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審決分類 審判    H02G
審判    H02G
管理番号 1259664
審判番号 無効2011-400009  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-11-30 
確定日 2012-07-02 
事件の表示 上記当事者間の登録第3163196号実用新案「掴線器」の実用新案登録無効審判事件について,次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
1 本件実用新案登録第3163196号の請求項1に係る考案についての出願は,平成22年1月15日に出願され,平成22年2月4日付けの補正指令に対して平成22年4月12日付け補正書が提出され,平成22年5月24日付けの補正指令に対して平成22年7月26日付け補正書が提出され,平成22年9月15日に設定登録がなされたものである。
これに対して,請求人より平成23年11月30日に本件無効審判の請求がなされたものであり,本件無効審判における経緯は,以下のとおりである。

平成23年11月30日 無効審判請求(甲第1?3号証,参考資料1)
平成24年 1月24日 特願2012-12175号へ変更し,放棄
4月16日 審理事項通知書
5月 7日 口頭審理陳述要領書(請求人,甲第4号証,参考
資料2,3)
5月 7日 検証申出書(請求人)
5月17日 証拠申出書(請求人,甲第5号証)
5月18日 第1回口頭審理
5月18日 審理終結
5月23日 上申書(請求人)

第2 本件考案
本件考案は,明細書及び図面の記載からみて,平成22年7月26日付け補正書により補正された実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
長レバーのリング部に引張力を負荷することで、テコを利用してケーブルを把持する構造の掴線器において、その長レバーの後端に設けたリング部を、長レバー及びケーブルの平面に対して15°?45°に捻ったことを特徴とする掴線器 」(以下「本件考案」という)

第3 請求人の主張
1 無効理由
請求人は,審判請求書において,「実用新案登録第3163196号の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案についての実用新案登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め,審判請求書および口頭審理陳述要領書を総合すると,請求人が主張する無効理由は,概略次のとおりである。

(1)無効理由1(実用新案法5条4項違反)
本件実用新案の明細書は当業者が実施できる程度に明確に記載されたものではなく,実用新案法5条4項の規定に違反するものであるから,実用新案登録を受けることができないものであるとして,具体的に以下のような点を挙げている。
ア 本件考案においては、「長レバー及びケーブルの平面に対して15°?45°に捻った」ことを特徴とするものである。ところが、「長レバー1及びケーブル3」とはどこを指すのか,並びに「15°?45°に捻る」とはどこを中心にしてどの方向に捻るのか,又「15°?45°」とは、何に対して15°?45°の角度をなすのか、不明確である。
イ このように、請求項中の考案を特定するための事項に対応する技術的手段が考案の詳細な説明中に単に抽象的、機能的に記載してあるだけで、それを具現すべき構成、方法なだが不明瞭であり、しかもそれらが出願時の技術常識に基づいても当業者が理解できないため、当業者が請求項に係る考案の実施をすることができない。

(2)無効理由2(実用新案法第3条第2項違反)
本件考案は,甲第1号証(以下「甲1」という)に記載された考案および甲第2号証(以下「甲2」という)ならびに甲第3号証(以下「甲3」という)に記載されたいる周知技術に基づいて,当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから,実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。

2 証拠方法
請求人は,証拠方法として,審判請求書,口頭審理陳述要領書および証拠申出書とともに以下のものを提出した。
甲1:実願昭52-176706号(実開昭54-102800号)のマ
イクロフィルム
甲2:実願昭58-90882号(実開昭59-195926号)のマイ
クロフィルム
甲3:内藤工業株式会社,「総合カタログ」1989,6頁

甲4:黒瀧忠茂,「よくわかる鍛造・熱処理作業法(第16版)」,理工
学社,1977,4?7頁
甲5:株式会社ダイワ電興(代表取締役 小西信之)の陳述書,平成24
年5月7日

なお,請求人は,検証申出書を提出し,内藤工業株式会社が販売した「万能ワンタッチチャック」を検甲第1号証とすることを求めているが,請求理由の主旨を変更するものであるから,採用しない。

第4 甲各号証の記載内容
1 甲1について
甲1は,本件登録の出願前に頒布された刊行物であって,「掴線器」に関して,第1?3図とともに,以下の事項が記載されている。なお,本審決においては,手へんに「國」の字については,「掴」に統一して使用する。

