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審決分類 審判    B62D
審判    B62D
審判    B62D
管理番号 1309591
審判番号 無効2012-400004  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-11-18 
確定日 2015-12-14 
事件の表示 上記当事者間の登録第3139191号「付箋」の実用新案登録無効審判事件についてされた平成25年 9月30日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成25年(行ケ)第10310号平成26年 7月 9日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第3139191号の請求項に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
本件実用新案登録第3139191号に係る出願は、平成19年11月22日に名称を「付箋」として実用新案登録出願(実願2007-9032号、甲第12号証。以下「本件出願」という。)がなされ、平成20年1月9日、設定の登録(以下「本件実用新案登録」という。)がなされたものである。
そして、本件無効審判請求に係る手続の経緯は、以下のとおりである。
平成24年11月18日 無効審判請求書提出
平成25年 1月10日 訂正書提出
平成25年 1月15日 審判事件答弁書提出
平成25年 3月27日 弁駁書提出(請求人)
平成25年 6月14日 口頭審尋
平成25年 6月28日 上申書提出(請求人)
平成25年 7月 5日 上申書提出(被請求人)
平成25年 7月18日 審理事項通知書起案(発送日:平成25年7月22日)
平成25年 8月13日 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
平成25年 8月13日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
平成25年 9月 3日 口頭審理
平成25年 9月30日 第1次審決
平成26年 7月 9日 知財高裁にて第1次審決取り消し
平成27年 5月27日 上申書(被請求人)
平成27年 5月31日 上申書(請求人)
平成27年 7月30日 上申書(請求人)


第2 平成25年1月10日付け訂正請求
1.訂正の内容
被請求人が平成25年1月10日付けの訂正書により請求する訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件実用新案登録の実用新案登録請求の範囲及び明細書を、訂正書に添付した訂正された実用新案登録請求の範囲及び訂正された明細書(以下「訂正明細書」という。)のとおりに訂正しようとするものであって、その訂正の内容は以下のとおりである。

(1)訂正事項1
(ア)本件訂正前の実用新案登録請求の請求項1
「付箋紙を多数枚積み重ねて互いの重なり面が接着剤で剥離可能に接合されている付箋紙束が複数冊に亘って積み重ねられていると共に、付箋紙束を形成している付箋紙が、個々の付箋紙束ごとに異なる色に着色されていて、かつ、個々の上記付箋紙束において付箋紙の重なり面同士を剥離可能に接合している上記接着剤は、互いに接合されている一方側の付箋紙の裏面に保持されて他方側の付箋紙の表面に対して剥離可能になっていると共に、個々の上記付箋紙束が、多数枚の上記付箋紙の端縁の集まりによって形成されている上記付箋紙束の面状の端面に剥離可能に接合された帯状の連結材によって連結されていることを特徴とする付箋。」

(イ)本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1
「付箋紙を多数枚積み重ねて互いの重なり面が接着剤で剥離可能に接合されている付箋紙束が複数冊に亘って積み重ねられていると共に、付箋紙束を形成している付箋紙が、個々の付箋紙束ごとに異なる色に着色されていて、かつ、個々の上記付箋紙束において付箋紙の重なり面同士を剥離可能に接合している上記接着剤は、互いに接合されている一方側の付箋紙の裏面に保持されて他方側の付箋紙の表面に対して剥離可能になっていると共に、付箋紙の積重ね層の中間部分に位置している色の付箋紙だけを剥離しても、他の付箋紙が分離してばらばらになることのないように、個々の上記付箋紙束が、多数枚の上記付箋紙の端縁の集まりによって形成されている上記付箋紙束の面状の端面に剥離可能に接合された帯状の連結材によって連結されていることを特徴とする付箋。」(下線は審決で付した。以下同じ。)

(2)訂正事項2
(ア)本件訂正前の明細書の段落【0011】
「本考案に係る付箋は、付箋紙を多数枚積み重ねて互いの重なり面が接着剤で剥離可能に接合されている付箋紙束が複数冊に亘って積み重ねられていると共に、付箋紙束を形成している付箋紙が、個々の付箋紙束ごとに異なる色に着色されていて、かつ、個々の上記付箋紙束において付箋紙の重なり面同士を剥離可能に接合している上記接着剤は、互いに接合されている一方側の付箋紙の裏面に保持されて他方側の付箋紙の表面に対して剥離可能になっていると共に、個々の上記付箋紙束が、多数枚の上記付箋紙の端縁の集まりによって形成されている上記付箋紙束の面状の端面に剥離可能に接合された帯状の連結材によって連結されている。」

(イ)本件訂正後の明細書の段落【0011】
「本考案に係る付箋は、付箋紙を多数枚積み重ねて互いの重なり面が接着剤で剥離可能に接合されている付箋紙束が複数冊に亘って積み重ねられていると共に、付箋紙束を形成している付箋紙が、個々の付箋紙束ごとに異なる色に着色されていて、かつ、個々の上記付箋紙束において付箋紙の重なり面同士を剥離可能に接合している上記接着剤は、互いに接合されている一方側の付箋紙の裏面に保持されて他方側の付箋紙の表面に対して剥離可能になっていると共に、付箋紙の積重ね層の中間部分に位置している色の付箋紙だけを剥離しても、他の付箋紙が分離してばらばらになることのないように、個々の上記付箋紙束が、多数枚の上記付箋紙の端縁の集まりによって形成されている上記付箋紙束の面状の端面に剥離可能に接合された帯状の連結材によって連結されている。」

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、付箋紙に関して、その連結の態様を付加するものであるから、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1は、願書に添付した明細書(段落【0010】、段落【0016】)に記載した事項の範囲において訂正をするものである。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、新規事項の追加に該当せず、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2には、訂正事項1により訂正する実用新案登録請求の範囲の記載と、考案の詳細な説明の記載とを整合させるためのものであるので、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項2は、願書に添付した明細書(段落【0010】、段落【0016】)に記載した事項の範囲において訂正をするものである。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、新規事項の追加に該当せず、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3.小括
したがって、本件訂正は、実用新案法第14条の2第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同法同条第3項及び第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。


