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審決分類 審判    A21B
審判    A21B
管理番号 1321281
審判番号 無効2015-400003  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-07-16 
確定日 2016-11-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第3129837号実用新案「再利用可能なアルミニウム箔製の焼き上げ用容器」の実用新案登録無効審判事件について,次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第3129837号の請求項1及び2に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
本件無効審判の請求に係る実用新案登録第3129837号(以下,「本件実用新案登録」という。)の手続の経緯は,以下のとおりである。
平成18年12月13日 本件実用新案登録出願
平成19年 2月14日 設定登録
平成26年 6月27日 実用新案技術評価請求書
平成26年10月17日 実用新案技術評価の通知書
平成27年 7月16日 審判請求書
平成27年 9月 9日 答弁書
平成27年11月12日 審理事項通知書
平成27年11月30日 口頭審理陳述要領書(請求人及び被請求人)
平成27年12月14日 口頭審理陳述要領書(2)(請求人)
平成27年12月14日 口頭審理

第2 請求人の主張
請求人は,本件実用新案登録の請求項1及び2に係る考案についての実用新案登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,証拠方法として甲1号証?甲第8号証(以下,証拠について,それぞれ「甲1」などという。)を提出し,次の無効理由を主張する。
1 無効理由1
本件実用新案登録の請求項1に係る考案は,甲1に記載された考案であるから,実用新案法3条1項3号に該当し実用新案登録を受けることができないものであり,その実用新案登録は同法37条1項2号に該当し,無効とすべきである。
2 無効理由2
本件実用新案登録の請求項2に係る考案は,甲1?甲4に記載された考案に基いて,当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから,実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり,その実用新案登録は同法37条1項2号に該当し,無効とすべきである。
(証拠方法)
甲1:実願昭58-25336号(実開昭60-5385号)のマイクロフィルム
甲2:実願昭61-92284号(実開昭62-202176号)のマイクロフィルム
甲3:特開2001-37405号公報
甲4:特開2001-321059号公報
甲5:本件実用新案登録に係る実用新案技術評価書
甲6:特開昭63-217601号公報
甲7:特開平11-238601号公報
甲8:登録実用新案第3129837号公報(本件実用新案登録公報)
なお,甲1?甲8の成立につき,当事者間に争いはない。

第3 被請求人の主張
被請求人は,本件審判請求を棄却する,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,証拠方法として乙1?乙4を提出し,無効理由がいずれも成り立たないと主張する。
(証拠方法)
乙1:「御通知」の写し(被請求人から請求人に対する抗議書)
乙2:請求人が販売しているシリコーン樹脂被覆加工を施したアルミニウム箔製容器の写真,URL:morecc.jp/paccat-baker/
乙3:被請求人におけるアルミニウム箔カップの売上状況一覧表(平成24年1月?平成27年8月)
乙4:回答書の写し(乙1への請求人からの回答)
なお,乙1?乙4の成立につき,当事者間に争いはない。

第4 本件実用新案登録
本件実用新案登録の請求項1及び2に係る考案(以下,それぞれ「本件考案1」及び「本件考案2」という。)は,実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される,次のとおりのものである(甲8)。
「【請求項1】
アルミニウム箔により形成された容器本体の内外面全体にシリコーン樹脂被覆層が設けられていることを特徴とする再利用可能なアルミニウム箔製の焼き上げ用容器。
【請求項2】
シリコーン樹脂被覆層が容器本体のシリコーン樹脂溶液へのどぶ付け加工及び焼成加工により形成されることを特徴とする請求項1記載の再利用可能なアルミニウム箔製の焼き上げ用容器。」

