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審決分類 |
審判 A61H |
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管理番号 | 1172389 |
審判番号 | 無効2006-40003 |
総通号数 | 99 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2008-03-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2006-04-05 |
確定日 | 2008-02-06 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第3105923号ボディボール(バランスボール)の滑り止めワッシャーの実用新案登録無効審判事件について、審理の併合のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第3105923号の請求項1に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 1 本件実用新案登録第3105923号の請求項1に係る考案についての出願は、平成16年6月15日の出願であって、平成16年9月22日にその実用新案権の設定登録がなされたものである。 2 その実用新案登録に対して、請求人▲せん▼永康は、平成18年4月5日に実用新案登録無効審判(無効2006-40003号)を請求し、請求人陳陶明は、平成18年4月27日に実用新案登録無効審判(無効2006-40004号)を請求し、これに対して、被請求人は、平成18年9月21日に答弁書を提出し、請求人陳陶明は、平成19年5月17日付け(平成19年5月15日差出)で口頭審理陳述要領書を提出し、平成19年5月17日に証拠調べ(当事者尋問)及び口頭審理(併合審理)が行われた。 3 その後、請求人▲せん▼永康及び陳陶明は、平成19年6月29日付けで上申書を提出し、被請求人は、平成19年8月8日付けで上申書を提出した。 第2 本件考案 本件実用新案登録第3105923号の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。 「中央に円形のボール置き空間が設けられている中空円環状の滑り止めワッシャーであり、前記滑り止めワツシャーには空気をしっかり詰め込んだ空気入れ部が設置されており、ボディボール(バランスボール)を前記滑り止めワッシャーの前記ボール置き空間に置いて、前記ボディボール(バランスボール)が転がって使用者から脱離することを防止したことを特徴とするボディボール(バランスボール)の滑り止めワッシャー。」 第3 当事者の主張 1 無効2006-40003号について (1)請求人の主張 請求人は、本件考案についての実用新案登録を無効にする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、次の理由及び証拠方法から、本件考案についての実用新案登録は、実用新案法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきものであると主張する。 ア 無効理由1 本件考案は、甲第1号証に記載された考案及び甲第4号証に記載された考案から当業者がきわめて容易に考案することができたものであるから、本件考案についての実用新案登録は実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものである。 イ 無効理由2 本件考案は、甲第3号証に記載された考案及び甲第4号証に記載された考案から当業者がきわめて容易に考案することができたものであるから、本件考案についての実用新案登録は実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものである。 <証拠方法> 甲第1号証:「文薄 出口貿易商採購電話簿」2002下半年版 (10月出版)台湾文筆有限公司発行 表紙及びP708、P709 甲第2号証:「TRADE PAGES」July 2004 文筆国際貿易雑誌発行 表紙及びP98 甲第3号証:米国意匠特許発明第D476,705S号明細書 甲第4号証:米国特許第5,385,191号明細書 甲第5号証:甲第3号証の抄訳文 甲第6号証:甲第4号証の抄訳文 なお、請求人は、平成19年6月29日付け上申書とともに、甲第1号証の2、甲第7号証の1ないし3、甲第8号証を提出している。 (2)被請求人の主張 被請求人は、本審判の請求は成り立たない、との審決を求め、無効理由1、2について次のように主張している(平成19年8月8日付け上申書)。 ア 無効理由1について 甲第1号証に記載された「CIRCLE RING」が、 「A.中央に円形のボール置き空間が設けられている中空円環状の滑り止めワッシャーであり、 C.ボディボール(バランスボール)を前記滑り止めワッシャーの前記ボール置き空間に置いて、前記ボディボール(バランスボール)が転がって使用者から脱離することを防止した D.