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審決分類 |
審判 A41C |
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管理番号 | 1162259 |
審判番号 | 無効2006-40011 |
総通号数 | 93 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2007-09-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2006-09-27 |
確定日 | 2007-07-18 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第3120735号実用新案「ブラジャーカップの構造」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 実用新案登録第3120735号の請求項1?4に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
理由 1.手続の経緯 (1)本件登録第3120735号実用新案は、平成18年1月20日に出願され、平成18年3月29日に設定登録がなされたものである。 (2)これに対して、平成18年9月27日に品赫股▲分▼有限公司より無効審判の請求がなされたものである。それに対し、期間を指定して答弁の機会を与えたが、被請求人翔舜纖維企業股▲ふん▼有限公司は、答弁をしていない。 2.本件の考案 本件の考案は、明細書、実用新案登録請求の範囲、及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 ブラジャーカップの構造に関するものである、そのブラジャーカップに、内層条片、外層条片及び内、外層に設ける弾性体を含み、熱圧成型又は縫製の方式で作られ、その特徴は下記の通りである、その弾性体が繊維の糸の順序によって条片の形状を敷いてから、畳む方式で縦方向の垂直繊維を成型し、加熱方式でその縦方向の垂直繊維が相互に粘着させることを特徴とする、ブラジャーカップの構造。 【請求項2】 請求項1記載のブラジャーカップの構造において、その弾性体の繊維の糸に熱溶解特性を持つのであることを特徴とする、ブラジャーカップの構造。 【請求項3】 請求項1記載のブラジャーカップの構造において、その弾性体の適切な場所に特定な形状のより厚い弾性体を入れてパッドとして使うことができることを特徴とする、ブラジャーカップの構造。 【請求項4】 請求項1記載のブラジャーカップの構造において、その内層条片及び外層条片は不織布又はその他繊維を使って作ることができることを特徴とする、ブラジャーカップの構造。」 3.請求人の主張の概要 審判請求人品赫股▲分▼有限公司は、本件の請求項1ないし4に係る考案の実用新案登録を無効とする、との審決を求め、その理由として、本件の考案は、本件出願前に頒布された刊行物に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、無効とされるべきであるとの主張を含むものであり、証拠方法として甲1?7号証等を提出している。 甲1号証:本件登録実用新案第3120735公報 甲2号証:本件登録実用新案第3120735公報の登録原簿謄本 甲3号証:台湾実用新案登録第M282520号公報の優先権証明書(写し) 甲4号証:台湾実用新案登録第M282520号公報 甲5号証:台湾実用新案登録第M282520号公報の優先権を基に日本国に出願した実願2006-6048号明細書(実用新案第3125955号公報) 甲6号証:請求人の陳述書 甲7号証:請求人の考案者である楊文彬の証言書 4.台湾実用新案登録第M282520号公報 甲4号証(新型専利説明書)には、甲5号証(以下、「訳文」という。)を参照すると、「高弾性繊維ブラジャーカップ」について、図面とともに以下の点が記載されている。 a)「本考案は、ブラジャーカップの関するものであって、特に、高弾性条片繊維体を中間層とし、適度な厚さ、弾性及び通気性を有する高弾性ブラジャーカップに関するものである。」