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審決分類 審判 全部無効   G03B
審判 全部無効   G03B
管理番号 1180856
審判番号 無効2007-800183  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-08-29 
確定日 2008-05-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第2598506号実用新案「原稿圧着板開閉装置」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
本件実用新案登録第2598506号の請求項1ないし3に係る考案についての出願は、平成5年4月27日に実用新案登録出願され、平成11年1月18日付けで手続補正がなされたのち、同年6月11日にその請求項1ないし3に係る考案について実用新案権の設定の登録がなされた。
これに対して、請求人である下西技研工業株式会社より、平成19年8月29日に本件実用新案登録無効審判に係る審判請求書が提出された。
そして、被請求人である加藤電機株式会社より、平成19年11月26日付けで答弁書が提出された。
さらに、平成20年3月11日に口頭審理が行われ、同日付けで被請求人より、口頭審理陳述要領書が提出された。

2.本件考案
本件実用新案登録第2598506号の請求項1ないし3に係る考案は、実用新案登録明細書及び図面(以下、「登録明細書等」という。)の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次のとおりのものと認める。

「【請求項1】 装置本体側に取り付けられる取付部材と、この取付部材の両側板に回動可能にその両側板の一端部側をヒンジピンを介して軸着させた支持部材と、この支持部材と重なり合い該支持部材の自由端側の両側板へ該支持部材とは反対方向へ回動するようにその両側板を支持ピンを介して軸着させたところの原稿圧着板の後部を取り付けるリフト部材と、このリフト部材の前記支持部材に対する軸着部側であって前記リフト部材の回動時に前記支持ピンを支点に旋回する位置の両側板間に取り付けられた作動部材と、この作動部材と前記取付部材側の前記支持部材の軸着位置とは異なる位置との間に前記支持部材を前記原稿圧着板の開成方向へ附勢させ、かつ該原稿圧着板を取り付けた前記リフト部材を自己の弾力のみで前記支持部材と重なり合う方向へ附勢保持するように弾設した圧縮コイルスプリングとで構成すると共に、前記支持部材の両側板には前記リフト部材が前記支持ピンを支点として回動する時に、前記作動部材の旋回を許容する切欠を設けたことを特徴とする、原稿圧着板開閉装置。」(以下、「本件考案1」という。)

「【請求項2】 前記圧縮コイルスプリングを前記リフト部材側と取付部材側との間に弾設するに当り、前記圧縮コイルスプリングの両端部に支持部材に摺動自在に拘持される一対のスライダーを取り付け、このスライダーの一方を前記リフト部材の前記作動部材側へ当接させ、他方を取付部材に固着したカム部材へ当接させたことを特徴とする、請求項1記載の原稿圧着板開閉装置。」(以下、「本件考案2」という。)

「【請求項3】 前記圧縮コイルスプリングを前記リフト部材側と取付部材側との間に弾設するに当り、前記圧縮コイルスプリングの前記リフト部材の作動部材側にスライダーを取り付けると共に、前記圧縮コイルスプリングの前記取付部材側を該取付部材に軸着させたバネ受部材に支持させたことを特徴とする、請求項1記載の原稿圧着板開閉装置。」(以下、「本件考案3」という。)

なお、請求項2において、上記下線を引いた箇所に記載された「圧縮スプリング」は、「圧縮コイルスプリング」の誤記と認められるので、請求項2に係る考案を上記のとおり認定した。

