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審決分類 審判    B01F
審判    B01F
審判    B01F
管理番号 1329139
審判番号 無効2016-400008  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-06-29 
確定日 2017-06-02 
事件の表示 上記当事者間の登録第3190824号実用新案「気体溶解装置」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.請求及び答弁の趣旨
審理の全趣旨から見て、請求人は、登録第3190824号実用新案の請求項1ないし8に係る考案についての実用新案登録を無効とする、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、被請求人は、本件審判の請求は、成り立たない、審判費用は、請求人の負担とする、との審決を求めている。


第2.手続の経緯
主な手続の経緯を示す。
平成26年 3月12日 本件実用新案登録出願
平成26年 4月30日 設定登録(実用新案登録第3190824号)
平成27年 8月26日付け 訂正書
平成28年 6月29日付け 審判請求書
平成28年 9月21日付け 答弁書
平成28年10月12日付け 審理事項通知
平成28年11月 8日付け 請求人及び被請求人・口頭審理陳述要領書
平成28年11月10日付け 審理事項通知
平成28年11月25日付け 請求人及び被請求人・口頭審理陳述要領書(2)
平成28年12月 1日付け 請求人・口頭審理陳述要領書(3)
平成28年12月 1日 口頭審理


第3.本件考案
本件の請求項1ないし8に係る考案(以下、「本件考案1」ないし「本件考案8」という。)は、平成27年8月26日付け訂正書に添付された実用新案登録請求の範囲に記載された以下のとおりのものであるところ、本件考案1ないし8は以下のとおりである。

《本件考案1》
気体を発生する気体発生機構と、
前記気体を加圧して液体に溶解させる加圧型気体溶解機構と、
前記気体を溶解している前記液体を溶存する溶存機構と、
前記液体が細管を流れることで降圧する降圧機構と、を有し、
前記細管の内径が、1.0mmより大きく5.0mm以下であり、
前記気体が水素であり、前記気体発生機構が、水素発生機構であることを特徴とする
気体溶解装置。
《本件考案2》
前記水素発生機構が、電気分解により水素を発生させるものである請求項1記載の気体溶解装置。
《本件考案3》
前記気体が水素であり、水素の前記液体中の濃度が7℃で1.5ppmより大きい請求項2記載の気体溶解装置。
《本件考案4》
前記気体発生機構と、前記加圧型気体溶解機構とを制御するコントロール機構を有する請求項3記載の気体溶解装置。
《本件考案5》
前記コントロール機構により、前記気体発生機構と前記加圧型気体溶解機構の稼働時間が5?60分間であり、かつ前記稼働時間の1?5倍の停止時間で、前記気体発生機構と前記加圧型気体溶解機構を制御する請求項4記載の気体溶解装置。
《本件考案6》
前記加圧型気体溶解機構が、ダイヤフラムポンプである請求項5記載の気体溶解装置。
《本件考案7》
前記溶存機構を2個以上有する請求項6記載の気体溶解装置。
《本件考案8》
前記気体発生機構が、イオン交換機構を有する請求項7記載の気体溶解装置。


第4.当事者の主張及び証拠方法
以下において、甲第1号証等を甲1等といい、甲1に記載された考案を甲1考案といい、審判請求書を請求書といい、平成28年10月12日付け審理事項通知、平成28年11月10日付け審理事項通知を、審理事項通知、審理事項通知(2)といい、平成28年11月8日付け口頭審理陳述要領書、平成28年11月25日付け口頭審理陳述要領書、平成28年12月1日付け口頭審理陳述要領書を、要領書、要領書(2)、要領書(3)といい、第1回口頭審理調書を調書という。
なお、行数は、空行を含まない。また、丸数字は(丸1)等と表記する。

1.請求人の主張及び証拠方法
(1)無効理由(主張の要旨)
請求人の主張の全趣旨からみて、請求人が主張する無効理由は、以下のとおりである。
なお、理由1が以下のとおりであることについて、当事者間に争いはない。(請求人要領書2頁7?9行及び被請求人要領書3頁7?8行)
また、理由2について、請求人は、「甲1考案」を請求人のいう「甲1装置」とする限りにおいて、及び、相違点が実質的か形式的かは別論として、無効理由を以下のとおりとしてさしつかえない旨述べている。(調書 請求人欄2)

理由1:実用新案法5条4項及び6項2号違反(同法37条4項)
請求項1の「前記気体を溶解している前記液体を溶存する溶存機構」は、考案の詳細な説明の記載を精査しても意味不明であるから、本件明細書の考案の詳細な説明は、明確かつ十分に、記載したものでなく、また、本件考案は明確でない。

理由2:実用新案法3条2項違反(同法37条1項2号)
本件考案1は、甲1考案から、または、甲1考案及び甲2記載事項からきわめて容易。
本件考案2は、甲1考案から、または、甲1考案及び甲2記載事項からきわめて容易。
本件考案3?8は、直接的または間接的に、本件考案2を引用するものであるから、本件考案2と同様の理由により、きわめて容易。

(2)証拠
請求人が提出した証拠は、以下のとおりである。
甲1:特開2008-188574号公報
甲2:特開2010-115594号公報
甲3:特開2013-128882号公報
甲4:特開2013-99735号公報
甲5:特開2013-94757号公報

(3)主張の要点
請求人の主張の要点は、以下のとおりである。
ア.理由1について
(ア)「溶存する」という動詞の意味は、「広辞苑」等の辞書に掲載されておらず、そもそも「溶存する」という動詞が何を意味するかは不明瞭である。
これらの辞典において、「溶存酸素」という語の意味は、「水中に溶解している分子状の酸素。水以外の液体にもいう」(「精選版日本国語大辞典」)等と解説されており、「溶存」するとは「気体を水などの液体に溶解させる」ことをいうものと解される。
一方、オンライン英和・和英辞書データベースである「英辞郎 on the WEB」には、「溶存する」の訳語として、”exist in solution” と記載されているから、「溶存する」とは「溶液中に存在する」という意味であると理解される。
これらを踏まえ、「前記気体を溶解している前記液体を溶存する溶存機構」を強いて言葉を補って書き直すと、「前記気体を溶解している液体(水?)を前記液体に溶解させる溶存機構」という意味になり、日本語として、全く意味をなさないと言わざるを得ない。(請求書4頁下から6行?5頁20行)
(イ)被請求人は、答弁書において、「『前記液体を溶存する』とは、『前記液体を、前記気体を溶解した状態で貯留する』ことを意味することは明らか」と主張しているが、その根拠とされる本件実用新案登録公報の段落【0025】、【0028】、【0031】、【0033】には、「貯留」という語は全く記載されていないから、被請求人の主張は全く根拠がない。(請求人要領書2頁下から9行?下から3行)
(ウ)被請求人は、「本件考案1の溶存機構4は、所定の稼働時間だけ気体発生機構2及び加圧型気体溶解機構3を稼働させて、気体(水素)が溶解した液体(水)を所定の停止時間だけ貯留するものであることは明らかである」と主張しているが、その根拠とされる段落【0031】には、気体発生機構2及び加圧型気体溶解機構3が停止されている間、気体が溶解した液体は溶存機構4に貯留される旨の記載はないし、そもそも、「溶存機構4」には全く言及がないから、被請求人の主張は何らの根拠がない。(請求人要領書3頁7行?21行)
(エ)被請求人は、無効2015-400005審判事件においては、「溶存」という語を「気体を液体に溶存」させることを意味すると主張しており、被請求人の主張は、「溶存」という語は「液体を、気体を溶解した状態で貯留する」という意味にも、「気体を液体に溶存」(溶解)させるという意味にも用いることができるというものであることを踏まえると、実用新案登録請求の範囲の記載に基づいて、本件実用新案権の権利範囲を画定することは不可能であるから、「溶存」という語が著しく不明確であることは疑問の余地がない。(請求人要領書3頁下から10行?4頁21行)
(オ)「溶」という漢字は「水などにとける。とかす。」ことを意味し、「存」という漢字は「現にある。生きている。」ことを意味することを踏まえると、「溶存」とは、「水(または液体)に溶けて、存在する」ことを意味し、「溶存する」とは、「水(または液体)に溶かして、存在させる」ことを意味する。
したがって、請求項1の「前記気体を溶解している前記液体を溶存する溶存機構」は意味不明であり、被請求人の主張のように、「『前記液体を溶存する』とは、『前記液体を、前記気体を溶解した状態で貯留する』ことを意味すると解することは不可能である。(請求人要領書4頁26行?5頁16行)

