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審決分類 審判    B01D
審判    B01D
審判    B01D
審判    B01D
管理番号 1177524
審判番号 無効2007-400004  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-06-29 
確定日 2008-04-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第3028134号実用新案「土壌脱臭装置」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第3028134号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
本件の実用新案登録第3028134号に係る考案(以下、「本件考案」という。)についての出願は、平成8年2月19日に出願され、平成8年6月12日にその考案について実用新案登録がなされたものである。
これに対して、請求人協和化工株式会社より平成19年6月29日付け審判請求書により本件無効審判の請求がなされ、これに対し、被請求人株式会社ニチボーより平成19年8月16日付けで審判事件答弁書が提出されたところ、その後の手続の経緯は、以下のとおりである。

被請求人より審判事件上申書の提出: 平成19年 9月 5日
被請求人より審判事件上申書の提出: 平成19年11月16日
請求人より上申書の提出: 平成19年11月27日
請求人より口頭審理陳述要領書の提出: 平成19年12月 6日
被請求人より口頭審理陳述要領書の提出: 平成19年12月 6日
口頭審理: 平成19年12月14日
被請求人より上申書の提出: 平成19年12月28日
請求人より上申書の提出: 平成20年 1月28日

2.本件考案
本件考案は、その明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】土壌層(2) を有する脱臭領域(A1)へ吸引した悪臭ガスを前記土壌層(2) の下方から上方へ通過させながら悪臭成分を土壌粒子に吸着させるとともに、土壌中の微生物により悪臭成分を分解し、無臭ガスとして土壌表面から大気中へ放出するように構成した土壌脱臭装置において、
上記土壌層(2) の表面に砕石(60)を敷設して砕石層(6) を形成したことを特徴とする土壌脱臭装置。」

3.請求人の主張
請求人は、本件の実用新案登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、以下の無効理由1及び無効理由2を主張し、証拠方法として甲第1?21号証を提出し、平成19年11月27日付け上申書により平成19年(ワ)第1180号特許権侵害差止等請求事件にて提出した書面を請求人参考資料1?3として提出し、審判請求書、口頭審理(口頭陳述要領書を含む)及び上申書において、請求人は次のとおり無効理由1及び2を主張している。

(1)無効理由1
本件考案は、その出願前に頒布された刊行物である甲第1号証?甲第4号証に記載された考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるので、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであるから、本件の実用新案登録は、同法第37条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。

(2)無効理由2
本件考案は、その出願前に公知となった甲第8号証に記載された考案と同一であるか、又は当該考案が、甲第9?13号証に示す通り、本件考案の出願前に公然実施されたものであるので、実用新案法第3条第1項第1号及び第2号に該当し実用新案登録を受けることができないものであり、甲第8?12号証に示す通り、被請求人は当該考案の考案者ではなくかつ当該考案について実用新案登録を受ける権利を承継したものでもないから、本件の実用新案登録は、同法第37条第1項第2号及び第5号に該当し、無効とされるべきである。

なお、請求人は、平成20年1月28日付け上申書において、本件の実用新案登録は「共同出願違反(実用新案法第11条で準用する特許法第38条)に相当する。」(第6頁第20行)及び「本件考案が、甲8及びこれに係る工事並びに甲9の試験に基づいて当業者が極めて容易に考案できたものであることは明らかである。」(第7頁第28?30行)と主張しているが、これらの主張は、審判請求書で主張する無効理由1及び無効理由2と異なる新たな無効理由を主張するものであり、明らかに審判請求書の要旨を変更するものであるから採用することはできない。

