• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効   A61M
管理番号 1193738
審判番号 無効2007-800107  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-05-31 
確定日 2009-01-13 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の登録第2597672号実用新案「医療用針」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 訂正を認める。 実用新案登録第2597672号の請求項1ないし2に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
1 本件登録実用新案第2597672号に係る考案についての出願は、平成5年10月20日の出願であって、平成11年5月14日に実用新案権の設定の登録がなされたものである。

2 これに対し、請求人スミスメディカル・ジャパン株式会社より、平成19年5月31日に無効審判の請求がなされ、被請求人内囿景博より平成19年8月31日付けで答弁書が提出されるとともに訂正の請求がなされ、さらに請求人スミスメディカル・ジャパン株式会社より平成19年10月22日付けで上申書が提出され、被請求人内囿景博より平成19年11月16日付けで2回目の答弁書が提出され、平成19年11月16日付けで両人より口頭審理陳述要領書が提出され、同年同日に口頭審理が行われ、その後、平成19年12月18日付けでに無効理由通知がされ、被請求人内囿景博より平成20年1月21日付けで意見書が提出された。

第2 訂正の適否について
被請求人は、平成19年8月31日付け訂正請求書により本件登録実用新案明細書の訂正を請求(以下、「本件訂正」という。)しているので、まず、この訂正の可否について検討する。

1 本件訂正の内容
本件訂正は、本件登録実用新案の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり、その訂正の内容は、以下の訂正事項A?Gのとおりである。
(1)訂正事項A
実用新案請求の範囲の請求項1、2の記載を、次のように訂正する。(下線は訂正箇所を示し、以下同様である。)
「【請求項1】 硬麻針本体の基端に把持部を設けた硬麻針と、同硬麻針に挿入される脊麻針本体に注射器の接続部を設けた脊麻針とからなる医療用針において、前記硬麻針に挿入された前記脊麻針をその針先が馬尾神経に到達する充分な長さとするとともにどの挿入位置でも硬麻針の把持部に固定できる固定手段を講じたことを特徴とする医療用針。
【請求項2】 硬麻針本体の基端に把持部を設けた硬麻針と、同硬麻針に挿入される脊麻針本体に注射器の接続部を設けた脊麻針とからなる医療用針において、前記硬麻針に挿入された前記脊麻針をその針先が馬尾神経に到達する充分な長さとするとともにどの挿入位置でも硬麻針に固定できる別体の固定具を前記把持部に脱着自在に設けたことを特徴とする医療用針。」

(2)訂正事項B
明細書の段落【0004】の【課題を解決するための手段】の記載を、次のように訂正する。
「課題を解決するための手段】かかる課題を解決した本考案の要旨は、
1)硬麻針本体の基端に把持部を設けた硬麻針と、同硬麻針に挿入される脊麻針本体に注射器の接続部を設けた脊麻針とからなる医療用針において、前記硬麻針に挿入された前記脊麻針をその針先が馬尾神経に到達する充分な長さとするとともにどの挿入位置でも硬麻針の把持部に固定できる固定手段を講じたことを特徴とする医療用針
2)硬麻針本体の基端に把持部を設けた硬麻針と、同硬麻針に挿入される脊麻針本体に注射器の接続部を設けた脊麻針とからなる医療用針において、前記硬麻針に挿入された前記脊麻針をその針先が馬尾神経に到達する充分な長さとするとともにどの挿入位置でも硬麻針に固定できる別体の固定具を前記把持部に脱着自在に設けたことを特徴とする医療用針にある。」

(3)訂正事項C
明細書の段落【0005】の【作用】の記載を、次のように訂正する。
「【作用】本考案は、硬麻針本体を人体の脊椎部に刺入し、脊椎部に刺入された硬麻針に脊麻針を挿入し、硬麻針本体の針先から脊麻針本体の針先を突出させる。次に、その針先が馬尾神経に到達する充分な長さとするとともにどの挿入位置で硬麻針の把持部に講じられた固定手段により脊麻針を硬麻針に固定する。次に、脊麻針に設けられた接続部に注射器を接続して注射器の薬物を注入する。又は脊椎液の採取作業を行う。硬麻針本体は、一般的に人体の筋内に密着しており軽い力では動くものではなく、硬麻の把持部に設けられた固定手段に脊麻針本体が固定される。これにより、硬麻針本体の針先から突出した脊麻針本体の針先が動くこともなく人体の脊椎部に損傷を起こすことがなくなり手技の成功率を上昇させることができる。又、硬麻針の把持部に別体の固定具を介して硬麻針に挿入された脊麻針を硬麻針に固定するやり方も同様の効果がある。」

(4)訂正事項D
明細書の段落【0008】の記載を、次のように訂正する。
「【0008】本実施例は、図1,2,3,4に示すように、人体の脊椎部に刺入する硬麻針本体2aに目盛り3を設け、その硬麻針本体2aの基端に把持部4を設けて硬麻針2を形成し、硬麻針2の把持部4に翼状板5を脱着自在に設け、把持部4の側部に固定用窓6を設ける。硬麻針本体2aに挿入される大きさを有する脊麻針本体8aを設け、その脊麻針本体8aの基端に注射器9を接続する接続部10を設けて硬麻針2に挿入する脊麻針8を形成する。以上のように形成された硬麻針2と脊麻針8により本実施例の医療用針1が構成され、この医療用針1に中芯7と内針11とを用いて使用される。」

