉する扉部材3を、前記出入口7の上部に揺動自在に吊り下げ支持し、
(d’)前記扉部材3が垂下した状態で、扉部材3の下縁が、前壁5に一体形成されたアーチ状のヒサシ状前壁6部分の内側に、位置するよう配設した
(e’)ハウスコーナートイレ。」

4.被請求人の主張
被請求人は、答弁書によれば、イ号物件は、実用新案登録第3069788号の請求項3に係る考案の技術的範囲に属さない、との判定を求め、概ね次の理由を挙げている。
(4-1)本件考案のフードの周壁の壁面は、「下方へ向かうに従って外方へ向けて傾斜して」形成されているものである。一方、フードの周壁の厚み方向に突出させてアーチ状に形成したイ号物件の「ヒサシ(状前壁)」は、フードの周壁の壁面を構成することはありえない(答弁書3頁下4行?4頁9行参照)。
(4-2)本件考案は、「壁面と扉が面一となる場合」という前提のもとに「…扉の下面を壁面より内側にし」の構成を採用することにより、前壁16と扉17とに段差及び隙間ができ、外部からの出入口18の視認性を高めることができ、その実用新案登録明細書の段落【0032】に記載の「外部からの出入口の視認性を高めることができる。これにより、前記壁面と扉が面一となる場合と比較して、前記出入口へのペットの誘導性を高めることができる。」という効果を奏するものであるが、一方、イ号物件(乙3)はトンネル風にデザインした「ヒサシ(状前壁)」であり、扉の下面を「ヒサシ(状前壁)」より内側にしたことによっては、本件考案の作用効果は期待できないから、イ号物件の「ヒサシ(状前壁)」は、壁面ではない(答弁書5頁1行?6頁19行参照)。
(4-3)本件考案は、その実用新案登録明細書の記載によれば、扉を閉じた場合に、壁面と扉が面一となって同じ面を形成する場合であって、ほぼ平面になるような場合にのみ、本件考案の「前記扉が垂下した状態で、該扉の下縁が前記壁面より内側に位置するよう配設した」ことにより、同上段落【0032】に記載の「前記扉の下縁は壁面より内側に位置するため、ペット用トイレ内のペットが出入口へ向けて掻き上げた砂を、前記扉の内側面で案内し、便床トレイ内に確実に落とすことができる。」という作用効果を奏するものであるが、一方、イ号物件は、「ヒサシ(状前壁)」が左右方向外側に向かって扉部材に対して角度が付けられており、砂が便床トレイの外側に導かれる(乙4下方図「【図2】B-B断面(イ号図面より)」参照)ものであるから、本件考案の作用効果を奏する構成ではない(答弁書6頁20行?8頁1行参照)。

5.対比及び判断
(5-1)対比
そこで、本件考案とイ号物件の構成とを対比すると、その機能ないし構造から見て、イ号物件の「ハウスコーナートイレ」が本件考案の「ペット用トイレ」に相当することが明らかであるから、イ号物件の構成(a’)、(c’)及び(e’)が、本件考案の構成要件(a)、(c)及び(e)を、それぞれ充足することが明らかである。
しかしながら、イ号物件の構成(b’)及び(d’)が、本件考案の構成要件(b)及び(d)を充足するか否かは直ちに明らかでなく、当事者間に争いがある。

そこで、イ号物件の構成(b’)及び(d’)が、本件考案の構成要件(b)及び(d)を充足するか否かにつき、以下検討する。

(5-2)イ号物件の構成(b’)が、本件考案の構成要件(b)を充足するか否か(構成要件(b)の充足性)について

上記「4.」に記載したように、被請求人は、イ号物件のアーチ状に形成した「ヒサシ(状前壁)」は、フードの周壁の壁面を構成することはありえないから、本件考案の構成要件(b)における「少なくとも前記出入口が設けられた前記周壁の壁面を下方へ向かうに従って外方へ向けて傾斜させる」点の「前記出入口が設けられた前記周壁の壁面」に相当しないものであると主張する。
そこで、イ号物件の「ヒサシ状前壁6」が、同イ号物件の「前記出入口7が設けられたフード1の周壁10の壁面」を構成するものといえないか否かについて検討する。

イ号物件の「前記出入口7が設けられたフード1の周壁10の壁面」は、その「前壁5」と一体的に、イ号図面の「【図1】A-A断面」の符号6の部分で示された斜め下方に延びたヒサシ状の部分(「ヒサシ状前壁6」)と、イ号図面の「【図2】B-B断面」の同じ符号6の部分で示された上下(左右)両側に設けられた壁面部分とを備えていることが明らかである。
そして、これらの図面及びイ号写真の写真1や写真2を見ると、イ号物件の「前記出入口7が設けられたフード1の周壁10の壁面」は、仮に、上記ヒサシ状の部分(「ヒサシ状前壁6」)や左右両側に設けられた壁面部分が無いとすると、「出入口7」部分を構成することができないし、結果として、「フード1の周壁10」によって「扉部材3」の周囲を適切に覆うこともできないことが明らかである。
そうすると、イ号物件の上記したところの上下(左右)両側に設けられた壁面部分を含む「ヒサシ状前壁6」部分は、イ号物件の「前壁5」の部分とともに、これらが全体としてイ号物件の「前記出入口7が設けられたフード1の周壁10の壁面」を構成するものということができる。

