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審決分類 審判    A47B
管理番号 1269487
審判番号 無効2011-400007  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-05-26 
確定日 2013-01-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第3136656号「靴収納庫用棚板及び靴収納庫」の実用新案登録無効審判事件についてされた平成23年12月28日付け審決に対し,知的財産高等裁判所において,「1 特許庁が無効2011-400007号事件について平成23年12月28日にした審決中,実用新案登録第3136656号の請求項3に係る部分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。」との本件審決取消の判決(平成24年(行ケ)第10022号平成24年 9月19日判決言渡)があったので,請求項3に係る考案について,さらに審理のうえ,次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第3136656号の請求項3に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
本件の手続の経緯は,以下のとおりである。

平成19年 8月24日 実用新案登録出願(実願2007-6585号
平成19年10月10日 実用新案権の設定登録(実用新案登録第3136 656号,請求項の数:5)
平成23年 5月26日 本件無効審判請求(請求項1?3に対して)
平成23年 7月11日 被請求人:答弁書提出
平成23年10月 4日 請求人:口頭審理陳述要領書提出
平成23年11月 4日 被請求人:口頭審理陳述要領書提出
平成23年12月 8日 口頭審理(特許庁審判廷にて)
平成23年12月28日 審決(以下「一次審決」という。)
平成24年 1月23日 審決取消訴訟(請求人提起)
(「平成24年行(ケ)10022号」)
平成24年 9月19日 知的財産高等裁判所による審決取消訴訟について の判決言渡
この判決の主文は、次のとおりである。
「1 特許庁が無効2011-400007号事件について平成23年12月28日にした審決中,実用新案登録第3136656号の請求項3に係る部分を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。」
上記判示によれば,審決のうち,実用新案登録第3136656号の請求項1,2に係る考案についての実用新案登録を無効とした部分は確定しているから,本件無効審判請求事件における審理の対象は,本件考案の請求項3に関する部分に限定されることとなった。


第2 本件考案
本件実用新案登録の請求項3は,請求項1又は2のいずれかの項を引用するものであるところ,本件実用新案登録の請求項3,1及び2の記載は,以下のとおりである。以下,同請求項3に係る考案を「本件考案」といい,同請求項1及び2に係る考案を,それぞれ「請求項1考案」「請求項2考案」という。
「【請求項3】
靴載せ部の靴止め部側端部の両隅部に下方に延びる脚部を形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の靴載置用棚板。」
「【請求項1】
上面に靴載せ部が形成された板状部材の一端に靴収納庫に設けられた横桟部材に着脱可能に掛合する掛合部と,他端に靴止め部とを形成し,靴載せ部の上面と靴載せ部の下方とに靴を収納した収納姿勢と,掛合部を回転中心として靴止め部側端部を跳ね上げ靴載せ部の下方に靴を出し入れする跳ね上げ姿勢とに回動可能で且つ掛合部で横桟部材の長手方向に摺動可能に構成したことを特徴とする靴載置用棚板。」
「【請求項2】
横桟部材に掛合する掛合部が,靴収納用棚板の側面視においてフックもしくは下向きU字形に掛合部を形成されていることを特徴とする請求項1に記載の靴載置用棚板。」


第3 請求人の主張
請求人は,請求項1考案,請求項2考案及び本件考案についての実用新案登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め,以下のように主張している。
なお,無効理由1の部分については,一次審決が確定したので本件無効審判事件における無効理由ではなくなった。

1.無効理由の概要
(無効理由2)
本件考案は,甲第1号証に記載された考案に甲第3号証ないし甲第5号証に記載された考案を適用することにより,当業者がきわめて容易に考案できたものであるので,実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり,その登録は同法第37条第1項第2号に該当し無効である。

2.具体的主張
(無効理由2について)
甲第3?5号証には,靴載せ用板材の前側に脚部を設けて,板材の前部を浮かすという技術が記載されており,甲第1号証に記載された靴整理棚の他端の横桟部材は必須の構成ではないから,甲第1号証に記載された靴整理棚から他端側の横桟部材を,すなわち甲第1号証に記載された考案の「他端の掛合部」を省いて,それに代えて甲第3?5号証に開示された技術を適用して,本件考案とすることは,きわめて容易である。