(5)訂正事項E
明細書の段落【0009】の記載を、次のように訂正する。
「【0009】本実施例の使用方法として、図5,6,7,8に示すように、硬麻針2に中芯7を挿入して硬麻針本体2aの針先を塞ぎ人体の脊椎部12に硬麻針本体2aを刺入し、硬麻針本体2aの針先を硬膜外腔13まで到達させる。次に、硬麻針2から中芯7を引き抜き、内針11を挿入されて針先を塞がれた脊麻針8を硬麻針2に挿入し、硬麻針本体2aの針先から突出させて馬尾神経14まで到達させる。硬麻針2に挿入された脊麻針8を硬麻針2の基端に設けられた導入溝6aから入れて固定用窓6に脊麻針本体を折曲させて係止させる。それにより、硬麻針2に脊麻針8を固定することができる。硬麻針2に脊麻針8を固定した後、硬麻針2から内針11を引き抜く。すると、硬膜外腔13まで脊麻針8の針先が達していることにより脳脊髄液24が脊麻針8の接続部10から流出してくる。次に、脊麻針8の接続部10に注射器9を接続し、注射器9の麻酔を脊麻針8に注入する。注入された麻酔は脊麻針8の針先から噴出して馬尾神経14に注入される。又、注射器9により脳脊髄液24の採取も行われる。」

(6)訂正事項F
明細書の段落【0011】の記載を、次のように訂正する。
「【0011】本考案の他の例として、図9,10,11に示すように、実施例同様に硬麻針本体16aに把持部22を設けた硬麻針16と、その硬麻針本体16aに挿入される脊麻針本体18aに注射器の接続部23を設けた脊麻針18を設ける。硬麻針16に挿入された脊麻針18を硬麻針16に固定するため、固定用窓20及び導入溝25を設けた固定具21を硬麻針16の把持部22に脱着自在に設けて医療用針15を構成する。これを使用する時は、医療用針15に中芯17と内針19が用いられ、実施例同様に使用され実施例同様の効果が発揮される。」

(7)訂正事項G
明細書の【符号の説明】の記載を、次のように訂正する。
「【符号の説明】
1 医療用針
2 硬麻針
2a 硬麻針本体
3 目盛り
4 把持部
5 翼状板
6 固定用窓
6a 導入溝
7 中芯
8 脊麻針
8a 脊麻針本体
9 注射器
10 接続部
11 内針
12 脊椎部
13 硬膜外腔
14 馬尾神経
15 医療用針
16 硬麻針
16a 硬麻針本体
17 中芯
18 脊麻針
18a 脊麻針本体
19 内針
20 固定用窓
21 固定具
22 把持部
23 接続部
24 脳脊髄液
25 導入溝」

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項Aについて
上記訂正事項Aは、請求項1、2に係る訂正であり、脊麻針について、「その針先が馬尾神経に到達する充分な長さとするとともにどの挿入位置でも」硬麻針に固定「できる」との限定を付加するものであるから、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、これは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。

(2)訂正事項B、Cについて
上記訂正事項B、Cは、上記訂正事項A、すなわち請求項1及び2の記載に整合させて考案の詳細な説明を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

(3)訂正事項Dについて
上記訂正事項Dは、「中芯17」、「内針19」を「中芯7」、「内針11」と訂正するものであり、誤記の訂正を目的とするものである。

(4)訂正事項Eについて
上記訂正事項Eは、「硬麻針2から脊麻針8を引き抜く。」を「硬麻針2から内針11を引き抜く。」と訂正するものであるが、段落【0009】の記載、及び図7からみて、「硬麻針2」から引き抜くのは「内針11」であることは明らかといえるので、誤記の訂正を目的としたものである。
また、「脊麻針8の接続部10から」とする訂正は、嚢脊髄液24が流出する箇所を「脊麻針8の接続部10から」と明記することによって明りょうでない記載の釈明をしたものであり、願書に最初に添附した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものである。
そして「注射器9の麻酔15」を「注射器9の麻酔」とする訂正は、誤記の訂正を目的とするものである。

(5)訂正事項F、Gについて
上記訂正事項F及びGは、「医療用品15」を「医療用針15」と訂正するものであり、誤記の訂正を目的とするものである。

したがって、本件訂正は、平成5年法律第26号附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされ、同2項(平成15年法律第47号附則第12条による改正後のもの)の規定により読み替えられる実用新案法第40条の2第1項ただし書き、及び同法同条第5項で準用する同法第39条第3項及び第4項の規定に適合するので、本件訂正を認める。

第3 本件考案
本件訂正は認められたので、本件の請求項1、2に係る考案(以下、それぞれ「本件考案1」、「本件考案2」という。)は、訂正明細書及び図面の記載からみて、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。

「【請求項1】 硬麻針本体の基端に把持部を設けた硬麻針と、同硬麻針に挿入される脊麻針本体に注射器の接続部を設けた脊麻針とからなる医療用針において、前記硬麻針に挿入された前記脊麻針をその針先が馬尾神経に到達する充分な長さとするとともにどの挿入位置でも硬麻針の把持部に固定できる固定手段を講じたことを特徴とする医療用針。

【請求項2】 硬麻針本体の基端に把持部を設けた硬麻針と、同硬麻針に挿入される脊麻針本体に注射器の接続部を設けた脊麻針とからなる医療用針において、前記硬麻針に挿入された前記脊麻針をその針先が馬尾神経に到達する充分な長さとするとともにどの挿入位置でも硬麻針に固定できる別体の固定具を前記把持部に脱着自在に設けたことを特徴とする医療用針。」

