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審決分類 審判    A23N
管理番号 1218126
審判番号 無効2009-400006  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-12-22 
確定日 2010-05-26 
事件の表示 上記当事者間の登録第3143868号実用新案「果菜の部分切除処理機」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯

平成20年 5月28日 本件出願
平成20年 7月16日 設定登録(実用新案登録第3143868号)
平成21年12月22日 本件無効審判請求
平成22年 3月 1日 審判事件答弁書
平成22年 3月25日 請求人・口頭審理陳述要領書、上申書
平成22年 3月31日 被請求人・口頭審理陳述要領書
平成22年 4月14日 口頭審理

第2 本件考案
本件実用新案登録の請求項1ないし2に係る考案(以下「本件考案1」ないし「本件考案2」という。)は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし2により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
果菜による押し込みに対し、押し戻し方向に付勢した状態で所定の停止位置まで後退移動可能な当接機構と、
前記当接機構の後退移動を検知する検知手段と、
前記当接機構の周りに配置される切除刃を備え、果菜部位による前記切除刃の押し込みに対し、果菜部位を押し戻し方向に付勢した状態で後退移動可能な処理機構と、
前記検知手段からの検知信号により前記処理機構を前記当接機構周りに軸回転させる回転手段と、からなり、
前記当接機構への果菜の押し込みにより、前記検知手段からの検知信号が前記回転手段を駆動して前記処理機構の前記切除刃を軸回転させることで、前記当接機構の停止位置より後退した前記切除刃の押込位置との差分の区間に存在する果菜部位を切除処理するように構成したことを特徴とする果菜の部分切除処理機。
【請求項2】
前記当接機構の周りに複数の切除刃を周回配置した処理機構としたことを特徴とする請求項1記載の果菜の部分切除処理機。」

第3 請求人の主張
1 請求人は、本件考案1ないし2は、甲1号証に記載された考案であり、実用新案法第3条第1項第3号に該当し、実用新案登録を受けることができないものであるから、同法第37条第1項第2号の規定に該当し、無効とされるべきであると主張し、証拠方法として甲1号証(特開2001-333754号公報)を提出している。

2 具体的には、「甲1号証には、図2にへた切取り装置が、図3?9に皮剥き装置が示されているところ、図2のへた切取り装置が本件考案に相当する。」(口頭審理調書、陳述の要領、請求人の6参照)と、また、「本件考案には新規性進歩性もない旨の審判請求書での主張の意味は、本件考案には新規性がないという意味である。」(口頭審理調書、陳述の要領、請求人の5参照)と主張する。

3 なお、その余の無効理由については、口頭審理において撤回された(口頭審理調書、陳述の要領、請求人の2及び4参照)。
また、請求人が平成22年3月25日付け陳述要領書の第4ページ下から7行目でした、「本件実用新案権は、冒認出願によって得た権利であるから無効である」との無効理由の追加は、請求の理由の要旨を変更する補正であり、許可されなかった(口頭審理調書、陳述の要領、審判長の1参照)。

第4 被請求人の主張
1 これに対し、被請求人は、本件審判請求は成り立たないとの審決を求めている。

2 審判事件答弁書第7ページ第10行?第33行
「本件登録実用新案1における『処理機構』は、・・・『果菜部位による前記切除刃の押し込みに対し、果菜部位を押し戻し方向に付勢した状態で後退移動可能』であることを特徴とするものである。本件登録実用新案1がこのように付勢力を利用する構成であるからこそ、切除刃は、回転手段の駆動によって回転しつつ、押し付けられた果菜部位を皮剥き(果肉の切除)しながら押し戻し方向へ移動し、当接機構の停止位置より後退した前記切除刃の押込位置との差分の区間に存在する果菜部位を切除処理することができる・・・のである。
・・・
本件登録実用新案1の・・・『果菜部位による前記切除刃の押し込みに対し、果菜部位を押し戻し方向に付勢した状態で後退移動可能な処理機構』は、先行技術考案1の・・・『前記回転軸に対して接近および離間する方向に移動可能に設けた従動ユニット』とは、その構成および作用が全く異なるものであることは明白である。つまり、先行技術考案1の従動ユニットは、本件登録実用新案1のように『果菜部位による前記切除刃の押し込みに対し、果菜部位を押し戻し方向に付勢した状態で後退移動』はせず、また、本件登録実用新案1及び2の処理機構も、『前記回転軸に対して接近および離間する方向に移動』しないのである。」