(3)証拠方法
甲第1号証:「バイオソイル脱臭装置カタログ」(株式会社ニチボーエンジニアリング、1994.8作成)
甲第2号証:「実開平2-117022号公報」(平成2年9月19日公開)
甲第3号証:「特開平6-56606号公報」(平成6年3月1日公開)
甲第4号証:「特開平8-74221号公報」(平成8年3月19日公開)
甲第5号証:「土壌脱臭装置(重力濃縮設備)一般図」(91年9月21日、株式会社ニチボー作成)
甲第6号証:「土壌脱臭装置(凝縮・脱水設備)一般図」(91年9月30日、株式会社ニチボー作成)
甲第7号証:「西部処理場汚泥処理設備工事(機械設備)汚泥処理棟土壌脱臭床・芝枯れの報告書」(日本鋼管株式会社水処理技術部、H6.11.27作成)
甲第8号証:「西部処理場汚泥処理設備工事(機械設備)土壌脱臭床芝枯れの対策について」(日本鋼管株式会社水処理技術部、H7.5.10作成)
甲第9号証:「土壌脱臭床表層材の発芽性試験結果報告書」(フジケンエンジニアリング株式会社、株式会社都市テック、H7.11.15)
甲第10号証の1?6:「清水汚水中継ポンプ場建設工事、土壌脱臭装置床内部構造図(6分割)」(平成8年、フジケンエンジニアリング株式会社)
甲第11号証:「ヒメライト(焼成セラミック材)カタログ」(愛媛砕石株式会社)
甲第12号証:「刊行物等提出書」(平成10年10月3日提出)
甲第13号証:「(株)ニチボーエンジニアリング発信FAX」(96年2月26日発信)
甲第14号証の1:「請求人の第1回調査結果のまとめ」(請求人作成)
甲第14号証の2:「名刺の写し」(松山市下水道部 明神修一、テスコ株式会社 菅健二、19.3.5)
甲第14号証の3?5:「西部浄化センター土壌脱臭装置現状写真」(2007.3.5)
甲第15号証の1:「確認願」(平成19年11月9日、松山市下水道部 明神修一署名)
甲第15号証の2:「西部浄化センター保管書類の表紙の写し」(西部処理場汚泥処理設備工事(機械設備)汚泥処理棟土壌脱臭床・芝枯れの報告書、日本鋼管株式会社水処理技術部、H6.11.27作成)
甲第15号証の3:「西部浄化センター保管書類の表紙の写し」(西部処理場汚泥処理設備工事(機械設備)土壌脱臭床芝枯れの対策について、日本鋼管株式会社水処理技術部、H7.5.10作成)
甲第15号証の4:「西部浄化センター保管書類の表紙の写し」(西部処理場汚泥処理設備工事(機械設備)重力濃縮設備用土壌脱臭床芝枯れの調査報告書、日本鋼管株式会社水処理技術部、H8.3.22作成)
甲第15号証の5:「西部浄化センター保管書類の表紙の写し」(土壌脱臭装置土壌脱臭床表層仕上材による発芽試験要領書、フジケンエンジニアリング株式会社)
甲第15号証の6:「西部浄化センター保管書類の表紙の写し」(バイオソイル脱臭装置(土壌脱臭タイプ)維持管理要領書、株式会社ニチボー)
甲第15号証の7:「西部浄化センター保管書類の表紙の写し」(松山市西部下水処理場脱水機設備系土壌脱臭装置の張り芝について、H6.11.2)
甲第15号証の8:「西部浄化センター保管書類の表紙の写し」(松山市西部浄化センター重力濃縮設備系土壌脱臭装置の芝枯れの原因と対策、平成7年11月、(株)ニチボーエンジニアリング)
甲第15号証の9:「西部浄化センター保管書類の表紙の写し」(工事写真帳、松山市西部処理場重力濃縮設備系芝枯れ原因調査、平成7年10月18日着手)
甲第15号証の10:「部分公開決定通知書」(平成19年6月19日付け、松山市)
甲第16号証:「出張報告書」(平成19年5月24日、渡辺功作成)
甲第17号証の1,2:「西部浄化センターのホームページ抜粋」(2007/11/09印刷)
甲第18号証:「松山市下水道部のパンフレット抜粋」(松山市)
甲第19号証:「無効2004-80109特許審決公報」(平成19年1月26日発行)
甲第20号証:「建築基準法第12条第3項の規定による報告書」(確認:平成6年8月10日、第H06適建松山000019号)
甲第21号証:「原告第1準備書面」(平成19年5月7日付け)

(4)請求人参考資料
請求人参考資料1:「答弁書(平成19年3月19日付け)」
請求人参考資料2:「被告準備書面(1)(平成19年7月6日付け)」
請求人参考資料3:「被告準備書面(2)(平成19年10月24日付け)」

4.被請求人の主張
被請求人は、請求人の上記主張に対して、本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、無効理由1及び無効理由2に対して以下のとおり反論し、証拠方法として乙第1号証を提出し、平成19年11月16日付け上申書により平成19年(ワ)第1180号特許権侵害差止等請求事件にて提出した書面を被請求人参考資料1?5として提出している。

(1)無効理由1に対する反論
甲第1?4号証には、本件考案の技術的思想は開示も示唆もされておらず、本件考案は、甲第1?4号証に記載された考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではない。

