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審決分類 審判    C02F
審判    C02F
審判    C02F
管理番号 1368158
審判番号 無効2019-400003  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2019-10-01 
確定日 2020-11-02 
事件の表示 上記当事者間の登録第3166876号実用新案「減圧脱水乾燥装置」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
本件実用新案登録第3166876号は、平成23年 1月14日(パリ条約による優先権主張 2010年10月 9日 中国(CN))に出願された実願2011-159号に係り、平成23年 3月 2日にその請求項1?5に係る考案について実用新案権の設定登録がなされ、平成30年 1月22日を受付日として、大和化学工業株式会社より鹿島環境エンジニアリング株式会社に実用新案権が移転され、平成31年 2月 4日の提出(受付)で実用新案法第14条の2第1項の訂正に係る訂正書が提出され、平成31年 2月18日にその訂正の登録がされたものである。
そしてその後、請求人株式会社コンヒラから本件無効審判が請求されたものであり、本件無効審判請求以後の経緯は概略以下のとおりである。
令和 1年 9月30日付け 証拠方法として甲第1号証?甲第14号証を添付した審判請求書の提出(無効2019-400003号)
令和 1年11月27日付け 審判事件答弁書及び実用新案法第14条の2第7項の訂正に係る訂正書の提出
令和 1年12月16日付け 令和 1年11月27日付け実用新案法第14条の2第7項の訂正に係る訂正書の却下理由通知書
令和 2年 3月19日付け 令和 1年11月27日付け実用新案法第14条の2第7項の訂正に係る訂正書の手続却下の処分
令和 2年 4月15日付け 上申書の提出(被請求人より)
令和 2年 5月19日付け 書面審理通知書
令和 2年 6月 2日付け 答弁書副本の送付通知
令和 2年 6月25日 請求人に対する応対記録
令和 2年 7月 2日付け 証拠方法として甲第15号証?甲第24号証を添付した審判事件弁駁書の提出

第2 本件考案
令和 1年11月27日付け実用新案法第14条の2第7項の訂正に係る訂正書は、令和 2年 3月19日付け手続却下の処分により却下され、この処分は確定したので、本件実用新案登録の請求項1?5に係る考案は、平成31年 2月 4日に提出(受付)の実用新案法第14条の2第1項の訂正に係る訂正書により訂正された実用新案登録請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める(以下、それぞれ「本件考案1」?「本件考案5」という。)。
「【請求項1】
廃棄物導入口と残渣排出口とが閉鎖されて内部を減圧状態で保持可能な蒸留釜の本体としての蒸留用容器と、
前記蒸留用容器の内部に前記廃棄物導入口から導入された廃棄物を該蒸留用容器の内部で攪拌翼が攪拌する廃棄物攪拌機構と、
前記廃棄物攪拌機構の攪拌翼が取り付けられた攪拌軸を駆動する駆動機構と、
前記蒸留釜の蒸留用容器の内部に前記導入された廃棄物を加熱する熱源と、
前記蒸留釜の蒸留用容器の内部に前記導入された廃棄物から蒸発した気体を熱交換により液体に凝縮するコンデンサと、
前記蒸留釜の蒸留用容器の内部の圧力を少なくとも減圧する水封式真空ポンプと、
前記蒸留釜から排出されたミストを補足するミストキャッチャーと、
前記廃棄物導入口から導入する前記廃棄物の供給量を計量する第1の計量器と、
前記コンデンサから流出する液体成分の流量を計量する第2の計量器と、
前記第1の計量器及び前記第2の計量器により異常の発生の有無を検知しながらバッチ連続運転を行うように制御する制御装置と、
を備え、
前記蒸留釜の設置状態において、前記駆動機構の攪拌軸が水平方向に延在するように構成されている、減圧脱水乾燥装置。
【請求項2】
前記廃棄物攪拌機構が、前記廃棄物を前記蒸留用容器の内部で攪拌すると共に、前記蒸留用容器の内表面上の蒸留残渣を掻き取るように該内表面を摺動するスクレーパを、前記攪拌翼として備えている、請求項1記載の減圧脱水乾燥装置。
【請求項3】
前記スクレーパが、前記蒸留用容器の内部で前記スクレーパの支持部材により支持されていると共に、該支持部材と弾性部材とにより前記蒸留用容器の内表面に押し付けられており、
前記廃棄物撹拌機構は、前記弾性部材による前記スクレーパの移動距離を制限するストッパーを備えている、請求項2記載の減圧脱水乾燥装置。
【請求項4】
前記スクレーパが、前記蒸留用容器の内表面上から掻き取った前記蒸留残渣が前記残渣排出口に向けて逐次移送されるように、該蒸留残渣の実質的な移送方向に対して傾斜している、請求項2記載の減圧脱水乾燥装置。
【請求項5】
前記コンデンサにより前記気体が熱交換によって凝縮されて得られる液体を貯蔵するタンクを更に備えている、請求項1記載の減圧脱水乾燥装置。」

第3 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人の主張する請求の趣旨は、実用新案登録第3166876号の実用新案登録請求の範囲の請求項1?5に係る考案についての実用新案登録を無効にする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めるものである。