第4 当事者の主張の概要
1 請求人の主張の概要
請求人は、実用新案登録第2597672号を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、以下の(1)乃至(3)の理由を挙げて、本件実用新案登録は、実用新案法第3条の規定に違反してされ、さらに、第5条第4項、及び5項に規定する要件を満たしていない実用新案登録出願に対してされたと主張し、証拠方法として甲第1号証?甲第3号証を提出している。

(1)本件考案1の「固定手段」、及び本件考案2の「固定具」は、それぞれの形状および構造が不明であり、実用新案登録第2597672号は、実用新案法第3条第1項柱書きに規定されている「産業上利用することができる考案であって物品の形状、構造、又は組合せに係る」ものという要件を満たさない。

(2)本件考案1の「固定手段」、及び本件考案2の「固定具」は、それぞれの形状、および構造が不明であるから、考案の詳細な説明には、当業者が容易にその実施をすることができる程度に記載されておらず、また、実用新案登録請求の範囲は、考案の構成に欠くことができない事項が記載されているといえないことから、実用新案登録第2597672号は、実用新案法第5条第4項および第5項に規定する要件を満たしていない。

(3)本件考案1、2は、添付の甲各号証に記載された考案からきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案登録第2597672号は、実用新案法第3条第1項第3号または同法第3条第2項の規定に違反してされたものである。

なお、請求人は、請求の理由(1)については、平成19年11月16日に行われた口頭審理において撤回している。

[証拠方法]
甲第1号証:米国特許第4518383号明細書
甲第2号証:米国特許第4609370号明細書
甲第3号証:欧州特許出願公開第564859号明細書

2 被請求人の主張の概要
これに対して、被請求人は、「請求人の本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」(答弁の趣旨)との審決を求めるとともに、訂正の請求をしている。

第5 無効理由通知の概要
1 平成19年12月18日付け無効理由通知の概要は以下のとおりである。
平成19年8月31日付けで訂正された実用新案登録請求の範囲の請求項1および2に係る考案は、欧州特許出願公開第564859号明細書(以下、「引用例」という。)に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたというべきであり、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであるので、同法第37条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。

2 上記進歩性欠如の無効理由通知に対する被請求人の主張(平成20年1月21日付け意見書)
(1)「Sperrbereich」を「連結領域」、「アーチ領域」とされているが、これは「遮断領域」とされるべきが忠実な翻訳である。したがって、「Sperrbereich122」は、「カニューレ連結部品33」を回転させない領域である。

(2)無効理由通知書の(ウ)の「平坦面は10mm進んだ位置にある内肩部で終わり、この内肩部に突起部が当たるので、脊髄カニューレが硬膜外カニューレ尖端の前縁部の前に位置し得る長さは、最大10mmである。使用者は脊髄カニューレを、硬膜を貫通したらすぐ左あるいは右へ回転させることによって硬膜外カニューレ内で固定することが出来る。」は、「・・・この内肩部に突起部が当たるので、・・・左あるいは右へ回転させることによって・・・最大10mmであって、・・・硬膜外カニューレ内で固定することが出来る。」であって、「内肩部(128)に突起部(40)が当たるので」は、「回転させることによって・・・固定することが出来る。」に掛かってくる回転の前提の文言である。

(3)無効理由通知書の(エ)の翻訳文でのカニューレ連結部品(115)の回転は、平坦部(121)の最奥の内肩部(128)に当たって突起部(40)が半径方向の外方向に押し上げられて回転できるようにして回転させることができることの前提とした関連記載である。

(4)第7図、第7図Aは、突起部(40)を内肩部(128)に当て左最奥に押し込んだ状態の図面であって、その挿入の途中の状態の図面ではない。

(5)無効理由通知書の(オ)の認定も誤ったものであり、挿入途中で回転できるとは記載なく、むしろ逆に平坦部(121)の最奥の内肩部(128)で突起部(40)を押し当てて回転させるものであることが記載されている。

従って、無効理由通知書における引用文献の翻訳は誤っており、「第3 対比・判断」についても誤った認定によるものであるから成り立たない。
そして、本件実用新案登録は、新規性及び進歩性ともに認められ、無効理由は存在せず、登録を維持できるものである。

第6 平成19年12月18日付け無効理由通知についての判断
1 引用例に記載された考案
無効理由で引用した引用例(欧州特許出願公開第564859号明細書)には、図面と共に、以下の事項が記載されている(翻訳は当審によるもの。)。

(ア)「本発明は、湾曲した尖端と上向きのカット開口部を有し、尖端の湾曲部の外壁に穴が形成された硬膜外カニューレ、および、硬膜外カニューレより長くより細いもので、前方先端を硬膜外カニューレの穴を通って前に押し出すことが可能な、先の鋭く尖った脊髄カニューレで構成され、その際、各カニューレの後方先端にカニューレ連結部品が取り付けられていて、両カニューレ連結部品には軸方向に差し込んでつなぐことの出来る同心の嵌め合い部分の備わっている麻酔器具に関する。」(第1欄1乃至12行目)

(イ)「脊椎/硬膜外複合麻酔の場合、まず第一に硬膜外カニューレが従来の技術で硬膜外腔に配置され、次いで脊髄カニューレが硬膜外カニューレを通り抜けて脊髄腔に至るまで前に押し出される。脊椎麻酔の後に脊髄カニューレは取り除かれて、硬膜外カテーテルが既に挿入されている硬膜外カニューレを用いて配置される。」(第1欄27乃至34行目)

