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審決分類 審判    H02H
審判    H02H
管理番号 1327043
審判番号 無効2016-400002  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-05-12 
確定日 2017-03-27 
事件の表示 上記当事者間の登録第3198692号実用新案「高圧一括受電設備」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第3198692号の請求項1ないし4に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
本件実用新案登録第3198692号(請求項の数[4]、以下「本件実用新案登録」という。)に係る出願は、平成27年5月1日の出願であって、その請求項1?4に係る考案について、平成27年6月24日に実用新案の設定登録がなされ、平成27年12月16日に実用新案技術評価書が作成され、平成28年1月29日付けで抹消登録申請がなされ、平成28年2月15日に本権利消滅となった。以降、審判請求日からの経緯を整理して示す。
1 平成28年 5月12日 本件無効審判請求
2 平成28年 6月28日 審判事件答弁書
3 平成28年 7月27日 審理事項通知書
4 平成28年 8月25日 請求人口頭審理陳述要領書
5 平成28年 8月25日 被請求人口頭審理陳述要領書
6 平成28年 8月31日 審理事項通知書(2)(FAX)
7 平成28年 9月15日 請求人口頭審理陳述要領書(2)
8 平成28年 9月15日 被請求人口頭審理陳述要領書(2)
9 平成28年 9月15日 口頭審理
10 平成28年 9月23日 請求人上申書
11 平成28年 9月23日 被請求人上申書
12 平成28年 9月28日 請求人上申書(2)
13 平成28年 9月28日 被請求人上申書(2)
14 平成28年10月 4日 無効理由通知書・職権審理結果通知書
15 平成28年11月 2日 請求人意見書

第2 当事者の主張
1.請求人の主張の概要
実用新案登録第3198692号の実用新案登録請求の範囲の請求項1乃至4に記載された考案についての登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、甲第1?11号証を提出して、次の無効理由を主張した。

[無効理由の概要]
無効理由(実用新案法第37条第1項第5号)
実用新案登録第3198692号の請求項1?4に係る各考案は、真の考案者である細川正美が考案したものであり、真の考案者である細川正美に無断で実用新案登録権者であるあなぶきパワー&リース株式会社が出願したものであるから、本件実用新案登録は、実用新案法第37条第1項第5号に該当し、無効とすべきである。

[証拠方法]
甲第1号証:実用新案登録第3198692号公報
甲第2号証:実用新案登録第3198692号の実用新案技術評価書
甲第3号証:被請求人の知的財産を管理する穴吹興産株式会社総務部長植田栄正と請求人の面談の録音データの反訳(抜粋)
甲第4号証:被請求人の知的財産を管理する穴吹興産株式会社の執行役員平田康一氏と請求人とのメールを撮影した画像
甲第5号証:被請求人の知的財産を管理する穴吹興産株式会社総務部長植田栄正氏と請求人とのメールを撮影した画像
甲第6号証:平成26年7月開催の第2回の勉強会の議事内容に基づいてまとめられた本件考案の実施態様に関する資料
甲第7号証:平成25年9月開催の第1回の勉強会で配布された資料
甲第8号証:大西寿の証明書
甲第9号証:北村和義の証明書
甲第10号証:細川正美の宣誓書
甲第11号証:細川正美の宣誓書

2.被請求人の主張の概要
これに対して、被請求人は、本件請求を却下する、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、請求人の無効理由に対して以下のように反論した。

[無効理由に対する反論]
(1)本件実用新案登録に係る考案は、出願日の前に公然と実施されたことによって新規性を失っており、実用新案登録を受けることはできない(実用新案法第3条1項柱書)。
ゆえに、請求人は本件無効審判の請求人適格を有しない(実用新案法第37条第2項)。
(2)実用新案技術評価書によると本件実用新案権は登録要件(進歩性)を欠いていて現実には権利行使できないことや、既に平成28年2月15日付で放棄されていること、さらに、権利行使に基づく損害賠償請求権等も発生していないことにも鑑みると、本件審判請求は「請求の利益」がない。
(3)冒認については、被請求人の知的財産権制度に対する知識の不足によって、手続的瑕疵を生じた。
考案として完成させたのは、被請求人の従業員数名であり、それには請求人細川正美の外、北村和義氏および末澤優樹氏の少なくとも2名がいた。
代表取締役柴田登は考案の完成に貢献していない。

[証拠方法]
乙第1号証:新・注解特許法[下巻]中山信弘、小泉直樹編 青林書院(表紙、2035頁、裏表紙)
乙第2号証:被請求人会社の人事組織図(平成26年8月4日付))
乙第3号証:資料「技術Gメンバー職階および略歴について」(作成2016年9月2日 作成者 柴田登)
乙第4号証:被請求人会社のファイルサーバーに記録されている技術グループが実施した勉強会の記録を示すキャプチャー画面
乙第5号証:乙第4号証における「勉強会日程」のプリント
乙第6号証:注文書 (福岡市設置の第一号物件についての設置工事発注書)
乙第7号証:注文請書 (福岡市設置第一号物件についての設置工事請書)
乙第8号証:別冊ジュリスト特許判例百選第三版
乙第9号証:大西寿の証明書
乙第10号証:工事完成図書 (福岡市設置の第一号物件についての工事内容や高圧一括受電設備の詳細を説明した図書)
乙第11号証:引渡書
乙第12号証:受領書

第3 本件考案
本件実用新案登録の請求項1?4に係る考案は登録実用新案公報の実用新案登録請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。(以下、請求項1等に係る考案を「本件考案1」等といい、本件考案1?4を総称して「本件考案」という。)。
「【請求項1】
高圧電力を受電して低圧電力に降圧して受電ユーザー内の各戸に分配する高圧一括受電設備であって、
高圧配電線に接続された高圧気中負荷開閉器と高圧電力を低圧電力に変換するトランスを有する受電装置を備えており、
該受電装置は前記高圧一括受電設備内に生じた事故を検知して送電機能を遮断する遮断機能付負荷開閉器を有する
ことを特徴とする高圧一括受電設備。」
「【請求項2】
前記遮断機能付負荷開閉器は、地絡、過負荷および短絡を含む事故時に遮断装置が機能するものである
ことを特徴とする請求項1記載の高圧一括受電設備。」
「【請求項3】
前記遮断機能付負荷開閉器の制御装置と、
該制御装置の接点入出力を監視する接点入出力監視装置とを更に備えている
ことを特徴とする請求項1または2記載の高圧一括受電設備。」
「【請求項4】
前記接点入出力監視装置が光回線を介して監視機関に警報信号を発信する
ことを特徴とする請求項1,2または3記載の高圧一括受電設備。」

第4 当審の無効理由通知
当審の平成28年10月4日付け無効理由通知は以下のとおりである。
「この出願の請求項1-4に係る考案は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物等1-5に記載された考案に基いて、その出願前にその考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
刊行物1:特許第4199900号公報
刊行物2:特開2005-45948号公報
刊行物3:国際公開第06/4112号
刊行物4:特開2015-50881号公報
刊行物5:特許第2948106号公報」