(2)無効理由2に対する反論
甲第8号証に記載された考案は、本件考案の出願前に公知ではなく、その実施は公然実施とはいえず、本件考案の考案者が考案したものである。

(3)証拠方法
乙第1号証:「特許第3435297号公報」

(4)被請求人参考資料
被請求人参考資料1:「準備書面(平成19年2月21日付け)」
被請求人参考資料2:「第1準備書面(平成19年5月7日付け)」
被請求人参考資料3:「第2準備書面(平成19年6月4日付け)」
被請求人参考資料4:「第3準備書面(平成19年8月28日付け)」
被請求人参考資料5:「第4準備書面(平成19年9月21日付け」

5.当審の判断
5-1.無効理由1について
(1)甲第1号証
甲第1号証である「バイオソイル脱臭装置カタログ」は、その第6頁末尾の「1994.8.2000(3版) AP.」という記載によれば、1994年(平成6年)8月に第3版として印刷されたカタログであるといえ、同頁下段の「設計・施工」に「関西地区代理店(設計・施工) 環境設備工業株式会社」の印があり、代理店を通して頒布されたものと推認できることから、本件考案の出願日である平成8年2月19日より前に頒布された刊行物であるといえる。なお、この点に関して当事者間に争いはない。
そして、甲第1号証には、以下の事項が記載されている。

(ア)第2頁上段の脱臭機構の表には、「物理吸着」の脱臭反応として「難溶性悪臭物質の固層表面への吸着」と記載され、同様に「微生物的酸化分解」の脱臭反応として「吸着された悪臭物質の酸化分解」と記載されている。
(イ)第2頁中段の構造概要の図には、「特殊土壌脱臭装置」が図示されており、そこには、「特殊土壌脱臭装置」が「土壌層」を有する構成、及び「原臭ガス」が、「ブロワー」から「特殊土壌脱臭装置」に導入されて「土壌層」の下から上に通過し、「処理臭ガス」として放出する構成が窺える。
(ウ)「それぞれの臭気発生源は覆蓋で密閉され、吸引ブロワーによって負圧状態となります。臭気ガスはダクトを通り脱臭装置へ導入されます。」(第2頁下段)
(エ)「従来の土壌脱臭装置は自然の土壌を主体にしたもので、実用的には次のような短所があるとされています。
・・・
圧密して次第に通気性、排水性が悪くなり性能が低下する。
・・・
そこで新しい概念から開発したものが、複合特殊媒体である「バイオソイル」です。
バイオソイルは次のような特徴を持っています。
・・・
通気性、透水性、吸着性の大幅な向上によって性能が飛躍的にアップ。
・・・
通気性がよいので、ブロワーは低出力のモーターで良く、維持費が更に安くなる。」(第3頁第1行?15行)
(オ)「保守・点検作業が殆んど不要で自動無人運転が可能。」(第3頁下から3行)
(カ)「形状が自在で、表面に芝を張るので緑地として利用できる。」(第3頁末行)
(キ)「花壇風にすることで処理場のイメージを和らげ、親しみやすいものとします。」(第4頁右欄上段)
(ク)「住宅が近くにある場合が多いので、緑地が周辺と調和します。」(第4頁右欄中段)
(ケ)「維持管理、保守点検作業は殆んど不要で共同管理に適します。」(第4頁右欄下段)
(コ)「施工(土壌の敷均)
バイオソイルは現地まで専用袋で搬入され、踏圧がかからないようにクレーンを使って慎重に投入し、敷均します。」(第5頁第3段右)

(2)甲第1号証に記載された考案
甲第1号証には、記載事項(イ)によれば「土壌層を有し、原臭ガスがブロワーから導入されて土壌層の下から上に通過し、処理臭ガスとして放出する構成とした特殊土壌脱臭装置」が記載されているといえる。そして、上記「特殊土壌脱臭装置」の「土壌層」が、土壌で構成されていることは自明であり、この土壌層を構成する土壌について、甲第1号証には、記載事項(エ)及び(コ)によれば、土壌が「バイオソイル」であることが記載されているといえる。また、甲第1号証には、上記「特殊土壌脱臭装置」について、記載事項(ア)によれば「原臭ガスが土壌層を通過しながら、悪臭物質をバイオソイルの固層表面に吸着し、バイオソイル中の微生物により分解するものであること」、記載事項(ウ)によれば「ブロワーで吸引した原臭ガスを脱臭装置に導入するものであること」、及び記載事項(カ)によれば「土壌層の表面に芝を張ったものであること」が記載されているといえる。

