• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判    A41F
管理番号 1281361
審判番号 無効2010-400001  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-04-27 
確定日 2011-09-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第3146031号実用新案「パンツ類のウエストサイズ調整補助具」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.手続の経緯
本件手続の主な経緯を整理して以下に示す。

平成20年 8月21日 実用新案登録出願(実願2008-5823号)
平成20年10月 8日 実用新案登録(実用新案登録第3146031号)
平成22年 4月27日付け 実用新案登録無効審判の請求
平成22年 6月28日付け 審判事件答弁書の提出
平成22年11月 1日付け 通知書(口頭審理事項通知書)
平成22年11月19日付け 口頭審理陳述要領書の提出(請求人より)
平成22年11月19日付け 口頭審理陳述要領書第1回の提出(被請求人より)
平成22年12月 7日付け 通知書(口頭審理事項通知書第2回)
平成22年12月17日付け 口頭審理陳述要領書第2回の提出(請求人より)
平成22年12月17日 口頭審理の実施

第2.請求人の主張
1.請求の趣旨及び証拠方法
請求人は、審判請求書によれば、「実用新案登録第3146031号考案の実用新案登録請求の範囲の請求項2に係る考案(以下、本件考案という)についての実用新案登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、以下の甲第1?8、11?14号証(甲第9号証、同10号証は欠番)を証拠方法として提出している。また、請求人は、甲第5号証に記載された「ラメボーダーサッシュベルト」を妊婦が着用した写真等として、参考資料1?137を提出している。

・甲第1号証;株式会社ベネッセコーポレーションがインターネット上で運営する「ベネッセの総合通販サイト ショッピングモール」でベリーベルトの使用状態を示す画像を掲載したページ。URL:[http://shop.benesse.ne.jp/mall/disp/CSfGoodsSuppleImage_001.jsp?MSK_NO=0070002078000000&SUPPNO=2&ATT_GRP_NM=ベリーベルト コンボキットマタニティ専用ウエアを買わずに済んで大助かり!大きなおなかでも妊娠前のパンツやスカートがはけます]、閲覧日時:2010年3月18日午前10時40分30秒。
・甲第2号証;たまごクラブ7月号(平成20年7月1日発行、株式会社ベネッセコーポレーション)第3付録の「通信販売 たまひよSHOP 特別BOOK」の8頁及び裏表紙、並びに前記「たまごクラブ7月号」の表紙及び裏表紙。
・甲第3号証;有限会社イーエスクリエイトジャパンがインターネット上で運営する「ベリーベルト日本総代理店サイト」で「ベリーバンドゥ」と「ベリーベルト」及び「スペシャルセット」を掲載したページ。URL:[http://www.bellybelt.jp/bellybando.html]、閲覧日時:2010年4月7日午前11時30分30秒。
・甲第4号証;特開2008-150758号公報
・甲第5号証;妊すぐ2007 12-2008 1月号(平成19年12月15日発行、株式会社リクルート)の125頁、表紙及び裏表紙。
・甲第6号証;楽天株式会社がインターネット上で運営するインターネット通信販売サイト「楽天市場」内にある「みんなのレビュー」での「ベリーベルト×ベリーバンドゥ スペシャルセット」のレビューを掲載したページ。URL:[http://review.rakuten.co.jp/item/1/224096_1085313/1.0/]、閲覧日時:2010年3月26日午前9時50分30秒。
・甲第7号証;妊すぐ2007 12-2008 1月号(平成19年12月15日発行、株式会社リクルート)の247頁、表紙及び裏表紙。
・甲第8号証;たまひよSHOP 通信販売 特別BOOK 2008年夏カタログ(株式会社ベネッセコーポレーション発行、発行日は不詳であるが遅くとも2008年6月30日以前に発行されたものである。)の8頁及び表紙。
・甲第11号証;実願平3-97911号(実開平6-12406号)のCD-ROM
・甲第12号証;特開平10-266002号公報
・甲第13号証;株式会社スウィートマミーがインターネット上で運営するインターネット通信販売サイト「授乳服とマタニティウェアの通販専門店【スウィートマミー】本店」で「ラメボーダー マタニティサッシュベルト マタニティウェア」を掲載したページ。URL:[http://www.sweet-mommy.com/SHOP/ma11016.html]、閲覧日:2010年4月7日午前10時15分30秒。
・甲第14号証;実用新案登録第3146031号公報(本件登録実用新案に係る登録実用新案公報)