2 証拠方法
請求人が請求書及び弁駁書に添付して提出した証拠方法は、以下のとおりである。

甲第1号証:大和化学工業株式会社製の減圧脱水乾燥装置の納入実績に関する証明書の写し
甲第2号証:平成15年 8月に鳥取県米子市所在の鳥取県産業技術センターに納入された大和化学工業株式会社製の減圧脱水乾燥装置(型番名:[減]TWIN300)の完成図書の写し
甲第3号証:鳥取県産業技術センターに納入された大和化学工業株式会社製の減圧脱水乾燥装置に対して平成21年(2009年) 3月 9日?10日に実施された保守作業の報告書の写し
甲第4号証:特開平9-262402号公報
甲第5号証:特開2007-50384号公報
甲第6号証:特開2010-162467号公報
甲第7号証:渡辺 弘幸,「減圧脱水乾燥装置による廃液の減量化」,潤滑経済,2008年9月,p.75-77
甲第8号証:特開2007-271222号公報
甲第9号証:特開2008-195910号公報
甲第10号証:特開2000-230864号公報
甲第11号証:特開2003-279247号公報
甲第12号証:鳥取県産業技術センターに納入された大和化学工業株式会社製の減圧脱水乾燥装置に対して平成30年(2018年) 2月19日?22日に実施された保守作業の報告書の写し
甲第13号証:鳥取県産業技術センターに納入された大和化学工業株式会社製の減圧脱水乾燥装置に対して平成31年(2019年) 2月18日?21日に実施された保守作業の報告書の写し
甲第14号証:鳥取県産業技術センターに納入された減圧脱水乾燥装置の保守作業に関する証明書の写し
甲第15号証:大和化学工業株式会社と宝産業株式会社との間で取り交わされた覚書の写し
甲第16号証:宝産業株式会社が過去に管理・運営していたWEBサイトの写し
甲第17号証:宝産業株式会社が過去に管理・運営していた減圧脱水乾燥装置専用のWEBサイト(トップページ)の写し
甲第18号証:宝産業株式会社が過去に管理・運営していた減圧脱水乾燥装置専用のWEBサイト(減圧脱水乾燥装置「減」)の写し
甲第19号証:宝産業株式会社が過去に管理・運営していた減圧脱水乾燥装置専用のWEBサイト(製品紹介)の写し
甲第20号証:宝産業株式会社が過去に管理・運営していた減圧脱水乾燥装置専用のWEBサイト(製品導入までの流れ)の写し
甲第21号証:大和化学工業株式会社が過去に管理・運営していたWEBサイトの写しであり、大和化学工業株式会社が納入した減シリーズ装置の納入実績一覧が掲載されたもの
甲第22号証:令和 2年 6月25日に鳥取県産業技術センターから請求人が甲第2号証の原本を借り受けたことを証明する物品借入受領書の写し
甲第23号証:令和 2年 6月25日に鳥取県産業技術センターに請求人が訪問したときに撮影した撮影写真及び撮影日時に関する証明書の写し
甲第24号証:2009年 3月14日に鳥取県産業技術センター宛てに提出した作業完了証明書(甲第3号証の保守作業報告書を含む)の写し

3 請求人の主張の概要
請求書及び弁駁書における請求人の主張の全趣旨からみて、請求人が主張する無効理由は以下のとおりである。
(1)無効理由1(実用新案法第3条第1項第1号、第2号)
本件考案1?5は、甲第2号証及び甲第3号証によって特定される減圧脱水乾燥装置と同一であるから、実用新案法第3条第1項第1号、第2号の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、その実用新案登録は同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(2)無効理由2(実用新案法第3条第2項)
本件考案1?5は、甲第2号証に記載された考案及び甲第4?6、8?10号証に記載された事項に基づいて、実用新案登録出願前に当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、その実用新案登録は同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(3)無効理由3(実用新案法第3条第2項)
本件考案1?5は、甲第7号証に記載された考案及び甲第4?6、8?10号証に記載された事項に基づいて、実用新案登録出願前に当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、その実用新案登録は同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(4)無効理由4(実用新案法第3条第2項)
本件考案1?5は、甲第11号証に記載された考案及び甲第4?6、8?10号証に記載された事項に基づいて、実用新案登録出願前に当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、その実用新案登録は同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

第4 被請求人の主張
1 答弁の趣旨
令和 1年11月27日付け審判事件答弁書における被請求人の主張する答弁の趣旨は、結論のとおりの審決を求めるものである。

2 被請求人の主張の概要
令和 1年11月27日付け実用新案法第14条の2第7項の訂正に係る訂正書は、令和 2年 3月19日付け手続却下の処分により却下され、この処分は確定したので、被請求人は、答弁書における答弁の具体的理由を、令和 2年 4月15日付け上申書により再提出した。
そして、前記答弁書及び上申書の主張の全趣旨からみて、被請求人の主張の概要は、以下のとおりである。
(1)無効理由1(実用新案法第3条第1項第1号、第2号)
(ア)甲第1号証は、本件考案の優先日前に宝産業株式会社(以下、「宝産業」という。)が大和化学工業株式会社(以下、「大和化学」という。)製の減圧脱水乾燥装置(商品名:「減」)を鳥取県産業技術センターに納入したことを証明しようとするものであるが、甲第1号証は、宝産業自身が平成30年 5月 1日付けで作成したものである上、宝産業は本件に関して請求人と強度の利害関係を有し、また、甲第1号証の内容をみても、甲第1号証は、本件考案の優先日前に型番名を「【減】TWIN300」と称する減圧脱水乾燥装置が鳥取県産業技術センターに納入されたことを客観的に立証するものではないから、被請求人は、甲第1号証の内容の真正を争う。

