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審決分類 審判    A45C
管理番号 1323545
審判番号 無効2016-400003  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-05-19 
確定日 2016-12-26 
事件の表示 上記当事者間の登録第3182083号実用新案「硬質トランクケースのPC収納構造」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 請求項2に係る無効審判の請求は、成り立たない。 請求項1,3,4に係る無効審判の請求は却下する。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
本件登録第3182083号実用新案は、平成24年12月21日出願され、平成25年2月13日にその請求項1ないし4に係る考案について実用新案権の設定登録がされ、その後請求人株式会社ティーアンドエスから、頼偉浤を被請求人とする本件無効審判が請求されたものである。
以下、請求以後の経緯を整理して示す。
平成28年 5月19日付け 審判請求書の提出
同年 8月 5日付け 答弁書の提出
同日付け 訂正書の提出
同年 9月 6日付け 請求人より審理の方式の申立書提出
同日付け 被請求人より審理の方式の申立書提出
同年 9月 9日付け 書面審理通知
同年 9月12日付け 請求人への審尋
同日付け 被請求人への審尋
同年 9月27日付け 請求人より回答書提出
同年10月 5日付け 被請求人より回答書の提出


第2 実用新案登録請求の範囲の記載
上記訂正書による訂正は、本件登録実用新案の請求項1,3,4を削除する訂正を行うものであるから、本件登録実用新案の請求項2に係る考案は、実用新案法第14条の2第7項の規定に基づき平成28年8月5日付けで訂正された実用新案登録請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める(以下、「本件考案」という。)。
「【請求項2】
前記内袋の位置限定壁、袋片は、軟性材を備え、設置したパソコンを保護することを特徴とする請求項1記載の硬質トランクケースのPC収納構造。」
そして、請求項2は、請求項1を引用して記載されており、その請求項1は、「箱体に箱蓋を備える硬質トランクケースのPC収納構造において、
箱蓋と箱体は、第一ファスナーを設置して開閉し、箱蓋は更に副蓋を設置し、副蓋と箱蓋には第二ファスナーを設置して開閉し、物品を置き、箱蓋と副蓋内には内袋を設置し、内袋には第四ファスナーを設置し、内袋の袋底はケース底と接触せず、第四ファスナーを開けることで内袋と箱蓋間の物品を取り出し、内袋は位置限定壁、袋片によって構成され、そこにパソコンを置くことを特徴とする硬質トランクケースのPC収納構造。」というものであるから、上記請求項2は以下のとおりとなる。

<本件考案>
「【請求項2】
箱体に箱蓋を備える硬質トランクケースのPC収納構造において、
箱蓋と箱体は、第一ファスナーを設置して開閉し、箱蓋は更に副蓋を設置し、副蓋と箱蓋には第二ファスナーを設置して開閉し、物品を置き、箱蓋と副蓋内には内袋を設置し、内袋には第四ファスナーを設置し、内袋の袋底はケース底と接触せず、第四ファスナーを開けることで内袋と箱蓋間の物品を取り出し、内袋は位置限定壁、袋片によって構成され、そこにパソコンを置く硬質トランクケースのPC収納構造であって、
前記内袋の位置限定壁、袋片は、軟性材を備え、設置したパソコンを保護することを特徴とする硬質トランクケースのPC収納構造。」

第3 当事者の主張
1 請求人の主張の概要
請求人は、「登録第3182083号実用新案の実用新案登録請求の範囲の請求項1、請求項2、請求項3及び請求項4に係る考案についての実用新案登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする」(請求の趣旨)との審決を求め、証拠方法として下記の甲第1?4号証を提出するとともに、無効とすべき理由として次の無効理由1a?1dを主張している。

(無効理由1a)
本件登録実用新案の請求項1に係る考案は、甲第1号証、甲第2号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、その実用新案登録は同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(無効理由1b)
本件登録実用新案の請求項2に係る考案は、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、その実用新案登録は同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(無効理由1c)
本件登録実用新案の請求項3に係る考案は、甲第1号証、甲第2号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、その実用新案登録は同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(無効理由1d)
本件登録実用新案の請求項4に係る考案は、甲第1号証、甲第2号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、その実用新案登録は同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

[証拠方法]
・甲第1号証:登録実用新案第3163137号公報
・甲第2号証:登録実用新案第3168972号公報
・甲第3号証:登録実用新案第3181470号公報
・甲第4号証:特開2003-102529号公報

2 被請求人の主張の概要
被請求人は、訂正書により本件登録実用新案の請求項1,3,4に係る考案を削除するとともに、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めている。


第4 当審の判断
1 上記第2に記載したように、平成28年8月5日付け訂正書による訂正により、本件登録実用新案の請求項1,3,4は削除された。
したがって、請求項1,3及び4に係る考案についての実用新案登録を無効とすることを求める請求は、その請求の対象物のない不適法な請求となったので、実用新案法第41条において準用する特許法第135条の規定により却下する。

