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審決分類 審判    A47B
審判    A47B
管理番号 1324910
審判番号 無効2016-400004  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-06-02 
確定日 2017-01-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第3149851号実用新案「チェスト」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第3149851号の請求項1ないし5に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
第1 手続の経緯
平成18年 2月 8日:原出願(特願2006-31011号)
平成21年 2月 4日:本件出願(実願2009-486号)
(実用新案登録出願に変更)
平成21年 3月25日:設定登録(実用新案登録第3149851号)
平成27年 5月 1日:実用新案技術評価請求
平成27年 6月12日:実用新案技術評価書(作成日)
平成28年 6月 2日:本件審判請求
平成28年 7月12日:被請求人より審判事件答弁書提出
平成28年 8月 2日:審理事項通知書(起案日)
平成28年 8月17日:請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成28年 8月30日:被請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成28年 9月15日:口頭審理
審理終結(第1回口頭審理調書参照)


第2 本件登録実用新案について
本件実用新案登録の請求項1ないし5に係る考案は、実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下、それぞれ「本件考案1」ないし「本件考案5」という。)

「【請求項1】
引出を出し入れ自在に収容するフレームに、前記引出より側方に突出した被案内部をガイドするガイド部が設けられたチェストにおいて、
前記フレームに内側へ向けて延出する前記ガイド部を形成するとともに、前記ガイド部に、当該ガイド部の延出方向と交差した交差方向に突出するリブを設けたことを特徴とするチェスト。
【請求項2】
前記リブを、前記ガイド部の上面又は下面のいずれか一方に形成したことを特徴とする請求項1記載のチェスト。
【請求項3】
前記フレームは、前記ガイド部に対向する対向部を備え、
該対向部と対向する前記ガイド部の対向面と逆側に位置する面に前記リブを設けたことを特徴とする請求項2記載のチェスト。
【請求項4】
前記対向部を、前記フレームの底面で構成し、前記リブを、前記ガイド部の上面に設定したことを特徴とする請求項3記載のチェスト。
【請求項5】
前記リブを前記ガイド部の先端に設けたことを特徴とする請求項1から4にいずれか記載のチェスト。」


第3 当事者の主張
1 請求人の主張及び提出した証拠の概要
請求人は、実用新案登録第3149851号の実用新案登録請求の範囲の請求項1?5に係る考案についての実用新案登録を無効にする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書、平成28年8月17日付け口頭審理陳述要領書を提出するとともに、証拠方法として、甲第1ないし5号証を提示し、以下の無効理由を主張した。

<主張の概要>
(1) 無効理由1
本件実用新案登録の請求項1ないし5に係る考案は、甲第3号証に記載された考案であるから、実用新案法第3条第1項第3号に該当し実用新案登録を受けることができないものであり、同法第37条第1項第2号に該当し、その実用新案登録は無効とすべきである。

(2) 無効理由2
本件実用新案登録の請求項1ないし5に係る考案は、甲第3号証に記載された考案に基づいて、若しくは甲第3号証に記載された考案及び周知技術(例えば甲第4号証記載の考案、甲第5号証記載の考案)に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、同法第37条第1項第2号に該当し、その実用新案登録は無効とすべきである。

<具体的理由>
(3) 本件考案1ないし5の分説について
審判請求書12頁15行?13頁9行
「 本件請求項1記載の考案?本件請求項5記載の考案を夫々構成要件ごとに分説すれば次のとおりとなる。
[本件請求項1記載の考案]
A 引出を出し入れ自在に収容するフレームに、前記引出の側面より側方に突出した被案内部をガイドするガイド部が設けられたチェストにおいて、
B 前記フレームに内側へ向けて延出する前記ガイド部を形成するとともに、
C 前記ガイド部に、当該ガイド部の延出方向と交差した交差方向に突出するリブを設けたことを特徴とするチェスト。
[本件請求項2記載の考案]
D 前記リブを、前記ガイド部の上面又は下面のいずれか一方に形成したことを特徴とする請求項1記載のチェスト。
[本件請求項3記載の考案]
E 前記フレームは、前記ガイド部に対向する対向部を備え、
F 該対向部と対向する前記ガイド部の対向面と逆側に位置する面に前記リブを設けたことを特徴とする請求項2記載のチェスト。
[本件請求項4記載の考案]
G 前記対向部を、前記フレームの底面で構成し、
H 前記リブを、前記ガイド部の上面に設定したことを特徴とする請求項3記載のチェスト。
[本件請求項5記載の考案]
I 前記リブを前記ガイド部の先端に設けたことを特徴とする請求項1から4にいずれか記載のチェスト。」

