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審決分類 審判    A41C
管理番号 1180853
審判番号 無効2005-40009  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-11-11 
確定日 2008-06-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第3087144号「一体成型によるブラジャーの構造」の実用新案登録無効審判事件についてされた平成18年8月29日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成18年(行ケ)第10428号平成19年5月31日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第3087144号の請求項1ないし4に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
本件登録実用新案第3087144号は、平成14年1月8日(パリ条約による優先権主張平成13年1月10日、台湾)に出願され、平成14年4月24日に設定登録がなされたものである。
これに対し、レジーナ・ミラクル・インターナショナル・リミテッド(以下、「請求人」という。)より、平成17年11月11日付けで本件無効審判が請求され、平成18年8月29日に、「本件審判の請求は、成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」との審決がなされた。
請求人はこれを不服として、知的財産高等裁判所に審決の取消を求める出訴(平成18年(行ヶ)10428号)を提起し、同裁判所は、平成19年5月31日に、「特許庁が無効2005-40009号について平成18年8月29日にした審決を取り消す。」と判決し、この判決は確定し、本件無効審判が特許庁に差し戻された。
そこで、当審においてさらに審理を行い、平成19年8月24日付けで請求人から提出された上申書(以下「上申書」という。)をも踏まえ、平成19年10月25日付けで、この上申書を送付するとともに、無効理由を通知し、期間を指定して被請求人に意見を求めたが、期間を経過しても、被請求人からは何らの応答もなされなかった。

第2 本件登録考案
本件登録考案の請求項1ないし4に係る考案(以下それぞれ「本件登録考案1ないし4」という。)は、登録時の明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
外カップ層、内綿層、定型管、肩紐、背フックより構成される一体成型によるブラジャーの構造において、
一体成型されており、且つカップ部と背帯とを含む該外カップ層と、
一体成型であり、該外カップ層の外形に対応しており、カップ部及び背帯を含む該内綿層と、
該外カップ層と該内綿層との間のカップ部内側下縁に設けられている該定型管と、を含み、
高温でプレスされて一体成型された該外カップ層と内綿層とが緊密に貼合されていることを特徴とする一体成型によるブラジャーの構造。
【請求項2】
該外カップ層と内綿層の間のカップ部内側にはパットが設置されて胸部の張り出た感覚が強調されることを特徴とする請求項1記載の一体成型によるブラジャーの構造。
【請求項3】
高温によりプレスを経た後、該定型管個所の外カップ層及び内綿層間にはまだ貼合されていない欠け口が残されて、ワイヤが装入される個所が提供され、該ワイヤが装入された後には同様に高温でプレスされて該欠け口が貼合されることを特徴とする請求項1記載の一体成型によるブラジャーの構造。 【請求項4】
該型紐は高圧プレスによって該カップ部及び背帯一端上に貼合され、該背フックにおいては、高圧で背帯末端個所に貼合されていることを特徴とする請求項1記載の一体成型によるブラジャーの構造。」

第3 審判請求人の主張
請求人は、審判請求書及び上申書において、概略次のように主張している。
1.審判請求書における主張
(1)本件登録考案1?4は、それぞれ、下記(3)の証拠方法に挙げた、本願出願前に頒布された刊行物である甲第1、2号証に記載された考案であり、たとえ、若干の差異があるとしても、それらに記載された考案及び同甲第4号証の1ないし5、甲第5号証の1、2にみられるような周知技術に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。
したがって、本件登録考案1?4は、実用新案法第3条第1項第3号に規定する考案、または、実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録を受けることができない考案であるから、それら考案についての実用新案登録は、同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(2)本件登録考案1?4は、それぞれ、本件に係る出願の出願前の優先日前に出願され、本件出願後に出願公開された特願2000-401433号の願書に最初に添付された明細書及び図面(下記(3)の証拠方法における甲第3号証参照)に記載された発明と同一の考案であり、本件登録考案1?4は、実用新案法第3条の2の規定により実用新案登録を受けることができないものであるから、それら考案についての実用新案登録は実用新案法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(3)証拠方法
甲第1号証:特開平10-88405号公報
甲第2号証:特開2000-34604号公報
甲第3号証:特開2002-201505号公報
甲第4号証の1:実開昭54-54436号公報
甲第4号証の2:実開昭54-54437号公報
甲第4号証の3:登録実用新案第3023567号公報
甲第4号証の4:米国特許第3114374号明細書
甲第4号証の5:米国特許第5873768号明細書
甲第5号証の1:実公昭53-3867号公報
甲第5号証の2:実開昭62-44010号公報

2.上申書における主張
本件登録の請求項1ないし3に係る考案は、甲第15号証の6または甲第5号証の1に記載された考案、ならびに甲第16号証の1、甲第2号証、甲第16号証の2及び甲第16号証の4のいずれかに記載された考案に基づいてきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により登録を受けることができないものであり、この実用新案登録は実用新案法第37条第1項第2号の規定により、無効とすべきである。
本件実用新案の請求項4に係る考案は、甲第15号証の6または甲第5号証の1に記載された考案、ならびに甲第16号証の1、甲第2号証、甲第16号証の2及び甲第16号証の4のいずれかに記載された考案、ならびに甲第1号証に記載された考案に基づいてきわめて容易に考案できたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、この実用新案登録は実用新案法第37条第1項第2号の規定により、無効とすべきである。

(2)証拠方法
甲第15号証の6:特公昭39-18378号公報
甲第16号証の1:特開2000-273705号公報
甲第16号証の2:特許第2853091号明細書
甲第16号証の4:ドイツ実用新案公開DE29810765U1号明細 書及び同抄訳
甲第29号証:特許・実用新案審査基準第II部第2章1.5.2
(特許庁編/発明協会、2001年3月30日)写し
甲第30号証:原審決に対する審決取消訴訟に係る訴状(平成18年9月 21日付)写し
甲第31号証:同訴訟に係る準備書面(原告第1回)(平成19年1月9 日付)写し
甲第32号証:同訴訟に係る準備書面(原告第2回)(平成19年4月1 6日付)写し