3.証拠方法
請求人の提出した証拠方法は,以下のとおりである。

甲第1号証:意匠登録第1131915号公報
甲第2号証:意匠登録第1149152号公報
甲第3号証:登録実用新案第3072740号公報
甲第4号証:意匠登録第1164550号公報
甲第5号証:意匠登録第1303260号公報


第4 被請求人の主張
被請求人は,本件請求は,成り立たない。審判費用は,請求人の負担とする,との審決を求め,請求人の主張に対して,以下のように反論している。

(無効理由2について)
甲第1号証に記載された考案は,前後の横桟部材が必須であり,甲第1号証に記載された考案の,前側の横桟部材に代えて甲第3?5号証に記載された考案の脚部を適用する動機付けがない。


第5 無効理由についての当審の判断
1.甲号各証の記載内容
(1)甲第1号証:意匠登録第1131915号公報
本件実用新案登録に係る出願の出願前に発行された刊行物である,甲第1号証には,以下記載がある。
(1a)「【意匠に係る物品の説明】本物品は、主として靴を整理する棚で、左右側板間に前後に各々大径のパイプ内に小径のパイプが摺動可能に嵌入された棚パイプが懸架され、前後棚パイプ間に複数枚のパレット状棚部材が掛け渡されてなるもので、左右方向に伸ばした状態の斜視図で示されるように棚パイプを伸ばして幅を広げて使用することができる。また本物品は上下方向に積み重ねて使用することもできるものである。本物品の使用に際しては、使用状態参考図1で示されるようにパレット状棚部材上に靴を置くとともに裏側にも靴を収納でき、裏側の靴はパレット状棚部材を外して取り出すことができる。また収納量を増やすには左右方向に伸ばして幅を広げ、棚パイプ間にパレット状棚部材を必要に応じて掛け渡して使用することもできる。更に使用状態参考図2で示されるように前後棚パイプをいずれも左右側板の中段に懸架してパレット状棚部材を水平に掛け渡せば、棚部材のある部分にはその上下に靴を収納すると共にパレット状棚部材のない部分には例えばブーツなど高さのある靴を収納できる。」

(1b)【斜視図】


(1c)【使用状態参考図1】




(1d)【使用状態参考図2】



上記記載事項(1a)?(1d)の記載からみて,甲第1号証には,以下の考案が記載されているものと認められる。
「上面に靴載せ部が形成されたパレット状棚部材の一端及び他端に靴整理棚の左右側板間に懸架された前後の棚パイプに着脱可能に掛けることができる部分と,
パレット状棚部材の他端に靴止め部が形成されており,
靴載せ部の上面と,靴載せ部の下方に靴を収納でき,
棚パイプに着脱可能に掛けることができる部分が,側面視において下向きU字形に形成されている,
靴整理棚に用いられる棚板。」(以下,「甲1考案」という。)

(2)甲第3号証:登録実用新案第3072740号公報
本件実用新案登録に係る出願の出願前に発行された刊行物である,甲第3号証には,以下の記載がある。
(2a)「【0003】
このような靴収納具の空きスペースの無駄を解消するために、従来、靴受け板を前後方向に傾斜させてなる靴受け台が提案されている。図9は、このような従来の靴受け台の一例(実用新案登録第1978055号)を示す斜視図である。この図9に示す靴受け台201は、靴受け板202を、靴配置方向である前後方向に高低差を有する左右一対の支脚203によって支持することにより、靴受け板202を前後方向に傾斜させたものである。」

(2b)「【0005】
図10は、以上のような構成を有する靴受け台201の使用状態を示す縦断面図である。この図10に示すように、靴受け台201を靴収納具の棚板211上に設置することにより、傾斜した靴受け板202の上に靴212を収納できると共に、靴受け板202の下方にも、靴213を上段の靴212と前後逆向きに収納できる。
この靴受け台201を使用することにより、傾斜した靴受け板202の上下に靴を2段に収納することができるため、靴収納具全体のスペースを有効に利用して、より多くの靴を収納することができる。
特に、この靴受け台201においては、支脚203に2つの傾斜溝209,210を設けているため、靴受け板202を嵌合する傾斜溝209,210を切り換えることにより、靴受け板202の傾斜角度を2段階に調節することができる。」

