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審決分類 審判 全部無効   A63B
管理番号 1174125
審判番号 無効2005-80246  
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-08-12 
確定日 2008-01-24 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の登録第2148765号「ゴルフクラブ用ヘッド」の実用新案登録無効審判事件についてされた平成18年6月12日付け審決に対し,知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成18年(行ケ)第10342号平成19年5月22日判決言渡)があったので,さらに審理のうえ,次のとおり審決する。   
結論 訂正を認める。 実用新案登録第2148765号の請求項1に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
平成 1年12月26日 出願
平成 7年 4月12日 公告
平成 7年 6月29日 異議申立
平成 9年 4月30日 異議決定(「理由なし」)
平成 9年 7月18日 本件実用新案登録の設定登録
平成16年12月26日 存続期間満了
平成17年 8月12日 本件無効審判の請求
平成17年11月 8日 訂正請求書および答弁書提出
平成17年12月14日 弁駁書提出
平成18年 5月19日 第1審決(「本件審判の請求は成り立たない。」)
平成18年 7月21日 出訴(平成18年(行ケ)第10342号)
平成19年 5月22日 判決(「審決取消」)
平成19年 8月10日 請求人上申書提出

そして,平成19年10月5日付けで当審の職権審理による無効理由が通知されたが,これに対し,請求人および被請求人,いずれよりもその指定期間内に意見書が提出されなかった。
なお,特許法第134条の3に規定された申立ては,被請求人からなかった。

2.訂正の適否
(2-1)訂正の内容
訂正事項a:
実用新案登録請求の範囲の請求項1の「前記フェース部とホーゼル部との間に」を,「前記フェース部と前記ホーゼル部のシャフト嵌入部とは反対側の前記ホーゼル部のフェース部側との間に」に訂正する。
訂正事項b:
明細書3頁16?17行(本件公告公報2頁3欄13?14行)の「前記フェース部とホーゼル部との間に」を,「前記フェース部と前記ホーゼル部のシャフト嵌入部とは反対側の前記ホーゼル部のフェース部側との間に」に訂正する。
訂正事項c:
明細書4頁3?4行(本件公告公報2頁3欄18?19行)の「フェース部とホーゼル部との間に」を,「フェース部とホーゼル部のシャフト嵌入部とは反対側のホーゼル部のフェース部側との間に」に訂正する。
訂正事項d:
明細書5頁18?19行(本件公告公報2頁3欄48行)の「フェース部15とホーゼル部19との間には」を,「フェース部15とホーゼル部19のシャフト嵌入部とは反対側のホーゼル部19のフェース部15側との間には」に訂正する。
訂正事項e:
明細書6頁6?7行(本件公告公報2頁4欄5行)の「フェース部15とホーゼル部19との間に」を,「フェース部15とホーゼル部19のシャフト嵌入部とは反対側のホーゼル部19のフェース部15側との間に」に訂正する。
訂正事項f:
明細書8頁8行(本件公告公報2頁4欄41?42行)の「フェース部とホーゼル部との間に」を,「フェース部とホーゼル部のシャフト嵌入部とは反対側のホーゼル部のフェース都側との間に」に訂正する。

(2-2)訂正の目的の適否,新規事項の有無及び実用新案登録請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項aは,実用新案登録請求の範囲を減縮または明りようでない記載の釈明を目的とするものである。
上記訂正事項b?fは,上記訂正事項aの訂正に伴い,実用新案登録請求の範囲と考案の詳細な説明を整合させる明りょうでない記載の釈明を目的とする。
そして,上記訂正事項a?fは,いずれも,願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内であり,実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

(2-3)むすび
したがって,上記訂正事項a?fは,特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第2項の規定により読み替えて準用する実用新案法第40条第2項ただし書きの規定及び同じく実用新案法第40条第5項において準用する実用新案法第39条第2項の規定に適合するから,当該訂正を認める。

3.本件考案
本件の請求項1に係る考案(以下,「本件考案」という。)は,上記訂正が認められることから,本件実用新案登録明細書及び図面の記載からみて,その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。
「少なくともフェース部とホーゼル部とを異なる部材で形成してなるゴルフクラブ用ヘッドにおいて,前記フェース部と前記ホーゼル部のシャフト嵌入部とは反対側の前記ホーゼル部のフェース部側との間に,使用するゴルフボールの外径曲率より大曲率の凹部を形成し,この凹部に,フェース部とホーゼル部との連結部の境界線を位置させてなることを特徴とするゴルフクラブ用ヘッド。」