これらの記載事項を本件考案の記載振りに則して整理すると、甲第1号証には「吸引した原臭ガスを土壌層の下から上へ通過させながら、悪臭物質をバイオソイルの固層表面に吸着させるとともに、バイオソイル中の微生物により悪臭物質を分解し、処理臭ガスとして放出するように構成した特殊土壌脱臭装置において、土壌層の表面に芝を張った特殊土壌脱臭装置」の考案(以下、「甲1考案」という。)が記載されているといえる。

(3)本件考案と甲1考案との対比
甲1考案の「原臭ガス」、「悪臭物質」、「処理臭ガス」及び「特殊土壌脱臭装置」は、それぞれ本件考案の「悪臭ガス」、「悪臭成分」、「無臭ガス」及び「土壌脱臭装置」に相当する。そして、甲1考案における「土壌層」は、原臭ガスが通過して脱臭を行うものであるから、甲1考案における土壌層を有する部分は、吸引した原臭ガスが導入される部分であり、本件考案の土壌層を有する「脱臭領域」に相当するといえる。
また、甲1考案の「バイオソイル」は、土壌脱臭装置の土壌層を構成するものであり、悪臭物質をその固層表面に吸着させるとともに、その中の微生物により悪臭物質を分解するものであるといえ、本件考案の「土壌」は、本件考案が「悪臭成分を土壌粒子に吸着させるとともに、土壌中の微生物により悪臭成分を分解」するものであることから、悪臭物質を吸着させ、その中の微生物により分解する点で、甲1考案の「バイオソイル」と共通しており、土壌脱臭装置において広く土壌と称されるものを含むものといえることを勘案すれば、甲1考案の「バイオソイル」は、本件考案の「土壌」に相当するといえる。
そして、甲1考案の「悪臭物質をバイオソイルの固層表面に吸着させる」ことは、本件考案の「悪臭成分を土壌粒子に吸着させる」ことに相当するといえ、甲1考案の「処理臭ガスとして放出する」ことは、本件考案の「無臭ガスとして土壌表面から大気中へ放出する」ことに相当するといえる。
そうすると、本件考案と甲1考案とは「土壌層を有する脱臭領域へ吸引した悪臭ガスを前記土壌層の下方から上方へ通過させながら悪臭成分を土壌粒子に吸着させるとともに、土壌中の微生物により悪臭成分を分解し、無臭ガスとして土壌表面から大気中へ放出するように構成した土壌脱臭装置」の考案である点で一致し、以下の点で相違するといえる。

相違点:本件考案は、土壌層の表面に「砕石を敷設して砕石層を形成した」ものであるのに対して、甲1考案は、土壌層の表面に「表面に芝を張った」ものである点。

(4)相違点の検討
甲第3号証(特開平6-56606号公報)の段落【0002】には、従来の技術として、「従来から、都市や建物、構造物、空き地等の美観を維持する為、種々の化学的及び物理的防草手段が用いられてきた。・・・一方物理的手段として、アスファルト被覆、コンクリート被覆による手段、更には砂利やバラスの敷設、塩ビシートや不織布シート等の遮光効果の有る物を敷設する工法が一般的に知られている。」と記載されている。この記載中の「バラス」という用語について、広辞苑(新村出編、第五版、株式会社岩波書店、1998年11月20日)をみると、その解説に「バラスト2の略。」と記載され、この「バラスト」の解説の2には「道路・線路などに敷く、砂利・砕石。」と記載されている。これらの記載に照らせば、美観を維持するための手段として砕石を敷設する手段は周知の手段といえる。
そして、甲第1号証には、記載事項(カ)?(ク)によれば、甲1考案の「特殊土壌脱臭装置」を、緑地として利用すること、花壇風にすること、及び住宅の近くに設置することが記載されているといえる。これらの記載によれば、甲1考案は景観を損ねないという課題の下に芝を張っているものといえ、この芝は、悪臭物質の吸着及び分解が行われる土壌層の表面に張られることから、脱臭に関与するものでないことは明らかである。
ここで、芝においては、芝や雑草の成育が生じ、その景観を維持するためには、芝刈り等の保守作業が必要であることは自明であり、甲第1号証の記載事項(オ)及び(ケ)によれば、甲1考案は、保守点検作業を殆ど不要にしたものといえることを考慮すると、甲1考案において、芝刈り等の保守作業を不要にするための手段を講ずることは、当業者が通常に行う創作の範囲内のことといえる。そして、上記砕石を敷設する手段は、美観を維持するためのものであるから、景観を損ねないという甲1考案の上記課題を解決するものであり、芝刈り等の保守作業を不要とするものであることは明らかである。また、敷設した砕石の層が通気性を有することは自明であることからすれば、甲1考案の芝を張る構成に代えて、上記周知の手段である砕石の敷設を採用することに、処理臭ガスの放出を阻害する格別の要因はないというべきである。
そうすると、甲1考案において、景観を維持しつつ保守作業を不要とするために、上記周知の手段を採用し、芝を張る構成に代えて砕石を敷設する構成とすることにより、上記相違点に係る本件考案の構成を有するものとすることは、当業者がきわめて容易に為し得たことといえる。そして、上記相違点に係る構成を採用することにより奏される本件考案の明細書に記載の「地上に露出する部分のメンテナンスが不要で景観を良好に保つことができ、かつ、脱臭されたガスの大気への放出を阻害することがない」という効果も、甲第1号証に記載された技術的事項及び周知の事項から、当業者であれば予測し得る範囲内のものである。