(4) 本件考案1について
ア 無効理由1について
(ア) 審判請求書16頁15?28行
「また、甲第3号証の図3、図4には、フレーム側レールを構成する上方ガイド部に、この上方ガイド部の延出方向(内方)と交差した交差方向(上方)に突出するリブが図示されている。
すなわち、この甲3考案の一実施の形態の要部を示す一部断面図である図3には、フレーム構成部材21における前後の支柱33間に形成された下部側壁部61に、内側へ向けて延出する上方ガイド部が形成されており、また、この上方ガイド部62の先端の上面に上方に突出する、言い換えると、この上方ガイド部62の延出方向と交差する交差方向に突出する突出部材が設けられていることが明確に図示されている。また、甲第3号証の図4には、図3における上方ガイド部62の先端に上方に突出する突出部材が、この上方ガイド部62の長さ方向に延設されていることが明確に図示されており、この図3、図4に基づけば、この甲第3号証の図3に図示されている上方ガイド部に設けられている突出部材は、リブであることは明らかである。」

イ 無効理由2について
(ア) 審判請求書21頁13行?22頁6行
「また、甲第3号証には、本件請求項1記載の考案のガイド部に相当するフレーム側レール(上方ガイド部)にリブを設けたことは記載されていないが、この甲第3号証の図面中(図3,図4)には、フレーム側レールを構成する上方ガイド部にリブが設けられていることが図示されている。
すなわち、甲第3号証の図3(実施の形態の要部を示す一部断面図)には、上方ガイド部が、フレーム部材に内側へ向けて突出形成される板状の水平部材の先端に上方に向けて突出部が設けられたL字状に形成されている構成であることが図示(開示)されており、また、図4(実施の形態のフレームを示す断面図)には、図3中に図示されている前記突出部が、前記水平部材に部分的に設けられている突起ではなく、前記水平部材の長さ方向全体に亘って設けられている凸条部であることが図示(開示)されている。この図3,図4から、甲第3号証の図面中に図示(開示)されている上方ガイド部は、その長さ方向に亘ってリブが設けられたL字状に形成された構成であると解することができる。
これより、この甲第3号証には、『フレーム構成部材に内側へ向けて突出する板状の水平部材を形成するとともに、前記水平部材の突出方向と交差(直交)した交差方向(上方)に突出するリブを設けた構成』が開示されていると解され、この構成はまさに、本件請求項1記載の考案の構成Cの『フレームに内側へ向けて延出するガイド部を形成するとともに、前記ガイド部に、当該ガイド部の延出方向と交差した交差方向に突出するリブを設けた構成』に相当する。」

(イ) 審判請求書23頁7?11行
「また、ローラーを支持するレールなどのガイド部にリブを設けてこのガイド部を補強することは、この甲第3号証の他、例えば実願昭60-159645号(実開昭62-69793号)のマイクロフィルム(甲第4号証)や特開平9-70322号公報(甲第5号証)に示されるように周知技術に過ぎない。」

(5)本件考案2ないし5について
ア 無効理由1について
(ア) 審判請求書 17頁26行?18頁3行
「本件請求項2記載の考案と甲第3号証に記された考案とを対比すると、・・・上述したように、甲第3号証の図3に図示されている上方ガイド部の先端に設けられた突出部材がリブであることは明らかであり、この図3には、このリブが上方ガイド部の上面に形成されていることが明確に図示されている。」

(イ) 審判請求書18頁8?21行
「本件請求項3記載の考案と甲3考案とを対比すると、・・・甲第3号証の段落番号[0022]の「フレーム構成部材21には、前記上方ガイド部62と、該上方ガイド部62に対向した前記底板部32の対向部位が構成する下方ガイド部63とによって、前記フレーム側レール51が構成されている。」との記載及び図3,図4から、本件請求項3記載の考案の構成Eにおける『対向部』は、甲3考案の『下方ガイド部』に相当するものである。そして、図3から、本件請求項3記載の考案の構成Fに相当する構成、すなわち、上方ガイド部に設けられている『リブ』は、この『対向部』に相当する『下方ガイド部』と対向する『上方ガイド部』の対向面と逆側に位置する面に設けられている構成であることが明確に記載(図示)されている。」