2.無効理由
請求人は、審理の全趣旨によれば、以下の無効理由1及び無効理由2を主張しているものと認める。
<無効理由1>
本件考案(本件登録実用新案の請求項2に係る考案)は、本件登録実用新案に係る実用新案登録出願の日前に頒布された甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案に、甲第4号証、甲第5号証又は甲第11号証に記載された考案の技術を適用することにより、当業者がその出願前にきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件考案の本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものである。したがって、本件考案は、実用新案法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
<無効理由2>
本件考案は、本件登録実用新案に係る実用新案登録出願の日前に頒布された甲第4号証に記載された考案に、甲第5号証又は甲第12号証に記載された考案の技術、あるいは、甲第6号証の記載から本件登録実用新案に係る実用新案登録出願の日前に公知であることが分かる考案の技術を適用することにより、当業者がその出願前にきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件考案の本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものである。したがって、本件考案は、実用新案法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

なお、請求人は、審判請求書においては、本件考案を特定する本件実用新案登録請求の範囲の請求項2の記載が不明確であるという無効理由(以下、「無効理由3」という。)をも主張していたが、口頭審理において、被請求人が「本件実用新案登録第3146031号の請求項2の『パンツ類の前立て部分の一側上端部に設けたパンツ側係止具と前記前立て部分の他側上端部に設けられ前記パンツ側係止具を着脱可能に係止するパンツ側被係止部との間に取り付けて前立て部分の拡開によりパンツ類のウエストサイズを拡張する伸縮ベルト』という記載は、伸縮ベルトの取り付け位置及び範囲に関しては、『伸縮ベルトの一端をパンツ側係止具に取り付け、伸縮ベルトの他端をパンツ側被係止部に取り付けることにより、パンツ側係止具とパンツ側被係止部との間に伸縮ベルトが延在していること』を意味し、それ以外の意味を有さない。」と釈明したことを受け、当該釈明を了承して、無効理由3の主張を撤回している。

第3.被請求人の主張
被請求人は、審判事件答弁書によれば、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、無効理由1及び無効理由2に理由はないと主張し、以下の乙第1号証を提出している。また、審理の全趣旨によれば、無効理由3の撤回を認めている。
・乙第1号証;実用新案登録第3124176号公報

第4.無効理由の判断
1.当事者間に争いのない事実
(1)本件考案及びその分説
本件実用新案登録の願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲、及び図面の記載から見て、本件考案は、実用新案登録請求の範囲の請求項2に記載された事項によって特定されるとおりのものであり、下記に示すAないしDeに分説されると認める。なお、これらの点は、当事者間に争いがない。
<本件考案の分説>
A;パンツ類の前立て部分の一側上端部に設けたパンツ側係止具と前記前立て部分の他側上端部に設けられ前記パンツ側係止具を着脱可能に係止するパンツ側被係止部との間に取り付けて前立て部分の拡開によりパンツ類のウエストサイズを拡張する伸縮ベルトと、
B;拡開した前立て部分から露出する露出部を覆い隠すため着用する上下両端を開口にした袋状のカバーとからなるパンツ類のウエストサイズ調節補助具であって、
C;前記カバーが伸縮性を有する布地からなり、
De;前身ごろの下端に略逆三角形状のフロントガード片を連続形成し、該前身ごろの身丈を、後身ごろの身丈よりも長くして、前記露出部を前記フロントガード片で覆い隠すようにしたことを特徴とするパンツ類のウエストサイズ調整補助具。