3.請求人の主張の概要および証拠方法
請求人は、「実用新案登録第2598506号考案の請求項1、請求項2および請求項3に係る考案についての実用新案登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、」との審決を求め、その理由として、本件実用新案登録第2598506号の請求項1ないし3に係る考案は、平成11年1月18日付けの手続補正書において補正されたものであり、その補正は明細書の要旨を変更するものであり、旧実用新案法第9条第1項により準用される旧特許法第40条の規定により本件実用新案登録の出願日は、前記手続補正書の提出日である平成11年1月18日に繰り下がることになり、本件実用新案登録第2598506号の請求項1ないし3に係る考案は、繰り下がった上記出願日前に頒布された甲第1号証(実願平5-27998号(実開平6-82649号)の願書に添付した明細書および図面の内容を記録したCD-ROM)に記載された考案であり、本件実用新案登録第2598506号の請求項1ないし3に係る考案は、実用新案法第3条第1項第3号の規定により実用新案登録を受けることができないものであるから、本件実用新案登録第2598506号の請求項1ないし3に係る考案は、実用新案法第37条第1項第2号の規定により無効にされるべきである、と主張し、以下の証拠方法を提出している。

甲第1号証 実願平5-27998号(実開平6-82649号)の
願書に添付した明細書および図面の内容を記録したCD
-ROM
甲第2号証 平成11年1月18日付けの手続補正書

4.被請求人の主張の概要
被請求人は、「請求人の主張は理由がない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、その理由として、「『作動ピン』を『作動部材』とすること、『軸架』を『取り付けられる』とする程度のことは、出願当初の明細書に記載した範囲内のことであって、考案の構成に関する技術的事項を変更するものではなく、要旨変更に当たらないものである。」と主張している。

5.平成11年1月18日付けの手続補正の概要
平成11年1月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)の明細書の全文を補正するものであって、実用新案登録請求の範囲についての、

「【請求項1】 装置本体側に取り付けられる取付部材と、この取付部材に回動自在に端部を軸着させた支持部材と、この支持部材の自由端側に回動自在に軸着させたところの原稿圧着板の後部を取り付けるリフト部材と、このリフト部材の軸着位置とは異なる部分と前記取付部材との間に弾設させたスプリングとで構成したことを特徴とする、原稿圧着板開閉装置。
【請求項2】 前記スプリングを前記リフト部材と取付部材との間に弾設するに当り、前記スプリングの両端部に支持部材に摺動自在に支持されるスライダーを取り付け、このスライダーの一方を前記リフト部材に当接させ、他方を取付部材に固着したカム部材へ当接させたことを特徴とする、請求項1記載の原稿圧着板開閉装置。
【請求項3】 前記スプリングを前記リフト部材と取付部材との間に弾設するに当り、前記スプリングのリフト部材側にスライダーを取り付けると共に、前記スプリングの前記取付部材側を該取付部材に軸着させたバネ受部材に支持させたことを特徴とする、請求項1記載の原稿圧着板開閉装置。」

の記載を、

「【請求項1】 装置本体側に取り付けられる取付部材と、この取付部材の両側板に回動可能にその両側板の一端部側をヒンジピンを介して軸着させた支持部材と、この支持部材と重なり合い該支持部材の自由端側の両側板へ該支持部材とは反対方向へ回動するようにその両側板を支持ピンを介して軸着させたところの原稿圧着板の後部を取り付けるリフト部材と、このリフト部材の前記支持部材に対する軸着部側であって前記リフト部材の回動時に前記支持ピンを支点に旋回する位置の両側板間に取り付けられた作動部材と、この作動部材と前記取付部材側の前記支持部材の軸着位置とは異なる位置との間に前記支持部材を前記原稿圧着板の開成方向へ附勢させ、かつ該原稿圧着板を取り付けた前記リフト部材を自己の弾力のみで前記支持部材と重なり合う方向へ附勢保持するように弾設した圧縮コイルスプリングとで構成すると共に、前記支持部材の両側板には前記リフト部材が前記支持ピンを支点として回動する時に、前記作動部材の旋回を許容する切欠を設けたことを特徴とする、原稿圧着板開閉装置。
【請求項2】 前記圧縮スプリングを前記リフト部材側と取付部材側との間に弾設するに当り、前記圧縮コイルスプリングの両端部に支持部材に摺動自在に拘持される一対のスライダーを取り付け、このスライダーの一方を前記リフト部材の前記作動部材側へ当接させ、他方を取付部材に固着したカム部材へ当接させたことを特徴とする、請求項1記載の原稿圧着板開閉装置。
【請求項3】 前記圧縮コイルスプリングを前記リフト部材側と取付部材側との間に弾設するに当り、前記圧縮コイルスプリングの前記リフト部材の作動部材側にスライダーを取り付けると共に、前記圧縮コイルスプリングの前記取付部材側を該取付部材に軸着させたバネ受部材に支持させたことを特徴とする、請求項1記載の原稿圧着板開閉装置。」

