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審決分類 審判    B65D
管理番号 1321280
審判番号 無効2016-400001  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-02-22 
確定日 2016-10-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第3198736号実用新案「平型ペットボトル」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第3198736号の請求項1-2に係る考案についての実用新案登録を無効にする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1.手続の経緯

平成27年 2月24日 本件出願
平成27年 7月 1日 設定登録(実用新案登録第3198736号)
平成28年 2月22日 無効審判請求
平成28年 4月20日 答弁書及び訂正書の提出
平成28年 5月31日 審理事項通知
平成28年 6月 8日 請求人・口頭審理陳述要領書の提出
平成28年 6月29日 被請求人・口頭審理陳述要領書の提出
平成28年 7月 6日 審理事項通知(2回目)
平成28年 7月25日 両者・口頭審理陳述要領書(2)の提出
平成28年 7月26日 審理事項通知(3回目)
平成28年 8月 2日 口頭審理の「当日進行メモ」をファクシミリに て送信
平成28年 8月 4日 両者・口頭審理陳述要領書(3)の提出
平成28年 8月 4日 口頭審理

第2.本件考案

本件考案の請求項1-2に係る考案(以下「本件考案1-2」という。)は,以下のとおりである。

なお,平成28年4月20日に訂正書が適式に提出されたことから,訂正後の実用新案登録請求の範囲により実用新案の設定の登録がされたものとみなされる。

【請求項1】
平型の形状であり、対向する正面及び背面の平坦な2つの各平面に、広告、地図、座席表又はバーコード情報を掲載したラベルを備えることを特徴とする平型ペットボトル。

【請求項2】
平型の形状を有することによりポケットにいれることを可能とし、携帯性、利便性、歩行時の安全性などを特徴とする請求項1記載の平型ペットボトル。

第3.請求人の主張
1.主張の要点
請求人は,以下「2.証拠」に示した証拠をもとに,本件考案1-2は,実用新案法第3条第2項の規定に違反して登録されたものであり,同法第37条第1項第2号に該当するとして,無効にするとの審決を求めている(請求人・口頭審理陳述要領書(3)の「第2」,当日進行メモ の「第2」,口頭審理調書の「当事者双方」)。

2.証拠
甲第 1号証 意匠登録第1271707号公報
甲第 3号証 特開2007-297061号公報
甲第 4号証 実公平5-23456号公報
甲第 5号証 特開2009-120203号公報
甲第 7号証 特開2001-151239号公報
甲第 8号証 登録実用新案第3139651号公報
甲第 9号証 特開2007-15758号公報
甲第10号証 特開2006-317654号公報
甲第13号証 登録実用新案第3165058号公報
甲第14号証 特開平10-222072号公報

なお,甲第2,6,11,12号証は,請求人により撤回された(請求人・口頭審理陳述要領書(2)の「第1」,請求人・口頭審理陳述要領書(3)の「第1」)。

第4.被請求人の主張
1.主張の要点

これに対し,被請求人は,本件審判請求は成り立たないとの審決を求めている。

2.証拠

被請求人が提出した証拠は,以下のとおりである。

乙第 1号証 広辞苑(第六版DVD-ROM版) 項目「平ら」の頁をプ リントアウトしたもの

3.主張の概要

被請求人の主張の概要は,以下のとおりである。

ア. 本件考案1の特徴について

本件考案1は,対向する正面及び背面の2面が平坦かつ平面状であり,そのような正面と背面のほぼ全面にラベルを備えることで,ラベルを広く,湾曲や凹凸のない状態とし,これによりラベルに記載された内容を大きく,かつ,見やすく,表示することができるものである。このような大きな2面のラベルに,広告,地図,座席表,バーコード情報を掲載することを特徴とする。シュリンクラップに代えてラベルとすることにより,シュリンクラップ用の装置を備えていない場所でも,簡便にラベルを貼り付けることができる。
(答弁書別紙 答弁の理由(以下「答弁の理由」という)の「第2 2」)

イ. 相違点について

本件考案1と甲第1号証に記載された考案(以下,「引用考案」という)との相違点は,以下の3つである。

相違点1:本件考案1はペットボトルであるが,引用考案は材料の特定がない点
相違点2:本件考案1は各平面に,広告,地図,座席表又はバーコード情報を掲載したラベルを備えるが,引用考案はラベルを備えていない点
相違点3:本件考案1は対向する正面及び背面の平坦な2つの平面を備えるが,引用考案は「極限まで」平型にしたものではなく,2つの平面を大きく確保しているものではない点
(答弁の理由の「第3 1」,口頭審理調書の「被請求人 4」及び「被請求人 5」並びに審理事項通知(3回目)「第3」)