(2)甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案と、本件考案との一致点及び相違点
甲第2号証又は甲第7号証に記載された事項から見て、甲第2号証又は甲第7号証には、次の考案が記載されていると認める。
「ジーンズなどのパンツの前立て部分上端部のボタンとボタン穴との間に取り付けて、前立て部分の拡開によりパンツのウエストサイズを拡張するベリーベルトと、拡開した前立て部分を覆い隠すため着用するチューブ状でストレッチ素材製のベリーバンドゥとからなるパンツ類のウエストサイズ調節補助具。」
甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案と、本件考案とを対比すると、甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案の「ベリーベルト」と「ベリーバンドゥ」は、それぞれ本件考案の「伸縮ベルト」と「上下両端を開口にした袋状のカバー」に相当する。
したがって、甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案は、本件考案を分説した技術的要素AないしCを備えている点で、本件考案と一致し、本件考案が技術的要素Deを備えているのに対し、甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案は、技術的要素Deに一部類似した「露出部をカバーで覆い隠すようにした」技術的要素を備えるが、「カバーの前身ごろの下端に略逆三角形状のフロントガード片を連続形成し、該前身ごろの身丈を、後身ごろの身丈よりも長く」した技術的要素を備えていない点で、本件考案と相違すると認める。
なお、甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案と、本件考案との一致点及び相違点が上記のとおりであることについて、当事者間に争いはない。

(3)甲第4号証に記載された考案と、本件考案との一致点及び相違点
甲第4号証に記載された事項から見て、甲第4号証には、次の考案が記載されていると認める。
「前開きタイプのパンツ10のウエスト部11に設けたボタン12aとボタン孔12bとの間に取り付け、ウエスト部11を開放してウエストサイズを拡張する横設係止部材2と、
開放されたウエスト部11や横設係止部材2を被覆する円筒状の前側被覆部材3と、
前側被覆部材3の内側に取り付けられ、パンツ10の内側に入れ込んで着用される内側被覆部材5であって、伸縮性の素材でできており、円筒状で前側中央部が横側より長く垂れ下がっており、正面から見ると前側中央部が緩やかなV字型を描くように形成されている内側被覆部材5とを備えたマタニティウェア1。」
甲第4号証に記載された考案の「横設係止部材2」と「内側被覆部材5」を、それぞれ本件考案の「伸縮ベルト」と「袋状のカバー」に対応させて両考案を対比すると、甲第4号証に記載された考案は、本件考案を分説した技術的要素A、技術的要素Bの一部に類似する「上下両端を開口にした袋状のカバー」、技術的要素C、及び技術的要素Deの一部に類似する「前身ごろの下端に略逆三角形状のフロントガード片を連続形成し、該前身ごろの身丈を、後身ごろの身丈よりも長くし」た事項を備えている点で、本件考案と一致する。そして、甲第4号証に記載された考案の「袋状のカバー」である内側被覆部材5は、技術的要素Bとは異なり、露出部を覆い隠すものではない点、及び技術的要素Deの一部である「露出部を前記フロントガード片で覆い隠すようにした」事項を備えていない点で、本件考案と相違する。
なお、甲第4号証に記載された考案と、本件考案との一致点及び相違点が上記のとおりであることについて、当事者間に争いはない。