(1-ア)
「2.実用新案登録請求の範囲
(1)上下1対の掴持子(1)(2)、作動レバー(3)および作動レバー(3)の端部(4)に作用する引張力(P)を両掴持子(1)(2)の挟持力に変換するリンク・テコ機構(5)とから成り、被張設線(f)を両掴持子(1)(2)間に挟着すると共に前記引張力(P)方向に引張する掴線器において、作動レバー(3)の端部(4)に被張設線(f)を上下移行自由に通挿する内空間(D)を形成した掴線器。
(2)作動レバー(3)の端部(4)を鉛直断面U形状に形成して前記内空間(D)形成した実用新案請求の範囲第1項記載の掴線器。」(明細書1頁4?15行)

(1-イ)
「斯種掴線器としては、第3図に示す如きものがあるが、後述の如く、作動時に曲りぐせがつき作業後もこれを矯正することができず、又内装金属線を屈曲位置にて著しく損傷するという欠陥を有していた。即ち第3図に示す如く、滑車(a)に捲回した索条(b)を引張し、作動レバー(d)の端部(e)をP方向に引張すると、力のバランス上、反時計回りの回転モーメント(Q)が発生し、P方向線を被張設線(f)の引張部(負荷部)(A)の中心線(l)に一致させんとする。この結果作動レバー(d)の端部(e)は被張設線(f)の自由部(無負荷部)(C)を持上げ、又被張設線(f)の挟持部(B)を傾斜させ、この中心線(m)を前記中心線(l)に対しθの角度傾斜させることとなる。
而して前記引張力は1ton前後にも達する強力なものであるので、前記回転モーメント(Q)も相当の値となり、これが被張設線(f)の掴持部(B)の先端(R)に集中的に作用する結果、被張設線(f)を該位置(R)で屈曲せしめ、架線後の矯正不可能な曲りグセをつけると共にこの屈曲位置(R)にて内装金属線を著しく損傷することとなり、誠に不都合があった。
本考案は上記従来例の欠陥を除去することを目的とし、作動レバーの端部を例えば鉛直断面U形状に形成して、この内空間に被張設線の自由部を上下移行自由に通挿せしめるように構成し、作動レバー端部の中心が前記被張設線の中心線上に何らの障害なく移行でき、而して挟持部中心線と引張部中心線とが極めて容易に一致し(従って前記θは0となる。)、被張設線に従来例の如き屈曲点が生じないようにしたものである。」(明細書2頁4行?3頁15行)

(1-ウ)
「次に本考案の特徴とする構成を具体的に説明すると、前記レバー端部(4)を鉛直断面U形状に形成して、その両側壁(4a)(4a)の内空間(D)に被張設線(f)の自由部(C)を上下移行自由に通挿せしめ得るように構成し、又水平U形状の接続金具(14)の両端部(14a)(14a)を短寸のピン(15)(15)を用いて前記両側壁(4a)(4a)の各々に枢支し、更に滑車(17)を回転自在に支持する支持体(15)を前記接続金具(14)の屈曲基部(14b)に通挿した枢軸(16)により接続金具(14)に枢動自在に取付けると共に索条(18)を滑車(17)に捲回する。
次に本考案の作用・効果を説明する。前記索条(18)に作用する引張力は、滑車(17)、滑車支持体(15)、接続金具(14)を介してレバー端部(4)に作用する。このレバー端部(4)に作用する引張力(P)は、作動レバー(3)を右方に引張すると共にピン(13)との接点を中心として時計方向に回動させ、テコ杆(10)を枢軸(9)を中心として反時計方向に回動させる。この結果下掴持子(2)を上方に押付け、被張設線(f)を上下掴持子(1)(2)間に強固に挟持させる一方、被張設線(f)を前記引張力(P)方向に引張することとなる。
而して、被張設線(f)に引張力を負荷する初期段階において、従来例と同様、力のバランスの関係上、引張力のP方向線は、被張設線(f)の引張部中心線(l)と一致せんとし、反時計回りの回転モーメントQの作用を受け、装置全体延いては作動レバー3の端部(4)は反時計方向に回動する。ところが本考案は前記端部(4)を鉛直断面U形状とし被張設線(f)の自由部Cを上下移行自由に通挿せしめるように構成しているので、前記端部4の上方向移行は何らの障害もなく円滑に行なわれ、端部4の中心(引張力の作用点)Eが前記中心線(l)に一致するまで回動する。
第1図はこのようにして力が均衡した後の状態を示すが、この図よりも明らかなように、前記端部中心(E)が引張部中心線(l)に一致し、引張力の作用線Pと前記中心線(l)が一致する結果、被張設線(f)の挟持部(B)の中心線m(この中心線は前記上下1対の)被張設線(f)の掴持子(1)(2)間に形成される挟持空間の中心線及びその延長線に一致する。)も前記中心線(l)に一致することとなり、被張設線(f)には従来例の如き屈曲点(R)が生じないのである。
従って本考案によれば被張設線に曲りグセを付けること無く、又内装金属線を損傷すること無く架線工事を行うことができ、又従来例に比較しほとんど構造を複雑にすることなく従来例の欠陥を除去することができる。」(明細書4頁14行?6頁19行)