2 各甲号証に記載された考案等
(1)甲第1号証
本件登録実用新案の出願日前に頒布された刊行物である甲第1号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審にて付与した。以下同様。)
ア「【技術分野】
【0001】
本考案は、底面部にキャスターが設けられ、上面部に取っ手が設けられる箱体と、箱体に対して開閉自在に装着される蓋体と、を備えたスーツケースに関する。」

イ「【0021】
<スーツケースの外観構成>
図1,2等に示すように、スーツケースは、箱体1と蓋体2により構成される。箱体1と蓋体2は、いずれもハードケース(硬質プラスチック製)により形成される。スーツケースは、その全体形状が、ほぼ直方体状となっている。箱体1の内部には、種々の収容物を収容するための空間部が形成されている。」

ウ「【0024】
蓋体2は、その全体もしくは一部が、箱体1に対して開閉することができ、そのために第1スライドファスナー20と、第2スライドファスナー21が設けられている。第1スライドファスナー20は、蓋体2を縦開きするためのものであり、第2スライドファスナー21は、蓋体2を横開きするためのものである。図からもわかるように、第1スライドファスナー20よりも第2スライドファスナー21のほうが奥側に位置している。第1・第2スライドファスナー20,21は、いずれも金属ファスナーである。」

エ「【0032】
図4からもわかるように、第1ヒンジ部20aは、手前側から見える位置(底面部よりも少し高い位置)に配置したほうが、キャスター22の配置空間を確保しやすくなる。また、上記傾斜ラインを設けることで、蓋体2の前面部2aを大きく開くことができ、スーツケースの内部空間をより大きく開放することができる。これにより、内部に収容している小物等を取り出しやすくなる。

オ「【0038】
さらに、蓋体2の後部2bの内部空間には、小物収容部6が配置されている。小物収容部6は、第1スライドファスナー20と第2スライドファスナー21の間の内部空間に配置される。小物収容部6は、2本の吊り下げベルト7により、蓋体2内部に支持されている。この吊り下げベルト7も連結機構7aを備えており、小物収容部6を取り外すことができる。また、連結機構7は、ベルト長さを調整する機能も備えている。
【0039】
小物収容部6は、上下の収容袋6a,6bを備えており、それぞれ、スライドファスナー6c,6dにより開閉することができる。この小物収容部6を利用して、パスポート、手帳、ノート、本などの小物を収納することができる。
【0040】
図8は、図7と同様に縦開きした状態を奥側から見た外観斜視図である。蓋体2の前面部2aの内側にも小物収容部8が設けられている。ノート、雑誌等の小物を収容することができる。」

上記摘記事項アないしオを総合すると、甲第1号証には以下の考案(以下、「甲1考案」という。)が記載されていると認める。
<甲1考案>
「箱体1に蓋体2の後部2bを備える硬質プラスチック製のスーツケースの収容構造において、蓋体2の後部2bと箱体1は、第2スライドファスナー21を設置して開閉し、蓋体2の後部2bは更に蓋体2の前面部2aを設置し、蓋体2の前面部2aと蓋体2の後部2bには第1スライドファスナー20を設置して開閉し、物品を置き、蓋体2の後部2bと前面部2a内には小物収容部6を設置し、小物収容部6にパスポート、手帳、ノート、本などの小物を収容するスーツケースの収容構造」

(2)甲第2号証
本件登録実用新案の出願日前に頒布された刊行物である甲第2号証には図面と共に以下の事項が記載されている。
ア「【技術分野】
【0001】
この考案は、例えば底部に付設した移動車輪によって床面等を移動可能なスーツケース・ソフトキャリー・トランク等において、立てた状態、寝かせた状態のいずれの態様時であってもいわゆる縦開き、横開きを可能にして収納物の出し入れを簡単に行うことができるようにした鞄に関する。」