(ウ) 審判請求書18頁26行?19頁8行
「 本件請求項4記載の考案と甲3考案とを対比すると、・・・甲第3号証の段落番号[0022]の「フレーム構成部材21には、前記上方ガイド部62と、該上方ガイド部62に対向した前記底板部32の対向部位が構成する下方ガイド部63とによって、前記フレーム側レール51が構成されている。」との記載から、本件請求項4記載の考案の構成Gの対向部も、甲3考案の前記対向部に相当する下方ガイド部も、いずれもフレームの底面で構成されていると解する。さらに、図3から、本件請求項4記載の考案の構成Hにおける『リブ』は、『上方ガイド部』の上面に設けられている構成であることが明確に記載(図示)されている。」

(エ) 審判請求書19頁13?16行
「本件請求項5記載の考案と甲3考案とを対比すると、・・・甲第3号証の図3には、上方ガイド部の先端にリブが設けられている構成であることが明確に記載(図示)されている。」

イ 無効理由2について
(ア) 審判請求書24頁22行?25頁1行
「本件請求項2記載の考案と先行技術との対比
・・・さらに、周知技術として引用した甲第4号証には、ガイドレールの下面にリブが形成されていることが図示(第1図)されており、また、甲第5号証には、水平レール部の上面にリブ(突条部)が形成されていることが図示(図3)されており、この図示されている構成は、まさに本件請求項2記載の考案の構成Dの『リブをガイド部の上面又は下面のいずれか一方に形成した』構成に相当する。」

(イ) 審判請求書26頁17?22行
「本件請求項5記載の考案と先行技術考案との対比
・・・リブをガイド部の先端に設ける構成は、周知技術として引用した甲第4号証にも開示されている。」

[証拠方法]
甲第1号証:実用新案登録第3149851号の原簿(本件実用新案登録の原簿)
甲第2号証:登録実用新案第3149851号公報(本件登録実用新案公報)
甲第3号証:登録実用新案第3118068号公報
甲第4号証:実願昭60-159645号(実開昭62-69793号)のマイクロフィルム
甲第5号証:特開平9-70322号公報

なお、審判請求書とともに提出された甲第6ないし8号証については、請求人が甲第3号証及び甲第2号証に基づき説明用に作成した図面であるため、審判請求書に添付の参考資料とした(第1回口頭審理調書参照)。

2 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、平成28年7月12日付け審判事件答弁書、平成28年8月30日付け口頭審理陳述要領書を提出し、以下の反論を行った。

[無効理由に対する反論]
(1)本件考案1について
ア 無効理由1について
(ア) 審判事件答弁書6頁25行?7頁8行
「すなわち、甲3の明細書にはリブの存在は何の記載もない上に、上方ガイド部の強度を何らかの方法で補強又は強化することについても示唆すらない以上、甲3を見てもリブの存在について何ら開示がされていない。確かに図3を見ると(以下に引用)、上方ガイド部62がL字形状のように見えなくもない。しかし、これを見ただけでは「上方ガイド部を補強するためのリブ」と読み取ることは困難であり、そもそも、甲3の図3のみをもって、構成Cに相当するリブの構成が開示されていると言えない以上、いくら甲3の明細書の図を拡大し、本件考案の明細書の図と対比させたとしても、無から有をつくりだすことはできないのであり、請求人の主張は、本件考案の構成たるリブを最初から念頭に置いた上で、甲3からそれらしい部分を探し出し、構成が開示されていると、「後付」の主張をしていると言わざるを得ない。」

(イ) 口頭審理陳述要領書7頁23行?8頁23行
「この点、「前記ガイド部」について説明されている甲3の明細書の段落【0021】【0022】を見るならば、・・・と記載されているのみで、これらガイド部と交差した交差方向に突出するリブの設置については、何ら開示も示唆もされていない。・・・確かに図3を見ると、上方ガイド部62がL字形状のように見えなくもない。しかし、これを見ただけでは「上方ガイド部を補強するためのリブ」と読み取ることは困難であり、そもそも、甲3の図3のみをもって、構成Cに相当するリブの構成が開示されているといえない以上、いくら甲3の明細書の図を拡大し、本件考案の明細書の図と対比させたとしても、無から有を作り出すことはできないのであり、請求人の主張は、本件考案の構成たるリブを最初から念頭に置いた上で、甲3からそれらしい部分を探し出し、構成が開示されていると、「後付」の主張をしていると言わざるを得ない。」

イ 無効理由2について
(ア) 審判事件答弁書12頁20行?13頁2行
「・・・請求人の主張は、本件考案の構成たるリブを最初から念頭に置いた上で、甲3の図からそれらしい部分を探し出し、わざわざ拡大をしなければ説明をすることのできないリブの記載のみをもって、後付で、「当業者がきわめて容易に考案をすることができる」と述べるに等しいものであり、このような安易な容易想到性の主張は近年の知財高裁の裁判例 において戒められているところであり、請求人の、このような主張には理由がない。」