2 甲2について
甲2は,本件登録の出願前に頒布された刊行物であって,「被覆電線用掴線器」に関して,第1?4図とともに,以下の事項が記載されている。

(2-ア)
「従来における掴線器は、第1図に示すように、本体21の受圧部21aと、この本体21にピン26の軸挿により支持されて揺動可能となる屈折レバー22にボルト28を介して一体化された押え金23とによる掴線部が、被覆電線Dを掴線するために、上記本体21の一端側に、前記の屈折レバー22と平行する態様により後記するロツド24を支持するロツド貫通部21dを設けた固定腕部21cを斜降状に突設し、この腕部21cのロツド貫通部21dから前記屈折レバー22の下端孔部位置にかけては、基端に張線器からの一次側張力E用の孔部24aを設けたロツド24が挿通され、その先端におけるピン27を挿通をもつて、前記の屈折レバー22にテコ方式による張力の伝達が可能となるように、前記腕部21cに設けたロツド貫通部21dの一方下端を支点Gとする揺動自在に連結されている。この場合掴線部位置の押え金23は、前記ピン26の首下に軸嵌したねじりバネ25による本体21と屈折レバー22とに対しての係合をもつて常時掴線する方向の上昇態様を維持するように構成されている。」(明細書2頁5行?3頁5行)

(2-イ)
「上記により従来の掴線器は、被覆電線Dが太径の場合に正常な掴線操作が可能であつても、被覆電線Dが細径になると、掴線部における面圧が強大になつて、上記電線Dの被覆部が損傷するという問題点があつた。
この考案は上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、屈折レバーの先端にピンを介して連結したロツドの中途部と、本体側から揺動自在に突出した可動腕部とを支点ピンの挿通をもつて一括状に連結することにより、支点と屈折レバー間および支点と力点間の各長さの比が一定して、被覆電線の太さに関係なく常に受圧部と押え金とによる掴線力の比が張力に対して一定化し、これによつて電線の掴線時における被覆部の損傷を確実に防止できる被覆電線用掴線器を提供することにある。」(明細書4頁17行?5頁12行)

3 甲3について
甲3は,本件登録の出願前に頒布された刊行物であって,内藤工業株式会社の「万能ワンタッチ・チャック」および「2t万能ワンタッチ・チャック」について,以下の写真が掲載されている。

(3-ア)

4 甲4について
甲4は,本件登録の出願前に頒布された刊行物であって,「鍛造・熱処理作業法」に関して,以下の事項が記載されている。

(4-ア)
「4・2 自由鍛造法の基本作業
自由鍛造法では,つぎにあげる基本作業のうちのいくつかを組み合わせて作業し,製品をつくる.したがって,これらの作業の一つ一つについて熟練しておくことがたいせつである.