イ.理由2について
(ア)甲1考案、本件考案1との対比について
a.甲1考案
(a)甲1には、ポンプ18によって、液体槽17から液体16が流路15内に吸い上げられて、加圧溶解部3に圧送され、流路15に接続された気体注入部2から、空気、酸素、オゾン、水素、窒素などの気体が流路15内に吸引されて、液体に気体が注入され、気体が注入された液体が加圧部1(ポンプ18)によって、加圧溶解部3内に圧送して送り込むことによって、液体に気体を効率高く飽和量以上に溶解させて、気体溶解液を生成し、加圧溶解部3で生成された気体溶解液は、流路6に送り出され、流路6に設けた減圧部4に流入して、気体溶解液の圧力が大気圧まで減圧されて、吐出されるように構成されている、気体溶解装置が開示され(段落【0032】?【0035】、【0038】、【0039】)、液体槽17、流路15、気体注入部2、ポンプ18(加圧部1)、加圧溶解部3、流路6および減圧部4よりなる、「甲1装置」が記載されている。(請求書6頁16行?下から10行)
(b)甲1は技術文献としての機能を有しており、技術文献としての甲1には、特許請求の範囲の請求項1に記載された「甲1考案」という技術思想に加え「甲1装置」という技術思想も記載されているということにあり、換言すると、見方によって、当業者は甲1から、「甲1考案」という技術思想を抽出することも、「甲1装置」という技術思想を抽出することもできるということに他ならない。
ここに、「甲1考案」は、「大きなタンクを必要とすることなく効率良く気体を溶解させることができるとともに、また異物が混入しても詰まるようなことなく気体溶解液の減圧を行うことができ、気泡の発生を防止して安定した高濃度の気体溶解液を得ることができる気体溶解装置」を提供することを目的とするものであり、液体を圧送する加圧部と、液体に気体を注入する気体注入部と、気体を注入された液体が加圧部で圧送されることによる加圧で液体に気体を溶解させる加圧溶解部と、加圧溶解部で気体を溶解させた気体溶解液の圧力を、気体溶解液の流入側から流出側に向かって順次大気圧まで減圧する減圧部とを備え、加圧部、気体注入部、加圧溶解部の各部を連続的に運転させて、減圧部に気体溶解液を連続的に供給し、減圧部4の流出側から気泡の発生のない気体溶解液を連続的に吐出させるように」構成された気体溶解装置にかかるものである。
一方、「甲1装置」は、「高濃度の気体溶解液を得ることができる気体溶解装置」を提供することを目的とし、液体16を貯留する液体槽17と、加圧溶解部3の上流側に接続された流路15と、気体を流路15に供給する気体注入部2と、液体槽17から液体16を吸い上げて加圧溶解部3に圧送するポンプ18(加圧部1)、液体と気体を加圧することによって、液体に気体を飽和量以上に溶解させる加圧溶解部3と,加圧溶解部3の下流側に接続された流路6と、流路6に設けられ、加圧溶解部3内で加圧された気体溶解液を徐々に大気圧まで減圧し、流路6の先端から吐出する減圧部4とを備えた気体溶解装置である。(請求人要領書(2)2頁5行?29行)
(c)審理事項通知(2)の第3.1.の「甲1考案」と請求人のいう「甲1装置」とは技術思想が異なるが、装置の構成は同一である。(調書 請求人欄1)

b.本件考案1と甲1考案との対比
(a)本件考案1の「前記気体を溶解している前記液体を溶存する」を、強いて「水素を加圧溶解した水を過飽和の状態で保持する機構」と解すると、甲1装置では、ポンプ18によって、気体が注入された液体を加圧溶解部3内に圧送して送り込むことによって、液体に気体を効率高く飽和量以上に溶解させて、気体溶解液が生成されるから、甲1装置の「加圧溶解部3」が本件考案1の「前記気体を溶解している液体を溶存している溶存機構」に相当し、また、本件考案1の「降圧機構」を構成する細管の内径と、甲1考案の「減圧部4」を構成する管体の内径は、2.0mmないし5.0mmの範囲で重なり合っている。
したがって、本件考案1と甲1装置とは、(丸5)本件考案1においては、「加圧して液体に溶解させる」気体が水素に限定されているのに対し、甲1装置においては、水素には限定されていない点、及び、(丸6)本件考案1においては,「気体を発生する気体発生機構」を備えているが,甲1考案においては、気体発生機構を備えてはいない点、で相違する。(請求書7頁1行?8頁7行)
(b)「甲1考案」を請求人のいう「甲1装置」とする限りにおいて、及 び、相違点が実質的か形式的かは別論として、対比、一致点、相違点は、審理事項通知(2)の第1、第3に記載したとおりとしてさしつかえない。(調書 請求人欄2)
(c)技術思想が異なることについての主張は、相違点の判断において検討することでさしつかえない。(調書 請求人欄3)

c.本件考案1の「溶存機構」と甲1考案の「加圧溶解部」
(a)本件考案において「溶存」が何を意味するかは全く明らかでないが、万一仮に、「溶存する」は「保持する」と同義であると解したとしても、本件登録実用新案公報の記載によれば、本件考案1の「加圧型気体溶解機構3」に相当するのは、甲1考案の「ポンプ18で形成される加圧部1」であるから、本件考案1の「前記気体を溶解している前記液体を溶存する溶存機構4」に相当するのは、甲1考案の「加圧溶解部3」である。
甲1の図1、図2、図4、図5、図7、図8、図9を参照すれば、いずれにおいても、槽状の「加圧溶解部3」が設けられており、とくに図7(b)を参照すると、「加圧溶解部3」の断面積は流路6の断面積よりもはるかに大きく、したがって、これらの「加圧溶解部3」が、加圧部1(ポンプ18)によって、気体が加圧溶解された液体を過飽和の状態で保持する機能を有していることは疑いがない。
甲1の図3に示された気体溶解装置においても、流路6に接続した気体注入部2と流路6に設けた圧力調整弁7からなる減圧部4との間の流路部分よりなる加圧溶解部3は、少なくとも、液体に溶解している気体が過飽和の状態に達してから、圧力調整弁7が開かれるまでの所定時間にわたり、気体を加圧溶解した液体を過飽和の状態で保留する(保持する)機能を有していることは疑問の余地がなく、甲1考案の「加圧溶解部3」は本件考案1の「溶存機構」に相当することは明らかである。(請求人要領書6頁27行?7頁末行)
(b)「甲1装置」は単に、「高濃度の気体溶解液を得るための気体溶解装置」で、液体16を貯留する液体槽17と、加圧溶解部3の上流側に接続された流路15と、気体を流路15に供給する気体注入部2と、液体槽17から液体16を吸い上げて加圧溶解部3に圧送するポンプ18(加圧部1)、液体と気体を加圧することによって、液体に気体を飽和量以上に溶解させる加圧溶解部3と、加圧溶解部3の下流側に接続された流路6と、流路6に設けられ、加圧溶解部3内で加圧された気体溶解液を徐々に大気圧まで減圧し、流路6の先端から吐出する減圧部4とを備えたものであり、加圧溶解部を小型化することを目的とするものではないから、甲1の【0011】、【0013】および【0042】の記載を根拠に、甲1装置の「加圧溶解部3」は、「気体を加圧溶解した液体を過飽和の状態で保持する機能を有するものとは、ただちにいえない」と認定することは誤りである。
甲1装置においては、加圧溶解部3は、その上流側に接続される流路15と下流側に接続される流路6の断面積よりも明らかに大きな断面積を有しており、自然法則に照らせば、同気体溶解装置においては、気体を高濃度に溶解した気体溶解液は、必然的に、加圧溶解部3内で保持されるものであり、甲1の【0011】、【0013】および【0042】に、どのように記載されていても、このような現象が起こることは否定できない。よって、「本件考案1は、『前記気体を溶解している前記液体を溶存する溶存機構』を有しているのに対し、甲1考案は、『前記加圧部で圧送されることによる加圧で液体に気体を溶解させる加圧溶解部』を有している点」で相違しているとは到底いえない。(請求人要領書(2)3頁下から4行?4頁下から4行)
(c)甲1の加圧溶解部3の断面積は、流路15、6の断面積よりもはるかに大きく、たとえば、加圧溶解部3の断面積が流路15、6の断面積の10倍だとすると、加圧溶解部3内を流れる単位時間あたりの水の流速は、流路6内を流れる単位時間あたりの水の流速の1/10になり、前記加圧溶解部3が、気体を加圧溶解した液体を過飽和の状態で保持する機能を有していることは明らかである。
また、本件明細書には、溶存タンク41および溶存タンク42が気体を加圧溶解した液体を過飽和の状態で保持するために特段の構成を有している旨の記載はなく、本件実用新案登録公報の図1に示された気体溶解装置の溶存タンク41および溶存タンク42ならびに図2に示された気体溶解装置の溶存タンク41および溶存タンク42が気体を加圧溶解した液体を過飽和の状態で保持する機能を有しているというのであれば、甲1の加圧溶解部3もまた、気体を加圧溶解した液体を過飽和の状態で保持する機能を有しているということになる。(請求人要領書(3)2頁下から4行?4頁12行)
(d)甲1の図7から「加圧溶解部3」の径が、他の径より大きいことは明らかである。意図もなく「加圧溶解部3」を大径に描くことはない。(調書 請求人欄4)
(e)本件考案1が30分かけて貯留する点は、本件明細書に根拠がない 。(調書 請求人欄6)