(イ) 審判事件答弁書13頁11行?15頁1行
「・・・甲4については、リブについての開示も示唆もない。確かに甲4の図1の補助ガイドレール10はL字型になっており、リブのように見えなくもない・・・しかし、この補助ガイドレール10のL字形状は、強度の増加のためのリブではなく、ローラーの持上り防止とガタ付を防止するためであることが明示されている(甲4の5頁の1段落目)。・・・さらに、甲4の電気冷蔵庫の引例の産業上の利用分野は「引出し式の食品収納容器を有する電気冷蔵庫に関するもの」であり、その目的は、「扉体を冷蔵庫の筐体から完全に外すことなく、その枠体に対して野菜等の食品収納容器を着脱し得るようにした電気冷蔵庫を提供することにある。」・・・甲4の電気冷蔵庫と、本件考案のチェストでは、技術的分野が全く異なり、当然ながら、構成する素材が全く異なり、解決するべき課題も全く異なる。」

(ウ) 審判事件答弁書15頁11行?16頁8行
「・・・甲5にはリブが開示されていることは事実である。しかしながら、甲5のリブは、製品全体における位置関係、リブの目的と効果は、本件実用考案におけるリブとは全く異なる。・・・このリブの機能は、「側壁15への剛性を付与することが可能となり、天板16に荷重が加えられたときでも初期の形状を安定して保持することとなり、ひいては、裏板18の脱落要因を効果的に回避する」ことにあるとされている・・・他方、本件考案の構成たるリブにおいては・・・甲5のようなガイド部を兼ねているものではなく、ガイド部から突出している。そしてこのリブの機能は、甲5のような「側壁15への剛性を付与する」といったことはなく、ガイド部の補強にとどまる(甲2の明細書段落【0012】)。この違いは、甲5においては、補強用リブとしての作用も奏するガイド部に引出が乗るという発明の構成に由来するのに対し、本件考案においては、ガイド部に引出が乗ることはなく、被案内部をガイドという機能(請求項1等)にとどまることに由来する。」

(エ) 口頭審理陳述要領書11頁22行?12頁8行
「さらに、本件考案は、フレームに別部材からなるフレーム側レールを取り付ける必要があるとの課題を解決するために、フレームに内側へ向けて延出するガイド部を形成するとともに、前記ガイド部に、当該ガイド部の延出方向と交差した交差方向に突出するリブを設けた(本件考案(甲2)の明細書【0007】から【0012】)ものであるところ、ガイド部がフレームと別体ではなく一体で形成されるゆえ、ガイド部を補強する必要が生じるのであり、ガイド部とフレームが一体で形成されることが、本件考案におけるリブを設けるという技術的発想の出発点であるといえる。
他方、甲4の考案は、「上記ガイドレールはネジ等の取付手段を介して上記食品貯蔵室の側壁に固定されることを特徴とする」(明細書2(2))とされ、ガイドレールと食品貯蔵室が一体で形成されることが要件とはされていない。そうだとすると、甲4の考案においては、そもそもガイドレールを補強するという発想がないのである。そのため、甲4においては、強度に関する記述は一切ないのである。」

(2)本件考案2ないし5について
ア 無効理由1について
(ア) 審判事件答弁書8頁5?9行
「・・・甲3の図3及び図4をもって、リブの設置について甲3に開示があったとは到底言えず、請求人の主張には理由がない。・・・したがって、請求人の、本件考案の請求項2(構成D)について、甲3において、開示がなされており、新規性の欠如の無効理由があるという主張には理由がない。」

(イ) 審判事件答弁書8頁20?26行
「・・・甲3の図3及び図4をもって、リブの設置について甲3に開示があったとは到底言えず、請求人の主張は「後付」であり、理由がない。・・・したがって、請求人の、本件考案の請求項3(構成E,F)について、甲3において、開示がなされており、新規性の欠如の無効理由があるという主張には理由がない。」

(ウ) 審判事件答弁書9頁10?16行
「・・・甲3の図3及び図4をもって、リブの設置について甲3に開示があったとは到底言えず、請求人の主張は「後付」であり、理由がない。・・・したがって、請求人の、本件考案の請求項4(構成G,H)について、甲3において、開示がなされており、新規性の欠如の無効理由があるという主張には理由がない。」