5 甲5について
甲5は,平成24年5月7日に作成された株式会社ダイワ電興(代表取締役小西信之)の陳述書であって,以下の事項を陳述している。

(5-ア)
「内藤工業株式会社の万能ワンタッチ・チャックは、昭和60年2月1日より、日本国内において、株式会社ダイワ電興を通じて販売したことを証明します。」

第5 当審の判断
1 無効理由1について
平成22年7月26日付け補正書により補正された本件明細書には,
「【考案の概要】
【考案が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら長レバーとリング部が同一平面上にある掴線器では、リング部の上部がケーブルに干渉してリング部中心をケーブル中心に接近させることが出来ない欠点があった。(図2b参照) その為、ケーブル中心とリング部中心との位置が大きくズレることになる。このズレの大きさが、ケーブルを緊線した際にケーブルを屈曲させることになる。(図3参照)
この屈曲によるケーブル表面に生じる屈曲のクセ及び損傷等(図4参照)の不都合を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本考案は、掴線器の長レバーのリング部を15°?45°の角度に捻ることにより、リング部の上部がケーブルに干渉することを避けてリング部中心をケーブル中心に接近させることが出来ることにより(図1参照)及び(図1b参照)、上記課題を解決するものである。この角度の範囲外では実用的に不適当である。
【考案の効果】
【0005】
本考案による掴線器は、部品数を増やす必要もなく、只、長レバーのリング部を捻るだけで容易に製作できる。また、ケーブル表面の損傷等(図4参照)を防止して、長期間設置され続けるケーブルの信頼性を向上させることが出来る利点がある。
【実施例1】
【0006】
図1に示すように、掴線器の長レバー1の端部にあるリング部2を15°?45°の角度に捻ることは容易に出来、部品数も増えずコストも最小にできる。更に、同一平面上にある、従来使用されている長レバーに比較しても、有効にリング部中心をケーブルに干渉させずに、ケーブル中心に接近させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1aは、長レバーの端部にあるリング部を捻った掴線器の正面図であり、図1bは図1aにおけるA-A´線の断面図である。」
と記載されており,図1aには,長レバーの「リング部2」の右側(枢支側)に「捻り個所4」が明記されている。
そして,「捻る」とは,「物を指先でつまんでまわす」ことを意味する(広辞苑第六版)から,製造方法の記載である「長レバー及びケーブルの平面に対して15°?45°に捻った」とは,図1aおよび図1bからみて,「長レバー1」の後端部である「リング部2」をつかんで,「長レバー1」の長手方向を軸に回すことにより,「捻り個所4」にて捻り(回転)変形を与え,「長レバー及びケーブルの平面」,すなわち,「長レバー1」および「ケーブル3」の長手中心軸を含む平面に対して「リング部2」を「15°?45°」傾斜させることであるといえる。
また,本件明細書には「長レバー1」の材質が記載されていないが,鍛造可能な金属製とすれば,甲4の記載事項(4-ア)に「ネジリ作業」が例示されていることからみても,図1aおよび図1bに記載されるような「捻り」形状にすることは明らかに可能である。
そうすると,金属製の「長レバー1」に所定の鍛造変形を与えて,上記本件明細書および図1aおよび図1bに記載されたような形状の「長レバー1」とすることは,当業者ならば実施できるというべきである。
してみると,本件明細書は当業者が実施できる程度に明確に記載されたものではないから本件実用新案登録は実用新案法第5条第4項の規定により実用新案登録を受けることができないものである,とはいえない。

2 無効理由2について
(1)甲1考案
上記記載事項(1-ア)?(1-ウ)および第1図?第3図の記載からみて,甲1には,以下の考案(以下「甲1考案」という)が記載されていると認められる。
「上下1対の掴持子(1)(2),作動レバー(3)および作動レバー(3)の端部(4)に作用する引張力(P)を両掴持子(1)(2)の挟持力に変換するリンク・テコ機構(5)とから成り,被張設線(f)を両掴持子(1)(2)間に挟着すると共に前記引張力(P)方向に引張する掴線器において,作動レバー(3)の端部(4)を鉛直断面U形状とすることにより,被張設線(f)を上下移行自由に通挿する内空間(D)を形成した掴線器。」

(2)甲3考案
甲3の上記写真(3-ア)からみて,甲3には,以下の考案(以下「甲3考
案」という)が記載されていると認められる。
「長レバーのリング部に引張力を負荷することで,テコを利用してケーブルを把持する構造の掴線器であって,該リング部前側において長レバーを段差状に屈曲した掴線器。」

(3)甲1考案との対比・判断
甲1考案と本件考案とを対比すると,その機能・構造からみて,甲1考案の「作動レバー(3)」および「リンク・テコ機構(5)」が本件考案の「長レバー」および「テコを利用してケーブルを把持する構造」に相当することは明らかである。
そして,甲1考案の「作動レバー(3)の端部(4)」と,本件考案の「長レバーのリング部」とは,「長レバーの端部」である点で共通するといえる。

