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審決分類 |
審判 A61H 審判 A61H |
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管理番号 | 1224806 |
審判番号 | 無効2009-400007 |
総通号数 | 131 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2010-11-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2009-12-09 |
確定日 | 2010-09-17 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第3130483号実用新案「介護用温水洗浄装置」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 実用新案登録第3130483号の請求項1?5に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件実用新案登録第3130483号の請求項1?5に係る実用新案登録についての出願は、平成19年1月14日に出願され、平成19年3月7日に実用新案権の設定登録がなされ、平成21年12月9日に請求人川本 栄一により本件実用新案登録の請求項1?5に係る実用新案登録について実用新案登録無効審判の請求がなされたものであって、平成22年2月16日付けで当審より請求書副本の送達をしたところ、実用新案法第39条第1項に係る答弁書の提出がなされなかったものである。 II.本件考案 本件実用新案登録の請求項1?5に係る考案(以下、「本件考案1?5」という。)は、登録された実用新案明細書及び図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲の請求項1?5に記載された次のとおりのものであると認める。 【請求項1】 被介護者を洗浄すると共に、排泄物の処理をするための介護用温水洗浄装置であって、温水を貯留することができると共に、排泄物を貯留することができ、温水を噴出する噴出器、及び、洗浄後の排水や被介護者の排泄物を空気と共に吸引する吸引器を有する装置本体と、 当該装置本体の噴出器と吸引器とからそれぞれ延在した温水チューブと吸引ホースとの先端部に着脱自在に装着されるヘッドと、 を具備することを特徴とする介護用温水洗浄装置。 【請求項2】 前記ヘッドは、被介護者の体に温水を噴出して洗浄すると共に、洗浄後の排水を空気と共に吸引するボディ用シャワーヘッドであることを特徴とする請求項1に記載の介護用温水洗浄装置。 【請求項3】 前記ヘッドは、被介護者の頭部に温水を噴出して洗浄すると共に、洗浄後の排水を空気と共に吸引する頭髪用シャワーヘッドであることを特徴とする請求項1に記載の介護用温水洗浄装置。 【請求項4】 前記ヘッドは、被介護者の尿を空気と共に吸引して採尿すると共に、被介護者の性器に温水を噴出して洗浄する採尿・洗浄用カップ型ヘッドであることを特徴とする請求項1に記載の介護用温水洗浄装置。 【請求項5】 前記ヘッドは、被介護者の糞尿を空気と共に吸引して糞尿を排出すると共に、被介護者の性器や肛門に温水を噴出して洗浄する糞尿排出・洗浄用カップ型ヘッドであることを特徴とする請求項1に記載の介護用温水洗浄装置。 III.請求人の求めた審決及び主張 審判請求人は、実用新案登録第3130483号の請求項1?5に係る考案についての実用新案登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、証拠方法として、下記の書証をもって以下に示す無効理由により本件実用新案登録は無効にされるべきであると主張する。 (証拠方法) 甲第1号証:三共レイジャック(株)製の「寝たままでの温水洗浄“いずみ”」が社団法人シルバーサービス振興会主催の第11回シルバーサービス展(2001年3月8日?10日開催)に出品された際に発行されたガイドブックの写し、および宣誓書 甲第2号証:ベッドに寝たまま温水洗浄器「いずみ」の取扱説明書の写し 甲第3号証:温水洗浄器「いずみ」のカタログの写し 甲第4号証:特開2002-315809号公報 甲第5号証:再表2006-046532号公報 (無効理由) 無効理由1. 