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審決分類 審判    A47B
管理番号 1218125
審判番号 無効2009-400004  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-08-10 
確定日 2010-05-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第3118288号実用新案「段部を備えた流し台のシンク」の実用新案登録無効審判事件について,次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第3118288号の請求項1?3に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1.手続きの経緯
平成17年11月 4日:実用新案登録出願(実願2005-9253号)
平成17年12月21日:実用新案登録(実用新案登録第3118288号)
平成21年 8月 7日(8月10日差出):本件無効審判請求
平成21年10月 9日:答弁書の提出
平成22年 1月13日(1月14日差出):上申書の提出(被請求人より)
平成22年 1月15日:口頭審理陳述要領書の提出(請求人より)
平成22年 1月29日:口頭審理(請求人のみ出頭)
平成22年 2月16日:上申書の提出(請求人より)

第2.本件考案
本件実用新案登録第3118288号の請求項1?3に係る考案は,実用新案登録明細書及び図面の記載からみて,その実用新案登録請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
シンク(1)内に,調理プレートや水切りプレート等のプレート(2)を跨座するための複数の凹凸の段部を有する流し台(X)のシンク(1)において,シンク(1)内の相対向する内縁面(4)の位置に,それぞれ,断面形状が逆V字状の突起段部(3)を,シンク(1)と一体にそれぞれ形成したことを特徴とする段部を備えた流し台のシンク。
【請求項2】
シンク(1)内に,調理プレートや水切りプレート等のプレート(2)を段部を変えて跨座するための複数の凹凸の段部を有する流し台(X)のシンク(1)において,シンク(1)内の相対向する内縁面(4)の位置に,それぞれ複数の段部を設けるに当たり,それぞれ,断面形状が逆V字状の突起段部(3)を,シンク(1)と一体にそれぞれ形成し,該突起段部(3)の幅寸法(α)は,シンク(1)の縦幅寸法(β)を半径とし,シンク(1)の一方の内縁面(4)から縦幅寸法(β)で垂直方向に円弧(θ)を描いた際に,相対向する反対側の上部突起段部(3′)が該円弧(θ)に触れない幅寸法(α)としたことを特徴とする段部を備えた流し台のシンク。
【請求項3】
逆V字状の突起段部(3)の両端(Y)(Y)が,流し台(X)のシンクのコーナー部(Z)まで到達しないことを特徴とする請求項1または2記載の段部を備えた流し台のシンク。」(以下,上記請求項1?3に係る考案を,それぞれ「本件考案1」?「本件考案3」という。)

第3.当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は,「実用新案登録第3118288号考案の実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし3に係る考案についての実用新案登録を無効にする。審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求める。」ことを趣旨とし,その理由として,本件考案1,2は,本件出願前に頒布された甲第1号証に記載された考案及び甲第3の1,4,5号証に記載された周知の技術に基づいて,また,本件考案3は,同じく甲第1号証に記載された考案及び甲第3の1,4,5,9号証に記載された周知の技術に基づいて,当業者が極めて容易に考案することができたものであるから,本件実用新案登録は実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり,実用新案法第37条第1項第2号の規定により無効とすべきである旨主張し,証拠方法として,次の甲第1?12号証を提出している。

(請求書に添付)
・甲第1号証:特開平7-204113号公報(公開日:平成7年8月8日)
・甲第2号証:特開平7-204040号公報(公開日:平成7年8月8日)
・甲第3号証の1:特開平11-140933号公報(公開日:平成11年5月25日)
・甲第3号証の2:甲第3号証の1の【図4】を拡大した図
・甲第4号証:被請求人が本件実用新案の出願前に,キッチンハウス株式会社から送付されたFAX文書
・甲第5号証:被請求人が本件実用新案の出願前に作成し,搬入・取付けした設計図
・甲第6号証:甲第1号証の【図3】に円弧(θ)を加筆した図
(陳述要領書に添付)
・甲第7号証:本件請求人が原告となり,被請求人を被告として東京地方裁判所に提起された訴訟(平成21年(ワ)第5610号特許権侵害差止請求事件)において,被告が平成21年5月15日に裁判所に提出した準備書面(1)であり,本件出願前に,甲第4及び5号証に図示されたキッチン流し台が被請求人により顧客の求めに応じて製作され,その形状が公知であったことを証明するもの
・甲第8号証:本件請求人が原告となり,被請求人を被告として東京地方裁判所に提起された訴訟(平成21年(ワ)第5610号特許権侵害差止請求事件)において,被告が平成21年5月15日に裁判所に提出した乙第1号証の1であり,甲5号証に図示されたキッチン流し台の前提になったスケッチ図
・甲第9号証:実願昭56-155130号(実開昭58-58835号)のマイクロフィルム(公開日:昭和58年4月21日)
(上申書に添付)
・甲第10号証:甲第4号証の2枚目の図面の一部を拡大し,かつ補足説明のために補助的な線・記号等を付した拡大説明図
・甲第11号証:甲第10号証の補足説明のために本件請求人代理人が作成した模式図
・甲第12号証:甲第4号証の2枚目の図面の一部を拡大し,かつ補足説明のために甲第10号証とは別の補助的な線・記号等を付した拡大説明図