4.当事者の主張
(1)請求人の主張
これに対して,請求人は,本件考案の実用新案登録を無効とするとの審決を求め,その理由として,本件考案は,本件出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された考案であるか,同様に本件出願前に頒布された刊行物である甲第2号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであると主張し,証拠方法として次の甲第1号証及び甲第2号証を提出している。
甲第1号証:特公昭63-62303号公報
甲第2号証:実願昭58-197915号(実開昭60-106652号)のマイクロフィルム

(2)被請求人の主張
一方,被請求人は,本件審判請求は成り立たないとの審決を求め,その理由として,本件考案は本件出願前に頒布された刊行物に記載された考案でなく,該刊行物に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものでもないと主張し,証拠方法として次の乙第1号証を提出している。
乙第1号証:本件登録異議の決定謄本

5.当審による無効理由通知の概要
平成19年10月5日付けの当審の職権審理による無効理由通知の概要は,本件考案は,本件出願前に頒布された甲第1号証に記載された考案および本件出願前に周知の技術に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから,本件実用新案登録は,実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり,同法第37条第1項第1号に該当し,他の無効理由について検討するまでもなく,無効とすべきものである,というものである。

6.甲号証記載の内容
(6-1)甲第1号証について
甲第1号証には次の事項が記載されている。
「針状の完全結晶であるウイスカーをアルミニウム・アルミニウム合金等の軽金属に含有させた複合材を、鋳造・鍛造・機械加工の内の少くとも一つの方法により、ゴルフクラブヘツドの中心部を占める鋳ぐるみ材に形成し、
該鋳ぐるみ材を、鋳型の内部の所定位置に設置すると共に、該鋳ぐるみ材の表面部の軽金属が、鋳造材の注入時に部分的に溶融するのをコントロールし鋳巣の発生を防止する冷し金を、鋳造材が湯道を経て最初に衝突する鋳ぐるみ材の部位、及び/又は、鋳ぐるみ材の肉薄の部分に、配置し、
上記軽金属の溶融温度よりも高い溶融温度を有すると共に上記鋳ぐるみ材の比重よりも大きい比重を有する鋳鉄・鋳鋼等の溶融した鋳造材を、ヒール部側の湯道を介して、上記鋳型内へ注入し、
比重の小さい上記鋳ぐるみ材の周囲を比重の大きい該鋳造材にて鋳ぐるむことを特徴とするゴルフクラブヘツドの鋳造方法。」(特許請求の範囲),
「本発明はゴルフクラブヘツドの鋳造方法に関する。
従来、アルミニウム又はアルミニウム合金等の軽金属を、鋳鉄又は鋳鋼等の鋳造材にて鋳ぐるむことは至難乃至不可能と考えられていた。その理由は、上記軽金属を鋳ぐるみ材として鋳型内に置き、溶融した鋳造材を鋳型へ注入すると、鋳ぐるみ材とそれを包む鋳造材との溶融温度の差が大きく、鋳造材の高温の湯により、鋳ぐるみ材が溶けてしまうためである。
本発明は、このような鋳ぐるみ材の溶けることを防止して、軽金属を鋳鉄・鋳鋼等の鋳造材にて内抱する方法を提供することを、目的とする。」(1欄21行?2欄6行),