第4 被請求人の主張
被請求人は、平成18年6月26日に提出した答弁書等において、概略次のように主張している。
なお、前述のように、平成19年10月25日付けで、被請求人に上申書を送付するとともに無効理由を通知したが、指定した期間内に被請求人からは何らの応答もなされなかった。
「本件登録考案1は、『一体成型されており、且つカップ部と背帯とを含む該外カップ層』と、『一体成型であり、該外カップ層の外形に対応しており、カップ部及び背帯を含む該内綿層』とを有するものであるから、それら2層がそれぞれ一体のものとして形作られており、『それらを高温でプレスされて一体成型された該外カップ層と内綿層とが緊密に貼合されていることを特徴とする一体成型によるブラジャーの構造』である。
さらに、『該外カップ層と該内綿層との間のカップ部内側下縁に設けられている該定型管』を含むものである。
これに対し、甲第1号証に記載される考案は、複数のサイド部分(2、3)からなり、それらを中央で結合するものであるから、『一体成型されており、且つカップ部と背帯とを含む該外カップ層』も、『一体成型であり、該外カップ層の外形に対応しており、カップ部及び背帯を含む該内綿層』を有するものではなく、さらに、『定型管』も有しておらず、本件各考案とは別異のものである。
甲第2号証に記載される考案においては、裏地と表地のいずれもが、本件登録考案1の外カップ層と内綿層とは異なるものであり、さらに、袋生地は、裏地背側下端と裁断片の間に設けられており、本件登録考案1の『該外カップ層と該内綿層との間のカップ部内側下縁に設けられている該定型管』を有しておらず、本件各考案とは別異のものである。
甲第1号証及び甲第2号証のブラジャーの構造は、本件各考案の構造とは異なったものであるから、それらを組み合わせても、本件各考案の構成とすることはできない。
また、甲第3号証に記載される接合エリアは、符号5a-5eで示されるエリアのみであり、本件各考案の構成である『外カップ層の外形に対応しており、カップ部及び背帯を含む該内綿層』を示すものではなく、『定型管』を有するものでもないので、本件各考案と、甲第3号証に係る出願の願書に最初に添付された明細書または図面に記載された発明とは別異のものである。」

第5 当審が通知した無効理由
当審が、平成19年10月25日付けで通知した無効理由は、概略次のとおりである。
1.本件登録考案1ないし4は、審判請求人が平成19年8月24日付けで提出した上申書第2頁下から6行?第44頁8行に記載された理由により、本願出願前に頒布された刊行物に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。
したがって、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない考案であり、実用新案法第37条第1項第2号の規定により、無効とすべきものである。
なお、上申書の上記記載において、甲第1号証?甲第16号証の4については、それそれ次のように読み替えるものとする。
甲第1号証:特開平10-88405号公報
甲第2号証:特開2000-34604号公報
甲第4号証の1:実願昭52-127778号
(実開昭54-54436号)のマイクロフィルム
甲第4号証の2:実願昭52-125608号
(実開昭54-54437号)のマイクロフィルム
甲第4号証の3:登録実用新案第3023567号公報
甲第4号証の4:米国特許第3114374号明細書及び同抄訳
甲第4号証の5:米国特許第5873768号明細書及び同抄訳
甲第5号証の1:実公昭53-3867号公報
甲第15号証の6:特公昭39-18378号公報
甲第16号証の1:特開2000-273705号公報
甲第16号証の2:特許第2853091号明細書
甲第16号証の4:ドイツ実用新案公開DE29810765U1号明細 書及び同抄訳

2.本件登録考案1ないし4は、それぞれ本願出願前に頒布された下記刊行物に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない考案である。
したがって、本件登録考案1ないし4は、実用新案法第37条第1項第2号の規定により、無効とすべきものである。

刊行物1:特開平10-88405号公報 (甲第1号証)
刊行物2:特公昭39-18378号公報(甲第15号証の6)
刊行物3;実公昭53-3867号公報(甲第5号証の1)