(エ) 審判事件答弁書9頁22?26行
「・・・甲3の図3をもって、リブの設置についての甲3に開示があったとは到底言えず、請求人の主張は「後付」であり、理由がない。・・・したがって、請求人の、本件考案の請求項5(構成I)について、甲3において、開示がなされており、新規性の欠如の無効理由があるという主張には理由がない。」

イ 無効理由2について
(ア) 口頭審理陳述要領書13頁12?15行
「・・・よって、本件考案の請求項2から5の構成D、F、H及びIについて、請求人の、甲3の図3、図4、図6、甲4、甲5を根拠として、周知技術であり、容易想到性を有するという主張には、理由がない。」

第4 当審の判断
1 各甲号証の記載事項
(1)甲第3号証
本件出願の遡及日前(以下「本件出願前」という。)に頒布された刊行物である甲第3号証には、次の事項が記載されている。


「【書類名】実用新案登録請求の範囲
【請求項1】
引出を出し入れ自在に収容するフレームに、前記引出を支持する支持部が設けられたチェストにおいて、
前記支持部を、前記フレームと別部材からなるベース部材と、該ベース部材に回転自在に設けられたローラーとで構成する一方、
前記フレームに、前記ベース部材を差し込んで固定する取付部を設けるとともに、該取付部への前記ベース部材の抜き差し方向を、前記フレームを形成する金型の移動方向に設定したことを特徴とするチェスト」


「【考案を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本考案の一実施の形態を図に従って説明する。図1は、本実施の形態にかかるチェスト1を示す図であり、該チェスト1は、衣類や小物などを収納するものである。
【0017】
このチェスト1は、図2にも示すように、フレーム11を形成するチェスト本体12と、該チェスト本体12に設けられた矩形容器状の引出13,13とによって構成されている。
【0018】
前記チェスト本体12を形成する前記フレーム11は、上下に連結された二つ合成樹脂製のフレーム構成部材21,21によって構成されており、下段のフレーム構成部材21の底面22裏側には、キャスター23,・・・が四隅に設けられている。上段のフレーム構成部材21には、合成樹脂製の天板24が設けられており、両フレーム構成部材21,21間及び上段のフレーム構成部材21と前記天板24間には、合成樹脂製の前記引出13,13が引き出し自在に保持されている。
【0019】
前記フレーム構成部材21は、図3及び図4に示すように、中央部に矩形開口部31が形成された長方形状の底板部32と、該底板部32の四隅に一体形成された支柱33,・・・とによって構成されており、当該フレーム構成部材は、前記支柱33,・・・の長さ方向に型開きされる金型によって形成されている。」


「【0021】
前記フレーム構成部材21における前後の支柱33,33間には、図4にも示すように、フレーム側レール51が設けられている。
【0022】
すなわち、両支柱33,33間には、下部側壁面61が両支柱33,33の下部に一体形成されており、該下部側壁面61には、内側へ向けて突出した上方ガイド部62が当該フレーム構成部材21の前記底板部32の底面22に沿って形成されている。・・・これにより、当該フレーム構成部材21には、前記上方ガイド部62と、該上方ガイド部62に対向した前記底板部32の対向部位が構成する下方ガイド部63とによって、前記フレーム側レール51が構成されている。」


「【0031】
これにより、図12に示すように、前記引出13より側方に突出した前記引出側ローラー125は、前記フレーム構成部材21に設けられた前記フレーム側レール51に案内される一方、前記フレーム構成部材21に設けられたフレーム側ローラー92は、前記引出13に設けられた前記引出側レール111に案内されるように構成されている。
【0032】
そして、前記フレーム11から前記引出13を引き出す際には、前記フレーム構成部材21に設けられた前記フレーム側ローラー92が前記引出13に設けられた前記引出側レール111の前記天面部122を支持する一方、前記引出13が当該引出13の荷重によって前のめりになった際には、該引出13に設けられた前記引出側ローラー125が前記フレーム構成部材21に形成された前記フレーム側レール51の前記上方ガイド部62に支持されるように構成されている(図示省略)。さらに、前記引出13を引き出した際には、図13に示すように、前記引出側ローラー125が前記フレーム側レール51から離脱することによって、当該引出13をチェスト本体12から取り出せるように構成されている。」


「【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本考案の一実施の形態の正面を示す一部断面図である。
【図2】同実施の形態の側面図である。
【図3】同実施の形態の要部を示す一部断面図である。
【図4】同実施の形態のフレームを示す断面図である。」