(2c)「【0043】
[第3の実施の形態]
図4の(B)は、本考案による第3の実施の形態に係る靴受け台31を示す斜視図である。この靴受け台31は、前述した第1の実施の形態において、前方の支脚対3の各支脚5,6を靴受け板2に予め固定された固定脚32,33に変更すると共に、後方の支脚対4については、前述した第2の実施の形態と同様に、一体化して支脚対部材24としたものである。」

(2d)【図4】




(2e)【図9】



(2f)【図10】



(3)甲第4号証:意匠登録第1164550号公報
本件実用新案登録に係る出願の出願前に発行された刊行物である,甲第4号証には,以下記載がある。
(3a)「【意匠に係る物品の説明】この意匠に係る物品は、使用状態を示す参考図のように、靴を上下に収納できるようにするための靴整理棚であって、略四角形に形成された棚板と、この棚板の側縁部に移動可能に設けられた角度調節用脚部とからなる。 そして、斜視図1及び斜視図2に示すように角度調節用脚部の取り付け位置を変更することにより、棚板の角度が変更できるようになっている。」

(3b)【正面図】



(3c)【背面図】



(3d)【右側面図】



(3e)【使用状態を示す参考図】



(4)甲第5号証:意匠登録第1303260号公報
本件実用新案登録に係る出願の出願前に発行された刊行物である,甲第5号証には,以下記載がある。
(4a)【右側面図】



(4b)【使用状態の参考斜視図】



2.本件考案について
(1)本件考案と甲1考案との対比
本件考案と甲1考案とを対比すると,
甲1考案の「パレット状棚部材」が本件考案の「板状部材」に相当し,以下同様に,
「棚パイプ」が「横桟部材」に,
「棚パイプに着脱可能に掛けることができる部分」が「掛合部」に,
「靴整理棚に用いられる棚板」が「靴載置用棚板」に,
それぞれ相当しており,本件考案の「靴載せ部の上面と靴載せ部の下方とに靴を収納した収納姿勢」が可能であるという構成は,甲1考案の「靴載せ部の上面と,靴載せ部の下方に靴を収納でき」るという構成に相当している。

そして,甲1考案は「靴整理棚」に配置されるものであるのに対して,本件考案が「靴収納庫」に配置されるものであって,それらが配置される箇所に違いはあるものの,甲1考案が配置される「靴整理棚」と本件考案が配置される「靴収納庫」とはともに「靴収納部」として共通するものであって,配置される箇所が「靴整理棚」か「靴収納庫」かによって,靴載置用棚板自体の構成に差異が生じるものではない。

したがって,両者は,以下の点で一致している。
(一致点)
「上面に靴載せ部が形成された板状部材の一端に靴収納部に設けられた横桟部材に着脱可能に掛合する掛合部と,
他端に靴止め部とを形成し,
靴載せ部の上面と靴載せ部の下方とに靴を収納することができる,
靴載置用棚板。」

そして,以下の点で相違している。
(相違点1)
本件考案は,「掛合部」が,板状部材の一端に設けられているものであるのに対して,甲1考案は,「掛合部」が,板状部材の一端及び他端に設けられているものである点。

(相違点2)
本件考案は,「掛合部を回転中心として靴止め部側端部を跳ね上げ靴載せ部の下方に靴を出し入れする跳ね上げ姿勢とに回動可能」であるのに対して,甲1考案は,靴載せ部の下方に靴を出し入れする跳ね上げ姿勢に回動可能であるか否か明らかではない点。

(相違点3)
本件考案は,「掛合部で横桟部材の長手方向に摺動可能」であるのに対して,甲1考案は,掛合部で横桟部材の長手方向に摺動可能であるか否か明らかではない点。

(相違点4)
本件考案は,「靴載せ部の靴止め部側端部の両隅部に下方に延びる脚部を形成」しているのに対して,甲1考案は,靴載せ部が形成されたパレット状棚部材の他端には掛合部が形成されており,脚部を形成するものではない点。