(イ)相違点(後記第5.2.(2)ア.を参照)の判断について
a.相違点1について
甲2の段落【0003】、甲3の段落【0002】、甲4の段落【0002】、甲5の段落【0002】に記載されているように、近年、水素水の需要が高まっていることを踏まえると、甲1の段落【0033】に例示された空気、酸素、オゾン、水素、窒素、二酸化炭素、アルゴンの中から、水素を選択することは、当業者にとって何の困難性もなく、当然である。(請求書8頁8行?下から6行)
b.相違点2について
流路15の気体注入部2にガスボンベを接続して、ガスボンベに封入された気体を流路15に供給するか、流路15の気体注入部2から、電解槽などの気体発生機構によって発生させた気体を流路15に供給するかは、単なる設計上の微差に過ぎない。
また、甲1と同じ技術分野に属し、気体を加圧して、液体に飽和量以上に溶解させるという点で共通する、「水を電気分解して水素ガスと酸素ガスとを発生させる電解質を含む電解槽と、前記電解槽から発生した前記水素ガスと前記酸素ガスとを吸引して水と混合しながら送液する加圧ポンプと、前記加圧ポンプからの送液を受水するとともに、加圧して水に対する前記水素ガスと前記酸素ガスとの溶解度を高める加圧溶解タンクよりなる、甲2装置」を甲1装置に組み合わせ、甲1装置において、流路15に接続された気体注入部2に水素ボンベを接続するのに代えて、水を電気分解し、水素ガスを生成する電解槽を接続することは、当業者にとっては、日常的な活動に基づいて、当然になすべきことに過ぎない。(請求書8頁下から5行?10頁下から6行)
c.相違点3について
甲1考案の加圧溶解部3は、本件考案1の溶存機構に相当するから、相違点3は相違点ではない。(請求人要領書10頁6行?11行)
d.相違点4について
(a)本件考案1の「降圧機構」を構成する細管の内径と,甲1考案(甲1装置)の「減圧部4」を構成する管体の内径は、2.0mmないし5.0mmの範囲で重なり合っているということは厳然たる事実であるから、甲1考案の「減圧部4」を構成する管体として、2.0mmの内径を有する管体を用いて、気体溶解装置を構成し、気体溶解装置を作動させた結果、必要に応じて、2.0mmの内径を有する管体に代えて、1.0mmの内径を有する管体を用いることは、当業者にとってきわめて容易になし得ることといわざるを得ない。(請求人要領書(3)4頁16行?29行)
(b)構造が同じであれば、「減圧部4」の機能も同じになるはずであり、径を変更することはきわめて容易である。(調書 請求人欄5)

(ウ)本件考案2について
甲1装置において、流路15の気体注入部2に水素ボンベを接続して、水素ボンベに封入された水素を流路15に供給するか、流路15の気体注入部2から、電解槽などの気体発生機構によって発生させた気体を流路15に供給するかは、単なる設計上の微差に過ぎない。
また、甲2装置を甲1装置に組み合わせ、甲1装置において、流路15に接続された気体注入部2に水素ボンベを接続し、水素を供給するのに代えて、流路15の気体注入部2から、電解槽によって発生させた水素を流路15に供給するように構成することは、当業者にとってきわめて容易なことである。
さらに、請求項2は、無効とされるべき請求項1に従属しているから、同様の理由により、無効とされるべきものである。(請求書12頁下から3行?13頁下から10行)

(エ)本件考案3?8について
請求項3、4、5、6、7、8は、各々、無効とされるべき請求項1、3、4、5、6、7に従属しているから、同様の理由により、無効とされるべきものである。(請求書13頁下から9行?15頁2行)

2.被請求人の主張
(1)主張の要旨
被請求人は、本件無効審判の請求は成り立たないと主張している。

(2)主張の要点
被請求人の主張の要点は、以下のとおりである。
ア.理由1について
(ア)本件明細書の記載及び図面を参酌すれば、「溶存する」及び「溶存」との状態は明確に理解可能であり、また、その裏付けは本件明細書に十分かつ明確に記載されている。(答弁書3頁8行?15行)
(イ)本件明細書の「気体溶解装置1は・・・と、前記気体を溶解している前記液体を溶存する溶存機構4と、・・・と、を有している。」(段落【0025】、「水素を加圧溶解した水は、加圧型気体溶解機構3の吐出口9から吐出され、溶存機構4に過飽和の状態で溶存される。溶存機構4に溶存された液体は、・・・水素水吐出口10から外部へ吐出される。」(段落【0028】)、「さらにまた、本考案の気体溶解装置1は、前記コントロール機構により、前記気体発生機構と前記加圧型気体溶解機構の稼働時間が5?60分間であり、かつ前記稼働時間の1?5倍の停止時間で、前記気体発生機構と前記加圧型気体溶解機構を制御することが好ましく、前記気体発生機構と前記加圧型気体溶解機構の稼働時間が10?30分間であり、かつ前記稼働時間の2?4倍の停止時間で、前記気体発生機構と前記加圧型気体溶解機構を制御することがより好ましく、前記気体発生機構と前記加圧型気体溶解機構の稼働時間が10?20分間であり、かつ前記稼働時間の3倍の停止時間で、前記気体発生機構と前記加圧型気体溶解機構を制御することが最も好ましい。・・・」(段落【0031】)、「本考案の気体溶解装置3は、溶存機構4を2個以上有することが好ましい。図1では、溶存タンク41と溶存タンク42を有しており、これにより過飽和の状態をより安定に維持することができる。」(段落【0033】)との記載及び図1を参照すれば、本件考案1の溶存機構4は、所定の稼働時間だけ気体発生機構2及び加圧型気体溶解機構3を稼働させて、気体(水素)が溶解した液体(水)を、所定の停止時間だけ貯留するものであることは明らかである。
特に、図1を参酌すれば、溶存機構4には、溶存タンク41と溶存タンク42とが直列に接続されており、これらの溶存タンクに加圧型気体溶解機構3からの液体が送られてきた場合、上流側の溶存タンク41を通過して下流側の溶存タンク42に供給された液体が、所定時間だけ貯留されると理解できる。
したがって、本件明細書中に特別な定義がなかったとしても、本件請求項1の「前記液体を溶存する」とは、「前記液体を、前記気体を溶解した状態で貯留する」ことを意味することは明らかである。
よって、本件考案1は明確であり、かつ本件明細書は、本件考案1を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものである。(答弁書4頁16行?5頁19行)
(ウ)他事件(無効2015-40005審判事件)での用語の意義の解釈は、考案の詳細な説明を精査するものではないのだから、それ自体が直ちに用語の意義の解釈を拘束するものではない。まして、請求人の主張する他事件における、被請求人の「気体溶解装置」と甲2に開示された「微細気泡発生装置」との装置間の相違説明は、本件請求項1の用語の意義を説明しているものでもない。
請求人は、「溶存」「溶存する」などの用語が文脈に沿って解釈されるべきであること、更に、前者が名詞、後者が動詞であることからその解釈は品詞の相違から本来的に異なり得ること、を看過し、この点でも説得力に欠けるものである。(被請求人要領書(2)3頁7行?17行)