ことを特徴とするボディボール(バランスボール)の滑り止めワッシャー。」 の構成から成るものであることは認める。 しかしながら、甲第1号証に記載された「CIRCLE RING」は、本件考案のように、「空気入れ部」を構成したものではない。 また、甲第4号証のタイヤチューブ、甲第8号証の浮輪は、本件考案とは全く技術分野を異にするから、これらの技術から、「空気入れ部」を構成することが容易にできるものではない。 そして、本件考案は、「運動に疲れた際には、地面に座ることなくボディボール(バランスボール)2を使用しない状態のワッシャーを座布団代わりにして座ったりするにも便利である。」という機能を併せ持つものである。 イ 無効理由2について 甲第3号証に記載された「FINESS BALL SUPPORT」が、 「A.中央に円形のボール置き空間が設けられている中空円環状の滑り止めワッシャーであり、 C.ボディボール(バランスボール)を前記滑り止めワッシャーの前記ボール置き空間に置いて、前記ボディボール(バランスボール)が転がって使用者から脱離することを防止した D.ことを特徴とするボディボール(バランスボール)の滑り止めワッシャー。」 の構成から成るものであることは認める。 しかしながら、甲第3号証に記載された「FINESS BALL SUPPORT」は、本件考案のように、「空気入れ部」を構成したものではない。 また、甲第4号証のタイヤチューブ、甲第8号証の浮輪は、本件考案とは全く技術分野を異にするから、これらの技術から、「空気入れ部」を構成することが容易にできるものではない。 そして、本件考案は、「運動に疲れた際には、地面に座ることなくボディボール(バランスボール)2を使用しない状態のワッシャーを座布団代わりにして座ったりするにも便利である。」という機能を併せ持つものである。 2 無効2006-40004号について (1)請求人の主張 請求人は、本件考案についての実用新案登録を無効にする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、次の理由及び証拠方法から、本件考案についての実用新案登録は、実用新案法第37条第1項第2号及び実用新案法第37条第1項第5号に該当し、無効とすべきものであると主張する。 ア 無効理由1 本件考案は、本件実用新案出願前に外国において公然実施された考案であるから(甲第1号証?甲第14号証)、本件考案についての実用新案登録は実用新案法第3条第1項第2号の規定に違反してされたものである。 イ 無効理由2 本件考案は、本件実用新案出願前に外国において頒布された刊行物に記載された考案であるから(甲第1号証、甲第14号証)、本件考案についての実用新案登録は実用新案法第3条第1項第3号の規定に違反してされたものである。 ウ 無効理由3 本件考案は、被請求人が、請求人が製造した見本品に基づいて登録出願したものであるから(甲第2号証?甲第10号証、甲第13号証?甲第17号証)、被請求人による実用新案登録は考案者でない者であってその考案について実用新案登録を受ける権利を承継しないものの実用新案登録出願に対してなされたものである。 <証拠方法> 甲第1号証の1:「文薄 出口貿易商採購電話簿」2002下半年版 (10月出版)台湾文筆有限公司発行 表紙 甲第1号証の2:翻訳対照表 甲第1号証の3:「文薄 出口貿易商採購電話簿」P708 甲第2号証の1:2003年2月15日付け金型設計図案(中国語) 甲第2号証の2:同上翻訳 甲第3号証の1:平成15年3月12日付け金型設計図案 甲第3号証の2:同上 甲第4号証:同上翻訳 甲第5号証:本件金型イメージ図 甲第6号証の1?3:CR6001,CR7001の金型写真 甲第7号証の1?4:BR20,BR2001の金型写真 甲第8号証の1,2:CR6001,CR7001,BR20, BR2001の金型写真 甲第9号証:取扱説明書 甲第10号証の1:平成15年5月5日付け統一領収書 甲第10号証の2:翻訳対照表 甲第11号証の1:平成16年5月25日付け統一領収書 甲第11号証の2:翻訳対照表 甲第12号証の1:「SPORTS Trader Asia」表紙 甲第12号証の2:「SPORTS Trader Asia」 P25 甲第12号証の3:「SPORTS Trader Asia」 P217 甲第13号証:名刺 甲第14号証:陳述書 甲第15号証の1:中華民国歴92年(平成15年) 10月14日付け注文書 甲第15号証の2:翻訳対照表 甲第16号証の1:中華民国歴93年(平成16年) 3月1日付け注文書 甲第16号証の2:翻訳対照表 甲第17号証の1:2004年(平成16年) 12月14日付け注文FAX 甲第17号証の2:翻訳対照表 (2)被請求人の主張 本件考案は、甲第1号証、甲第12号証に記載されたサークルリングと同じと言うことはできない。また、本件実用新案登録は、考案者でない者であってその考案について実用新案登録を受ける権利を承継しない者(すなわち被請求人)による実用新案登録出願に対してなされたという無効原因があるとすることはできない。 第4 当審の判断 1 無効2006-40003号の無効理由1、2について (1)甲第1、3号証の記載事項 甲第1、3号証には、次の事項が図面とともに記載されている。 