第3 本件訂正後の実用新案登録された考案
本件出願に係る登録明細書(甲第12号証)及び訂正明細書(甲第13号証。以下、これらを併せて「本件明細書」という。)によれば、上記訂正後の考案の要旨は、以下のとおりである(以下、本件の請求項1乃至請求項4に係る考案をそれぞれ「本件考案1」乃至「本件考案4」というように呼称し、これらを合わせて「本件考案」という。)。
「【請求項1】
付箋紙を多数枚積み重ねて互いの重なり面が接着剤で剥離可能に接合されている付箋紙束が複数冊に亘って積み重ねられていると共に、付箋紙束を形成している付箋紙が、個々の付箋紙束ごとに異なる色に着色されていて、かつ、個々の上記付箋紙束において付箋紙の重なり面同士を剥離可能に接合している上記接着剤は、互いに接合されている一方側の付箋紙の裏面に保持されて他方側の付箋紙の表面に対して剥離可能になっていると共に、付箋紙の積重ね層の中間部分に位置している色の付箋紙だけを剥離しても、他の付箋紙が分離してばらばらになることのないように、個々の上記付箋紙束が、多数枚の上記付箋紙の端縁の集まりによって形成されている上記付箋紙束の面状の端面に剥離可能に接合された帯状の連結材によって連結されていることを特徴とする付箋。
【請求項2】
個々の付箋紙束ごとに、端縁が上記連結材に剥離可能に接合された厚手の台紙が備わっている請求項1に記載した付箋。
【請求項3】
上記連結材が、糊で形成された膜状の層でなる請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載した付箋。
【請求項4】
膜状の層を形成している上記糊に、上記接着剤と同一種類の接着剤が用いられている請求項3に記載した付箋。」


第4 請求人の主張の概要及び証拠方法
請求人は、「実用新案登録第3139191号考案の実用新案登録請求の範囲の請求項1から請求項4に係る考案についての実用新案登録を無効にする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」との審決を求め、無効理由の概要は以下のとおりである。なお、請求人は、第一回口頭審理調書に記載されているように、「本件無効理由は、平成25年8月13日付け口頭審理陳述要領書の第2頁、6(2)(ア)に記載のもののみである。」と口頭審理において陳述している。
本件登録実用新案に係る請求項1から請求項3の考案は、本件の実用新案登録出願前に日本国内において秘密保持義務のない者に公然と知られた考案であり、また、出願前から公然と実施されていた考案であることから、実用新案法第3条第1項第1号及び同法同条同項第2号の規定に該当し、請求項4の考案は、該公知となった考案の構成に、出願前に公開された周知技術に用いられていた構成を単に転用又は付加したに過ぎず、当業者であればきわめて容易に創作できたものであるから、同法第3条第2項の規定に該当し、いずれも実用新案登録を受けることができないものである。
従って、その実用新案登録は同法第37条第1項第2号及び4号の規定により、無効とすべきである。(審判請求書4頁6?16行))

また、上記無効理由を立証するための証拠方法は、以下のとおりである。
(証拠方法)
甲第1号証の1:出願前に販売された「カラーパレットブロック8色アソートNSF-56」の写真(販売状態)(審判請求書に添付された甲第1号証(1頁))
甲第1号証の2:出願前に販売された「カラーパレットブロック8色アソートNSF-56」の仕様書(審判請求書に添付された甲第1号証(2頁))
甲第1号証の3:出願前に販売された「カラーパレットブロック8色アソートNSF-56」もしくは「ニチリュウPB」の写真(側面部2方向)(審判請求書に添付された甲第1号証(3頁))
甲第1号証の4:出願前に販売された「カラーパレットブロック8色アソートNSF-56」もしくは「ニチリュウPB」(同一パッケージ・色違い)の写真(側面部2方向)(審判請求書に添付された甲第1号証(4頁))
甲第2号証の1:出願前に販売された「ニチリュウPB」の写真(販売状態)(審判請求書に添付された甲第2号証(1頁))
甲第2号証の2:出願前に販売された「ニチリュウPB」の仕様書(審判請求書に添付された甲第2号証(3頁))
甲第2号証の3:出願前に販売された「カラーパレットブロック8色アソートNSF-56」もしくは「ニチリュウPB」の写真の写真(側面部2方向)(審判請求書に添付された甲第2号証(3頁))
甲第2号証の4:出願前に販売された「カラーパレットブロック8色アソートNSF-56」もしくは「ニチリュウPB」の写真(同一パッケージ・色違い)の写真(側面部2方向)(審判請求書に添付された甲第3号証(4頁))
甲第3号証:納品書 控
甲第4号証:特開平11-1042号公報
甲第5号証:誓約書(平成24年11月24日付け 丸石製紙の代表取締役社長 石村浩)
(以上、審判請求書に添付して提出された。)
甲第6号証:平成25年3月27日付け無効審判弁駁書
甲第7号証:平成25年7月5日付け上申書(被請求人)
甲第8号証:平成25年8月13日付け口頭審理陳述要領書(請求人)
甲第9号証:第1次審決
甲第10号証:技術的効果説明写真
甲第11号証の1:新N’s 付箋仕様書(15.11.14)
甲第11号証の2:ニチリュウPB 付箋仕様書(15.5.2)
甲第12号証:本件登録明細書
甲第13号証:本件訂正明細書
甲第14号証:誓約書(平成25年6月4日 丸石製紙(株) 営業部部長 高橋良樹)
甲第15号証:売上明細一覧表
甲第16号証:特開2002-184139号公報
甲第17号証:特開平8-242550号公報
甲第18号証:オキナ株式会社ホームページ(http://www.okina.co.jp/products/notebook/ppfx.html、http://www.okina.co.jp/projectpaper/ 2013/06/28)
甲第19号証:平成26年3月3日付け陳述書
甲第20号証:係争付箋紙の機能説明用DVD
甲第21号証の1:発注書(15年11月14日)
甲第21号証の2:新N’s 付箋仕様書(15.11.14)
甲第21号証の3:新N’s 付箋仕様書(15.11.14)(色違い)
甲第21号証の4:ニチリュウPB 付箋仕様書(15.5.2)
請求人参考資料1:平成24年11月18日付け審判請求書
請求人参考資料2:平成25年1月10日付け実用新案法第14条の2第1項の訂正に係る訂正書
請求人参考資料3:平成25年1月15日付け審判事件答弁書
請求人参考資料4:平成25年6月28日付け上申書(請求人)
請求人参考資料5:平成25年7月18日付け審理事項通知書
請求人参考資料6:平成25年8月13日付け口頭審理陳述要領書(被請求人)
請求人参考資料7:ウィキペディアホームページ「EANコード」(https://ja.wikipedia.org/wiki/EAN%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%89)、流通システム開発センターホームページ(http://www.dsri.jp/jan/)、
請求人参考資料8:付箋紙(NSF-70、NSF-72、NSF-73、NSF-74)のパッケージ写真
請求人参考資料9の1:付箋紙((株)コメリ用のOEM品)のパッケージ写真
請求人参考資料9の2:付箋紙((株)カウネット用のOEM品)のパッケージ写真
請求人参考資料9の3:付箋紙(協和紙工(株)用のOEM品)のパッケージ写真
請求人参考資料10:平成26年4月21日付け平成25年(行ケ)第10310号審決取消請求事件原告準備書面
(以上、平成27年5月31日付け上申書(請求人)に添付して提出された。)
甲第22号証:平成25年(行ケ)10310号事件口頭弁論(平成26年4月21日)証人(高橋良樹氏)調書(写)
(以上、平成27年7月30日 上申書(請求人)に添付して提出された。)