(2)各相違点についての判断
(相違点1について)
まず,相違点1に係る本件考案の構成について検討する。
本件考案は,靴収納庫を構成する靴載置用棚板であって,靴収納庫に設けられた1本の横桟部材に着脱可能に掛合する「掛合部」を板状部材の一端に備えるものであるが,該「掛合部」が板状部材の一端のみに備えることが特定されているものではなく,また,板状部材の他端が直接底板に接触する等の構成が特定されているものでもない。

また,本件実用新案登録明細書をみると,その段落【0002】?【0006】には,本件考案の従来技術として,少ない面積に多くの靴を効率よく収納できる傾斜棚(実開平5-93270号公報参照)が記載されており,該従来の傾斜棚の問題点として,従来の傾斜棚は靴収納庫の棚板と同様の一枚の大きなものであって,ブーツ等の丈の長いものを収納するのに不向きな点,及び,傾斜棚の下方の靴の取り出すためには傾斜棚の靴を全部取り出す必要がある点が挙げられている。
そして,上記問題点を解決するために,本件考案は,(ア)「板状部材の一端に靴収納庫に設けられた横桟部材に着脱可能に掛合する掛合部を形成し」,(イ)「掛合部で横桟部材の長手方向に摺動可能」とするとともに,(ウ)「掛合部を回転中心として靴止め部側端部を跳ね上げ靴載せ部の下方に靴を出し入れする跳ね上げ姿勢とに回動可能」としたものである。
しかしながら,該問題点を解決するための本件考案の構成としては,板状部材の一端に掛合部があればよいものであって,板状部材に設けられる掛合部を一端のみとすることが必須であるとは認められないから,本件考案の「板状部材の一端に・・・掛合部を形成」する構成が,板状部材の一端のみに掛合部を形成することを意味するものとは認められない。

以上より,相違点1に係る本件考案の構成,すなわち,板状部材の他端については,前記問題点を解決するための本件考案の構成を妨げないものであれば,どのような構成をも採用しうると解釈するのが相当である。

そこで,甲1考案の他端の構成が,上記問題点を解決するための本件考案の構成を妨げるか否かについて検討すると,甲1考案は,板状部材の一端に横桟部材に着脱可能に掛合する掛合部を設けており,使用状態参考図に示されるように該一端の掛合部を支点として,板状部材を異なる傾斜とすることができるものであり,他端の掛合部に掛合する横桟部材が存在するが,該一端の掛合部を支点として回転させれば板状部材の下方に靴を出し入れすることが可能なことは自明であって,以下の「(相違点2について)」及び「(相違点3について)」にも記載したように,横桟部材に他端の掛合部を設けることが,上記問題を解決するために必要な事項として本件考案において特定されている上記構成(ア),(イ)及び(ウ)を妨げる要因になるとは考えられない。

以上のことから,甲1考案の「掛合部が設けられている」板状部材の他端の構成は,本件考案の他端の構成に包含されるものであって,上記相違点1は,実質的には,相違点ではない。

(相違点2について)
甲第1号証の記載事項(1a),(1c),(1d)より,甲1考案の棚板の一端及び他端の「棚パイプに着脱可能に掛けることができる部分」が着脱可能であること,及び,棚板の一端の「棚パイプに着脱可能に掛けることができる部分」を支点として回動自在であることは明らかである。
そして,甲1考案の板状部材を一端の掛合部を支点として十分に回動させれば,板状部材の下方に靴を出し入れすることが可能であることは,当業者にとって自明であって,板状部材の他端に掛合部があることによって,板状部材の下方に靴を出し入れすることが不可能となるものではない。

そうすると,上記相違点2は,実質的には,相違点ではない。

(相違点3について)
上記のとおり,甲1考案の棚板の一端及び他端の「棚パイプに着脱可能に掛けることができる部分」が着脱可能であること,及び,棚板の一端の「棚パイプに着脱可能に掛けることができる部分」を支点として回動自在であることは明らかである。
そうすると,甲1考案の板状部材の「掛合部」は,横桟部材に対してきつく掛合されるものではなく,板状部材の他端に掛合部を備えることが板状部材を横桟部材に対して摺動させることを妨げるものでもない。
そして,甲第1号証に記載された棚パイプの大径部の長さが棚板の幅に比べて十分に長いことから考えると,甲1考案において,横桟部材に対して掛合部を緩く掛合させるなどして,板状部材を横桟部材の幅方向に積極的に摺動可能とすることは,当業者がきわめて容易になし得たことである。