ウ. 相違点1について
相違点1に関し,例えばガラスとPETとでは,その強度には顕著な差があり,ペットボトルにおいては,炭酸飲料を入れることによる内部圧力すら考慮をして形状を決定する必要がある。ペットボトルの形状としては,本件考案1のような平型の形状を選択することが,極めて容易であるとは到底いうことができない(むしろ,阻害要因があるとすら言い得る。)。
(答弁の理由の「第3 3(1)」)

エ. 相違点2について
相違点2に関し,甲第1,3-5号証のいずれにもペットボトルに広告,地図,座席表又はバーコード情報を掲載したラベルを設けるという着想すらなく,甲第7-10号証のいずれにも「対向する正面及び平面の平坦な2つの各平面に、・・・ラベルを備える」という本件考案1の構成は開示されておらず,引用考案にこれらの各甲号証を組み合わせたとしても本件考案1に至ることはない。
(答弁の理由の「第3 3(3)」及び口頭審理陳述要領書の「6-2(1)」)

オ. 相違点3が請求項の記載に基づくものであることについて

相違点3は請求項1の「平型」という構成要件の解釈として導かれるものである。本件明細書には,

「ペットボトルを極限まで平型にします。
キャップ幅に近い厚さにすることにより、薄型ペットボトルにする」(【課題を解決するための手段】)

と記載され,それによる効果として

「2面ラベル枠が大きく平面で確保でき、ブランドのロゴ露出を高める。」(【考案の効果】)

などと記載されていることからすれば,本件訂正後クレームにおける「平型」とは,単に薄型であるだけではなく,その左右両端部付近まで2つの平面を大きく確保しているような形状を意味すると解されるものである。
(口頭審理陳述要領書(3)の「6-3 (3)」)

カ. 本件考案1における「平型」について

本件明細書,実用新案登録の範囲及び図面には,ペットボトルを極限まで平型にすることで2面のラベル枠や広告枠を平面で確保できることが開示されており,かかる2面の平面とは本件図面の図1でいう側面ではなく,図7において2次元バーコードが設けられている面(正面)とこれと対向する面(背面)であることは明らかである。
(口頭審理陳述要領書(2)の「6-3 (3)」)

「平ら」とは,「高低のないさま。傾斜のないさま。凹凸のないさま。ひらたいさま。」などとされているとおり(乙第1号証),本件考案1に係るペットボトルが備える2つのラベル枠・広告枠は,高低や傾斜のない,平らな面であることが理解できる。水平方向の断面が楕円であるような容器は薄型であるとは言い得ても,高低や傾斜のない「平面」を備えるものではない。
(口頭審理陳述要領書(2)の「6-4」)

キ. 相違点3について

引用考案のボトルの正面及び背面は,一端が大きく湾曲しており,本件考案1のペットボトルのように平面ではない。このような形状を有する引用考案のボトルに仮にラベルを設けたとしても,大きく湾曲した端部付近まではラベルを設けることはできない(仮に端部付近までラベルを設ければ,大きく湾曲してしまう。)のであり,本件考案1のペットボトルのように,正面及び背面のほぼ全面にわたって,左右両端付近まで湾曲することなくラベルを備えるということはできない。
(答弁の理由の「第3 3(2)」)

相違点3にかかる構成については,甲第3-5号証のいずれにも開示されていない構成であり,引用考案にこれらの副引例を組み合わせたとしても本件考案1に至ることはない。
(答弁の理由の「第3 3(3)」)

ク. 甲第13号証及び甲第14号証について
甲第13号証及び甲第14号証には、ラベル面を広くするという課題がない。甲第14号証の図3の容器の裏面には、「広告、地図、座席表、又はバーコード情報」のいずれもない。
(口頭審理調書の「被請求人 6」及び「被請求人 7」)

第5.当審の判断

1.無効理由について

無効理由は,以下のとおりである。

「本件の請求項1-2に記載された考案は,甲第1号証に記載された考案に,甲第3-5,7-10,13,14号証に記載された事項又は周知技術を適用しきわめて容易になし得たものである。したがって,本件考案1-2は,実用新案法第3条第2項の規定に違反して登録され,同法第37条第1項第2号に該当し,無効にすべきものである。」

なお,この点については,両当事者間に争いはない(口頭審理調書 「当事者双方 1」,当日進行メモ 「第2」)