第5 当審の無効理由についての判断
1.刊行物の記載事項
(1)刊行物1の記載事項
本件実用新案登録出願前に頒布された刊行物である特許第4199900号公報(以下、刊行物1という。)には、「高圧受配電設備システム」に関して、次の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。
(ア)「【0002】
【従来の技術】
従来から、ビル、寮、及び保養所等の需要家は、大容量の負荷設備を備えるため、高圧配電線路(ただし、11.4kV、22kV、33kV等の特別高圧配電線路も含む。)より直接受電を行う、自家用の高圧受配電設備を設けている。
この高圧受配電設備はキュービクル式等の形式があり、開閉器、遮断器、計器用変圧器及び変成器等の検出器、及び保護継電器等の機器が取り付けられ、負荷設備への電気の供給や監視等を行う。
このような高圧受配電設備は、負荷設備で地絡事故や、過電流事故等が発生すると、保護継電器が作動し、遮断器を動作させて電力の供給を停止させる。これによって、上記事故を起こした需要家のみ停電となり、高圧配電線路まで事故の影響を波及させないようになっている。」
(イ)「【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図1?17を用いて本発明の実施の形態を説明する。
〔実施例1〕
本実施例1は、第1発明に対応し、SOG開閉器の継電器を用いて高圧受配電部内の遮断器を動作させる高圧受配電設備システムである。」
(ウ)「【0017】
(1)SOG開閉器2
SOG開閉器2は高圧配電線路1からの給電切替を行う。また、SOG開閉器2は図1及び図2に示すように、高圧配電線路1及び高圧受配電部3に接続される開閉器21と、開閉器21に接続される継電器23とから構成されている。
a)開閉器21
開閉器21は、開閉部211及び検出器22を備える。
開閉部211は、電路を開閉するためのものであり、接点、及びその開閉機構(図示せず)とを備える。また、検出器22は線路の状態を検出するためのものであり、零相電流を検知するための零相変流器(ZCT)221、電圧を検知するための電圧検知素子(VD)又は接地変圧器222、電流を検知するための変流器(CT)223とを備える。この検出器22で得られた情報は継電器23に送られる。
【0018】
b)継電器23
継電器23は、零相電流回路231、電圧回路232、電流回路233、比較回路234、通信回路235a、及び電源回路24を備える。また、継電器23は、検出器22で得られた電流等の情報を加工及び判別し、短絡等の過電流事故、地絡事故及びサージを伴う事故等と判断した場合は、高圧受配電部3へ事故情報を送信する。」
(エ)「【0028】
b)高圧受配電設備側地絡事故の動作
継電器23の比較回路234の出力によって零相電流の位相が零相電圧の位相より遅れ30°?進み110°である場合は、高圧受配電設備等側の地絡事故と判別される。この場合は、高圧受配電部3の遮断器34に回路を遮断するように指令する事故情報を高圧受配電部3に送信する。」
(オ)「【0030】
(3)短絡事故における動作
検出器22の変流器223によって検出し、電流回路233によって得られる、線路電流が既定値以上の場合は短絡事故と判別する。この場合は、事故情報を高圧受配電部3に送信するとともに、通信線5を介して高圧受配電部3の遮断器34に回路を遮断するように指令する。」
(カ)「【0046】・・変圧器36は、負荷設備4に適した電圧に昇降圧を行う機器である。」
(キ)「【0090】
〔参考例6〕
本参考例6は、実施例1に用いられるSOG開閉器を受電側遮断器とした高圧受配電設備システムに用いられる。
1.高圧受配電設備システムの構成
この受電側遮断器を用いた高圧受配電設備システムは、図15に示すように高圧配電線路1に、電力側開閉器11と、遮断器本体21b及び継電器23から構成される受電側遮断器2bと、高圧受配電部3とが設けられる構成を備える。」
(ク)「【0091】
(1)受電側遮断器2b
受電側遮断器2bは電力側開閉器11に接続される遮断器である。また、図15及び図16に示すように、高圧配電線路1及び高圧受配電部3に接続される遮断器本体21bと、遮断器本体21bに接続される継電器23とから構成されている。
また、受電側遮断器2bは図16に示すように遮断部212の他、検出器22を備える。遮断部212は、負荷が掛かった電路を開閉するためのものであり、接点、及びその開閉機構(図示せず)とを備える。更に、検出器22は実施例1の検出器22と同様に、零相電流を検知するための零相変流器(ZCT)221、電圧を検知するための電圧検知素子(VD)又は接地変圧器222、電流を検知するための変流器(CT)223とを備える。この検出器22で得られた情報は継電器23に送られる。」
(ケ)「【0092】
また、継電器23についても実施例1と同様に、零相電流回路231、電圧回路232、電流回路233、比較回路234、通信回路235a、及び電源回路24を備える。」
(コ)「【0093】
(2)高圧受配電部3
高圧受配電部3は受電した電力を変電し、各負荷設備4へ配電を行うための高圧受配電設備のうち、受電側遮断器2bを除いた部位である。また、この高圧受配電設備は、キュービクル又は高圧受電盤である。この高圧受配電部3は図13に示すように実施例4と同様に、通信装置31、表示装置32、避雷器33、高圧カットアウト35、変圧器36及び断路器37とを備える。」
(サ)「【0094】
(3)通信線5
通信線5は、それぞれ高圧受配電部3と、継電器23とをメタルケーブル又は光ケーブル等の信号線によって接続し、双方での情報の送受信を行うためのものである。
【0096】・・(略)・・高圧受配電部で事故情報等の表示をさせることで、各種検出器の状況を集中して監視することができ、各種検出器をそれぞれ調べる必要がない。」
(シ)「【0097】
更に、本高圧受配電設備システムは実施例1の効果に加え、高圧配電線側で発生した短絡事故時の過電流であっても受電側遮断器により遮断を行うことができる。」
(ス)「【0100】
〔参考例7〕
本参考例7は、実施例3に用いられるSOG開閉器を受電側遮断器とした高圧受配電設備システムである。本高圧受配電設備システムは、受電側遮断器の継電器を用いて高圧受配電部内の遮断器を動作させるとともに、高圧配電線路で地絡事故等が生じた場合に事故点を標定することができる高圧受配電設備システムである。
【0101】
1.高圧受配電設備システムの構成
この受電側遮断器を用いた高圧受配電設備システムは、図17に示すように高圧配電線路1に、電力側開閉器11と、遮断器本体21b及び継電器23から構成される受電側遮断器2bと、高圧受配電部3とが設けられる構成を備える。また、受電側遮断器2bは、管理通信線6を介して管理設備7に接続されている。・・(略)・・
【0104】(3)管理設備7
管理設備7は、各需要家の受電側遮断器2bの継電器23から送信される地絡情報等の情報を受信し、高圧配電線路1上のサージをともなう事故による故障点の標定を行ったり、受信した情報の管理及び集計等を行う設備である。また、管理設備7は図7に示すように実施例3と同様であり、受信手段71、処理手段72、表示手段73、記憶手段74及び入力手段75とを備える。」