2.無効理由1についての当審の判断
(1)相違点についての請求人の主張
請求人は、甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案と、本件考案との相違点は、当業者がきわめて容易に想到し得たことであると主張し、その理由として大要、以下の4点を主張していると認める。
a.甲第4号証には、内側被覆部材5の前身ごろの下端に略逆三角形状のフロントガード片を連続形成することが記載されている。甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案のベリーバンドゥと、甲第4号証に記載の内側被覆部材5とは、伸縮性を有する筒状(上下両端を開口にした袋状)のものである点で共通するから、甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案のベリーバンドゥに、甲第4号証に記載の内側被覆部材5の前身ごろの下端に略逆三角形状のフロントガード片を連続形成するという技術的事項を適用することにより、ベリーバンドゥの前身ごろの下端に略逆三角形状のフロントガード片を連続形成し、前身ごろの身丈を、後身ごろの身丈よりも長くすることは、当業者がきわめて容易に想到し得たことである。
b.甲第11号証には、ブラジャー付きスリップ1のスリップ部3の内側に配置される柔軟性胴部被覆筒4であって、その前後の裾部に、ワイシャツの裾部のようにカットした延部42を設け、そのうちの前側の延部42の形状を逆三角形状にすることが記載されている。甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案のベリーバンドゥと、甲第11号証に記載の柔軟性胴部被覆筒4とは、柔軟性を有する筒状(上下両端を開口にした袋状)のものである点で共通するから、甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案のベリーバンドゥに、甲第11号証に記載の柔軟性胴部被覆筒4の前側の裾部に逆三角形状の延部42を形成するという技術的事項を適用することにより、ベリーバンドゥの前身ごろの下端に略逆三角形状のフロントガード片を連続形成し、前身ごろの身丈を、後身ごろの身丈よりも長くすることは、当業者がきわめて容易に想到し得たことである。
c.甲第5号証には、妊婦のウエスト近傍(デニムなどのウエストリブとベルトの境目)を隠すために装着するラメボーダーサッシュベルトであって、前身ごろの身丈が後身ごろの身丈よりも長いサッシュベルトが記載されている。甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案のベリーバンドゥに代えて、甲第5号証に記載のサッシュベルトを採用することにより、袋状のカバーの前身ごろの身丈を、後身ごろの身丈よりも長くすることは、当業者がきわめて容易に想到し得たことである。そして、ベリーバンドゥに代えてサッシュベルトを採用した考案と、本件考案とは、本件考案では前身ごろの下端が略逆三角形状であり、サッシュベルトの前身ごろの下端は略逆三角形状ではない点で相違するが、袋状のカバーの前身ごろの下端を略逆三角形状とする点には、ベリーバンドゥに代えてサッシュベルトを採用した考案に比べて顕著な効果が見られないから、前身ごろの下端を略逆三角形状とすることは、単なる設計的事項であり、当業者がきわめて容易に想到し得たことである。
d.伸縮性を有する布地からなり、上下両端を開口にした袋状のカバーで、前身ごろの下端に略逆三角形状のフロントガード片を連続形成したカバーを妊婦が装着すると、フロントガード片の頂点付近は上方に収縮する現象が生じ、装着状態では略逆三角形状でなくなる。してみれば、袋状のカバーの前身ごろの下端の形状を略逆三角形状にする必要性はなく、むしろ、そうすることにより、甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案に比し、被覆機能、保温機能、衝撃保護機能を低下させるものである。してみれば、甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案のカバー(ベリーバンドゥ)の下端部を略逆三角形状にすることは、製造工程や製造コストを余計に要する、不用な構成を付加する後進的な考案であるから、本件考案は進歩性を有していない。

(2)主張a(甲第4号証との組合せ)についての当審の判断
請求人の主張どおり、甲第4号証には、内側被覆部材5の前身ごろの下端に略逆三角形状のフロントガード片を連続形成することが記載されており、甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案のベリーバンドゥと、甲第4号証に記載の内側被覆部材5とは、伸縮性を有する筒状(上下両端を開口にした袋状)のものである点で共通する。
しかしながら、甲第4号証に記載の考案では、拡開した前立て部分から露出する露出部を覆い隠すため着用するものは、前側被覆部材3であり、内側被覆部材5ではない。甲第4号証に記載の内側被覆部材5は、パンツ10の内側に入れ込んで着用される(甲第4号証の段落【0044】参照)ものであり、内側被覆部材5によって露出部を覆い隠す機能は想定されておらず、むしろ、内側被覆部材5それ自体が前側被覆部材3によって被覆されるものである。
この点に関し、請求人は、甲第4号証の段落【0023】の「仮に、内側被覆部材が、横設係止部材及び縦設係止部材よりも外側(着用者よりも遠い側)に形成されていると」という記載を引用し、甲第4号証には、内側被覆部材5を外側に装着することが示唆されている旨の主張をしている。しかしながら、当該段落【0023】には、前記記載の後方に「このような状況では、横設係止部材及び縦設係止部材が邪魔をして、内側被覆部材と着用者の腹部とが十分に密着しない虞がある。これに対し、本発明のマタニティウェアによれば、内側被覆部材は横設係止部材及び縦設係止部材よりも内側に位置しているから、より自然に着用者の腹部にフィットして被覆することができる。」と記載されていることなどから明らかなように、甲第4号証には、内側被覆部材5を外側に装着してはならないことが記載されているのであるから、内側被覆部材5を外側に装着することが示唆されているということはできない。また、甲第4号証の段落【0024】の「さらに、本発明によれば、内側被覆部材は、横設係止部材及び縦設係止部材よりも内側に位置しており、換言すると、前側被覆部材よりも内側の着用者側に配設されている。つまり、着用した状態では、前側被覆部材によって被覆され、人目につき難くいので、デザイン性に拘泥されることなく素材や色を選択することができる。これにより、素材の選択の幅が広くなるから、着用感を重視した素材を選ぶことが容易であり、一層快適なマタニティウェアの提供に資する。」という記載や、同【0025】の「ところで、本発明において、内側被覆部材は、前側被覆部材よりも内側の着用者側に配設されるから、着用した状態においては、人目に触れ難く、デザイン性に拘泥されることなく素材を選択できるという利点を有している。一方、前側被覆部材は、人目に触れる状態で着用され易いため、着用者の好みに合わせて様々なデザイン性を発揮するものが好ましい。」という記載などから、甲第4号証記載のものにおいては、内側被覆部材5は、前側被覆部材3によって被覆されて人目に触れないように隠されるものであり、内側被覆部材5によって拡開した前立て部分を覆い隠すことを想定されていないことが明らかである。
したがって、露出部を覆い隠すため着用する甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案のベリーバンドゥと、甲第4号証に記載の内側被覆部材5とは、その目的とする機能も、使用する場所も異なるから、甲第4号証に記載の内側被覆部材5の前身ごろの下端形状を、第2号証又は甲第7号証に記載された考案のベリーバンドゥに適用する動機付けがあるとはいえない。よって、甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案に、甲第4号証に記載された考案の技術を適用することにより、当業者が本件考案をきわめて容易に考案をすることができたということはできない。