第5 当審の判断
1 甲1?甲4の記載
(1) 甲1の記載
ア 甲1には,図面とともに,次の事項が記載されている。
(ア) 「少なくとも調理物が収納される面に離型剤がコーティングされた25μ以下の硬質アルミ箔から一体に形成されており,かつ
底面および側壁を備え,前記底面と側壁との境界部の曲率半径が1.5mm以下であることを特徴とする,調理用成型皿。」(明細書1頁5?10行)
(イ) 「この考案は,たとえばオーブンまたオーブントースタによる調理に際し用いられるアルミ箔からなる調理用成型皿に関する。・・・
オーブンあるいはオーブントースタにより調理するに際し,被調理物は成型されたオーブン皿に収納されるのが通常である。しかしながら,加熱した際,被調理物中の油あるいは被調理物自体がオーブン皿にこびり付くという問題があった。
これを解消するために,オーブン皿の内面にアルミホイルなどを敷き詰めて,その上に被調理物を載置することが一般に行われている。しかしながら,この場合であっても被調理物がホイルに付着し,このアルミホイルを被調理物から剥がすのに煩雑な作業を必要とすること,ならびに仕上がった料理の形状を崩してしまうという問題があった。また,オーブン皿の汚れを防止するために,アルミホイルに代わりアルミ箔成型品により形成された使い捨て可能な調理用補助皿も市販されているが,被調理物のこびり付きについては何ら克服されておらず,上述のアルミホイルの持つ欠点を解消するものではない。
・・・この考案の目的は,上述の欠点を解消し,食品の付着を有効に防止することができ,安価かつ強度に優れたアルミ箔製調理用成型皿を提供することにある。」(明細書1頁16?3頁9行)
(ウ) 「この実施例の調理用成型皿1は,内面に離型剤がコーティングされた25μの硬質アルミ箔から一体に形成される。離型剤としては,たとえばシリコンまたはテフロンなどの樹脂が用いられ得る。このような離型剤をコーティングすることにより,食品のこびり付きを防止することができる。なお,離型剤は,調理用成型皿の少なくとも内面にさえコーティングされていればよく,両面にコーティングされていてもよい。」(明細書4頁10?18行)
(エ) 「この考案によれば,離型剤が硬質アルミ箔にコーティングされているため,食品のこびり付きを確実に防止することができる。また,25μ以下の硬質アルミ箔から一体に形成されるため,極めて安価に製造することができ,そのためより安価な使い捨て可能な調理用成型皿を供給することができる。」(明細書6頁19行?7頁5行)
イ 上記の記載について,さらに検討する。
(ア) 甲1には,「離型剤としては,たとえばシリコンまたはテフロンなどの樹脂が用いられ得る」(前記ア(ウ))と記載されているが,ここでいう「シリコン(の樹脂)」とはケイ素ではなく,「シリコーン」を意味し,甲1に記載されたものが,離型剤として,シリコーン樹脂を用いることができる,との趣旨である。一般的に,シリコーン樹脂について「シリコン樹脂」との表記が散見されるところ(例えば,乙1),甲1において,「シリコンまたはテフロンなどの樹脂」と記載されていること,シリコーン樹脂が離型剤として広く知られていること(甲2?甲4),併記されたテフロン(フッ素樹脂)が離型剤としての機能を発揮すること(甲4,後記(4)ク)からして,上記のように解することが妥当である。
このように,甲1には,離型剤としてシリコーン樹脂を用いることができる旨記載されているが,アルミニウム箔へのシリコーン樹脂のコーティングが技術的に困難である,実現不可能であるとすべき理由は特段認められない。このことは,甲2に記載のとおり(後記(2)),アルミニウム箔製容器内面にシリコーン樹脂をコーティングすることが従前より知られ,このような事項は当業者にとって技術常識であることからしても,明らかである。
そして,特に,シリコーン樹脂とテフロン樹脂の二種を離型剤として明示していることに照らしても,当該記載は,単に可能性があるものを多数列記している場合とは異なり,具体的に離型剤としてシリコーン樹脂を利用することを述べたものであるといえる。
そうすると,甲1には硬質アルミ箔から成型される調理用成型皿1に,離型剤として,シリコーン樹脂をコーティングすることが記載されていると認められる。
(イ) 甲1には,「離型剤は,調理用成型皿の少なくとも内面にさえコーティングされていればよく,両面にコーティングされていてもよい。」(前記ア(ウ))と記載されているが,この記載は,調理用成型皿の内面と同様に,外面についても離型剤をコーティングすることができることを意味するものである。
つまり,甲1に記載されたものは食品のこびり付きの防止をその目的としているところ,その目的を達成するためには,最低限,調理用成型皿の内面にコーティングすることが必要であり,状況に応じて外面にもコーティングすることが可能であることをいうものである。調理の過程で,皿の外にまで食品がこぼれたり吹き出して,皿の外面にも食品が付着する,といったことは通常想定されることであるから,このように解することは妥当である。
また,当該調理用成型皿1は硬質アルミ箔から一体に形成されたものであるから,その内面と外面とは同様の状況を呈しており,硬質アルミ箔の内面にコーティングを施すのと同様の手法で,硬質アルミ箔の外面に対してもコーティングを施すことが可能であることは技術的に明らかである。加えて,外面が内面とは異なると解すべき事情は特段ないことから,当該記載は,調理用成型皿1の内外両面にコーティングすることについて,単なる可能性を示したものではなく,具体的に述べたものであるといえる。
そして,コーティングを施す場合に,調理用成型皿1に対し部分的に施すか,全体的に施すかは,設計的に決め得ることで,いずれもあり得ることは技術常識であるとともに(甲3,甲4),甲1には,部分的に施すとか,限定的に施すべきであるといった趣旨の記載はない。
そうすると,上記のとおり,離型剤として具体的にはシリコーン樹脂を利用することができるのであるから,甲1の記載から,シリコーン樹脂を,調理用成型皿1の内外面全体にコーティングする技術的思想を認識し得るものと認められる。
ウ 以上のとおりであるから,甲1には次の考案(以下「甲1考案」という。)が記載されているといえる。
(甲1考案)
「硬質アルミ箔により形成された調理用成型皿1の内外面全体にシリコーン樹脂がコーティングされた,硬質アルミ箔製の調理用成型皿1。」