(5)被請求人の主張の検討
被請求人は、上記「無効理由1に対する反論」における「本件考案の技術的思想」について、答弁書第4頁第7?10行及び第9頁第16?第10頁第2行、口頭審理陳述要領書第2頁第19?20行及び第4頁第24行?第5頁第16行並びに平成19年12月28日付け上申書第2頁第11?13行及び第3頁第8行?末行によれば、概ね「本件考案の技術的思想は、土壌を粒径2ミリメートル以上の細礫分とすることにより、土壌の圧密による通気性の阻害を防止することを可能とするという技術により開発した甲第1号証に記載の「バイオソイル」を、土壌脱臭装置の土壌とすることによって、脱臭土壌の圧密による通気阻害を防ぎ、かつ経年的に脱臭装置として機能を果たしながら、維持管理の省力化を図るために砕石を敷設することである」旨主張している。
しかしながら、本件の実用新案登録請求の範囲には、上記主張における「粒径2ミリメートル以上の細礫分」との事項は記載されておらず、本件考案の「土壌」は、被請求人の主張するような限定がなされたものでないばかりか、本件考案の明細書には「バイオソイル」について何ら記載もないから、被請求人の上記主張は、本件考案の構成に基づかないものである。
敢えて付言すれば、甲1考案は、土壌を「バイオソイル」としたものであるから、被請求人の主張する本件考案の技術的思想は、客観的にみると、甲1考案において土壌層の表面に砕石を敷設することに他ならない。また、甲第1号証には、記載事項(エ)によれば、甲1考案の「バイオソイル」は、従来の土壌脱臭装置において土壌が圧密して次第に通気性が悪くなり性能が低下するという短所を、通気性の向上によって改善したものであることが記載されているといえる。この記載を当業者が見れば、甲1考案において土壌層の表面に砕石を敷設しても、通気性を向上させた「バイオソイル」によって、砕石の重量による圧密を防ぐであろうことは、当然に予測し得たことといえるから、当業者が甲1考案において土壌層の表面に砕石を敷設することを妨げる格別の理由があったとはいえない。
そうすると、被請求人の無効理由1に対する反論は採用することができない。また、被請求人のその他の主張及び証拠方法並びに提出した被請求人参考資料をみても、上述した相違点についての判断を覆すだけの理由は見あたらない。

(6)まとめ
したがって、本件考案は、その出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された考案及び周知の事項に基いて、その出願前にその考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、本件の実用新案登録は、同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

5-2.無効理由2について
5-2-1.まず、審判請求書、口頭審理陳述要領書及び平成20年1月28日付け上申書における無効理由2についての請求人の主張を整理しておくと、

(1)実用新案法第3条第1項第1号の理由について
請求人は、「本件考案は、その出願前に公知となった甲第8号証に記載された考案と同一である」ことについて、審判請求書第12頁末行?第13頁第9行、口頭審理陳述要領書第11頁第20?23行及び第12頁第4行?第13頁第15行並びに上申書第6頁第1?13行によれば、概ね、次のことを主張する。
(a)甲第8号証は、平成7年5月12日に松山市に提出され、日本鋼管株式会社及び松山市の関係者に公然と提示されているのであるから、甲第8号証に記載された「雑草防止のために土壌脱臭床の表面に砕石を敷設する」という考案は、守秘義務のない日本鋼管株式会社及び松山市の担当者に実際に知られ、
(b)甲第8号証は、甲第15号証の1?10によれば、松山市に提出された後、秘密裡に扱われておらず公文書として何人も見うる状態に置かれていた。
(c)また、甲第8号証に係る検討に基づいて甲第9号証のプランター試験を依頼されたフジケン株式会社らも、甲第8号証に記載された考案を知っていた。