イ.理由2について
(ア)甲1考案、本件考案1との対比について
a.甲1考案
(a)請求人は、甲1考案には、本件考案1における水素発生機構を備えないとするが、これのみならず、溶存機構も備えてはいない。本件考案1の重要な特徴の1つである、溶存機構、加圧型溶解機構、及び水素発生機構を一体に有するべきことを、甲1は記載も示唆もしていない。(答弁書3頁18行?下から9行)
b.本件考案1と甲1考案との対比
審理事項通知の第5.で示された審判合議体の暫定的見解を認める。(被請求人要領書3頁9行?11行)
c.本件考案1の「溶存機構」と甲1考案の「加圧溶解部」
甲1の「加圧溶解部3の流出側と流入側にそれぞれ配管で形成される流路15,6が接続してある。・・・この流路15の途中に加圧部1が設けてある。加圧部1は、例えば、液体槽17から液体16を吸い上げて加圧溶解部3に圧送するポンプ18などで形成されるものである。」(段落【0032】)、「・・・気体が注入された液体を加圧部1で加圧溶解部3へ圧送して送り込むことによって、この圧送による押し込み力で加圧溶解部3内において液体と気体に圧力が加わって高圧になる。このように加圧溶解部3内で液体と気体を加圧することによって、液体に気体を効率高く飽和量以上に溶解させることができ、液体に気体が高濃度で溶解した気体溶解液を得ることができる・・・」(段落【0035】)、「加圧溶解部3内において・・・高濃度で気体が溶解した気体溶解液を短時間で生成することができる・・・送り出しながら、加圧溶解部3内で液体に気体を溶解させる・・・加圧溶解部3をタンクのような容積の大きなもので形成する必要がなくなる・・・」(段落【0036】)との記載によれば、甲1において、「加圧溶解部3」は、「加圧部1」で気体を注入した液体が加圧された状態で送り込まれ、「短時間で」気体溶解液を生成する機構を意味し、「加圧溶解部3」は、タンクのような容積の大きなものを適用しないことから、本件考案1の「溶存機構」のように、気体を溶存した液体を所定時間だけ貯留するという技術思想とは異なるものである。
したがって、甲1における「加圧溶解部3」は、その機能から、本件考案1の「溶存機構」に相当するとは言えないものである。
そして、甲1には、「一方、流出側の流路6は一端を加圧溶解部3に接続し、他端は気体溶解液回収槽(図示省略)などに接続して、大気に開放してある。またこの流路6には減圧部4が設けてある。さらに、加圧溶解部3には余剰気体排出部5が設けてある。」(段落【0034】)と記載されており、この記載から、甲1には、本件考案1の「降圧機構」に相当する「減圧部4」は開示されているものの、「加圧溶解部3」に加えて気体溶解液を貯留する追加的な構成を設ける点の記載はなく、また、「加圧溶解部3」で生成された気体を溶解した水を溶存する(所定時間だけ貯留する)溶存機構の構成を追加する動機付けが記載又は示唆されていない。
したがって、甲1には、本件考案1の「前記気体を溶解している前記液体を溶存する溶存機構」に相当する構成は記載又は示唆されていない。(答弁書6頁26行?7頁下から8行)

(イ)相違点(後記第5.2.(2)ア.を参照)の判断について
a.相違点1について
本件明細書の段落【0030】及び【0037】には、水素ボンベに代えて水素発生機構(気体発生機構)を用いることによる効果が記載されているのに対して、甲1には、ボンベを他の構成に代えること、及び代えることによる効果についての記載又は示唆がなされていないから、甲1考案において、ボンベを気体発生機構に代える点は、単なる設計上の微差ではない。(答弁書7頁下から7行?8頁20行)
b.相違点2について
甲2の【請求項1】、段落【0028】、【0029】、【0040】の記載によれば、甲2には、請求人が指摘する「水を電気分解して水素ガスと酸素ガスとを発生させる電解質を含む電解槽」及び「電解槽で発生した気体を加圧溶解タンク内で液体に加圧溶解し、絞り機構で減圧した後、受水槽に供給することで水中に微細気泡を発生させる技術」が記載されているとなるが、甲2にも、本件考案1の「前記気体を溶解している前記液体を溶存する溶存機構」の構成が記載されていない。
したがって、仮に、甲1発明に、審判請求人が主張する上記した甲2号証に記載された電解槽を組み合わせたとしても、本件考案1に至るものではない。(答弁書8頁末行?9頁末行)
c.相違点3について
(a)甲1において、加圧溶解部3で気体を加圧溶解した液体を過飽和の状態で保持するとの明示の記載はなく、また、加圧溶解部3に水が保持されるかどうかに、加圧溶解部3の断面積と流路6の断面積とは無関係である。
甲1の段落【0034】の「加圧溶解部3には余剰気体排出部5が設けてある。余剰気体排出部5は、例えば、一端を大気に開放した管体を、加圧溶解部3内の気圧が所定の圧力以上になると開口するガス抜き弁などを介して加圧溶解部3に接続する」との記載からみて、加圧溶解部3の内部を一定圧に維持する余剰気体排出部5が設けられている。この一定圧の状態において、加圧部1から加圧溶解部3に入った水が流路6から同量だけ直ちに排出されていくなら、加圧溶解部3の断面積が流路6の断面積よりも大きいからといって、加圧溶解部3で気体を加圧溶解した液体を過飽和の状態で保持するものではない。
ゆえに、加圧溶解部3の断面積が流路6の断面積よりも大きいことは、加圧溶解部3で気体を加圧溶解した液体を過飽和の状態で保持するものとは限らないから、「保持されること」について開示するとの根拠にはなり得ない。
甲1には「保持されること」の明示の記載がなく、むしろ容積の小さなタンクを選択し(例えば、甲1の段落【0011】、【0013】、【0042】を参照)、加圧溶解部3の内部を一定圧に維持されるまでの滞留水の量さえも減らすことを述べているのであるから、加圧溶解部3で気体を加圧溶解した液体を過飽和の状態で保持することを開示しないだけでなく示唆もしていないとすべきである。(被請求人要領書(2)3頁27行?4頁18行)
(b)甲1の図3の気体溶解装置では、圧力調整弁7が開かれてしまえば、水道配管19から加圧溶解部3(流路6)に入った水が圧力調整弁7の下流から直ちに排出されて水は保持されない。このように、「保持されること」の明示の記載がない中、図3以外の装置例よりも一層、加圧溶解部3の内部を一定圧に維持されるまでの水の滞留量を減らすことを述べているのであるから、加圧溶解部3で気体を加圧溶解した液体を過飽和の状態で保持することを開示しないだけでなく示唆もしていないとすべきである。(被請求人要領書(2)4頁19行?下から10行)
(c)連続的に流すものである甲1考案と、貯留する本件考案1とは技術思想が異なるところ、請求人の「加圧溶解部3」が気体溶存機能を有するとの主張は、甲1の図面の記載のみを根拠としており、明細書の記載に基づくものではない。(調書 被請求人欄1)
d.相違点4について
(a)甲1には「この気体溶解装置にあって、ポンプで形成される加圧部1を連続運転することによって、気体注入部2、加圧溶解部3を連続的に運転させて、減圧部4に気体溶解液を連続的に供給するようにすることができる・・・」(段落【0052】)と記載されており、甲1装置の「減圧部」が気体溶解液を連続的に供給される上でこそ機能するとしている。これは、段落【0048】で安定した流れに対して適用されるDarcy-Weisbach式に言及していることとも整合する。つまり、請求人が引用した段落【0053】の「減圧部4を例えば内径2?50mm程度の比較的大きい流路として形成することができる」との記載は、気体溶解液を連続的に供給するなら、流路を比較的大きい内径として形成できる、との内容を述べているのである。
他方、本件考案1では、液体を貯留する溶存機構を設けており、液体を連続的に降圧機構に供給することを意図していない。これは、液体を連続的に降圧機構に供給することに反するような、本件考案5や本件考案7からも明らかである。このような液体を貯留する溶存機構を設けて液体を流す場合、「降圧機構」において終始安定した流れを得られるわけではないから、甲1で言及されるような、安定した流れに対して適用されるDarcy-Weisbach式は適用できない。そこで、本件考案1では、細管の内径を1.0mmよりも大きくはでき得るのだが、それもせいぜい5.0mm以下であるとしたものである。
本件考案1は、本件明細書の段落【0010】や【0029】で述べたように、特許文献7(特開平8-89771号公報)のような細いキャピラリ管を用いることなく降圧機構を与えたいところ、敢えて細管の内径を細い範囲に限定する技術思想である。(被請求人要領書3頁21行?4頁7行)
(b)本件考案1の細管の内径範囲は、甲1装置の減圧部の2?50mm程度とした内径範囲とはその技術思想が異なるから、「2.0mmないし5.0mmの範囲で重なり合っている」としても、内径の小さい細管を採用すること、特に細管の内径を1.0mm程度とすることまでを想到することは、当業者であってもきわめて容易になし得るとは言えない。(被請求人要領書4頁8行?13行、被請求人要領書(2)4頁下から9行?下から5行)
(c)本件考案1の内径範囲の技術的意義は、適切な細さとする点であるのに対し、甲1考案の内径範囲の技術的意義は、明細書段落【0053】にあるように連続的に流すことである。(調書 被請求人欄2)