(イ)甲第2号証は、本件考案の優先日前に宝産業が鳥取県産業技術センターに納入したとする大和化学製の減圧脱水乾燥装置(商品名:「減」)についての取扱説明書であるか否か、本件考案の優先日前に鳥取県産業技術センターに提供されたか否か、当該減圧脱水乾燥装置の構成が不特定多数のものに現に知られ又は知られ得る状態にあったか否かなどが不明であり、また、甲第2号証においては25頁が欠落し27頁が2頁分存在しており、形式上の不備が存在する。
更に、大和化学は平成29年10月に大阪地方裁判所から破産手続開始決定を受け、被請求人は、同年12月に大和化学破産管財人から、本件実用新案権に加えて、必要な資料等に係る著作権、所有権等の権利も有償で譲り受けるとともに、当該権利の譲渡に際して、大和化学破産管財人から、当該権利について大和化学退職者その他の第三者に譲渡しておらず、実施、利用等を許諾していないことの確認を得たにもかかわらず、第三者である請求人が甲第2号証のような大和化学の取引関連資料を保持している経緯及び根拠が不明であるため、被請求人は甲第2号証の成立及び内容の真正を争うものであり、甲第2号証によって特定される減圧脱水乾燥装置が本件考案の優先日前に公然知られたもの又は公然実施されたものであることは客観的に立証されていない。

(ウ)甲第3号証は、本件考案の優先日前に大和化学が鳥取県産業技術センターで機種を「減300型」と称する機器について保守作業を行った旨を記載したものであるが、甲第3号証の記載をみても、大和化学から鳥取県産業技術センターに現に提出されたものか否か、現実に前記保守作業が行われたか否かなどは不明であって、大和化学又はその担当者による押印等もないため、前記保守作業を何ら客観的に立証するものではない。
また、前記(イ)と同様に、請求人が甲第3号証のような大和化学の取引関連資料を保持している経緯及び根拠が不明であって、被請求人は甲第3号証の成立及び内容の真正を争う。

(エ)甲第12、13号証は、本件考案の優先日後である令和 1年 2月に請求人が鳥取県産業技術センターにおいて装置型式を「減-125型」と称する減圧脱水乾燥装置について保守作業を行った旨を記載し、甲第14号証は、当該保守作業が行われたこと、並びに甲第12、13号証記載の装置型式が誤記であったことを記載しているが、甲第12?14号証は請求人自身が作成したものである上に、請求人が平成30年 3月及び平成31年 3月の二度にわたって顧客向けの報告書内で「【減】TWIN300」を「減-125型」と繰り返し誤記したとは考えられず、甲第12?14号証をもって本件考案の優先日前に型番名を「【減】TWIN300」と称する減圧脱水乾燥装置が鳥取県産業技術センターに納入されたことを客観的に立証できるはずもない。

(オ)したがって、甲第1号証、甲第12?14号証によっては、甲第2?3号証によって特定される減圧脱水乾燥装置が本件考案の優先日前に公然知られた考案又は公然実施された考案であるとは認められず、無効理由1は何らの客観的根拠もなく失当である。

(2)無効理由2(実用新案法第3条第2項)
無効理由2は、前記(1)で述べたとおり、本件考案の優先日前に公然知られたもの又は公然実施されたものであることが立証されていない甲第2号証を主引例とするものであるから、失当である。

(3)無効理由3(実用新案法第3条第2項)
(ア)本件考案1と甲第7号証に記載される考案とを対比すると、本件考案1は、コンデンサから流出する液体成分の流量を計量する第2の計量器を備える点(構成I)、第1の計量器及び第2の計量器により異常発生の有無を検知しながらバッチ連続運転を行うように制御する制御装置を備える点(構成J)で、甲第7号証に記載される考案と相違する。
そして、本件考案1は、構成I及びJを備えることで甲第7号証に記載される考案によっては得られない格別な効果を奏するから、甲第7号証に記載される考案と実質的に相違する。
また、前記本件考案1の相違点については、甲4?6、8?10号証のいずれにも記載も示唆もないから、本件考案1、及びこれを引用する本件考案2?5は、甲第4?6、8?10号証に記載された事項からきわめて容易に考案をすることができたものではない。

(イ)更に、本件考案2は、蒸留用容器の内表面を摺動するスクレーパを撹拌翼として備える点(構成M)でも甲第7号証に記載される考案と相違する。
そして、本件考案2は、構成Mを備えることで甲第7号証に記載される考案によっては得られない格別な効果を奏するから、甲第7号証に記載される考案と実質的に相違する。
また、前記本件考案2の相違点については、甲4?6、8?10号証のいずれにも記載も示唆もないから、本件考案2、及びこれを引用する本件考案3、4は、甲第4?6、8?10号証に記載された事項からきわめて容易に考案をすることができたものではない。