(セ)記載事項(コ)の「変圧器36」は、記載事項(カ)で「変圧器36は、負荷設備4に適した電圧に昇降圧を行う機器である。」とされたものであるので、負荷設備4に適した電圧に昇降圧を行う変圧器36といえる。
(ソ)記載事項(ケ)の「継電器23」は、「通信回路235a」を備えるものであって、記載事項(ウ)の「継電器23は、検出器22で得られた電流等の情報を加工及び判別し、短絡等の過電流事故、地絡事故及びサージを伴う事故等と判断した場合は、高圧受配電部3へ事故情報を送信する。」ものであるので、短絡等の過電流事故、地絡事故及びサージを伴う事故等と判断した場合は、高圧受配電部3へ事故情報を送信するものといえる。
(タ)記載事項(キ)の参考例6に係る、記載事項(シ)の「実施例1の効果に加え、高圧配電線側で発生した短絡事故時の過電流であっても受電側遮断器により遮断を行うことができる。」は、「実施例1の効果に加え」と記載されているように、実施例1に係る記載事項(エ)の「零相電流の位相が零相電圧の位相より遅れ30°?進み110°である場合は、高圧受配電設備等側の地絡事故と判別される。この場合は、高圧受配電部3の遮断器34に回路を遮断するように指令する」、記載事項(オ)の「検出器22の変流器223によって検出し、電流回路233によって得られる、線路電流が既定値以上の場合は短絡事故と判別する。この場合は、事故情報を高圧受配電部3に送信するとともに、通信線5を介して高圧受配電部3の遮断器34に回路を遮断するように指令する。」ことを前提とするものであって、記載事項(キ)の「SOG開閉器を受電側遮断器とした」ことにともなって、記載事項(エ)(オ)の「遮断器34」による遮断が、「受電側遮断器」による遮断に変わるものである。
そして、記載事項(キ)の参考例6に係る「受電側遮断器2b」は、記載事項(シ)の「高圧配電線側で発生した短絡事故時の過電流であっても受電側遮断器により遮断を行う」ものであるので、地絡事故と判別される場合回路を遮断し、また、変流器223によって検出した線路電流が既定値以上の場合は短絡事故と判別して回路を遮断するものといえる。

上記記載事項から、刊行物1には、次の考案(以下、「引用考案1」という。)が記載されているものと認められる。
「高圧配電線路より直接受電を行い、ビル、寮、及び保養所等の需要家の負荷設備への電気の供給や監視等を行う自家用の高圧受配電設備システムであって、
高圧配電線路1に、電力側開閉器11と、遮断器本体21b及び継電器23から構成される受電側遮断器2bと、負荷設備4に適した電圧に昇降圧を行う変圧器36を有する高圧受配電部3とを備えており、
受電側遮断器2bは、高圧配電線路1及び高圧受配電部3に接続される遮断器本体21bと、遮断器本体21bに接続される継電器23とから構成され、遮断部212の他、検出器22を備え、
受電側遮断器2bは、地絡事故と判別される場合回路を遮断し、また、変流器223によって検出した線路電流が既定値以上の場合は短絡事故と判別して回路を遮断するものである
高圧受配電設備システム。」

また、上記記載事項から、刊行物1には、次の考案(以下、「引用考案2」という。)も記載されているものと認められる。
「高圧配電線路より直接受電を行い、ビル、寮、及び保養所等の需要家の負荷設備への電気の供給や監視等を行う自家用の高圧受配電設備システムであって、
高圧配電線路1に、電力側開閉器11と、遮断器本体21b及び継電器23から構成される受電側遮断器2bと、負荷設備4に適した電圧に昇降圧を行う変圧器36を有する高圧受配電部3とを備えており、
受電側遮断器2bは、高圧配電線路1及び高圧受配電部3に接続される遮断器本体21bと、遮断器本体21bに接続される継電器23とから構成され、遮断部212の他、検出器22を備え、
遮断部212は、接点、及びその開閉機構とを備え
検出器22は、零相電流を検知するための零相変流器221、電圧を検知するための電圧検知素子又は接地変圧器222、電流を検知するための変流器223とを備え、
継電器23は、零相電流回路231、電圧回路232、電流回路233、比較回路234、通信回路235a、及び電源回路24を備え、短絡等の過電流事故、地絡事故及びサージを伴う事故等と判断した場合は、高圧受配電部3へ事故情報を送信し、
高圧受配電部で事故情報等の表示をさせることで、各種検出器の状況を集中して監視することができ、
受電側遮断器2bは、地絡事故と判別される場合回路を遮断し、また、変流器223によって検出した線路電流が既定値以上の場合は短絡事故と判別して回路を遮断するものである
高圧受配電設備システム。」

また、上記記載事項から、刊行物1には、次の考案(以下、「引用考案3」という。)も記載されているものと認められる。
「高圧配電線路より直接受電を行い、ビル、寮、及び保養所等の需要家の負荷設備への電気の供給や監視等を行う自家用の高圧受配電設備システムであって、
高圧配電線路1に、電力側開閉器11と、遮断器本体21b及び継電器23から構成される受電側遮断器2bと、負荷設備4に適した電圧に昇降圧を行う変圧器36を有する高圧受配電部3とを備えており、
受電側遮断器2bは、高圧配電線路1及び高圧受配電部3に接続される遮断器本体21bと、遮断器本体21bに接続される継電器23とから構成され、遮断部212の他、検出器22を備え、
遮断部212は、接点、及びその開閉機構とを備え
検出器22は、零相電流を検知するための零相変流器221、電圧を検知するための電圧検知素子又は接地変圧器222、電流を検知するための変流器223とを備え、
高圧受配電部3と、継電器23とをメタルケーブル又は光ケーブル等の信号線によって接続し、
継電器23は、零相電流回路231、電圧回路232、電流回路233、比較回路234、通信回路235a、及び電源回路24を備え、短絡等の過電流事故、地絡事故及びサージを伴う事故等と判断した場合は、高圧受配電部3へ事故情報を送信し、
高圧受配電部で事故情報等の表示をさせることで、各種検出器の状況を集中して監視することができ、
受電側遮断器2bは、地絡事故と判別される場合回路を遮断し、また、変流器223によって検出した線路電流が既定値以上の場合は短絡事故と判別して回路を遮断するものである
高圧受配電設備システム。」