(2) 甲2の記載
甲2には,図面とともに,以下の事項が記載されている。
ア 「アルミニウム箔製容器本体(5)の内面のうち少なくとも底壁部(4)にシリコーン樹脂被覆層(6)が設けられている菓子などの焼き上げ用容器。」(明細書1頁5?8行)
イ 「この考案は,たとえばケーキやパイあるいはクッキーをはじめとする菓子やパンなどを焼き上げるために用いられるアルミニウム箔製の容器に関するものである。・・・
従来,アルミニウム箔からなる菓子などの焼き上げ用容器を用いてケーキなどの菓子や食パンなどを焼くと,これらが容器内面にくっついてしまうという不都合があった。・・・わずらわしくかつ時間のかかる離型剤の塗布作業を行なうことなく,焼き上げた菓子などの離型を簡単かつ容易に行なうことができるアルミニウム箔製の菓子などの焼き上げ用容器を提供することを目的とする。」(明細書1頁11行?2頁13行)
ウ 「容器本体はアルミニウム箔によりつくられる。」(明細書2頁19?20行)
エ 「シリコーン樹脂被覆層はたとえば,シリコーン樹脂塗料が容器本体成形前のアルミニウム箔における所定箇所に塗布され,焼き付けられた後に同箔が所定形状に打ち抜かれてブランクが形成され,さらにブランクに絞り加工が施されることにより形成された容器本体の内面に形成される。
なお,アルミニウム箔から所定形状の容器本体を形成した後,同容器本体の内面にシリコーン樹脂塗料を塗布,焼き付けることにより,シリコーン樹脂被覆層を形成してももちろんよい。」(明細書3頁15行?4頁6行)
オ 「これを用いて菓子などを焼き上げると,シリコーン樹脂被覆層の有する非粘着性のために焼き上がった菓子が同容器内面に付着したりこげ付いたりすることがないという顕著な効果を奏する。」(明細書5頁19行?6頁3行)