(ウ)本件考案2?8について
本件考案1は、甲1?甲5に記載された発明に基づいて、当業者がきわめて容易に考案できたものではないから、これに従属し、本件考案1の特定事項をすべて含む考案である本件考案2?8についても、甲1?甲5に記載された発明に基づいて、当業者がきわめて容易に考案できたものではない。(答弁書10頁12行?17行)


第5.当審の判断
1.理由1(実用新案法5条4項及び6項2号違反)について
「溶存」や「溶存する」という語は、各種辞書等に掲載されているような一般的な用語ではない。
そこで、本件明細書の考案の詳細な説明における記載を検討する。
本件明細書では、これらの語について以下の記載がある。
(1)「・・・さらに、特許文献3には・・・活性水素を溶存した水素水を生成する水素水化処理装置と・・・とから構成したことを特徴とする水素水製造装置が、開示されている。」(段落【0008】)
(2)「・・・さらに、特許文献5には・・・溶存水素以外の水素を放出させる放気安定槽とを含んで構成されることを特徴とする水素水の連続製造装置が、開示されている。」(段落【0009】)
(3)「即ち、本考案の気体溶解装置は・・・前記気体を溶解している前記液体を溶存する溶存機構と・・・と、を有することを特徴とするものである。」(段落【0017】)
(4)「また、本考案の気体溶解装置は、前記溶存機構を2個以上有することが好ましい。」(段落【0021】)
(5)「・・・図中・・・4は溶存機構・・・である。気体溶解装置1は・・・前記気体を溶解している前記液体を溶存する溶存機構4と・・・と、を有している。気体が過飽和で溶存している液体が、細管中を流れて降圧することで、気体を過飽和の状態で液体に溶解させ、さらに過飽和の状態を安定に維持することができる。ここで、「過飽和」とは、気体の液体への溶解度は温度により異なるが、ある温度A(℃)における気体の液体への溶解量が、その温度A(℃)における溶解度より多く溶解している状態を示す。」(段落【0025】)
(6)「・・・水素を加圧溶解した水は、加圧型気体溶解機構3の吐出口9から吐出され、溶存機構4に過飽和の状態で溶存される。・・・」(段落【0028】)
(7)「さらに、本考案の気体溶解装置3は、溶存機構4を2個以上有することが好ましい。図1では、溶存タンク41と溶存タンク42を有しており、これにより過飽和の状態をより安定に維持することができる。」(段落【0033】)

従来技術に関する説明である、上記(1)、(2)では、「溶存」は、水素を、「水(または液体)に溶かして、存在させる」という意味で用いられていると解される。
一方、本件考案1に関する説明である上記(3)?(7)では、「溶存」という語は、「水素(または気体)が溶解された水(または液体)」を、「溶存機構」に「溶存する」という具合に用いられている。
また、上記(7)では、「溶存機構」の機能ないし作用が、「(気体の液体への溶解が)過飽和の状態をより安定に維持することができる」ことである旨が説明され、「溶存機構」の具体例が「溶存タンク41」、「溶存タンク42」である旨が説明されている。
ここで、「タンク」とは、一般に「液体や気体を貯蔵する容器」という意味で用いられる語である(例えば、デジタル大辞泉を参照)ことを踏まえると、本願考案1に関する説明である上記(3)?(7)での「溶存する」は、「水素(または気体)が溶解された水(または液体)を、水素(または気体)が溶解されたままで、貯蔵する」という意味で用いられていると解するのが自然であり、そのように解することで、本件明細書の他の記載事項と不整合や矛盾が生じるものでもない。
すなわち、当業者であれば、本件考案1における「前記気体を溶解している前記液体を溶存する溶存機構」は、「前記気体を溶解している前記液体」を、「前記気体が溶解されたままで、貯蔵する」という機能ないし作用を「溶存機構」が有することを特定しようとするものであることは、上記(3)?(7)といった本件明細書の記載から理解できるといえる。
ゆえに、「溶存」や「溶存する」という語が、各種辞書等に掲載されているような一般的な用語ではないとしても、本件明細書の記載から、当業者がそれらの意味を理解して、実施することができ、さらに、本件考案1における「前記気体を溶解している前記液体を溶存する溶存機構」は明確である。

以上のとおり、本件明細書の考案の詳細な説明は、明確かつ十分に、記載したものであり、また、本件考案は明確であるから、その登録が実用新案法5条4項及び6項2号の規定に違反して実用新案登録されたものとすることはできない。