カ 「正面を示す図」である図1、「側面図」である図2と対比して、図3が正面から見た一部断面図、図4が側面から見た断面図であることは明らかである。そして図3より、上方ガイド部62の、フレーム構成部材21よりチェスト内側へ突出する方向の先端に、該突出方向と直角に上面側へ突出する板状の部分があることがわかる。また、上面側に突出する板状の部分を除く上方ガイド部も板状を成している。
また図3においては、上記上面側に突出する板状の部分を除いた上方ガイド部62の上下方向の厚さと、下方ガイド部63の上下方向の厚さに格別の違いはないのに対し、側面図である図4においては、上方ガイド部62は、チェストの前後方向(図4の「F」-「R」方向)全長に渡り一様に、下方ガイド部63より明らかに上下方向に厚く図示されている。よって、上方ガイド部62の上記上面側に突出する板状の部分も図4に図示されており、かつ該上面側に突出する板状の部分は上方ガイド部の前後方向(図4の「F」-「R」方向)全長に渡り一様の上下方向長さで形成されていることが見て取れる。

図3


図4


キ 上記アないしカからみて、甲第3号証には、次の考案(以下「甲3考案」という。)が記載されているものと認める。
「引出13を出し入れ自在に収容するフレーム11に、前記引出13より側方に突出した引出側ローラー125を案内する上方ガイド部62が設けられたチェスト1であって、
フレーム構成部材21の下部側壁面61より内側へ向けて板状の上方ガイド部62を突出させ、
前記上方ガイド部62の前記下部側壁面61より内側へ向けて突出する方向の先端には、前記下部側壁面61より突出する方向と直角に上面側へ突出する板状の部分があり、前記上面側に突出する板状の部分は前記上方ガイド部62の前後方向全長に渡り一様の上下方向長さで形成され、
前記上方ガイド部62に対向したフレーム構成部材21の底板部32の対向部位が構成する下方ガイド部63を備える、
チェスト1。」


(2)甲第4号証
本件出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には、図面とともに次の事項が記載されている。


「[産業上の利用分野]
この考案は電気冷蔵庫に関し、さらに詳しく言えば、引出し式の食品収納容器を有する電気冷蔵庫に関するものである。」(明細書2頁8?11行)


「また、側壁2側には、ガイドレール3上を転動するローラとの持上がりとガタ付き等を防止するためのL字形部材からなる補助レール10が設けられている。」(同5頁2?5行)

(3)甲第5号証
本件出願前に頒布された刊行物である甲第5号証には、図面とともに次の事項が記載されている。


「【特許請求の範囲】
【請求項1】 後端に裏板を備え手前側に開口部が設けられたケース本体と、このケース本体の内側に配置されるガイドレールに沿って出し入れ可能に設けられた引き出しとを有する収納ケースにおいて、前記ケース本体とガイドレールとを樹脂材料で一体成形したことを特徴とする収納ケース。」


「【0009】前記収納ケースにおいて、ガイドレールは水平レール部と、この水平レール部の上面側に形成された突条部とを備えて構成することが好ましい。かかるレール形状を採用することによってガイドレール自体の剛性も高められ、前述の剛性をより一層増大させることができる。」

2 無効理由1について
(1)本件考案1について
ア 対比
本件考案1と甲3考案(上記1(1)キを参照。)を対比する。
(ア)甲3考案の「引出13より側方に突出した引出側ローラー125を案内する上方ガイド部62が設けられたチェスト1」は、本件考案1の「引出より側方に突出した被案内部をガイドするガイド部が設けられたチェスト」に相当する。
また、甲3考案の「フレーム構成部材21の下部側壁面61より内側へ向けて板状の上方ガイド部62を突出させ」ることは、本件考案1の「フレームに内側へ向けて延出するガイド部を形成する」ことに相当する。

(イ)甲3考案の「前記上方ガイド部62の前記下部側壁面61より内側へ向けて突出する方向の先端には、前記下部側壁面61より突出する方向と直角に上面側へ突出する板状の部分があり、前記上面側に突出する板状の部分は前記上方ガイド部62の前後方向全長に渡り一様の上下方向長さで形成され」ることと、本件考案1の「前記ガイド部に、当該ガイド部の延出方向と交差した交差方向に突出するリブを設けた」ことにおいて、甲3考案の「下部側壁面61より突出する方向と直角」という方向は、本件考案1の「当該ガイド部の延出方向と交差した交差方向」と同じ方向であることは明らかなので、両者は「ガイド部に、当該ガイド部の延出方向と交差した交差方向に突出する部分を設けた」点で共通している。