2.被請求人の主張
被請求人は,「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は,請求人の負担とする。」との審決を求め,その理由として,本件考案1?3は,誰でも容易に考えられるものではなく,格別の効果を奏するものであるから,審判請求の無効理由は成り立たない旨を主張している。

第4.甲第1,3の1,4,5号証の記載事項
1.甲第1号証の記載事項
甲第1号証には,図面とともに次の記載事項がある。
(1a)「【請求項1】シンク部に連なる天板部を凹ませ前記シンク部に向かって下に傾く底板を有する傾斜部を設けるとともに,水切り板又はまな板を支持し案内するガイドを,傾斜部とシンク部との間で連続して・・・形成してなる流し台。」
(1b)「【0006】
【作用】シンク部に向かって下に傾く底板を有する傾斜部を凹設するとともに,水切り板又はまな板を支持し案内するガイドを,傾斜部では前記底板と同じ向きに傾けて形成している。従って,傾斜部においてガイドによりシンク部に傾く水勾配を持たせて水切り板又はまな板を支持でき,・・・
【0007】又前記ガイドは,傾斜部とシンク部との間で連続して形成されるため,水切り板又はまな板をガイドに沿って傾斜部とシンク部との間で摺動させることができ,・・・シンク部に水切り板とまな板とを配して調理スペースを広げることも可能となる。」
(1c)「【0008】
【実施例】以下本発明の一実施例を図面に基づき説明する。図において本発明の流し台1は,シンク部2に連なる天板部3を凹ませ前記シンク部2に向かって下に傾く底板5を有する傾斜部4を設けるとともに,水切り板A又はまな板Bを支持し案内するガイド6を,傾斜部4とシンク部2との間で連続してかつ傾斜部4では前記底板5と同じ向きに傾けて形成している。
・・・
【0010】・・・天板部3には,図1?3に示すように,この天板部3を凹ませることにより平面略矩形かつ上開放の箱状をなすシンク部2が形成されるとともに,流し台1の前後方向に平行なシンク部2の一方の側壁11の側方に,天板部3を凹ませシンク部2に向かって下に傾きかつ下端が前記側壁11上端に一体に結合される矩形の底板5を有する傾斜部4が設けられる。
【0011】又傾斜部4とシンク部2との前後の壁部12A1,12A2,12B1,12B2上端部には,本実施例では水切り板Aとまな板Bとを共に支持する上下のガイド6A,6Bからなるガイド6が形成される。
【0012】下のガイド6Bは,シンク部2の前後の壁部12A1,12B1を夫々前方,後方に凹ませることにより形成される水平なシンク部の下のガイド部14と,傾斜部4の前後の壁部12A2,12B2を夫々前方,後方に凹ませることにより形成されるとともに前記シンク部の下のガイド部14に滑らかに連なりしかも前記底板5と同じ向き,即ちシンク部2に向かって下に傾く傾斜部の下のガイド部15とからなる。
【0013】又前記上のガイド6Aは,下のガイド6B上方でシンク部2の前後の壁部12A1,12B1を夫々断面コ字状に突出させることにより形成される水平なシンク部の上のガイド部16と,前記傾斜部の下のガイド部15上方で傾斜部4の前後の壁部12A2,12B2を夫々断面コ字状に突出させることにより形成されるとともに前記シンク部の上のガイド部16に滑らかに連なりしかも前記底板5と同じ向きに傾く傾斜部の上のガイド部17とからなる。
(1d)「【0014】又前記水切り板Aは,例えば・・・平面矩形状をなし,図4?6に示すように,前記下のガイド6B,6B上に両端部を載置して該下のガイド6B,6B上を摺動できる。
【0015】なお水切り板Aは,前記上のガイド6A,6Aによっても支持されかつ案内されうる。
【0016】前記まな板Bは,平面矩形状かつ前記上のガイド6A,6A上に両端部を載置しうる寸法を有し,該上のガイド6A,6Aを摺動できる。又まな板Bも,前記下のガイド6B,6Bによって支持されうる。」