本件実用新案登録の請求項1?4にかかる各考案は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された考案であるから、実用新案法第3条第1項第3号の規定により実用新案登録を受けることができないものであるから、その実用新案登録は、同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 無効理由2. 本件実用新案登録の請求項1?4にかかる各考案は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであるから、その実用新案登録は、同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 無効理由3. 本件実用新案登録の請求項5にかかる考案は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであるから、その実用新案登録は、同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 IV.当審の判断 IV-1.甲第2号証について IV-1-1.甲第2号証の頒布時期について 甲第2号証は、ベッドに寝たまま温水洗浄器「いずみ」の取扱説明書の写しであって、甲2号証には発行年月日が示されていないが、同取扱説明書の写しが、特願2001-121924号(甲第4号証)について特許法施行規則第13条の2の規定により平成16年11月16日付けで特許庁に提出された書類の中に含まれており、上記取扱説明書は遅くとも本件の出願日前である平成16年11月16日には存在し、頒布されていたものと推認できる。 IV-1-2.甲第2号証の記載事項 甲第2号証には、次の事項が記載されている。 a.表紙には「ベッドに寝たまま温水洗浄 いずみ ON BED BODY WASHER」の記載がある。 b.3ページ上段には、女性が男性の身体にホースを当てている絵があり、その右側に丸の中に白抜きで「からだをきれいに」と記載され、その横に白抜きで「ボディー用シャワーで」、黒字で「からだを洗う」、「身体を温水で洗ったときの気持ちよさを感じていただけます。温水洗浄しながら同時に水を吸引できる画期的な機構により、ベッドの上でシーツを濡らすことなく使用できます。」との記載がある。 c.3ページ中段には、女性が男性の臀部にホースを当てている絵があり、その左側に白抜きで「ボディー用シャワーで」、黒字で「下腹部を洗う」、「下腹部に付着した汚物など、ひどい汚れに“いずみ”は強力で優しい介護ツールとしての能力を発揮します。」との記載がある。 d.4ページ上段には、女性が男性の頭部を抱えて、ホースを頭部に当てている絵があり、その左側に丸に白抜きで「あたまをきれいに」と記載され、その下に白抜きで「頭髪用シャワーで」、黒字で「あたまを洗う」、「ベッドの上でのシャンプーは大変ですね。こんな時、“いずみ”の頭髪用シャワーヘッドをご使用ください。」との記載がある。 e.4ページ下段には、リモコンを持った男性が座っている絵があり、その左側に丸に白抜きで「ご自身で採尿」と記載され、その下に白抜きで「採尿・洗浄カップで」、黒字で「採尿と洗浄」、「ベッドの上で採尿と洗浄することができます。簡単操作のリモコン付き採尿カップですから、ベッドの上でお一人でも操作できますが、ご本人が慣れるまでは、安全のため、ご家族の方が付き添うことをおすすめします。採尿のあとは、洗浄ボタンで温水シャワー洗浄もできます。」との記載がある。 f.5ページには、製品の「各部の名称と機能」と題して、分解斜視図が記載されており、中程に「汚水タンク」「汚れた水を回収するタンクです。」と説明された絵が記載され、その左側に「洗浄ホース」と説明された絵があり、その先端に「ヘッドジョイント」と説明された部分があり、洗浄ホースの絵に沿わされた「温水チューブ」と説明された絵があり、その先端に「温水コネクタ1」と説明された部分が記載されている。「汚水タンク」の下方には、「本体」「『給水タンク』や『温水器』『駆動装置』『制御装置』など、本機の心臓部が入っています。」と説明される絵が記載されている。また、本体には、「ターボファンユニット」の部分があり「ターボファンユニット タンクに汚水を吸引し、セパレーターで水と空気を分離します。」と記載されている。さらに、左端には、上部に、「ボディ用シャワーヘッド」、「『からだの洗浄』『汚物や尿の汚れ』『床ずれ部の洗浄』に使用するシャワーヘッドです。」と説明される絵があり、その下方に、「オプション」として、「頭髪用シャワーヘッド」「『ヘアシャンプー』時に使用するシャワーヘッドです。」と説明される絵があり、さらにその下方に「採尿・洗浄カップ」 、「ご自身で『採尿・洗浄』する器具です。」