3 口頭審理陳述要領書第3ページ第14行?第26行
「甲第1号証の『へた切り取り装置』は、果菜(柿P)のへた部分Paを当接機構に押し当てることで、該当接機構を下方向に移動(後退)させ、その当接機構の下方向への移動によって検知手段をオン状態にし・・・、回転手段を作動させることで、処理機構の切除刃30を回転させている・・・。その際、切除刃は果菜の押し込み方向における位置を変えることなく回転する(・・・段落0018、0019参照)。その切除刃に、果菜の切り取り部分を押しつけること、さらに云えば、切除刃が軸回転している面領域内に果菜の切り取り部分を押し込むようにすることで、果菜を切除するものである・・・。
その際、甲第1号証の『へた切取り装置』における果菜の切取の厚さは、作業者が押し込み量を手加減しない限り、該装置の利用前に当接機構の停止位置(具体的には、下限ストッパ37)の上下位置を変更することにより調節した『一定の厚さ』となる(・・・段落0049参照)。」

4 口頭審理陳述要領書第4ページ第6行?第11行
「本件登録実用新案1の処理機構は、果菜部位による前記切除刃の押し込みに対し、果菜部位を押し戻し方向に付勢した状態で後退移動可能とされている・・・。これに対し、甲第1号証の『へた切取り装置』の処理装置は、切除刃を果菜の押し込み・押し戻し方向における定位置に位置させて配設されている点で異なる・・・。」

5 口頭審理陳述要領書第5ページ第12行?第33行
「本件の登録実用新案1の処理装置においては、切除刃の果菜に対する押し戻し方向の付勢力を利用して、回転手段の駆動により回転する処理機構の切除刃を果菜に押し当て、果菜のへ夕と肩肉を切除しながら押し戻し方向に移動し続けて果菜の肩肉を切除する。
・・・
これに対し、甲第1号証の『へた切取り装置』における処理装置の切除刃は、前述のように、果菜の押し込み方向における位置を変えることなく回転する・・・。」

第5 当審の判断
請求人は、甲1号証のへた切取り装置(図2)が本件考案1ないし2に相当する旨の主張をする(前記第3の2参照)ので、以下これについて検討する。

1 甲1号証の記載内容
(1)段落【0001】
「【産業上の利用分野】本発明は、果菜(果物および野菜)の皮を剥く皮剥き装置に関する。また、本発明は、果菜の皮を剥く作業を、へた部分を切り取る作業と、へた部分以外の皮を剥く作業とに分け、両方の作業を行わせるようにした皮剥き機に関する。」