(ウ)前記(ア)、(イ)により、無効理由3は失当である。

(4)無効理由4(実用新案法第3条第2項)
(ア)本件考案1と甲第11号証に記載される考案とを対比すると、本件考案1は、コンデンサから流出する液体成分の流量を計量する第2の計量器を備える点(構成I)、第1の計量器及び第2の計量器により異常発生の有無を検知しながらバッチ連続運転を行うように制御する制御装置を備える点(構成J)で、甲第11号証に記載される考案と相違する。
そして、本件考案1は、構成I及びJを備えることで甲第11号証に記載される考案によっては得られない格別な効果を奏するから、甲第11号証に記載される考案と実質的に相違する。
また、前記本件考案1の相違点については、甲4?6、8?10号証のいずれにも記載も示唆もないから、本件考案1、及びこれを引用する本件考案2?5は、甲第4?6、8?10号証に記載された事項からきわめて容易に考案をすることができたものではない。

(イ)更に、本件考案2は、蒸留用容器の内表面を摺動するスクレーパを撹拌翼として備える点(構成M)でも甲第11号証に記載される考案と相違する。
甲第11号証に記載される考案における破砕羽根は、廃棄物を当接部と乾燥缶の内壁面との間に噛み込んで押し潰すとともに溝部のエッジで破砕し乾燥缶の内壁部に筋状に擦り付けるものであり、蒸留用容器の内表面上の蒸留残渣を掻き取るものではなく、本件考案2のスクレーパとは機能及び構成が全く異なるものである。
そして、本件考案2は、構成Mを備えることで甲第11号証に記載される考案によっては得られない格別な効果を奏するから、甲第11号証に記載される考案と実質的に相違する。
また、前記本件考案2の相違点については、甲4?6、8?10号証のいずれにも記載も示唆もないから、本件考案2、及びこれを引用する本件考案3、4は、甲第4?6、8?10号証に記載された事項からきわめて容易に考案をすることができたものではない。

(ウ)前記(ア)、(イ)により、無効理由4は失当である。

第5 当審の判断
被請求人は、前記第4の2(1)、(2)において、無効理由1、2に関して、甲第1号証については内容の真正を争う旨、甲第2?3号証については成立及び内容の真正を争う旨、甲第12?14号証をもって、本件考案の優先日前に型番名を「【減】TWIN300」と称する減圧脱水乾燥装置が鳥取県産業技術センターに納入されたことを客観的に立証できない旨を主張するが、事案に鑑み、まず、無効理由1、2に関して甲第2号証に記載された考案に基づく新規性及び進歩性について検討し、その後、無効理由3、4について検討する。
1 各甲号証の記載事項等
(1)甲第2号証の記載事項及び甲第2号証に記載される発明
甲第2号証には、以下(2a)?(2h)の記載がある。
(2a)「



(2b)「

」(4頁)

(2c)「

」(5頁)

(2d)「

」(28頁)

(2e)「

」(31頁)

(2f)「

」(32頁)

(2g)「

」(33頁)

(2h)「

」(品名 減圧脱水乾燥装置【減300型】フローシートの図面)

(ア)前記(2a)によれば、甲第2号証には「減圧脱水乾燥装置【減】TWIN300」が記載されており、前記(2b)?(2h)によれば、「減圧脱水乾燥装置【減】TWIN300」は、処理排液を減圧加熱して水分を蒸発させる釜であって、釜は断熱した2重構造で、釜の外側から蒸気により間接加熱する「蒸留釜」、「蒸留釜」内に付設し、撹拌及び排出を兼ねた構造となっており、テフロン羽根をスプリングにより釜壁面に密着させることで、壁面への固着物の付着を防止し、熱伝達低下を防ぐ「攪拌機」、「蒸留釜」より蒸発した水蒸気を冷却し液化するシェルアンドチューブ方式の「コンデンサ」であって、内部に細いパイプを設け、その中を冷却水が流れ、外側に気化したガス(水蒸気)が接触・凝縮し液化する「コンデンサ」、蒸留した回収水を一旦、受ける機能があり、タンク内に回収水を貯めることで、真空ポンプ起動時に必要な液封が確保され、その為、最初の立上げ時や、保守作業等でタンク内の水を抜いた場合など、必ず運転前にタンク内へ水の補充を行い、フロートセンサにて液面管理・送液を行う「バッファータンク」、原水ポンプから送られてくる処理廃水を受けるタンクであり、フロートセンサにて液面管理・給液を行う「計量タンク」、「コンデンサ」にて凝縮した蒸留水を一旦受けて計量するタンクであり、液面センサにて液面管理・送水を行う「蒸留水計量タンク」、内部にフィルターが挿入してあり、共沸物(ミスト)を低減させ回収水の水質悪化を防止する機能がある「ミストキャッチャー」、蒸留系を真空にする為の水封式真空ポンプであり、吸込み口には、空気吸込みラインを設けバルブの開閉により真空度の調節を行う「真空ポンプ」及び「攪拌機モーター」を備えるものである。
また、「減圧脱水乾燥装置【減】TWIN300」は、自動運転スタート時に操作盤の装置運転ボタンを押すと、ユーティリティが運転を開始し、ボイラーが立上がると装置運転を開始するものであり、通常運転においては、一度、装置運転ボタンを押すと設定条件にて繰り返し運転を行い、停止する場合は装置停止ボタンを押すと処理中のバッチ運転終了後にサイクル停止するものであり、処理途中で異常が発生すると異常停止として運転停止するものであり、再スタートする場合、異常復旧後、装置運転ボタンを押すと停止前の状態から再スタートするものであり、異常が発生した場合、運転が停止すると共に、異常警報ブザーを鳴らしタッチパネル画面上に異常内容を表示するものであり、アラーム表示として、「計量タンク上限」及び「バッファタンク上限」が表示されるものである。