「第1図と第2図に於て、アイアン型のクラブヘツドを例に挙げて、それを鋳造する方法を説明すれば、1は鋳ぐるみ材であつて、炭化ケイ素(SiC)、Al_(2)O_(3)、BeO、B_(4)C、Si_(2)N_(4)、グラフアイト、Cr、Fe、Ni等の針状の完全結晶であるところのウイスカーを、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金等の軽金属に含有させた複合材Mから構成される。例えば、このようなウイスカーの内の一種、又は二種以上を、所定形状に固め、その中にいわゆるマトリツクスとして上記軽金属の内の一種を溶融させたものを、真空注入して、冷却し、直接に図のような鍔部2と中央本体部3とからなる複合材Mを、予め成形する。
複合材Mはウイスカーを2?80体積%含有させたものが用い得るが、特に4?40体積%含有させたものが、望ましい。
また、上述のように所定形状に複合材Mを当初から、鋳造にて成形する他に、鍛造又は機械加工にて、所定形状にしたり、あるいは鋳造後に鍛造又は機械加工を加えて、所定形状の鋳ぐるみ材1とすることも可能である。
4は、鋳物砂その他の耐火材料からなる鋳型であり、上記鋳ぐるみ材1を、この鋳型4の内部に設置する。
5…は冷し金である。そして、溶融した鋳鉄や鋳鋼、あるいは鋳造用非鉄金属(前記軽金属よりも比重の大きいもの)からなる鋳造材6を、鋳型4内へ注入する。矢印Aはこの注入方向を示し、図のように湯口7→湯道8→クラブヘツド状空所9と、順次流入してゆく。鋳ぐるみ材1の中央本体部3の周囲は完全に鋳造材6にて包囲状となり、かつクラブヘツドのフエースをなす部分には鍔部2が対応する。」(2欄26行?3欄32行),
「また、第3図に示す別の実施例のように、クラブヘツドのフエース面が鋳造材6となるように、複合材Mからなる鋳ぐるみ材1を、クラブヘツドの内部及び裏面側にわたつて配置することも好ましい。なお冷し金5は適宜付設可能であるが、同図では省略した。・・・第3図では、鋳型4内へ差込んだり挿入して、鋳ぐるみ材1を鋳型4のキヤビテイ内に支持する部分の図示を省略した。」(4欄3?14行),
「〔発明の効果〕
本発明は上述の構成により次のような著大な効果を奏する。
(マル1)溶融温度の低い軽金属から成る鋳ぐるみ材に溶融温度の高い鋳造材6を注入した時の鋳ぐるみ材の溶融流失を防止するために、針状(短繊維状)の多数のウイスカーが極めて有効であり、この針状のウイスカーを溶融温度の低い軽金属側へ混入する思想は従来全く存在せず、本発明は独自の着眼に基づくものである。
(マル2)即ち、溶融温度差の大きいアルミ・アルミニウム合金等の軽金属を内抱する鋳鉄又は鋳鋼製のゴルフクラブヘツドが、本発明によつて初めて実現した。
(マル3)冷し金を、鋳造材が湯道を経て最初に衝突する鋳ぐるみ材の部位、及び/又は、鋳ぐるみ材の肉薄部分に、配置したことと、軽金属中にウイスカーを含有させたことの相乗効果により、軽金属の溶融流失を一層確実に防止出来る。
(マル4)鋳ぐるみ材の周囲を鋳造材にて鋳ぐるむために、強固に完全一体化したクラブヘツドが得られる。
(マル5)比重の小さい鋳ぐるみ材の周囲に比重の大きい鋳造材が配設されたゴルフクラブヘツドが得られるから、クラブヘツドの慣性モーメントが増加し、ゴルフボールを、スウイートスポツトを外して打撃したときの左右振れの少ない、飛距離の減少割合も少ない、優れたクラブヘツドが得られる。」(4欄39行?6欄8行)。
なお,(マル1)?(マル5)は,丸付き数字1?5を表す。

上記記載および図面の記載ならびに技術常識から,甲第1号証には,
「鍔部2と中央本体部3とからなる複合材Mをアルミニウム等の軽金属で形成し,ホーゼル部を前記軽金属よりも比重の大きい鋳造用非鉄金属で形成してなるゴルフクラブヘッドにおいて,前記鍔部2と前記ホーゼル部のシャフト嵌入部とは反対側の前記ホーゼル部の鍔部2側との間に,凹部を形成し,この凹部に,鍔部2とホーゼル部との連結部の境界線を位置させてなるゴルフクラブヘッド。」の考案(以下,「甲1考案」という。)が記載されていると認められる。