(2)刊行物2の記載事項
本件実用新案登録出願前に頒布された刊行物である特許第2948106号公報(以下、刊行物2という。)には、「高圧負荷開閉器投入警報装置」に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【0002】
【従来の技術】従来、需要家の電気設備(受電側)の事故に起因する電力会社(送電側)への波及事故を、自家用電気工作物の受電用第1柱に高圧負荷開閉器を設置し、この開閉器を開放することにより防止している。この高圧負荷開閉器を備えた自家用電気設備の単線結線図を図4に示す。高圧負荷開閉器101は、地絡事故や過電流事故時に高圧負荷開閉器101を開放にする開閉器制御回路102により制御されており、この開閉器制御回路102の電源は、一般的に高圧負荷開閉器101の負荷側に設けられた変圧器105の二次側より配線用遮断器106を介して供給されている。
(イ)「【0003】地絡又は過電流事故により開閉器制御回路102が作動して高圧負荷開閉器101が開放となった場合には、事故原因を解明し事故の適切な処置を行った後、負荷側に近い方から順に各種遮断器を投入していく必要がある。例えば、先ず配線用遮断器106を投入し、次に、変圧器105の一次側に設けられたカットアウトスイッチ104を投入し、そして、高圧負荷開閉器101とカットアウトスイッチ104の間に設けられた真空遮断器103を投入し、最後に高圧負荷開閉器101を投入する。これにより、高圧負荷開閉器101の開放後、この高圧負荷開閉器101を再投入したときには、開閉器制御回路102への電源が、真空遮断器103、カットアウトスイッチ104及び変圧器105を通して供給され、高圧負荷開閉器101は開閉器制御回路102により制御されることになるため、電力会社への波及事故を回避することができる。」
(ウ)「【0015】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。図1に、本発明に係る高圧負荷開閉器投入警報装置が備えられた自家用電気設備の単線結線図を示す。図示する如く、受電側となる自家用電気工作物の受電用第1柱に送電側となる送電線DLからの電力を入力する高圧負荷開閉器1を設置し、この高圧負荷開閉器1には開閉器制御手段としての過電流蓄勢トリップ付き地絡トリップ形(SOG)制御回路2が接続され、このSOG制御回路2により高圧負荷開閉器1の出力側に接続された電路の地絡又は過電流事故発生時に高圧負荷開閉器1が開放に制御される。高圧負荷開閉器1の出力電力はキュービクル(高圧受電設備)11内に供給され、過電流時に電路を遮断する電路遮断器(CB)3、電路に流れる過電流を検出する変流器4及び降圧トランス5を介して配電所6a,6bと室内変電所7に送出される。
【0016】室内変電所7に設けられたトランス31の2次側出力のうち一部はキュービクル11内に戻され、高圧負荷開閉器投入警報装置の電源となる補助電源8に供給されると共に、トランス31の2次側出力の電圧を配線用遮断器(MCCB)9を介してSOG制御回路2に操作用電源として供給される。ここで、SOG制御回路2は、地絡事故時には高圧負荷開閉器1を即時開放させ、過電流事故時には高圧負荷開閉器1の閉路を一旦保持し、電路遮断器3の作動によりこれ以降の高圧電路が遮断して停電となった後、SOG制御回路2への供給電源の無電圧状態により自動的に高圧負荷開閉器1を開放させ、また、過電流と地絡事故が重なったときには、過電流事故動作を優先させて動作する。また、このSOG制御回路2内にはSOG制御回路2による開放動作に連動して作動し一瞬間閉じる接点を有する開放動作検出手段としてのSOスイッチ2a及びGRスイッチ2bが並列に接続されて備えられており、SOスイッチ2aは過電流時に作動し、GRスイッチ2bは地絡時に作動する。」
(エ)「【0017】そして、補助電源8の出力は、SOスイッチ2a及びGRスイッチ2bを介して警報始動信号として警報回路10に供給されると共に、遮断器投入検出手段としての直列に接続されたCB連動スイッチ3a及びMCCB連動スイッチ9aを介して警報解除許可信号として警報回路10に供給される。ここで、CB連動スイッチ3aは電路遮断器3の投入操作による閉路に連動して、MCCB連動スイッチ9aはMCCB9の投入操作による閉路に連動してその接点をそれぞれ閉路作動するスイッチである。」
(オ)「【0024】・・(略)・・地絡事故の場合には、SOG制御回路2により瞬時に高圧負荷開閉器1が開放し、SOG制御回路2の作動に伴って連動するGRスイッチ2bの接点が閉じる。これにより、リレー10aのセット端子10sに電流が供給されリレー10aのセット用コイルに励磁電流が流れ、リレー接点K1及びK2がそれぞれ閉じてブザー10bにより警報音が発せられと共に表示灯10hが点灯し、事故が発生したことを知らせる。」
(カ)「【0027】過電流事故の場合には、電路遮断器3の開放によりMCCB9への電源供給が絶たれ、無電圧状態になったSOG制御回路2によって高圧負荷開閉器1が開放される。このとき、SOG制御回路2の作動に伴って連動するSOスイッチ2aの接点が閉じ、補助電源8によりリレー10aのセット端子10sに電流が供給されセット用コイルに励磁電流が流れ、上記の地絡事故時と同様にリレー接点K1及びK2のそれぞれの接点が閉じてブザー10b及び表示灯10hにより警報が発せられる。

(キ)【図1】【図4】には、高圧負荷開閉器1、高圧負荷開閉器101に「PAS7.2kv/300A GR付」との説明が付されている。

上記記載事項から、刊行物2には、次の考案が記載されているものと認められる。
「SOG制御回路2内にはSOG制御回路2による開放動作に連動して作動し一瞬間閉じる接点を有する開放動作検出手段としてのSOスイッチ2a及びGRスイッチ2bが並列に接続されて備えられており、SOスイッチ2aは過電流時に作動し、GRスイッチ2bは地絡時に作動し、
補助電源8の出力は、SOスイッチ2a及びGRスイッチ2bを介して警報始動信号として警報回路10に供給され、
地絡事故の場合には、高圧負荷開閉器1が開放し、SOG制御回路2の作動に伴って連動するGRスイッチ2bの接点が閉じる、ブザー10bにより警報音が発せられと共に表示灯10hが点灯し、事故が発生したことを知らせ、
過電流事故の場合には、高圧負荷開閉器1が開放され、SOG制御回路2の作動に伴って連動するSOスイッチ2aの接点が閉じ、ブザー10b及び表示灯10hにより警報が発せられる自家用電気設備。」(以下、「刊行物2記載の考案」という。)

(3)刊行物3の記載事項
本件実用新案登録出願前に頒布された刊行物である特開2005-45948号公報(以下、刊行物3という。)には、「電力使用量監視システム及び電力使用量監視方法」に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【0062】
ここで、通常、キュービクル124には、高圧の電路・機器での過負荷、短絡、地絡等の事故時に自動的に電路の遮断を行う遮断器が設けられている。」

2.本件考案1について
(1)本件考案1と引用考案1との対比
ア.引用考案1の「高圧配電線路より直接受電を行い、ビル、寮、及び保養所等の需要家の負荷設備への電気の供給や監視等を行う自家用の高圧受配電設備システム」は、「負荷設備4に適した電圧に昇降圧を行う変圧器36」を備え、通常、寮等の負荷は、各戸に存在する低圧負荷で代表されるものであって、昇降圧の代表的な態様が低圧電力に降圧するものであるから、本件考案1の「高圧電力を受電して低圧電力に降圧して受電ユーザー内の各戸に分配する高圧一括受電設備」に相当する。
また、同様に引用考案1の「負荷設備4に適した電圧に昇降圧を行う変圧器36」は、本件考案1の「高圧電力を低圧電力に変換するトランス」に相当する。
イ.引用考案1の「電力側開閉器11」、「遮断器本体21b及び継電器23から構成される受電側遮断器2b」、及び「負荷設備4に適した電圧に昇降圧を行う変圧器36を有する高圧受配電部3」は、高圧受配電設備システムを構成する装置であるので、本件考案1の「受電装置」に相当する。
また、引用考案1の「高圧配電線路1に、電力側開閉器11・・(略)・・を備えており」とされた「電力側開閉器11」と本件考案1の「高圧配電線に接続された高圧気中負荷開閉器」とは、高圧配電線に接続された開閉器である点で共通する。
そして、引用考案1の高圧受配電設備システムの「高圧配電線路1に、電力側開閉器11と、遮断器本体21b及び継電器23から構成される受電側遮断器2bと、負荷設備4に適した電圧に昇降圧を行う変圧器36を有する高圧受配電部3とを備え」ている構成と、本件考案1の高圧一括受電設備の「高圧配電線に接続された高圧気中負荷開閉器と高圧電力を低圧電力に変換するトランスを有する受電装置を備え」ている構成とは、高圧配電線に接続された開閉器と高圧電力を低圧電力に変換するトランスを有する受電装置を備えている点で共通する。
ウ.引用考案1の「短絡事故」は、「変流器223によって検出した線路電流が既定値以上の場合は短絡事故と判別」されるものである。
ところで、「変流器223によって検出」する線路電流は、変流器223が設けられた受電側遮断器2bから、負荷設備4に適した電圧に昇降圧を行う変圧器36を有する高圧受配電部3に向かって流れる電流であるので、引用考案1の「短絡事故」には、受電側遮断器2bの変流器223が設けられた場所から高圧受配電部3側の短絡事故が含まれている。
また、引用考案1の「地絡事故」も、検出器22の零相変流器221で検出するものであり、受電側遮断器2bの零相変流器221が設けられた場所から高圧受配電部3側の地絡事故が含まれている。
そして、受電側遮断器2bも高圧受配電部3も、上記イ.で「高圧受配電設備システムを構成する装置」としたものであって、その短絡事故や地絡事故は、高圧受配電設備システム(本件考案1の「高圧一括受電設備」に相当するもの)内に生じた事故といえるものであるので、引用考案1の「検出器22を備え」「変流器223によって検出した線路電流が既定値以上の場合は短絡事故と判別」すること、及び「検出器22を備え」「地絡事故・・(略)・・と判断」することは、本件考案1の「高圧一括受電設備内に生じた事故を検知」することに相当する。
そして、引用考案1の「検出器22を備え」「地絡事故と判別される場合回路を遮断し、」「変流器223によって検出した線路電流が既定値以上の場合は短絡事故と判別して回路を遮断するものである」「受電側遮断器2b」は、本件考案1の「高圧一括受電設備内に生じた事故を検知して送電機能を遮断する遮断機能付負荷開閉器」に相当する。