第6 当審の判断
1.引用刊行物に記載された考案
(1)甲第1号証考案
特開平10-88405号公報 (以下、「甲第1号証」という。)の段落【0009】?【0023】には、図面とともに次のように記載されている。
「【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、とりわけ、結合手段を必要とする連続した縫製工程いっさいをはぶくことのできる近代的な工場生産に適した女性用肌着、特に、ブラジャーを作ることを課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、上記の課題は、a)両サイド部分がそれぞれ、少なくとも一部は熱可塑的に溶融可能な繊維を含む繊維材からなる完全に平らな裁断片から成り立っていること、b)裁断片上に少なくともその外縁に沿って、少なくとも一部は熱可塑的に溶融可能な繊維を含む繊維材からなる補強部分がライニングされていること、c)サイド部分が、前中央部において、加熱手段によって作られた溶着継ぎ目によりおたがいに結合していること、d)背留め具の部材ならびに肩ひもが、加熱手段によって作られた溶着継ぎ目により直接あるいは間接にサイド部分と結合していることを特徴とするものである。
【0011】その他の請求項には、有利な実施形態が述べられている。従来の結合技術、特に縫製に比べ、本発明によるブラジャーは、糸およびそれに類似の結合手段をいっさい使わずに製造できるのみでなく、各部分の結合ならびに仕立てのための作業工程を実質的には点状に、即ちプレス、溶着等によりおこなえばよいだけである。
【0012】縫製によって生じる縫い目は非常に邪魔となり、伸びる動きをする場合に影響し、かさばることもあるが、このような縫い目がないことにより、本発明による新規なブラジャーでは着用性も改善されている。本発明によるブラジャーは、終端エッジならびに素材の移行部分が平らであるから、ピッタリした服を着ても浮き出ることがなく、ピッタリの服を身につける場合に理想的なものである。使われている材料の種類も少ないため、手入れも楽であり、リサイクルも簡単である。また、この製造方法では、必要なフィット性の再現の点でも改善されており、製造コストも比較的安価である。
【0013】
【発明の実施形態】次に、本発明の実施形態を添付の図面を用いて説明する。なお図面では、女性用肌着に関する本発明の例としてブラジャーをとりあげているが、本発明は、加工した上部部分を持つ衣服、例えば、水着等にも応用できる。
【0014】第1図では、本発明によるブラジャーを内側からみて表している。ブラジャー1は、前部の中心軸線Mに左右対称に形成され設けられているふたつのサイド部分2および3から成り立っている。サイド部分2および3は、それぞれモールディング(Molden)により成形されたカップ4および5を包含している。サイド部分2および3は、前部中心軸線Mの領域の一部分6でおたがいに結合されている。サイド部分2と3の背側の端部には背留め具7の掛け側と受け側が設けられている。肩ひも8は、サイド部分2と3の前上部領域にしてカップ4と5の上方部分9においては不動に固定されているが、背側部分10では調節要素11により形成されるバックル12で調節可能に支持されている。
【0015】サイド部分2と3はそれぞれ、その全面をおおう層13ならびに14から成っており、この層はある程度伸縮する、少なくとも一部は熱可塑的に溶融可能な糸を含む繊維材でできている。この基礎部分13と14には、内側から補強部分がはりつけてある。この補強部分全体をそれぞれ15と16で表す。この補強部分15、16は同様に伸縮する、少なくとも一部は熱可塑的に溶融可能な糸を含む繊維材でできているが、その伸縮の程度は、基礎部分13、14より小さい方が有利である。
【0016】図1に示すように、補強部分15、16は、ほぼ同じ幅でサイド部分2、3の外縁に沿ってベルト状に延びる枠状の裁断片で、エッジを補強し安定させる用を成す。即ち、下側の縁17に平行に延びる下側の部分18と、背側で下側の部分18に接続し、肩ひも8の方向に延びる部分19と、上部の縁20に沿って延びる部分21と、カップ4、5の上方に延びている部分22が補強と安定化の用を成している。補強部分15、16の下側の部分18は、ブラジャー1の下縁17から出てカップ4、5にまで入りこんでいる。つまりこの部分は乳房を支え、その輪郭を整えるための補強部23を作っている。
【0017】ここでは、背留め具と肩ひものついたブラジャーを例に述べているが、本発明はそれに限定されるものではない。背留め具の代わりに前留め具でもよいし、また、いわゆる「ステップ・イン・ブラ」という留め具無しのものでもよい。また肩ひもの無いブラジャーでもかまわない。また本発明はワンピース型水着にもビキニ型水着にも使用できる。
【0018】本発明によるブラジャーを製造するには、まず最初に両方のサイド部分2、3を製造する。それからこの両サイド部分を前中央部6で結合させ、最後に肩ひも8と留め具部分7をとりつける。
【0019】ブラジャー1のサイド部分2、3を製造するには、まず最初に、帯状のベースまたは粗裁断片(補強部分15、16を形成する繊維材)に、ベース13または14と結合させるための層をかぶせる。これは、「ホットメルト」接着剤層でもいいし、また、熱で活性化する薄いホイルでもよい。その後、この粗裁断片から、補強部分15、16の内側の輪郭にそった部分を打ち抜き、残った枠状の部分(外側の輪郭はまだ定めない)を、ベース13、14のための粗裁断片の上に広げる。熱と圧力を加え、補強部分15、16を含む粗裁断片を帯状ベースの粗裁断片13、14と結合させる。そしてその後に、カップ4、5をモールディングで形成し、外側輪郭を打ち抜く。その際、相応するふたつのサイド部分2、3を互いに合同の位置関係で重ね合わせることが有効である。
【0020】この下準備を終えてから、ブラジャーの仕立てが開始される。重ね合わせて打ち抜き、モールディングで形成されたサイド部分2、3を広げ、中心軸線Mの前中央部6で三角形の重なり部分23を作るように重ね、ここで溶着継ぎ目24によりしっかりと結合させる。これは、ただ一回のプレス・加熱工程により行われる。この結合部はまた、例えば花がらのモチーフで、見た目に魅力的に作り上げることもできる。
【0021】それから、背留め具7の部材と肩ひも8をとりつける。これは部分拡大図2と3で説明される。図2のAは、肩ひも8とブラジャー1の前中央部との固着部9を示すものである。通常伸縮性のある帯材からなる肩ひも8はかならず熱可塑的に溶融可能な繊維を含んでいるから、サイド部分2、3の対応する部分に重ねて、溶着継ぎ目25で互いに結合できる。背中側で肩ひも8を調節可能にとりつけるために、とりつけ部10に(図2B)、補強布を張りつけたサイド部分2、3の材料から舌片26を作り、この舌片を通し環27に通してから折り返す。舌片26は溶着継ぎ目25によりサイド部分2、3と溶着される。周知の方法で通し環27を通された肩ひもはループ12を形成する。
【0022】背留め具の各部分も同じようなやり方でとりつける(図3)。背留め具7は、掛け側部分7aと受け側部分7bから成り立つ。掛け側部分7aは留め具頭部7cを、受け側部分7bは穴7dを有する。両留め具部分7a、7bはそれぞれ通し環7eにつながる。ここでも、サイド部分2、3の端は舌片28となり、溶着継ぎ目29でサイド部分2、3と溶着するために、それぞれ通し環7eを通して後ろに折り返される。
【0023】その結果、本発明によるブラジャーの仕立てには、生産ラインに沿って進行し、結合手段を必要とする個々の縫製工程がいっさい不要である。つまり、簡単に機械により自動的に行われる単純な打ち抜き、プレス、溶着工程だけで製造される。」

上記記載及び各図面を総合すると、甲第1号証には、次の事項を確認することができる。
(a)ベース(13、14・・・基礎部分、粗裁断片、母材などとも記載されている)、補強部分(15、16)、肩紐(8)及び背留め具(7)が一体に結合され、ブラジャー構造を構成していること。
(b)【図1】において、ベース(13、14)は、カップ(4、5)となる部分と、背留め具(7)が先端に取り付けられる両側部分とが一体のものであり、この両側部分が装着者の背中に回される背帯を構成していること。
(c)補強部分(15、16)は、ベース(13、14)及び積層されてものであり、当然のことながら、ベース(13、14)の外形に対応しており、ベース(13、14)と同様にカップ(4、5)となる部分と背留め具(7)が先端に取り付けられる両側部分とを有し、これらが一体のものであること。
そして、これらカップ(4、5)が、溶着継ぎ目(24)により結合され、一体化されていること。
(d)ベース(13、14)と補強部分(15、16)とは、熱と圧力を加え、一体に結合され、カップ(4、5)がモールディングで形成されていること。