(2)段落【0016】?【0026】
「【0016】[へた切取り装置1Aの構成]次に、へた切取り装置1Aの構成について説明する。図2は、へた切取り装置1Aの内部構造を表す縦断面図である。へた切取り装置1Aは、第1天板5(図1)の下面に固定された上ケース12を有している。上ケース12は、円筒形状の外筒部12aと、外筒部12aの上端近傍に設けられた円板形状の上板13と、外筒部12aの下端に設けられたほぼ円板形状の底板18とにより構成されている。なお、外筒部12aは、その軸方向が鉛直方向を向くように取り付けられている。外筒部12aの外周における上端部にはフランジ部12bが形成されており、このフランジ部12aが第1天板5に穿設された貫通孔5aの周縁部に下方から固定されている。
【0017】上板13の径方向中央部には円形の貫通孔13aが形成されている。上板13の上面には、上板13と同じ外径を有する環形状の環状支持体14が取り付けられている。この環状支持体14の内側には、鉛直上方から見てほぼ扇形形状を有する例えば3つのガイド15が設けられている。各ガイド15は、その内周側に傾斜面15aを有する断面形状を有しており、3つのガイド15の傾斜面15aが全体として逆円錐形の内周面を形成するようになっている。ガイド15の環状支持体14側には、ピン16が環状支持体14に向けて突出形成されている。環状支持体14のガイド15側にはピン16を遊挿するための遊挿孔14aが穿設されており、この遊挿孔14aに、ガイド15に突設されたピン16の自由端側が、圧縮ばね16bを介して遊挿されている。ガイド15は、ピン16と遊挿孔14aとの係合により、上板13の径方向にスライドできるようになっており、さらに、圧縮ばね16bにより上板13の径方向中央部に向けて付勢されるようになっている。これにより、ガイド15は、その傾斜面15aに押し当てられた柿Pを適切な位置に案内するようになっている。
【0018】上ケース12の底板18の径方向中央部には円形の貫通孔18aが形成されており、その貫通孔18aの上には環形状のベアリングブロック20が固定されている。このベアリングブロック20には、貫通孔18aを鉛直方向に貫通する長尺円筒形状の駆動軸25がベアリング20aを介して保持されている。この駆動軸25は、ベアリング20aによって、鉛直方向に延びる回転軸を中心として回転可能に支持されている。駆動軸25の下端には従動プーリ26が固定されている。上ケース12の底板18は、外筒部12aよりもさらに外方(図中右側)に延出している。底板18の延出部分には、切取刃駆動モータ17が、その出力軸23を下方に向けて取り付けられている。切取刃駆動モータ17の出力軸23は、底板18に設けられた貫通孔を下方に貫通し、その先端部には駆動プーリ24が取り付けられている。駆動プーリ24と駆動軸25に取り付けられた従動プーリ26との間には無端ベルト27が掛け渡されている。なお、切取刃駆動モータ17は、皮剥き機1の本体下方に設けられた後述のシーケンサ77(図1)によって駆動制御される。
【0019】駆動軸25の上端部には、ほぼ円錐台形状のディスク28が固定されている。ディスク28は、駆動軸25に取り付けられた状態で、その径方向中央部側が高く、外周部側が低くなるような形状を有している。ディスク28の外周縁近傍には、駆動軸25と同軸の円筒形状を有するブラケット29が取り付けられている。このブラケット29の上端部は上板13の近傍に達しており、その上端部には、貫通孔を有する円板29aが取り付けられている。この円板29aの貫通孔には、柿Pのへた部分を切り取るための切取刃30が取り付けられている。ここでは、切取刃駆動モータ17が回転すると、駆動プーリ24,無端ベルト27および従動プーリ26を介して駆動軸25が回転し、これにより切取刃30が回転するようになっている。
【0020】底板18の下面には、上ケース18と同軸で、かつ上ケース18より小さい円筒形状の下ケース19が取り付けられている。下ケース19の上端部にはフランジ部19aが形成され、このフランジ部19aが底板18の貫通孔18aの外周部に固定されている。下ケース19の上部の内周面には、取付ブラケット32を介して、ガイドブシュ33が取り付けられている。このガイドブシュ33は、後述するロッド40を鉛直方向に摺動可能に支持するためのものである。下ケース19の下端には底板19bが取り付けられ、その底板19bには、ロッド40を鉛直方向に摺動可能に支持するためのガイドブシュ39が取り付けられている。
【0021】上述した駆動軸25の内側には、軸状部材であるロッド40が鉛直方向に挿通されている。ロッド40は、その上端部が切取刃30近傍まで達し、下端部が下ケース19の底板19bよりもさらに下方に突出するだけの長さを有している。ロッド40は、ガイドブシュ33およびガイドブシュ39により鉛直方向に摺動可能に保持されている。ロッド40の外周面には、ロッド40よりも大きな外径を有する環状部材である当接リング41が固定されている。下ケース19の底板19aの上方には、取付ブラケット36を介してコイルばね42が取り付けられている。コイルばね42は、ロッド40の当接リング41および取付ブラケット36によって鉛直方向に挟まれている。ロッド40が下方に移動すると、当接リング41が下方に移動してコイルばね42が圧縮され、このコイルばね42の弾性力によって当接リング41(すなわちロッド40)が上方に付勢されるようになっている。
【0022】下ケース19の内周面において取付ブラケット32の下方には、L字形状の取付治具34を介して、上限ストッパ35が設けられている。上限ストッパ35は、ロッド40が上方に移動したときに当接リング41の上面に当接し、ロッド40の上限位置を規定するようになっている。一方、上述した取付ブラケット36には、その鉛直方向位置の調整可能な下限ストッパ37が突設されている。この下限ストッパ37は、ロッド40が下方に移動したときに当接リング41の下面に当接し、ロッド40の下限位置を規定するようになっている。
【0023】さらに、下ケース19の内周面には、リミットスイッチ38が固定されている。リミットスイッチ38は揺動可能なスイッチレバー38aを備えている。スイッチレバー38aは、ロッド40に取り付けられた当接リング41に当接して揺動し、その揺動状態によってリミットスイッチ38がオン信号またはオフ信号を発するようになっている。図2に示したように、ロッド40が上端位置に有るとき(すなわち、ロッド40が上限ストッパ35に当接しているとき)には、リミットスイッチ38はオン信号を発し、ロッド40が上端位置から下方に移動すると、リミットスイッチ38はオフ信号を発するようになっている。
【0024】ロッド40の上端部には、円錐台形状の渋避け用ディスク43を介して、ロッド40と同軸の小径ロッド40aが設けられている。小径ロッド40aは、ロッド40よりもやや小さい外径を有している。渋避け用ディスク43は、ロッド40に取り付けられた状態で、径方向中央部側が高くなり、外周部側が低くなる形状を有している。小径ロッド40aの上端には、ピン44が、小径ロッド40aの径方向中心からややずれた位置に突設されている。なお、ピン44の先端は、柿Pを傷つけないように丸く形成されている。ピン44をロッド40の中心からずれた位置に突設したのは、柿Pの枝Eの部分を避けて、枝Eの周囲の比較的硬い部分Kに当接させるようにするためである。
【0025】また、図1に示したように、上ケース12には、エアパイプ45が設けられ、このエアパイプ45の先端側には、ノズル46が切取刃30に向かって取り付けられている。エアパイプ45は、オン・オフバルブ47を介して図示しない空気圧源に接続されている。オン・オフバルブ47は、皮剥き機1の本体に設けられたシーケンサ77により開閉制御される。
【0026】皮剥き機1の本体に設けられたシーケンサ77は、リミットスイッチ38からの信号を受け、切取刃駆動モータ17およびオン・オフバルブ47などに作動信号を出力するようになっている。」