ア 甲第1号証 甲第1号証には、明煌▲実▼業有限公司による商品の広告写真が掲載され、P708には、「CIRCLE RING」CR7001、CR6001として、「中央に円形の空間が設けられた「CIRCLE RING」」が掲載されている。また、P709には、「METALLIC GYM BALL」が掲載されている。 そして、甲第1号証に掲載された商品は、本件考案と同様に室内スポーツにおいて使用されるものであって、「CIRCLE RING」は、「METALLIC GYM BALL」を使用するスポーツを行う際に「METALLIC GYM BALL」が転動するのを制御する滑り止め器具であるから(なお、被請求人も、平成19年8月8日付け上申書において、これを認めている。)、「CIRCLE RING」の中央円形の空間は、「METALLIC GYM BALL」が置かれて、「METALLIC GYM BALL」が転がって使用者から脱離することを防止するものであることは明らかである。 したがって、甲第1号証には次の考案(以下、「甲第1号証記載の考案」という。)が記載されていると認められる。 「中央に円形のボール置き空間が設けられている「CIRCLE RING」であり、「METALLIC GYM BALL」を前記「CIRCLE RING」の前記ボール置き空間に置いて、前記「METALLIC GYM BALL」が転がって使用者から脱離することを防止した「METALLIC GYM BALL」の「CIRCLE RING」。」 イ 甲第3号証 (ア)「図1は、フィットネス・ボールを支える斬新な意匠を示すフィットネス・ボール・サポートの斜視図である(図中に、破線で該フィットネス・ボール・サポートに取り付けられたフート・サポート・メンバーを破線で示す)。」(【図面の説明】訳は甲第5号証による。) (イ)図1には、中央に円形のボール置き空間が設けられている環状のフィットネス・ボール・サポート部材であり、フィットネス・ボールを前記フィットネス・ボール・サポート部材の前記ボール置き空間に置いて、フィットネス・ボールが転がって使用者から脱離することを防止したフィットネス・ボールのフィットネス・ボール・サポート部材が図示されている。 上記ア、イの記載事項及び図示内容からみて、甲第3号証には次の考案(以下、「甲第3号証記載の考案」という。)が記載されていると認められる(なお、被請求人も、平成19年8月8日付け上申書において、これを認めている。)。 「中央に円形のボール置き空間が設けられている環状のフィットネス・ボール・サポート部材であり、フィットネス・ボールを前記フィットネス・ボール・サポート部材の前記ボール置き空間に置いて、フィットネス・ボールが転がって使用者から脱離することを防止したフィットネス・ボールのフィットネス・ボール・サポート部材。」 ウ 甲第4号証 「二つのコンパートメントを持つ空気的に膨張したインナーチューブであって、一つのコンパートメントが損傷を受けて萎んだ場合でも、別のコンパートメントはタイヤを取り外すことなく膨張することができるように構成した。二つのコンパートメントは、それぞれ膨張用の独自なバルブを有し、これらのバルブを介して互いに独立して膨張する。膨張したとき、二つのコンパートメントは同一の環状軸に沿って形成する。第1と第2のコンパートメントとを有する二つの実施形態は記載されている。最初の実施形態では、第1,第2コンパートメントはそれぞれ個別に配置されており、かつ、第2のコンパートメントは第1のコンパートメントの内部で配置されることを特徴とする。前記二つのコンパートメントは、第2のコンパートメントのバルブが第1のコンパートメントの開口部を貫通する箇所で接続する。第2の実施形態では、二つのコンパートメントは一体型ユニットにより構成される。前記二つのコンパートメントは共通の表面を有し、一方のコンパートメントは他方のコンパートメントの内部で形成される。第1のコンパートメントは、前記共通の表面に取り付けられた、前記第1のコンパートメントの開口部を開閉するバルブを使用することにより膨張される。第2のコンパートメントは、第2のコンパートメントに開設された前記開口部であって、前記共通の表面に取り付けられたバルブを使用することにより膨張される。」(【発明の要約】訳は甲第6号証による。) 上記記載事項及び図示内容からみて、甲第4号証には次の考案(以下、「甲第4号証記載の考案」という。)が記載されていると認められる。 「空気を入れることにより膨張されるインナーチューブ。」 (2)無効理由1についての判断 本件考案と甲第1号証記載の考案とを比較する。 甲第1号証記載の考案の「CIRCLE RING」は、その機能、構造からみて、本件考案の「円環状の滑り止めワッシャー」に相当し、同様に「METALLIC GYM BALL」は「ボディボール(バランスボール)」に相当する。 そうすると、両者は、本件考案の文言を用いて表現すると、 「中央に円形のボール置き空間が設けられている円環状の滑り止めワッシャーであり、ボディボール(バランスボール)を前記滑り止めワッシャーの前記ボール置き空間に置いて、前記ボディボール(バランスボール)が転がって使用者から脱離することを防止したボディボール(バランスボール)の滑り止めワッシャー。」