2.本件考案

本件考案1-2は,上記第2.のとおりである。

3.刊行物記載の考案

(1)甲第1号証

甲第1号証には,以下が記載されている。

ア.【意匠に係る物品】包装用容器

イ.【図面】
【正面図】 【背面図】

【右側面図】 【左側面図】

【底面図】

【平面図】

甲第1号証に記載された事項を,技術常識を勘案しつつ整理すると,甲第1号証には以下の考案(以下「甲1考案」という。)が記載されている。

(a) 上部にキャップ取付け部を有する円筒状の注出首部と,
(b) 抽出首部に連続して下方に設けられた正面視四角形状の本体部からなり,
(c) 本体部の正面及び背面は平坦であり,
(d) 本体部の右側面は,大きな湾曲面となっており,
(e) 本体部の左側面は,平面とその両側方に設けられる小さな湾曲面となっており,
(f) 本体部の厚みはその横幅のほぼ50%である,
(g) 包装用容器。

なお,甲1考案の認定については,両当事者間に争いはない(請求人・口頭審理陳述要領書(3)の「第3」,口頭審理調書の「被請求人 2」)。

(2)甲第3号証
ペットボトルのような合成樹脂製の偏平ボトル(【0001】,【0002】,【0004】)。

(3)甲第4号証
ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂で構成された偏平ボトル(第5欄23-28行目)。

(4)甲第5号証
片面に平坦状部分を有し,該平坦状部分の凹所にフックを設けた携帯用ペットボトル(【請求項1】,【0001】)。

(5)甲第7号証
他社製品の広告が付されたフィルムを貼付してなる広告付ペットボトル(【請求項1】,【0005】)。

(6)甲第8号証
円柱状広告ラベル包囲部の全周に広告を記載したラベルを摺設した広告宣伝用ペットボトル(【請求項1】)。

(7)甲第9号証
地域の名所,観光情報及び地図,又会議の主催者が意図する事を記載したラベル(地域情報媒体)を接着使用したペットボトル(【0001】,【0004】,【0006】)。

(8)甲第10号証
外側保護フィルムに二次元バーコードを印刷した透明な角型ペットボトル(【0001】,【0015】,【0016】)。

(9)甲第13号証

甲第13号証には,以下が記載されている。

ア.【実用新案登録請求の範囲】,【請求項1】
「【請求項1】
ボトルの厚さをキャップ幅に近い厚さにすることにより、薄型になり携帯性を高めたペットボトル。」

イ.【図1】

図1から,ペットボトルが正面及び背面が平坦であり,両側面が平坦部とその両側方に設けられる接続部とからなることが見てとれる。

(10)甲第14号証

甲第14号証には,以下が記載されている。

ア.段落0010

「【0010】
【発明の実施の形態】PET容器に張り付けるラベルは紙或いはプラスチックフィルム等であってこのラベルに商標、注意書き、内容量等が記載されている。このラベルの粘着面には複数回の粘着、離脱が可能な粘着材(以下この粘着材を「着脱型粘着材」と称する)による粘着材層が形成されている。」

イ.段落0018-0022

「【0018】図3および図4は第2の実施例を示す。この実施例では流通段階におけるラベルの離脱を容器の蓋で防止するよう構成している。
【0019】図中符号7は本実施例におけるラベルを示す。このラベル7はPET容器8の上端面8bを介して前面8a及び背面8cに連なるようにして配置される。またこのラベル7に対してはPET容器8の上端面8aにおいては図4に示すように注ぎ口8dが挿通位置している。この注ぎ口8dに対して螺子蓋9が螺合する構成となっている。この螺子蓋9が螺合することによりラベル7の一部が螺子蓋9により押さえられ、容器の流通段階でラベル7が離脱したり、故意に剥がされる等の心配はない。またこの螺子蓋9に対して前記実施例1のシール6の如き封印を施しておけばより安全である。
【0020】なお、図3の構成ではラベル7のうち容器前面8aに位置する部分には商標表示部10が、背面8cに位置する部分には原材料表示部11、注意書部12が印刷により形成表示されている。
【0021】以上本発明に係るラベルを単一の構成とした場合を例に説明したが、PET容器に貼り付けるラベルは一つである必要はもとよりなく、商標表示部、注意書部等にそれぞれ別けてラベルを形成することも当然可能である。また使用対象容器としてはPET容器が最も効果的であるが、本発明はPET容器に限定する趣旨ではなく、例えばガラス容器、アルミニュウム容器等各種の容器に使用可能である。
【0022】
【発明の効果】本発明は以上に説明した如く、各種飲料、整髪料、薬品類等の液体を充填した容器に対して、粘着力が比較的強力でしかも一回以上貼り付け、剥離が可能な粘着材である着脱型粘着材を用いたため、商品の流通および使用段階では容器に貼り付けたラベルは商品名、注意事項、原材料等、商品に関する情報を従来と同様に表示することが可能で、しかも容器を再利用する際にはこの容器から容易に離脱させることができ、前記情報を表示するための顔料、紙やプラスッチックフィルム等、前記容器を再生する際に不純物となるべきものを容易に除去することができ、特に上記情報表記のため再利用に大きなコストがかかっていたPET容器の再生を効率的かつ経済的に達成することが可能となる。」