(ウ)「有利であるのは、請求項2に従って、ガイド溝が円筒形部分の平坦面として組み込まれており、隣接するゾーンが突起部のための連結領域になっていることである。円筒形部分が硬膜外カニューレ連結部品の接続部であることがより好ましく、同接続部に被さるキャップは脊髄カニューレ連結部品の嵌め合い部分として用いられ、同キャップの内側の面に突起部が位置している。平坦面は10 mm進んだ位置にある内肩部で終わり、この内肩部に突起部が当たるので、脊髄カニューレが硬膜外カニューレ尖端の前縁部の前に位置し得る長さは、最大10 mmである。使用者は脊髄カニューレを、硬膜を貫通したら直ぐに左あるいは右へ回転させることによって硬膜外カニューレ内で固定することが出来る。この固定は、平坦面の横にある嵌め合い部分の各アーチ領域において、突起部が摩擦固定されることによって為される。神経線維がカット開口部の前に存在するため、固定後に髄液流が枯渇した場合は、軸方向の固定を解除しないで脊髄カニューレを更にあるいは別の方向に回転させることによって、そのカット開口部の向きを変更することが出来る。」(第4欄21乃至43行目)

(エ)「図1から7の例においては、硬膜外カニューレ連結部品(115)の円筒形の接続部(116)の外表面に、円の弦上にある傾斜のない平坦面(121)が組み込まれている。この平坦面(121)は真っ直ぐであり、カニューレ(111)および接続部(116)の縦軸の方向に伸びる。平らで真っ直ぐな平坦面(121)は、この例では長さが約10 mmであり、内肩部(128)の位置で終わる。円周に沿って平坦面(121)に隣接する連結領域(122)は、接続部(116)が円筒形であるためにアーチ形状を成しており、平坦面(121)に関して凸面になっている。場合によっては、脊髄カニューレ(30)の注入位置において突起部(40)を固定するために、平坦面(121)に対して90°の位置に置かれている、ここには示していない接続部(16)の平坦面が用いられ得る。
カニューレ連結部品(33)のキャップ(35)の開口部側の縁には、壁の内側の面に放射状に内側に向けられた突起部(40)が形成されており、その寸法は、非常に僅かな遊びで硬膜外カニューレ(111)のカニューレ連結部品(115)の平坦面(121)に適合し、この面上を肩部(128)に至るまで軸方向にスライド式に移動できるように定められている。脊髄カニューレ(30)のカット開口部(32)の確認がより良く行えるように、突起部(40)はキャップ(35)の縁を越えて軸方向に突出している。平坦面(121)は硬膜外カニューレ(111)のカット開口部(113)を横断する軸方向の平面に対して直角に置かれており、一方で、突起部(40)は脊髄カニューレ(30)のカット開口部(32)の尖端を貫いて伸びる軸方向の平面に位置する。この結果、突起部(40)を平坦面(121)の上に導く際には、脊髄カニューレ(30)のカット開口部(32)は、上方に向いている硬膜外カニューレ(111)のカット開口部(113)に対して90°回転されていることになる(図3、4、6A)。脊髄カニューレ(30)はこの位置において、平坦面(121)と突起部(40)の噛み合いによって直線的に導かれ、穴(14)を通り抜けて脊髄腔内に押し出され、その際、垂直に伸びる硬膜線維は僅かしか切断されない。脊椎麻酔を実行するために、マンドリン線が脊髄カニューレ(30)から引き出される。硬膜の貫通後、脊髄カニューレ(30)のカット開口部(32)は(硬膜外カニューレ(111)のカット開口部と同様に)、注射剤が上に向かって分散できるように、基本的に上を向いている(図7A)。この目的で、カニューレ連結部品(33)はカニューレ連結部品(115)に対して相対的に、右向きあるいは左向きに回転され、その結果、突起部(40)は円筒形に太くなった接続部(116)の連結領域(122)上で固定される(図7)。平坦面(121)に付属する硬膜外カニューレ(111)の指板(118)の翼部に、放射状の隆起(127)があり、これは接続部(116)の領域に円周に沿った延長部分(127a)を有し、この延長部分はカット開口部(113)の平面の方向に伸びていて、脊髄カニューレ(30)の硬膜外カニューレ(111)への挿入方向および予定の回転方向を医者に示す。使用者は硬膜穿刺を容易に確認することが出来る。注射器をカニューレ連結部品(33)に接続して注入する際に、脊髄カニューレ(30)が脊髄腔においてずれることはあり得ない。」(第7欄37行乃至第8欄43行)

(オ)第3図には、脊髄カニューレに注射器の接続部(カニューレ連結部品33)を設けた構成、及び硬膜外カニューレ(111)の基端に接続部(116)を備えた構成が図示されている。
また、脊髄カニューレと硬膜外カニューレとは、上記(ウ)の「使用者は脊髄カニューレを、硬膜を貫通したら直ぐに左あるいは右へ回転させることによって硬膜外カニューレ内で固定することが出来る。」という記載、第3図、第6図、及び7図に示された構成からみて、脊髄カニューレが硬膜外カニューレに対し、突起部が内肩部に当たるまで平坦面のどの位置でも固定できる構成を備えているといえる。