(イ)前記(ア)によれば、甲第2号証には、
「処理排液を減圧加熱して水分を蒸発させる釜であって、釜は断熱した2重構造で、釜の外側から蒸気により間接加熱する蒸留釜、
蒸留釜内に付設し、撹拌及び排出を兼ねた構造となっており、テフロン羽根をスプリングにより釜壁面に密着させることで、壁面への固着物の付着を防止し、熱伝達低下を防ぐ攪拌機、
蒸留釜より蒸発した水蒸気を冷却し液化するシェルアンドチューブ方式のコンデンサであって、内部に細いパイプを設け、その中を冷却水が流れ、外側に気化したガス(水蒸気)が接触・凝縮し液化するコンデンサ、
蒸留した回収水を一旦、受ける機能があり、タンク内に回収水を貯めることで、真空ポンプ起動時に必要な液封が確保され、その為、最初の立上げ時や、保守作業等でタンク内の水を抜いた場合など、必ず運転前にタンク内へ水の補充を行い、フロートセンサにて液面管理・送液を行うバッファータンク、
原水ポンプから送られてくる処理廃水を受けるタンクであり、フロートセンサにて液面管理・給液を行う計量タンク、
コンデンサにて凝縮した蒸留水を一旦受けて計量するタンクであり、液面センサにて液面管理・送水を行う蒸留水計量タンク、
内部にフィルターが挿入してあり、共沸物(ミスト)を低減させ回収水の水質悪化を防止する機能があるミストキャッチャー、
蒸留系を真空にする為の水封式真空ポンプであり、吸込み口には、空気吸込みラインを設けバルブの開閉により真空度の調節を行う真空ポンプ及び攪拌機モーターを備えるものであって、
自動運転スタート時に操作盤の装置運転ボタンを押すと、ユーティリティが運転を開始し、ボイラーが立上がると装置運転を開始するものであり、
通常運転においては、一度、装置運転ボタンを押すと設定条件にて繰り返し運転を行い、停止する場合は装置停止ボタンを押すと処理中のバッチ運転終了後にサイクル停止し、処理途中で異常が発生すると異常停止として運転停止するものであり、再スタートする場合、異常復旧後、装置運転ボタンを押すと停止前の状態から再スタートするものであり、
異常が発生した場合、運転が停止すると共に、異常警報ブザーを鳴らしタッチパネル画面上に異常内容を表示するものであり、アラーム表示として、計量タンク上限及びバッファタンク上限が表示される、減圧脱水乾燥装置【減】TWIN300。」の考案(以下、「甲2考案」という。)が記載されているといえる。

(2)甲第4号証の記載事項
甲第4号証には以下(4a)?(4c)の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「…」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。
(4a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 圧縮機、放熱部、膨脹弁又はキャピラリーチューブ、吸熱部を順次に接続し熱媒体を密閉したヒートポンプ回路の該放熱部を蒸発濃縮を対象とする液体の加熱蒸発部の加熱手段として使用し、該吸熱部を該液体から発生する蒸気を冷却液化するための冷却凝縮部の冷却手段として使用し、…(1)?(3)の温度により排熱ファンの稼働を制御することで熱バランスを維持することを特徴とするヒートポンプ方式蒸発濃縮装置。
(1)圧縮機外装表面および圧縮機から放熱部の間のヒートポンプ配管部分
(2)加熱蒸発部濃縮液又は加熱蒸発部から膨脹弁又はキャピラリーチューブに至るヒートポンプ配管部分
(3)膨脹弁またはキャピラリーチューブから冷却凝縮部の間のヒートポンプ配管部分」(当審注:「(1)」?「(3)」は「○に1」?「○に3」と記載されている。)