(3) 甲3の記載
甲3には,図面とともに,以下の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】 生地を所定形状に成形保持するための焼型であって,スラリー状の抄紙材料を所定の立体形状に成形してなる焼型本体の表面にシリコーン皮膜を形成したことを特徴とする焼型。」(【特許請求の範囲】)
イ 「この発明は,パン,ケーキ,クッキー,プリン,チョコレート等の生地を所定形状に成形保持するための焼型に関するものである。」(【0001】)
ウ 「従来より,この種の焼型は,収容部に生地を収容して加熱等することによって,その収容部に対応する形状に成形された製品を得られるようになっている。例えばパン生地を焼型の収容部に収容して加熱すると,パンはその収容部の形状に沿って膨張し,焼き上がるようになっている。
ところが,生地の種類によっては成形後の製品が焼型に付着することがあり,製品を焼型からきれいに取り出すのが困難な場合がある。・・・
そこで,このような問題点を解決する方法として,収容部に生地を収容する前に収容部の内周面に予め食用油を塗布しておくことにより,成形後の製品を取り出しやすくする方法・・・成形後の製品を焼型に入ったままの形で焼型ごと販売する,即ち製品の成形に使用した焼型をそのまま包装用容器として使用することにより,成形後の製品の取り出しを省略する方法が考えられている。
しかし,前者の方法の場合,食用油が劣化すると悪臭を発するおそれがあるため使用後に焼型を細めに手入れする必要がある。また,使用のたびに食用油を塗布する手間も必要なため,扱いが面倒であるという新たな問題が生じた。
一方,後者の方法の場合には,焼型は使い捨てとなり,繰り返し再利用することができないため,それだけコストが嵩むという新たな問題が生じた。また,一般に焼型は積み重ねた状態で保管され,使用時に一個ずつ取り外して使用されるが,このとき,焼型同士の離型性が悪いとその作業性が低下するおそれがある。しかし,上記二つの方法では,成形後の製品を取り出す際の離型性の問題は解決できても,焼型同士の離型性を改善することはできないという問題があった。
この発明は,上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは,成形後の製品を容易に離型することができるとともに,積み重ねた焼型同士も容易に離型することができる焼型を提供することにある。」(【0002】?【0008】)
エ 「焼型本体11は,一般にパルプモールドと呼ばれる,パルプを主原料とするスラリー状の抄紙材料を所定の立体形状に成形してなるものである。この焼型本体11は,浅めの有底筒状に形成され,その上面には生地12を収容するための収容部13を少なくとも一つ備えている。・・・
前記収容部13を構成する内周面にはシリコーン皮膜14が形成されている。また,焼型本体11の表面とシリコーン皮膜14との間にはベース皮膜15が形成されている。
前記シリコーン皮膜14は液状のシリコーンを硬化してなるものであり,成形後の製品16の離型を容易にするために設けられている。このシリコーンとしては,シリコーンオイル又はシリコーン樹脂を有機溶剤で希釈したもの,エマルジョンとしたもの又は無溶剤タイプのもの等,任意のものが使用される。また,このシリコーンの硬化反応は金属塩(例えば白金化合物)等の触媒によって促進させることができる。
ベース皮膜15は,前記シリコーン皮膜14を焼型本体11の表面に対して強固に接着させるために,またシリコーンが焼型本体11に浸透するのを防止するために設けられている。」(【0012】?【0015】)
オ 「得られた焼型本体11の表面にベース皮膜15とシリコーン皮膜14を形成する。・・・液状のシリコーン(本実施形態の場合は市販の離型コーティング剤)に触媒(本実施形態の場合は市販の白金化合物)を添加し,これを刷毛塗り,浸漬,噴霧等の方法で前記ベース皮膜15の上に塗工し,自然乾燥,強制乾燥等の方法で乾燥することによりシリコーン皮膜14が形成される。」(【0019】,【0020】)
カ 「・ 焼型本体11の収容部13を構成する内周面にはシリコーン皮膜14が形成されている。このため,収容部13に対応する形状に成形された製品16は直接焼型本体11の表面に接することはなく,シリコーン皮膜14に接する。従って,成形後の製品16を容易に離型することができる。よって,成形後の製品16を焼型から取り出して販売することができ,焼型を繰り返し再利用することができる。・・・
また,焼型を積み重ねたとき,一方の焼型の収容部13の内周面が他方の焼型の外周面に当接するため,焼型本体11同士は直接接することはなく,シリコーン皮膜14を介して積み重ねられる。従って,積み重ねた焼型同士も容易に離型することができる。よって,積み重ねられた状態で保管されている焼型をライン上に載せる場合に,焼型を吸い上げる等することによって容易に一個ずつ取り外してライン上に移動させることができるため,その作業性を向上させることができる。」(【0024】,【0025】)
キ 「なお,前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
・ ベース皮膜15を省略し,焼型本体11の表面に直接シリコーン皮膜14を形成するように変更すること。このように構成した場合,実施形態に比べて焼型本体11とシリコーン皮膜14との間の接着が弱いため,シリコーン皮膜14の耐久性が劣り,長期間にわたる使用には耐えることができないが,短期においては焼型の離型性を向上させることができる。
・ 図2に示すように,ベース皮膜15を焼型本体11の表面全体,即ち収容部13を構成する内周面だけでなく焼型本体11の外周面にも形成し,そのベース皮膜15の上に全体にわたってシリコーン皮膜14を形成すること。このように構成した場合,収容部13以外の部分に生地12等が付着したりした場合でも,シリコーン皮膜14の離型効果により容易に除去することができ,焼型を清潔に保つことができる。」(【0032】,【0033】)
ク 「次に,前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記シリコーン皮膜は,焼型本体の表面のうち少なくとも生地を収容するための収容部を構成する内周面に形成したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の焼型。このように構成した場合,成形後の製品を容易に離型することができるとともに,積み重ねた焼型同士も容易に離型することができる。」(【0035】)
ケ 「この発明は,以上のように構成されているため,次のような効果を奏する。請求項1に記載の発明の焼型によれば,成形後の製品を容易に離型することができるとともに,積み重ねた焼型同士も容易に離型することができる。」(【0037】)