と説明される絵が記載されている。 g.6ページには、下段には、「構造概要」と題された絵があり、本体内に、給水タンク、ポンプ、ターボファンユニット、汚水タンクが設けられ、洗浄ホースは汚水タンクを介してターボファンユニットに接続され、温水チューブは本体下部を通してポンプと接続されていることが示されている。 h.9ページには、「手順1」として、「ボディー用シャワーヘッド」を「洗浄ホース」、「温水チューブ」の先端に取り付けること、及び取り外すことが説明されている。14ページには「手順1」として、「頭髪用シャワーヘッド」を「洗浄ホース」、「温水チューブ」の先端に取り付けること、及び取り外すことが説明されている。17ページには、「手順1」として、「採尿・洗浄カップ」を「洗浄ホース」、「温水チューブ」の先端に取り付けること、及び取り外すことが説明されている。 i.10ページ右側上部には、丸に白抜きの「ポイント」との文字共に、「シャワーヘッドのボタン側を肌にあて、反対側を少し浮かしながら、矢印の方向に移動させると、吸い込みがよく、上手に洗浄できます。」の記載と、肌に対して左に傾けられたボディ用シャワーヘッドの絵があり、該絵の中には、動かす方向として右側に向かう大きな矢印と肌の上方から、シャワーヘッドと肌との隙間に向かう小さな矢印が描かれている。 j.10ページ下段には、「ボディ用シャワーヘッドのしくみ(なぜシーツが濡れないのでしょうか?)」と題されるコラムがあり、「シャワーヘッドを肌にあてると、シャワーヘッド内部圧力が低下し、ボタンとシャッターが自動的に降りる仕組みになっています。ボタンとシャッターが降りるとヘッドの先端部からシャワーが噴き出て、体をきれいに洗います。つまり、肌にあたっている時だけシャワーが出て洗浄し、洗浄と同時に吸引しますので、ベッドの上でシーツを濡らすことなく温水シャワーができるわけです。」と記載され、その右側にはシャワーヘッドを肌にあてる前と肌にあてた時の絵が記載され、その絵の中に、空気の流れを示す矢印が記載されている。 k.20ページには、採尿・洗浄カップのしくみと題されるコラムがあり、「1『吸引』スイッチを押すと、モーターが作動し、尿の吸引が始まります。」の記載と、リモコンの「吸引」スイッチに指があてられ、尿と空気が吸引されている絵が記載され、「2『洗浄』スイッチを押すと、約3秒後にポンプが働き、温水シャワーが出ます。シャッターが閉じていますので、温水シャワーはカップの外には出ません。」の記載と絵が記載され、「3ボタンを押すとシャッターが開き、シャワー洗浄ができます。ボタンを離すとシャッターが2の状態になります。」の記載と「採尿・洗浄カップ」のボタンが押され、シャッターが開いている状態でシャワーが噴出し、排水と空気が吸引されている絵が記載されている。 l.19ページ左側中段には、介護なさる方へのお願いと記載された下向きの矢印が記載されている。 上記記載事項a.l.から、甲2号証には介護に用いる温水洗浄装置の発明が記載されている。 上記記載事項a.l.b.から被介護者の身体の洗浄を行うことができることが認められる。 上記記載事項a.l.e.から、被介護者の尿を採尿することができることが認められる。 上記記載事項f.から、温水器が設けられた給水タンクを有していること、及び汚れた水を回収する汚水タンクを有していることが認められる。 上記記載事項g.k.から温水シャワーを噴出するポンプを有することが認められる。 上記記載事項b.i.j.k.から汚れた水または尿は空気と共に吸引されることが認められる。また、上記記載事項f.から吸引はターボファンユニットで行われていることが認められる。 上記記載事項h.から、ボディ用シャワーヘッド、頭髪用シャワーヘッド、採尿・洗浄カップは、温水チューブと洗浄ホースの先端に着脱可能に取り付けられることが認められる。 本件考案1の記載ぶりに則して整理して記載すると、甲第2号証には、 「被介護者の身体の洗浄を行うことができる共に、尿を採尿することができる介護に用いる温水洗浄装置であって、 温水器が設けられた給水タンクを有すると共に、汚れた水を回収する汚水タンクを有し、温水シャワーを噴出するポンプ、及び汚れた水または尿を空気と共に吸引するターボファンユニットを有する本体と、 温水チューブは本体下部を通して本体のポンプと接続され、洗浄ホースは汚水タンクを介して本体のターボファンユニットに接続され、温水チューブと洗浄ホースの先端にボディ用シャワーヘッド、頭髪用シャワーヘッド、採尿・洗浄カップが着脱可能に取り付けられる介護に用いる温水洗浄装置。」 