イ「【考案を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照してこの考案を実施するための一形態を説明すると、図において示される符号1は鞄本体であり、この鞄本体1は例えば所定の深さを有する直方体ボックス状に形成されており、その開口部は浅底状の直方体ボックス状に形成された蓋体2によって開閉自在に覆われている。鞄本体1、蓋体2それぞれは例えば硬性合成樹脂等によるハード構成素材、布・皮・軟性合成樹脂等によるソフト構成素材その他の所定の素材によって形成されることで収納物を十分に保護し得るようになっている。
【0021】
この鞄本体1の裏面には、この裏面に形成された取っ手収納部に収納される伸縮自在な取っ手3が設けられており、開口部を側方に向けて立てられたときの底部には、この鞄本体1を移動させる移動用の移動車輪4が例えば4隅に配されており、移動車輪4の幾つかはロック可能なストッパー機構を備えたものとすることもできる。尚、移動車輪4は4輪式とする場合に限らず2輪式とすることもでき、2輪式とする場合は例えば鞄本体1の裏面側に移動車輪4を、蓋体2側に支持脚を突設配置するのであり(図示せず)、これらは任意に設定できる。
【0022】
鞄本体1の開口部を覆う蓋体2は、この蓋体2自体が、鞄本体1が立てられたときの底部位置に形成した底部ヒンジ部11を支点として開閉させる縦開きスライドファスナー部10によって開閉され、また同様に鞄本体1が立てられたときの右側縁あるいは左側縁に形成した側部ヒンジ部16を支点として開閉させる横開きスライドファスナー部15によって鞄本体1から開閉可能なように形成されている。
【0023】
蓋体2は図例のように、鞄本体1の開口縁部を全周にわたって囲繞して同一幅員で筒状に形成されていて、鞄本体1側の開口縁で横開きスライドファスナー部15によって開閉自在に鞄本体1に連結されている蓋枠体2Aと、この蓋枠体2Aの反対側の開口縁で縦開きスライドファスナー部10によって開閉自在に蓋枠体2Aに連結されている蓋板2Bとから成っている。すなわち、鞄本体1の開口部縁に横開きスライドファスナー部15を配し、この横開きスライドファスナー部15位置とは若干の間隔を隔てて、すなわち所定幅員を有する帯状で、鞄本体1の開口部に沿って、鞄本体1の開口部を囲繞している蓋枠体2Aを隔てて縦開きスライドファスナー部10が配されている。もとより、場合によっては縦開きスライドファスナー部10を鞄本体1側に、横開きスライドファスナー部15を蓋体2側に配することもできる。」

ウ「【0028】
また、鞄本体1、蓋体2それぞれの内部には、これらの内部を区画し、仕切る本体側中仕切り板6、補助中仕切り板17が開閉自在にして配されている。本体側中仕切り板6は、鞄本体1における開口部、すなわち鞄本体1と蓋枠体2Aとの境界部分である鞄本体1における開口部縁に配置されていて、この開口部縁に沿っている仕切りスライドファスナー部7によって、例えば鞄本体1の底部側に設けた仕切り折曲部8を支点として揺動自在に開閉されるようになっている。こうすることで、鞄本体1を立てた態様のときには、縦開きファスナー部10の開放と共に仕切スライドファスナー部7を縦方向に開放することによって、鞄本体1内部の収納物を出し入れできるようにしている(図2参照)。
【0029】
尚、この本体側中仕切り板6は、鞄本体1の底部側を支点位置とせずに、図示を省略したが、鞄本体1の側部位置例えば横開きスライドファスナー部15の揺動支点部分である側部ヒンジ部16側に配置形成し、鞄本体1を立てた態様のときで横方向に開閉できるようにしても良い。また、仕切り折曲部8は本体側中仕切り板6自体を揺動開閉させるときの揺動支点となればよいから、本体側中仕切り板6生地自体が折れ曲がるものであれば足り、場合によってはヒンジ構造とすることも可能である。
【0030】
補助中仕切り板17は、蓋板2B内部と区画し、蓋枠体2A内部あるいは蓋板2B内部を開閉自在にするよう、着脱自在なベルト、フック等の吊り具18を介して蓋枠体2Aにおける蓋板2B側の開口部に配置されていて、この補助中仕切り板17によって、蓋板2B内部と蓋枠体2A内部とを区画できるようにしてある。吊り具18は、補助中仕切り板17の上部のみに設けて蓋枠体2A開口縁に連繋させることで、補助中仕切り板17が下部側を支点として揺動式に開閉されるようにしても良い。また、図示を省略したが、この補助中仕切り板17を、これの上下部それぞれに吊り具18を設けて蓋枠体2Aの開口縁に着脱可能となるようにしても良い。
【0031】
尚、この補助中仕切り板17は、必要があれば蓋枠体2Aの開口部に設けられるのであり、立てた態様時で縦開きスライドファスナー部10によって蓋板2Bを開放したとき、蓋板2B内の収納物を出し入れでき、また吊り具18の取り外しで補助中仕切り板17を蓋板2B側に倒すと共に、本体側中仕切り板6の開放によって鞄本体1内部の収納物を出し入れできるようになっている。場合によっては、この補助中仕切り板17を、その吊り具18を蓋板2B開口部に着脱自在にすることで蓋板2Bの開口部に設けることもでき、この場合には鞄本体1を立てた態様時で縦開きスライドファスナー部10にて開放するとき、本体側中仕切り板6のみの開放で鞄本体1内の収納物を出し入れできる。図示を省略したが、吊り具18を蓋枠体2A側の開口部あるいは蓋板2B側の開口部のいずれかに選択的に着脱自在となるようにすることも可能である(図示せず)。
【0032】
そしてまた、蓋板2B例えばその表裏面、本体側中仕切り板6例えばその表裏面、補助中仕切り板17例えばその表裏面の少なくとも一つに適宜な収納ポケット20を付設することもできる。この収納ポケット20は、その開口部を鞄本体1における上部側に向けておくことで、例えば縦開きスライドファスナー部10を開放し、その上部分位置で開放することで収納ポケット20に所定の収納物、例えばノートパソコンの如き電子機器等を出し入れできる。尚、この収納ポケット20を鞄本体1あるいは蓋枠体2A、蓋板2Bの開口部の形状、大きさに沿うものとして形成することで本体側中仕切り板6、補助中仕切り板17を代用することも可能である。」