と補正し(以下、「補正a」という。)、考案の詳細な説明の段落【0006】および段落【0007】についての、

「【0006】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成するためにこの考案は、装置本体側に取り付けられる取付部材と、この取付部材に回動自在に端部を軸着させた支持部材と、この支持部材の自由端側に回動自在に軸着させたところの原稿圧着板の後部を取り付けるリフト部材と、このリフト部材の軸着位置とは異なる部分と前記取付部材との間に弾設させたスプリングとで構成したものである。
【0007】
その際にこの考案は、前記スプリングを前記リフト部材と取付部材との間に弾設するに当り、前記スプリングの両端部に支持部材に支持されるスライダーを取り付け、このスライダーの一方を前記リフト部材に当接させ、他方を取付部材に固着したカム部材へ当接させたり、或は前記スプリングのリフト部材側にスライダーを取り付けると共に、前記スプリングの前記取付部材側を該取付部材に軸着させたバネ受部材に支持させたりすることができる。」

の記載を、

「【0006】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成するためにこの考案は、装置本体側に取り付けられる取付部材と、この取付部材の両側板に回動可能にその両側板の一端部側をヒンジピンを介して軸着させた支持部材と、この支持部材の自由端側の両側板の外側へ該支持部材と重なり合い該支持部材とは反対方向へ回動するようにその両側板を支持ピンを介して軸着させたところの原稿圧着板の後部を取り付けるリフト部材と、このリフト部材の前記支持部材に対する軸着部側であって前記リフト部材の回動時に前記支持ピンを支点に旋回する位置の両側板間に取り付けられた作動部材と軸架された作動部材と、この作動ピンと前記取付部材の側の前記支持部材の軸着位置とは異なる位置との間に前記支持部材を前記原稿圧着板の開成方向へ附勢させ、かつ原稿圧着板を取り付けた前記リフト部材を自己の弾力のみで前記支持部材と重なり合う方向へ附勢保持するように弾設した圧縮コイルスプリングとで構成すると共に、前記支持部材の両側板には前記リフト部材が前記支持ピンを支点として回動する時に、前記作動部材の旋回を許容する切欠を設けたことを特徴とする。
その際にこの考案は、前記圧縮スプリングを前記リフト部材側と取付部材側との間に弾設するに当り、前記圧縮コイルスプリングの両端部に支持部材に摺動自在に拘持される一対のスライダーを取り付け、このスライダーの一方を前記リフト部材の前記作動部材側へ当接させ、他方を取付部材に固着したカム部材へ当接させたことを特徴とする。
さらに、この考案は、前記圧縮コイルスプリングを前記リフト部材側と取付部材側との間に弾設するに当り、前記圧縮コイルスプリングのリフト部材の作動部材側にスライダーを取り付けると共に、前記圧縮コイルスプリングの前記取付部材側を該取付部材に軸着させたバネ受部材に支持させたことを特徴とする。」

と補正し(以下、「補正b」という。)、考案の詳細な説明の段落【0011】についての、

「【0011】
支持部材5の両側板5a、5aの自由端側には、両側に取付板9a、9aを突設させたリフト部材9がその両側板9b、9bの一側部を支持ピン10を介して回動自在に軸着させている。このリフト部材9の両側板9b、9bの支持ピン10による支持部材5の軸着個所とは異なる位置に作動ピン11が軸架されている。リフト部材9の取付板9a、9aには原稿圧着板2の取付部2a、2aが固着されている。」