(3)主張b(甲第11号証との組合せ)についての当審の判断
請求人の主張どおり、甲第11号証には、スリップ部3の内側に配置される柔軟性胴部被覆筒4であって、その裾部の前側の延部42の形状を逆三角形状にすることが記載されており、甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案のベリーバンドゥと、甲第11号証に記載の柔軟性胴部被覆筒4とは、柔軟性を有する筒状(上下両端を開口にした袋状)のものである点で共通する。
しかしながら、甲第11号証に記載の柔軟性胴部被覆筒4は、スリップ部3の内側に配置されるものであり、露出部を覆い隠す機能は想定されていない。したがって、甲第11号証に記載の柔軟性胴部被覆筒4と、露出部を覆い隠すため着用する甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案のベリーバンドゥとは、その目的とする機能も、使用する場所も異なるから、甲第11号証に記載の柔軟性胴部被覆筒4の前身ごろの下端形状を、第2号証又は甲第7号証に記載された考案のベリーバンドゥに適用する動機付けがあるとはいえない。よって、甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案に、甲第11号証に記載された考案の技術を適用することにより、当業者が本件考案をきわめて容易に考案をすることができたということはできない。

(4)主張c(甲第5号証との組合せ)についての当審の判断
請求人の主張どおり、甲第5号証には、妊婦のウエスト近傍を隠すために装着するラメボーダーサッシュベルトであって、前身ごろの身丈が後身ごろの身丈よりも長いサッシュベルトが記載されている。このサッシュベルトと、甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案のベリーバンドゥとは、その目的とする機能や、使用する場所がほぼ共通するから、甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案のベリーバンドゥに代えて、甲第5号証に記載のサッシュベルトを採用することにより、袋状のカバーの前身ごろの身丈を、後身ごろの身丈よりも長くすることは、当業者がきわめて容易に想到し得たことといえる。しかしながら、このように、ベリーバンドゥに代えてサッシュベルトを採用した考案は、前身ごろの下端が略逆三角形状ではない点で本件考案と相違する。
この点に関し、請求人は、袋状のカバーの前身ごろの下端を略逆三角形状とする点には、顕著な効果が見られないから、単なる設計的事項である旨主張する。
しかしながら、ある技術的要素に顕著な効果がないからといって、その技術的要素が単なる設計的事項であるということはできない。ある技術的要素が、単なる設計的事項であるというためには、その技術的要素の採用ないしは適用が、通常の創作能力の範囲内の事項といえることを前提として、さらに、その技術的要素の採用ないしは適用に顕著な効果がないことが必要というべきである。ここで、通常の創作能力の範囲内の事項とは、例えば、その技術的要素を採用ないしは適用することが広く知られ慣用されているとか、その技術的要素を採用することが、技術の具体的適用において通常行われる単なる設計変更(例えば、単なる寸法の変更等)であることなどである。
そこで、袋状のカバーの前身ごろの下端を略逆三角形状とすることが、単なる設計的事項であるかについて検討すると、請求人が提出した甲各号証には、パンツの拡開した前立て部分を覆い隠すため着用するカバーの前身ごろの下端を略逆三角形状とすることが記載も示唆もされていないばかりでなく、直線状以外の形状とすることさえ記載も示唆もされていない。したがって、パンツの拡開した前立て部分を覆い隠すため着用する袋状のカバーの前身ごろの下端を略逆三角形状とすることが、本件実用新案の出願前に広く知られていたと認めることはできないし、技術の具体的適用において通常行われる単なる設計変更であると認めることもできない。そうすると、そもそも、パンツの拡開した前立て部分を覆い隠すため着用する袋状のカバーの前身ごろの下端を略逆三角形状とすることが単なる設計的事項であるというための前提事項が存在しないから、当該技術的要素に顕著な効果が存するか否かにかかわらず、当該技術的要素を単なる設計的事項であるということはできない。さらに、パンツの拡開した前立て部分を覆い隠すため着用する袋状のカバーの前身ごろの下端を略逆三角形状とすることが単なる設計的事項であるとすべき、他の理由も見あたらない。
したがって、パンツの拡開した前立て部分を覆い隠すため着用する袋状のカバーの前身ごろの下端を略逆三角形状とすることは、単なる設計的事項ということはできないから、甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案に、甲第5号証に記載された考案の技術を適用することにより、当業者が本件考案をきわめて容易に考案をすることができたということはできない。