上記摘記事項アないしウを総合すると、甲第2号証には、次の事項(以下、「甲2事項」という。)が記載されていると認める。
<甲2事項>
「スーツケースにおいて、底部側に設けた仕切り折曲部を支点として揺動し、底部側を除く周囲にスライドファスナー7を設け、スライドファスナー7により開閉する本体側中仕切り板6と、吊り具18を上部に設け下部側支点により揺動可能とした、又は、上部及び下部に吊り具18を設け取り外し可能とした補助中仕切り板17を設け、本体側中仕切り板6又は補助中仕切り板17にポケット20を設け、ポケット20にノートパソコンを収容すること」

(3)甲第3号証
甲第3号証は、本件登録実用新案の出願日以後に頒布された刊行物であって、甲第3号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア「【0030】
図1乃至4に示すように、本実施の形態に係るスーツケース10は、全体略縦長直方体の主収納部11と上記収納部11の厚さ方向一方に配置され、全体略縦長直方体の副収納部12とを備えたスーツケース10であって、上記主収納部11と副収納部12とを隔てる境界部13に、上記主収納部11および副収納部12を連通可能に仕切るファスナー部14を有した全体略長方形状の布部材15を備えている。」

イ「【0034】
図3及び図4に示すように、上記副収納部12は、一方の箱状ハーフ17aに設けられた開口部23と、開口部23を被覆可能に設けられたファスナー部41を有する薄型箱状のカバー部材24により形成され、開口部23を開閉可能に被覆しうる布部材15により形成されている。
【0035】
上記カバー部材24は、全体略直方体形状に形成され、一方の箱状ハーフ17aに対して下端部25に設けられた回動軸部26を介して取り付けられると共に、開口部23周縁に設けられたファスナー部14により開閉可能に設けられ、上記布部材の互いに対抗する幅方向縁部27、27と上記カバー部材24との間には、上記カバー部材24を開放する際にストッパーとして機能する一対のマチ部28、28が設けられている。
【0036】
上記一対のマチ部28、28は、側面略逆三角形状に形成され、中間部29、29にカバー部材24の長さ方向に沿って設けられた長方形状の面ファスナー42、42により分離可能に形成されていると共に、布部材15の副収納部12側には、上方に開口する長方形状のポケット部30が設けられている。 」

ウ「【0040】
スーツケース10は、主収納部11および副収納部12との間に形成された開口部23を開閉可能に被覆しうるファスナー部14を有した布部材15を備えており、主収納部11および副収納部12どちらか一方を開口して物品を出し入れする場合、主収納部11および副収納部12は、両方の収納部が布部材15を隔て連通可能に構成されているため、どちらか一方のみを開口して物品を出し入れする動作を行なうだけで、上記両方の収納部どちらからでも物品の出し入れができる。」
上記摘記事項アないしウを総合すると、甲第3号証には、次の事項(以下、「甲3事項」という。)が記載されていると認める。
<甲3事項>
「スーツケース10を連通可能に仕切る布部材15において、周縁にファスナー部14を設け、主収納部11ないし副収納部12の物品の出しいれを行うこと」

(4)甲第4号証
本件登録実用新案の出願日前に頒布された刊行物である甲第4号証には図面と共に以下の事項が記載されている。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ノート型パソコン等を内部に収納した状態でアウターバッグ等に収容して持ち運びされるインナーケースに関するものである。」
【0002】
【従来の技術】
この種のインナーケースは、ノート型又はサブノート型パーソナルコンピュータ(以下、パソコンと称する)や、PDA等の携帯情報端末を収納し得る収納空間を内部に有し、それらノート型パソコン等を収納した状態でパソコン専用鞄、一般的な鞄、バックパック等のアウターバッグに収容させて、ノート型パソコン等の外部からの衝撃や傷付きの防止を図って持ち運びされるものである。このようなインナーケースは、矩形状をなすものが一般的であるが、その周縁部のうち一辺のみに開口部を設け、その開口部を通じて内部のノート型パソコン等を出し入れするようにされているのが通例である。」