(6-2)甲第2号証について
甲第2号証には図面と共に次のことが記載されている。
「本考案は、ゴルフクラブのヘッドに関するものであり、特にアイアンクラブのヘッドの改良に関するものである。」(明細書2頁4?6行),
「一般にアイアンクラブはティーアップした球を打つティーショットよりもセカンドショット,サードショット或いはバンカーショットなどに用いられることを本来の目的としており、芝地以外の裸地や砂地などにある球を打つことも多いために、小石や砂によってヘッド、特にソール部が容易に傷まないようにヘッド全体が軟鉄やステンレス等の金属素材で一体的に形成されたものが従来から用いられてきた。
しかしながら、このようなヘッドは外観的な変化に乏しいばかりでなく、金属素材は比重が大きいために設計の自由度が低く、その結果機能的に十分満足のいくものが得られなかった。例えば、初心者,中級者レベルのプレイヤーにとっては、ヘッドの重心位置は低い方が打ち易いとされているが、重心を下げるためにソール部側を肉厚にするとヘッド全体の重量が増加してしまい、かえって扱い難いものになってしまうなど、様々な問題点を含んでいた。
本考案は上述のような点に鑑みてなされたもので、その目的は従来のアイアンクラブヘッドとは全く異なったイメージを与え得るとともに、設計の自由度が大きく所望の機能を容易に実現できる構造のゴルフクラブのヘッドを提供することにある。」(同2頁7行?同3頁11行),
「第1図及び第2図は本考案の第1実施例に係るゴルフクラブのヘッドを示し、図中符号1はヘッド部であって、このヘッド部1は従来のアイアンクラブヘッドとほぼ同様な外形輪郭を有し、そのヒール側端部からは中空筒状のホーゼル部2が突出されており、該ホーゼル部内にシャフト3の先端が挿入固着されている。ヘッド部1は、下端に位置するソール部4と、該ソール部から一体的に上方へ突出形成された側断面略三角形状の芯部5とを含み、ソール部4と芯部5は軟鉄,ステンレス或いは真鍮などの金属素材によって上記ホーゼル部2と一体に形成されている。芯部5の表面には、接着層6を介して外殻層7が断面略逆V字状に被覆されていて、外殻層7の前後下端面はソール部4の端面と無段差状に連続している。
この外殻層7はアルミナ(Al_(2)O_(3)),炭化シリコン(SiC),酸化チタン(TiO_(2))などのファインセラミックから成形されたもので、プレート状に形成された前部外殻層7aと後部外殻層7bとからなっている。」(同3頁14行?4頁13行),
「第3図及び第4図は本考案の第2実施例に係るゴルフクラブヘッドを示しており、この実施例では、芯部5′と外殻層7′の結合が凹凸嵌合によって達成されている点で上記実施例と異なっている。」(同5頁12?16行),
「上記のように構成されたゴルフクラブのヘッドでは、ヘッド部1の外殻層が金属よりも比重の小さいセラミック素材によって形成されているため、単位体積当たりの重量は従来のものよりも小さく、従って、例えばソール部側を肉厚にして重量を集中させ、低重心化して打ち易いクラブとしたり、トウ側とヒール側に重量を分散させてスウィートスポットを拡張するなど、種々な設計が総重量の増大を伴うことなく容易に可能となる。」(同6頁15行?7頁3行),
「上述のように本考案に係るゴルフクラブのヘッドによれば、下端ソール部と該ソール部から上方へ一体的に突出形成された側断面略三角形状の芯部とを軟鉄,ステンレス等の金属素材から形成するとともに、該芯部の表面をアルミナ等のファインセラミック材で形成された外殻層で被覆し、該外殻層の前後下端面を該ソール部の端面と無段差状に連続させることとしたので、従来の金属で一体に成形されたアイアンヘッドよりも設計の自由度が高く、所望の機能を有するヘッドを得ることが容易に可能となるとともに、耐蝕性,耐摩耗性に優れ長期間の使用に適し、加えて従来のものとは全く異なった斬新なイメージのアイアンクラブを提供することが出来るなど、種々の優れた効果を奏し得るものである。」(同7頁14行?8頁8行)。
上記記載および図面の記載ならびに技術常識から,甲第2号証には,
「前部外殻層7aをアルミナなどのファインセラミックで形成し、ホーゼル部2を軟鉄などの金属素材で形成してなるゴルフクラブのヘッドにおいて、前記前部外殻層7aと前記ホーゼル部2のシャフト嵌入部とは反対側の前記ホーゼル部2の前部外殻層7aとの間に、凹部を形成し、この凹部に、前部外殻層7aとホーゼル部2との連結部の境界線を位置させてなるゴルフクラブのヘッド。」の考案(以下,「甲2考案」という。)が記載されていると認められる。