(5)主張d(後進的な考案である)についての当審の判断
実用新案法第3条第2項は、後進的な考案である場合には実用新案登録が受けられないことを規定するものではなく、公知文献に記載された考案等に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができた考案は、実用新案登録が受けられないことを規定するものである。
そして、公知文献に記載された考案等に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたか否かは、公知文献に記載された考案等と、検討の対象とする考案(検討考案。本件無効審判では本件考案に当たる。)とを対比し、両者に相違点がある場合には、公知文献に記載された考案等のその相違点を、検討考案の構成のように変更する動機付けがあるか、さらには、その変更に伴って奏される作用効果が、当業者の予測の範囲内の事項であるかなどを検討して判断すべきである。
そこで、甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案と、本件考案の相違点である「カバーの前身ごろの下端に略逆三角形状のフロントガード片を連続形成し、該前身ごろの身丈を、後身ごろの身丈よりも長く」した点について、甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案を、本件考案の構成のように変更する動機付けがあるかを検討する。
すると、上記(4)で指摘したように、パンツの拡開した前立て部分を覆い隠すため着用する袋状のカバーの前身ごろの下端を略逆三角形状とすることは、本件実用新案の出願前に広く知られていたと認めることはできないし、技術の具体的適用において通常行われる単なる設計変更であると認めることもできないから、甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案の袋状のカバーの前身ごろの下端を、略逆三角形状に変更する動機付けがあるということはできない。したがって、甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案に基づいて、当業者が本件考案をきわめて容易に考案をすることができたということはできない。
なお、請求人の主張によれば、袋状のカバーの前身ごろの下端の形状を略逆三角形状にする必要性はなく、むしろ、製造工程や製造コストを余計に要する不用な構成を付加するものである。請求人のこの主張によれば、甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案について、袋状のカバーの前身ごろの下端の形状を略逆三角形状にする動機付けはなく、むしろ、カバーの前身ごろの下端の形状を略逆三角形状にしない動機付けがあるといえる。そうすると、請求人の主張に従えば、甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案について、袋状のカバーの前身ごろの下端の形状を略逆三角形状にする動機付けはないから、甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案に基づいて、当業者が本件考案をきわめて容易に考案をすることはできなかったということになる。

(6)無効理由1についての当審の判断のまとめ
以上のとおりであって、請求人が主張するa?dは、いずれも理由がない。さらに、甲第2号証、甲第7号証、甲第4号証、甲第5号証及び甲第11号証に記載された事項を総合的に検討しても、それらに記載された考案に基づいて、当業者が本件考案をきわめて容易に考案をすることができたということはできない。
よって、無効理由1には理由がない。