(相違点4について)
ア 周知技術
甲第3号証は,靴受け台に係る登録実用新案公報,甲第4号証は,靴整理棚に係る意匠公報,甲第5号証は,靴収納具に係る意匠公報であるところ,甲第3号証ないし甲第5号証には,靴載置用板材の高さを保持するために,靴載せ部の一端及び他端の両隅部に下方に延びる脚部を形成した靴載置用板材が開示されている。そして,甲第3号証ないし甲第5号証により開示された靴載置用板材において,前方の脚部間には床面との間に隙間が存在するものであるから,本件考案と同様に,隙間に手を入れて靴載置用板材の跳ね上げ操作を楽に行うことができるものである。

イ 判断
本件考案は,靴収納庫用棚板に係る考案であり,甲1考案は,靴整理棚に係る考案であるから,両考案の技術分野は共通する。周知技術である甲第3号証ないし甲第5号証に係る考案についても同様である。
甲1考案は,靴を載せるパレット状棚部材の前後に棚パイプが懸架されている構成を有しているところ,当該構成は,収納する靴の寸法や形状に応じて棚パイプの位置を変更するとともに,パレット状棚部材を載置することによりこれを支持するものである。なお,甲1考案は,2本の棚パイプが左右側板に懸架されたものであるところ,本件考案は,靴収納庫用棚板に係る考案であり,横桟部材を保持するための具体的構成に係る考案特定事項は存在しないから,甲1考案において横桟部材に相当する棚パイプと左右側板との懸架について,2本の棚パイプによる構成を重視し,当該構成に限定する必要性は乏しい。
また,甲1考案においては,前方の棚パイプに掛合しているパレット状棚部材と下方に収納した靴の靴底が接触している床面(甲1考案の実施品の設置場所として想定される玄関などの床面)との間に隙間が存在しているところ,下方に収納した靴を取り出す場合,パレット状棚部材を掴み,同部材を跳ね上げた上で下方に収納した靴を取り出すことも可能である。
そうすると,甲1考案においても,前方の棚パイプは,本件考案と同様に,パレット状棚部材を支持し,床面とパレット状棚部材との間に隙間を生じさせているものであるということができるから,甲1考案において,上記効果を奏する構成として,前後2つの棚パイプを採用することに代えて,一方の棚パイプについて,周知技術である甲第3号証ないし甲第5号証において開示されており,しかも,棚板の支持体の構成として一般的な構成ともいうべき固定脚の構成を採用することは,当業者にとってきわめて容易であるものということができる。

この点について,本件考案は,請求項1考案又は請求項2考案の構成に,脚部の構成を有機的に組み合わせた構成を採用する点に特徴を有するものであって,単に周知技術を組み合わせたものではない,本件考案における脚部は,隙間から手を入れて靴収納用棚板の跳ね上げ操作を楽に行うという本件明細書に記載された格別の効果を奏するための重要な意義を有するものであるかどうか検討する。
甲第3号証ないし甲第5号証により開示された靴載置用板材においても,本件考案と同様に,床面との間の隙間に手を入れて靴載置用板材の跳ね上げ操作を楽に行うことができるものであることは,先に述べたとおりであって,甲第3号証ないし甲第5号証のような周知技術における脚部においても同様の効果を奏するものということができる。したがって,被請求人が強調する「脚部間の隙間に手を入れて靴収納用棚板の跳ね上げ姿勢を楽に行う」との効果は,脚部を採用したことに伴う格別の作用効果といえるものではないというべきである。
のみならず,仮に,甲第3号証ないし甲第5号証が脚部を採用した目的と本件考案が脚部を採用した目的とが異なるとしても,靴載せ部を支持する構成として,「脚部」の構成が周知技術である以上,その適用が必ずしも困難であるということはできない。すなわち,靴収納庫用棚板に限らず,一般的に棚板の一端をパイプ状の部材に載置し,当該棚板の上下に目的物を収納する場合,他端にも同様のパイプ状の部材を設けるか,脚部を設けるかによって棚板と床面との間に隙間を生じさせなければ,下方に収納した目的物と棚板とが接触し,棚板及び上方に収納した目的物の重量により下方に収納した目的物が破損又は変形するおそれがあるのみならず,下方に収納した目的物を取り出すことが困難であることは明らかである。本件明細書には,脚部を採用した効果について,隙間から手を入れて靴収納用棚板の跳ね上げ操作を楽に行うことのみしか記載されていないが,本件考案において,脚部を設けなければ,靴載せ部を形成した板状部材が下方に収納した靴に接触することにより,下方に収納した靴が破損したり変形したりするおそれがあることは明らかであって,当業者が,そのような課題を認識し,これを解決すべき手段を検討することは,むしろ当然である。
そうすると,脚部を採用することにより生じる効果は,上下に目的物を収納する棚板における普遍的な効果(目的物の取り出し時に棚板を跳ね上げやすくするため及び下方に収納した目的物と棚板との接触を防止するために棚板と床面との間に隙間を生じさせること)にすぎないものというほかない。