7.当審の判断
本件考案と甲1考案とを対比すると,
甲1考案の「鍔部2」および「ゴルフクラブヘッド」が,その機能・構造からみて,それぞれ,本件考案の「フェース部」および「ゴルフクラブ用ヘッド」に相当するといえるから,両者は,
「フェース部とホーゼル部とを異なる部材で形成してなるゴルフクラブ用ヘッドにおいて,前記フェース部と前記ホーゼル部のシャフト嵌入部とは反対側の前記ホーゼル部のフェース部側との間に,凹部を形成し,この凹部に,フェース部とホーゼル部との連結部の境界線を位置させてなるゴルフクラブ用ヘッド。」である点で一致し,次の点で相違する。
(相違点)
フェース部とホーゼル部のシャフト嵌入部とは反対側の前記ホーゼル部のフェース部側との間に形成した凹部の曲率が,本件考案では「使用するゴルフボールの外径曲率より大曲率」であるのに対して,甲1考案では「使用するゴルフボールの外径曲率より大曲率」であるか否か不明な点。

上記相違点を検討する。
平成19年8月10日に請求人が提出した上申書に添付し,平成18年(行ケ)第10342号に関し原告(請求人)が平成18年9月5日と平成19年1月15日に提出した原告準備書面に添付した甲4の1?甲4の5及び甲10の1?甲10の15(なお,原告準備書面に添付の甲号証の漢数字は算用数字で表記した。以下,同じ。…当審注)は,国内外の様々のメーカーが販売する,様々な商品名,番手(ただし,全部アイアン)のゴルフクラブ二十数種類についてそれぞれそのフェース部とホーゼル部の間の凹部にゴルフボールを接着した状態を撮影した写真であり,これらの製品は,昭和59年3月1日発行の84年版ゴルフ用品総合カタログ(甲3の1)および平成元年3月1日発行の89年版ゴルフ用品総合カタログ(甲9)に掲載されているから,いずれも本件出願前に市販されていたものと認められる。
そして,これらいずれの写真においても,ゴルフボールの外周面と,フェース部とホーゼル部の間の凹部との間に,三日月状の空隙部が形成される様子が示されているから,これら二十数種類のゴルフクラブは,フェース部とホーゼル部との間の凹部の曲率が,ゴルフボールの外径曲率よりも大きいものと認められるところ,このように,様々なメーカーが販売する二十数種類ものゴルフクラブ(アイアン)に係るフェース部とホーゼル部との間の凹部の曲率が,ゴルフボールの外径曲率よりも大きいとすれば,本件実用新案登録出願当時「ゴルフクラブ(アイアン)において,フェース部とホーゼル部との」間の凹部の曲率を使用するゴルフボールの外径曲率よりも大曲率とすることは一般に見られる周知技術であったものと認めるのが相当である。
上記周知技術として示されたゴルフクラブは,フェース部とホーゼル部とを異なる部材で形成してなるゴルフクラブ用ヘッドという本件考案の前提の構成を欠いているが,上記周知技術は,ゴルフクラブ(アイアン)において,一般に見られるものであり,甲1考案におけるフェース部とホーゼル部との間の凹部の曲率について,上記周知技術を採用することにつき,阻害事由も見当たらないから,甲1考案に上記周知技術を採用することは,当業者であれば,フェース部とホーゼル部との境界線にゴルフボールが直接当接することを確実に防止するという課題の認識いかんに関わらず,格別の動機付けがなくとも適宜試みる程度のものというべきである。
してみると,甲1考案におけるフェース部とホーゼル部との間の凹部の曲率について,上記「当該凹部の曲率を使用するゴルフボールの外径曲率よりも大曲率とする」周知技術を採用することにより,上記相違点に係る本件考案の構成とすることは,当業者がきわめて容易になし得ることというべきである。

また,甲1考案が,鍔部2(フェース部)とホーゼル部のシャフト嵌入部とは反対側の前記ホーゼル部の鍔部2側との間に形成した凹部に「鍔部2とホーゼル部との連結部の境界線を位置させてなる」ものとすれば,これに上記周知技術を採用した場合に,フェース部とホーゼル部との境界線にゴルフボールが直接当接しなくなることは,きわめて容易に予測し得るといえる。