イ「【0012】
具体的に説明すると、このインナーケース1は、図1及び図2に閉止状態を、図3に開口状態をそれぞれ示すように、クッション性のある袋体2を主体とする正面視略長方形状をなすものである。袋体2は、矩形状をなす2枚の袋要素21から構成されており、これら袋要素21の一部同士を縫い付けることによりそれら袋体21間にサブノート型パソコンPを収納し得る収納空間2sを形成している。各袋要素21は、外面側に配置されナイロン素材等からなる柔軟な表面被覆材211と、内面側に配置されウレタン素材等からなるクッション性のある内面被覆材212とを一体的に貼り合わせ又は縫い合わせたものである。そして、それら袋要素21の一長辺21aとそれに隣接する一短辺21bとを連続的に縫い合わせることによって、一体の袋体2を形成している。ここで、袋要素21同士の縫い合わせに際して、前記長辺21a及び短辺21bが連続しない側の端部21a1、21b1において、それぞれの辺の約1/9?1/7の長さの領域は、相互に縫い合わせないようにしてある。このようにすることで、袋体2には、他の長辺21c及び短辺21dに連続して開口し、さらに前記長辺21a及び短辺21bの各端部21a1、21b1にまで亘って開口する開口部2xが形成されることになる。
【0013】
このような袋体2からなるインナーケース1の周縁部において、収納空間2sを外部と連通させる開口部2xを選択的に開閉できるようにするために、その開口部2xの開口縁部には、スライドファスナ3を連続的に取り付けている。すなわち、この開口縁部に該当する各袋要素21の長辺21c、21d、及び21a1、21b1にそれぞれ縫い付けるなどして取り付けたファスナテープ33を介して、多数のエレメント31a及び32aを連続的に有するエレメント部31、32を取り付けている。これらエレメント部31及び32は、対向位置にあるエレメント31a及び32aが、エレメント部に沿ってスライダ34が正逆方向何れかにスライド移動することによって相互に係り合い又は離間するようにした、通常のスライドファスナを構成するものである。本実施形態ではこのようなスライダ34、35を2つ設けている。なお、各スライダ34には、使用者が指で挟み持ってスライダ34、35を移動させるためのつまみ部36をそれぞれ設けている。また、開口部2xの両端2xa、2xb(以下、「開口端部」と称する)が位置付けられる部位21a1、21b1には、スライダ34、35の移動範囲を規制するストッパ(図示省略)をそれぞれ設けている。」

ウ「【0018】
以上のように、本実施形態のインナーケース1は、アウターバッグ10A、10Bにその形状に合わせた姿勢で収容させることで、何れの場合でもアウターバッグ10A、10Bに入れたまま、収納空間2s内に上方に開放させた開口部2xを通じてサブノート型パソコンPを好適に出し入れすることが可能である。また、インナーバッグ1内にサブノート型パソコンPを入れた状態でアウターバッグ10A、10Bごと持ち運びする場合は、インナーバッグ1自体が有するクッション性によって、外部からの衝撃等による損傷や傷付きを防止することができる。さらに、インナーケース1をアウターバッグ10A、10Bから取り出した状態では、開口部2xを全開にすることで、収納空間2s内へサブノート型パソコンPを極めて容易に出し入れすることができる。すなわち、インナーバッグ1の使用態様を問わず、それに収納されるサブノート型パソコンPの極めて容易な出し入れを実現することが可能である。」

上記摘記事項アないしウを総合すると、甲第4号証には、次の事項(以下、「甲4事項」という。)が記載されていると認める。
<甲4事項>
「パソコン専用鞄、一般的な鞄、バックパック等のアウターバッグに収容されるインナーケースであって、外部からの衝撃や傷つきを防止するためにクッション性のある内面被覆材を有するインナーケース」

3 対比・判断
甲1考案の「箱体1」は本件考案の「箱体」に相当することはその機能、構造から明らかである。以下、同様に「蓋体2の後部2b」は「箱蓋」に、「硬質プラスチック製のスーツケース」は「硬質トランクケース」に、「第2スライドファスナー21」は「第一ファスナー」に、「蓋体2の前面部2a」は「副蓋」に、「第1スライドファスナー20」は「第二ファスナー」に、「小物収容部6」は「内袋」に、それぞれ相当する。
また、甲1考案の「収容構造」と本件考案の「PC収納構造」とは、「収納構造」という限りにおいて一致する。
さらに、甲1考案の「パスポート、手帳、ノート、本などの小物」と本件考案の「パソコン」とは、「物品」という限りにおいて一致する。

したがって、本件考案と甲1考案とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「箱体に箱蓋を備える硬質トランクケースの収納構造において、
箱蓋と箱体は、第一ファスナーを設置して開閉し、箱蓋は更に副蓋を設置し、副蓋と箱蓋には第二ファスナーを設置して開閉し、物品を置き、箱蓋と副蓋内には内袋を設置し、そこに物品を置く硬質トランクケースの収納構造。」

そして、本件考案と甲1考案とは、以下の点で相違する。
(相違点1)
本件考案は、パソコンを置く内袋を備えたPC収納構造であるのに対し、甲1考案の収容構造は物品を収容するものの、PCを収容するか不明であり、それゆえにPC収納構造であるかも不明な点。