ウ.【図3】

図3から,PET容器の容器前面(8a)及び容器背面(8c)は平坦であり,両側面は平坦部とその両側方に設けられる接続部とからなり,容器前面及び容器背面にはラベル(7)を備えること,及び容器前面からみて幅方向が奥行き方向よりも広い薄型形状であることが見てとれる。

4.対比・判断

(1) 本件考案1と甲1考案との対比

本件考案1と,甲1考案とを対比する。

甲1考案の「本体部の正面及び背面」は,「本体部の正面及び背面は平坦」(構成(c))であることから,本件考案1の「対向する正面及び背面の平坦な2つの各平面」に相当する。また,甲1考案の「包装用容器」は,「本体部の正面及び背面が平坦」(構成(c))であること,及び「本体部の厚みはその横幅のほぼ50%である」(構成(f))ことから,本件考案1の「平型ペットボトル」に,「平型ボトル」である限りにおいて相当する。

したがって,両者は,以下の点で一致する。

「平型の形状であり,対向する正面及び背面の平坦な2つの各平面を備える平型ボトル。」

そして,以下の点で,相違する。

相違点1:本件考案1は「ペット」ボトルであるが,甲1考案は材料の特定がない点。

相違点2:本件考案1は各平面に,「広告,地図,座席表又はバーコード情報を掲載したラベルを備える」が,甲1考案はラベルを備えていない点。

なお,甲1考案との一致点,相違点1について,両当事者間に争いはない(口頭審理調書の「被請求人 2」,請求人・口頭審理陳述要領書(3)の「6-3(1)」,被請求人・口頭審理陳述要領書(3)の「3(1)」)。

請求人は、「相違点2については、甲第1号証は意匠公報なので、ラベルを含むことがあり「備えていない」とは言えない。」(口頭審理調書の「請求人 2」)と主張する。

しかしながら,甲第1号証に,ボトルにラベルを備えることが記載されていないことは明らかであるから,上記相違点2のとおりとするのが相当である。

他方,被請求人は,以下の点でも相違すると主張する(上記 第4.3.イ)。

相違点3:本件考案1は対向する正面及び背面の平坦な2つの平面を備えるが,甲1考案は「極限まで」平型にしたものではなく,2つの平面を大きく確保しているものではない点。

被請求人は、相違点3について,請求項1記載の「平型」という構成要件の解釈として導かれる相違点であり,本願明細書における【課題を解決するための手段】の「ペットボトルを極限まで平型にします。」,【考案の効果】の「2面ラベルが大きく平面で確保でき、ブランドのロゴ露出を高める。」との記載からすれば,請求項1の「平型」とは,単に薄型であるだけではなく,その左右両端部付近まで2つの平面を大きく確保しているような形状を意味すると主張する(上記 第4.3.オ)。

この点に関し,考案の要旨の認定は,特段の事情のない限り,願書に添付した実用新案登録請求の範囲の記載に基づいてされるべきであり,その記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,一見してその記載が誤記であることが明細書の考案の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合に限って,明細書の考案の詳細な説明の記載を参酌することが許されるにすぎないものと解するのが相当である(最高裁第2小法廷判決平成3年3月8日・民集45巻3号123頁参照,東京高裁平成15年3月27日判決平成11年(行ケ)第263号参照)。

請求項1の記載をみると,「平型の形状であり、・・・を特徴とする平型ペットボトル。」とされている。この「平型」との語義は,「平ら」という語義において,「高低のないさま。傾斜のないさま。凹凸のないさま。ひらたいさま。」(乙第1号証)とされており,一義的に明確に理解することができるものである。