(3)段落【0049】?【0050】
「【0049】へた切取り装置1Aによって柿Pのへた部分Paの切取りをする場合、作業者は、まず、柿Pのへた部分Paを下に向け、その枝Eの周囲の硬い部分Kをガイド15内のピン44に当てる。次いで、作業者が、圧縮ばね16bのばね力に抗して柿Pを鉛直下方に押していくと、ロッド40が下方向に移動すると共に、ガイド15が柿Pの外周面により付勢されて環状支持体14に向けてスライドする。この際、ロッド40の当接部材41が下方に移動するためリミットスイッチ38のレバー38aが揺動し、これにより、リミットスイッチ38はシーケンサ77に検出信号を送る。シーケンサ77は、この検出信号に基づいて切取刃駆動モータ17を作動させる。切取刃駆動モータ17の回転力は、ギヤボックス22を介して減速されて出力軸23に伝達され、次いで、駆動プーリ24、ベルト27および従動プーリ26を介して駆動軸25に伝達される。これにより、駆動軸25が回転すると共に、切取刃30が回転し、柿Pのへた部分Paを切り取る。なお、ロッド40の下方向への移動は、当接部材41が下限ストッパ37に当接することによって制限される。このため、切取刃30の回転により形成される柿Pの切取面は、柿Pのへた部分Paの略中心と頂部とを結ぶ直線を中心とする略回転面となるように形成される。なお、柿Pの切取の厚さは下限ストッパ37の上下位置を変更することにより調節可能である。
【0050】へた切取り装置1Aによりへた部分Paを切取った後、作業者が柿Pを持ち上げると、ロッド40はコイルばね42の弾性力によって上方に移動し、当接部材41がリミットスイッチ38のレバー38aを揺動させる。これによりリミットスイッチ38から検出信号がシーケンサ77に送られる。シーケンサ77はこの検出信号に基づいて切取刃駆動モータ17の回転を停止させる。次いで、シーケンサ77は、オン・オフバルブ47を作動(オン)させる。オン・オフバルブ47がオンすることにより、空気圧源からのエアーが、ノズル46を介して切取刃30、ディスク28およびブラケット29に向けて間欠的に噴射される。これにより切取刃30、ディスク28およびブラケット29に溜まる柿Pのへたなどが吹き飛ばされ、作業者がへたを取り除く必要がなくなる。このように、作業者が柿Pをガイド15に当てるとガイド15がスライドするようになっているので、切取刃30で作業者がけがをすることがなく、安全である。」

2 甲1号証に記載された考案の認定
前記1の(1)ないし(3)で摘示した事項を、技術常識をふまえつつ本件考案1に照らして整理すると、甲1号証には、以下の考案(以下「甲1考案」という。)が記載されていると認められる。

「果菜による押し込みに対し、コイルバネ42により押し戻し方向に付勢した状態で下限ストッパ37による停止位置まで下方移動可能なロッド40、小径ロッド40a及びピン44と、
前記ロッド40の下方移動を検知するリミットスイッチ38と、
前記ロッド40、小径ロッド40a及びピン40の周りに配置される切取刃30を備え、果菜部位による前記切取刃30の押し込みに対しても下方移動しないブラケット29、ディスク28及び駆動軸25と、
前記リミットスイッチ38からの検知信号により前記ブラケット29、ディスク28及び駆動軸25を前記ロッド40、小径ロッド40a及びピン40周りに軸回転させる切取刃駆動モータ17と、からなり、
前記ピン44への果菜の押し込みにより、前記リミットスイッチ38からの検知信号が前記切取刃駆動モータ17を駆動して前記ブラケット29の前記切取刃30を軸回転させることで、前記ロッド40が前記下限ストッパ37に突き当たるまで果菜のへた部分を切除するへた切取装置1A。」