で一致し、次の点で相違する。 <相違点> 円環状の滑り止めワッシャーに関し、本件考案は、中空であって、空気をしっかり詰め込んだ空気入れ部が設置されているのに対して、甲第1号証記載の考案は、そのような空気入れ部を備えているか否か明らかでない点。 そこで、上記相違点について以下に検討する。 一般に、ボディボール(バランスボール)が転がって使用者から脱離することを防止したボディボール(バランスボール)の滑り止めワッシャーは、ボールを捕捉するものであるから、通常、円環状の部材であって、凹面薄壁、バケット形状のような堅固な壁から構成されるか、チューブ形状から成形されている(例えば、米国特許第6,461,284号明細書(3欄19行?28行)、米国特許出願公開第2003/0195098号明細書(段落【0016】)、米国特許第6,730,005号明細書(図1ないし図4)参照)。 したがって、ボディボール(バランスボール)の滑り止めワッシャーをチューブ形状とすることは当業者ならば容易に想到し得ることである。そして、ボディボール(バランスボール)の滑り止めワッシャーは、室内スポーツにおいて使用されるものであるから、クッション性を配慮することは当業者ならば設計上当然に考慮することである。 ところで、チューブ形状として甲第4号証記載の考案の「空気を入れることにより膨張されるインナーチューブ。」があることはよく知られていることであり、しかも、甲第4号証記載の考案の「空気を入れることにより膨張されるインナーチューブ。」は、中空であって、空気をしっかり詰め込んだ空気入れ部を構成していて、クッション性を有し、タイヤ以外の用途に使用されることも日常生活においてよく見かけることである。 してみれば、その機能からみて、ボディボール(バランスボール)の滑り止めワッシャーとして甲第4号証記載の考案を採用して本件考案の上記相違点に係る考案特定事項とすることは当業者がきわめて容易に想到し得たことである。 また、上記相違点による効果(座布団代わりとする等)も、甲第1、4号証記載の考案から予測される範囲のものであって、格別なものではない。 よって、本件考案は、甲第1、4号証記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案することができたものである。 (3)無効理由2についての判断 本件考案と甲第3号証記載の考案とを比較する。 甲第3号証記載の考案の「フィットネス・ボール・サポート部材」は、その機能、構造からみて、本件考案の「滑り止めワッシャー」に相当し、同様に「フィットネス・ボール」は「ボディボール(バランスボール)」に相当する。 そうすると、両者は、本件考案の文言を用いて表現すると、 「中央に円形のボール置き空間が設けられている滑り止めワッシャーであり、ボディボール(バランスボール)を前記滑り止めワッシャーの前記ボール置き空間に置いて、前記ボディボール(バランスボール)が転がって使用者から脱離することを防止したことを特徴とするボディボール(バランスボール)の滑り止めワッシャー。」で一致し、次の点で相違する。 <相違点> 滑り止めワッシャーに関し、本件考案は、中空円環状であって、空気をしっかり詰め込んだ空気入れ部が設置されているのに対して、甲第3号証記載の考案は、そのような空気入れ部を備えているか否か明らかでない点。 そこで、上記相違点について以下に検討する。 一般に、ボディボール(バランスボール)が転がって使用者から脱離することを防止したボディボール(バランスボール)の滑り止めワッシャーは、ボールを捕捉するものであるから、通常、円環状の部材であって、凹面薄壁、バケット形状のような堅固な壁から構成されるか、チューブ形状から成形されている(例えば、米国特許第6,461,284号明細書(3欄19行?28行)、米国特許出願公開第2003/0195098号明細書(段落【0016】)、米国特許第6,730,005号明細書(図1ないし図4)参照)。 したがって、ボディボール(バランスボール)の滑り止めワッシャーをチューブ形状とすることは当業者ならば容易に想到し得ることである。そして、ボディボール(バランスボール)の滑り止めワッシャーは、室内スポーツにおいて使用されるものであるから、クッション性を配慮することは当業者ならば設計上当然に考慮することである。 ところで、チューブ形状として甲第4号証記載の考案の「空気を入れることにより膨張されるインナーチューブ。」があることはよく知られていることであり、しかも、甲第4号証記載の考案の「空気を入れることにより膨張されるインナーチューブ。」は、中空であって、空気をしっかり詰め込んだ空気入れ部を構成していて、クッション性を有し、タイヤ以外の用途に使用されることも日常生活においてよく見かけることである。 してみれば、その機能からみて、ボディボール(バランスボール)の滑り止めワッシャーとして甲第4号証記載の考案を採用して本件考案の上記相違点に係る考案特定事項とすることは当業者がきわめて容易に想到し得たことである。 また、上記相違点による効果も、甲第3、4号証記載の考案から予測される範囲のものであって、格別なものではない。 よって、本件考案は、甲第3、4号証記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案することができたものである。 