第5 被請求人の主張の概要及び証拠方法
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、上記請求人の主張に対し、本件実用新案登録を無効とすべき理由はない旨の主張をしている。

また、上記無効理由に反論するための証拠方法は、以下のとおりである。
(証拠方法)
[書証]
乙第1号証の1:甲第1号証の3枚目に示された付箋紙と甲第2号証の3枚目に示された付箋紙とを対比した編集物
乙第1号証の2:甲第1号証の4枚目に示された付箋紙と甲第2号証の4枚目に示された付箋紙とを対比した編集物
乙第2号証:登録実用新案第3139191号公報(本件登録実用新案公報)
(以上、平成25年8月13日付け口頭審理陳述要領書に添付して提出された。)
乙第3号証:平成25年9月3日付け第1回口頭審理調書
被請求人参考資料1:平成25年4月18日付け審尋事項メモ
被請求人参考資料2:平成26年1月10日付け平成25年(行ケ)第10310号審決取消請求事件答弁書
被請求人参考資料3:平成26年2月17日付け平成25年(行ケ)第10310号審決取消請求事件被告準備書面(第1回)
被請求人参考資料4:平成26年3月19日付け平成25年(行ケ)第10310号審決取消請求事件被告準備書面(第2回)
被請求人参考資料5:平成26年4月21日付け平成25年(行ケ)第10310号審決取消請求事件調書
(以上、平成27年5月27日付け上申書(被請求人)に添付して提出された。)
なお、請求人は、乙第1号証の1乃至乙第2号証の成立を認めている。


第6 当審の判断
1.甲第1号証対象品及び甲第2号証対象品について
証拠(甲第1号証の1乃至4、甲第2号証の1乃至4、甲第5号証、甲第10号証、甲第14号証、甲第19号証、甲第20号証、甲第22号証及び乙第3号証)によれば、甲第1号証対象品及び甲第2号証対象品について、以下のとおり認められる。
甲第1号証の1、3及び4並びに甲第2号証の1、3及び4は、平成24年11月ころに丸石製紙の社員が社内に保管されていた付箋紙(甲第1号証又は甲第2号証対象品)の製品を撮影した写真である。甲第1号証対象品及び甲第2号証対象品は、それぞれサイズを15mm×50mmとする合計8色分(各50枚シート)の付箋紙であり、4色組の付箋紙束を1ブロックとしたもの2つがセットとなり、透明のプラスチックケースに収納されている。4色組の1ブロックは、鮮明な蛍光色の黄色、黄緑色、オレンジ色及びピンク色からなる付箋紙束、もう1ブロックは、淡色のパステル系のうす黄色、うす緑色、水色、うすピンク色からなる付箋紙束である。甲第1号証対象品と甲第2号証対象品とは、以下のとおり、販売元が異なり、その包装プラスチックケースの記載事項は、やや異なる点があるものの、そのケースに収納された付箋紙自体は同一製品である。
甲第1号証対象品の外装のプラスチックケースの表面には、製品のシリーズ名である「N’S」と記載され、その裏面には、「カラーパレット(ブロック)」、「サイズ:15mm×50mm」、「カラー:8色アソート(各色50枚シート)」、JANコードとして「4 512799 495319」、「販売元 (株)アックスコーポレーション」と記載されており、末尾に「NSF-56」と記載されている(甲第1号証の1)。
一方、甲第2号証対象品の外装のプラスチックケースの裏面には、「カラーパレット(ブロック)」、「サイズ:15mm×50mm」、「1パッド=50枚」、「カラー:8色アソート」、JANコードとして「4 902160 7444816」、「販売元 日本流通産業株式会社」、「製造元 丸石製紙株式会社」と記載されている(甲第2号証の1)。