3 対比・判断
(1)本件考案1について
ア 対比
本件考案1と甲1考案とを対比する。
甲1考案の「コイルバネ42により押し戻し方向に付勢した状態」は、本件考案1の「押し戻し方向に付勢した状態」に相当する。以下同様に、「下限ストッパ37による停止位置」は「所定の停止位置」に、「下方移動」は「後退移動」に、「ロッド40、小径ロッド40a及びピン44」は、「当接機構」に、「リミットスイッチ38」は「検知手段」に、「切取刃30」は「切除刃」に、「ブラケット29、ディスク28及び駆動軸25」は「処理機構」に、「切取刃駆動モータ17」は「回転手段」に、「果菜のへた部分を切除するへた切取装置1A」は「果菜部位を切除処理する果菜の部分切除処理機」に、それぞれ相当する。
そうすると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりと認められる。

<一致点>
「果菜による押し込みに対し、押し戻し方向に付勢した状態で所定の停止位置まで後退移動可能な当接機構と、
前記当接機構の後退移動を検知する検知手段と、
前記当接機構の周りに配置される切除刃を備えた処理機構と、
前記検知手段からの検知信号により前記処理機構を前記当接機構周りに軸回転させる回転手段と、からなり、
前記当接機構への果菜の押し込みにより、前記検知手段からの検知信号が前記回転手段を駆動して前記処理機構の前記切除刃を軸回転させることで、果菜部位を切除処理する果菜の部分切除処理機。」の点。

<相違点>
本件考案1は、処理機構が、果菜部位による切除刃の押し込みに対し、果菜部位を押し戻し方向に付勢した状態で後退移動可能であり、果菜部位の切除処理は、当接機構の停止位置より後退した切除刃の押込位置との差分の区間に存在する果菜部位を切除処理するものであるのに対し、
甲1考案は、処理機構である、切取刃30を備えたブラケット29、ディスク28及び駆動軸25は、果菜部位による切取刃30の押し込みに対しても後退移動せず、果菜部位の切除処理であるへた部分の切除処理は、当接機構であるロッド40が下限ストッパ37に突き当たるまでへた部分を切除するものである点。

イ 判断
甲1考案は、上記相違点のとおり、処理機構が、果菜部位による切除刃の押し込みに対し、果菜部位を押し戻し方向に付勢した状態で後退移動可能なものではなく、かつ、果菜部位の切除処理についても、当接機構の停止位置より後退した切除刃の押込位置との差分の区間に存在する果菜部位を切除処理するものではない。加えて、かかる処理機構の後退移動や果菜部位の切除処理は、甲1号証の記載からみて自明のことともいえない。
そうすると、本件考案1と甲1考案とは、その構成を異にするものであり、同一ということはできない。
請求人は、甲1号証のへた切取り装置(図2)が本件考案1に相当する旨の主張をするが、前記のとおり、両者は処理機構の後退移動や果菜部位の切除処理が明らかに異なるのであるから、その主張は採用できない。

(2)本件考案2について
本件考案1が甲1考案と同一でない以上、本件考案2は、甲1考案と同一であるということはできない。

(3)小括
以上のとおり、本件考案1ないし2は、甲1号証に記載された考案ということはできない。
したがって、本件考案1ないし2は、実用新案法第3条第1項3号の規定に該当するということはできないから、本件考案1ないし2についての実用新案登録は、同法第37条第1項第2号の規定に該当するものではない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件考案1、2のいずれの実用新案登録も無効とすることはできない。
審判に関する費用については、同法第41条において準用する特許法第169条第2項の規定でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
審決日 2010-04-16 
出願番号 実願2008-3499(U2008-3499) 
審決分類 U 1 114・ 113- Y (A23N)
最終処分 不成立    
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 佐野 遵
鈴木 敏史
登録日 2008-07-16 
登録番号 実用新案登録第3143868号(U3143868) 
考案の名称 果菜の部分切除処理機  
代理人 畑中 芳実  
代理人 大倉 奈緒子  
代理人 中尾 俊輔  
代理人 唐木 浄治  
代理人 鈴木 健之  
代理人 伊藤 高英  
代理人 玉利 房枝  

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