したがって、甲第1号証には次の考案(以下、「甲第1号証考案」という。)が記載されているものと認められる。
「ベース(13、14)、補強部分(15、16)、肩紐(8)及び背留め具(7)が一体に結合されたブラジャーの構造において、
カップ部(4、5)となる部分と、背留め具(7)が先端に取り付けられる両側部分とが一体のベース(13、14)と、
ベース(13、14)の外形に対応しており、カップ部(4、5)となる部分と背留め具(7)が先端に取り付けられる両側部分とが一体の補強部分(15、16)とを含み、
熱と圧力を加え、ベース(13、14)と補強部分(15、16)とが一体に結合され、カップ(4、5)がモールディングで形成されたブラジャーの構造。」

(2)甲第15号証の6考案
特公昭39-18378号公報(以下、「甲第15号証の6」という。)には、図面とともに次のように記載されている。
(a)「本発明に於ては、ブラジヤー本体の幾多の分割を全廃し、全体を無縫着の一布片からならしめることを以て、本発明の主眼とする。」(1頁右欄4?6行)
(b)「・・・本発明にあっては、前記した布質の布地を2枚合わせとしたことを以て特徴とする。」(第1頁右欄21?22行)
(c)「2枚合わせとした本体の周縁は、布質が熱可塑性のものであるので、熔着して一体をなさしめてもよく又は縫着なさしめてもよい。」(1頁右欄29?31行)
(d)「次にこの塗装のある布面の裏面からは、乳房状をなした突起状型を当てがい、表面からはこれに適合する凹面型をあてがい、両者又は一方の型を180?190℃に加熱に圧着をなさしめるものであることを特徴とする。これによつて扁平状布面であつた乳房布面も、熱可塑性であるので、型にならつて膨出しセツトされるので、弾性があり歪を生ずることがない椀状の突起が表面に向つて突出せしめられるに至るのである。」(第1頁右欄37?44行)
(e)「加熱圧着は、乳房部分の布面に対して行うものであるが、乳房布以外の布面に対しては、接着剤を使用しないで、単に加熱するだけで、布質が熱可塑性であるところから、セツトなさしめることが可能であつて、これによつて乳房布以外の布面にも弾性を与えるようにすることが可能である。この場合、乳房布部分の加熱圧着と、その余の部分の加熱セツトとを、一体をなす熱鈑によつて行い得るものである。」(2頁左欄19行?27行)
(f)「本体には前記したように、縫着部分が全然ない」(第2頁左欄最終行?右欄2行)
(g)「完全に熔着され、且つセットせしめられているので、洗濯にも堪え得るものである。」(第2頁右欄21行?23行)

以上の記載及び各図の図示内容を総合すると、甲第15号証の6には、次の考案(以下、「甲第15号証の6考案」という。)が記載されているものと認められる。
「表面の布面の層、裏面の布面の層、肩紐、背フックより構成され、全体を無縫着の一布片で構成したブラジャーの構造において、
表面の布面の層は一布片であり、且つ乳房部と胴脇布に相当する本体布面とを含んでおり、
裏面の布面の層は一布片であり、表面の布面の層の外形に対応しており、乳房部と胴脇布に相当する本体布面とを含んでおり、
2枚合わせとした本体の乳房布以外の布面については、完全に熔着することにより一体化し、乳房部分の布面については、乳房状の突起状型を当てがい、表面からはこれに適合する凹面型をあてがい、加熱して圧着して形成したブラジャーの構造。」

(3)甲第5号証の1考案
甲第5号証の1(実公昭53-3867号公報)には、図面とともに次のように記載されている。
(a)「従来のブラジャー等は膨出部を形成するため何枚もの生地を継ぎ合わせ・・・るなど多くの手数を必要としていた。」(1欄23?26行)
(b)「本考案は通気性を完全に備えると共に、膨出部形成と同時に表裏生地を一体に接着し、かつ保形に優れたシームレスなブラジヤー等の胸部を整容するカツプを有する胸部整容被服を提供せんとするものである。」 (第1欄31行?35行)
(c)「1は表裏一体の継目のない生地で、該生地1により第1図のブラジヤー・・・は形成されている。ところで生地1は第2図の実施例の場合は表地2と裏地3の間に熱可塑性樹脂よりなる網状物、毛状構造物、多数の孔4を穿設した多孔フィルム等の多孔性シート状物5よりなり表地1、多孔性シート状物5、裏地3を重ねたのち、加熱プレスにより3者を一体に接着すると共に膨出部6を成形し、同時に膨出部6以外の部分もシームレスに形成する。・・・膨出部6以外の部分としてはブラジャーの場合はカップ間から両脇に至る部分・・・である。」(第1欄最下行?第2欄17行)
(d)「表裏地の中間に熱可塑性樹脂の多孔性シート状物を介在させ、加熱プレスにより膨出部となるカップを成形するようにしているので、カップ部の表裏地は縫着することなしに表裏一体に接着される」(第3欄第3?8行)
(e)「合成繊維布帛よりなる表裏生地の間に熱可塑性樹脂の多孔性シートを介在させ、加熱プレスにより一体に接着すると同時に通気性を備えた膨出部となるカツプ部を成形してなる胸部を整容するカツプを有する胸部整容被服。」(実用新案登録請求の範囲の欄)

また第1図には、肩紐、背フックを有し、膨出部6よりなるカップ部及び背帯に至る部分が、継ぎ目なく一体的に形成されたブラジャーの表地1が示されており、第2図には、表地1に積層され、継目のない生地で、表地1に対応して、膨出部6よりなるカップ部と背帯とを含んでいる裏地3が示されている。