の考案(以下「引用考案」という。)が記載されていると認める。 IV-2.甲第5号証(再表2006-046532号公報)の記載事項 甲第5号証には以下の記載がある。 m.【0001】 この発明は、寝たきり等重度の要介護者または歩行不能な病人の介護用補助具に関し、重度の要介護者等が寝たままの状態で排泄した場合、自動的に排泄物を処理し、汚れた局部を自動的に洗浄し、かつ乾燥する排泄物処理装置に関する。 n.【0032】 本願発明のおむつカップ本体について説明する。図1はおむつカップ本体(101)を含む排泄物処理装置を示した側面からの図面である。本発明の排泄物処理装置は、人体の腰臀部を包囲するおむつカップ本体(101)と、該おむつカップ本体(101)に接続するとともにその内部に洗浄水を送水する洗浄水送水口(105)と、前記おむつカップ本体(101)に接続するとともにその内部の洗浄水及び汚物を吸引する汚物吸引口(104)とを備えた排泄物処理装置を基本構造とする。該おむつカップ本体(101)(図中の番号表示なし:)は、人体の腹部・股部・臀部を包み込むものであって、おむつカップとして機能する部を意味する。 図1及び図2に示すように該おむつカップ本体(101)と腹部・股間部・臀部との接触する部分は、円柱状または半円柱状の超軟質高分子樹脂材による超軟質クッション(113)が該おむつカップ本体(101)の内側に形成してある。この超軟質クッションにより、腹部・股間部・臀部とおむつカップ本体との密着性が高まり、おむつカップから洗浄水及び汚物が流れ出すという問題が解消される。さらにこの超軟質クッションが肌に優しくフィットすることにより硬質合成樹脂に擦れて痣が出来るということを防止している。 o.【0034】 本願発明のおむつカップ本体は、局部洗浄用ノズル(108a)、(108b)、(108c)(図1)、カップ洗浄用ノズル(108d)、(108e)、(108f)(図5)、温風吹出し口(109a)、(109b)(図1)、楕円状の上層部(122a)と方形状の窪み(122)(下層部)をもつ二重底構造(図5)、臀部接触面二重湾曲(121)(図5)、大便感知センサ(110)(図1)、小便感知センサ(111)(図1)、マジックテープ(登録商標)のような固着テープ(112)(図1)の手段の少なくとも一を具備している。 p.【0035】 図1に示すように局部洗浄用ノズルは、個々人の様々な差異に対応するため、陰部用洗浄ノズル(108a)を1つ、肛門用洗浄ノズル(108b)、(108c)を2つ設置した。肛門の場合は確実に洗い流さないとトラブルの原因になるため、洗浄ノズルを2つ設け個人差に対応している。1つの温風吹出し口(109a)は、陰部用洗浄ノズル(108a)と肛門用洗浄ノズル(108b)との間に設置した。これは局部を乾燥させることは病人、要介護者にとって極めて大切であるので、前方から局部全体に温風をあて短時間に乾燥させることを可能にした。 なお、上記のそれぞれのノズルは洗浄送水口(105)及び温風送風口(106)と繋げる必要があるが、図4に示すように、配管ではなく合成樹脂材の中をくり貫いて形成した複数の通路のマニホード(115)によるものとしている。もう1つの温風吹出し口(109b)は、身体の臀部が接する最後尾の二重底(2段構造)の下層の最下部分に設置し、その上に設置したカップ洗浄用ノズル(108d)とともに大便及び小便を強力に汚物吸引口に押し流す役割を果たす。さらにカップ洗浄用ノズル(108d)からは消臭剤入りの水が出されることが可能であり、大便及び小便のアンモニア臭、硫化水素臭を消し去り、後での消臭処理を不要のものとすることができる。 また、図5に示すようにおむつカップ本体(101)の底は、楕円状の上層部(122a)と方形状の窪み部(122)をもつ二重底構造(2段構造)になっているが、汚物を二重底の窪み部(122)(下層部底)に落とすことにより弱い吸引力でも確実に吸引出来る他、従来の感知では大便がセンサの上に乗らない場合には感知できなかった大便感知センサも近赤外線(110a)とフォトIC等の光センサ(110b)を活用することにより確実な感知が可能となっている。小便センサ(111)も同様確実な感知ができるようになっている。さらに臀部の接触面部分の二重湾曲(121)により臀部の大小の個人差にも対応できるばかりでなく、臀部の割れ目から洗浄水が背中に流れ込むことも防止できている。 なお、小便感知センサー(111)は、図1-2に示すように、該おむつカップ本体(101)の底面に、底面より僅かに高くなった部分に設置されている。 