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審決分類 審判    A43B
管理番号 1214466
審判番号 無効2009-400002  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-06-30 
確定日 2010-03-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第3141684号実用新案「靴の装飾構造」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第3141684号の請求項1?7に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 I 手続の経緯
本件実用新案登録第3141684号に係る考案についての出願は、平成20年2月29日に実用新案登録出願され、平成20年4月23日にその考案について実用新案登録の設定登録がなされた。
その後、平成21年6月30日に請求人(加藤実)から実用新案登録無効審判の請求がなされ、これに対し、被請求人(張耀鐘)から応答はなされなかったものである。

II 本件登録実用新案
本件実用新案登録の請求項1乃至7に係る登録実用新案(以下、「本件考案1乃至7」という。)は、本件の登録明細書及び図面の記載からみて、次のとおりのものである。
「【請求項1】
靴の装飾構造であって、靴底、靴本体、及び、装飾部からなり、
前記靴底は、重量の軽いEVA型内発泡で構成し、頂面外周は上向けに突出成型した突縁を有し、
前記靴本体は、頂端から下向けに脚部形状に適合する挿入部を有し、前記靴本体は、前記挿入部底端に、封閉する底板を有し、前記底板は靴底頂面に対合し、前記靴本体底縁外周は前記突縁中に容置されると共に、装飾部を配置する間隔を有し、
前記装飾部はTPRを原材料として成型した有色物で、前記有色物は前記突縁頂端から突出し、靴本体の外周を装飾することを特徴とする靴の装飾構造。
【請求項2】
靴の装飾構造であって、靴底、靴本体、及び、装飾部からなり、
前記靴底は、重量の軽いEVA型内発泡で構成し、頂面外周は上向けに突出成型した突縁を有し、
前記靴本体は、頂端から下向けに脚部形状に適合する挿入部を有し、前記靴本体は、前記挿入部底端に、封閉する底板を有し、前記底板は靴底頂面に対合し、前記靴本体底縁外周は前記突縁中に容置されると共に、装飾部を配置する間隔を有し、
前記装飾部はPVCを原材料として成型した有色物で、前記有色物は前記突縁頂端から突出し、靴本体の外周を装飾することを特徴とする靴の装飾構造。
【請求項3】
靴の装飾構造であって、靴底、靴本体、及び、装飾部からなり、
前記靴底は、重量の軽いEVA型内発泡で構成し、頂面外周は上向けに突出成型した突縁を有し、
前記靴本体は、頂端から下向けに脚部形状に適合する挿入部を有し、前記靴本体は、前記挿入部底端に、封閉する底板を有し、前記底板は靴底頂面に対合し、前記靴本体底縁外周は前記突縁中に容置されると共に、装飾部を配置する間隔を有し、
前記装飾部はTPUを原材料として成型した有色物で、前記有色物は前記突縁頂端から突出し、靴本体の外周を装飾することを特徴とする靴の装飾構造。
【請求項4】
前記装飾部底縁は湾曲して前記靴底頂面、及び、前記靴本体底板の間に挟合されることを特徴とする請求項1、2、或いは、3に記載の靴の装飾構造。
【請求項5】
前記装飾部は前記突縁頂端に抵接する突部を有することを特徴とする請求項4に記載の靴の装飾構造。
【請求項6】
前記装飾部は前記靴底に直接成型された後、前記靴本体を前記靴底に緊密に固定することを特徴とする請求項4に記載の靴の装飾構造。
【請求項7】
前記装飾部は前記本体に直接成型された後、前記靴底に固定されることを特徴とする請求項4に記載の靴の装飾構造。」

III 請求人の主張の概略
請求人の主張は、以下のとおりである。
本件請求項1乃至7に係る各考案は、甲第1号証に記載の考案に、甲第2号証及び甲第3号証に記載の考案を組み合わせ、また、甲第4号証乃至甲第7号証に記載の周知事項を加味することにより、当業者がきわめて容易に考案し得たものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。
したがって、本件実用新案登録は実用新案法第37条第1項第2号に該当するものであって、無効とすべきものである。