また,甲第3号証ないし甲第5号証は,いずれもそれ自体の上下に靴を収納する機能を有する考案に係る文献であり,甲1考案の他端側の棚パイプと甲第3号証ないし甲第5号証により開示された脚部とを置き換える動機付けは存在しない,甲1考案は,前後の棚パイプをいずれも左右側板の中段に懸架してパレット状棚部材を水平に掛け渡し,同棚部材の上下に靴を収納することも予定しているから,1対の前後の棚パイプは同考案に必須の構成であるかどうか検討する。
この点は,上記のとおり,靴収納庫用棚板において,目的物の取り出し時に棚板を跳ね上げやすくするため及び下方に収納した目的物と棚板との接触を防止するために棚板と床面との間に隙間を生じさせることは,引用考案及び甲第3号証ないし甲第5号証により開示された靴載置用板材のいずれにおいても存在する課題であって,その解決手段として一般的な構成で,普遍的な効果を奏するにすぎない脚部の構成を採用することは,当業者が容易に試みる設計的事項であるというべきである。
もちろん,脚部を設けなくても,板状部材を長くすれば,少なくとも下方に収納した靴と板状部材との接触を回避することは可能ではあるが,本件明細書が,請求項1考案及び請求項2考案並びに本件考案の技術的特徴の1つとして,「既存の靴収納庫にも必要に応じて取り付けて使用することができる」ことを指摘しているとおり,靴収納庫用棚板や靴収納庫は,通常,既存の靴箱の中や玄関先等において使用することが想定されているものであるところ,当業者は,板状部材の長さを含め,通常想定される靴箱の寸法等による制約を前提として,課題を解決するための手段を選択するものと解されるから,当業者が脚部の構成を採用することは,むしろ自然である。
また,甲1考案が,パレット状棚部材を水平に掛け渡す態様をも予定しているとしても,本件考案も,棚板の傾斜角度や脚部の寸法などを限定するものではなく,靴収納庫用棚板が水平となる構成を排除するものではない。甲1考案において,パレット状棚部材を水平に掛け渡す態様は,棚パイプと脚部との高さを一致させて設置すれば実現可能であって,1対の前後の棚パイプを有する構成を採用しなければ実現できないものではないから,当該構成が必須であるとまでいうことはできない。

(3)まとめ
したがって,本件考案は,甲1考案及び甲第3号証ないし甲第5号証に係る考案に基づいて,当業者がきわめて容易に考案をすることができたものというべきである。


第6 結び
以上のとおりであるから,
本件実用新案登録第3136656号の請求項3に係る考案の実用新案登録は,請求人の主張する無効理由2により,無効とすべきである。
審判に関する費用については,実用新案法第41条で準用する特許法第169条第2項の規定でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2012-11-12 
結審通知日 2012-11-14 
審決日 2012-11-28 
出願番号 実願2007-6585(U2007-6585) 
審決分類 U 1 124・ 121- Z (A47B)
最終処分 成立  
特許庁審判長 高橋 三成
特許庁審判官 中川 真一
鈴野 幹夫
登録日 2007-10-10 
登録番号 実用新案登録第3136656号(U3136656) 
考案の名称 靴収納庫用棚板及び靴収納庫  
復代理人 岡田 充浩  
代理人 杉本 勝徳  
復代理人 内山 邦彦  
代理人 濱田 俊明  
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