(相違点2)
本件考案は、物品を収納する内袋において、「内袋の袋底はケース底と接触せず、内袋は位置限定壁、袋片によって構成され、前記内袋の位置限定壁、袋片は、軟性材を備え、設置したパソコンを保護する」とされるのに対し、甲1考案の小物収容部はそのようなものであるか不明な点。

(相違点3)
本件考案は、「内袋には第四ファスナーを設置し、第四ファスナーを開けることで内袋と箱蓋間の物品を取り出し」とされるのに対し、甲1考案はそのようなものでない点。

以下、相違点1ないし3について検討する。
(相違点1について)
甲2事項には、スーツケースにおいて、本体側中仕切り板のポケットにノートパソコンを収容することが記載されているところ、甲1考案における小物収容部と甲2事項における本体側中仕切り板は、トランクケースにおける
仕切り部材という共通の機能・作用を有するから、甲1考案において、小物収容部に代えて本体側中仕切り部材を設けて、パソコンを収容する程度のことは当業者がきわめて容易に想到できたものである。
そして、甲1考案において、小物収容部に代えて本体側中仕切り部材を設けたものは、PC収納構造といえる。

(相違点2について)
相違点2に係る、パソコンを置く内袋が「内袋の袋底はケース底と接触せず、前記内袋の位置限定壁、袋片は、軟性材を備え、設置したパソコンを保護する」という考案特定事項に関して、甲第1号証ないし甲第4号証に記載又は示唆がされているか否かについて順次検討する。
甲第1号証の段落【0039】には、「小物収容部6は、上下の収容袋6a,6bを備えており、それぞれ、スライドファスナー6c,6dにより開閉することができる。この小物収容部6を利用して、パスポート、手帳、ノート、本などの小物を収納することができる。」と記載されているにとどまり、パソコンを置く内袋について「内袋の位置限定壁、袋片は、軟性材を備え、設置したパソコンを保護する」ことについては記載も示唆もされていない。
次に、甲第2号証の段落【0032】には、「そしてまた、蓋板2B例えばその表裏面、本体側中仕切り板6例えばその表裏面、補助中仕切り板17例えばその表裏面の少なくとも一つに適宜な収納ポケット20を付設する
こともできる。この収納ポケット20は、その開口部を鞄本体1における上部側に向けておくことで、例えば縦開きスライドファスナー部10を開放し、その上部分位置で開放することで収納ポケット20に所定の収納物、例えばノートパソコンの如き電子機器等を出し入れできる。尚、この収納ポケット20を鞄本体1あるいは蓋枠体2A、蓋板2Bの開口部の形状、大きさに沿うものとして形成することで本体側中仕切り板6、補助中仕切り板17を代用することも可能である。」と記載されるに過ぎず、パソコンを置く内袋を「内袋の袋底はケース底と接触せず、前記内袋の位置限定壁、袋片は、軟性材を備え、設置したパソコンを保護する」ように構成することは記載も示唆もされていない。
また、甲第4号証は、アウターバッグに設置されたインナーケースについて記載されていないから、内袋を設置しているといえず、また、位置限定壁を備えるものでもないから、パソコンを置く内袋が「内袋の袋底はケース底と接触せず、前記内袋の位置限定壁、袋片は、軟性材を備え」ることまでは記載も示唆もされていない。
そうすると、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証には、パソコンを置く内袋について「内袋の袋底はケース底と接触せず」、かつ、「前記内袋の位置限定壁、袋片は、軟性材を備え」るという点を兼ね備えることについて記載も示唆もされていないといえる。
さらに、 甲第3号証は、本件登録実用新案の出願日後に頒布された刊行物であるから、周知技術を示す証拠とならないが、この点はおくとしても、相違点2に関して何ら記載も示唆もされていない。

本件考案は、本件明細書段落【0004】に記載される「仮に副袋の空間を設置してもケース底と連接しているため、パソコンを納置した時、トランクの移動時にパソコンとケース底が相互にぶつかってしまい、パソコンを保護することができない」という課題を解決するために、パソコンを置く内袋について、「内袋の袋底はケース底と接触せず」、かつ、「前記内袋の位置限定壁、袋片は、軟性材を備え」ることを兼ね備えるという特有の構成を有するものである。
一方で、甲第1号証ないし甲第4号証は、「仮に副袋の空間を設置してもケース底と連接しているため、パソコンを納置した時、トランクの移動時にパソコンとケース底が相互にぶつかってしまい、パソコンを保護することができない」という課題に着目したものでもなく、上述したように、パソコンを置く内袋について、「内袋の袋底はケース底と接触せず」、かつ、「前記内袋の位置限定壁、袋片は、軟性材を備え」ることを兼ね備えることは記載も示唆もされていない。
そうすると、甲第1号証ないし甲第4号証に、相違点2に係る構成の要素がそれぞれ別に記載されていたとしても、パソコンを置く内袋について、「内袋の袋底はケース底と接触せず」かつ、「前記内袋の位置限定壁、袋片は、軟性材を備え」ることを兼ね備えるよう構成する動機付けを有しているとはいえない。
よって、相違点2に係る考案特定事項は甲第1号証ないし甲第4号証に基づいて、当業者がきわめて容易に想到できたものである、とはいえない。