上記記載事項(ア)?(オ)を総合すると、引用例には、次の考案(以下、「引用考案」という。)が記載されているものと認められる。
「硬膜外カニューレ(111)の基端に接続部(116)を備えた硬膜外カニューレ(111)と、硬膜外カニューレの穴を通って前に押し出すことが可能な脊髄カニューレ(30)に注射器を接続するカニューレ連結部品(33)を設けた麻酔器具において、突起部が内肩部に当たるまで平坦面のどの挿入位置でも、脊髄カニューレを回転させることによって硬膜外カニューレ内において固定することが出来るように、カニューレ連結部品(33)に形成した突起部(40)が接続部(116)の連結領域(122)上で固定される構成を備えた麻酔器具。」

2 対比、判断
(1)本件考案1について
(ア)一致点・相違点
本件考案1と引用考案とを対比すると、引用考案の「接続部(116)」、「硬膜外カニューレ(111)」、「脊髄カニューレ(30)」、「カニューレ連結部品(33)」、および「麻酔器具」は、それぞれ本件考案1の「把持部」、「硬麻針」、「脊麻針」、「注射器の接続部」、および「医療用針」に相当し、本件考案1における「硬麻針本体」、「脊麻針本体」は、「硬麻針」、「脊麻針」と実質的に同じものを示しているといえるので、引用考案の「硬膜外カニューレ(111)」、「脊髄カニューレ(30)」は、本件考案1の「硬麻針本体」、「脊麻針本体」にもそれぞれ相当する。
また、引用考案の「カニューレ連結部品(33)に形成した突起部(40)」と「接続部(116)の連結領域(122)」とは、脊髄カニューレを硬膜外カニューレに固定するための構成であるので、本件考案1の「固定手段」に相当する。
そして、引用考案の「脊髄カニューレ(30)に注射器を接続するカニューレ連結部品(33)」は、本件考案1の脊麻針に設けた「脊麻針本体に注射器の接続部」と同義である。
そうすると、本件考案1と引用考案との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「硬麻針本体の基端に把持部を設けた硬麻針と、同硬麻針に挿入される脊麻針本体に注射器の接続部を設けた脊麻針とからなる医療用針において、前記硬麻針に挿入された前記脊麻針を硬麻針の把持部に固定できる固定手段を講じたことを特徴とする医療用針。」

(相違点1)
硬麻針に挿入された脊麻針に関し、本願考案1は、「その針先が馬尾神経に到達する充分な長さとするとともにどの挿入位置でも」固定できるのに対し、引用考案は、「突起部が内肩部に当たるまで平坦面のどの挿入位置でも、脊髄カニューレを回転させることによって硬膜外カニューレ内において固定することが出来る」構成を備えているものの、その針先が馬尾神経に到達する充分な長さであるかが不明である点。

(イ)相違点の検討
上記相違点1について検討する。
脊麻針(脊髄カニューレ(30))を用いた麻酔において、人体に対してどの程度まで脊麻針を挿入するかについては、患者の個体差等によりある程度の幅があり、通常、医師が経験により適切な長さを挿入している。
そして、引用例1において「脊髄カニューレが硬膜外カニューレ尖端の前縁部の前に位置し得る長さは、最大10mmである。使用者は脊髄カニューレを、硬膜を貫通したら直ぐに左あるいは右へ回転させることによって硬膜外カニューレ内で固定することが出来る。」(上記記載事項(ウ)参照。)と記載されているように、脊麻針(脊髄カニューレ30)を硬麻針(硬膜外カニューレ111)に対して最大10mmまで必要に応じた長さを挿入することができる構成を備えていることから、引用考案においても、脊麻針の「その針先が馬尾神経に到達する充分な長さとする」ことは当業者がきわめて容易に想到することができたものといえる。
したがって、本件考案1は、引用考案に基いて当業者がきわめて容易になし得たものである。
また、上記相違点によって本件考案1が奏する作用・効果も、引用考案から予測される範囲内のものである。

(2)本件考案2について
(ア)一致点・相違点
本件考案2と引用考案とを対比すると、引用考案の「接続部(116)」、「硬膜外カニューレ(111)」、「脊髄カニューレ(30)」、「カニューレ連結部品(33)」、および「麻酔器具」は、それぞれ本件考案2の「把持部」、「硬麻針」、「脊麻針」、「注射器の接続部」、および「医療用針」に相当し、本件考案2における「硬麻針本体」、「脊麻針本体」は、「硬麻針」、「脊麻針」と実質的に同じものを示しているといえるので、引用考案の「硬膜外カニューレ(111)」、「脊髄カニューレ(30)」は、本件考案1の「硬麻針本体」、「脊麻針本体」にもそれぞれ相当する。
また、引用考案の「接続部(116)の連結領域(122)」は、硬膜外カニューレに設けられた、脊髄カニューレを硬膜外カニューレに固定するための構成であるので、本件考案2の「固定具」に相当する。
そして、引用考案の「脊髄カニューレ(30)に注射器を接続するカニューレ連結部品(33)」は、本件考案2の脊麻針に設けた「脊麻針本体に注射器の接続部」と同義である。
そうすると、本件考案2と引用考案との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「硬麻針本体の基端に把持部を設けた硬麻針と、同硬麻針に挿入される脊麻針本体に注射器の接続部を設けた脊麻針とからなる医療用針において、前記硬麻針に挿入された前記脊麻針を硬麻針に固定できる固定具を設けたことを特徴とする医療用針。」

(相違点)
引用考案と本件考案2とは、本件考案1における上記相違点1に加え、以下の点で相違する。
(相違点2)
固定具に関して、本件考案2においては「硬麻針に固定できる別体」のものであり、「把持部に脱着自在に設けた」構成となっているが、引用考案においては、固定具が、把持部に脱着自在に設けられた別体のものではない点で相違する。