そうすると,両者は,
(一致点)
「長レバーの端部に引張力を負荷することで,テコを利用してケーブルを把持する構造の掴線器」
の点で一致し,次の点で相違する。

(相違点1)
「長レバーの端部」が,本件考案では「リング部」であり,「長レバー及びケーブルの平面に対して15°?45°に捻った」ものであるのに対し,甲1考案では,「鉛直断面U形状とすることにより,被張設線(f)を上下移行自由に通挿する内空間(D)を形成した」点。

そこで,相違点1について検討する。
まず,上記記載事項(2-ア)および甲2の第1図からみて,甲2記載の「ロッド24」および「孔部24a」は,その機能・構造からみて,それぞれ,本件考案の「長レバー」および「リング部」に相当することは明らかであり,甲2には「長レバーのリング部に引張力を負荷することで,テコを利用してケーブルを把持する構造の掴線器」が記載されているといえる。
しかしながら,上記記載事項(2-イ)からみて,甲2には,「被覆電線の太さに関係なく常に受圧部と押え金とによる掴線力の比が張力に対して一定化し、これによつて電線の掴線時における被覆部の損傷を確実に防止できる被覆電線用掴線器」が記載されているものの,本件考案の「長レバーのリング部」に相当する「ロッド24の孔部24a」を捻ることにより掴線時における損傷を防止することは,全く記載されていないし,示唆もされていない。
してみると,甲1考案に甲2の記載事項を適用して,甲1考案の「端部(4)」に「孔部」(リング部)を形成することは,当業者がきわめて容易に考案することができるとしても,「作動レバー(3)」を捻ることは,当業者がきわめて容易に考案することができるとはいえない。

次に,甲3考案の「長レバーを段差状に屈曲」することと,本件考案の「リング部を捻った」とは,機能上「リング部中心をケーブル中心に接近させる」点で共通するものの,構造上明らかに相違するといえる。
また,甲1考案においては,その「端部(4)」は「鉛直断面U形状」であって,2つに分岐しているのであるから,そもそも,その「リング部」が分岐していない甲3の記載事項を適用することには,阻害要因が存在し,また,動機付けもないというべきである。
してみると,甲1考案に甲3考案を適用して,相違点における甲1考案の構成とすることは,当業者がきわめて容易に考案することができるとは到底いえない。

(4)甲3考案との対比・判断
甲3考案と本件考案とを対比すると,両者は,
(一致点)
「長レバーのリング部に引張力を負荷することで,テコを利用してケーブルを把持する構造の掴線器」
の点で一致し,次の点で相違する。

(相違点2)
「長レバーのリング部」が,本件考案では「長レバー及びケーブルの平面に対して15°?45°に捻った」ものであるのに対し,甲3考案では,「リング部前側において長レバーを段差状に屈曲した」点。

そこで,相違点2について検討する。
前述したように,甲3考案の「長レバーを段差状に屈曲」することと,本件考案の「リング部を捻った」とは,機能上「リング部中心をケーブル中心に接近させる」点で共通するものの,構造上明らかに相違するといえる。
そして,本件考案が属する技術分野において,種々の形状を形成するために,鍛造により「捻る」あるいは「ネジル」ことが慣用されているとしても,「段差状に屈曲」することに変えて「捻る」という技術思想が本件登録出願前において技術常識であるといえないし,周知の事項であるとする証拠も提出されていない。

してみると,本件考案は,甲3考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができるとは到底いえない。

(5)小括
以上のとおり,本件考案は,甲第1?4号証に記載された考案に基づいて,当業者がきわめて容易に考案をすることができたとすることはできないので,実用新案法第3条第2項の規定に該当しない。

第6 むすび
以上のとおりであるから,請求人の主張及び証拠方法では,本件考案の実用新案登録を無効とすることはできない。
審判に関する費用については,実用新案法第41条で準用する特許法第169条第2項で更に準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
審決日 2012-05-25 
出願番号 実願2010-216(U2010-216) 
審決分類 U 1 114・ 121- Y (H02G)
U 1 114・ 536- Y (H02G)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 信田 昌男
後藤 時男
登録日 2010-09-15 
登録番号 実用新案登録第3163196号(U3163196) 
考案の名称 掴線器  
代理人 吉田 卓司  
代理人 高尾 俊雄  
代理人 池田 啓倫  
代理人 岡田 全啓  
代理人 扇谷 一  
代理人 北村 光司  
代理人 石橋 徹也  
代理人 竹中 俊夫  
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