この理解を前提とすることによって,本件明細書の【考案の効果】や【実施例】の【野外フェスティバル】における「ポケットに入れて歩行する」こと,【コンサート会場】における「席マップやトイレの場所情報や位置情報を掲載」すること,【展示会】における「2面大きな広告スペースを確保」することなどの具体例などに照らしても、実用新案登録請求の範囲の理解に矛盾が生じることもない。

したがって,本件考案1の要旨の認定において,特段の事情があるとはいえないから,願書に添付した実用新案登録の範囲の記載に基づいてされるべきである。よって,請求項1の「平型」について,明細書の記載に限定して,その左右両端部付近まで2つの平面を大きく確保しているような「極限まで」平型にしたものとは解することができない。

仮に,本件考案1の要旨の認定において,特段の事情があるとして,明細書の考案の詳細な説明の記載を参酌して「平型」を解釈したとしても,【考案の効果】の「2面ラベルが大きく平面で確保でき、ブランドのロゴ露出を高める。」との記載について,これは,対向する正面及び背面の平坦な2つの平面を有する平型形状であれば足り,その左右両端部付近まで2つの平面を大きく確保した「極限まで平型」にすることなく実現できる効果である。そうすると,【課題を解決するための手段】の「ペットボトルを極限まで平型にします。」との記載は「平型」の一具体例にすぎず,請求項1の「平型」を「極限まで」平型と解釈とすべきとの被請求人の主張は採用することができない。

よって,相違点3は実質的な相違点ではない。

したがって,本件考案1と甲1考案との相違点は,上記「相違点1」及び「相違点2」の2つである。

(2) 相違点1についての判断

相違点1について検討する。

甲1考案は,上記3.(1)のとおり,なんら材料が特定されない包装用容器であるところ,その実施のためには,材料を具体化する必要がある。

そして,ボトル形状の容器の材料としては,ポリエチレンテレフタレート(PET),ガラスなどがよく知られている。

ポリエチレンテレフタレートを材料とするペットボトルやPET容器は,その軽さや製造の容易性から,良く用いられていることは広く知られている。現に,ボトル形状の容器としてポリエチレンテレフタレートを用いたものが甲第3-5,7-10,13,14号証にも開示されている。加えて,甲1考案と同一技術分野のものである甲第13号証及び甲第14号証には,上記3.(9)及び(10)のとおり,「本体部の正面及び背面の平坦な面を備える」ペットボトル,PET容器が開示されている。

したがって,甲1考案を,材料としてポリエチレンテレフタレートを採用し,ペットボトルとすることは,必要に応じてなしうる事項である。

被請求人は,ペットボトルにおいては,内部圧力すら考慮にいれて形状を形状を決定する必要があり,その形状としては,本件考案1のような平型の形状を選択することはきわめて容易とはいえず,むしろ,阻害要因すらあると主張するが(上記 第4.3.ウ),平型のペットボトルは甲第13号証及び甲第14号証などの例が知られていることから,平型の形状である甲1考案をペットボトルとすることに阻害要因があるとはいえない。

(3) 相違点2についての判断

相違点2について検討する。

本件考案1は各平面にラベルを備えるものであり,そのラベルには「広告,地図,座席表又はバーコード情報を掲載」したものである。これらのラベルに掲載されるものが,【請求項1】の「又は」の語義のとおり選択的なものであることは,本件明細書の【考案の詳細な説明】において,【コンサート会場】の例では座席マップ,【展示会】では広告の例が別途記載されていることからも明らかである。そうすると,ラベルに掲載される情報は,そもそも,用途,使用実態に応じて適宜選択しうる事項であり,ラベルに掲載される情報として「広告,地図,座席表又はバーコード情報を掲載」することについては技術的意義がない。

したがって,本件考案1の相違点2に係る本質的事項は,各平面は情報が掲載されたラベルを備える点であると解される。

ここで,甲1考案は,上記3.(1)のとおり,抽出首部と本体部からなる包装用容器であるところ,かかるボトル形状の包装用容器の利用形態として,飲料,液体洗剤などの液体を充填し,商品に関する情報を印刷したラベルを付して販売することは広く知られている。現に,ペットボトルの各平面に商品に関する情報を掲載したラベルを備えることは甲第14号証に開示されている。

したがって,甲1考案において,甲第14号証に記載された事項又はボトル表面に情報が掲載されたラベルを備えるという周知技術を適用し,各平面に情報が掲載されたラベルを備えることは必要に応じて適宜なし得ることである。よって,相違点2にかかる構成を採用することは,きわめて容易になし得ることである。