(2)実用新案法第3条第1項第2号の理由について
請求人は、「本件考案は、出願前に公然実施されたものである」ことについて、審判請求書第13頁第15?26行、口頭審理陳述要領書第2頁第12?17行及び上申書第5頁第8?15行によれば、概ね、次のことを主張する。
(d)甲第8号証に基づいて行われた平成7年の土壌表面のやり直し工事は、公的機関の発注による工事のメンテナンス工事であるから公然実施とみなされるべきものであり、甲第12号証に平成7年5月の西部浄化センターにおける本件考案と同一考案の実施が記載され、甲第13号証に被請求人が本件考案と同一の考案を出願時に既に2件実施したことが記載されており、
(e)本件考案は、甲第8号証に記載の松山市西部浄化センター内における既設土壌脱臭装置の改良工事に係る考案と同一であり、本件考案の出願前に公然実施された。
(f)また、甲第9号証は、甲第8号証に記載された本件考案と同一の考案に基づいて完成した考案の効果を確認するための発芽試験結果報告であり、この試験は出願前の平成7年9月から当初10日間、西部浄化センターで何人も見ることができる状態で行われており、
(g)本件考案は、甲第9号証に記載の松山市西部浄化センター内における雑草防止効果確認試験に係る考案と同一であり、本件考案の出願前に公然実施された。

さらに、口頭審理陳述要領書第15頁第13?20行及び第19頁第26?29行、上申書第9頁第10行?第10頁第8行によれば、概ね、次のことを主張する。
(h)西部浄化センターの敷地内は、甲第17号証の1及び2によれば、公園が整備されて散策路が設けられ、平成4年の運転開始時から一般市民が自由に出入り可能であり、甲第18号証によれば、公園の区画とその奥の土壌脱臭床がある区画とは近く、その間に特に仕切り等は設けられておらず、同じ広い道路沿いにあり、
(i)甲第14号証の4及び5の写真には、土壌脱臭装置の横に『特殊土壌脱臭装置』と書かれた説明プレートが写っており、この説明プレートは、平成4年に被請求人が当該土壌脱臭装置を施工した当時から現在までこの場所にあり、書かれた内容は明らかに一般人向けと思われ、土壌脱臭装置の設置場所は、平成4年当時から一般人に開放された場所であった。
(j)これらのことから、西部浄化センターの土壌脱臭床で行われた甲第8号証に係る考案及びこの土壌脱臭床の横で行われた甲第9号証に係る考案の実施は、誰でも見ることができた。

(3)実用新案法第37条第1項第5号の理由について
請求人は、「被請求人は当該考案の考案者ではなくかつ当該考案について実用新案登録を受ける権利を承継したものでもない」ことについて、審判請求書第12頁第6?11行及び第14頁第7?14行、口頭審理陳述要領書第21頁第2?20行、上申書第6頁第14?20行によれば、概ね、次のことを主張する。
(k)甲第8号証に記載された考案は、松山市西部浄化センターと日本鋼管株式会社、フジケン株式会社、株式会社都市テックなどの関係者間の検討の過程において考案されたものであり、その真の考案者は、甲第12号証からみれば、松山市担当者の矢野氏である。
(l)仮に、被請求人が、その検討に参加しており、本件考案の完成にある程度寄与したとしても、甲第9号証、甲第10号証及び甲第20号証からみれば、少なくとも被請求人の担当者のみが本件考案の考案者であったとは考えにくく、矢野氏又は他の関係者から実用新案登録を受ける権利を承継せずに被請求人が単独で出願したことは冒認に相当する。