2 無効2006-40004号の無効理由1ないし3について (1)無効理由1について 請求人の主張の内容の概要は以下のとおりである(平成19年6月29日付けの上申書参照)。 ア 甲第1号証の3に掲載されたCR6001、CR7001の型番を付された商品は、甲第2号証の設計図で作成された甲第6号証の金型で製造されたものである。 イ 甲第10号証によれば、遅くとも平成15年5月5日には甲第6号証の金型が完成し、平成16年5月25日にはBR2001の型番を付した請求人製造に係る商品が、ヨーロッパに輸出されていることが甲第11号証より明らかである。 ウ 甲第12号証の2の記載から、甲第12号証の出版時期は平成16年6月であり、その中に掲載された商品は、遅くとも平成16年6月15日から製造されていたことが、経験則上明らかである。 しかしながら、甲第6号証の金型が甲第2号証の設計図で作成されたことは、平成19年6月29日付けの上申書でその主張を撤回していることから、CR6001、CR7001の型番を付された商品が、甲第6号証の金型によって製造されたものであるか明らかでなく、また、甲第1号証の3に掲載されたCR6001、CR7001の型番を付された商品が、本件考案の考案特定事項である「空気をしっかり詰め込んだ空気入れ部」が設置されているかも明らかでない。 また、甲第10号証には、甲第6号証の金型を窺わせる記載はなく、甲第10号証からは、遅くとも平成15年5月5日には甲第6号証の金型が完成していることは明らかでなく、そもそも、BR2001の型番を付した商品が本件考案と同様なものであるか明らかでない(BR2001の記載がある甲第9号証については、原本確認はできておらず、頒布時期も明らかでない。)。 更に、カタログに商品が掲載されているからといって、その商品がいつ製造されたかは明確でないから、甲第12号証の2に掲載された商品が遅くとも平成16年6月15日から製造されていたとはいえない。 上記のことは当事者尋問によっても客観的に明確となったとはいえない。 したがって、本件考案は、本件実用新案出願前に外国において公然実施された考案であるとはいえない。 (2)無効理由2について 無効理由1で述べたとおり、甲第1号証の3に掲載されたCR6001、CR7001の型番を付された商品は、甲第6号証の金型によって製造されたものであるか明確でないから、本件考案の考案特定事項である「空気をしっかり詰め込んだ空気入れ部」が設置されているか明らかでない。 したがって、本件考案は、本件実用新案出願前に外国において頒布された刊行物に記載された考案であるとはいえない。 (3)無効理由3 請求人が製造した見本品が本件考案と同一のものであるとの証拠はなく、また、被請求人の妻が、そのサンプル品を受領し、見積書とともに持ち帰ったことを窺わせる証拠もなく、当事者尋問の結果からもこれらのことは客観的に明らかではない。 したがって、本件考案は、被請求人が、請求人が製造した見本品に基づいて登録出願したものであるとはいえない。 以上のことから、無効2006-40004号の無効理由1ないし3からは、本件考案についての実用新案登録を無効とすることはできない。 第5 むすび 以上のとおり、本件考案についての実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであり、実用新案法第37条第1項第2号に該当するから、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定で準用する特許法第169条第2項の規定で更に準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人の負担とする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-09-10 |
結審通知日 | 2007-09-12 |
審決日 | 2007-09-26 |
出願番号 | 実願2004-3444(U2004-3444) |
審決分類 |
U
1
114・
121-
Z
(A61H)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
阿部 寛 |
特許庁審判官 |
北村 英隆 北川 清伸 |
登録日 | 2004-09-22 |
登録番号 | 実用新案登録第3105923号(U3105923) |
考案の名称 | ボディボール(バランスボール)の滑り止めワッシャー |
代理人 | 崔 宗樹 |
代理人 | 鈴木 勝利 |
代理人 | 崔 宋樹 |
代理人 | 増渕 勇一郎 |
代理人 | 渡邉 迅 |
代理人 | 河野 昭 |
代理人 | 渡邉 宙志 |
代理人 | 鈴木 征四郎 |
代理人 | 丸山 恵一郎 |
代理人 | 田所 淳 |
代理人 | 佐野 知子 |
代理人 | 鈴木 勝利 |
代理人 | 佐野 知子 |
代理人 | 志村 正和 |
代理人 | 穂坂 道子 |
代理人 | 穂坂 道子 |
代理人 | 河野 昭 |
代理人 | 渡邉 宙志 |
代理人 | 増渕 勇一郎 |
代理人 | 丸山 恵一郎 |
代理人 | 池田 千絵 |