の記載を、

「【0010】
支持部材5の両側板5a、5aの自由端側には、その両側板5a,5aの外側に位置して、両側に取付板9a、9aを突設させたリフト部材9が、その両側板9b、9bの一端部側を支持ピン10を介して支持部材5に重なり合う方向へ回動自在に軸着させている。このリフト部材9の両側板9b、9bの支持ピン10による支持部材5の軸着個所とは異なる位置に作動部材11が軸架されている。リフト部材9の取付板9a、9aには原稿圧着板2の取付部2a、2aが固着されている。」

と補正し(以下、「補正c」という。)、考案の詳細な説明の段落【0012】についての、

「【0012】
12、12は圧縮コイルスプリングであり、この圧縮コイルスプリング12、12は支持部材5の抱持部5c、5cに摺動自在に拘持された一対の筒形のスライダー13、14内に収納され、このスライダー13、14を介してリフト部材9側の作動ピン11と取付部材4側のカム部材8との間に弾設されている。尚、15はカム部材8側のスライダー14に対するストッパーピンである。」

の記載を、

「【0011】
12、12は圧縮コイルスプリングであり、この圧縮コイルスプリング12、12は支持部材5の抱持部5c、5cに摺動自在に拘持された一対の筒形のスライダー13、14内に収納され、このスライダー13、14を介してリフト部材9側の作動部材11と取付部材4側のカム部材8との間に弾設されている。尚、15はカム部材8側のスライダー14に対するストッパーピンである。」

と補正し(以下、「補正d」という。)、考案の詳細な説明の段落【0013】についての、

「【0013】
したがって、原稿が紙のように薄い薄物原稿の場合には、原稿圧着板2はリフト部材9と取付部材4の間に弾設した圧縮コイルスプリング12、12の弾力によって開閉動作の全行程に渡って反転することなく操作され、カム部材8に当接するスライダー14によって所定の開成角度で安定的に停止保持される。原稿が本のように厚い厚物原稿の場合には、原稿圧着板2を厚物原稿へ当てがい、手前側を若干強く下押しすることによって作動ピン11が圧縮コイルスプリング12、12を押圧し、その弾力に抗してリフト部材9が反転し、図1の想像線と図5に実線で示したように原稿圧着板2で該厚物原稿16の上部を覆うことができるものである。その際、作動ピン11は支持部材5の両側板5a、5aに設けた切欠5b、5b内へ嵌り込み、リフト部材9の反転を可能にする。厚物原稿16を取り去ると、圧縮コイルスプリング12、12の弾力によりリフト部材9を介して原稿圧着板2は自動的に回転して元位置に戻って支持部材5と重なり合う。」

の記載を、

「【0012】
したがって、原稿が紙のように薄い薄物原稿の場合には、原稿圧着板2はリフト部材9と取付部材4の間に弾設した圧縮コイルスプリング12、12の弾力によって開閉動作の全行程に渡って反転することなく操作され、カム部材8に当接するスライダー14とリフト部材9を介して支持部材5に作用している圧縮コイルスプリング12,12の弾力によって所定の開成角度で安定的に停止保持される。原稿が本のような厚物原稿の場合には、原稿圧着板2を閉じてその一部を厚物原稿へ当てがい、手前側を若干強く下押しすることによって作動ピン11が圧縮コイルスプリング12、12を押圧し、その弾力に抗してリフト部材9が反転し、図1の想像線と図5に実線で示したように原稿圧着板2で該厚物原稿16の上部を略平行に覆うことができるものである。その際、作動部材11は支持部材5の両側板5a、5aに設けた切欠5b、5b内へ嵌り込み、リフト部材9の反転を可能にする。原稿圧着板2に対する押圧力を解くと、圧縮コイルスプリング12、12の弾力によりリフト部材9を介して原稿圧着板2は自動的に回転して元位置に戻って支持部材5と重なり合う。」

と補正する(以下、「補正e」という。)ことを含むものである。

6.当審の判断
請求人は、本件補正が、明細書の要旨を変更することを前提として、本件考案1ないし3は、本願出願前に頒布された甲第1号証に記載された考案である旨主張するので、本件補正が明細書の要旨を変更するか否かについて検討する。