〈証拠方法〉
甲第1号証:特公平6-55169号公報
甲第2号証:特開2005-143637号公報
甲第3号証:登録実用新案第3134487号公報
甲第4号証:特開2000-198149号公報
甲第5号証:特開2005-87639号公報
甲第6号証:特開2005-328906号公報
甲第7号証:特許第4028460号公報

IV 当審の判断
1 甲第1乃至7号証の記載事項
(1)甲第1号証(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
a「【請求項1】少なくとも胛被と靴底とからなる靴の周側表面に靴底の色相と異なる色相の装飾線を配設した靴において、前記靴底を、適宜数の色相の異なる皮層部材を重積して形成し、かつ前記装飾線が少なくとも各皮層部材の一部として該靴底の周側表面に露出させて形成したことを特徴とする靴。」(第1欄2乃至7行)
b「〔産業上の利用分野〕
本発明は、靴の商品価値を向上させるため、靴の周側表面に靴底の色相と異なる色相の装飾線を配設した靴に関するものである。」(第1欄9乃至12行)
c「ブーツAは、第1?2図に示されるように胛被1を靴底2の上端部に外周面に縫着して形成したもので、この靴底2は、外皮層2aと内皮層2bとにより構成されている。
その製造方法は、射出成形法や熱プレス法などにより成形することができる。ここでは、射出成形法による靴底2の成形について説明すると、外皮層2aは、第3図に示すように胛被1の色相と異なる色相の、例えばポリ塩化ビニル、合成ゴム、ウレタン樹脂などの熱可塑性合成樹脂の靴底部材Kをボトムモールド3、サイドモールド3′およびアッパーモールド4の嵌合で形成される船形の外皮層成形用空隙5内に射出口6より射出して成形するものであり、また内皮層2bは、第4図に示すように、前記外皮層2aを内部に載置したボトムモールド7(前記サイドモールド3に同じ)、サイドモールド7′内の上部に船形でかつ外皮層2aより縦長の内皮層成形空隙8を形成させてサイドモールド7′およびアッパーモールド9を嵌合し、そののちアッパーモールド9に形成された射出口10から内皮層成形用空隙8内に胛被1および外皮層2aと異なる色相の前記靴底部材Kを射出して外皮層2a上にこれを一体に成形するもので、この内皮層2bの成形により靴底2が形成される。また、外皮層2aと内皮層2bの成形順序は、逆に行ってもよい。」(第4欄30行乃至第5欄3行)
d「このとき、前記ボトムモールド7、サイドモールド7′の内部面には、このモールド内に載置した外皮層2aの上縁の上方に、この外皮層2aより若干肉厚でかつ細幅の装飾線成形用陥没部11が陥没形成されており、これにより成形された靴底2には、外皮層2aの上端周縁に内皮層2bと同じ色相の装飾線12が周設されるものである。」(第5欄4乃至10行)
e「なお、本発明に使用する胛被1は、例えば第10図に示すような下縁に中底布を縫着したものでも可能であり、かつ靴底2は、前記した射出成形による成形に限定されず、例えば加熱プレス加工により成形することも可能であり、さらに装飾線12はブーツAの周側表面に周設せずとも、例えば爪先部または踵部のみに線状に形成することも可能であるとともに、この装飾線12は線状に限らず、例えば球状や多角形状など、任意形状に形成することも可能である。」(第5欄26乃至34行)
f「本発明は、前記のように、少なくとも胛被と靴底とからなる靴の周側表面に該靴底の色相と異なる色相の装飾線を配設した靴において、前記靴底を、適宜数の色相の異なる皮層部材を重積して形成し、かつ前記装飾線が少なくとも各皮層部材の一部として該靴底の周側表面に露出させて形成することえ、装飾線の靴からの脱落が皆無となり、一方この装飾線を均一厚かつ均一幅で靴の所定位置に湾曲せずに配設することも可能となり、それゆえ装飾線の装飾物としての効果、すなわち靴の外観を良好にする効果をも向上させることが可能となり、しかも従来のような装飾線を周設するための後工程を合理化することも可能となる。」(第6欄31乃至42行)