2.甲第1号証対象品及び甲第2号証対象品と本件考案1との同一性について
(1)甲第1号証対象品及び甲第2号証対象品の構造について
請求人は、口頭審理において、以下の事項を自白した。(乙第3号証)
甲第1号証の3に示された付箋紙と甲第2号証の3に示された付箋紙は、同じ付箋紙を撮影したものである。
甲第1号証の4に示された付箋紙と甲第2号証の4に示された付箋紙は、同じ付箋紙を撮影したものである。
甲第1号証の3及び4並びに甲第2号証の3及び4に示された付箋紙は、甲第1号証の1に示された付箋紙、あるいは甲第2号証の1に示された付箋紙のどちらかを撮影したものである。
してみると、甲第1号証の3及び4並びに甲第2号証の3及び4に示された付箋紙が、甲第1号証の1に示された付箋紙、甲第2号証の1に示された付箋紙のどちらを撮影したものか明らかでないから、甲第1号証の1乃至4並びに甲第2号証の1乃至4に示されている付箋紙の認定を行うにあたって、甲第1号証の3及び4並びに甲第2号証の3及び4に示されている事項は用いることはできない。
しかしながら、甲第1号証の3及び4並びに甲第2号証の3及び4に示された付箋紙は、甲第1号証の1に示された付箋紙、甲第2号証の1に示された付箋紙のどちらかを撮影したものであるから、甲第1号証の1に示された付箋紙を撮影したものとして検討を行う。
なお、請求人は、甲第1号証の1に示されているバーコードのJANコードと甲第1号証の2に示されているJANコードとが同一であるから、甲第1号証の1に示されている付箋紙は、甲第1号証の2に示されている「付箋仕様書」に記載されている付箋紙そのものであって、その「付箋仕様書」が作成された日付に存在していた旨主張する(甲第6号証第3頁第12?25行)。
しかしながら、請求人も認めるように、一般にJANコードを変更するか否かは、そのJANコードを登録したメーカー自身が決定するものであって(甲第7号証5頁23行?6頁14行)、JANコードを変更せずに、商品の構成を改造等により一部変更することもできるから、甲第1号証の1に示されているバーコードのJANコードと甲第1号証の2に示されているJANコードとが同一であることを根拠として、甲第1号証の1に示されている付箋紙が、甲第1号証の2に示されている「付箋仕様書」に記載されている付箋紙の仕様そのものであるとは必ずしもいえない。
また請求人は、甲第2号証の1に示されているバーコードのJANコードと甲第2号証の2に示されているJANコードとが同一であるから、甲第2号証の1に示されている付箋紙は、甲第2号証の2に示されている「付箋仕様書」に記載されている付箋紙そのものであって、その「付箋仕様書」が作成された日付に存在していた旨主張する(甲第6号証第3頁第12?25行)。
しかしながら、請求人も認めるように、一般にJANコードを変更するか否かは、そのJANコードを登録したメーカー自身が決定するものであって(甲第7号証5頁23行?6頁14行)、JANコードを変更せずに、商品の構成を改造等により一部変更することもできるから、甲第2号証の1に示されているバーコードのJANコードと甲第2号証の2に示されているJANコードとが同一であることを根拠として、甲第2号証の1に示されている付箋紙が、甲第2号証の2に示されている「付箋仕様書」に記載されている付箋紙の仕様そのものであるとは必ずしもいえない。
したがって、甲第1号証の1及び甲第2号証の1に示されている付箋紙が、甲第1号証の2及び甲第2号証の2に示されている「付箋仕様書」に記載されている付箋紙の仕様そのものであるとはいえないから、甲第1号証の1乃至4並びに甲第2号証の1乃至4に示されている付箋紙の認定を行うにあたって、甲第1号証の2及び甲第2号証の2に示されている事項は用いない。

ア 甲第1号証について
甲第1号証の1、3及び4に示されている写真によれば、以下の事実が認められる。
(ア)甲第1号証の1の写真をみると、中紙の表側に、「貼ってはがせる ふせん紙」、「人・自然にやさしいのり成分使用」、中紙の裏側に「カラー:8色アソート(各色50枚シート)」、「●インクやトナーが粘着面に付く場合があります。ご使用前にお試しください。」と記載され、透明なケースに中紙と共に8色の付箋紙束が積み重なるようにして収納されている。
(イ)甲第1号証の3及び4の上側の写真をみると、4色組の付箋紙束が扇状に広げられて配置されている。
(ウ)甲第1号証の3及び4の下側の写真をみると、4色組の付箋紙束の面状の端面側からみて、4色組の付箋紙束が密着して一つの束状になっている。
(エ)上記(ア)及び、付箋紙束は、通常、付箋紙を多数枚積み重ねられ、互いの重なり面が接着剤で剥離可能に接合されており、上記接着剤は、互いに接合されている一方側の付箋紙の裏面に保持されて他方側の付箋紙の表面に対して剥離可能になっていることから、甲第1号証の付箋紙束は、付箋紙を多数枚積み重ねて互いの重なり面が接着剤で剥離可能に接合されており、付箋紙の重なり面同士を剥離可能に接合している上記接着剤は、互いに接合されている一方側の付箋紙の裏面に保持されて他方側の付箋紙の表面に対して剥離可能になっていると認められる。

したがって、「甲第1号証に示された付箋」は、以下のとおりのものと認められる。
「付箋紙を多数枚積み重ねて互いの重なり面が接着剤で剥離可能に接合されている付箋紙束が8冊に亘って積み重ねられていると共に、付箋紙束を形成している付箋紙が、個々の付箋紙束ごとに異なる8色に着色されていて、かつ、個々の上記付箋紙束において付箋紙の重なり面同士を剥離可能に接合している上記接着剤は、互いに接合されている一方側の付箋紙の裏面に保持されて他方側の付箋紙の表面に対して剥離可能になっている付箋。」(以下、検討の便宜上「甲第1号証考案」という。)

イ 甲第2号証について
甲第2号証の1、3及び4に示されている写真によれば、以下の事実が認められる。
(ア)甲第2号証の1の写真をみると、中紙の表側に、「貼ってはがせる ふせん紙」、「人・自然にやさしいのり成分使用」、中紙の裏側に「1パッド=50枚」、「カラー:8色アソート」、「●インクやトナーが粘着面に付く場合があります。ご使用前にお試しください。」と記載され、透明なケースに中紙と共に8色の付箋紙束が積み重なるようにして収納されている。
(イ)甲第2号証の3及び4の上側の写真をみると、4色組の付箋紙束が扇状に広げられて配置されている。
(ウ)甲第2号証の3及び4の下側の写真をみると、4色組の付箋紙束の面状の端面側からみて、4色組の付箋紙束が密着して一つの束状になっている。
(エ)上記(ア)及び、付箋紙束は、通常、付箋紙を多数枚積み重ねられ、互いの重なり面が接着剤で剥離可能に接合されており、上記接着剤は、互いに接合されている一方側の付箋紙の裏面に保持されて他方側の付箋紙の表面に対して剥離可能になっていることから、甲第2号証の付箋紙束は、付箋紙を多数枚積み重ねて互いの重なり面が接着剤で剥離可能に接合されており、付箋紙の重なり面同士を剥離可能に接合している上記接着剤は、互いに接合されている一方側の付箋紙の裏面に保持されて他方側の付箋紙の表面に対して剥離可能になっていると認められる。

したがって、「甲第2号証に示された付箋」は、以下のとおりのものと認められる。
「付箋紙を多数枚積み重ねて互いの重なり面が接着剤で剥離可能に接合されている付箋紙束が8冊に亘って積み重ねられていると共に、付箋紙束を形成している付箋紙が、個々の付箋紙束ごとに異なる8色に着色されていて、かつ、個々の上記付箋紙束において付箋紙の重なり面同士を剥離可能に接合している上記接着剤は、互いに接合されている一方側の付箋紙の裏面に保持されて他方側の付箋紙の表面に対して剥離可能になっている付箋。」(以下検討の便宜上「甲第2号証考案」という。)