6.1 本件補正についての請求人の主張
請求人は、審判請求書において、

「d)本補正の要旨変更の判断
d-1) そこで、上記補正内容を検討するに、上記補正に係る「作動部材」および「取り付けられた」の語句は、当初明細書には、何ら具体的に記載されておらず、また、それらの語句を示唆する記載も見あたらない。
d-2) 当初明細書の語句「作動ピン」の「ピン」は、広辞苑(第4版)によれば「機械部分を固定するために穴に差し通す細い棒」という意味であり、
また、当初明細書の語句「軸架された」の「軸架」とは、広辞苑にはないが、「軸」とは、広辞苑によれば「物の支えとなるような棒状の部分」であり、上記用語の「ピン」(細い棒)とほぼ同じ意味の用語であり、「架」とは、広辞苑によれば「かけわたすこと」の意味であることから、「物の支えとなるような棒状の部分(ピン)の両端が(リフト部材の両側板)に取り付けられて、かけわたされる」の意味に解するのが妥当である。
d-3)当初明細書記載の自明の範囲
ところで、上記審査基準によれば、「補正は、当初明細書の記載およびそれから自明の事項の範囲内でなければならない。」とされている。
そこで、当初明細書の記載から自明の事項の範囲について考察すると、当初明細書に「作動ピン11」および「軸架され」の文言しか記載されていないことから、当初明細書の語句「リフト部材の両側板に軸架された作動ピン」をせいぜい広く解釈しても、「両端をリフト部材の両側板に架け渡すように取り付けられた細い棒」とするのが、補正が許される自明の事項の範囲内である。
d-4)補正の範囲
一方、上記補正に係る語句「作動部材」の「部材」とは、広辞苑によれば「建築などで構造の部分をなす材。構成材。」という意味であるが、本件明細書においても「取付部材」、「支持部材」、「リフト部材」などと、「原稿圧着板開閉装置の部分をなす構成材」の意味で使用されることは明らかである。
語句「部材」を意味する「構成材」は、上記語句「ピン」を意味する「細い棒」を含む広い概念であることは明らかであるので、補正に係る語句「作動部材」は、当初明細書の語句「作動ピン」の概念を超える極めて広い概念であり、いずれの範囲まで適用可能かについて手がかりを全く把握できない不当に広い概念である。
また、補正に係る語句「取り付けられ」とは、広辞苑によれば「設置されること・装置されること」の意味である。
上記語句「設置されること」は、上記語句「かけわたされる」の概念を超える広い概念であることは明らかであり、いずれの範囲まで適用可能かについて手がかりが全く把握できない不当に広い概念である。
d-5)自明の事項の範囲を超える補正
本補正は、自明の事項の範囲の上記「両端をリフト部材の両側板に架け渡すように取り付けられた細い棒」の意味を超える、他の部材「細い棒でないもの」や、他の取付け態様「細い棒の両端をリフト部材の両側板に架け渡すように取り付けない取付け」を含み得る内容となっている。
d-6)要旨変更の判断
従って、構成が当初明細書の記載および自明の事項の範囲内でなければならないところ、当初明細書の記載「軸架された作動ピン」や「作動ピン」を「取り付けられた作動部材」や「作動部材」と補正することにより、上記自明の事項の範囲である「両端がリフト部材の両側板に架け渡すように取り付けられた細い棒」以外の技術内容を含み得るようにすることは、明細書の要旨を変更するものである。なお、補正事項が、同じ目的・効果を奏するとしても、これが無制限に許されるわけではなく、考案の構成が自明の事項の範囲を逸脱する補正は、要旨を変更するものと、判断せざるを得ない。」

と主張する。

6.2 本件補正についての当審の判断
前記補正aないしeに含まれる、当初明細書等に記載された「作動ピン」を「作動部材」とする補正(以下、「補正事項1」という。)、および、上記補正aおよびbに含まれる、当初明細書等に記載された「(作動ピン11が)軸架されている」を「取り付けられた(作動部材)」とする補正(以下、「補正事項2」という。)について検討する。