以上を総合すれば、甲第5号証の1には次の考案(以下、「甲第5号証の1考案」という。)が記載されているものと認められる。
「表地(2)、裏地(3)、肩紐、背フックより構成され、表裏生地が一体に接着されたシームレスなブラジャーの構造において、
表地(2)は継目のない生地で、膨出部(6)よりなるカップ部と背帯とを含んでおり、 裏地(3)は継目のない生地で、膨出部(6)よりなるカップと背帯とを含んでおり、
表地(2)と裏地(3)が加熱プレスされて一体に接着されているブラジャーの構造。」

2.本件登録考案1について
(1)本件登録考案1の技術的意義
本件明細書の考案の詳細な説明の欄には、次のように記載されている。
(a)「【考案の属する技術分野】
本考案は一体成型によるブラジャーの構造に係り、特に高温によるプレスを施して一体成型されることより、低コストで外観が美しく、また着け心地の良いブラジャーの構造に関わる。」(段落【0001】)。
(b)「【従来の技術】
現在ブラジャーは女性にとって胸を包む機能だけでなく、胸の形がよく見えること、また着け心地の良さ等が追求されている。
図6に示すような公知構造のブラジャー50においては、二つのカップ51の下方に下側部52を縫い付け、該下側部52の両側には背帯53を縫い付け、該背帯53には背フック531を縫い付け、更に肩紐54を縫い付けてブラジャー50がほぼ完成する。
このように、それぞれのパーツを縫い合わせることにより、公知構造のブラジャー50は、カップが立体的で円弧形を描いていることから胸を綺麗に見せると同時に、胸を理想の位置までアップさせる効果を提供している。」(段落【0002】)。
(c)【考案が解決しようとする課題】
しかし上述のような公知構造のブラジャーにおいては、それぞれのパーツを裁断してから、人手によって縫製されるのであり、縫製の過程においては左右の対称や位置などを注意深く縫い合わせなければならず、比較的難しい作業であることによりコストが必然的に高くなっている。またこのようなブラジャーの使用においては、縫い跡のために着け心地が悪かったり、糸がほつれ易くて寿命が短い等の欠点もある。
そこでこれらの欠点に鑑み、低コストで見た目に美しく、着け心地のよい本考案の一体成型によるブラジャーの構造を提供する。」(段落【0003)】。
(d)「【課題を解決するための手段】
カップ部及び背帯を含み一体成型で製造されている外カップ層と、カップ部と背帯とを含み形状が該外カップ層の外形に対応しており且つ一体成型で製造されている内綿層と、該外カップ層と内綿層との間のカップ部内側下縁個所に設けられた定型管、並びに背フックと一対の肩紐とより構成し、高温によりプレスを施して該外カップ層及び内面層を緊密に貼合し、該肩紐及び背フックを高圧でブラジャー上に貼合する。」(段落【0004】)。
(e)「【考案実施の形態】
図1、2に示すように、本考案は主に外カップ層11と内綿層12、定型管13、肩紐14及び背フック15より構成されている。
該外カップ層11は一体成型されており、カップ部111と背帯112を含み、該内綿層12は該外カップ層11の外形に対応するべく一体成型されており、カップ部121及び背帯122を含む。また該定型管13においてはゴム質の空洞管であり、該外カップ層11と内綿層12との間のカップ部111、121内側下縁個所に設けられている。更に該外カップ層11と内綿層12との間のカップ部111、121内側にはパット16が設けられ(図3、4参照)該カップ部111、121の突き出した感覚を強調している。
高温によるプレス処理が施されて、該外カップ層11と内綿層12が緊密に貼合し、該型紐14は高温によるプレス方式で該ブラジャー10のカップ部111、121及び背帯112、122の一端に貼合され、該背フック15は同様に高温によるプレスで該背帯112、122の末端個所に貼合される。」(段落【0005】)。
「図5に示すように、プレスを経て貼合された外カップ層11及び内綿層12の内、定型管13個所の外カップ層11及び内綿層12間には、貼合されていない欠け口131が残されており、ワイヤ132を装入する個所を提供しており、該ワイヤ132が装入された後の該欠け口131は更にプレスが施されて貼合され、該ワイヤ132が該欠け口13から出ないように加工される。」(段落【0006】)。
(f)「【考案の効果】
本考案によると、外カップ層及び内綿層は一体成型であるため、生産時には高温によるプレスで貼合させるだけでよく、公知構造のように複雑な縫製作業を行わなくともよいことで不良品の出る率が下がり、同時に人件費が省かれることからコストが下がり、また完成時には縫製の跡が見えなくて着け心地もよく、当然糸がほつれる心配もなく、見た目にも美しい製品が完成し、使用上の寿命も長くなり、更にゴム質の定型管を採用したことにより、ワイヤの硬い感触を好まない使用者にとって着け心地がよく、しかも該定型管にワイヤを装入して胸部を固定する機能を提供することもできるなど、多くの目的が一挙に達成された。」(段落【0007】)。