そうすると、両者は、
「高圧電力を受電して低圧電力に降圧して受電ユーザー内の各戸に分配する高圧一括受電設備であって、
高圧配電線に接続された開閉器と高圧電力を低圧電力に変換するトランスを有する受電装置を備えており、
該受電装置は前記高圧一括受電設備内に生じた事故を検知して送電機能を遮断する遮断機能付負荷開閉器を有する
高圧一括受電設備。」
で一致し、次の点で相違する。

相違点1:高圧配電線に接続された開閉器が、本件考案1は「高圧気中負荷開閉器」であるのに対して、引用考案1は、高圧気中負荷開閉器と特定されていない点。

(2)相違点1についての判断
高圧配電線に接続される開閉器として、高圧気中負荷開閉器は、刊行物2にPAS(Pole Air Switch)との説明が付されている高圧負荷開閉器1、高圧負荷開閉器101(後者は従来の技術として記載されている)が示されている様に周知慣用のもの[他にも必要があれば、実公昭51-39145号公報第1図の高圧気中負荷開閉器9、特開2003-189458号公報図3の断路器32(「【0020】・・高圧気中負荷開閉器」)等参照]である。
そして、引用考案1の高圧一括受電設備の高圧配電線路1に備える電力側開閉器11を、該周知慣用の高圧気中負荷開閉器を用いて具現化して、本件考案1の相違点1に係る構成とすることは、当業者がきわめて容易に想到し得たことである。

[請求人の主張について]
請求人は、平成28年11月2日付け意見書において、「本件考案1等は、遮断機能付負荷開閉器および高圧気中負荷開閉器を、いずれも電柱等の柱上に配置できるように構成しています・・(略)・・刊行物1には、高圧配電線路1と高圧受配電部3の間に、電力側開閉器11と受電側遮断機2bとを設けた構成が開示されていますが、柱上に配置することまでは記載されていない」旨主張するが、遮断機能付負荷開閉器および高圧気中負荷開閉器を、柱上に配置できるように構成することは、請求項に記載されておらず、本件考案1の考案特定事項ではないので、請求人の上記主張は採用できない。

そうすると、本件考案1は、引用考案1、周知慣用技術に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

3.本件考案2について
(1)本件考案2と引用考案1との対比
本件考案2は、本件考案1の構成を全て含み、さらに「前記遮断機能付負荷開閉器は、地絡、過負荷および短絡を含む事故時に遮断装置が機能するものである」との限定を加えたものである。
そして、本件考案2と引用考案1とは、上記2.(1)ア.?ウ.の対応関係に加え、
エ.引用考案1の「受電側遮断器2bは・・(略)・・地絡事故と判別される場合回路を遮断し、また、変流器223によって検出した線路電流が既定値以上の場合は短絡事故と判別して回路を遮断するものである」ことと、本件考案2の「前記遮断機能付負荷開閉器は、地絡、過負荷および短絡を含む事故時に遮断装置が機能するものである」こととは、遮断機能付負荷開閉器は、地絡および短絡事故時に遮断装置が機能するものである点で共通する。

そうすると、本件考案2と引用考案1とは、上記2.(1)の一致点に加えて、
「遮断機能付負荷開閉器は、地絡、短絡事故時に遮断装置が機能するものである」点で一致し、相違点1に加えて、次の点でも相違する。

相違点2:遮断機能付負荷開閉器の遮断装置が機能するのが、本件考案2は「地絡、過負荷および短絡を含む事故時」であるのに対して、引用考案1は「地絡事故」、「短絡事故」のみである点。

(2)相違点2についての判断
刊行物1は、記載事項(ア)に「地絡事故や、過電流事故等が発生すると、保護継電器が作動し、遮断器を動作させて電力の供給を停止させる。」と記載され、記載事項(ウ)に「短絡等の過電流事故」と記載されている様に、短絡以外の過電流事故の存在も示唆されている。
一方、刊行物3記載事項(ア)に「通常、キュービクル124には、高圧の電路・機器での過負荷、短絡、地絡等の事故時に自動的に電路の遮断を行う遮断器が設けられている。」と記載されているように、受電設備において、過負荷時にも遮断を行うことは、周知慣用技術である。
そして、引用考案1を開示する刊行物1に記載の示唆に基づいて、引用考案1の遮断器を動作させる条件に、周知慣用技術である「過負荷」遮断を加えて、本件考案2の相違点2に係る構成とすることは、当業者がきわめて容易に想到し得たことである。

そうすると、本件考案2は、引用考案1、周知慣用技術に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

4.本件考案3について
(1)本件考案3と引用考案2との対比
本件考案3は、本件考案1の構成を全て含み、さらに「前記遮断機能付負荷開閉器の制御装置と、該制御装置の接点入出力を監視する接点入出力監視装置とを更に備えている」との限定を加えたものである。
また、引用考案2は、引用考案1の構成を全て含み、さらに「遮断部212は、接点、及びその開閉機構とを備え
検出器22は、零相電流を検知するための零相変流器221、電圧を検知するための電圧検知素子又は接地変圧器222、電流を検知するための変流器223とを備え、
継電器23は、零相電流回路231、電圧回路232、電流回路233、比較回路234、通信回路235a、及び電源回路24を備え、短絡等の過電流事故、地絡事故及びサージを伴う事故等と判断した場合は、高圧受配電部3へ事故情報を送信し、
高圧受配電部で事故情報等の表示をさせることで、各種検出器の状況を集中して監視することができ」る構成を備えたものである。
そうすると、本件考案3と引用考案2とは、上記2.(1)ア.?ウ.と同様の対応関係を備え、さらにそれに加えて、
オ.引用考案2の「受電側遮断器2b」は、「地絡事故と判別される場合回路を遮断」、「線路電流が既定値以上の場合は短絡事故と判別して回路を遮断」するものであって、「地絡事故と判別される場合」及び「線路電流が既定値以上の場合」に回路を遮断する動作を実現する、継電器23の回路や、遮断部212の開閉機構が存在し、それらは受電側遮断器2bの開閉制御を行うものであるので、本件考案3の「遮断機能付負荷開閉器の制御装置」に相当する。
引用考案2の「短絡等の過電流事故、地絡事故及びサージを伴う事故等と判断した場合は、高圧受配電部3へ事故情報を送信し、高圧受配電部で事故情報等の表示をさせることで、各種検出器の状況を集中して監視することができ」る「継電器23」と、本件考案3の「制御装置の接点入出力を監視する接点入出力監視装置」とは、監視装置である点で共通する。
そして、引用考案2の高圧受配電設備システムの「受電側遮断器2bは、高圧配電線路1及び高圧受配電部3に接続される遮断器本体21bと、遮断器本体21bに接続される継電器23とから構成され、遮断部212の他、検出器22を備え、遮断部212は、接点、及びその開閉機構とを備え」ている構成と、本件考案3の高圧一括受電設備の「前記遮断機能付負荷開閉器の制御装置と、該制御装置の接点入出力を監視する接点入出力監視装置とを更に備えている」ている構成とは、遮断機能付負荷開閉器の制御装置と、監視装置とを更に備えている点で共通する。