第2図及び第3図の記載から、外皮層2aの頂面外周は上向けに突出成型した突縁を有している構造が窺える。

記載事項a及びbの記載から、刊行物1には、靴の装飾構造について記載されている。
記載事項c及びeの記載を併せてみて、ブーツAの上方部分について、第2図に記載されたごとき胛被1に代えて第10図のごとき胛被20及び中底布20aとすることが記載されている(以下、胛被20及び中底布20aとからなる部分を「靴本体部分」という。)。
第1図の記載から、靴本体部分は、その頂端から下向けに脚部形状に適合する挿入部を有している。
第10図の記載から、靴本体部分は、挿入部底端に、封閉する中底布20aを有している。
第2図において、胛被1を靴本体部分に置き換えた構造は、自ずと外皮層2a、内皮層2b、中底布20aの順に重なる構造となるから、靴本体部分の中底布20aは内皮層2bを介して外皮層2aの頂面に対合するといえるものである。また、前記靴本体部分の底縁外周は上記突縁中に容置されると共に、内皮層2bを配置する間隔を有するといえるものである。
記載事項cの「内皮層2bは、・・・アッパーモールド9に形成された射出口10から内皮層成形用空隙8内に胛被1および外皮層2aと異なる色相の前記靴底部材Kを射出して外皮層2a上にこれを一体に成形する」との記載から、内皮層2bは樹脂を原料として成型した有色物である。
記載事項dの記載から、内皮層2bの有色物は、外皮層2aの突縁頂端から突出し、靴本体部分の外周を装飾するものである。

以上から、刊行物1には、次の考案(以下、「甲1考案」という。)が記載されている。
「靴の装飾構造であって、外皮層2a、靴本体部分、及び、内皮層2bからなり、
前記外皮層2aは、熱可塑性合成樹脂を用い射出成形で構成し、頂面外周は上向けに突出成型した突縁を有し、
前記靴本体部分は、頂端から下向けに脚部形状に適合する挿入部を有し、前記靴本体部分は、前記挿入部底端に、封閉する中底布20aを有し、前記中底布20aは内皮層2bを介して外皮層2aの頂面に対合し、前記靴本体部分の底縁外周は前記突縁中に容置されると共に、内皮層2bを配置する間隔を有し、
前記内皮層2bは樹脂を原材料として成型した有色物で、前記有色物は前記突縁頂端から突出し、靴本体の外周を装飾する靴の装飾構造。」

(2)甲第2号証(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
g「【0001】
本発明は靴の製造方法に関し、特にソールの外周面に凹凸模様を形成することができる靴の製造方法に関する。」
h「【0007】
・・・本実施形態においては、まず、ソール用意をし、即ち熱可塑性ソール10を用意する(ソール用意工程)。本実施形態において、熱可塑性ソール10はTPUから構成されているが、これに限らず、PVCやPP,ABS,PE,TPRよりなる群れから選ばれたものが使用されてもよい。」
i「【0008】
次に、下面21と下面21の周縁に沿いながら上へ延伸している周面22とを有するアッパー20を用意する(アッパー用意工程)。・・・
【0009】
それに引き続いて、・・・金型セット40を用意する(金型セット用意工程)。金型セット40は、靴型30を有する上型41と、上型40と対向する下型42と、互いに対向する2つの側型43とからなっている。
【0010】
そして、アッパー20の下面21に接着剤を塗布する(接着剤塗布工程)。その後、アッパー20を熱可塑性ソール10の上方に配置してソール10の周面13の上縁部131をアッパー20の周面22の下縁部に外から覆わせると同時に、通孔16と前記内周面の開口とを合わせるようにアッパー20とソール10とを金型セット40のキャビティー内に入れる(金型セット設置工程)。」
j「【0013】
次に、本発明に係る靴の製造方法の第2の実施形態を説明する。・・・なお、前記支持部材の強度を強化するために、中空体61内に補強材62を入れることができる。補強材62は、EVA,PU,TPU,PVCからなる群れより選ばれたものからなる。」