上記(a)?(f)の各記載によれば、従来、二つのカップ・下側部・背帯・肩紐等のパーツを縫い合わせてブラジャーを完成させていたが、左右の対称や位置などを注意深く縫い合わせる作業が比較的難しいためにコストが高くなり、また、縫い跡のために着け心地が悪かったり糸がほつれ易くて寿命が短い等の欠点があったところ、本件登録考案1は、これらの欠点に鑑み、低コストで見た目に美しく、着け心地のよいブラジャーの構造を提供する(段落【0001】?【0003】)もので、本件の請求項1に記載された構成を課題解決手段として(段落【0004】) 、生産時には、一体成型された外カップ層及び内綿層を高温によるプレスで貼合させるだけでよく、複雑な縫製作業を行わなくともよいことでコストが下がり、また完成時には縫製の跡が見えなくて着け心地もよく、当然糸がほつれる心配もなく、見た目にも美しい製品が完成し、使用上の寿命も長くなり、更にゴム質の定型管を採用すれば、ワイヤの硬い感触を好まない使用者にとって着け心地がよく、しかも該定型管にワイヤを装入して胸部を固定する機能を提供することもできるなどの効果を奏することをその技術的課題にしているものということができる。
したがって、本件登録考案1は、外カップ層の構造について、カップ部と背帯とが一体成型されたものであること、内綿層の構造について、カップ部と背帯とが外カップ層の外形に対応するように一体成型されたものであること、及び、これらの接合構造について、高温でプレスされて緊密に貼合されていることを要件としているから、「一体成型」については、各部材が複数の部材片に分かれるものではなく、左右等が「一体」であることを記載したものということができる。
しかし、本件の請求項1における「・・・を含み、高温でプレスされて一体成型された該外カップ層と内綿層とが緊密に貼合されていることを特徴とする」との文言は、一体成型された外カップ層と内綿層との接合構造が、高温でプレスされて緊密に貼合されていることを記載するにとどまり、これを超えて、外カップ層のカップ部が、高温プレスによる貼合の前にカップ状に成型されたものであるとか、内綿層が、貼合するだけでブラジャーとなる程度に外カップ層の外形に対応して成型されていることまで記載しているということはできず、「一体成型された外カップ層と内綿層」とが「高温でプレスされて「緊密に貼合され」ることでブラジャーとなることまで記載していると解することはできないというべきである。
このことは「一体成型」の一般的な意味内容について「成型」とは、一般に「形を作ること。形成(広辞苑第5版)を意味するものであるから、本件登録考案1の「一体成型」もかかる一般的な語義と同様に「一体」のものとしての形を作ることを意味すると解されるに止まることからも裏付けられる。
また、本件明細書の「【考案の効果】本考案によると、外カップ層及び内綿層は一体成型であるため、生産時には高温によるプレスで貼合させるだけでよく、…見た目にも美しい製品が完成し」(段落【0007】)との記載は、前記(f)(段落【0007】)の記載全体からみて、一体成型された外カップ層と内綿層とが高温プレスで貼合されることにより、従来必要とされた二つのカップ・下側部・背帯・肩紐等のパーツを縫い合わせる作業を不要としたことに基づく効果をいうものであることが明らかであるから、本件登録考案1が「一体成型された外カップ層と内綿層」とが「高温でプレスされて緊密に貼合され」ることでブラジャーとなることを記載していることの裏付けとなるものではない。
また、本件明細書には、左右の対称や位置などを注意深く縫い合わせる作業が比較的難しいためにコストが高くなることが従来技術の欠点として挙げられている(段落【0003】)。
しかし当該記載も「一体成型」の文言が、各部材が複数の部材片に分かれるものではなく左右等が「一体」であるという意味を有すると見ることと符合するとはいえるが、前記(c)(段落【0003】)の記載によれば、それを超えて、本件登録考案1が「一体成型された外カップ層と内綿層」とが「高温でプレスされて緊密に貼合され」ることでブラジャーとなることまで記載していることの裏付けとまでなるものとはいえない。
また、本件登録考案1の外カップ層が、貼合するだけでブラジャーとなる程度に、カップ部がカップ状に成型されていることについては、本件の請求項1にも、本件明細書の考案の詳細な説明にも何ら記載がなされていない。
かえって、図3をみると、外カップ層11のカップ部111、内綿層12のカップ部121がカップ状に成型された様子を示すものとはいえず、一見しただけでは、これらの部分は平面状にもみえるから、むしろ、貼合する際の高温プレスによってカップ状に成型されるものと解する余地もある。
また、図1をみると、内綿層12のカップ部121は、枠状部分の内側に形成された単なる空間のようにもみえることからすれば、外カップ層、内綿層の「カップ部」とは、カップとなることが予定される部分と解する余地もある。
したがって、本件の請求項1においては、外カップ層のカップ部が、高温プレスによる貼合の前にカップ状に成型されたものであるとか、内綿層が、「貼合するだけでブラジャーとなる程度に」外カップ層の外形に対応して成型されているということは、何ら特定されていないといわざるを得ず、本件登録考案1の各構成は、外カップ層の構造について、カップ部と背帯とが一体成型されたものであること、内綿層の構造について、カップ部と背帯とが外カップ層の外形に対応するように一体成型されたものであること、及び、これらの接合構造について、高温でプレスされて緊密に貼合されているものであることを特定するにとどまり、それ以上の事項は特定していないというほかない。
以上を前提に、本件登録考案1と、甲第1号証考案、甲第第15号証の6考案及び甲第5号証の1考案のそれぞれとを対比判断する。

(2)本件登録考案1及び甲第1号証考案との対比判断
本件登録考案1と甲第1号証考案とを対比すると、甲第1号証考案の「ベース(13、14)」は、その構造等からみて、本件登録考案1の「外カップ層」に相当し、以下同様に、「補強部分(15、16)」は「内綿層」に、「背留め具(7)」は「背フック」に、「カップ(4、5)となる部分」が「カップ部」に、それぞれ相当する。
そして、甲第1号証考案において、ベース(13、14)及び補強部分(15、16)は、少なくとも、カップ(4、5)となる部分と、背留め具(7)が先端に取り付けられる両側部分とが一体に形成されたものであり、モールディングによりカップ(4、5)が形成されるのであるから、ベース(13、14)及び補強部分(15、16)の、カップ(4、5)となる部分と、背留め具(7)が先端に取り付けられる両側部分とは、一体成形されたものということができる。
以上の検討から、甲第1号証考案において、「熱と圧力を加え、ベース(13、14)と補強部分(15、16)とが一体に結合され、カップ(4、5)がモールディングで形成」されていることは、その構造の観点からみれば、本件登録考案1において、「高温でプレスされて一体成型された該外カップ層と内綿層とが緊密に貼合されている」ことにほかならず、甲第1号証考案を全体でみれば、「ベース(13、14)、補強部分(15、16)、肩紐(8)及び背留め具(7)より構成される一体成形によるブラジャーの構造」であることは明白である。
したがって、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
〈一致点〉
「外カップ層、内綿層、肩紐、背フックより構成される一体成型によるブラジャーの構造において、
一体成型されており、且つカップ部と背帯とを含む該外カップ層と、
一体成型であり、該外カップ層の外形に対応しており、カップ部及び背帯を含む該内綿層と、を含み、
高温でプレスされて一体成型された該外カップ層と内綿層とが緊密に貼合されている、一体成型によるブラジャーの構造。」
〈相違点〉
本件登録考案1は、定型管を有し、この定型管が、外カップ層と内綿層との間のカップ部内側下縁に設けられているのに対し、甲第1号証考案においては、定型管が設けられているのか否か明確ではない点。