(5頁2?4行、訳文段落【0001】) b)「高弾性繊維ブラジャーカップであって、高弾性条片繊維体を適当な尺寸に裁断して、内、外表層裏地をあわせ、熱圧や裁断縫製方式により生成し、前記高弾性条片繊維体は、繊維糸を条片の形状に敷いてから、連続波状折畳方式で成型し、相互に粘結し堅靱な垂直繊維構成とすることを特徴とする高弾性繊維ブラジャーカップ。」(請求項1) c)「前記高弾性条片繊維体成型時、底層に一層の不織布を配設すると共に、成型過程に加熱により、各隣接する縦向け垂直繊維間を結合固定し、同時に、前記底層縦向け垂直維と不織布を一体に粘結することを特徴とする請求項1に記載の高弾性繊維ブラジャーカップ。」(請求項2) d)「前記高弾性条片繊維体は、適当な部位に特定形状の厚さのある垂直繊維をぱっととして、内、表層裏地と合わせて、熱圧や裁断縫製方式で製造することを特徴とする請求項1に記載の高弾性繊維ブラジャーカップ。」(請求項3) e)「前記高弾性条片繊維体は、裁断時、適当な尺寸に裁断され、選択的に上下表層の適当な一段を除去することを特徴とする請求項1又は2に記載の高弾性繊維ブラジャーカップ。」(請求項4) f)「不織布カップは、層状長繊維を折畳し、表層に溶剤を噴付けして固定形成する不織布両表面に、それぞれ内、外表層裏地を貼合する。」(5頁21?22行、訳文段落【0005】前段) g)「図1?図3を参照すると、繊維糸を条片の形状に敷いてから、連続波形折畳方式で堅靭な縦向きの垂直繊維11を有する弾性機能を有する高弾性条片繊維体10を成型し、且つ、成型時、折畳する垂直繊維11が分散するのを防止し、底層に一層の不織布20を配設すると共に、成型過程で上下表層を加熱し、各相隣する縦向け垂直繊維11間は、材質の熱溶融特性により結合固定し、同時に、底層縦向け垂直繊維11と不織布20は粘結されて一体になる。」(7頁11?18行、訳文段落【0012】)、 h)「図4?図6で示されるように、バストカップ部の製作時、高弾性条片繊維体10は、適当な尺寸に裁断されて、縦向け垂直繊維11の上下表層の適当な一段を選択的に除去して、不織布20と共に除去し、更に、残った中間の垂直繊維11部分を、内、外表層裏地30、40と合わせて、熱圧や裁断裁縫方式により、パッドなしのブラジャーカップを製造する。或いは、中間垂直繊維11部分に、特定形状の厚さのある垂直繊維11’をパッドとして、内、表層裏地30、40と合わせて、熱圧や裁断裁縫方式により、パッドありのブラジャーカップを製造する。」(7頁21行?8頁5行、訳文段落【0013】) そうすると、甲4号証に記載された考案(以下、「甲4号証考案」という。)には、以下の点が記載されている。 「高弾性シート状繊維体を適切な寸法に裁断し、内、外表層のライナーに合わせ、熱圧または裁断縫製の方法で製造するとともに、該高弾性シート状繊維体は、繊維の糸を順番にシート状に敷き、連続して波状に押して畳む方式で、若干の丈夫さをもつ縦方向の垂直な繊維の高弾性シート状繊維体の成形時に、下地に先に不織布を一層敷き、成形の過程において、上、下表層で加熱し、隣り合う各縦方向の垂直な繊維の間を相互に粘結し、同時に下地の縦方向の垂直な繊維と不織布を粘着して一体化させる熱圧または裁断縫製の方法で作られる高弾性繊維ブラジャーカップ。」 5.対比、判断 (a) 本件の請求項1に係る考案について 本件の請求項1に係る考案(以下、「本件考案1」という。)と甲4号証考案とを対比する。 本件考案1と甲4号証考案とは、いずれも「ブラジャーカップの構造」である点で同じである。そして、甲4号証考案の「外表面の裏地」、「内表面の裏地」、「垂直繊維」、「不織布」は、それぞれ、本件考案の「内層条片」、「外層条片」、「縦方向の垂直繊維」、「不織布」に相当する。 そうすると、本件考案1と甲4号証考案とは、 「ブラジャーカップの構造に関するものである、そのブラジャーカップに、内層条片、外層条片及び内、外層に設ける弾性体を含み、熱圧成型又は縫製の方式で作られ、その特徴は下記の通りである、その弾性体が繊維の糸の順序によって条片の形状を敷いてから、畳む方式で縦方向の垂直繊維を成型し、加熱方式でその縦方向の垂直繊維が相互に固定させることを特徴とする、ブラジャーカップの構造。」