ウ 本件考案と甲第1号証考案との対比・判断について
本件考案1乃至3が甲第1号証考案であるか否か及び本件考案4が甲第1号証考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたか否かについて検討する。
(ア)本件考案1と甲第1号証考案との対比・判断
本件考案1と甲第1号証考案とを対比すると、
後者における「付箋紙束が8冊に亘って積み重ねられている」との態様は、前者における「付箋紙束が複数冊に亘って積み重ねられている」との態様に包含され、以下同様に、「個々の付箋紙束ごとに異なる8色に着色されていて」との態様は「個々の付箋紙束ごとに異なる色に着色されていて」との態様に包含される。
したがって、両者は、
「付箋紙を多数枚積み重ねて互いの重なり面が接着剤で剥離可能に接合されている付箋紙束が複数冊に亘って積み重ねられていると共に、付箋紙束を形成している付箋紙が、個々の付箋紙束ごとに異なる色に着色されていて、かつ、個々の上記付箋紙束において付箋紙の重なり面同士を剥離可能に接合している上記接着剤は、互いに接合されている一方側の付箋紙の裏面に保持されて他方側の付箋紙の表面に対して剥離可能になっている付箋。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本件考案1は、「付箋紙の積重ね層の中間部分に位置している色の付箋紙だけを剥離しても、他の付箋紙が分離してばらばらになることのないように、個々の上記付箋紙束が、多数枚の上記付箋紙の端縁の集まりによって形成されている上記付箋紙束の面状の端面に剥離可能に接合された帯状の連結材によって連結されている」との構成(以下、「本件連結構成」という。)を有するのに対し、甲第1号証考案は、本件連結構成を有するのか否か明らかでない点。

そこで、甲第1号証対象品が、本件連結構成を有するか否かについて検討する。
技術的効果証明写真(甲第10号証)及び係争付箋紙の機能説明用DVD(甲第20号証)によれば、甲第1号証対象品を各々構成する一塊となった4色組付箋紙束が実験に用いられているところ、4色組付箋紙束ブロックをそれぞれ広げると、一端は繋がったまま各色の付箋紙束が角度をなして離間した状態となること、個々の付箋紙束の最外層の一方には白色の台紙が設けられ、これらの4色組付箋紙束ブロックの両側最外層に一対のクリップを取り付け、両クリップを持って付箋紙束ブロックを持ち上げると、一端は繋がったまま各色の付箋紙束が角度をなして離間した状態となることが認められ、甲第1号証対象品の4色組付箋紙束ブロックにおいて、各色の付箋紙束が一端にて連結されているといえる。そして、甲第1号証対象品内の4色組付箋紙束ブロックのうち、特定の色の付箋紙束の中間部分に位置している付箋紙を数十枚剥離しても、付箋紙束は繋がったままであり、実験後の付箋紙束の両側最外層に一対のクリップを取り付け、両クリップを持って付箋紙束ブロックを持ち上げても、一端が繋がったままである様子が認められ、中間部分に位置している色の付箋紙を剥離しても、残った付箋紙が分離してばらばらにならないといえる。また、両クリップを持って付箋紙束ブロックを持ち上げた際、一方のクリップが取り付けられた色付き付箋紙に対し、他方のクリップが取り付けられた白色の台紙の撓みが少ないことが認められるから、白色の台紙は、付箋紙との比較から厚手といえる。さらに、複数枚の付箋紙を剥離した後の付箋紙束の面状の端面、すなわち、付箋紙束が連結されている部分を見ると、膜状の層を認識でき、この膜状の層は、付箋紙束の面状の端面全体に亘っていることが認められ、各色の付箋紙束の一端を連結するのが、各色の付箋紙束の一端の端面に跨って接合された膜状の層であるといえる。
以上を総合すれば、甲第1号証対象品の4色付箋紙束ブロックは、各色の付箋紙束の最外層の一方には厚手の台紙が設けられ、各色の付箋紙束の一端の端面に跨って剥離可能に接合された膜状の層によって、各色の付箋紙束が一端にて連結されることで、中間部分に位置している色の付箋紙を剥離しても、残った付箋紙が分離してばらばらにならない構成を有することが認められる。
以上のことから、「甲第1号証に示された付箋」は、以下のとおりのものとも認められる。
「付箋紙を多数枚積み重ねて互いの重なり面が接着剤で剥離可能に接合されている付箋紙束が8冊に亘って積み重ねられていると共に、付箋紙束を形成している付箋紙が、個々の付箋紙束ごとに異なる8色に着色されていて、かつ、個々の上記付箋紙束において付箋紙の重なり面同士を剥離可能に接合している上記接着剤は、互いに接合されている一方側の付箋紙の裏面に保持されて他方側の付箋紙の表面に対して剥離可能になっており、各色の付箋紙束の最外層の一方には厚手の台紙が設けられ、各色の付箋紙束の一端の端面に跨って剥離可能に接合された膜状の層によって、各色の付箋紙束が一端にて連結されることで、中間部分に位置している色の付箋紙を剥離しても、残った付箋紙が分離してばらばらにならない構成を有する付箋。」(以下、「甲第1号証考案の2」という。また、上記「甲第1号証考案」を、以降、「甲第1号証考案の1」という。)
そして、甲第1号証考案の2の「膜状の層」は本件考案1の「帯状の連結材」に相当するものであって、両構成は一致しているから、甲第1号証考案の2の付箋は、本件考案1の本件連結構成を備えているといえる。
そうすると、本件考案1と甲第1号証考案の2とは同一である。
したがって、甲第1号証対象品の4色付箋紙束ブロックは、本件考案1の付箋を備えているといえる。

(イ)本件考案2と甲第1号証考案の2との対比・判断
本件考案2と甲第1号証考案の2とを対比すると、本件考案2は、本件考案1に、「個々の付箋紙束ごとに、端縁が上記連結材に剥離可能に接合された厚手の台紙が備わっている」という特定事項を付加したものであって、後者における「厚手の台紙」は、前者における「個々の付箋紙束ごとに、端縁が上記連結材に剥離可能に接合された厚手の台紙」に相当するものである。
そうすると、甲第1号証考案の2は、本件考案2の付箋と同一である。
したがって、甲第1号証対象品の4色付箋紙束ブロックは、本件考案2の付箋を備えているといえる。