(4b)「【0021】ヒートポンプ方式蒸発濃縮装置の加熱蒸発部は廃液を収容してそれを加熱蒸発濃縮させる容器を形成したもので蒸発濃縮カラム1A,1Bといわれるものである。そして廃液の加熱手段としてヒートポンプの放熱部2A,2Bが前記加熱蒸発部としての前記蒸発濃縮カラム1A,1Bに配設されている。
【0022】また、冷却凝縮部は前記廃液を加熱して蒸発した蒸気を冷却して凝縮させる容器を形成したもので凝縮カラム5といわれるものであり、前記蒸発濃縮カラムlA,1Bそれぞれの上部に連通して設けたものである。そして、前記蒸発蒸気の冷却手段としてヒートポンプの吸熱部8Bが前記冷却凝縮部としての凝縮カラム5に配設されている。
【0023】減圧に耐える2つの加熱蒸発部としての蒸発濃縮カラム1A,1B内に、それぞれ前述のような現像液以外の処理液例えば定着液の廃液と現像液の廃液とに分割した写真処理廃液を注入して貯め、該蒸発濃縮カラム1A,1Bの上部の冷却凝縮部の凝縮カラム5には、減圧手段としてのアスピレーター7をそれぞれ接続して、該凝縮カラム5内を前記蒸発濃縮カラム1A,1Bと共に減圧するようにした。大気圧より低い減圧下では、通常気圧の沸騰点以下で沸騰が起こることは知られており、この装置は、この作用を利用し、減圧下で行うものである。前記蒸発濃縮カラム1A,1B内には、加熱手段としてヒートポンプの放熱部2A,2Bを設け、該放熱部2A,2Bにより減圧下での加熱蒸発を繰り返し、効率よく急速に濃縮化を行うものである。
【0024】また、該凝縮力ラム5には蒸発した水蒸気の冷却手段としてヒートポンプの吸熱部8Bとそれによって回収される凝縮水の案内溝(図示せず)及び水受け8Eを設ける。一方、上記の蒸発濃縮を繰り返して、高濃度に固形化した成分はこの蒸発濃縮カラム1A,1Bの下部に設けた濃縮物回収容器(ドラム缶)61A,61B,61Cで受け取り回収する。蒸発濃縮カラム1A,1Bの上部に連通して設けた前記凝縮カラム5の冷却手段としてのヒートポンプの吸熱部8Bにより、下部の前記濃縮カラムより上がってきた蒸発蒸気を捕らえて冷却凝縮して、水滴として回収するようにした。…【0025】水蒸気は冷却手段としての吸熱部8Bの表面に触れて凝縮し、水滴となって、アスピレーター7を通過して水回収容器9に集められる。…

【0031】又、水回収容器9からオーバーフローした水はパイプ36によって別の水槽に送られて、この凝縮液はそのまま、又は必要に応じて2次処理を行い、再利用又は下水に排水される。
【0032】そして、蒸発濃縮カラム1A,1B内に注入貯留する処理廃液は、現像廃液以外の処理液例えば定着液の廃液と現像液の廃液とに分割された図示しない給液ストックタンクから、途中の密閉容器31A,31B及び洗浄塔17,18を経て配管された配管中の電磁弁32A,32B,32C,32Dを適時開閉制御して給送される。…

【0039】請求項5の実施の形態は、…ヒートポンプ方式蒸発濃縮装置において、加熱蒸発部の蒸発濃縮カラム1Aの下部には自動開閉弁56A,56Bが設けられその下部にその容積が、少なくとも2倍以上ある濃縮物回収容器(ここでは例えばドラム缶)61A,61Bが設けられ、どちらか一方に定着廃液の濃縮物が交互に取り出される。また、蒸発濃縮カラム1Bの下部には自動開閉弁56Cが設けられ、その下部にその容積が少なくとも2倍以上、好ましくは10倍以上ある例えばドラム缶61Cが設けられ現像廃液の濃縮物が取り出される。…。
【0040】濃縮物回収容器(例えばドラム缶)61A,61B,61Cには濃縮物の満杯を検出する満杯検出センサーLC5がそれぞれ設けられていて、運転開始より蒸発濃縮カラム1A,1B内の濃縮液の濃縮と濃縮物の回収容器への排出を何回も自動的に繰り返し、前記センサーLC5が、満杯を検知することにより自動的に停止するようにしてある。…

【0043】請求項7の実施の形態は、…ヒートポンプ方式蒸発濃縮装置において、加熱蒸発部と冷却凝縮部における各カラム1A,1B,5を減圧させる減圧手段が前述のように設けられ、対象とする液体である定着廃液と現像廃液とをそれぞれ供給する配管の途中に液面センサーLC1及びLC2を有する密閉容器31A,31Bが設けられていて、その密閉容器31A,31Bのそれぞれ上側と下側には、自動開閉弁32A,32B,32C,32Dが配管33A,33B,33C,33Dを介して接続され、途中洗浄塔17,18を経て蒸発濃縮カラム1A,1Bへの液体の供給は、上下に配管された前記自動開閉弁のどちらかを開いて行えるようにしたものである。これにより、廃液タンクに液面センサーを設けなくても廃液タンクの空検出を可能にすることができる。そして、各種の既設廃液タンクをそのままで使用し、個々に専用に液面センサーを設けることが不要となり、設置が容易となる。

【0045】請求項9の実施の形態は、請求項7又は請求項8の実施の形態に加えて、加熱蒸発部の蒸発濃縮カラム1A,1Bに液面センサーLC3,LC4を設け、これの検出値により、蒸発濃縮カラム1A,1Bへの液供給を制御するが、通常は上記密閉容器の下側の自動開閉弁32B,32Dを開くことで液供給を行うが、液が正常に供給されてないことが判断されると自動開閉弁32B又は32Dの異常を表示するか、又は、アラームで知らせるようにしたもので場合によっては上方の自動開閉弁32A又は32Cを開いて処理させるようにするものである。」


(4c)「



(3)甲第5号証の記載事項
甲第5号証には以下(5a)?(5e)の記載がある。
(5a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーンの正面に沿って上昇しながら該スクリーンの正面に付着した固形物を掻き揚げてスクリーンの外に排出するスクレーパーを設けると共に、前記スクリーンの背面に接して回転しながら上昇又は上下往復運動することにより、該スクリーンの目詰り物を除去する回転ブラシを設けた構成の固液分離装置において、