5-2-2.実用新案法第3条第1項第1号について
甲第8号証には、その表紙に、右上欄外に手書きで「H7.5.12打合せ」と記載され、また、上段に「松山市殿」及び「西部処理場汚泥処理設備工事(機械設備) 土壌脱臭床芝枯れの対策について」、中段に「日本鋼管株式会社 水処理技術部 汚泥処理技術室」の「7.5.12」印、下段右欄の「作成年月日」に「H7.5.10」、下段左欄の「作成部署」に「水処理技術部」と記載されている。また、第1頁の「3.補修要領」に「3.1汚泥処理棟脱臭床(土壌面積84m^(2)) (1)対策 芝枯れ部分が多いため、既設芝を全面に撤去し、コケ及び雑草防止の目的で芝の代わりに砕石層を設けます。砕石層の厚みは、経年的な圧密、雑草の生え具合を把握するために5cmとします。」と記載されている。
これらの記載によれば、甲第8号証は、平成7年5月10日に日本鋼管株式会社の水処理技術部にて作成され、平成7年5月12日の打合せの資料とされたものといえ、「西部処理場汚泥処理設備の土壌脱臭床芝枯れの対策(補修)」として「汚泥処理棟脱臭床の既設芝を全面に撤去し、コケ及び雑草防止の目的で芝の代わりに砕石層を設け」ることが記載されたものといえる。また、甲第8号証は、甲第15号証の1?10によれば、松山市において閲覧及び公開されていることから、松山市に提出されたものといえる。
しかしながら、上記平成7年5月12日の打合せの出席者は不明であり、甲第8号証が、松山市に提出された時期は明らかではなく、提出された後、何人も見うる状態に置かれていたことに明確な根拠もない。しかも、本件考案の出願前に、甲第8号証が不特定の者に閲覧又は公開された事実を示す証拠はないことから、甲第8号証に記載された考案が、本件考案の出願前に、不特定の者により現実に知られたとはいえない。
また、請求人は「甲第9号証のプランター試験を依頼されたフジケン株式会社らも、甲第8号証に記載された考案を知っていた」(上記(c))旨主張しているが、甲第9号証の「土壌脱臭床表層材の発芽性試験」については、第3頁に「4)表層仕上材」の「品名」として「ヒメライト(頁岩ケーキ焼成セラミック材)」と記載されていることから、この「発芽性試験」はそもそも「ヒメライト」の試験であるので、この比較のための「表層仕上材として砕石チップを用いた試験」はあるとしても、甲第9号証のプランター試験が、甲第8号証に係る検討に基づくものであるという明確な根拠はなく、甲第8号証に記載された考案と関連したものであるとは認められないことから、この試験に参加した者が甲第8号証に記載された考案を認識したか疑わしい。
以上のことから、甲第8号証に、請求人の主張する「雑草防止のために土壌脱臭床の表面に砕石を敷設する」という考案が記載され、この土壌脱臭床について記載されている甲第5号証及び甲第6号証の土壌脱臭装置の図面を参酌すれば、たとえ、本件考案と同一の考案が記載されているといえるとしても、請求人の証拠方法によっては、甲第8号証に記載されている考案が、本件考案の出願前に、不特定の者により現実に知られたとまではいえないから、本件考案は、その出願前に日本国内において公然知られた考案であるとすることはできない。また、請求人のその他の証拠方法及び提出した請求人参考資料をみても、これを覆すだけの理由は見あたらない。

5-2-3.実用新案法第3条第1項第2号について
甲第8号証の「土壌脱臭床芝枯れの対策について」の工事が実施されたかどうかについてみておくと、甲第8号証には、実施について何ら記載がない。そこで、甲第12号証をみてみると、その別紙添付の資料1に、確認内容として「本件実用新案登録以前(平成7年5月)に本件の内容が含まれる工事内容に於いて、本件出願者が役所の工事担当者の詳細な指示(本件出願内容と同等)を受けて施工していたと言う内容です。」と記載され、「問い合わせ先」として「松山西部浄化センター 機械担当 矢野良樹」とあり、「工事件名 土壌脱臭床改修工事」及び「工事時期 平成7年5月」と記載されている。これをみると、「土壌脱臭床改修工事」が、被請求人により平成7年5月に行われたとみれるが、具体的な工事内容は不明であり、その後の請求人の松山市西部浄化センターにおける調査で「松山市西部浄化センター機械担当の矢野氏の発案で、高麗芝を取り除き、生コンを粒子状にして焼いた小石のようなものを充填した」(甲第14号証の1)との証言や、甲第8号証第1頁「4)小砕石敷設」の「7号砕石(3?5mm径)」の箇所に手書きで「10?12m/mに検討」と手書きで記載されていることから、実際に施工された工事内容は明らかでなく、また検討したとおり実施されたのかも不明である。なお、甲第13号証の「2件の施工例」については、これが松山市西部浄化センターにおける工事であるのかも含め、具体的な内容は明らかとはいえない。
してみると、甲第12号証の「土壌脱臭床改修工事」と甲第8号証の「土壌脱臭床芝枯れの対策について」の工事との直接的な繋がりを示す証拠はなく、時期的にみれば同時期であるものの、平成7年5月に甲第8号証に記載された内容の工事が行われたと断言できなく、甲第8号証に記載された考案が、本件考案の出願前に実施されたと認めることはできない。
また、請求人は、本件考案は、西部浄化センターで何人も見ることができる状態で行われていた甲第9号証に記載の雑草防止効果確認試験に係る考案と同一である(上記(f)及び(g))旨主張しているが、甲第9号証に記載の試験についても、これはプランター試験であり、具体的な脱臭床表面の施工とはいえない。これは、むしろ甲第14号証の1で記載されているように、機械工事担当の矢野氏の指示でいろんな試験をした中のものであるとみれる。してみると、甲第9号証の試験が本件考案と同じとみることはできない。
そうすると、請求人の証拠方法によっては、甲第8号証に記載された考案は、本件考案の出願前に実施されたとはいえず、甲第9号証に記載された考案は、本件考案と同一であるとはいえないから、本件考案は、その出願前に日本国内において公然実施をされた考案であるとすることはできない。また、請求人のその他の証拠方法及び提出した請求人参考資料をみても、これを覆すだけの理由は見あたらない。