(3)甲第3号証(以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
k「【0001】
本考案は、滑り留め靴に関し、特に、異なる材質からなる靴体、靴底を緊密に一体に固着してなり、現在の雨靴または雪靴の構造に対応して、総重量を軽くし、耐摩擦性、滑り止め性を良くし、型式の変更に便利な多くの技術的特徴を兼具することを特徴とする滑り止め効果を有する雨靴または雪靴に関する。」
l「【0010】
靴底10は、耐摩擦性および滑り止め性が良好なTPR(熱可塑性ゴム)材質から構成され、射出成形により形成するのは、例えば、片状体の大きな底であり、その上面外周に環凸縁11を形成すると共に底面には、必要に応じて模様12を形成する。」
m「【0011】
一体成型を例とすれば、靴底10を射出機台に置き、治具により定位し、その後、靴底10上面および環凸縁11の間にTPR処理剤を塗布し、続いて、この靴底10上面に靴体の金型を合わせ、溶融した可塑性PVC材料を射出して靴底10上面に靴体20を成型し、靴体20を靴底10上面に緊密に固着させ、一体に雨靴または雪靴構造を構成する。
この靴体20は、上端から下向きに脚部形状に合った着用空間21を凹ませてなり、靴体20に密閉した底板22を具えることにより、該底板22は、靴底10の環凸縁11内および靴底10上面の間でこれらに固着する。」

(4)甲第4号証(以下、「刊行物4」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
n「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ユニットソール、ダイレクトソール、長靴の底等に有用な射出成形靴底ならびにその製造法に関するものである。」
o「【0007】この発明において、靴底本体1は,PVC,TR,TPU等の射出成形可能な熱可塑性の合成樹脂乃至ゴム、又は液状ポリウレタン等を主成分とする靴底主体成形材で射出成形される。軽量性と耐熱性という観点から靴底本体は発泡性のPVC,発泡性の液状ポリウレタンで射出成形されることが望ましい。」

(5)甲第5号証(以下、「刊行物5」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
p「【0001】
本発明は、例えば降雪地方において冬場に履く作業靴に利用して好適な耐滑靴底に関する。」
q「【0013】
この作業靴1は動きやすいように運動靴(スニーカー)タイプとされており、EVA(エチレンビニルアセテート)発泡体からなるミッドソール2と、ミッドソール2に貼着された、EVA発泡体よりも硬質なニトリルゴム(NBR)やスチレンーブタジエンゴム(SBR)等の非発泡性又は微発泡性の合成ゴムからなるアウトソール3a、3bとを備えている。即ち、ミッドソール2の素材であるEVA発泡体は、アウトソール3a、3bの素材である合成ゴムに比べて軟質でクッション性に優れ、かつ、軽量なものである。」

(6)甲第6号証(以下、「刊行物6」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
r「【0001】
本発明は、防水性能と、優れた運動性能とを兼ね備えた軽量靴に関する。」
s「【0006】
・・・、本発明の第1構成に係る軽量靴は、甲被と靴底のうちの少なくとも甲被がエチレンビニルアセテート(EVA)の発泡体により形成され、足首とその上方を覆う筒部が前記甲被に連結され、甲被よりも柔軟な防水性材料からなるインナーシューズが甲被の内側に装着されている。
【0007】
この構成によれば、甲被と靴底のうちの少なくとも甲被は靴全体の主要部を占め、甲被を形成するエチレンビニルアセテート(EVA)の発泡体は、密度がきわめて低いので、靴全体を大幅に軽量化することができる。」