前記スクレーパーは、前記スクリーン面の正面側の両サイドの上下に配置したスクレーパー駆動スプロケット間に掛け渡されたスクレーパー駆動チェン間に左右両端がそれぞれ取り付けられていると共に、前記スクリーンの両サイドに配置されたスクレーパー駆動チェンは、スクリーン面に沿ってスクレーパーが上昇する走行領域においてスクリーンの両サイドに沿って配置されたスクレーパー駆動チェン走行ガイド内を走行するように構成したこと、

を特徴とするウェッジワイヤスクリーンを用いた固液分離装置。」

(5b)「【0024】
図3において、36は上記した装置1が斜めにセットされた受水槽、37は廃水導入口、38は廃水排出口である。
上記装置1は、図3に示すように、受水槽36に斜めにセットされ、この受水槽36には廃水導入口37から固形物を含んだ廃水が投入される。…
この投入された廃水は、廃水排出口38から排水されるために、受水槽36内においてはセットされた装置1のスクリーン3面を経由する流れとなる。この流れにおいて、固形物はスクリーン3の面で受け止められる。掻き揚げ装置6のスクレーパー13は、モータ14の回転がスクレーパー駆動チェン9、9aに伝達され、このチェン9、9aが走行することによりスクリーン3の正面を上方に移動する。この移動の間に、スクリーン3面に受け止められた固形物がブレード12により掻き揚げられ、スクリーン3の上端から機外に排出される。

【0028】
図15、図16は、スクレーパー13の圧接力を調整自在とした例であって、スプリング43をガイドピン44に装着し、このスプリング44の力でスクレーパ13をスクリーン3面に弾力的に圧接させる例、図16は、板バネ45で圧接させる例である。46は、ガイドピン44を固定している調整ナットであって、この調整ナット46の締め付けにより、ガイドピン44の長さ(幅)を調整することにより、スクレーパー13がスクリーン3面に圧接する力を調整することができる。」

(5c)「【図3】




(5d)「



(5e)「



(4)甲第6号証の記載事項
甲第6号証には以下(6a)?(6b)の記載がある。
(6a)「【0051】
図5?図7は、ドラムスクリーンユニット100が、汚泥濃縮車1のタンク5の汚泥槽8内の上部に設置された状態を示している。ドラムスクリーンユニット100は、汚泥槽8の上部の開口23を通じて汚泥槽8内に設置され、ドラムスクリーンユニット100の上部フランジ151bが、汚泥槽8の上部の開口23の縁部の取付フランジ24に支持固定されている。…

【0057】
スクレーパ115は、1対のドラム取付板118の間に架設された支持フレーム119Aに設けられたバネ材付蝶番120を介して設けられたスクレーパフレーム121の下端に固定されている。スクレーパフレーム121の下端側およびスクレーパ115は、バネ付蝶番120によってドラムスクリーン本体114側に押圧されている。このため、ドラムスクリーン本体114の汚泥出側に押圧されたスクレーパ115は、ドラムスクリーン本体114に付着した汚泥を掻き落とすことができる。」

(6b)「【図6】



(5)甲第7号証の記載事項及び甲第7号証に記載される考案
甲第7号証には以下(7a)?(7b)の記載がある。
(7a)「1.減圧脱水乾燥装置の構造
ここで減圧脱水乾燥装置の構造について簡単に説明する。
基本的にはシンプルな構造で,真空ポンプにより減圧した蒸留釜内へ廃液を投入し,二重釜となったジャケット部にスチームを投入し,間接加熱を行うものである。蒸留釜内は減圧されているため,通常40℃?50℃位で廃液に含まれる水が蒸発する。この際,フイルターによりミストとして飛沫同伴する異物を低減させ,冷却水の循環しているコンデンサ内で冷却され,再度,水に戻る。そして一定時間,蒸留工程を行い,蒸留釜内に残った残留物が残渣として排出口より排出される仕組みとなっている。
蒸留釜内部には,廃液の撹拌および残渣の排出の機構を備えた撹拌機が内蔵されている。このような乾燥装置にとって,最も問題となるのは蒸留釜伝熱面へのスケール付着による処理能力低下である。それを防止するため,この撹拌機には,テフロン製のスクレーパーをスプリングにより蒸留釜壁面へ密着させる機構を設け,スケールの付着を防止する構造となっている。」(75頁左欄下から4行?右欄下から8行)

(7b)「

」(76頁)

(ア)前記(7a)?(7b)によれば、甲第7号証には「減圧脱水乾燥装置」が記載されており、当該「減圧脱水乾燥装置」は、「計量タンク」、「蒸留釜」、「撹拌機」、「蒸気入口」、「蒸気ドレン」、「回収水計量槽」、「回収水タンク」、「真空ポンプ」、「コンデンサ」を備えるものであって、真空ポンプにより減圧した蒸留釜内へ廃液を投入し、二重釜となったジャケット部にスチームを投入し、間接加熱を行うものであり、蒸留釜内は減圧されているため、通常40℃?50℃位で廃液に含まれる水が蒸発するが、この際、フイルターによりミストとして飛沫同伴する異物を低減させ、冷却水の循環しているコンデンサ内で冷却され、再度、水に戻るものであり、そして一定時間、蒸留工程を行い、蒸留釜内に残った残留物が残渣として排出口より排出される仕組みとなっているものである。
また、蒸留釜内部には、廃液の撹拌および残渣の排出の機構を備えた撹拌機が内蔵されており、このような乾燥装置にとって最も問題となるのは蒸留釜伝熱面へのスケール付着による処理能力低下であり、それを防止するため、この撹拌機には、テフロン製のスクレーパーをスプリングにより蒸留釜壁面へ密着させる機構を設け、スケールの付着を防止する構造となっているものである。