図1及び図2に示すマジックテープ(登録商標)(112a)は、図6に示す、おしめカバー側のマジックテープ(登録商標)(112b)と合わせることによりおむつカップ本体(101)をしっかり固定させると同時に、洗浄水等の横漏れを防いでいる。 以上m.?p.の記載から、甲第5号証には、「要介護者等が寝たままの状態で排泄した場合、自動的に排泄物を処理し、汚れた局部を自動的に洗浄し、かつ乾燥する排泄物処理装置であって、陰部用洗浄ノズル、肛門用洗浄ノズルを有し、汚物を吸引する人体の腹部・股部・臀部を包み込むおむつカップ」の考案(発明)が記載されている。 V.対比・判断 V-1.本件考案1について 本件考案1と引用考案とを対比する。 引用考案の「介護に用いる温水洗浄装置」は、その構造または機能からみて、本件考案1の「介護用温水洗浄装置」に相当する。 同様に、引用考案の「被介護者の身体の洗浄を行うことができる」は、本件考案1の「被介護者を洗浄する」に相当し、「温水シャワー」は「温水」に、「ポンプ」は「噴出器」に、「汚れた水または尿を空気と共に吸引するターボファンユニット」は、「洗浄後の排水や被介護者の排泄物を空気と共に吸引する吸引器」に、「本体」は「装置本体」に、「洗浄ホース」は「吸引ホース」に、「先端」は「先端部」に、「ボディ用シャワーヘッド、頭髪用シャワーヘッド、採尿・洗浄カップ」は「ヘッド」に、「着脱可能」は「着脱自在」にそれぞれ相当する。 また、引用考案の「尿」は排泄物の一種であり、引用考案は、採尿することができるのであるから、本件考案1の「排泄物の処理をする」の考案特定事項を有する。 引用考案は「温水器が設けられた給水タンクを有する」のであるから、「温水を貯留することができる」ことは自明である。 引用考案は「汚れた水を回収する汚水タンクを有し」ており、かつ「採尿」を行うのであるから、「汚れた水」に排泄物が含まれることは自明であるから、引用考案は本件考案1の「排泄物を貯留することができ」の考案特定事項を有する。 引用考案は、「温水チューブは本体下部を通して本体のポンプと接続され」ているので、温水チューブはポンプから延在しているといえ、「洗浄ホースは汚水タンクを介して本体のターボファンユニットに接続され」ているので、洗浄ホースはターボファンユニットから延在しているといえ、本件考案1の「装置本体の噴出器と吸引器とからそれぞれ延在した温水チューブと吸引ホース」の考案特定事項を有する。 そうすると、両者は、 「被介護者を洗浄すると共に、排泄物の処理をするための介護用温水洗浄装置であって、 温水を貯留することができると共に、排泄物を貯留することができ、温水を噴出する噴出器、及び、洗浄後の排水や被介護者の排泄物を空気と共に吸引する吸引器を有する装置本体と、 当該装置本体の噴出器と吸引器とからそれぞれ延在した温水チューブと吸引ホースとの先端部に着脱自在に装着されるヘッドと、 を具備する介護用温水洗浄装置。」 である点で一致し、相違している点はない。 以上より、本件考案1と引用考案とは同一であって、本件考案1に係る実用新案登録は実用新案法第3条第1項第3号の規定により実用新案登録を受けることができない。 V-2.本件考案2について 本件考案2は、本件考案1に対して、さらに「ヘッドは、被介護者の体に温水を噴出して洗浄すると共に、洗浄後の排水を空気と共に吸引するボディ用シャワーヘッドである」という限定事項を加えるものであるところ、引用考案は、「ヘッド」として、「ボディ用シャワーヘッド」も記載されており、IV-1-2の記載事項b.からして、この「ボディ用シャワーヘッド」は被介護者の体を洗浄するものであるから、引用考案は、「ヘッドは、被介護者の体に温水を噴出して洗浄すると共に、洗浄後の排水を空気と共に吸引するボディ用シャワーヘッドであること」の考案特定事項も具備するものである。。 前記「V-1.本件考案1について」における検討結果も踏まえ、本件考案2と引用考案を対比すると、両者は、全ての点で一致し、相違している点はない。 以上より、本件考案2と引用考案とは同一であって、本件考案2に係る実用新案登録は実用新案法第3条第1項第3号の規定により実用新案登録を受けることができない。 V-3.本件考案3について 本件考案3は、本件考案1に対して、さらに「ヘッドは、被介護者の頭部に温水を噴出して洗浄すると共に、洗浄後の排水を空気と共に吸引する頭髪用シャワーヘッドである」という限定事項を加えるものであるところ、引用考案には、「ヘッド」として、「頭髪用シャワーヘッド」も記載されており、IV-1-2の記載事項d.