(7)甲第7号証(以下、「刊行物7」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
t「【0001】
本発明は、ゴルフ靴及びその製造方法に関する。」
u「【0018】
ミッドソール5は、特に制限されないが、例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリウレタン(PU)、ブタジエンゴム又はクロロプレンゴムを基材とする発泡体が好適に用いられ得る。特に、軽量であって、しかも耐加水分解性に優れるエチレン-酢酸ビニル共重合体の発泡体が好ましい。」

2 対比・判断
(1)本件考案1について
a 対比
本件考案1と甲1考案とを対比する。
本件考案1と甲1考案とは、いずれも靴の装飾構造に関するものである。
甲1考案の「外皮層2a」、「靴本体部分」、「内皮層2b」は、それぞれ、本件考案1の「靴底」、「靴本体」、「装飾部」に相当する。
甲1考案の「前記外皮層2aは、熱可塑性合成樹脂を用い射出成形で構成し、」と本件考案1の「前記靴底は、重量の軽いEVA型内発泡で構成し、」とは、「前記靴底は、合成樹脂を用い型成型で構成し、」であるかぎりにおいて一致する。
甲1考案の「中底布20a」は、本件考案1の「底板」に相当する。
甲1考案の「前記中底布20aは内皮層2bを介して外皮層2aの頂面に対合し、」は、本件考案1の「前記底板は靴底頂面に対合し、」に相当する。
甲1考案の「前記内皮層2bは樹脂を原材料として成型した有色物で、」と本件考案1の「前記装飾部はTPRを原材料として成型した有色物で、」とは、「前記装飾部は樹脂を原材料として成型した有色物で、」であるかぎりにおいて一致する。

したがって、両者は、
「靴の装飾構造であって、靴底、靴本体、及び、装飾部からなり、
前記靴底は、合成樹脂を用い型成型で構成し、頂面外周は上向けに突出成型した突縁を有し、
前記靴本体は、頂端から下向けに脚部形状に適合する挿入部を有し、前記靴本体は、前記挿入部底端に、封閉する底板を有し、前記底板は靴底頂面に対合し、前記靴本体底縁外周は前記突縁中に容置されると共に、装飾部を配置する間隔を有し、
前記装飾部は樹脂を原材料として成型した有色物で、前記有色物は前記突縁頂端から突出し、靴本体の外周を装飾する靴の装飾構造。」
で一致し、つぎの点で相違する。

(相違点1)
靴底を合成樹脂で型成型するにあたり、本件考案1は「重量の軽いEVA型内発泡で構成し」ているのに対し、甲1考案は熱可塑性合成樹脂を用い射出成形で構成している点。

(相違点2)
装飾部を成型する樹脂材料について、本件考案1はTPRであるのに対し、甲1考案は特定されていない点。

b 判断
上記各相違点について検討する。
相違点1について
靴底の重量を軽くするためにEVA発泡材料を用いることは、刊行物5、7に記載されている(記載事項q、uを参照。)。
したがって、甲1考案に刊行物5または7に記載された技術を適用し、靴底を、合成樹脂を用いて型成型するに際して、熱可塑性合成樹脂を用い射出成形することにかえてEVA型内発泡とすることは当業者がきわめて容易になし得る程度の事項にすぎない。

相違点2について
靴底を成型する原材料として、TPRを用いることが刊行物2、3に記載されている(記載事項h、lを参照。)。
そして、甲1考案の装飾部(内皮層2b)は靴底(外皮層2a)に隣接して配置されるものである。
したがって、甲1考案の、靴底に隣接して配置される装飾部の樹脂材料として、刊行物2または3に記載されたTPRを用いることは当業者がきわめて容易になし得る程度の事項にすぎない。