(相違点3について)
まず、本件考案の「内袋には第四ファスナーを設置し、第四ファスナーを開けることで内袋と箱蓋間の物品を取り出し」という考案特定事項について検討する。
「内袋には第四ファスナーを設置し」という記載から、内袋そのもにファスナーを設置していると認められる。また、本件明細書段落【0009】に、「内袋20と箱蓋12内には第三ファスナー23を設置し、内袋20上には第四ファスナー31を設置する。第三ファスナー23もしくは第四ファスナー31を開けて内袋20と箱蓋12間の物品を取り出す。」と記載され、第四ファスナーは内袋上に設置されたファスナーであり、第三ファスナーは内袋と箱蓋内に設置されたファスナーとして本件明細書では記載されている。
したがって、相違点3の「内袋には第四ファスナーを設置し」は考案特定事項からみても、また、考案の詳細な説明を参酌しても、「内袋と箱蓋間の物品を取り出」すための第四ファスナーを内袋そのものに設置することを特定していると認める。
次に、相違点3に係る「内袋には第四ファスナーを設置し、第四ファスナーを開けることで内袋と箱蓋間の物品を取り出し」という考案特定事項に関して、甲第1号証ないし甲第4号証に記載又は示唆がされているか否か順次検討する。
甲第1号証には、段落【0039】(摘記事項オ)に「小物収容部6は、上下の収容袋6a,6bを備えており、それぞれ、スライドファスナー6c,6dにより開閉することができる」と記載されるように、甲第1号証には小物収容部にファスナーを備えることが記載されているが、当該ファスナーは小物収容部の袋を開閉するためのファスナーであることから明らかなように、「小物収容部」内の物品を取り出すためのものであって、「内袋と箱蓋間の物品を取り出」すためのものではない。
したがって、甲第1号証は「内袋には第四ファスナーを設置し、第四ファスナーを開けることで内袋と箱蓋間の物品を取り出し」という考案特定事項に関して、記載又は示唆をするものではない。
次に、甲第2号証には、段落【0028】(摘記事項ウ)に、「本体側中仕切り板6は、鞄本体1における開口部、すなわち鞄本体1と蓋枠体2Aとの境界部分である鞄本体1における開口部縁に配置されていて、この開口部縁に沿っている仕切りスライドファスナー部7によって、例えば鞄本体1の底部側に設けた仕切り折曲部8を支点として揺動自在に開閉されるようになっている。こうすることで、鞄本体1を立てた態様のときには、縦開きファスナー部10の開放と共に仕切スライドファスナー部7を縦方向に開放することによって、鞄本体1内部の収納物を出し入れできるようにしている(図2参照)。」と記載されるように、甲第2号証の本体側中仕切り板6はその縁にスライドファスナーを有するものにおいて、開放により鞄本体1内部の収納物を出し入れできることが記載されるにとどまり、ファスナー7をポケット20に設置することを開示するものではなく、「内袋と箱蓋間の物品を取り出」すためのものではない。
したがって、甲第2号証は「内袋には第四ファスナーを設置し、第四ファスナーを開けることで内袋と箱蓋間の物品を取り出し」という考案特定事項に関して、記載又は示唆するものではない。
また、甲第3号証には、段落【0035】(摘記事項イ)に、「上記カバー部材24は、全体略直方体形状に形成され、一方の箱状ハーフ17aに対して下端部25に設けられた回動軸部26を介して取り付けられると共に、開口部23周縁に設けられたファスナー部14により開閉可能に設けられ、上記布部材の互いに対抗する幅方向縁部27、27と上記カバー部材24との間には、上記カバー部材24を開放する際にストッパーとして機能する一対のマチ部28、28が設けられている。」と記載され、段落【0036】に、「上記一対のマチ部28、28は、側面略逆三角形状に形成され、中間部29、29にカバー部材24の長さ方向に沿って設けられた長方形状の面ファスナー42、42により分離可能に形成されていると共に、布部材15の副収納部12側には、上方に開口する長方形状のポケット部30が設けられている。 」と記載されるように、布部材15の周縁にファスナーを備えるものが記載されるにとどまり、ファスナーを布部材のポケット部30に備えるものは記載されていない。
したがって、甲第3号証は「内袋には第四ファスナーを設置し、第四ファスナーを開けることで内袋と箱蓋間の物品を取り出し」という考案特定事項に関して、記載又は示唆するものではない。
さらに、甲第4号証は、アウターバッグに設置されたインナーケースについて記載されていないから、内袋を設置しているといえず、「内袋には第四ファスナーを設置し、第四ファスナーを開けることで内袋と箱蓋間の物品を取り出し」について記載も示唆もされていない。
そうすると、甲第1号証ないし甲第4号証には、内袋について、「内袋には第四ファスナーを設置し、第四ファスナーを開けることで内袋と箱蓋間の物品を取り出し」という構成は記載も示唆もされていない。
い。
したがって、相違点3に係る考案特定事項は甲第1号証ないし甲第4号証に基づいて、当業者がきわめて容易に想到できたものである、とはいえない。