からして、この「頭髪用シャワーヘッド」は被介護者の頭部を洗浄するものであるから、引用考案は、「ヘッドは、被介護者の頭部に温水を噴出して洗浄すると共に、洗浄後の排水を空気と共に吸引する頭髪用シャワーヘッドであること」の考案特定事項も具備するものである。 前記「V-1.本件考案1について」における検討結果も踏まえ、本件考案3と引用考案を対比すると、両者は、全ての点で一致し、相違している点はない。 以上より、本件考案3と引用考案とは同一であって、本件考案3に係る実用新案登録は実用新案法第3条第1項第3号の規定により実用新案登録を受けることができない。 V-4.本件考案4について 本件考案4は、本件考案1に対して、さらに「ヘッドは、被介護者の尿を空気と共に吸引して採尿すると共に、被介護者の性器に温水を噴出して洗浄する採尿・洗浄用カップ型ヘッドである」という限定事項を加えるものであるところ、引用考案には、「ヘッド」として、「採尿・洗浄カップ」も記載されており、IV-1-2の記載事項e.及びk.からして、この「採尿・洗浄カップ」は被介護者の尿を採尿すると共に、温水シャワーで被介護者の性器を洗浄するものであるから、引用考案は、「ヘッドは、被介護者の尿を空気と共に吸引して採尿すると共に、被介護者の性器に温水を噴出して洗浄する採尿・洗浄用カップ型ヘッドであること」の考案特定事項も具備するものである。 前記「V-1.本件考案1について」における検討結果も踏まえ、本件考案4と引用考案を対比すると、両者は、全ての点で一致し、相違している点はない。 以上より、本件考案4と引用考案とは同一であって、本件考案4に係る実用新案登録は実用新案法第3条第1項第3号の規定により実用新案登録を受けることができない。 V-5.本件考案5について 本件考案5は、本件考案1に対して、さらに、「ヘッドは、被介護者の糞尿を空気と共に吸引して糞尿を排出すると共に、被介護者の性器や肛門に温水を噴出して洗浄する糞尿排出・洗浄用カップ型ヘッドである」という限定を加えるものであるところ、甲第5号証には、「要介護者等が寝たままの状態で排泄した場合、自動的に排泄物を処理し、汚れた局部を自動的に洗浄し、かつ乾燥する排泄物処理装置であって、陰部用洗浄ノズル、肛門用洗浄ノズルを有し、汚物を吸引する人体の腹部・股部・臀部を包み込むおむつカップ」の考案が記載されており、しかも、引用考案、及び甲第5号証に記載の考案は介護用洗浄装置という同一の技術分野に属するものであって、甲第5号証に記載の考案の「おむつカップ」は「糞尿排出・洗浄用カップ型ヘッド」といえるから、引用考案において、「ヘッド」として、甲第5号証に記載の「おむつカップ」を採用し、本件考案5の構成とすることは、当業者であればきわめて容易になし得たものである。 そして、本件考案5の奏する作用・効果も、引用考案、及び甲第5号証に記載された考案から当業者が予測し得た程度のものであって、格別なものとはいえない。 よって、本件考案5の実用新案登録は、当業者が、引用考案、及び甲第5号証に記載された考案に基づいてきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。 VI.むすび 以上のとおりであるから、本件実用新案登録の請求項1?4にかかる各考案は、甲第2号証に記載された考案と同一の考案であるから、実用新案法第3条第1項第3号の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、本件実用新案登録の請求項5にかかる考案は、甲第2号証に記載された考案及び甲第5号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、それらの実用新案登録は同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、実用新案法第41条が準用する特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-07-02 |
結審通知日 | 2010-07-07 |
審決日 | 2010-08-06 |
出願番号 | 実願2007-117(U2007-117) |
審決分類 |
U
1
114・
113-
Z
(A61H)
U 1 114・ 121- Z (A61H) |
最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
横林 秀治郎 |
特許庁審判官 |
増沢 誠一 岩田 洋一 |
登録日 | 2007-03-07 |
登録番号 | 実用新案登録第3130483号(U3130483) |
考案の名称 | 介護用温水洗浄装置 |
代理人 | 忰熊 嗣久 |