そこで、この相違点について検討すると、ブラジャーにおいて、定型管を設けることは、特開2000-34604号公報(以下、「甲第2号証」という。)、実願昭52-127778号(実開昭54-54436号)のマイクロフィルム、甲第4号証の2:実願昭52-125608号(実開昭54-54437号)のマイクロフィルム、登録実用新案第3023567号公報、米国特許第3114374号明細書、米国特許第5873768号明細書(以下、それぞれ、「甲第4号証の1?5)という。)、特開2000-273705号公報、特許第2853091号明細書、ドイツ実用新案公開DE29810765U1号明細書(以下、「甲第16号証の1、2及び4」という。)にみられるように、本願出願前より広く採用されている周知技術(以下、「定型管に係る周知技術」という。)であり、ブラジャーの構造、機能からみて、甲第1号証考案においても、当然に採用すべきものであって、当業者が格別の困難を伴うことなく、適宜採用し得ることである。
以上を総合すれば、本件登録考案1は、甲第1号証考案に上述した定型管に係る周知技術等を適用することにより、当業者がきわめて容易に考案し得たものである。

(3)本件登録考案1及び甲第15号証の6考案との対比判断
甲第15号証の6考案の「表面の布面の層」は、その構造等からみて、本件登録考案1の「外カップ層」に相当し、以下同様に、「裏面の布面の層」は「内綿層」に、「乳房部」は「カップ部」に、そして、「胴脇布」は「背帯」にそれぞれ相当する。
甲第15号証の6考案において、「表面の布面の層は一布片であり、且つ乳房部と胴脇布に相当する本体布面とを含んで」いることは、本件登録考案1において、「外カップ層」が「一体成型されており、且つカップ部と背帯とを含む」ことに相当し、同様に、「裏面の布面の層は一布片であり、表面の布面の層の外形に対応しており、乳房部と胴脇布に相当する本体布面とを含んで」いることは、「内綿層」が「一体成型であり、該外カップ層の外形に対応しており、カップ部及び背帯を含む」ことに相当する。
さらに、甲第15号証の6考案において、「2枚合わせとした本体の乳房布以外の布面については、完全に熔着することにより一体化」していることは、本件登録考案1において、「高温でプレスされて一体成型された該外カップ層と内綿層とが緊密に貼合されている」ことにほかならない。
したがって、甲第15号証の6考案も一体成型によるブラジャーの構造を備えているといえるから、本件登録考案1と甲第15号証の6考案とを対比すると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
〈一致点〉
「外カップ層、内綿層、肩紐、背フックより構成される一体成型によるブラジャーの構造において、
一体成型されており、且つカップ部と背帯とを含む該外カップ層と、
一体成型であり、該外カップ層の外形に対応しており、カップ部及び背帯を含む該内綿層と、を含み、
高温でプレスされて一体成型された該外カップ層と内綿層とが緊密に貼合されている、一体成型によるブラジャーの構造。」
〈相違点2〉
本件登録考案1は、定型管を有し、この定型管が、外カップ層と内綿層との間のカップ部内側下縁に設けられているのに対し、甲第15号証の6考案においては、定型管が設けられているのか否か明確ではない点。

相違点2は、すでに検討した相違点1にほかならず、本件登録考案1は、甲第15号証の6考案に上述した定型管に係る周知技術を適用することにより、当業者がきわめて容易に考案し得たものである。

(4)本件登録考案1及び甲第5号証の1考案との対比・判断
甲第5号証の1考案の「表地(2)」及び「裏地(3)」は、その構造等からみて、本件登録考案1の「外カップ層」及び「内綿層」にそれぞれ相当する。
甲第5号証の1考案において、「表地(2)は継目のない生地で、膨出部(6)よりなるカップ部と背帯とを含んで」いることは、本件登録考案1において、「外カップ層」が「一体成型されており、且つカップ部と背帯とを含む」ことに相当し、同様に、「裏地(3)は継目のない生地で、膨出部(6)よりなるカップと背帯とを含んで」いることは、「内綿層」が「一体成型であり、該外カップ層の外形に対応しており、カップ部及び背帯を含む」ことに相当する。
さらに、甲第5号証の1考案において、「表地(2)と裏地(3)が加熱プレスされて一体に接着されている」ことは、本件登録考案1において、「高温でプレスされて一体成型された該外カップ層と内綿層とが緊密に貼合されている」ことにほかならない。
したがって、本件登録考案1と甲第5号証の1考案とを対比すると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
〈一致点〉
「外カップ層、内綿層、肩紐、背フックより構成される一体成型によるブラジャーの構造において、
一体成型されており、且つカップ部と背帯とを含む該外カップ層と、
一体成型であり、該外カップ層の外形に対応しており、カップ部及び背帯を含む該内綿層と、を含み、
高温でプレスされて一体成型された該外カップ層と内綿層とが緊密に貼合されている、一体成型によるブラジャーの構造。」
〈相違点3〉
本件登録考案1は、定型管を有し、この定型管が、外カップ層と内綿層との間のカップ部内側下縁に設けられているのに対し、甲第5号証の1考案においては、定型管が設けられているのか否か明確ではない点。

相違点3は、すでに検討した相違点1にほかならず、本件登録考案1は、甲第5号証の1考案に上述した定型管に係る周知技術を適用することにより、当業者がきわめて容易に考案し得たものである。

(5)本件登録考案1についてのまとめ
以上のとおり、本件登録考案1は、甲第1号証考案、甲第15号証の6考案又は甲第5号証の1考案に、上述した定型管に係る周知技術を適用することにより、当業者がきわめて容易に考案し得たものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない考案である。