点で一致し、 本件考案1が、縦方向の垂直繊維を「相互に粘着させる」のに対して、甲4号証考案は、「相互に粘結させる」ものの、「粘着させる」ことが明示されていない点で互いに相違する。 上記相違点について検討する。 甲4号証考案の縦方向の垂直繊維を「相互に粘結させる」こととは、すなわち「各相隣する縦向け垂直繊維11間は、材質の熱溶融特性により結合固定し、同時に、底層縦向け垂直繊維11と不織布20は粘結されて一体になる。」(上記4.g参照)ことである。 本件考案1は、「加熱方式でその縦方向の垂直繊維が相互に粘着させる」(本件考案公報、甲1号証【0007】参照)ものである。 物質相互の固定手段として、粘着することは、接着の分野において、常套手段にすぎないものであって、格別のものではないから、本件考案1において、垂直繊維を相互に粘着させることは、甲4号証考案に基づいてきわめて容易に想到し得た程度である。 (b)本件の請求項2に係る考案について 本件の請求項2に係る考案(以下、「本件考案2」という。)と甲4号証考案とを対比する。 本件考案2は、本件考案1に、「弾性体の繊維の糸に熱溶解特性を持つ」点を付加したものであるから、以下、この点について検討する。 本件考案2の「弾性体の繊維の糸に熱溶解特性を持つ」ことは、甲4号証考案において、「各相隣する縦向け垂直繊維11間は、材質の熱溶融特性により結合固定し、同時に、底層縦向け垂直繊維11と不織布20は粘結されて一体になる。」(4.g)参照)と記載されていることからして、甲4号証考案の開示の範囲内のものであって、実質的な相違点ではない。 (c)本件の請求項3に係る考案について 本件の請求項3に係る考案(以下、「本件考案3」という。)と甲4号証考案とを対比する。 本件考案3は、本件考案1に、「弾性体の適切な場所に特定な形状のより厚い弾性体を入れてパッドとして使うことができる」点を付加したものであるから、以下、この点について検討する。 本件考案3の「弾性体の適切な場所に特定な形状のより厚い弾性体を入れてパッドとして使うことができる」点は、甲4号証考案において、「中間垂直繊維11部分に、特定形状の厚さのある垂直繊維11’をパッドとして、内、表層裏地30、40と合わせて、熱圧や裁断裁縫方式により、パッドありのブラジャーカップを製造する。」(4.h)参照)と記載されていることからして、甲4号証考案の開示の範囲内のものであって、実質的な相違点ではない。 (d)本件の請求項4に係る考案について 本件の請求項4に係る考案(以下、「本件考案4」という。)と甲4号証考案とを対比する。 本件考案4は、本件考案1に、「その内層条片及び外層条片は不織布又はその他繊維を使って作ることができる」点を付加したものであるから、以下、この点について検討する。 甲4号証考案において、ブラジャーカップの材料として、不織布を用いることが記載されており(4.c)g)参照)、また、一般にブラジャーカップの材料として、不織布等を用いることが周知であることを考慮すると、本件考案4の「その内層条片及び外層条片は不織布又はその他繊維を使って作ることができる」としたことは、当業者が必要に応じて適宜なし得る程度であって、格別の困難性があるものとはいえない。 6.むすび 以上のとおりであるから、本件実用新案登録は、審判請求人品赫股▲分▼有限公司の提出した甲4号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法3条2項の規定に違反してなされたものであり、同法37条1項2号の規定に該当するので、無効とする。 審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-02-15 |
結審通知日 | 2007-02-20 |
審決日 | 2007-03-16 |
出願番号 | 実願2006-355(U2006-355) |
審決分類 |
U
1
114・
121-
Z
(A41C)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
松縄 正登 |
特許庁審判官 |
粟津 憲一 豊永 茂弘 |
登録日 | 2006-03-29 |
登録番号 | 実用新案登録第3120735号(U3120735) |
考案の名称 | ブラジャーカップの構造 |
代理人 | 門間 正一 |