2.理由2(実用新案法3条2項違反)について
(1)甲号証の記載事項及び甲号証に記載された考案
ア.甲1の記載事項及び甲1考案
本件実用新案登録の出願前に頒布された刊行物である甲1には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、気体を高濃度で溶解した気体溶解液を得るために用いられる気体溶解装置に関するものである。」
(イ)「【背景技術】
・・・
【0003】
このような気体を高濃度に溶解した気体溶解液を製造する気体溶解装置としては、密閉タンクに液体と気体を供給し、密閉タンク内に設けた邪魔板に液体を衝突させて、液体の飛沫を多量に発生させることによって、液体の飛沫に気体を溶解させるようにしたもの(特許文献1参照)、密閉タンクに液体と気体を供給し、密閉タンクを複数の室に分割して、各室の圧力差を用いて液体を他の室に噴出させることによって、噴出した液体の飛沫に気体を溶解させるようにしたもの(特許文献2参照)、などが提案されている。
【0004】
しかし、上記の特許文献1,2のものでは、液体の飛沫に気体を接触させることによって、気体を溶解させるようにしているために、大きな密閉タンクを必要とし、装置が大掛かりなものになるという問題があり、また気体の溶解効率も悪いという問題があった。・・・
・・・
【0008】
例えば特許文献4では、水などの溶媒にオゾンを混合して加圧することによって溶解させた後、オゾン溶解液を細路に層流状態で通して減圧することによって、オゾンの気泡が発生しない状態でオゾン溶解液を吐出させるようにしている。しかし特許文献4においてこの細路は、直径0.5mm程度の細管の集合体からなるものであり、異物の混入によって細路に詰まりが発生し易く、廃水処理や水浄化などの用途に使用することはできないものであって、用途が限定されるという問題があった。
【0009】
また特許文献5では、廃水中に処理ガスを溶存させたガス富化流体を、複数の流体通路を有するノズルを通して減圧することによって、気泡が発生しない状態でガス富化流体を吐出させるようにしている。しかし特許文献5において流体通路は、内径約150乃至450μmの毛細管などからなるものであり、上記と同様に異物の混入によって流体通路に詰りが発生し易いという問題があった。」
(ウ)「【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、大きなタンクを必要とすることなく効率良く気体を溶解させることができると共に、また異物が混入しても詰まるようなことなく気体溶解液の減圧を行なうことができ、気泡の発生を防止して安定した高濃度の気体溶解液を得ることができる気体溶解装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に係る気体溶解装置は、液体を圧送する加圧部1と、液体に気体を注入する気体注入部2と、気体が注入された液体が加圧部1で圧送されることによる加圧で液体に気体を溶解させる加圧溶解部3と、加圧溶解部3で気体を溶解させた気体溶解液の圧力を、気体溶解液の流入側から流出側に向かって順次大気圧まで減圧する減圧部4とを備え、加圧部1、気体注入部2、加圧溶解部3の各部を連続的に運転させて、減圧部4に気体溶解液を連続的に供給し、減圧部4の流出側から気泡の発生のない気体溶解液を連続的に吐出させるようにして成ることを特徴とするものである。
【0013】
この発明によれば、加圧によって液体に気体を溶解させるため、効率良く気体を溶解させることができると共に、加圧溶解部3を容積の大きなタンクで形成するような必要がなく、装置規模を小さくすることが可能になるものである。また気体を溶解した気体溶解液を減圧部4で減圧するため、気体溶解液に気泡が発生することを防止して安定した高濃度の気体溶解液を得ることができ、キャビテーションが生じることを防ぐことができるものである。そしてこの減圧部4は気体溶解液の圧力を流入側から流出側に向かって順次大気圧まで減圧するものであるため、細い流路などで形成する必要なく比較的太い流路などで形成することができるものであり、異物が混入しても詰まるようなことなく気体溶解液の減圧を行なうことができるものである。さらにこのような減圧部4を設けることによって、減圧部4を流れる気体溶解液のレイノルズ数が臨界レイノルズ数(Re=2320)より小さなレイノズル数である層流状態だけではなく、臨界レイノルズ数より大きなレイノルズ数である乱流状態でも対応することが可能になるものである。」
(エ)「【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、加圧によって液体に気体を溶解させるようにしているので、効率良く気体を溶解させることができると共に、加圧溶解部3を容積の大きなタンクで形成するような必要がなく、装置規模を小さくすることが可能になるものである。また気体を溶解した気体溶解液を減圧部4で減圧するようにしているので、気体溶解液に気泡が発生することを防止して安定した高濃度の気体溶解液を得ることができるものであり、キャビテーションが生じることを防ぐことができるものである。さらに減圧部4は気体溶解液の圧力を流入側から流出側に向かって順次大気圧まで減圧するものであって、比較的太い流路などで減圧部4を形成することができるものであり、異物が混入しても詰まるようなことなく気体溶解液の減圧を行なうことができるものである。」
(オ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0032】
図1は本発明の実施の形態の一例を示すものであり、加圧溶解部3の流出側と流入側にそれぞれ配管で形成される流路15,6が接続してある。流入側の流路15は一端を加圧溶解部3に、他端を水などの液体16を貯留する液体槽17に接続してあり、この流路15の途中に加圧部1が設けてある。加圧部1は、例えば、液体槽17から液体16を吸い上げて加圧溶解部3に圧送するポンプ18などで形成されるものである。
【0033】
またこの流入側の流路15に気体注入部2が接続してある。気体注入部2は気体を流路15に供給して注入するためのものであり、例えば気体として空気を供給する場合には、一端を大気中に開放させた管体の他端を流路15に接続して気体注入部2を形成するようにしてある。あるいは気体として酸素、オゾン、水素、窒素、二酸化炭素、アルゴン等を供給する場合には、これらの気体を封入したボンベなどを流路15に接続して気体注入部2を形成するようにしてある。・・・
【0034】
一方、流出側の流路6は一端を加圧溶解部3に接続し、他端は気体溶解液回収槽(図示省略)などに接続して、大気に開放してある。またこの流路6には減圧部4が設けてある。さらに、加圧溶解部3には余剰気体排出部5が設けてある。・・・
【0035】
上記のように形成される気体溶解装置にあって、ポンプ18で形成される加圧部1を作動させ、液体槽17から液体を吸い上げ、流路15を通して加圧溶解部3へ液体を圧送して供給する。このように流路15内を液体が流れる際に、気体注入部2から気体が流路15内に吸引されて液体に気体が注入される。そしてこのように気体が注入された液体を加圧部1で加圧溶解部3へ圧送して送り込むことによって、この圧送による押し込み力で加圧溶解部3内において液体と気体に圧力が加わって高圧になる。このように加圧溶解部3内で液体と気体を加圧することによって、液体に気体を効率高く飽和量以上に溶解させることができ、液体に気体が高濃度で溶解した気体溶解液を得ることができるものである。・・・
【0036】
また、上記のように加圧溶解部3内において液体と気体を加圧して強制的に効率良く溶解させ、高濃度で気体が溶解した気体溶解液を短時間で生成することができるため、加圧溶解部3内で生成された気体溶解液を流路6を通して送り出しながら、加圧溶解部3内で液体に気体を溶解させるようにすることができるものである。従って、加圧溶解部3をタンクのような容積の大きなもので形成する必要がなくなるものであり、装置規模を小さくして装置のコストを低減することが可能になるものである。」
(カ)「【0042】
ここで、上記の図1や図2の実施の形態では、加圧部1をポンプ18で形成し、加圧溶解部3をタンクほどの大きな容積は必要ではないにしても一定の容積を有する容器で形成したが、図3に示すように、加圧部1を所定の水圧で水が供給される水道配管19で形成することもできる。このように水道配管19は所定の水圧で水を供給するので、水を加圧溶解部3に送り込むことによる押し込み圧で、加圧溶解部3内を加圧することができるものである。また、水道配管19の蛇口などを流路6に接続すると、水道配管19から水を流路6に送り込むことによる押し込み圧で、流路6内を加圧することができるものであり、流路6自体で加圧溶解部3を形成するようにすることもできる。
【0043】
図3は、水道配管19で加圧部1を形成し、水道配管19に接続される流路6で加圧溶解部3を形成するようにした実施の形態を示すものであり、流路6のうち、流路6に接続した気体注入部2と、流路6に設けた圧力調整弁7からなる減圧部4との間の部分が、加圧溶解部3となるものである。流路6で形成される加圧溶解部3には、必要に応じて余剰気体排出部5を設ければよい。従ってこのものでは、ポンプ18などの動力が不要になり、また容器などを用いて加圧溶解部3を形成する必要もなくなるので、装置の製造コストを一層低減することができるものである。」
(キ)「【0051】
図7は本発明の気体溶解装置の具体的な一例を示すものであり、液体槽17から供給される水は流路15に導入口30から導入される。流路15には空気が導入される気体注入部2が接続してあり、空気が注入された水はポンプで形成される加圧部1によって、小容量のタンクで形成される加圧溶解部3に圧送される。このように空気が注入された水が加圧溶解部3に圧送されることによって、加圧溶解部3内で水に空気が溶解された気体溶解液が生成される。そしてこの気体溶解液は加圧溶解部3から流路6に送り出され、流路6の先端の吐出口31から吐出される。この流路6には減圧部4が設けてあり、加圧溶解部3から送り出された気体溶解液は大気圧まで減圧された後に吐出口31から吐出され、気泡が発生しない状態で気体溶解液を吐出することができる。図7の実施の形態では、減圧部4は、図4(a)の内径が異なる管体20a,20b,20cを連ねたもので形成してある。
【0052】
この気体溶解装置にあって、ポンプで形成される加圧部1を連続運転することによって、気体注入部2、加圧溶解部3を連続的に運転させて、減圧部4に気体溶解液を連続的に供給するようにすることができるものであり、減圧部4の流出側である吐出口31から気泡の発生のない気体溶解液を連続的に吐出させることができるものである。
【0053】
また、減圧部4は加圧溶解部3から気体溶解液を送り出す流路6の一部として設けられており、そしてこの減圧部4は気体溶解液の圧力を流入側から流出側に向かって順次大気圧まで減圧するものであるため、減圧部4を例えば内径2?50mm程度の比較的大きい流路として形成することができるものであり、異物が混入しても減圧部4内が詰まるようなことがないものである。さらにこのような構成の減圧部4を設けることによって、減圧部4を流れる気体溶解液のレイノルズ数が臨界レイノルズ数(Re=2320)より小さなレイノズル数である層流状態だけではなく、臨界レイノルズ数より大きなレイノルズ数である乱流状態でも対応することが可能になるものである。
【0054】
さらに、減圧部4をこのように内径の大きな流路として形成することによって、気体溶解液の供給量を多くすることができ、減圧部4を一つの流路のみで形成することが可能になるものであり、装置構成を簡単なものに形成することができるものである。」