本件考案1を全体としてみても、作用効果については、甲1考案、刊行物2、3、5及び7に記載された技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本件考案1は、甲1考案、刊行物2、3、5及び7に記載された技術に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

(2)本件考案2について
a 対比
本件考案2は、その考案を特定するために必要な事項である装飾部について、本件考案1の「前記装飾部はTPRを原材料として」にかえて「前記装飾部はPVCを原材料として」とするものである。
したがって、本件考案2と甲1考案とを対比すると、上記相違点1に加えて、次の点で相違する。

(相違点3)
装飾部を成型する樹脂材料について、本件考案2はPVCであるのに対し、甲1考案は特定されていない点。

b 判断
相違点1についての判断は、本件考案1の相違点1についての判断と同様である。

相違点3について
靴底を成型する原材料としてPVCを用いることが刊行物2、4に記載されている(記載事項h、oを参照。)。
そして、甲1考案の装飾部(内皮層2b)は靴底(外皮層2a)に隣接して配置されるものである。
したがって、甲1考案の、靴底に隣接して配置される装飾部の樹脂材料として、刊行物2または4に記載されたPVCを用いることは当業者がきわめて容易になし得る程度の事項にすぎない。

本件考案2を全体としてみても、作用効果については、甲1考案、刊行物2、4、5及び7に記載された技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本件考案2は、甲1考案、刊行物2、4、5及び7に記載された技術に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

(3)本件考案3について
a 対比
本件考案3は、その考案を特定するために必要な事項である装飾部について、本件考案1の「前記装飾部はTPRを原材料として」にかえて「前記装飾部はTPUを原材料として」とするものである。
したがって、本件考案3と甲1考案とを対比すると、上記相違点1に加えて、次の点で相違する。

(相違点4)
装飾部を成型する樹脂材料について、本件考案3はTPUであるのに対し、甲1考案は特定されていない点。

b 判断
相違点1についての判断は、本件考案1の相違点1についての判断と同様である。

相違点4について
靴底を成型する原材料としてTPUを用いることが刊行物2、4に記載されている(記載事項h、oを参照。)。
そして、甲1考案の装飾部(内皮層2b)は靴底(外皮層2a)に隣接して配置されるものである。
したがって、甲1考案の、靴底に隣接して配置される装飾部の樹脂材料として、刊行物2または4に記載されたTPUを用いることは当業者がきわめて容易になし得る程度の事項にすぎない。

本件考案3を全体としてみても、作用効果については、甲1考案、刊行物2、4、5及び7に記載された技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本件考案3は、甲1考案、刊行物2、4、5及び7に記載された技術に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

(4)本件考案4について
a 対比
本件考案4と甲1考案とを対比すると、上記相違点1及び2に加えて、次の点で相違する。

(相違点5)
本件考案4は「前記装飾部底縁は湾曲して前記靴底頂面、及び、前記靴本体底板の間に挟合される」構成を有しているのに対し、甲1考案は当該構成を有しているかどうか不明な点。

b 判断
相違点1及び2についての判断は、本件考案1についての相違点1及び2についての判断と同様である。

相違点5について
甲1考案は、「外皮層2aは、・・・頂面外周は上向けに突出成型した突縁を有」するとともに、「前記靴本体部分の底縁外周は前記突縁中に容置されると共に、内皮層2bを配置する間隔を有」するものであるから、装飾部は「靴底頂面、及び、靴本体底板の間に挟合される」といえるものである。
一方、刊行物1の第2図の記載から、内皮層2bの底縁を湾曲する構造が窺える。
したがって、甲1考案の装飾部を、「靴底頂面、及び、靴本体底板の間に挟合される」ようにするに際して、当該装飾部の底縁を湾曲させて、「前記装飾部底縁は湾曲して前記靴底頂面、及び、前記靴本体底板の間に挟合される」ようにすることは当業者がきわめて容易になし得る程度の事項にすぎない。