そうすると、本件考案3と引用考案2とは、上記2.(1)の一致点に加えて、
「遮断機能付負荷開閉器の制御装置と、監視装置とを更に備えている」点で一致し、相違点1に加えて、次の点でも相違する。

相違点3:監視装置が、本件考案3は「該制御装置の接点入出力を監視する接点入出力監視装置」であるのに対して、引用考案2は「零相電流回路231、電圧回路232、電流回路233、比較回路234、通信回路235a、及び電源回路24を備え、短絡等の過電流事故、地絡事故及びサージを伴う事故等と判断した場合は、高圧受配電部3へ事故情報を送信し、高圧受配電部で事故情報等の表示をさせることで、各種検出器の状況を集中して監視することができ」る「継電器23」である点。

(2)相違点3についての判断
ア.本件考案3と引用考案2との対応関係は、上記(1)に記載したとおりである。
イ.本件考案3と刊行物2記載の考案との対応関係
刊行物2記載の考案の「SOG制御回路」と、本件考案3の「制御装置」とは、開閉器の制御装置である点て共通する。
そして、刊行物2記載の考案の「警報回路10」は、「SOG制御回路2の作動に伴って連動するGRスイッチ2bの接点が閉じる、ブザー10bにより警報音が発せられ」、「SOG制御回路2の作動に伴って連動するSOスイッチ2aの接点が閉じ、ブザー10b及び表示灯10hにより警報が発せられる」ものであるので、本件考案3の「制御装置の接点入出力を監視する接点入出力監視装置」と、開閉器の制御装置の接点入出力を監視する接点入出力監視装置である点て共通するものである。
ウ.引用考案2への刊行物2記載の考案の適用について
刊行物2記載の考案は、地絡事故や地絡事故の場合に、ブザー10b及び表示灯10hにより事故が発生したことを知らせるものであって、引用考案2の「事故情報等の表示」と共通する機能のものである、そして、引用考案2の継電器23の「事故等と判断し・・(略)・・事故情報を送信し・・(略)・・表示をさせる」構成を、刊行物2記載の考案の「SOG制御回路2の作動に伴って連動するGRスイッチ2bの接点が閉じる、ブザー10bにより警報音が発せられ」、「SOG制御回路2の作動に伴って連動するSOスイッチ2aの接点が閉じ、ブザー10b及び表示灯10hにより警報が発せられる」ものとすることは、当業者がきわめて容易になし得ることである。
なお、開閉器の監視を、開閉器に設けた接点で行うことは、刊行物2記載の考案の他にも、例えば、特公平8-32134号公報(「警報接点AL」「漏電警報接点EAL」)、特開2005-158652号公報(「警報接点2a」)、特開2009-81928号公報(【0022】)等に記載されているように、周知慣用技術であって、特殊なものでもない。

そうすると、本件考案3は、引用考案2、刊行物2記載の考案、周知慣用技術に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

5.本件考案4について
(1)本件考案4と引用考案3との対比
本件考案4は、本件考案3の構成を全て含み、さらに「前記接点入出力監視装置が光回線を介して監視機関に警報信号を発信する」との限定を加えたものである。(なお、「接点入出力監視装置」は、請求項1、2に存在しないので、便宜的に本件考案4は、本件考案3の構成を全て含むものとして取り扱った。)
また、引用考案3は、引用考案2の構成を全て含み、さらに「高圧受配電部3と、継電器23とをメタルケーブル又は光ケーブル等の信号線によって接続」する構成を備えたものである。
そうすると、本件考案4と引用考案3とは、上記2.(1)ア.?ウ.、4.(1)オ.と同様の対応関係に加え、
カ.引用考案3の「光ケーブル等の信号線」及び「事故情報を送信」は、本件考案4の「光回線」及び「警報信号を発信」に相当する。
引用考案3の「高圧受配電部」と、本件考案4の「監視機関」とは、前者が「事故情報等の表示をさせることで、各種検出器の状況を集中して監視する」ものであるので、「監視場所」である点で共通する。
そして、引用考案3の高圧受配電設備システムの「高圧受配電部3と、継電器23とをメタルケーブル又は光ケーブル等の信号線によって接続し、
継電器23は、零相電流回路231、電圧回路232、電流回路233、比較回路234、通信回路235a、及び電源回路24を備え、短絡等の過電流事故、地絡事故及びサージを伴う事故等と判断した場合は、高圧受配電部3へ事故情報を送信し」ている構成と、本件考案4の高圧一括受電設備の「前記接点入出力監視装置が光回線を介して監視機関に警報信号を発信する」ている構成とは、監視装置が光回線を介して監視場所に警報信号を発信する点で共通する。

そうすると、本件考案4と引用考案3とは、上記2.(1)、4.(1)の一致点に加えて、
「監視装置が光回線を介して監視場所に警報信号を発信する」点で一致し、相違点1、3に加えて、次の点でも相違する。

相違点4:監視場所が、本件考案4は「監視機関」であるのに対して、引用考案3は「高圧受配電部」である点。

(2)相違点4についての判断
刊行物1は、記載事項(ス)に参考例7として、「受電側遮断器2bは、管理通信線6を介して管理設備7に接続されている。・・(略)・・管理設備7は、各需要家の受電側遮断器2bの継電器23から送信される地絡情報等の情報を受信し、高圧配電線路1上のサージをともなう事故による故障点の標定を行ったり、受信した情報の管理及び集計等を行う設備である。」と記載され、各需要家から送信される情報を共通の管理設備(本件考案4の「監視機関」に相当。)で管理、集計することが示唆されている。
そして、引用考案3の監視場所を、各需要家に共通の管理設備で管理、集計するものとして、本件考案4の相違点4に係る構成とすることは、当業者がきわめて容易に想到し得たことである。

そうすると、本件考案4は、引用考案3、刊行物1記載の事項、刊行物2記載の考案、周知慣用技術に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

6.小括
本件考案1?4は、引用考案1、2、3、刊行物1記載の事項、刊行物2記載の考案、周知慣用技術に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、その考案は実用新案法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。


第6 請求人の主張する無効理由(実用新案法第37条第1項第5号)について
請求人は、本件考案1?4は、真の考案者である細川正美が考案したものであり、真の考案者である細川正美に無断で実用新案登録権者であるあなぶきパワー&リース株式会社が出願したものであるから、本件実用新案登録は、実用新案法第37条第1項第5号に該当し、無効とすべきである旨の無効理由を主張している。