上記の記載事項を、本件考案1に照らして整理すると、甲1には次の甲1考案が記載されている。
なお、甲1考案の認定について、請求人は、「甲1考案」と請求人のいう「甲1装置」とは技術思想が異なるが、装置の構成は同一であると述べており(調書 請求人欄1)、被請求人は、特に異存はない旨を述べ(被請求人要領書3頁11行)、「甲1考案」の認定について、当事者間に争いはない。

《甲1考案》
液体に、空気、酸素、オゾン、水素、窒素、二酸化炭素、アルゴン等の気体を注入する気体注入部2と、
前記気体が注入された液体を加圧しながら圧送する、ポンプ18で形成される加圧部1と、
前記加圧部1で圧送されることによる加圧で液体に気体を溶解させる加圧溶解部3と、
加圧溶解部3で気体を溶解させた気体溶解液の圧力を、気体溶解液の流入側から流出側に向かって順次大気圧まで減圧する減圧部4とを備え、
前記減圧部4を内径2?50mm程度の流路とする、
気体溶解装置。

イ.甲2の記載事項
同じく甲2には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【特許請求の範囲】
・・・
【請求項3】
水を電気分解して水素ガスと酸素ガスとを発生させる電解質を含む電解槽と、
前記電解槽から発生した前記水素ガスと前記酸素ガスとを吸引して水と混合しながら送液する加圧ポンプと、
前記加圧ポンプからの送液を受水すると共に、加圧して水に対する前記水素ガスと前記酸素ガスとの溶解度を高める加圧溶解タンクと、
前記加圧溶解タンク内で前記水素ガスと前記酸素ガスとが溶解した圧力水を急減圧する絞り機構と、
前記絞り機構からの送液を受水すると共に、圧力を開放して水に前記水素ガスと前記酸素ガスとが混合した微細気泡を発生させるための前記加圧溶解タンク内の圧力よりも低圧の容器と、
を有することを特徴とした微細気泡発生装置。」
(イ)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガスおよび酸素ガスを含有した微細気泡発生方法、微細気泡発生装置およびそれにより製造される還元水に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素ガスおよび酸素ガスの微細気泡発生に関する技術ならびに還元水製造に関する技術は従来、水素ガスあるいは酸素ガスの高圧ボンベから吹き込む方法や電解液の電気分解で水素ガスと酸素ガスを分離し個別に利用されている。
【0003】
また、水素ガスを吹き込むことや電解液の電気分解で陰極側に生成される電気分解水を利用した還元水が利用されている。」
(ウ)「【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電解質溶液を電気分解し、水素ガスおよび酸素ガスを発生させ、混合ガスとして加圧ポンプの吸水側で吸引し、加圧溶解タンクに送液し、該加圧溶解タンク内で加圧溶解したものを急減圧する絞り機構を通して低圧容器側に送り出すことで水素ガスならびに酸素ガスの微細気泡を発生させることが出来る。
【0021】
このような微細気泡の発生により、水素ガスならびに酸素ガスの溶解を伴った還元水の製造が可能となる。
【0022】
また、水素ガスのみの取り出しをするときには電気分解のときに電解槽の陽極と陰極との間に隔膜を必要とするが、水素ガスと酸素ガスの混合ガスとして利用するため前記隔膜を不要とすることができる。
【0023】
また、高圧ガスボンベのような圧力容器が不要となり、電気分解により発生する水素ガスおよび酸素ガスを分離することなくそのまま使用することが可能となる。」
(エ)「【0026】
図1において、1は水を電気分解して水素ガス(H_(2))と酸素ガス(O_(2))とを発生させる電解質を含む電解槽であり、本実施形態では、例えば、DC12V程度の直流電圧が印加される陰極1a側に水素ガス2が発生し、陽極1b側に酸素ガス3が発生する。1cは電解槽1の陰極1aと陽極1bとの間に設けられた隔膜である。電解槽1には給水口1dを介して外部から水、好ましくは蒸留水や脱イオン水が適宜補給される。
【0027】
一方、加圧ポンプ4、加圧溶解タンク5、絞り機構6、容器となる受水槽7が順次直列に配管されて循環水路8を構成しており、電解槽1から発生した水素ガス2と酸素ガス3とは、それぞれ加圧ポンプ4の上流側に接続された吸引管9a,9bを介して加圧ポンプ4により循環水路8内を流通する水の流速により負圧が発生して吸引され、該循環水路8内を流通する水と混合しながら加圧溶解タンク5内に送液される。なお、吸引管9a,9bは個別に循環水路8内に吸引されることに限定するものではなく、吸引管9a,9bを合流させて一つにして循環水路8内に吸引することも可能である。」

ウ.甲3?5の記載事項
同じく甲3?5には、以下の事項が記載されている。
「近年、水素を高濃度で含む所謂水素水が、体内で発生した過剰な活性酸素を除去し、美容や健康に良好な影響を及ぼすとして注目されている。」(甲3の段落【0002】)
「近年、水素分子が気体状態で溶存している水素水は、酸化還元電位が低く、飲料として水素水を摂取することにより老化や病気を予防する抗酸化作用が認められることから、特に飲用水として注目されている。」(甲4の段落【0002】)
「水素水は、例えば飲料用水の中に活性水素を高濃度に溶存させたもので、人体の健康に対する害となる活性酸素を還元して除去する等、医学的見地から有用なものとして、近年においては、飲料用等として広く消費されるようになってきている。」(甲5の段落【0002】)

(2)本件考案1について
ア.本件考案1と甲1考案との対比
甲1考案の「空気、酸素、オゾン、水素、窒素、二酸化炭素、アルゴン等の気体」と、本件考案1の「水素である」「気体」とは、「気体」という限りにおいて一致する。

甲1考案の「液体に、空気、酸素、オゾン、水素、窒素、二酸化炭素、アルゴン等の気体を注入する気体注入部2」と、本件考案1の「水素発生機構である」「気体を発生する気体発生機構」とは、ともに、液体に溶解させるべき気体を供給するものであるから、「気体を供給する気体供給機構」という限りにおいて一致する。

甲1考案の「ポンプ18で形成される加圧部1」は、「前記気体が注入された液体を加圧しながら圧送する」ものであり、前記「ポンプ18で形成される加圧部1」においても、「注入された」「気体」が「液体」に溶解されるという現象が起きているものと解される。
ゆえに、甲1考案の「前記気体が注入された液体を加圧しながら圧送する、ポンプ18で形成される加圧部1」は、本件考案1の「前記気体を加圧して液体に溶解させる加圧型気体溶解機構」に相当する。

甲1考案の「加圧溶解部3で気体を溶解させた気体溶解液の圧力を、気体溶解液の流入側から流出側に向かって順次大気圧まで減圧する減圧部4」であって、「前記減圧部4を内径2?50mm程度の流路とする」「減圧部4」は、本件考案1の「前記液体が細管を流れることで降圧する降圧機構」であって、「前記細管の内径が、1.0mmより大きく5.0mm以下であ」る「降圧機構」とは、「前記液体を降圧する降圧機構」という限りにおいて一致する。

してみると、本件考案1と甲1考案との一致点、相違点は以下のとおりである。
《一致点》
気体を供給する気体供給機構と、
気体を加圧して液体に溶解させる加圧型気体溶解機構と、
前記液体を降圧する降圧機構と、を有する、
気体溶解装置。

《相違点1》
「気体」が、本件考案1では、「水素ガス」であるのに対し、甲1考案では、「空気、酸素、オゾン、水素、窒素、二酸化炭素、アルゴン等の気体」である点。
《相違点2》
「気体供給機構」が、本件考案1では、「水素発生機構」であるのに対し、甲1考案では、「液体に、空気、酸素、オゾン、水素、窒素、二酸化炭素、アルゴン等の気体を注入する気体注入部2」である点。
《相違点3》
本件考案1は、「前記気体を溶解している前記液体を溶存する溶存機構」を有しているのに対し、甲1考案は、「前記加圧部1で圧送されることによる加圧で液体に気体を溶解させる加圧溶解部3」を有している点。
《相違点4》
「降圧機構」が、本件考案1では、「前記液体が細管を流れることで降圧する降圧機構」であって、「前記細管の内径が、1.0mmより大きく5.0mm以下」であるのに対し、甲1考案では、「内径2?50mm程度の流路」である点。