(イ)相違点の検討
相違点1については、「2 対比、判断(1)本件考案1について(イ)相違点の検討」のとおりである。
上記相違点2について、以下に検討する。
通常、複数の機能を有する部材からなる装置において一部を脱着自在とすることは必要に応じてなされることであり、また、本願明細書全体を参酌しても、固定具を脱着自在とする効果については特段記載されていないことから、引用考案における固定のための構成を相違点2に係る本件考案の構成のようにすることは、当業者であればきわめて容易に想到することができたものと認められる。
そして、上記相違点によって本件考案2が奏する作用・効果も、引用考案から予測される範囲内のものである。

3 まとめ
以上、検討したことから、本件考案1ないし2は、引用考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

4 被請求人の主張に対する当審の判断
第5 2(1)について
「Sperrbereich122」を仮に「遮断領域」と翻訳するとしても、引用例には何を遮断するのか記載されておらず、直ちに「カニューレ連結部品(33)」を回転させない領域であるとはいえない。
また、「第6 1(エ)」において「・・・(略)・・・この目的で、カニューレ連結部品(33)はカニューレ連結部品(115)に対して相対的に、右向きあるいは左向きに回転され、その結果、突起部(40)は円筒形に太くなった接続部(116)の連結領域(122)上で固定される(図7)・・・(略)・・・」と記載されているように、「突起部(40)」は、「連結領域(122)」上で固定されることが記載されていることから、この記載からも「連結領域(122)」は、「カニューレ連結部品(33)」を回転させない領域であるという被請求人の主張は認められない。

第5 2(2)について
「内肩部(128)に突起部(40)が当たるので」は、「回転させることによって・・・固定することが出来る。」に掛かってくる回転の前提の文言である旨主張しているが、それぞれ2つの独立した文における記載であり、被請求人の主張は認められない。

第5 2(3)?2(5)について
被請求人が主張する、「平坦部(121)の最奥の内肩部(128)に当たって突起部(40)が半径方向の外方向に押し上げられて回転できる」構成は、引用例の記載に基づくものではない。
また、第7図、第7図Aは、挿入の途中の状態の図面ではないとする主張についても引用例の記載に基づくものではない。
さらに、「平坦部(121)の最奥の内肩部(128)で突起部(40)を押し当てて回転させるものであることが記載されている」旨、述べているが引用例の記載に基づかない主張であり、これら被請求人の主張は認められない。

第7 無効審判請求における請求人の主張に対する当審の判断
第4 1(2)について
本件実用新案請求の範囲の請求項1には「前記硬麻針に挿入された前記脊麻針を硬麻針の把持部に固定する固定手段を講じた」と記載されている。
したがって、「固定手段」が、硬麻針の把持部に設けられ、「脊麻針」を対象とする固定のための構造を備えるものであることは明らかである。
また、本件明細書には、固定のための具体的形状が記載されており(段落【0008】、【0009】)、及び図1、2、8、9を参照)、さらに、固定のための構造は従来より様々な形状が周知であることから、請求項1に記載された「固定手段」の形状、および構造が不明であるとはいえない。
次に、本件実用新案請求の範囲の請求項2を参照すると「前記硬麻針に挿入された前記脊麻針を硬麻針に固定する別体の固定具を前記把持部に着脱自在に設けた」と記載されている。
そして該記載から「固定具」は、把持部に着脱自在に別体として設けられ、脊麻針を硬麻針に固定する構造を備えるものであることは明らかである。
また、本件明細書には固定具の具体的形状が記載されており(段落【0011】、及び図9)、さらに着脱自在に別体として設けられる固定具は、従来より様々な形状が周知であることから、請求項2に記載された「固定具」の形状、および構造が不明であるとはいえない。
したがって、本件の実用新案登録請求の範囲に記載された「固定手段」、及び「固定具」は、それぞれの形状、および構造が不明りょうとはいえず、考案の詳細な説明には、当業者が容易にその実施をすることができる程度に記載され、また、実用新案登録請求の範囲の記載は、考案の構成に欠くことができない事項が記載されているといえることから、実用新案法第5条第4項および第5項の規定に違反してされたものではない。

第4 1(3)について
本件考案が、実用新案法第3条第2項の規定に違反して実用新案登録を受けたものか否かについての当審の判断は、上記「第6 平成19年12月18日付け無効理由通知についての判断」で述べたとおりである。

第8 むすび
以上のとおり、実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであるから、平成5年法律第26号附則第4条第1項の規定によりなお効力を有するとされ、同条2項(平成15年法律第47号附則第12条による改正後のもの)の規定により読み替えられた実用新案法第37条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。

審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定により準用する特許法第169条第2項の規定でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定によって、被請求人の負担とする。