<<請求人の主張>>について
請求人は次の(1)(2)のとおり主張している。
(1)審判請求書第15頁第1行?第16行
本件請求項1の構成要件のうち、D4「第四ファスナーを開けることで内袋と箱蓋間の物品を取り出し」、は、・・・・甲第2号証の段落【0028】「・・・鞄本体1、蓋体2それぞれの内部には、これらの内部を区画し、仕切る本体側中仕切り板6、補助中仕切り板17が開閉自在にして配されている。本体側中仕切り板6は、鞄本体1における開口部、すなわち鞄本体1と蓋枠体2Aとの境界部分である鞄本体1における開口部縁に配置されていて、この開口部縁に沿っている仕切りスライドファスナー部7によって、例えば鞄本体1の底部側に設けた仕切り折曲部8を支点として揺動自在に開閉されるようになっている。こうすることで、鞄本体1を立てた態様のときには、縦開きファスナー部10の開放と共に仕切スライドファスナー部7を縦方向に開放することによって、鞄本体1内部の収納物を出し入れできるようにしている(図2参照)。」及び同段落番号【0030】「補助中仕切り板17は、蓋板2B内部と区画し、蓋枠体2A内部あるいは蓋板2B内部を開閉自在にするよう、着脱自在なベルト、フック等の吊り具18を介して蓋枠体2Aにおける蓋板2B側の開口部に配置されていて、この補助中仕切り板17によって、蓋板2B内部と蓋枠体2A内部とを区画できるようにしてある。吊り具18は、補助中仕切り板17の上部のみに設けて蓋枠体2A開口縁に連繋させることで、補助中仕切り板17が下部側を支点として揺動式に開閉されるようにしても良い。また、図示を省略したが、この
補助中仕切り板17を、これの上下部それぞれに吊り具18を設けて蓋枠体2Aの開口縁に着脱可能となるようにしても良い。」に相当する。
主張(1)について検討すると、上記したとおり、相違点3の「内袋には第四ファスナーを設置し」は考案特定事項からみても、また、考案の詳細な説明を参酌しても、第四ファスナーを内袋そのものに設置することを特定していると認める。
一方で、甲第2号証の本体側中仕切り板6はその縁にスライドファスナーを有するものにおいて、開放により鞄本体1内部の収納物を出し入れできることが記載されるにとどまり、「内袋と箱蓋間の物品を取り出」すために、ファスナー7をポケット20に設置することを開示するものではない。
したがって、甲第2号証には、相違点3に係る第四ファスナーに相当する構成が開示されていないのだから、請求人の主張はその前提において理由がない。

(2)審判請求書第14頁第4行?第27行
本件登録実用新案の出願日前に出願された甲第3号証の段落【0030】及び【0040】に記載されるように、スーツケース(トランクケース)の内部を仕切る機能を有し、ポケット30が取り付けられた布部材15にはファスナー部14が取り付けられ、ファスナー部14を開けることにより、布部材15の前後の収容物を取り出すことができる構成は、本件実用新案権出願時、当業者において周知であった。
主張(2)について検討すると、上記したとおり、相違点3の「内袋には第四ファスナーを設置し」は考案特定事項からみても、また、考案の詳細な説明を参酌しても、第四ファスナーを内袋そのものに設置することを特定していると認める。
一方、甲第3号証は、布部材15の周縁にファスナーを備えるものが記載されるにとどまり、「内袋と箱蓋間の物品を取り出」すために、ファスナーを布部材のポケット部30に備えることを開示するものでない。
したがって、甲第3号証には、相違点3に係る第四ファスナーに相当する構成が開示されていないのだから、請求人の主張はその前提において理由がない。

4 小括
相違点2及び相違点3に係る本件考案は、甲第1号証ないし甲第4号証に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものである、とはいえない。


第5 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件考案についての実用新案登録を無効とすることはできない。 請求項1,3,4に係る無効審判の請求は却下する。
審判に関する費用については、実用新案法第41条において準用する特許法第169条第2項の規定でされに準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2016-10-31 
結審通知日 2016-11-04 
審決日 2016-11-15 
出願番号 実願2012-7757(U2012-7757) 
審決分類 U 1 114・ 121- Y (A45C)
最終処分 不成立    
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 宮下 浩次
熊倉 強
登録日 2013-02-13 
登録番号 実用新案登録第3182083号(U3182083) 
考案の名称 硬質トランクケースのPC収納構造  
代理人 山口 朔生  
代理人 下田 容一郎  
代理人 下田 憲雅  
代理人 奈良 如紘  
代理人 野崎 俊剛  

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