(ウ)本件考案3と甲第1号証考案の2との対比・判断
本件考案3と甲第1号証考案の2とを対比すると、本件考案3は、本件考案1又は本件考案2のいずれかに、「連結材が、糊で形成された膜状の層でなる」という特定事項を付加したものであって、後者における「各色の付箋紙束の一端の端面に跨って剥離可能に接合された膜状の層」は、前者における「連結材が、糊で形成された膜状の層でなる」との構成に相当するものである。
そうすると、甲第1号証考案の2は、本件考案3の付箋と同一である。
したがって、甲第1号証対象品の4色付箋紙束ブロックは、本件考案3の付箋を備えているといえる。

(エ)本件考案4と甲第1号証考案の2との対比・判断
本件考案4と甲第1号証考案の2とを対比すると、本件考案4は、本件考案3に、「膜状の層を形成している糊に、接着剤と同一種類の接着剤が用いられている」という特定事項を付加したものであって、以下の点で両者は相違している。

[相違点2]
本件考案4は、「膜状の層を形成している糊に、接着剤と同一種類の接着剤が用いられている」との構成(以下、「本件接着剤構成」という。)を有するのに対し、甲第1号証考案の2は、そのような構成を有するのか否か明らかでない点。

そこで、甲第1号考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたか否かについて検討する。
一般に、製造コストや材料コストを低減するために、異なる部位に用いる材料や部品を共通化することは、周知慣用の技術手段である。(必要であれば、甲第16号証の【0044】及び甲第17号証の【0022】?【0023】。以下、「周知慣用技術」という。)
また、コストの低減という課題は、あらゆる技術分野における内在する課題といえるから、甲第1号証考案の2においても内在するものである。
してみると、甲第1号証考案の2において、上記周知慣用技術を適用することは、当業者がきわめて容易に想到し得るものである。
したがって、甲第1号証考案の2において、上記周知慣用技術を適用することにより、相違点4に係る本件考案4の特定事項とすることは、当業者がきわめて容易に想到し得るものである。
したがって、本件考案4は、甲第1号証考案の2及び上記周知慣用技術に基づいて、当業者がきわめて容易に考案できたものである。
そして、本件考案4の特定事項によって奏される効果も、甲第1号証考案の2及び上記周知慣用技術から、当業者が予測しうる範囲内のものである。
エ 本件考案と甲第2号証考案との対比・判断
上記「1.」のとおり、甲第1号証対象品と甲第2号証対象品とは同一製品である。
また、上記「(ウ) ア」の検討と同様に、「甲第2号証に示された付箋」は、以下のとおりのものとも認められる。
「付箋紙を多数枚積み重ねて互いの重なり面が接着剤で剥離可能に接合されている付箋紙束が8冊に亘って積み重ねられていると共に、付箋紙束を形成している付箋紙が、個々の付箋紙束ごとに異なる8色に着色されていて、かつ、個々の上記付箋紙束において付箋紙の重なり面同士を剥離可能に接合している上記接着剤は、互いに接合されている一方側の付箋紙の裏面に保持されて他方側の付箋紙の表面に対して剥離可能になっており、各色の付箋紙束の最外層の一方には厚手の台紙が設けられ、各色の付箋紙束の一端の端面に跨って剥離可能に接合された膜状の層によって、各色の付箋紙束が一端にて連結されることで、中間部分に位置している色の付箋紙を剥離しても、残った付箋紙が分離してばらばらにならない構成を有する付箋。」(以下、「甲第2号証考案の2」という。また、上記「甲第2号証考案」を、以降、「甲第2号証考案の1」という。)
そうすると、甲第2号証考案の2は、甲第1号証考案の2とは差異がない。
したがって、上記「(ウ) ア」乃至「(ウ) ウ」の検討と同様に、甲第2号証対象品の4色付箋紙束ブロックは、本件考案1乃至本件考案3の付箋を備えているといえる。
また、上記「(ウ) エ」の検討と同様に、本件考案4は、甲第2号証考案及び上記周知慣用技術に基づいて、当業者がきわめて容易に考案できたものである。

3.甲第1号証対象品及び甲第2号証対象品と同一構成を有する製品の公知性、公用性について
(1)証拠(甲第1号証の1乃至4、甲第2号証の1乃至4、甲第3号証、甲第5号証、甲第8号証、甲第11号証の1及び2、甲第14号証、甲第15号証、甲第19号証、甲第20号証、甲第21号証の1乃至4、甲第22号証並びに乙第3号証)によれば、以下の事実が認められる。
ア 当事者等
被請求人は、文房具・家具・衣料品・日用雑貨品・紙加工品等の製造、輸出入、販売及びそのコンサルタント業務並びに上記文房具等のデザイン及び開発企画等を業とする株式会社である。
丸石製紙は、書道半紙、付箋紙、障子紙等の製造加工等を業とする株式会社である。
被請求人、丸石製紙、トップフォーム株式会社ほか数社は、有限会社プロモスティックジャパン(以下「プロモスティックジャパン」という。)を共同で設立し、かつて、プロモスティックジャパンを介在させる付箋の取引を行っていた。
イ 甲第2号証製品の発注について
被請求人は、平成15年5月2日より少し前、丸石製紙に対し、日本流通産業株式会社(以下「日本流通産業」という。)を販売元とする「ニチリュウブランド」の付箋である甲第2号証製品の製作を依頼した。この製作に関し、丸石製紙と被請求人との間に、特段の秘密保持契約は締結されなかった。
丸石製紙は、平成15年5月2日、被請求人から甲第2号証製品の製作について正式発注を受け、被請求人の定めた仕様のとおり、同日付けの甲第2号証仕様書を作成した。甲第2号証仕様書には、品名「ニチリュウPB」、紙色「パステル、ビビットカラー8色」、サイズ「15×50(4色天ノリ)」、シート数「50シート」、JANコード「4902160744816」との記載及び右上に「15.5.2」との記載がある。(甲第2号証の2)
ウ 甲第1号証製品の発注について
被請求人は、平成15年11月14日より少し前、丸石製紙に対し、自社を販売元とする付箋である甲第1号証製品の製作を依頼した。この製作に関しても、丸石製紙と被請求人との間に、特段の秘密保持契約は締結されなかった。
丸石製紙は、平成15年11月14日、被請求人から甲第1号証製品の製作の正式発注を受け、被請求人の定めた仕様のとおり、同日付けの甲第1号証仕様書を作成した。甲第1号証仕様書には、品名「カラーブロック8色アソート NSF-56」、紙色「パステル、ネオンカラー各4色/計8色」、サイズ「15×50(4色天ノリ)」、シート数「50シート」、JANコード「4512799495319」との記載及び右上に「15.11.14」との記載がある。(甲第1号証の2、甲第21号証の1)
エ 甲第1号証製品及び甲第2号証製品の製作、納品について
丸石製紙は、上記の仕様書に基づいて甲第1号証製品及び甲第2号証製品を製作し、平成15年9月9日から平成16年8月23日までを売上日として、合計9600冊の甲第2号証製品を各納品先に納品し、また、同年2月12日から平成22年11月11日までを売上日として、甲第1号証製品を合計10万7600個、被請求人の四国デリバリーセンターに納入した。(甲第3号証、甲第15号証)
オ 甲第1号証対象品及び甲第2号証対象品について
丸石製紙は、上記エのとおり、甲第1号証製品及び甲第2号証製品の製造を行っていたところ、甲第1号証対象品及び甲第2号証対象品は、その製造終了後の平成24年11月ころ、丸石製紙の倉庫内に、それぞれ包装プラスチックケースに入った状態で保管されていたものであって、甲第1号証対象品は、平成22年11月ころに製造された甲第1号証製品の在庫品、甲第2号証対象品は、平成16年8月ころに製造された甲第2号証製品の在庫品である。
(2)以上からすれば、甲第1号証製品及び甲第2号証製品は、甲第1号証対象品及び甲第2号証対象品と同一構造を有する同一の製品であって、これらは、被請求人の発注により丸石製紙において製作され、甲第2号証製品については、平成15年9月9日から平成16年8月23日までを売上日として各所に納品され、甲第1号証製品については、平成16年2月12日から平成22年11月11日までを売上日として被請求人のデリバリーセンターに納品されたものと認められる。
そうすると、甲第1号証製品及び甲第2号証製品の4色付箋紙束ブロックは、いずれも、本件出願前に被請求人から丸石製紙に製造発注がなされ、各納品先に納品されたものであり、同ブロックに開示された甲第1号証考案の2及び甲第2号証考案の2は、公然と知られ、あるいは、公然実施されたものと認められる。