よって、結論のとおり審決する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
医療用針
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】硬麻針本体の基端に把持部を設けた硬麻針と、同硬麻針に挿入される脊麻針本体に注射器の接続部を設けた脊麻針とからなる医療用針において、前記硬麻針に挿入された前記脊麻針をその針先が馬尾神経に到達する充分な長さとするとともにどの挿入位置でも硬麻針の把持部に固定できる固定手段を講じたことを特徴とする医療用針。
【請求項2】硬麻針本体の基端に把持部を設けた硬麻針と、同硬麻針に挿入される脊麻針本体に注射器の接続部を設けた脊麻針とからなる医療用針において、前記硬麻針に挿入された前記脊麻針をその針先が馬尾神経に到達する充分な長さとするとともにどの挿入位置でも硬麻針に固定できる別体の固定具を前記把持部に脱着自在に設けたことを特徴とする医療用針。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、人間の脊椎に針先を刺入して脊椎液の採取及び脊椎内の神経に麻酔等の薬物を注入する医療用針に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の医療用針は、硬麻針本体の基端に把持部を設けた硬麻針と、その硬麻針本体に挿入される脊麻針本体に注射器の接続部を設けた脊麻針をそれぞれ設け、硬麻針本体に挿入して硬麻針本体の針先を塞ぐ中芯と、脊麻針本体に挿入して脊麻針本体の針先を塞ぐ内針がそれぞれ設けられている。硬麻針に中芯を挿入して硬麻針の針先を塞いだ状態にて人体の脊椎部へ刺入し、脊椎部の硬膜外腔まで到達させる。次に、脊椎部の硬膜外腔まで針先を刺入した硬麻針から中芯を引き抜いて、内針を挿入して針先を塞がれた脊麻針を硬麻針に挿入し、硬麻針の針先から脊麻針の針先を突出させて脊麻針の針先をくも膜下腔まで刺入する。次に、脊麻針から内針を引き抜いて脊麻針に設けられた注射器の接続部に注射器を接続し、注射器の麻酔等の薬物を注入することにより脊麻針を通じてくも膜下腔に薬物を注入していた。又は注射器により脊椎液の採取を行っていた。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
しかし、従来の医療用針は、硬麻針本体に挿入された脊麻針本体が硬麻針内部で軽い力で動きやすく、そのため注射器を接続して麻酔等の薬物を注入する時などの操作中に動き手技が不成功となることもあり、それにより脊椎部を損傷させる危険も大きかった。又、硬麻針に挿入された脊麻針の針先が硬麻針から突出する長さが約7mmと一定しているため、その長さが足りずに手技が不成功に終ることが生じていた。
本考案が解決しようとする課題は、上記欠点を解決し硬麻針に挿入された脊麻針が動くことがなく、正確に脊椎部に麻酔を注入することができ、手技の成功率を高め安全性に優れた医療用針を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決した本考案の要旨は、
1)硬麻針本体の基端に把持部を設けた硬麻針と、同硬麻針に挿入される脊麻針本体に注射器の接続部を設けた脊麻針とからなる医療用針において、前記硬麻針に挿入された前記脊麻針をその針先が馬尾神経に到達する充分な長さとするとともにどの挿入位置でも硬麻針の把持部に固定できる固定手段を講じたことを特徴とする医療用針
2)硬麻針本体の基端に把持部を設けた硬麻針と、同硬麻針に挿入される脊麻針本体に注射器の接続部を設けた脊麻針とからなる医療用針において、前記硬麻針に挿入された前記脊麻針をその針先が馬尾神経に到達する充分な長さとするとともにどの挿入位置でも硬麻針に固定できる別体の固定具を前記把持部に脱着自在に設けたことを特徴とする医療用針
にある。
【0005】
【作用】
本考案は、硬麻針本体を人体の脊椎部に刺入し、脊椎部に刺入された硬麻針に脊麻針を挿入し、硬麻針本体の針先から脊麻針本体の針先を突出させる。次に、その針先が馬尾神経に到達する所要の挿入位置で硬麻針の把持部に講じられた固定手段により脊麻針を硬麻針に固定する。次に、脊麻針に設けられた接続部に注射器を接続して注射器の薬物を注入する。又は脊椎液の採取作業を行う。硬麻針本体は、一般的に人体の筋内に密着しており軽い力では動くものではなく、硬麻の把持部に設けられた固定手段に脊麻針本体が固定される。これにより、硬麻針本体の針先から突出した脊麻針本体の針先が動くこともなく人体の脊椎部に損傷を起こすことがなくなり手技の成功率を上昇させることができる。又、硬麻針の把持部に別体の固定具を介して硬麻針に挿入された脊麻針を硬麻針に固定するやり方も同様の効果がある。
【0006】
【実施例】
以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は本実施例の医療用針の一部切欠平面図、図2は本実施例の硬麻針に脊麻針を固定した状態の側面図、図3は本実施例の中芯の平面図、図4は本実施例の内針の平面図、図5は本実施例の硬麻針を脊椎部に刺入する状態の説明図、図6は本実施例の硬麻針から中芯を抜いて脊麻針を挿入する状態の説明図、図7は本実施例の脊麻針から内針を引き抜く状態の説明図、図8は本実施例の脊麻針に麻酔を注入する状態の説明図、図9は他の実施例の医療用針の一部切欠平面図、図10は他の実施例の中芯の平面図、図11は他の実施例の内針の平面図である。
【0007】