本件考案4を全体としてみても、作用効果については、甲1考案、刊行物2、3、5及び7に記載された技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本件考案4は、甲1考案、刊行物2、3、5及び7に記載された技術に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

(5)本件考案5について
本件考案5は、本件考案4の装飾部を「前記装飾部は前記突縁頂端に抵接する突部を有する」と限定するものである。
一方、甲1考案についてみると、刊行物1には、内皮層2bが外皮層2aの突縁頂端に低接する装飾線12を有する構造であることが記載されている(記載事項c、d、第2図及び第4図の記載を参照。)。
すなわち、甲1考案の装飾部は突縁頂端に低接する突部を有するものを含むものである。
したがって、本件考案5と甲1考案とを対比したときの相違点は、本件考案4と甲1考案とを対比したときの相違点と実質的に相違するものではなく、また、本件考案5についての判断も本件考案4についての判断と相違しない。
よって、甲1考案、刊行物2、3、5及び7に記載された技術に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

(6)本件考案6について
a 対比
本件考案6と甲1考案とを対比すると、上記相違点1、2及び5に加えて、次の点で相違する。

(相違点6)
本件考案6は「前記装飾部は前記靴底に直接成型された後、前記靴本体を前記靴底に緊密に固定する」構成を有しているのに対し、甲1考案は当該構成を有しているかどうか不明な点。

b 判断
相違点1、2及び5についての判断は、本件考案4についての相違点1、2及び5についての判断と同様である。

相違点6について
甲1考案の装飾部は、本件考案6と同様に、成型されるものである(記載事項c及びdを参照。)
したがって、甲1考案の成型される装飾部を「装飾部底縁は湾曲して前記靴底頂面、及び、前記靴本体底板の間に挟合される」構成(本件考案4を参照。)とするにあたり、その手順として「前記装飾部は前記靴底に直接成型された後、前記靴本体を前記靴底に緊密に固定する」構成とすることは当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。

本件考案6を全体としてみても、作用効果については、甲1考案、刊行物2、3、5及び7に記載された技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本件考案6は、甲1考案、刊行物2、3、5及び7に記載された技術に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

(7)本件考案7について
a 対比
本件考案7と甲1考案とを対比すると、上記相違点1、2及び5に加えて、次の点で相違する。

(相違点7)
本件考案7は「前記装飾部は前記本体に直接成型された後、前記靴底に固定される」構成を有しているのに対し、甲1考案は当該構成を有しているかどうか不明な点。

b 判断
相違点1、2及び5についての判断は、本件考案4についての相違点1、2及び5についての判断と同様である。

相違点7について
甲1考案の装飾部は、本件考案7と同様に、成型されるものである(記載事項c及びdを参照。)
したがって、甲1考案の成型される装飾部を「装飾部底縁は湾曲して前記靴底頂面、及び、前記靴本体底板の間に挟合される」構成(本件考案4を参照。)とするにあたり、その手順として「前記装飾部は前記本体に直接成型された後、前記靴底に固定される」構成とすることは当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。

本件考案7を全体としてみても、作用効果については、甲1考案、刊行物2、3、5及び7に記載された技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本件考案7は、甲1考案、刊行物2、3、5及び7に記載された技術に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

3 小括
以上のとおりであるから、本件考案1乃至7に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものである。

V まとめ
本件考案1乃至7についての実用新案登録は、同法第37条第1項第2号の規定に該当するので、無効とすべきものである。

審判に関する費用については、実用新案法第41条において準用する特許法第169条第2項の規定でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2009-10-23 
結審通知日 2009-10-27 
審決日 2009-11-09 
出願番号 実願2008-1144(U2008-1144) 
審決分類 U 1 114・ 121- Z (A43B)
最終処分 成立  
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 鈴木 洋昭
豊永 茂弘
登録日 2008-04-23 
登録番号 実用新案登録第3141684号(U3141684) 
考案の名称 靴の装飾構造  
代理人 齋藤 晴男  
代理人 齋藤 貴広  
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