3.無効理由2についての当審の判断
(1)相違点についての請求人の主張
請求人は、甲第4号証に記載された考案と、本件考案との相違点は、当業者がきわめて容易に想到し得たことであると主張し、その理由として大要、以下の2点を主張していると認める。
e.甲第4号証の段落【0023】には、内側被覆部材5を横設係止部材及び縦設係止部材よりも外側に装着することが開示・示唆されているから、甲第4号証に記載された考案の内側被覆部材5を横設係止部材及び縦設係止部材よりも外側に装着し、さらに、前側被覆部材3を除去することにより、甲第4号証に記載された考案の内側被覆部材5を、露出部を覆い隠すものとすることは、当業者がきわめて容易に想到し得たことである。
f.甲第6号証には、本件に係る実用新案出願前に、妊婦がパンツ類のウエストサイズ調整補助具を使用する場合、内側被覆部材を最外側に着用することが示されているから、甲第4号証に記載された考案の内側被覆部材5を最外側に着用するようにし、さらに、前側被覆部材3を除去することにより、甲第4号証に記載された考案の内側被覆部材5を、露出部を覆い隠すものとすることは、当業者がきわめて容易に想到し得たことである。

(2)主張eについての当審の判断
上記「2(2)主張a(甲第4号証との組合せ)についての当審の判断」で指摘したように、甲第4号証の段落【0023】は、内側被覆部材5を横設係止部材及び縦設係止部材よりも外側に装着することを開示・示唆したものとはいえず、むしろ、内側被覆部材5を外側に装着してはならないことを記載したものである。したがって、甲第4号証に記載された考案に基づいて、当業者が本件考案をきわめて容易に考案をすることができたということはできない。
さらに述べれば、甲第4号証の段落【0020】、【0024】、【0025】の記載などから見て、甲第4号証に記載された考案においては、前側被覆部材3は、必須の技術的要素であるから、甲第4号証に記載された考案から、前側被覆部材3を除去するという動機付けは生じないといえる。したがって、この観点からも、甲第4号証に記載された考案に基づいて、当業者が本件考案をきわめて容易に考案をすることができたということはできない。

(3)主張f(甲第6号証との組合せ)についての当審の判断
請求人は、甲第6号証には、本件に係る実用新案出願前に、妊婦がパンツ類のウエストサイズ調整補助具を使用する場合、内側被覆部材を最外側に着用することが示されていると主張する。
しかしながら、甲第6号証は、「ベリーベルト×ベリーバンドゥ スペシャルセット」のレビュー、すなわち、甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案に係る製品を使用した者の感想である。そして、甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案は、上記「1(2)甲第2号証又は甲第7号証に記載された考案と、本件考案との一致点及び相違点」で指摘したように、元々「拡開した前立て部分を覆い隠すため着用するチューブ状でストレッチ素材製のベリーバンドゥ」を備えるものであるから、甲第6号証に「妊婦がパンツ類のウエストサイズ調整補助具を使用する場合、内側被覆部材を最外側に着用すること」が記載されているとはいえない。
したがって、甲第4号証に記載された考案に、甲第6号証に記載された考案の技術を適用することにより、当業者が本件考案をきわめて容易に考案をすることができたということはできない。
また、上記(2)で指摘したように、甲第4号証に記載された考案においては、前側被覆部材3は必須の技術的要素であるので、甲第4号証に記載された考案から、前側被覆部材3を除去するという動機付けは生じないから、この観点からも、甲第4号証に記載された考案に基づいて、当業者が本件考案をきわめて容易に考案をすることができたということはできない。

(4)無効理由2についての当審の判断のまとめ
以上のとおりであって、請求人が主張するe、fは、いずれも理由がない。さらに、甲第4号証、甲第5号証、甲第6号証及び甲第12号証に記載された事項を総合的に検討しても、それらに記載された考案に基づいて、当業者が本件考案をきわめて容易に考案をすることができたということはできない。
よって、無効理由2には理由がない。

第5.むすび
以上のとおりであって、請求人が主張する無効理由1及び無効理由2は、いずれも理由がない。
また、審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定により準用する特許法第169条第2項の規定によりさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審決日 2010-12-28 
出願番号 実願2008-5823(U2008-5823) 
審決分類 U 1 124・ 121- Y (A41F)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 谷治 和文
千馬 隆之
登録日 2008-10-08 
登録番号 実用新案登録第3146031号(U3146031) 
考案の名称 パンツ類のウエストサイズ調整補助具  
代理人 吉野 守  
代理人 小笠原 史朗  
代理人 寺本 亮  
代理人 三宅 始  
代理人 石川 達久  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社   サービスに関しての問い合わせ