(4) 甲4の記載
甲4には,図面とともに,以下の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】 筒状をなす紙製の焼型本体の表面のうち少なくとも内周面と端面とに耐熱性を有する離型層を設けたことを特徴とする焼型。
【請求項2】 前記離型層を焼型本体の外周面にも設けたことを特徴とする請求項1に記載の焼型。
【請求項3】 前記離型層がシリコーンより形成された皮膜であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の焼型。」(【特許請求の範囲】)
イ 「本発明はパンやケーキ等を焼成する際に使用される焼型に関するものである。」(【0001】)
ウ 「パンやケーキ等を製造する場合には,生地を焼型に入れて焼成する方法が一般に行われている。ところが,焼成後の製品が焼型に付着して,製品を焼型からきれいに取り出すのが困難な場合がある。そこで,このような問題点を解決する方法として,予め焼型の内側に沿うように離型性を有するシート材を配しておき,それから生地を入れて焼成するようにすることで,製品が焼型に直接付着しないようにする方法が従来採られている。
ところが,焼成のたびに焼型にシート材を配する必要があるため手間がかかり面倒であるという問題があった。
本発明は,上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは,焼成の前に予め離型性を有するシート材を配する等の面倒な前処理をすることなく焼成後の製品を容易に取り出すことができる焼型を提供することにある。」(【0002】?【0004】)
エ 「図1に示すように,焼型11は円筒状をなしている。この焼型11は,図2に示すように,円筒状の焼型本体12と,その焼型本体12の表面全体,すなわち内周面,外周面及び端面を被覆するように設けられた耐熱性を有する離型層13とから構成されている。・・・
次に,前記離型層13は,シリコーンより形成された皮膜であり,焼型本体12の表面に塗工した液状のシリコーン組成物を硬化させることにより形成されている。このシリコーン組成物としては,溶剤型,熱硬化型,UV硬化型,エマルジョン型等,任意のものを使用することができる。また,このシリコーン組成物の硬化反応は金属塩(例えば白金化合物)等の触媒によって促進させることができる。
なお,図示はしないが,焼型本体12の表面と離型層13との間にはベース皮膜が形成されている。このベース皮膜は,・・・離型層13を焼型本体12の表面に対して強固に接着させるとともに,シリコーン組成物が焼型本体12に浸透するのを防ぐ働きを有している。」(【0008】?【0011】)
オ 「続く離型層13の形成は,液状のシリコーン組成物(本実施形態の場合は市販の離型コーティング剤)に触媒(本実施形態の場合は市販の白金化合物)を添加し,これを刷毛塗り,浸漬,噴霧等の方法で前記ベース皮膜の上に塗工し,自然乾燥,強制乾燥等の方法で乾燥することにより行われる。」(【0014】)
カ 「・ 焼型本体12の表面に離型層13が形成されているため,焼成後のパン24は直接焼型本体12の表面に付着するのでなく,離型層13に付着する。従って,パン24を焼型11から容易に取り出すことができ,離型作業を効率よく行うことができる。また,パン24の一部が焼型11に付着して残るようなことがないので,パン24をきれいに取り出すことができ,見栄えのよいパン24を得ることができる。さらには,例えば焼型11の外周面に誤ってパン生地23等が付着したり,パン24が焼型11の上端から溢れ出るように膨らんで外周面に付着したりした場合でも容易に取り除くことができるので,焼型11を清潔に保つことができる。」(【0017】)
キ 「・ 離型層13は耐熱性を有し,またベース皮膜によって焼型本体12の表面に強固に接着しているため,繰り返しの使用(例えば,少なくとも5回,通常50回以上)にも耐えることのできる優れた耐久性を有している。
・ 離型層13がシリコーンより形成された皮膜であるため,優れた耐熱性,離型性を発揮することができるうえに,容易かつ比較的安価に離型層13を形成することが可能である。」(【0024】,【0025】)
ク 「・ 離型層13を,四フッ化エチレン樹脂(PTFE),四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体(FEP),四フッ化エチレン-パーフルオロビニルエーテル共重合体(PFA),四フッ化エチレン-エチレン共重合体(ETFE)等のフッ素樹脂により形成するように変更してもよい。」(【0030】)
ケ 「・ ベース皮膜を省略して,焼型本体12の表面に直接離型層13を設けるように変更してもよい。」(【0032】)
コ 「本発明によれば,焼成の前に予め離型性を有するシート材を配する等の面倒な前処理をすることなく焼成後の製品を容易に取り出すことができる。」(【0039】)

2 無効理由1について
(1) 対比
ア 本件考案1と甲1考案とを,その有する機能に照らして対比すると,甲1考案の「硬質アルミ箔」は,本件考案1の「アルミニウム箔」に相当し,甲1考案の「調理用成型皿1」は「硬質アルミ箔により形成された」ものであるから,本件考案1の「容器本体」に相当し,甲1考案の「調理用成型皿1の内外面全体」は,本件考案1の「容器本体の内外面全体」に相当し,甲1考案のコーティングされた「シリコーン樹脂」は,本件考案1の「シリコーン樹脂被覆層」に相当する。
そして,甲1考案の「調理用成型皿1」は「オーブンまたオーブントースタによる調理に際し用いられる」(前記1(1)ア(イ))ものであるから,本件考案1の「焼き上げ用容器」に相当する。
イ そうすると,本件考案1と甲1考案とは,
「アルミニウム箔により形成された容器本体の内外面全体にシリコーン樹脂被覆層が設けられているアルミニウム箔製の焼き上げ用容器。」
である点で少なくとも一致する。
ウ そして,次の点で,両者は一致するか明らかでない((以下,便宜的に「相違点1」という。)。
(相違点1)
本件考案1は「再利用可能な」ものであるのに対し,甲1考案においてはその点が必ずしも明らかでない点