上記記載事項(1a)?(1d)及び図面の記載によれば,甲第1号証には次の考案が記載されていると認められる。

「シンク部2に連なる天板部を凹ませて傾斜部4を設けるとともに,水切り板A又はまな板Bを前後の両端で支持する上下のガイド6A,6Bを,傾斜部4とシンク部2との間で連続して形成し,
下のガイド6Bは,シンク部2の前後の壁部を夫々前方,後方に凹ませることにより形成される下のガイド部14と,傾斜部4の前後の壁部を夫々前方,後方に凹ませることにより形成されるとともに下のガイド部14に滑らかに連なる下のガイド部15とからなり,
上のガイド6Aは,下のガイド6B上方でシンク部2の前後の壁部を夫々断面コ字状に突出させることにより形成される上のガイド部16と,下のガイド部15上方で傾斜部4の前後の壁部を夫々断面コ字状に突出させることにより形成されるとともに上のガイド部16に滑らかに連なる上のガイド部17とからなる流し台。」(以下,「甲第1号証記載考案」という。)

2.甲第3号証の1の記載事項
甲第3号証の1には,次の記載事項がある。

(3a)「【0011】シンク8gは,図4にて明示するように,その後方側の壁面8iが,シンク8gの開口部8jよりも下部が奥方に延びるように形成されている。具体的には,後方側の壁面8iは,第2の段部8bから下が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面となっている。・・・」
(3b)「【0028】・・・中側段部8nは,シンク8gの,前後の壁面8h,8iの左右方向のほぼ全域にわたるのでなく,部分的に形成されてもよい。・・・」
(3c)【図4】から,下の矢印先の円内に示されているように,8b及び8nが「断面形状が逆V字状の突起」であることが看取される。



3.甲第4号証の記載事項
本件出願前に被請求人が顧客の求めに応じて製作した流し台(上記第3.の1.の甲第7号証を参照)の図面が示される甲第4号証には,次の記載事項がある。

(4a)2枚目の左上の図面から,下の矢印先に示されるように,シンクの上側の段部が,「断面形状が逆V字状の突起」であることが看取される。



4.甲第5号証の記載事項
本件出願前に被請求人が顧客の求めに応じて製作した流し台(上記第3.の1.の甲第7号証を参照)の図面が示される甲第5号証には,次の記載事項がある。

(5a)上段の図面から,下の矢印先に示されているように,シンクの上側の段部が「断面形状が逆V字状の突起」であることが看取される。



第5.当審の判断
1.本件考案1について
本件考案1と甲第1号証記載考案を対比すると,
甲第1号証記載考案の「シンク部2」及び「傾斜部4」並びに「流し台」が,本件考案1の「シンク」又は「流し台のシンク」に相当し,以下同様に,
「水切り板A又はまな板B」が「調理プレートや水切りプレート等のプレート」に,
「前後の両端で支持する」が「跨座する」に,
「凹ませることにより形成される下のガイド6B」及び「断面コ字状に突出させることにより形成される上のガイド6A」が「複数の凹凸の段部」に,
「シンク部2の前後の壁部」及び「傾斜部4の前後の壁部」が「シンク内の相対向する内縁面」に,
「シンク部2の前後の壁部,傾斜部4の前後の壁部を凹ませることにより形成される」及び「断面コ字状に突出させることにより形成される」が「シンクと一体にそれぞれ形成した」に,それぞれ相当する。

したがって,両者は,
「シンク内に,調理プレートや水切りプレート等のプレートを跨座するための複数の凹凸の段部を有する流し台のシンクにおいて,シンク内の相対向する内縁面の位置に,段部をシンクと一体にそれぞれ形成した流し台のシンク。」である点で一致し,次の点で相違する。