イ.本件考案1と甲1考案との相違点の検討
事案に鑑み、《相違点4》から検討する。
《相違点4》について
刊行物に記載された考案の認定は、(i)何に関するものであるか、(ii)解決すべき技術的課題は何か、(iii)その技術的課題を解決する構成は何か、(iv)その構成によりどのような作用効果が奏されるかといったことを、当該刊行物全体に記載された事項に基づき理解し、本件考案との対比に必要な範囲で、行われるべきものである。
甲1には、(i)気体を高濃度で溶解した気体溶解液を得るために用いられる気体溶解装置に関するものであり(上記第5.2.(1)ア.(ア)を参照)、(ii)従来技術においては、大きな密閉タンクを必要とし、装置が大掛かりなものになるという問題があったこと、及び、減圧機構が直径0.5mm程度の細管の集合体や内径約150乃至450μmの毛細管などからなるものであり、異物の混入によって流体通路に詰りが発生し易いという問題があったこと(上記第5.2.(1)ア.(イ)を参照)等を踏まえ、大きなタンクを必要とすることなく効率良く気体を溶解させることができるとともに、また異物が混入しても詰まるようなことなく気体溶解液の減圧を行うことができ、気泡の発生を防止して安定した高濃度の気体溶解液を得ることができる気体溶解装置を提供することを、解決すべき技術的課題としたものであること(上記第5.2.(1)ア.(ウ)を参照)が記載されている。
また、甲1には、(iii)甲1考案の構成(上記(1)の《甲1考案》を参照)により、(iv)加圧溶解部3を容積の大きなタンクで形成するような必要がなく、装置規模を小さくすることが可能になること、及び、減圧部4を細い流路などで形成する必要なく比較的太い流路などで形成することができるものであり、異物が混入しても詰まるようなことなく気体溶解液の減圧を行うことができること(上記第5.2.(1)ア.(ウ)及び(エ)を参照)が記載されている。
すなわち、甲1考案において「流路」の「内径」を「2?50mm程度」に設定したことの技術的意義は、異物が混入しても詰まるようなことなく気体溶解液の減圧を行うことができることにあると解される。
そして、甲1考案において、「内径2?50mm程度の流路」の下限値である「2mm程度」を、異物が混入した際に詰まりが発生しやすくなることが明らかな「1.0mm」とすることは、上記技術的課題の解決とは整合しないことが明らかである。
ゆえに、甲1考案において、「内径2?50mm程度の流路」の下限値である「2mm程度」を「1.0mm」とすることには、阻害要因があるといわざるを得ない。
したがって、甲1考案における「内径2?50mm程度の流路」を、「前記細管の内径が、1.0mmより大きく5.0mm以下」に変更することは、当業者がきわめて容易になし得たこととはいえない。

請求人は、これに関し、(i)必要に応じて、2.0mmの内径を有する管体に代えて、1.0mmの内径を有する管体を用いることは当業者にとってきわめて容易になし得る旨、及び、(ii)構造が同じであれば、「減圧部4」の機能も同じになるはずであり、径を変更することはきわめて容易である旨を主張している(上記第4.1.(3)イ.(イ)d.を参照)。
しかしながら、甲1に「異物が混入しても詰まるようなことなく気体溶解液の減圧を行なうことができ」ることを解決すべき課題の一つとしている旨の記載があるにもかかわらず、上記技術的意義を無視して、(i)より径が小さい「1.0mmの内径を有する管体を用いる」ことや(ii)「前記細管の内径が、1.0mmより大きく5.0mm以下」に変更することが、いずれも容易といえることについて、請求人は立証していない。
したがって、上記主張からは、《相違点4》の判断を覆すべき理由をみいだせない。

《相違点3》 について
本件考案1における「前記気体を溶解している前記液体を溶存する溶存機構」は、上記第5.1.で述べたように、「前記気体を溶解している前記液体」を、「前記気体が溶解されたままで、貯蔵する」という機能ないし作用を「溶存機構」が有することを特定しようとするものである。
一方、甲1の段落【0035】の「・・・この圧送による押し込み力で加圧溶解部3内において液体と気体に圧力が加わって高圧になる。このように加圧溶解部3内で液体と気体を加圧することによって、液体に気体を効率高く飽和量以上に溶解させることができ、液体に気体が高濃度で溶解した気体溶解液を得ることができるものである。・・・」、【0036】の「・・・従って、加圧溶解部3をタンクのような容積の大きなもので形成する必要がなくなるものであり、装置規模を小さくして装置のコストを低減することが可能になるものである。」等の記載(上記第5.2.(1)ア.(オ)を参照)を踏まえると、甲1考案の「前記加圧部1で圧送されることによる加圧で液体に気体を溶解させる加圧溶解部3」は、液体と気体を加圧し得る機能を奏するものであって、その容積がタンクのような大きなものではなく、「気体を溶解している液体を貯蔵する」という機能を奏することを期待されたものではないことが、明らかである。
ゆえに、甲1の図7等の「加圧溶解部3」が、これに接続されている「流路6」や「減圧部4」に比して大径なものとして描かれていることのみをもって、「気体を溶解している液体を貯蔵する」という機能を奏するものと解するのは合理的ではない。
そして、上記「加圧溶解部3」を、「気体を溶解している液体を貯蔵する」という機能を奏するような構造(例えば、容積を大きくする等)とする動機付けとなるような事項は、甲1には記載されていないし、甲2?5にも記載されていない。
したがって、《相違点3》は、実質的な相違点であって、甲1考案の「前記加圧部1で圧送されることによる加圧で液体に気体を溶解させる加圧溶解部3」を、「前記気体を溶解している前記液体を溶存する溶存機構」に変更することは、当業者がきわめて容易になし得たこととはいえない。

請求人は、これに関し、甲1からは、大きなタンクを必要とすることなく効率良く気体を溶解させることができるとともに、また異物が混入しても詰まるようなことなく気体溶解液の減圧を行うことができ、気泡の発生を防止して安定した高濃度の気体溶解液を得ることができる気体溶解装置を提供することを、解決すべき技術的課題とした上記《甲1考案》とともに、上記《甲1考案》と同じ装置構成であって、単に、「高濃度の気体溶解液を得るための気体溶解装置」であって、加圧溶解部を小型化することを目的とするものではない「甲1装置」が把握されるから、上記《相違点3》は実質的な相違点ではない旨を主張している(上記第4.1.(3)イ.(イ)a.?c.を参照)。
しかしながら、甲1に「大きなタンクを必要とすることなく効率良く気体を溶解させることができる」ことを解決すべき課題の一つとしている旨の記載があるにもかかわらず、これを無視して、甲1からは、上記《甲1考案》と同じ装置構成であって、加圧溶解部の小型化を目的とはしていない「甲1装置」が把握できることについて、請求人は立証していない。
したがって、上記主張は、採用できない。

ウ.小活
以上のとおり、本件考案1は、その余の相違点について検討するまでもなく、甲1考案から、または、甲1考案及び甲2記載事項からきわめて容易に考案をすることができたものとはいえないから、その登録が実用新案法第3条第2項の規定に違反して実用新案登録されたものとすることはできない。

(3)本件考案2ないし8について
本件考案2ないし8は、いずれも直接又は間接的に本件考案1を引用して考案を特定しており、上記相違点に係る本件考案1の構成を備えている。

したがって、本件考案2ないし8は、上記第5.2.(2)で述べたことと同様の理由により、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとはいえず、その登録が実用新案法第3条第2項の規定に違反して実用新案登録されたものとすることはできない。

第6.むすび
以上のとおり、本件考案1ないし8は、請求人の主張する無効理由及び証拠によっては無効とすることはできないから、本件考案1ないし8についての審判の請求は成り立たない。
審判費用については、実用新案法第41条の規定で準用する特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2017-01-04 
結審通知日 2017-01-10 
審決日 2017-01-23 
出願番号 実願2014-1248(U2014-1248) 
審決分類 U 1 111・ 536- Y (B01F)
U 1 111・ 537- Y (B01F)
U 1 111・ 121- Y (B01F)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 渡邊 豊英
井上 茂夫
登録日 2014-04-30 
登録番号 実用新案登録第3190824号(U3190824) 
考案の名称 気体溶解装置  
復代理人 大石 皓一  
復代理人 岸本 高史  
代理人 細矢 眞史  
代理人 特許業務法人むつきパートナーズ  
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