2.本件登録考案2について
本件の請求項2は、請求項1を引用し、「該外カップ層と内綿層の間のカップ部内側にはパットが設置されて胸部の張り出た感覚が強調されること」をさらに特定するものである。
しかしながら、ブラジャーにおいて、カップ部内側にはパットを設置されて胸部の張り出た感覚を強調することは、ブラジャーそもそもの機能からみて、例を挙げるまでもなく周知技術(以下、「パットに係る周知技術」という。)である。
したがって、前述のとおり、本件登録考案1が、甲第1号証考案、甲第15号証の6考案又は甲第5号証の1考案に、定型管に係る周知技術を適用することにより、当業者がきわめて容易に考案し得たものであるから、本件登録考案2も、甲第1号証考案、甲第15号証の6考案又は甲第5号証の1に、定型管に係る周知技術及びパットに係る周知技術を適用することにより、当業者がきわめて容易に考案し得たものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない考案である。

3.本件登録考案3について
本件の請求項3は、請求項1を引用し、「高温によりプレスを経た後、該定型管個所の外カップ層及び内綿層間にはまだ貼合されていない欠け口が残されて、ワイヤが装入される個所が提供され、該ワイヤが装入された後には同様に高温でプレスされて該欠け口が貼合されること」をさらに特定するものである。
そもそも実用新案法において、考案は物品の形状、構造又は組合せに係るものであるから、本件請求項3は、定型管(13)個所の外カップ層(11)及び内綿層(12)間に、欠け口(131)を通してワイヤ(132)が挿入配置されていること、そして、その欠け口(131)が高温でプレスされて貼合されるという、ブラジャーの構造を特定するものと解すべきである。
しかしながら、定型管に係る周知技術を示す刊行物の例として挙げた甲第2号証の段落【0024】、【00025】、【0030】)には、図面とともに次のように記載されている。
(a)「【0024】まず、パッド部材16における裁断片16a、16b、16cの組み立て、及び裏地20における裁断片25a?25cの組み立てを、各別的又は互いに同体的に縫着(接合)によって行う(図2の矢符B、Cを参照)。また、パッド部材16とパッド部材17との結合、及び裏地20における裁断片25a?25cと裁断片25dとの接合を行うにあたり、これらの接合間へ下回りワイヤ6を挿通させるための袋生地27(図3参照)を配置し、この袋生地27ごと、三者同体的に縫着(接合)によって行う(図2の矢符D、Eを参照)。
【0025】なお、袋生地27は、図示したように裏地20の裏側へ位置付けてもよいし、図示は省略するが裏地20の表側(表生地15との間)へ位置付けてもよい。この袋生地27については、下回りワイヤ6の膨出向きが表側となるように、表面側27aでの余裕(撓み量)を大きく、裏面側27bの余裕を無くした状態にしておく。これにより、この袋生地27内へ下回りワイヤ6を挿入したときに、下回りワイヤ6による膨出向きが表側となり、裏側(即ち、肌側)へは膨出が無いか又は少なく抑えられる。」
(b)「【0030】また、接合手段は縫着が有利であるが、接着、テープ接合等であっても良い。更に、表地の上下縁の折返し部位の一方は縫着で他方は接着であっても良く、上下縁の少なくとも一方を裏側に折返してその折返し部位を裏側から接合手段にて接合したものでも良い。本発明は、肩紐を設けないタイプ(ストラップレス)のブラジャーとして実施したり、コースレット、ゲピエール、ボディスーツ等におけるブラジャー部として実施したりすることも可能である。」

してみると、甲第2号証は、「表地(15)と裏地(20)との間にパット部材(16)及び下回りワイヤ(6)を挿通させるための袋生地(27)を配置し、これらを接合したブラジャーの構造。」を示しているものということができ、前述のように、定型管に係る周知技術を適用するに当たり、定型管を挿通させる袋生地を設け、挿入後にその欠け口を閉塞する程度のことは、製品としてのブラジャーの構造からみて、当業者が当然に採用し得ることである。
したがって、前述のとおり、本件登録考案1が、甲第1号証考案、甲第15号証の6考案又は甲第5号証の1考案に、定型管に係る周知技術及び甲第2号証考案を適用することにより、当業者がきわめて容易に考案し得たものであるから、本件登録考案3も、同様の理由により当業者がきわめて容易に考案し得たものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない考案である。

4.本件登録考案4について
本件の請求項4は、請求項1を引用し、「該型紐は高圧プレスによって該カップ部及び背帯一端上に貼合され、該背フックにおいては、高圧で背帯末端個所に貼合されていること」をさらに特定するものである。
しかしながら、甲第1号証には、肩ひもを熱可塑的に溶着することが示唆されており(段落【0021】参照のこと)、高圧で貼合する程度のことは、強度等を勘案することにより、当業者が適宜採用し得ることである。
前述のとおり、本件登録考案1が、甲第1号証考案、甲第15号証の6考案又は甲第5号証の1考案に、定型管に係る周知技術を適用することにより、当業者がきわめて容易に考案し得たものであるから、本件登録考案3も、同様の理由により当業者がきわめて容易に考案し得たものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない考案である。

第7 むすび
以上のとおり、本件登録考案1ないし4の各考案は、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない考案であり、本件登録考案1ないし4についての実用新案登録は、実用新案法第37条第1項第2号の規定により、無効とすべきものである。
また、審判に関する費用の負担については、実用新案法第41条で準用する特許法第169条第2項の規定において、さらに準用する民事訴訟法第61条の規定により被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する
審理終結日 2008-01-15 
結審通知日 2008-01-17 
審決日 2006-08-29 
出願番号 実願2002-20(U2002-20) 
審決分類 U 1 114・ 121- Z (A41C)
最終処分 成立  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 寺本 光生
関 信之
登録日 2002-04-24 
登録番号 実用新案登録第3087144号(U3087144) 
考案の名称 一体成型によるブラジャーの構造  
代理人 小林 武彦  
代理人 竹本 松司  
代理人 阿部 和夫  
代理人 手島 直彦  
代理人 魚住 高博  
代理人 湯田 浩一  
代理人 新開 正史  
代理人 杉山 秀雄  
代理人 谷 義一  
代理人 窪田 郁大  
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