(相違点1)
段部が,本件考案1では「断面形状が逆V字状の突起」であるのに対して,甲第1号証記載考案では,凹ませた,又は,断面コ字状に突出したものである点。

上記相違点1について検討するに,
流し台のシンクにおいて,段部を「断面形状が逆V字状の突起」とすることは,例えば,甲第3の1,甲第4及び甲第5号証に記載されているように,周知の技術である(上記第4.の記載事項(3c),(4a),(5a)を参照)。
そして,甲第1号証記載考案の段部として,上記周知の技術の「断面形状が逆V字状の突起」を適用して,上記相違点1に係る事項とすることは,当業者がきわめて容易になし得たことである。
そして,本件考案1の奏する効果は,甲第1号証及び周知の技術から予測可能なものであって,格別のものではない。
したがって,本件考案1は,甲第1号証記載考案及び周知の技術に基づいて,当業者がきわめて容易に考案できたものである。

2.本件考案2について
本件考案2と甲第1号証記載考案を対比すると,
両者は,上記第5.の1に示した一致点で一致し,上記相違点1の外に,さらに次の点で相違する。

(相違点2)
本件考案2では,「突起段部の幅寸法は,シンクの縦幅寸法を半径とし,シンクの一方の内縁面から縦幅寸法で垂直方向に円弧を描いた際に,相対向する反対側の上部突起段部が該円弧に触れない幅寸法とし」ているのに対して,
甲第1号証記載考案では,段部の幅寸法について特に規定していない点。

上記相違点1については既に検討済みであるので,ここで上記相違点2について検討する。
上記第4.の記載事項(1d)によれば,甲第1号証記載考案は,段部とその上側に位置する上部突起段部のいずれにも同一のプレートが選択的に跨座させられるから,上部突起段部の寸法幅を,その下側の段部からプレートを取り外す時に,当該プレートが干渉しないようにすることは自明である。
してみれば,甲第1号証記載考案において,少なくとも,プレートの縦幅寸法を半径とし,一方の段部上方のシンクの内側面から縦幅寸法で垂直方向に円弧を描いた際に,相対向する反対側の上部突起段部が該円弧に触れない幅寸法とすることは,当業者が適宜なし得た設計的事項である。
そうすると,プレートの縦幅寸法として理論的に採り得る最大寸法が,段部上方のシンクの縦幅寸法であることを考慮すれば,
甲第1号証記載考案の突起段部の幅寸法を,当該縦幅寸法を半径とし,一方の段部上方のシンクの内側面から縦幅寸法で垂直方向に円弧を描いた際に,相対向する反対側の上部突起段部が該円弧に触れない幅寸法として,上記相違点2に係る事項とすることは,当業者がきわめて容易に想到し得たことである。
そして,本件考案2の奏する効果は,甲第1号証及び周知の技術から予測可能なものであって,格別のものではない。
したがって,本件考案2は,甲第1号証記載考案及び周知の技術に基づいて,当業者がきわめて容易に考案できたものである。

3.本件考案3について
本件考案3と甲第1号証記載考案を対比すると,
両者は,上記第5.の1に示した一致点で一致し,上記相違点1,2の外に,さらに次の点で相違する。

(相違点3)
本件考案3では,「段部の両端が,流し台のシンクのコーナー部まで到達しない」のに対して,甲第1号証記載考案では,そのような構成を有しない点。

上記相違点1,2については既に検討済みであるので,ここで上記相違点3について検討する。
段部を延設する範囲を,プレートが目的の位置に支持できる範囲で適宜決定することは,例えば,甲第3の1号証に記載されているような適宜なし得る設計的事項であるから(上記第4.の記載事項(3b)を参照),甲第1号証記載考案において,上記相違点3に係る事項とすることは当業者が適宜なし得た事項に過ぎない。
そして,本件考案3の奏する効果は,甲第1号証及び周知の技術から予測可能なものであって,格別のものではない。
したがって,本件考案3は,甲第1号証記載考案及び周知の技術に基づいて,当業者がきわめて容易に考案できたものである。

第6.むすび
以上のとおり,本件考案1ないし3は,甲第1号証記載考案及び周知の技術に基づいて,当業者がきわめて容易に考案することができたものであるから,本件考案1ないし3についての実用新案登録は実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり,実用新案法第37条第1項第2号の規定により,無効とすべきものである。
審判に関する費用については,実用新案法第41条で準用する特許法第169条第2項の規定でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2010-03-24 
結審通知日 2010-03-26 
審決日 2010-04-08 
出願番号 実願2005-9253(U2005-9253) 
審決分類 U 1 114・ 121- Z (A47B)
最終処分 成立  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 山本 忠博
宮崎 恭
登録日 2005-12-21 
登録番号 実用新案登録第3118288号(U3118288) 
考案の名称 段部を備えた流し台のシンク  
代理人 菅原 正倫  
代理人 高野 俊彦  
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