なお、被請求人は、本件考案の「少なくとも前記出入口が設けられた前記周壁の壁面」は、「下方へ向かうに従って外方へ向けて傾斜させ」て形成されたものであるが、これに対して、イ号物件の(上述の左右両側に設けられた壁面部分を含む)「ヒサシ(状前壁)6」はそのように構成されていない旨を主張をする。
しかしながら、イ号物件の(上述の左右両側に設けられた壁面部分を含む)「ヒサシ(状前壁)6」と「前壁5」の部分とで構成された壁面は、それを全体として見れば、下方へ向かうに従って外方へ向けて傾斜してしているものということができるから、被請求人の主張を採用することができない。

以上検討したことから、イ号物件の構成(b’)は、本件考案の構成要件(b)を充足するということができる。

(5-3)イ号物件の構成(d’)が、本件考案の構成要件(d)を充足するか否か(構成要件(d)の充足性)について

上記「(5-2)」で検討したとおり、上記したところのイ号物件の上下(左右)両側に設けられた壁面部分を含む「ヒサシ状前壁6」部分は、イ号物件の「前壁5」の部分とともに、これらが全体としてイ号物件の「前記出入口7が設けられたフード1の周壁10の壁面」を構成するものということができる。
そして、イ号物件の上下(左右)両側に設けられた壁面部分を含む「ヒサシ状前壁6」部分は、「扉部材3」が垂下した状態で、当該扉部材3の下縁が上下(左右)両側に設けられた壁面部分の内側に位置するように配設されていることが明らかである。
してみると、イ号物件の構成(d’)は、本件考案の構成要件(d)を充足することも明らかである。

なお、上記「4.」に記載したように、要するに、被請求人は、本件考案は、「壁面と扉が面一となる場合」という前提のもとに「…扉の下面を壁面より内側にし」の構成を採用することにより、前壁16と扉17とに段差及び隙間ができ、外部からの出入口18の視認性を高めることができ、その実用新案登録明細書の段落【0032】に記載の「前記壁面と扉が面一となる場合と比較して、前記出入口へのペットの誘導性を高めることができる。」という効果を奏するのに対して、イ号物件は、トンネル風にデザインした「ヒサシ(状前壁)」を備えるものであり、その扉の下面を「ヒサシ(状前壁)」より内側にしたことによっては、本件考案の作用効果を奏することが期待できないから、その両者の奏する作用ないし効果から見て、イ号物件の構成(d’)は、本件考案の構成要件(d)を充足しない旨を主張していると解される。
しかしながら、本件考案の、前壁16と扉17とに段差及び隙間ができることにより、外部からの出入口18へのペットの誘導性を高めることができるという効果は、言い換えれば、扉の下縁部分が出入口の周辺部から奥行き方向に少し窪んでいることにより、その視線が比較的下方位置にあるところのペットによる視認性を高めることができる効果を意味したものと解することができる。
そうすると、イ号物件の構成(d’)は、扉部材3の下縁が、イ号物件の前壁(前壁5と一体的に形成されたアーチ状の部分を含む)の内側に位置するよう配設したものであるから、結果として、その扉部材3の下縁が、その出入口の周辺部から奥行き方向に少し窪んでいるものとなり、本件考案の上記効果を奏するものということができる。
したがって、上記被請求人の主張は、採用することができない。

また同様に、被請求人は、実用新案登録明細書に記載の本件考案の「ペットが掻き上げた砂を…トイレ内に確実に落とす」という効果を、イ号物件が奏さない旨を主張する。
しかしながら、本件考案は、その構成要件(d)で「扉が垂下した状態で、該扉の下縁が前記壁面より内側に位置するよう配設した」と規定するに止まるものであって、例えば、その扉と出入り口との左右幅方向の関係等については何らの限定もされていない。
そして、本件考案は、その構成要件(d)において「扉が垂下した状態で、該扉の下縁が前記壁面より内側に位置するよう配設した」と規定した点により、例えば、その扉の上下方向に着目すれば、「ペットが掻き上げた砂を…トイレ内に確実に落とす」という上記明細書に記載の効果を奏することができるといえる。
したがって、被請求人の上記主張も採用することができない。

6.むすび
以上のとおり、イ号物件の構成は、本件考案の全ての構成要件を充足するといえるから、イ号物件は、本件考案の技術的範囲に属する。
よって、結論のとおり、判定する。
別掲
判定日 2006-10-18 
出願番号 実願平11-9625 
審決分類 U 1 2・ 1- YA (A01K)
最終処分 成立    
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 柴田 和雄
西田 秀彦
登録日 2000-04-05 
登録番号 実用新案登録第3069788号(U3069788) 
考案の名称 ペット用トイレ  
代理人 玉田 修三  

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