6.2.1 当初明細書等の記載事項
当初明細書等には、次の記載がある。

・記載事項1
「【0005】
この考案の目的は、簡単な構造で必要時にリフト部材による原稿圧着板のリフトを可能にし、その上原稿圧着板にガタの生じない安定した開閉操作を行うことができるように成したリフト機能付きの原稿圧着板開閉装置を提供せんとするにある。」

・記載事項2
「【0006】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成するためにこの考案は、装置本体側に取り付けられる取付部材と、この取付部材に回動自在に端部を軸着させた支持部材と、この支持部材の自由端側に回動自在に軸着させたところの原稿圧着板の後部を取り付けるリフト部材と、このリフト部材の軸着位置とは異なる部分と前記取付部材との間に弾設させたスプリングとで構成したものである。
【0007】
その際にこの考案は、前記スプリングを前記リフト部材と取付部材との間に弾設するに当り、前記スプリングの両端部に支持部材に支持されるスライダーを取り付け、このスライダーの一方を前記リフト部材に当接させ、他方を取付部材に固着したカム部材へ当接させたり、或は前記スプリングのリフト部材側にスライダーを取り付けると共に、前記スプリングの前記取付部材側を該取付部材に軸着させたバネ受部材に支持させたりすることができる。
【0008】
【作用】
開いた原稿圧着板を閉じ始めると、リフト部材と取付部材の間にスプリングを弾設してあるので、リフト部材はスプリングの弾力によって押圧され、原稿圧着板は反転することなく閉じられる。原稿が本のように厚い厚物原稿の場合には、原稿圧着板が原稿に当接したところで閉じ方向へ力を加えると、リフト部材はスプリングの弾力に抗して軸着個所を支点に反転し、原稿圧着板をして原稿の上を覆わしめることが可能となるものである。」

・記載事項3
「【0009】
【実施例】
図面はこの考案の一実施例を示し、図1において、1は例えば複写機の装置本体、2は原稿圧着板、3はこの原稿圧着板2を開閉する原稿圧着板開閉装置である。図面では1個のみ表示してあるが、通常は2個用いられる。
【0010】
図2以降はこの原稿圧着板開閉装置の構造を示し、装置本体1上に固定された断面略コの字形状の取付部材4の両側板4a、4aには、同じく断面略Cチャンネル形状の支持部材5の両側板5a、5aがその一端部をヒンジピン6を介して回動自在に軸着されている。この取付部材4と支持部材5の各両側板4a、4a・5a、5aの軸着個所には、図示してないがヒンジピン6を中心部に挿通させたフリクションワッシャーとスプリングワッシャーがそれぞれ重畳的に介挿され、ヒンジピン6の端部をかしめることによって構成したフリクション手段が設置されている。取付部材4の両側板4a、4aの間にはまたヒンジピン6と固定ピン7によってカム部材8が固着されている。
【0011】
支持部材5の両側板5a、5aの自由端側には、両側に取付板9a、9aを突設させたリフト部材9がその両側板9b、9bの一側部を支持ピン10を介して回動自在に軸着させている。このリフト部材9の両側板9b、9bの支持ピン10による支持部材5の軸着個所とは異なる位置に作動ピン11が軸架されている。リフト部材9の取付板9a、9aには原稿圧着板2の取付部2a、2aが固着されている。
【0012】
12、12は圧縮コイルスプリングであり、この圧縮コイルスプリング12、12は支持部材5の抱持部5c、5cに摺動自在に拘持された一対の筒形のスライダー13、14内に収納され、このスライダー13、14を介してリフト部材9側の作動ピン11と取付部材4側のカム部材8との間に弾設されている。尚、15はカム部材8側のスライダー14に対するストッパーピンである。」