(2) 判断
上記相違点1について検討する。
本件考案1は,その請求項1の記載からみて,「アルミニウム箔により形成された容器本体の内外面全体にシリコーン樹脂被覆層が設けられている」ことにより,「再利用可能」となるものであって,本件明細書(甲8)の記載(【0004】,【0009】等)を参酌しても,当該シリコーン樹脂被覆層を設けたこと以外に「再利用可能」となるための形状,構造を有するものではないことがわかる。
他方,上記のとおり,甲1考案も「アルミニウム箔により形成された容器本体の内外面全体にシリコーン樹脂被覆層が設けられている」ものであるから,甲1考案が再利用可能であることは明らかである。
なお,甲1には,「使い捨て可能」であるとの記載があるが(前記1(1)ア(エ)),あくまでも使い捨てが可能であることを意味し,再利用を否定するものではない。このことは,焼型の再利用が広く知られ,技術常識であることからも窺い知ることができる(甲3(前記1(3)カ),甲4(前記1(4)キ))。
よって,上記相違点1においても,両者は一致しており,両者に相違するところはない。
したがって,本件考案1は,甲1に記載された考案であるから,実用新案法3条1項3号に該当し実用新案登録を受けることができないものである。

3 無効理由2について
(1) 対比
ア 既に述べたとおり,本件考案1と甲1考案とに相違するところはないから,本件考案2と甲1考案とを,その有する機能に照らして対比すると,両者は以下の点で相違し,その余の点で一致する。
(相違点2)
本件考案2は,「シリコーン樹脂被覆層が容器本体のシリコーン樹脂溶液へのどぶ付け加工及び焼成加工により形成される」のに対し,甲1考案においてはその点が明らかでない点

(2) 判断
ア 上記相違点2について検討するに,甲2には,アルミニウム箔製の焼き上げ用容器について,その内面にシリコーン樹脂被覆層が設けることにより,焼き上がった菓子などの容器への付着や焦げ付きを防止すること,アルミニウム箔から所定形状の容器本体を形成した後,同容器本体の内面にシリコーン樹脂塗料を塗布し焼き付けることにより形成した,シリコーン樹脂被覆層を設けることが記載されている(前記1(2))。ここで,焼き付けることは「焼成加工」に相当する。
そして,甲1考案において,適宜のシリコーン樹脂被覆層を設け得ることは技術的に明らかであるとともに,甲2に記載されたものは,甲1考案と同様のアルミニウム箔製の焼き上げ用容器に係る技術であって,その目的も甲1考案と同様,内容物の容器への付着を防止する点にあるから,甲1考案において,甲2に記載された事項を適用し,容器本体へシリコーン樹脂の塗布及び焼成加工によりシリコーン樹脂被覆層を設けることは,当業者にとって格別困難なことではない。
なお,甲2に記載のものは容器内面に係るものであるが,既に述べたとおり,甲1考案において,内面と外面の状況は同様で,内面にコーティングを施すのと同様の手法で外面に対してもコーティングを施すことが可能であることは技術的に明らかであるし,甲2においても同様であるから,当業者であれば,甲2に記載された事項が,甲1考案の容器外面にも適用可能な技術であると十分に理解することができる。
イ 容器にシリコーン樹脂被覆層を設けるに当たり,シリコーン樹脂を塗布する点と塗布後にそれを焼き付ける点は,技術的にわけて捉えることができるところ,容器にシリコーン樹脂を塗布する手段としては種々知られている。
甲3,4には,焼型にシリコーン樹脂よりなる皮膜を設けること,シリコーン樹脂溶液に浸漬することで,焼型にシリコーン樹脂を塗布すること(前記1(3)エ,オ,(4)エ,オ),焼型全体に塗布すること(前記1(3)キ,(4)ア,エ)が記載されている。ここで,シリコーン樹脂溶液に浸漬することで塗布する点は,「どぶ付け」に相当する。
そして,甲3,4に記載されたものは,焼型にシリコーン樹脂よりなる皮膜を設けることにより,焼型を積み重ねた状態でも一個ずつ取り外しが可能である(前記1(3)カ,ク,ケ),焼型の再利用が可能である(前記1(3)カ,(4)キ),焼型が清潔である(前記1(3)キ,(4)カ),といった効果を奏するものである。
甲1考案において,シリコーン樹脂被覆層に設けるに当たり,具体的にシリコーン樹脂をどのように塗布するかは,当業者が適宜に決定し得るとともに,甲3,4に記載されたものは,焼き上げ用容器である点で甲1考案と軌を一にし,その目的も甲1考案と同様,内容物の容器への付着を防止する点にある。そもそも,どぶ付け自体広く知られた塗布手法であるから,甲1考案において,甲3,4に記載された事項を適用し,シリコーン樹脂溶液へのどぶ付けにより,シリコーン樹脂を塗布することは,当業者にとってきわめて容易である。
甲1考案においても,使用前に容器を多数積み重ねた状態で保管することは,通常想定され,その状態からの取り出し易さに関する課題は内在することは明らかである。容器の再利用は広く知られた要請であるし,衛生的であることは当然の課題であるから,これらの課題を踏まえた上で,甲3,4に記載された事項を参考にすることも,当業者にとって格別困難なことではない。
甲3,4には,刷毛塗り,浸漬,噴霧等が列記され,これらの手法の違いにより,完成された皮膜の構造に違いがあるとしても,当業者であれば理解し得る範囲内のことで,それを踏まえた上で,甲1考案において浸漬を採用することにも,格別の困難性は認められない。
なお,甲3,4に記載されたものはアルミニウム箔製容器に係る技術ではないが,シリコーン樹脂溶液へのどぶ付け工程が,甲3,4に開示の容器素材に限定されるものではないことは,どぶ付け自体が広く知られた塗布手法であることからしても,技術的に明らかであって,アルミニウム箔製の容器への適用が可能な技術であることは,当業者がきわめて容易に理解できる。甲1,2に記載のとおり,アルミニウム箔に対するシリコーン樹脂のコーティングが可能であり,アルミニウム箔へのシリコーン樹脂溶液の塗布が格別に困難であるとは認められず,アルミニウム箔製容器へシリコーン樹脂溶液をどぶ付けすることが実現不可能であるとすべき事情も特段認められない。
仮に,素材の違いに起因する考慮すべき事項,例えば,どぶ付けに係る最適・好適な作業条件などがあるとしても,本件考案2において特段限定はなされていないし,そうした最適・好適な条件を設定することは,考案の具体化に際し当業者が通常の創作能力の発揮の範囲内にてなし得ることである。
そうすると,甲1考案において,甲2?甲4に記載された事項を適用し,容器本体のシリコーン樹脂溶液へのどぶ付け加工及び焼成加工により形成される,シリコーン樹脂被覆層を設けることは,当業者がきわめて容易に想到できたものであるとするのが相当である。
ウ 本件考案2の奏する効果についてみるに,本件明細書(甲8)によれば,本件考案2は,
「(1)本考案の再利用可能なアルミニウム箔製の焼き上げ用容器においては,多数積み重ねられた状態から1個づつ取り出して使用する際に,容器同士がくっつかず離れやすいため,確実に1個づつ取り出すことができ,作業を容易に行うことができる。
(2)本考案の再利用可能なアルミニウム箔製の焼き上げ用容器を再使用する際に,容器内面のみならず,容器外面にもパン,菓子等のこびり付き,こげ付きを防止できるとともに,塵,ほこり等が付着することがないため,衛生的にも優れた特性を有している。
(3)容器本体のシリコーン樹脂溶液へのどぶ付けによりシリコーン樹脂塗膜を形成することにより,スプレー方式に比べ,数倍,シリコーン樹脂を効率的に使うことができる。」
といった効果を奏するものであるが(【0009】),このうち,「(3)」の効果は,製造方法の効率化に関するものであるから,結局,「焼き上げ用容器」という「物」の考案である本件考案2は,容器を多数積み重ねた状態から1個ずつ取り出しやすい,再利用が可能である,衛生的に優れている,といった効果を奏するものであることがわかる。
しかしながら,甲1,2にはこびり付き,こげ付きを防止できる点について記載されており,既に述べたとおり,甲3,4にはこれらの効果に関する事項が記載されている。
そうすると,本件考案2が奏する効果をみても,甲1考案及び甲2?4に記載された事項から当業者が予測可能な範囲内のものであって,格別ではない。