4.被請求人の主張について
(1)甲第1号証製品及び甲第2号証製品の製造発注並びに納品の時期について
ア 被請求人は、甲第1号証仕様書及び甲第2号証仕様書の右上に記載された数字は、日付を示すものではなく、平成15年ころに丸石製紙に付箋の製作を発注したことがあることは認めつつも、具体的な製品取引については不知であるとして、甲第1号証製品及び甲第2号証製品の製造発注並びに納品時期を争う。
しかし、証拠(甲第3号証、甲第15号証及び甲第22号証)によれば、丸石製紙は、プロモスティックジャパンを得意先として、1)平成15年9月9日から平成16年8月23日までの間(売上日を基準とする。)、売上明細一覧表上の品名「ニチリュウ15*50 カラーパレットプロック」との付箋を、被請求人の指示で、被請求人の四国デリバリーセンター、株式会社エスシー名古屋支店及び同大阪支店に合計9600個納入したこと(以下「第1取引」という。)、2)売上明細一覧表上の品名を「NSF-56 カラーパレットブロック8色」とする付箋を製作し、売上日を平成16年2月12日から平成22年11月11日までの間(売上日を基準とする。)、被請求人の四国デリバリーセンターに10万76000個納入したこと(以下「第2取引」という。)が認められる。
そして、甲第2号証仕様書には、前記3(1)イのとおりの記載があるところ、第1取引に係る品名は、甲第2号証仕様書に示された「ニチリュウPB」の品名とほぼ一致している。また、甲第2号証仕様書の右上に記載された「15.5.2」は、その体裁からして、通常、日付を表示する場合もあるものと容易に推認されるところ、第1取引の売上計上日の始期が平成15年11月26日であることからすると、「15.5.2」は、「平成15年5月2日」という日付を示すものと考えて矛盾がない。これらの事実からすれば、第1取引の製品は、甲第2号証仕様書に示された甲第2号証製品であると認められ、上記に認定したとおり、本件出願前に甲第2号証製品が公然と知られ、公然と実施された状態であったことが認められる。
また、同様に、甲第1号証仕様書には、前記3(1)ウのとおりの記載があるところ、上記第2取引に係る品名は、甲第1号証仕様書に示された「カラーブロック8色アソート NSF-56」とほぼ同じものであること、甲第1号証仕様書の右上に記載された「15.11.14」は、第2取引の売上計上日の始期が平成16年2月12日であることからすると、「15.11.14」は、「平成15年11月14日」という日付を示すものと考えて矛盾がないことからすれば、第2取引の製品は、甲第1号証仕様書に示された甲第1号証製品であると認められ、上記に認定したとおり、本件出願前に甲第1号証製品が公然と知られ、公然と実施された状態であったことが認められる。
イ この点、被請求人は、丸石製紙は本件訴訟に利害関係を有するとして、その提供に係る納品書控(甲第3号証)、売上明細一覧表(甲第15号証)、誓約書(甲5、20、26)等の信憑性に疑いがある旨主張する。しかし、被請求人は、抽象的な懸念を述べるにとどまっており、その信用性に疑いを差し挟む具体的な事情について何ら指摘しない上、2003年(平成15年)9月9日付けの納品書控(甲第3号証)には、「出荷日 2003年8月18日」と記載され、「商品名・規格」の欄の1つに「ニチリュウ 15*50 カラーパレットプロック」、「400.00袋 1個」との記載があり、備考欄には、「エスシー名古屋」との記載があるところ、この記載は、上記売上明細一覧表の平成15年9月9日を売上日とする記載内容と整合しており、これらは相互に信用性を補強していることにも照らすと、上記主張は採用できない。
なお、第1次審決(甲第9号証)は、1)納品書控の個数は400個であるが、甲第2号証仕様書には、「発注数 10、000冊」とあり、数量が一致しないこと、2)商品名の記載が不一致であることから、納品書控(甲第3号証)が甲第2号証仕様書に係る甲第2号証製品に関するものとは推認できないとする。しかし、上記1)の点については、甲第2号証仕様書は、製作発注の際に用いられる仕様書であり、納品書控は、実際に商品を客先の指示する宛先に都度、納品したことを示すものであって、発注した数量が一度に納品される場合でない限り、数量が一致しないことは何ら不自然なことではなく、そのような場合であることは何ら特定されていないのであるから、上記の事実認定は合理性を欠くものといわざるを得ない。また、上記2)の点については、甲第2号証仕様書の商品名欄の「ニチリュウPB」とは、甲第2号証製品が販売元を日本流通産業とするものであることを併せ考えると、単に、「日本流通産業のプライベートブランド」を示すものにすぎず、甲第2号証対象品のプラスチックケースの内容と売上明細一覧表(甲第15号証)の内容も考慮すれば、甲第3号証に記載された「ニチリュウ 15*50 カラーパレットプロック」との製品の同一性を優に認めることができる。
(2)甲第1号証対象品及び甲第2号証対象品と本件出願前の甲第1号証及び甲第2号証製品の構造の同一性について
被請求人は、本件連結構成に関する実験に用いられた甲第1号証対象品及び甲第2号証対象品について、これらの製品年月日が刻印されているものではないから、その対象品がいつの時点のものかは不明である上、その後に仕様変更があり得ることを考えると、これらのJANコードが仕様書と同一であるとしても、甲第1号証対象品及び甲第2号証対象品の構成と同一の構成を本件出願前の甲第1号証製品及び甲第2号証製品が有していたかは明らかでないと主張する。