(ウ)以上(ア)及び(イ)から、本件考案1と甲3考案とは、
「引出を出し入れ自在に収容するフレームに、前記引出より側方に突出した被案内部をガイドするガイド部が設けられたチェストにおいて、
前記フレームに内側へ向けて延出する前記ガイド部を形成するとともに、前記ガイド部に、当該ガイド部の延出方向と交差した交差方向に突出する部分を設けた、チェスト」で一致し、そして次の点で相違している。

<相違点>
ガイド部に設けた、当該ガイド部の延出方向と交差した交差方向に突出する部分について、本件考案1ではリブであるのに対し、甲3考案ではリブかどうか明らかではない点。

イ 判断
本件明細書には、「ガイド部は、前記リブによって補強される。」(段落[0012])、「このリブによって前記ガイド部を補強することができる。」(段落[0027])と記載されていることから、「リブ」はガイド部を補強する機能を有する(作用効果を奏する)ものといえる。そして、本件考案1と甲3考案とは、ガイド部に、当該ガイド部の延出方向と交差した交差方向に突出する部分を設けた構造としては同じであるから、甲3考案の「上面側に突出する板状の部分」も本件考案1の「リブ」と同様にガイド部を補強する作用効果を奏するといえる。すなわち、板状の部材(ガイド部)の板平面に対し直角に突出する板状の部分を設けたならば、設けない場合に比べ補強となることは明らかである。
加えていうと、例えば三省堂大辞林で「リブ・・・板の変形防止のために平面に直角にとりつける補強材。」と説明されるように、板状の部材に対して直角に板状の部分を突出して形成し補強する構造を「リブ」ということは技術常識である。
よって、上記相違点は実質的な相違点ではない。

以上のことから、本件考案1は甲3考案と同一であり、本件考案1は甲第3号証に記載された考案である。

ウ 被請求人の主張について
被請求人は、上記第3の2(1)に摘記したように、「確かに図3を見ると、上方ガイド部62がL字形状のように見えなくもない。しかし、これを見ただけでは「上方ガイド部を補強するためのリブ」と読み取ることは困難」である旨を主張している。
しかしながら、上記イで検討したように、ガイド部に当該ガイド部の延出方向と交差した交差方向に突出する部分を設ければ明らかに上方ガイド部は補強され、またそのように板状の部材に対して直角に板状の部分を突出して形成し補強を成す構造をリブというのであるから、上記主張は採用できない。

(2)本件考案2について
ア 対比
上記(1)の検討結果を踏まえ、本件考案2と甲3考案とを対比すると、上記(1)アで述べた対比に加え、甲3考案の「前記上方ガイド部の前記下部側壁面より内側へ向けて突出する方向の先端には、前記下部側壁面より突出する方向と直角に上面側へ突出する板状の部分があり、前記上面側に突出する板状の部分は前記上方ガイド部の前後方向全長に渡り一様の上下方向長さで形成されている」ことは、本件考案2の「前記リブを、前記ガイド部の上面又は下面のいずれか一方に形成したこと」に相当する。
よって、本件考案2と甲3考案との間に、新たな相違点はない。

イ 判断
以上のことから、本件考案2は甲3考案と同一であり、本件考案2は甲第3号証に記載された考案である。

(3)本件考案3について
ア 対比
上記(1)および(2)の検討結果を踏まえ、本件考案3と甲3考案とを対比すると、上記(1)アおよび(2)アで述べた対比に加え、甲3考案の「前記上方ガイド部に対向したフレーム構成部材の底板部の対向部位が構成する下方ガイド部を備える」ことは、本件考案3の「前記フレームは、前記ガイド部に対向する対向部を備え」ることに相当する。また、甲3考案の「前記下部側壁面より突出する方向と直角に上面側へ突出する板状の部分」における「上面側」はフレームの底側に位置する「底板部」と逆側であるのは明らかなので、甲3考案の「前記上方ガイド部の前記下部側壁面より内側へ向けて突出する方向の先端には、前記下部側壁面より突出する方向と直角に上面側へ突出する板状の部分」は、本件考案3の「該対向部と対向する前記ガイド部の対向面と逆側に位置する面に前記リブを設けたこと」に相当する。
よって、本件考案3と甲3考案との間に、新たな相違点はない。