したがって,本件考案は,本件出願前に頒布された甲第1号証に記載された考案および本件出願前に周知の技術に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

8.むすび
以上のとおり,本件考案は,本件出願前に頒布された甲第1号証に記載された考案および本件出願前に周知の技術に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから,本件実用新案登録は,実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり,同法第37条第1項第1号に該当し,他の無効理由について検討するまでもなく,無効とすべきものである。
審判に関する費用については,実用新案法第41条の規定において準用する特許法第169条第2項の規定においてさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により被請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
ゴルフクラブ用ヘッド
(57)【実用新案登録請求の範囲】
(1)少なくともフェース部とホーゼル部とを異なる部材で形成してなるゴルフクラブ用ヘッドにおいて、前記フェース部と前記ホーゼル部のシャフト嵌入部とは反対側の前記ホーゼル部のフェース部側との間に、使用するゴルフボールの外径曲率より大曲率の凹部を形成し、この凹部に、フェース部とホーゼル部との連結部の境界線を位置させてなることを特徴とするゴルフクラブ用ヘッド。
【考案の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本考案は、ゴルフクラブ用ヘッドに係わり、特に、フェース部とホーゼル部とを異なる部材で形成してなるゴルフクラブ用ヘッドに関する。
〔従来の技術〕
従来、フェース部とホーゼル部とを異なる部材で形成したゴルフクラブ用ヘッドとしては、例えば、特開昭63-260579号公報に開示されるように、ホーゼル部、ネック部およびソール部を金属材料で形成し、打球部を繊維強化金属部材で形成したもの、あるいは、実開昭63-158366号公報に開示されるように、ホーゼル部のシャフト連結部に金属材を露出したもの等が知られている。
〔考案が解決しようとする課題〕
しかしながら、特開昭63-260579号公報に開示されるゴルフクラブ用ヘッドでは、フェース部とホーゼル部との境界線が打球面上に位置しているため、この境界線にゴルフボールが当たり、長期間の使用により、境界線の両側で磨耗量に差が生じ、段状になったり、あるいは、打球時に、回転方向の力が作用するため、境界線が剥離して、隙間等が生じるという問題があった。
一方、実開昭63-158366号公報に開示されるゴルフクラブ用ヘッドでは、ホーゼル部の上部に境界線が形成されるため、ゴルフボールは当たり難くなるが、ゴルフボールが直接境界線に当たることを防止できないため、境界線での強度が問題になり、また、ホーゼル部の細身化を図ることが困難であるという問題があった。
本考案は、かかる従来の問題を解決するためになされたもので、フェース部とホーゼル部との境界線にゴルフボールが直接当接することを確実に防止することのできるゴルフクラブ用ヘッドを提供することを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
本考案のゴルフクラブ用ヘッドは、少なくともフェース部とホーゼル部とを異なる部材で形成してなるゴルフクラブ用ヘッドにおいて、前記フェース部と前記ホーゼル部のシャフト嵌入部とは反対側の前記ホーゼル部のフェース部側との間に、使用するゴルフボールの外形曲率より大曲率の凹部を形成し、この凹部に、フェース部とホーゼル部との連結部の境界線を位置させてなるものである。
〔作用〕
本考案のゴルフクラブでは、フェース部とホーゼル部のシャフト嵌入部とは反対側のホーゼル部のフェース部側との間に、使用するゴルフボールの外径曲率より大曲率の凹部を形成し、この凹部に、フェース部とホーゼル部との連結部の境界線を位置させたので、フェース部とホーゼル部との境界線にゴルフボールが直接当接することがない。
〔実施例〕
以下、本考案の詳細を図面に示す一実施例について説明する。
第1図は本考案のゴルフクラブの一実施例を示す正面図、第2図は第1図のII-II線に沿う縦断面図、第3図は第1図のIII-III線に沿う横断面図である。
これ等の図において符号11は、ヘッドを示しており、ヘッド11は、打球面13を有するフェース部15と、シャフト17の嵌入されるホーゼル部19とから形成されている。
しかして、この実施例では、フェース部15と、ソール部21を含んだホーゼル部19とが異なる部材で形成されている。
すなわち、フェース部15は、例えば、硬質金属からなるコア部23の外側に、繊維強化金属からなる外側部材25を配置して形成されている。