図中、1は医療用針、2は人体の脊椎部に刺入される硬麻針、2aは長尺の円筒形状を有する硬麻針本体、3は硬麻針本体2aに設けられ人体の脊椎部への刺入時の長さを確認するための目盛り、4は硬麻針2の基端に設けられる把持部、5は硬麻針2の把持部4に取付けられ、人体の脊椎部へ硬麻針本体2aを刺入する時の押し板の役割を果たす翼状板、6は硬麻針2の把持部4に設けられる固定用窓、7は硬麻針2に挿入して硬麻針本体2aの針先を塞ぐ中芯、8は脊麻針、8aは硬麻針2に挿入される脊麻針本体、9は注射器、10は脊麻針8に注射器9を接続するため脊麻針8の基端に設けられる接続部、11は硬麻針2に挿入し硬麻針本体2aの針先を塞ぐ内針、12は人体の脊椎部、13は脊椎部12の硬膜外腔、14は馬尾神経、24は脳脊髄液である。
【0008】
本実施例は、図1,2,3,4に示すように、人体の脊椎部に刺入する硬麻針本体2aに目盛り3を設け、その硬麻針本体2aの基端に把持部4を設けて硬麻針2を形成し、硬麻針2の把持部4に翼状板5を脱着自在に設け、把持部4の側部に固定用窓6を設ける。硬麻針本体2aに挿入される大きさを有する脊麻針本体8aを設け、その脊麻針本体8aの基端に注射器9を接続する接続部10を設けて硬麻針2に挿入する脊麻針8を形成する。以上のように形成された硬麻針2と脊麻針8により本実施例の医療用針1が構成され、この医療用針1に中芯7と内針11とを用いて使用される。
【0009】
本実施例の使用方法として、図5,6,7,8に示すように、硬麻針2に中芯7を挿入して硬麻針本体2aの針先を塞ぎ人体の脊椎部12に硬麻針本体2aを刺入し、硬麻針本体2aの針先を硬膜外腔13まで到達させる。次に、硬麻針2から中芯7を引き抜き、内針11を挿入されて針先を塞がれた脊麻針8を硬麻針2に挿入し、硬麻針本体2aの針先から突出させて馬尾神経14まで到達させる。硬麻針2に挿入された脊麻針8を硬麻針2の基端に設けられた導入溝6aから入れて固定用窓6に脊麻針本体を折曲させて係止させる。それにより、硬麻針2に脊麻針8を固定することができる。硬麻針2に脊麻針8を固定した後、硬麻針2から内針11を引き抜く。すると、硬膜外腔13まで脊麻針8の針先が達していることにより脳脊髄液24が脊麻針8の接続部10から流出してくる。
次に、脊麻針8の接続部10に注射器9を接続し、注射器9の麻酔を脊麻針8に注入する。注入された麻酔は脊麻針8の針先から噴出して馬尾神経14に注入される。又、注射器9により脳脊髄液24の採取も行われる。
【0010】
本実施例は、硬麻針2の固定用窓6に脊麻針8が固定されることにより、硬麻針本体2aの針先から突出した脊麻針本体8aの針先が動くこともなく人体の馬尾神経14に損傷を起こす危険がほとんどなくなった。又、麻酔等の薬物注入など種々の操作中、脊麻針本体8aが固定されて動かないため手技の成功率も上昇し、手技が簡単に覚えることができるようになった。
【0011】
本考案の他の例として、図9,10,11に示すように、実施例同様に硬麻針本体16aに把持部22を設けた硬麻針16と、その硬麻針本体16aに挿入される脊麻針本体18aに注射器の接続部23を設けた脊麻針18を設ける。硬麻針16に挿入された脊麻針18を硬麻針16に固定するため、固定用窓20及び導入溝25を設けた固定具21を硬麻針16の把持部22に脱着自在に設けて医療用針15を構成する。これを使用する時は、医療用針15に中芯17と内針19が用いられ、実施例同様に使用され実施例同様の効果が発揮される。
【0012】
【考案の効果】
本考案によれば、硬麻針の把持部に脊麻針が固定されることにより、硬麻針本体の針先から突出した脊麻針本体の針先が動くこともなく人体の馬尾神経に損傷を起こす危険がほとんどなくなった。又、麻酔等の薬物注入や脊椎液の採取など種々の操作中脊麻針が固定されて動かないため手技の成功率も上昇し、熟練をさほど必要とすることもなく操作が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本実施例の医療用針の一部切欠平面図である。
【図2】
実施例の硬麻針に脊麻針を固定した状態の側面図である。
【図3】
実施例の中芯の平面図である。
【図4】
実施例の内針の平面図である。
【図5】
実施例の硬麻針を脊椎部に刺入する状態の説明図である。
【図6】
実施例の硬麻針から中芯を抜いて脊麻針を挿入する状態の説明図である。
【図7】
実施例の脊麻針から内針を引き抜く状態の説明図である。
【図8】
実施例の脊麻針に麻酔を注入する状態の説明図である。
【図9】
他の実施例の医療用針の一部切欠平面図である。
【図10】
他の実施例の中芯の平面図である。
【図11】
他の実施例の内針の平面図である。
【符号の説明】
1 医療用針
2 硬麻針
2a 硬麻針本体
3 目盛り
4 把持部
5 翼状板
6 固定用窓
6a 導入溝
7 中芯
8 脊麻針
8a 脊麻針本体
9 注射器
10 接続部
11 内針
12 脊椎部
13 硬膜外腔
14 馬尾神経
15 医療用針
16 硬麻針
16a 硬麻針本体
17 中芯
18 脊麻針
18a 脊麻針本体
19 内針
20 固定用窓
21 固定具
22 把持部
23 接続部
24 脳脊髄液
25 導入溝
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-03-04 
結審通知日 2008-03-07 
審決日 2008-03-18 
出願番号 実願平5-61428 
審決分類 U 1 113・ 121- ZA (A61M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小川 慶子  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 北村 英隆
豊永 茂弘
登録日 1999-05-14 
登録番号 実用新案登録第2597672号(U2597672) 
考案の名称 医療用針  
代理人 福田 武通  
代理人 戸島 省四郎  
代理人 戸島 省四郎  
代理人 福田 伸一  
代理人 福田 賢三  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社   サービスに関しての問い合わせ