(3) 以上を総合すると,甲1考案において,甲2?4に記載された事項を適用し,相違点2に係る本件考案2の構成とすることは,当業者がきわめて容易に想到できたものである。
したがって,本件考案2は,甲1考案及び甲2?甲4に記載された事項に基いて,当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから,実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。

4 被請求人の主張について
(1) 無効理由1について
被請求人は,甲1考案で示されているのは,成型皿への食品のこびり付きを防ぐため,離型剤を硬質アルミ箔でコーティングするというアイディアであって,本件考案1が示す「容器本体の内外面全体にシリコーン樹脂被覆層が設けられている」,すなわち容器本体の内外面をシリコン樹脂被覆加工するという特徴については,可能性として指摘がされているにとどまり,具体的な実現可能性については何ら検証されていない,甲1には,本件考案1が示す「容器本体の内外面全体にシリコーン樹脂被覆層が設けられている」という特徴までは記載されていないなどと主張している。
しかし,既に述べたとおり,甲1には,シリコーン樹脂をコーティングすることが記載されているといえ,アルミニウム箔へのシリコーン樹脂のコーティングが技術的に困難である,実現不可能であるとすべき理由は特段認められない。
そして,少なくとも,内面にコーティングされ,両面にコーティングされていてもよい点が記載され,内面と同様に,硬質アルミ箔の外面に対してもコーティングを施すことが可能であることは技術的に明らかであるから,全体的にコーティングを施すことが技術常識であることに照らせば,甲1には,シリコーン樹脂を,調理用成型皿1の内外面全体にコーティングする点が記載されているとするのが相当である。