一方、ホーゼル部19およびソール部21は、例えば、硬質金属からなり、ソール部21には、前述したコア部23が連結部24を介して接続されている。そして、ホーゼル部19のフェース部15側には、第2図に示すように、所定間隔を置いて一対の蟻溝27,29が形成されている。
打球面13側の蟻溝27は、他側の蟻溝29より深く形成されており、これ等の蟻溝27,29には、フェース部15の外側部材25に形成される矩形状の突部31,33が嵌合されている。
そして、フェース部15とホーゼル部19のシャフト嵌入部とは反対側のホーゼル部19のフェース部15側との間には、使用するゴルフボール35の外径曲率より大曲率の凹部37が形成されており、この凹部37に、フェース部15とホーゼル部19との連絡部の境界線39が位置されている。
なお、この境界線39は、第1図においては、上下方向に曲がった曲線として現れている。
しかして、以上のように構成されたゴルフクラブ用ヘッドでは、フェース部15とホーゼル部19のシャフト嵌入部とは反対側のホーゼル部19のフェース部15側との間に、使用するゴルフボール35の外径曲率より大曲率の凹部37を形成し、この凹部37に、フェース部15とホーゼル部19との連結部の境界線39を位置させたので、ゴルフボール35は、第2図に示したように、フェース部15と、ホーゼル部19とに股がって当たることがあるが、凹部37に形成される境界線39に直接当接することはない。
従って、以上のように構成されたゴルフクラブ用ヘッドでは、長期間の使用により、境界線39の両側に段差が生じることがなくなり、また、境界線39が剥離して、隙間等が生じることがなくなる。
この結果、材料の使用範囲が広がりユーザーの要望を充分に満足することのできるゴルフクラブ用ヘッドを容易に提供することが可能となる。
また、ホーゼル部19全体を細身に形成することが可能になり、シャフト17の固定強度をも充分に確保することが可能になる。
さらに、以上のように構成されたゴルフクラブ用ヘッドでは、第2図に示したように、バックフェース41側の境界線43の位置を、フェース部15側の境界線39の位置よりトウ側45となるように形成したので、打球時にヘッド11の回転方向の負荷が、フェース部15側の境界線39に集中するのを有効に防止することが可能になり、フェース部15側の境界線39に応力が集中するのを防止することが可能になる。
また、この実施例では、外側部材25より硬質部材であるホーゼル部19側に蟻溝27,29からなる凹部を形成したので、フェース部15側の境界線39の剥離あるいは破損を有効に防止することが可能になる。
なお、以上述べた実施例では、ホーゼル部19とソール部21とを一体に形成した例について述べたが、本考案は、かかる実施例に限定されるものではなく、必ずしも一体に形成する必要はなく、また、コア部あるいはバックフェース部を別体に形成しても良いことは勿論である。
〔考案の効果〕
以上述べたように、本考案のゴルフクラブでは、フェース部とホーゼル部のシャフト嵌入部とは反対側のホーゼル部のフェース部側との間に、使用するゴルフボールの外径曲率より大曲率の凹部を形成し、この凹部に、フェース部とホーゼル部との連結部の境界線を位置させたので、フェース部とホーゼル部との境界線にゴルフボールが直接当接することを確実に防止することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
第1図は本考案のゴルフクラブの一実施例を示す正面図である。
第2図は第1図のII-II線に沿う縦断面図である。
第3図は第1図のIII-III線に沿う横断面図である。
〔主要な部分の符号の説明〕
15・・・フェース部
19・・・ホーゼル部
35・・・ゴルフボール
37・・・凹部
39・・・境界線
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2006-05-22 
結審通知日 2006-05-30 
審決日 2007-12-12 
出願番号 実願平1-149965 
審決分類 U 1 113・ 121- ZA (A63B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 長谷部 善太郎小野 忠悦  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 砂川 充
石井 哲
登録日 1997-07-18 
登録番号 実用新案登録第2148765号(U2148765) 
考案の名称 ゴルフクラブ用ヘッド  
代理人 中村 誠  
代理人 中村 誠  
代理人 一色国際特許業務法人  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 河野 哲  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 河野 哲  
代理人 鈴江 武彦  
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