5-2-4.実用新案法第37条第1項第5号について
甲第8号証は、その記載事項に照らせば「日本鋼管株式社水処理技術部」が作成したものであるから、他に事情がない限り、甲第8号証に記載の考案をした者が、松山市西部浄化センター機械担当の矢野氏であったとみることはできず、たとえ、甲第8号証に記載の考案をした者が、本件の実用新案登録出願の願書に記載された考案者以外の者であるとしても、その者が本件考案の真の考案者であるという明確な根拠はない。
また、甲第9号証には、第1頁目下部に「フジケンエンジニアリング株式会社」及び「株式会社都市テック」、第4頁目の「立合者」に「(株)荏原製作所」と記載され、甲第10号証の1右上欄には「フジケンエンジニアリング株式会社」と記載されていることから、土壌脱臭装置に関しては、フジケンエンジニアリング株式会社、株式会社都市テック及び株式会社荏原製作所も関与していた蓋然性は高いとみれるものの、土壌脱臭装置の図面が記載されている甲第5号証及び甲第6号証に被請求人である「株式会社ニチボー」との記載があること及び甲第12号証の記載事項からみれば、被請求人が土壌脱臭装置を施工し、その改修工事を行っていたとみれることを鑑みれば、本件考案に関してみる限り、本件の実用新案登録出願の願書に記載された考案者が、本件考案をした者でないとまではいえず、他に本件考案の真の考案者が特定できる証拠もないといえる。なお、甲第20号証が何を明らかにしようとするものか明確ではないが、甲第10号証との関係でいえば、時期的にずれがあり、かかる証拠で云々することはできない。
そうすると、請求人の証拠方法によっては、本件考案の真の考案者が、本件の実用新案登録出願の願書に記載された考案者以外の者であるとはいえず、被請求人が本件考案について実用新案登録を受ける権利を承継しないものであるとはいえないから、本件の実用新案登録が、考案者でない者であつてその考案について実用新案登録を受ける権利を承継しないものの実用新案登録出願に対してされたものであるとすることはできない。また、請求人のその他の証拠方法及び提出した請求人参考資料をみても、これを覆すだけの理由は見あたらない。

5-2-5.まとめ
したがって、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件考案は、実用新案法第3条第1項第1号及び第2号に該当し実用新案登録を受けることができないものであるとの理由は見当たらず、本件の実用新案登録は、同法第37条第1項第2号及び第5号に該当するとの理由も見当たらないから、無効理由2に理由はない。

6.むすび
以上のとおり、無効理由1には理由があるから、本件考案は、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、本件の実用新案登録は、同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、実用新案法第41条において準用する特許法第169条第2項の規定でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2008-03-04 
結審通知日 2008-03-07 
審決日 2008-03-18 
出願番号 実願平8-715 
審決分類 U 1 114・ 121- Z (B01D)
U 1 114・ 111- Z (B01D)
U 1 114・ 152- Z (B01D)
U 1 114・ 112- Z (B01D)
最終処分 成立  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 森 健一
大黒 浩之
登録日 1996-06-12 
登録番号 実用新案登録第3028134号(U3028134) 
考案の名称 土壌脱臭装置  
代理人 河原崎 弘  
代理人 河合 典子  
代理人 小島 高城郎  
代理人 松本 昭幸  
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