しかし、在庫の存在時期について、証人Bは、その甲第22号証及び誓約書(甲第14号証)において、甲第1号証対象品は平成22年11月ころの在庫品で、本件出願前に流通させていた甲第1号証製品と同じものであり、甲第2号証対象品は平成16年8月ころのもので、本件出願前に生産されたものである旨、また、製造後は古い商品から在庫が出荷されていくものであることを根拠に、新しい商品が残存しているものとして在庫時期を推測した旨、証言しているところ、前記に認定したとおり、甲第1号証製品の取引終了は平成22年11月、甲第2号証製品の取引終了は平成16年8月であることから、平成24年11月ころに丸石製紙の倉庫から発見された在庫品について、先のものから出荷した場合、残った在庫品が取引終了時点における在庫品であったとの推測は十分に成り立つのであり、その旨の証言に不自然な点はなく、在庫品の存在時期について疑いを差し挟む事情も見当たらない。
また、被請求人の主張するように、商品包装におけるJANコードを同一としたまま、中身の商品の仕様が変更になる場合があり得ないではないとしても、証拠(甲第1号証の1乃至4、甲第2号証の1乃至4並びに甲第22号証)によれば、甲第1号証対象品の販売元は被請求人自身であり、また、前記のとおり、甲第1号証製品及び甲第2号証製品は、被請求人と丸石製紙等が共同設立したプロモスティックジャパンの取扱商品であって、被請求人自身が仕様を指示して丸石製紙に製造発注したものであるにもかかわらず、被請求人は、上記のように仕様変更の抽象的な可能性について言及するのみで、具体的な仕様変更の事実を述べるものではないことに照らすと、本件において、途中で製品の仕様の変更があったと認めるに足りない。かえって、売上明細一覧表(甲第15号証)によれば、甲第2号証製品は、平成15年9月9日から平成16年8月23日までの間に9600冊の取引が行われたことが認められるところ、平成15年5月2日付けの甲第2号証仕様書からは、丸石製紙に対する製作発注数が1万冊であったと認定できることからすれば、初回の製作発注で上記取引分が賄われたものと推認できるから、初回の製作発注後、最後の取引である平成16年8月23日までの間に、甲第2号証製品の仕様が変更されたとはおよそ考え難い。
以上によれば、被請求人の上記主張は、上記認定を左右するものでない。
さらに、甲第1号証仕様書及び甲第2号証仕様書には、「4色天ノリ」との記載があり、甲第1号証仕様書には「パステル、ネオンカラー各4色/計8色」、甲第2号証仕様書には「パステル、ビビットカラー8色」との記載があるところ、証拠(甲第18号証、甲第22号証)によれば、「天ノリ」は、製本の際に、製本の連結部分の背面に糊を塗ることであると解されることからすれば、「4色天ノリ」は、4色組付箋紙束ブロックの面状の端面に糊を塗ることによって、結合していることを示すものと推認できる。そうすると、甲第1号証対象品及び甲第2号証対象品の4色付箋紙束ブロックの有する本件連結構成は、平成15年11月14日に作成された甲第1号証仕様書及び同年5月2日に作成された甲第2号証仕様書の記載自体から見て、製造の当初から備わっていたものと推認される。
以上によれば、被請求人の上記主張は採用できない。
(3)甲第1号証対象品及び甲第2号証対象品の構造立証について
ア 被請求人は、甲第1号証の3及び4並びに甲第2号証の3及び4に示された写真は同一であり、甲第1号証対象品あるいは甲第2号証対象品であるかが明らかでないから、その証明力に疑義がある旨主張する。
確かに、前記に認定したとおり、甲第1号証製品と甲第2号証製品とはその外装であるプラスチックケースを異にするのみで、付箋自体に相違がないとしても、当該プラスチックケースから取り出した製品であるかのような体裁で、いずれのものとも判明しない写真を提出したのは、証拠の提出方法としては不適切であったといわざるを得ない。しかし、甲第1号証の1写真及び甲第2号証の1写真のプラスチックケースの中の付箋が同一物であることは、審判手続の当初から請求人が主張していたものであり、その製造発注時期が近いことや、証拠(甲第1号証の1乃至4、甲第2号証の1乃至4、甲第10号証並びに甲第20号証)から窺われる色や形が酷似していることを考慮すると、その対象物が同一製品であったこと自体は信用できるものである。そして、上記のとおり、本件考案1の構成を甲第1号証対象品及び甲第2号証対象品の4色付箋紙束ブロックが備えていたことについては、甲第1号証の3及び4並びに甲第2号証の3及び4の写真以外からも認定できることに照らすと、上記の点は結論を左右するものとはいえない。


第6 結論
以上のとおり、本件考案1は、特許法第29条第1項第2項の規定により特許を受けることができず、特許法第123条第1甲第2項の規定に該当するので、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、一次審決の結論と併せ、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第64条の規定により、請求人が2分の1を、被請求人が2分の1を負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2015-09-29 
結審通知日 2015-10-02 
審決日 2015-11-05 
出願番号 実願2007-9032(U2007-9032) 
審決分類 U 1 114・ 121- Z (B62D)
U 1 114・ 111- Z (B62D)
U 1 114・ 112- Z (B62D)
最終処分 成立    
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 畑井 順一
藤本 義仁
登録日 2008-01-09 
登録番号 実用新案登録第3139191号(U3139191) 
考案の名称 付箋  
代理人 上吉原 宏  
代理人 玉田 修三  

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