1.本件考案1?4が細川正美が考案したものであるかについて
1-1.当事者の主張
各当事者の考案者に関しての主な主張を摘記すると以下のようなものである。

ア.請求人の主張
(ア)「平成24年10月:請求人が本件考案を単独で完成」(審判請求書第5頁)
(イ)「平成26年10月31日:本件考案の改良(光回線を利用した監視制御装置適用)に関する打ち合わせ(戸上電機製作所、請求人参加)」(審判請求書第5頁)
(ウ)「○1 本件考案は、請求人が、平成24年10月頃に、日本電力株式会社丸山正二氏と面談して高圧一括受電設備に関する議論を行った際に、丸山氏より戸上電機製作所のGBTの制作状況に関する情報を得たことを契機として、平成24年10月頃に考案されたものである。
○2 本件考案の内容は、高圧一括受電設備において、地絡継電装置付高圧気中負荷開閉器(Ground Relay付Pole Air Switch、以下GR付PASという)と、遮断機能付きガス開閉器(GBT)を組み合わせたことに特徴を有するものである。そして、かかる構成とすることによって、地絡・短絡が生じた際に、他の設備への波及事故を防止するとともに、送電を停止せずに遮断機の点検を実施できるようになるというものである(甲第6号証参照)。」(審判請求書第6頁)
(なお、○1等は、丸数字の1等を表す。以下も同様。))
(エ)「○9 経済産業省中国四国産業保安監督部を訪問の後、請求人の提案で、平成26年7月に、戸上電機製作所(参加者:秀雄二氏)と被請求人(参加者:請求人、末澤氏、他数名)が参加して、勉強会(以下、第二回勉強会という)が実施された。第二回勉強会において、本件考案を採用したマンション用の高圧一括受電設備(甲第6号証参照)を実用化する方向で議論がまとまり、この方針は被請求人社内で了承された。なお、甲第6号証は、第二回勉強会の議事内容に基づいて、第二回勉強会までの検討事項をまとめたものである。」(審判請求書第7?8頁)
(オ)「請求人と被請求人の従業者との間で、以下のようなやり取りがあり、その中で被請求人は、本件実用新案登録に係る考案の真の考案者が請求人であることを認めている。・・(略)・・
6)この面談の席上で、植田氏は、本件考案が請求人の考案であり、本件実用新案登録が冒認出願であることを被請求人および被請求人の親会社である穴吹興産株式会社が認めていることを表明した上で、金銭による対価を支払うことにより、考案者の変更による解決を求めた(甲第3号証)。」(審判請求書第9?10頁)
(カ)「本件考案を請求人が考案したことを示す資料は、ほとんど被請求人側が保管している。
したがって、以下では、請求人が保持している甲第6号証、甲第7号証だけを用いて、本件考案が請求人の考案であることを確認する。」(審判請求書第11頁)
(キ)「甲第6号証は、請求人の考案(本件考案)の内容が記載された書面であり、甲第6号証には以下の考案が開示されている。
甲第7号証は、本件考案に使用される遮断機能付きガス開閉器(GBT)が説明された
(甲第6号証に開示されている考案)
(a)マンションにおける高圧一括受電設備であって、
(b-1)GR付PASと、
(b-2)トランスTと有する、
(b)受電装置を備えており、
(b)受電装置は、
(c)GBTを有しており、
(e)GR付PASには、制御装置が接続されており、
(O GBTには、制御装置が接続されている。」(審判請求書第11?12頁)
(ク)「甲第6号証記載の考案は請求人が考案したものであることを、甲第8号証によって証明する。なお、甲第6号証の図面は、請求人の指示に基づいて株式会社ミライトの大西寿氏が作成したものである。」(口頭審理陳述要領書第4頁)
(ケ)「○3 以上のように、甲第6号証には本件考案における構成(F)、(G)は記載されていないが、甲第6号証の構成(a)?(e)と対応する構成(A)?(D)に加えて、構成(E)、(F)、(G)を有する本件考案3、4の考案も、請求人が考案したものである。」(口頭審理陳述要領書第8頁)
(コ)「また、甲第6号証に記載されている考案は請求人考案であり、甲第6号証に記載されている考案と本件考案は同じ考案である。
そして、審判請求書第10頁14-24行「[2]本件考案が冒認出願となった証拠 <請求人と被請求人とのやりとり>」、「甲第3号証1頁8-18行」および「甲第5号証4頁」に記載のとおり、被請求人は、本件考案の考案者が請求人であることを認めている。」(口頭審理陳述要領書第9頁)
(サ)「『北村和義氏』は、甲9号証に記載のとおり、本人が考案者ではないことを認めている。」(口頭審理陳述要領書(2)第3頁)

イ.被請求人の主張
(ア)「甲6号証の考案は、本件考案と実質同一の技術である。」(口頭審理陳述要領書第3頁)
(イ)「請求人が主張する(審判請求書6頁の2)○1)ように、平成24年10月に完成されたものではない。真実は、請求人が審判請求書の6頁の○3から8頁の○9までに記載する会議や勉強会等での検討、保安監督部による指導を経て完成に至ったものである」(口頭審理陳述要領書第4頁)
(ウ)「上記のとおり本件考案は、(株)戸上電機製作所よりGBTの提案がされたことが切っ掛けとなったものであるが、それを高圧一括受電設備に応用して考案として完成させたのは、被請求人の従業員数名であり、それには請求人細川正美の外、北村和義氏および末澤優樹氏の少なくとも2名がいたことが確認されている。」(口頭審理陳述要領書第4頁)
(エ)「4)審判請求書「7.請求の理由」における「IV 本件実用新案登録を無効とすべき理由」のうち「[1]本件考案が冒認出願となった経緯」の(1)と(2)について、
以下のとおり認否する。
・(1)は争う。」(口頭審理陳述要領書第6頁。口頭審理陳述要領書(第2)第2頁で訂正)
(オ)「1)本件考案は、本書面3?4頁の第2の(1)、(1-1)で述べたように、非当事者(株)戸上電機製作所よりのGBTの提案が切っ掛けとなったものであるが、それを高圧一括受電設備に応用して考案として完成させたのは、平成26年10月頃である。・・(略)・・
2)また、本件考案の完成には、数度にわたる社内定例会議や勉強会での検討を積み重ねることによって完成したものである。請求人は、考案に関与した複数の従業員のなかの一人であったことは認めるが、単独考案というわけではない。
請求人以外の他の考案者としては、貢献度は今となっては不明であるものの北村和義氏、末滓優樹氏をあげることができる。」(口頭審理陳述要領書第12頁)

1-2.当審の判断
(1)請求人は、甲第6号証を提出して「甲第6号証に記載されている考案は請求人考案」と主張すると共に、甲第8号証を提出して「甲第6号証記載の考案は請求人が考案したものであることを、甲第8号証によって証明する。」としているが、甲第6号証は「平成26年7月開催の第2回の勉強会の議事内容に基づいてまとめられた本件考案の実施態様に関する資料」であって、
(ア)「マンションにおける高圧一括受電設備(キュービクルレスシステム)」(中央上欄)
(イ)「資料番号(判読不可)、作成2014年10月2日 株式会社戸上製作所」(右上欄)
(ウ)「○2責任分界点にG付PASを設置し、PASの二次側にGBTを設置*PAS開放により、GBT一次側の点検が可能
-第1号柱-G付PAS-VCT-GBT-PCの図記号-T-MCCB-」(中央欄)
が記載されており、○2の高圧一括受電設備は、被請求人も「甲6号証の考案は、本件考案と実質同一の技術である。」(口頭審理陳述要領書第3頁)と認めているように、本件考案1、2と同じ構成のものである。
しかし、甲第6号証は株式会社戸上製作所名の書面であり、甲第6号証には請求人の考案であることを読み取れるような記載は存在しないので、甲第6号証の記載内容に基づいて、「甲第6号証に記載されている考案は請求人考案」であると認定することはできない。