また,仮に「広告」「地図」「座席表」又は「バーコード情報」の各情報をラベルに記載することが用途,使用実態等に応じて適宜選択しうるものではなく,ラベルに掲載される情報を「広告」「地図」「座席表」又は「バーコード情報」のいずれかと特定したことに本件考案1との本質的な相違があるとして,更に検討する。

上記各情報のうち「バーコード情報」に関し,甲第14号証には,上記3.(10)のとおり,商標,注意書き,内容量等,商品に関する情報を付したラベルを容器前面及び容器背面の平坦な面に備えることが開示されている。そして,飲料や液体洗剤などの一般に販売されている商品において,その容器に備えられたラベルに商品に関する情報としては,販売用のバーコード情報が付されていることはよく知られる。

したがって,甲第14号証にはバーコード情報を付すことについての明示的記載はないが,商品に関する情報を付すものであるから,バーコード情報は当業者が当然採用しうるものである。

また,上記各情報のうち「広告」に関し,ペットボトルに広告を掲載したラベルを備えることは甲第7-9号証にもあるように周知技術である。

そうすると,甲1考案に甲第14号証に記載の各平面に情報が掲載されたラベルを備えること,掲載する情報としてバーコードや広告を採用することは,きわめて容易になし得ることである。

(4) 相違点3についての予備的見解

上記(1)で述べたとおり,相違点3は実質的相違点ではないが,仮に,実質的相違点であったとして,相違点3について検討する。

相違点3について,「極限まで」平型にすること,2つの平面を大きく確保することとあるが,平型がどのような状態であれば「極限まで」平型であるのか,2つの平面を大きく確保するとは,何を基準に「大きく確保」すればよいのか,は明確ではない。そこで,「単に薄型であるだけではなく、その左右両端部付近まで2つの平面を大きく確保しているような形状を意味する」(被請求人・口頭審理陳述要領書(3) 6-3)との主張を踏まえて検討すると,上記3.(9)及び(10)から,甲第13号証及び甲第14号証に開示されたペットボトルの形状は,いずれも,正面及び背面の平面が「その左右両端部付近まで」確保されているといえる。よって,少なくとも,甲第13号証及び甲第14号証に開示されたペットボトルは,本件考案1と同様に,「極限まで」平型であり,2つの平面を大きく確保したものであるといえる。

そうすると,甲1考案を甲第13号証又は甲第14号証のように「極限まで」平型とすることは,きわめて容易になし得ることである。

(5) 小活

各相違点について総合勘案しても,格別な技術的意義が生じるとは認められない。

したがって,本件考案1は,甲1考案に,甲第3-5,7-10,13,14号証に記載された事項又は周知技術を適用し,きわめて容易になし得たものである。

(6) 本件考案2について

本件考案2と,甲1考案とを対比すると,上記(1)において述べた本件考案1と甲1考案との一致点で一致し,相違点1,2に加え,以下の点で,相違する。

相違点4:本件考案2は,平型の形状を有することによりポケットにいれることを可能とし,携帯性,利便性,歩行時の安全性などを特徴とするのに対し,甲1考案は,平型の形状を有することによる特徴について特定していない点。

しかしながら,相違点4に係る特定事項は,平型の形状を有することによる効果を述べたにすぎず,技術的特徴を構成するものではない。この点について,被請求人は同意している(審理事項通知(3)の「第5」,被請求人・口頭審理陳述要領書(3)の「6-4」)。すなわち,相違点4は実質的な相違点ではない。

よって,本件考案2と甲1考案とは,上記(1)で示した相違点1及び2のみで相違する。相違点1及び2については,本件考案1において,上記(2)-(5)で検討したとおりである。

したがって,本件考案2は,甲1考案に,甲第3-5,7-10,13,14号証に記載された事項又は周知技術を適用し,きわめて容易になし得たものである。

第6.むすび

以上,本件考案1-2は,いずれも当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから,本件考案1-2についての実用新案登録は,実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであり,実用新案法第37条第1項第2号の規定に該当するので,無効にすべきものである。

審判費用については,実用新案法第41条の規定で準用する特許法第169条第2項の規定でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。
審決日 2016-08-26 
出願番号 実願2015-1134(U2015-1134) 
審決分類 U 1 114・ 121- ZA (B65D)
最終処分 成立  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 見目 省二
星野 昌幸
登録日 2015-07-01 
登録番号 実用新案登録第3198736号(U3198736) 
考案の名称 平型ペットボトル  
代理人 神保 欣正  
代理人 保科 敏夫  
代理人 平井 佑希  
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