イ 判断
以上のことから、本件考案3は甲3考案と同一であり、本件考案3は甲第3号証に記載された考案である。

(4)本件考案4について
ア 対比
上記(1)ないし(3)の検討結果を踏まえ、本件考案4と甲3考案とを対比すると、上記(1)アないし(3)アで述べた対比に加え、甲3考案の「前記上方ガイド部に対向したフレーム構成部材の底板部の対向部位が構成する下方ガイド部を備える」ことは、本件考案3の「前記対向部を、前記フレームの底面で構成」することに相当する。また、甲3考案の「前記上方ガイド部に対向したフレーム構成部材の底板部の対向部位」における「対向部位」は、上方にある「上方ガイド部」と対向するので、「底板部」上に位置するの逆側になることは明らかなので、甲3考案の「前記上方ガイド部の前記下部側壁面より内側へ向けて突出する方向の先端には、前記下部側壁面より突出する方向と直角に上面側へ突出する板状の部分」は、本件考案4の「前記リブを、前記ガイド部の上面に設定したこと」に相当する。
よって、本件考案4と甲3考案との間に、新たな相違点はない。

イ 判断
以上のことから、本件考案4は甲3考案と同一であり、本件考案4は甲第3号証に記載された考案である。

(5)本件考案5について
ア 対比
上記(1)の検討結果を踏まえ、本件考案5と甲3考案とを対比すると、上記(1)アで述べた対比に加え、甲3考案の「前記上方ガイド部の前記下部側壁面より内側へ向けて突出する方向の先端には、前記下部側壁面より突出する方向と直角に上面側へ突出する板状の部分」は、本件考案5の「前記リブを前記ガイド部の先端に設けたこと」に相当する。
よって、本件考案5と甲3考案との間に、新たな相違点はない。

イ 判断
以上のことから、本件考案5は甲3考案と同一であり、本件考案5は甲第3号証に記載された考案である。

(6)小括
以上のとおり、本件考案1ないし5は、甲第3号証に記載された考案であるから、実用新案法第3条第1項第3号に該当し実用新案登録を受けることができないものであり、同法第37条第1項第2号に該当し、その実用新案登録は無効とすべきものである。

3 無効理由2について
(1)本件考案1について
ア 相違点
上記2(1)で検討したように本件考案1と甲3考案との相違点は実質的な相違点ではないが、仮に、該相違点を実質的な相違点として無効理由2について検討したとしても、以下のとおりである。

イ 判断
甲3考案の「上方ガイド部」は、「引出側ローラーを案内する」ものであり、少なくとも引出側ローラーより何らかの応力を受けることになるので適切な剛性が求められるところ、収納具の分野においてもリブによる補強は周知である(甲第5号証における、「側壁15」に対する「ガイドレール20」、また「水平レール部20A」に対する「突状部20B」。」参照。)から、甲3考案の「上方ガイド部」の「直角に上面側へ突出する板状の部分」を備える構成に接した当業者が、甲3考案の「上面側へ突出する板状の部分」を「上方ガイド部」の強度(剛性)を補強するためのものとして備えること、すなわち「上方ガイド部」の「上面側へ突出する板状の部分」を「リブ」とすることは、きわめて容易に想到し得たことである。
よって、本件考案1は、甲3考案及び周知技術に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

(2)本件考案2ないし5について
上記(1)の検討結果を踏まえれば、本件考案2ないし5と甲3考案との間には、上記2(2)ないし(5)で検討したように、新たな相違点はない。
よって、本件考案2ないし5は、甲3考案及び周知技術に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

(3)小括
以上のとおり、本件考案1ないし5は、甲第3号証に記載された考案及び周知技術に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、同法第37条第1項第2号に該当し、その実用新案登録は無効とすべきものである。

第5 むすび
上記のとおり、本件考案1ないし5は、甲第3号証に記載された考案であるから、実用新案法第3条第1項第3号に該当し、実用新案登録を受けることができないものである。(無効理由1)

また、本件考案1ないし5は、甲第3号証に記載された考案及び周知技術に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。(無効理由2)

よって、本件考案1ないし5についての実用新案登録は、実用新案法第37条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきものである。

そして、審判に関する費用については、実用新案法第41条において準用する特許法第169条第2項の規定でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
審決日 2016-12-13 
出願番号 実願2009-486(U2009-486) 
審決分類 U 1 114・ 113- Z (A47B)
U 1 114・ 121- Z (A47B)
最終処分 成立  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 前川 慎喜
赤木 啓二
登録日 2009-03-25 
登録番号 実用新案登録第3149851号(U3149851) 
考案の名称 チェスト  
代理人 吉井 雅栄  
代理人 永野 真理子  
代理人 渡辺 知博  
代理人 吉井 剛  
代理人 益弘 圭  
代理人 大瀧 治生  
代理人 石下 雅樹  
代理人 江間 布実子  
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