(2)甲第8号証は、株式会社ミライト西日本支店 大西寿の証明書であって、そこには、
(ア)「2.添付資料1の書面は、私が、あなぶきパワー&リース株式会社に勤務していた細川正美殿の指示のもと、平成26年7月に開催された勉強会の議事内容に基づいて作成したものです。」(第6?8行)
(イ)「3.添付資料1の書面に記載されているシステムの構成は、細川正美殿から提案された技術であり、細川正美殿が考案されたものであることを証明します。」(第9?10行)
が記載されており、
(ウ)添付資料1として、甲第6号証と同様の図面が添付されている。

しかし、甲第8号証「2.」の記載によると、平成26年7月に開催された勉強会の議事内容に基づいて作成したものであって、勉強会のメンバー共有の議事内容であるとはいえても、添付資料1が請求人の考案であることを証明できるものではない。
「3.」の「細川正美殿から提案された技術であり、細川正美殿が考案されたものである」との説明も、「2.」以外の根拠は示されていない。
そして、そのような個人的見解のみを根拠に、甲第6号証記載の考案は請求人が考案したものであると認定できるものではない。
また、仮に大西寿が添付資料1の書面作成した時点で「細川正美殿から提案された技術であり、細川正美殿が考案されたものである」との見解を有していたとしても、甲第8号証で、当該見解が事実であるか否かを確認することはできないし、そもそも、大西寿が添付資料1の書面作成した時期は、請求人が「本件考案を単独で完成」と主張する平成24年10月から、2年近く経過し、少なくとも2回の勉強会を経た後であることを考えると、仮に、大西寿が平成26年7月に開催された勉強会に参加し、その勉強会の議事内容に基づいて大西寿が「細川正美殿から提案された技術であり、細川正美殿が考案されたものである」との印象を受けていたとしても、(細川正美殿が考案したとの印象が、伝聞や想像等の、大西寿が実際に経験したこと以外の要因により形成され、そのよりどころとなる伝聞や想像等が正しいものでない等の事態も想定され、)大西寿が平成26年7月の勉強会で受けた印象をもとに、甲第6号証記載の考案は請求人が考案したものであると認定することはできない。
さらに、被請求人からは、大西寿が作成した「今回のような書面に使用されることは、私の意思に反したものであり、また証明書は細川正美殿とあなぶきパワー&リース株式会社殿との関係と業務打合せ内容とまたその経緯について証明したものではありません。」旨記載された、乙9号証が提出されており、甲第8号証の証明内容の信憑性についての疑念がある。
そうすると、甲第8号証によって、甲第6号証記載の考案は請求人が考案したものであることは証明されない。

(3)請求人は、本件考案3、4に関して「甲第6号証には本件考案における構成(F)、(G)は記載されていないが、甲第6号証の構成(a)?(e)と対応する構成(A)?(D)に加えて、構成(E)、(F)、(G)を有する本件考案3、4の考案も、請求人が考案したものである。」(口頭審理陳述要領書第8頁)と主張するものの、当該事項を証明する証拠は何ら提出されていないから、請求人の主張のみに基づいて「本件考案3、4の考案も、請求人が考案したものである。」と認めることはできない。

(4)請求人は、「6)この面談の席上で、植田氏は、本件考案が請求人の考案であり、本件実用新案登録が冒認出願であることを被請求人および被請求人の親会社である穴吹興産株式会社が認めていることを表明した・・(略)・・(甲第3号証)。」(審判請求書第9?10頁)、「審判請求書第10頁14-24行『[2]本件考案が冒認出願となった証拠 <請求人と被請求人とのやりとり>』、『甲第3号証1頁8-18行」および『甲第5号証4頁』に記載のとおり、被請求人は、本件考案の考案者が請求人であることを認めている。」(口頭審理陳述要領書第9頁)旨主張している。
それに対して、被請求人は、口頭審理陳述要領書第6頁(口頭審理陳述要領書(第2)第2頁で訂正)で「争う」とし、「考案として完成させたのは、平成26年10月頃である。・・(略)・・本件考案の完成には、数度にわたる社内定例会議や勉強会での検討を積み重ねることによって完成したものである。請求人は、考案に関与した複数の従業員のなかの一人であったことは認めるが、単独考案というわけではない。」旨の抗弁をしているので、被請求人が本件考案1?4を細川正美が考案したものであることを認めているとはいえない。
なお、請求人の主張する無効理由は、実用新案法第37条第1項第5号のみであって、実用新案法第37条第1項第2号の「実用新案登録が第11条第1項において準用する特許法第38条の規定に違反してされたとき」(所謂共同出願違反。)は、本件無効審判事件の無効理由として主張されていない。

(5)なお、当審は審理事項通知書(2)(FAX)で「必要と考える立証は尽くしたのか(証人尋問による立証は必要ないと、請求人が判断したと解してよいか?)。」確認したが、請求人は「証人尋問は必要ないと判断する。」と回答している。

(6)そうすると、請求人の提出した証拠からは、本件考案1?4が細川正美が考案したものであるとはいえない。

2.真の考案者に無断で出願したものであるかについて
上記1.に記載したように、請求人は真の考案者であるとはいえない以上、本件実用新案登録が、真の考案者に無断で出願したものであるとはいえない。

3.被請求人の「本件請求を却下する」との審決を求める主張について
被請求人は、「新規性を喪失した時点で実用新案登録を受けることはできない。ゆえに、請求人は本件無効審判の請求人適格を有しない(実用新案法第37条第2項)」(陳述要領書第2頁)、「本件審判請求は請求の利益がない。」(陳述要領書第2頁)旨主張しているので、請求人の主張について検討する。
(1)被請求人の主張する、所謂新規性喪失や、実用新案登録を受ける権利を有するものは、実体審理により確認されるものであって、実体審理を行わずに、実用新案法第41条において準用する、特許法第135条の規定により被請求人に答弁書を提出する機会を与えないで、審決をもって却下することは適当でない。
(2)実用新案登録無効審判は、基本的には何人も請求することができるものであり、請求の利益の有無は、請求人適格に影響を与えるものでない。
また、実用新案法第37条第1項第5号についての請求人は、実用新案法第37条第2項で、実用新案登録を受ける権利を有するものに制限されているが、実用新案登録を受ける権利を有するものは、実体審理により確認されるものであって、実体審理を行わずに、審決却下するのは適当でない。
(3)したがって、本件無効審判請求は、審決をもつて却下するのではなく、実体審理により結論を導くのが相当である。

4.小括
請求人の主張および証拠から、本件考案1?4が請求人が考案したものである事実は証明されない。
そうすると、本件実用新案登録が請求人に対して無断で出願したものであるとしても、本件実用新案登録は、実用新案法第37条第1項第5号に該当するとはいえないから、請求人の主張する無効理由(実用新案法第37条第1項第5号)によっては無効とすることはできない。

第7 むすび
以上のとおり、当審の無効理由(実用新案法第3条第2項)についての検討のとおり、本件考案1?4は、引用考案1、2、3、刊行物1記載の事項、刊行物2記載の考案、周知慣用技術に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、その考案は実用新案法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、実用新案法第41条において準用する、第169条第2項の規定においてさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2017-01-25 
結審通知日 2017-02-01 
審決日 2017-02-14 
出願番号 実願2015-2198(U2015-2198) 
審決分類 U 1 114・ 152- Z (H02H)
U 1 114・ 121- Z (H02H)
最終処分 成立  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 藤井 昇
中川 真一
登録日 2015-06-24 
登録番号 実用新案登録第3198692号(U3198692) 
考案の名称 高圧一括受電設備  
代理人 竹下 千尋  
代理人 山本 洋三  
代理人 特許業務法人山内特許事務所  
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