・記載事項4
「【0013】
したがって、原稿が紙のように薄い薄物原稿の場合には、原稿圧着板2はリフト部材9と取付部材4の間に弾設した圧縮コイルスプリング12、12の弾力によって開閉動作の全行程に渡って反転することなく操作され、カム部材8に当接するスライダー14によって所定の開成角度で安定的に停止保持される。原稿が本のように厚い厚物原稿の場合には、原稿圧着板2を厚物原稿へ当てがい、手前側を若干強く下押しすることによって作動ピン11が圧縮コイルスプリング12、12を押圧し、その弾力に抗してリフト部材9が反転し、図1の想像線と図5に実線で示したように原稿圧着板2で該厚物原稿16の上部を覆うことができるものである。その際、作動ピン11は支持部材5の両側板5a、5aに設けた切欠5b、5b内へ嵌り込み、リフト部材9の反転を可能にする。厚物原稿16を取り去ると、圧縮コイルスプリング12、12の弾力によりリフト部材9を介して原稿圧着板2は自動的に回転して元位置に戻って支持部材5と重なり合う。」

6.2.2 補正事項1について
補正事項1に係る補正は、「作動ピン」を「作動部材」と補正するものであるが、「作動部材」の語句自体は、当初明細書等に記載がない。

したがって、「作動部材」が、当初明細書等の記載からみて自明な事項か否かについて以下に検討する。

まず、本件実用新案は、記載事項1のとおり、「簡単な構造で必要時にリフト部材による原稿圧着板のリフトを可能にし、その上原稿圧着板にガタの生じない安定した開閉操作を行うことができるように成したリフト機能付きの原稿圧着板開閉装置を提供」することを目的とするものであり、該目的を達成するために、記載事項2のとおり、「このリフト部材の軸着位置とは異なる部分と前記取付部材との間に弾設させたスプリング」なる構成を採用したものである。

そして、「このリフト部材の軸着位置とは異なる部分と前記取付部材との間に弾設させたスプリング」なる構成の実施例、すなわち、「リフト部材の軸着位置とは異なる部分と前記取付部材との間に」スプリングを弾設するための具体的な実施例として、記載事項3のとおり、「このリフト部材9の両側板9b、9bの支持ピン10による支持部材5の軸着個所とは異なる位置に作動ピン11が軸架されている。」、「12、12は圧縮コイルスプリングであり、この圧縮コイルスプリング12、12は支持部材5の抱持部5c、5cに摺動自在に拘持された一対の筒形のスライダー13、14内に収納され、このスライダー13、14を介してリフト部材9側の作動ピン11と取付部材4側のカム部材8との間に弾設されている。」という実施例が開示されている。

さらに、上記実施例による作用として、記載事項4のとおり、「原稿が紙のように薄い薄物原稿の場合には、原稿圧着板2はリフト部材9と取付部材4の間に弾設した圧縮コイルスプリング12、12の弾力によって開閉動作の全行程に渡って反転することなく操作され、カム部材8に当接するスライダー14によって所定の開成角度で安定的に停止保持される。原稿が本のように厚い厚物原稿の場合には、原稿圧着板2を厚物原稿へ当てがい、手前側を若干強く下押しすることによって作動ピン11が圧縮コイルスプリング12、12を押圧し、その弾力に抗してリフト部材9が反転し、図1の想像線と図5に実線で示したように原稿圧着板2で該厚物原稿16の上部を覆うことができるものである。その際、作動ピン11は支持部材5の両側板5a、5aに設けた切欠5b、5b内へ嵌り込み、リフト部材9の反転を可能にする。」ことが開示されている。

以上のことから、本件実用新案の目的を達成するためには、スプリングを弾設するための位置として、「リフト部材の軸着位置とは異なる部分」を選択することが必須の要件であることがわかり、当初明細書等には、「リフト部材の軸着位置とは異なる部分」においてスプリングの弾力を受ける具体的な手段の一例として、「作動ピン」が記載されていることがわかる。