(2) 無効理由2について
ア 被請求人は,概ね,以下のように主張している。
(ア) 甲1考案で示されているのはあくまで離型剤を硬質アルミ箔にコーティングするという内容にとどまり,容器の内外両面をシリコーンでコーティングすることについては可能性は排除しないという程度の言及しかない。さらに,そのコーティング方法はシリコーン樹脂溶液へのどぶ付け加工及び焼成加工によることについては,甲1には記載されていない。
甲2には,アルミニウム箔製容器の内外両面をコーティングすることは記載されていない。
甲3には,アルミニウム箔からなる容器に,容器の内外両面をコーティングするという内容は記載されていない。甲3考案は,シリコーンに触媒を添加して生成されたものであり,容器そのものにシリコーン樹脂溶液をどぶ付けするという特徴を開示したものではない。
甲4には,アルミニウム箔からなる容器に,容器の内外両面に全面的にコーティングをすることや,そのコーティング方法はシリコン溶液へのどぶ付け加工及び焼成加工によることは記載されていない。甲4考案は,筒状をなす紙製の容器のコーティング方法であり,甲4には,アルミニウム箔からなる容器について内外両面をシリコーン溶液へのどぶ付け加工によりコーティングすることは記載されていない。
(イ) 甲2考案?甲4考案のいずれも,本件考案2と比べて,容器を多数積み重ねた状態からの取り出しやすさは劣り,本件考案2のような,再利用が可能であることや衛生的にも優れているという作用・効果も導かれない。甲1考案?甲4考案は,いずれも,単独では本件考案2の構成要件及び効果を記載するものではない。また,これらを相互に組み合わせることは,当業者には容易に想像しうるところではない。
イ しかし,既に述べたとおり,甲1考案において,甲2?4に記載された事項を適用し,相違点2に係る本件考案2の構成とすることは,当業者がきわめて容易に想到できたものである。甲1には,容器の内外両面をシリコーン樹脂でコーティングする点が記載され,甲1考案において,適宜のシリコーン樹脂被覆層を設け得ることは技術的に明らかであるところ,甲2には,アルミニウム箔製容器内面にシリコーン樹脂を塗布し焼成加工する点が記載され,当業者であればこの点が,甲1考案の容器外面にも適用可能な技術であると十分に理解することができる。
さらに,甲3,4には,焼型をシリコーン樹脂溶液へどぶ付けすることで全体に塗布する点が記載され,容器素材の違いは甲1考案への適用を妨げるほどの事情ではない。甲3,4における触媒の添加は任意付加的であるし(前記1(3)エ),どぶ付けとは直接関わりはない。また,ベース皮膜は省略可能であるから(前記1(3)キ,(4)ケ),容器そのものにどぶ付けすることの開示がある。
本件考案2の効果をみても,甲1,2には,こびり付き,こげ付きを防止できる点につき開示があり,甲3,4にはこれらの効果に関する事項が記載されており,当業者が予測可能な範囲内のものである。

(3) 被請求人は,請求人が商圏争いの一手段として無効審判制度を利用しようとしており,請求権を濫用しているなどと主張している。
この点に関し,実用新案登録無効審判制度の趣旨についてみるに,権利に瑕疵がある場合,権利者には不当な権利を与え,本来何人も当該考案について実施できるにもかかわらず,それを禁止することになり,産業の発達を妨げるなどの弊害を発生させることがある。このような場合に,その権利を無効とし,権利を初めから存在しなかったとさせるために設けられたものが,この制度であるところ(実用新案法37条,特許法125条),実用新案登録無効審判は,権利帰属に係る無効理由以外の無効理由について請求するときは,何人も請求することができるものである(実用新案法37条2項)。
そして,既に述べたとおり,本件の無効理由はいわゆる新規性,進歩性の欠如をいうもので,本件考案1は,甲1に記載された考案であり,本件考案2は,甲1?4に記載された考案に基いて,当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから,いずれも実用新案登録を受けることができないものである。
したがって,本件審判請求は,制度の趣旨に沿うものである。

(4) 以上のとおり,被請求人の主張は採用することができない。

第6 むすび
したがって,本件考案1(請求項1に係る考案)は,甲1に記載された考案であるから,実用新案法3条1項3号に該当し実用新案登録を受けることができないものであり,その実用新案登録は同法37条1項2号に該当し,無効とすべきである。
そして,本件考案2(請求項2に係る考案)は,甲1考案及び甲2?甲4に記載された事項に基いて,当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから,実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり,その実用新案登録は同法37条1項2号に該当し,無効とすべきである。
審判に関する費用については,実用新案法41条が準用する特許法169条2項においてさらに準用する民事訴訟法61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
審決日 2016-01-06 
出願番号 実願2006-10134(U2006-10134) 
審決分類 U 1 114・ 121- Z (A21B)
U 1 114・ 113- Z (A21B)
最終処分 成立  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 窪田 治彦
佐々木 正章
登録日 2007-02-14 
登録番号 実用新案登録第3129837号(U3129837) 
考案の名称 再利用可能なアルミニウム箔製の焼き上げ用容器  
代理人 江口 大和  
代理人 太田 洋子  
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