ここで、当初明細書等には、「作動ピン」以外の語句は記載されていないものの、本件実用新案の目的を達成するためには、「リフト部材の軸着位置とは異なる部分」においてスプリングの弾力を受ける手段が、「リフト部材の軸着位置とは異なる部分」に設けられていれば十分であって、必ずしも「ピン」である必要はなく、スプリングの弾力を受ける何らかの部材であれば十分であることは、当初明細書等の記載からみて自明な事項であるといえる。

してみれば、「リフト部材の軸着位置とは異なる部分」においてスプリングの弾力を受ける手段としての「作動部材」は、当初明細書等の記載からみて自明な事項といえるから、上記手段としての「作動ピン」を「作動部材」とする補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであって、考案の構成に関する技術的事項を変更するものではないので、補正事項1に係る補正は、明細書の要旨を変更するものではない。

6.2.3 補正事項2について
補正事項2に係る補正は、「(作動ピン11が)軸架されている」を「取り付けられた(作動部材)」と補正するものであるが、「取り付けられた(作動部材)」の語句自体は、当初明細書等に記載がない。

したがって、「取り付けられた(作動部材)」が、当初明細書等の記載からみて自明な事項か否かについて以下に検討する。

上記「6.2.2 補正事項1について」の項で述べたように、本件実用新案の目的を達成するためには、スプリングを弾設するための位置として、「リフト部材の軸着位置とは異なる部分」を選択することが必須の要件であることがわかる。そして、当初明細書等には、「リフト部材の軸着位置とは異なる部分」においてスプリングの弾力を受ける具体的な手段の一例として、「作動ピン11が軸架されている」という事項が記載されていることがわかる。

ここで、当初明細書等には、「作動ピン11が軸架されている」以外の語句は記載されていないものの、本件実用新案の目的を達成するためには、「リフト部材の軸着位置とは異なる部分」においてスプリングの弾力を受ける手段が、「リフト部材の軸着位置とは異なる部分」に設けられていれば十分であって、必ずしも「軸架されている」「作動ピン11」である必要はなく、スプリングの弾力を受ける何らかの部材として「リフト部材の軸着位置とは異なる部分」に取り付けられた部材であれば十分であることは、当初明細書等の記載からみて自明な事項であるといえる。

してみれば、「取り付けられた(作動部材)」という事項は、当初明細書等の記載からみて自明な事項といえるから、「(作動ピン11が)軸架されている」を「取り付けられた(作動部材)」とする補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであって、考案の構成に関する技術的事項を変更するものではないので、補正事項2に係る補正は、明細書の要旨を変更するものではない。

よって、請求人の上記主張は採用することができない。

6.2.4 他の補正事項について
本件補正のうち、補正事項1および2以外の補正事項は、いずれも当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであって、明細書の要旨を変更するものではない。

6.2.5 小括
以上のとおり、本件補正は適法になされたものであり、また、明細書の要旨を変更するとの請求人の主張は誤りである。

6.3 実用新案法第3条第1項第3号について
上記「6.2 本件補正についての当審の判断」の項で述べたように、本件補正は適法になされたものであるから、本件補正が明細書の要旨を変更することを前提とした、実用新案法第3条第1項第3号に基づく請求人の主張は採用することができない。

7.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件考案1ないし3に係る考案についての実用新案登録を無効とすることはできない。
審判請求に関する費用については、平成15年5月23日法律第47号附則第12条により改正された、平成5年改正法附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされ、同法附則第4条第2項において「表」で読み替えて得られる、旧実用新案法第41条において準用する特許法第169条第2項においてさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって結論のとおり審決する。
審理終結日 2008-03-25 
結審通知日 2008-03-27 
審決日 2008-04-10 
出願番号 実願平5-27998 
審決分類 U 1 113・ 03- Y (G03B)
U 1 113・ 113- Y (G03B)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 植野 孝郎
江塚 政弘
登録日 1999-06-11 
登録番号 実用新案登録第2598506号(U2598506) 
考案の名称 原稿圧着板開閉装置  
代理人 鈴木 征四郎  
代理人 伊藤 捷雄  
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