(イ)前記(ア)によれば、甲第7号証には、
「計量タンク、蒸留釜、撹拌機、蒸気入口、蒸気ドレン、回収水計量槽、回収水タンク、真空ポンプ、コンデンサを備える減圧脱水乾燥装置であって、
真空ポンプにより減圧した蒸留釜内へ廃液を投入し、二重釜となったジャケット部にスチームを投入し、間接加熱を行うものであり、蒸留釜内は減圧されているため,通常40℃?50℃位で廃液に含まれる水が蒸発するが、この際、フイルターによりミストとして飛沫同伴する異物を低減させ、冷却水の循環しているコンデンサ内で冷却され、再度、水に戻るものであり、一定時間、蒸留工程を行い、蒸留釜内に残った残留物が残渣として排出口より排出される仕組みとなっており、
蒸留釜内部には、廃液の撹拌および残渣の排出の機構を備えた撹拌機が内蔵されており、このような乾燥装置にとって最も問題となるのは蒸留釜伝熱面へのスケール付着による処理能力低下であり、それを防止するため、この撹拌機には、テフロン製のスクレーパーをスプリングにより蒸留釜壁面へ密着させる機構を設け、スケールの付着を防止する構造となっている、減圧脱水乾燥装置。」の考案(以下、「甲7考案」という。)が記載されているといえる。

(6)甲第8号証の記載事項
甲第8号証には以下(8a)?(8c)の記載がある。
(8a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が被乾燥物を真空状態で加熱する処理空間となる乾燥釜と、被乾燥物を攪拌するために乾燥釜に設けた攪拌機と、乾燥釜内の処理空間の上部または乾燥釜の上部に位置する破砕機とを具備し、…乾燥釜の処理空間で真空状態で被乾燥物を加熱すると共に攪拌して乾燥処理を行う真空乾燥装置において、前記攪拌機は回転駆動される攪拌軸から放射状に複数の羽根支持軸が突設されると共に羽根支持軸の先端に短いリボン状の板からなる羽根を設けて形成され、乾燥釜は乾燥釜の内壁が加熱されるように乾燥釜の外部から加熱され、攪拌軸が回転駆動されて羽根にて攪拌するとき、被乾燥物の団子を破砕する角度、被乾燥物を乾燥釜の内壁にゆっくり押し付ける角度、被乾燥物を乾燥釜の内壁に強く押し付ける角度、被乾燥物を乾燥釜の内壁から掻き取る角度になるように攪拌軸の周方向に羽根の角度を順に変えて設けたことを特徴とする真空乾燥装置。」

(8b)「【0016】
次に攪拌機2について説明する。攪拌機2は図3に示すように正転と逆転とを繰り返して回転駆動される攪拌軸21に複数本の羽根支持軸22を放射方向に突設してあり、羽根支持軸22の先端に短リボン状の羽根23を装着してある。羽根支持軸22は攪拌軸21の周方向及び軸方向に複数本並べて突設してある。本例の場合、攪拌軸21の周方向に90°づつ位相をずらせて4本突設してある。ここで周方向に位相のずれた羽根支持軸22を便宜上、羽根支持軸22a,22b,22c,22dとする。羽根支持軸22aには掻き取り用羽根23aが装着され、羽根支持軸22bには破砕用羽根23bが装着され、羽根支持軸22cには第1押し付け用羽根23cが装着され、羽根支持軸22dには第2押し付け用羽根23dがされている。

【0022】
特に攪拌軸21を正転させて攪拌するときは乾燥釜1の内壁に付着した被乾燥物3が掻き取り用羽根23aに掻き取られ、この掻き取った被乾燥物3の団子が破砕用羽根23bで破砕され、次いで第1押し付け用羽根23cにて被乾燥物3が外部から加熱される乾燥釜1の内壁にゆっくり押し付けられ、次いで第2押し付け用羽根23dにて被乾燥物3が外部から加熱される乾燥釜1の内壁に強く押し付けられ、次いで再び乾燥釜1の内壁に付着した被乾燥物3が掻き取られるように被乾燥物3が攪拌され、被乾燥物3が白米等の澱粉食品残渣でも団子や塊になったりしないように一層円滑に攪拌されて乾燥される。このとき加熱された乾燥釜1の内壁に被乾燥物3を強く押し付けることにより被乾燥物3の加熱の効率がよくなり乾燥がより促進される。…」

(8c)「



(7)甲第9号証の記載事項
甲第9号証には以下(9a)?(9b)の記載がある。
(9a)「【0039】
ケーシング10内に設けられた回転体20は、中空回転軸21と、回転軸21の周囲に90度ピッチで長手方向に螺旋状に隔設されて放射状に突出した中空撹拌棒22と、撹拌棒22の周囲に取り付けられ、且つ、送り部を構成するように傾けた放熱板23と、撹拌棒22の外端に取り付けられた掻き取りスクレーパ40とを有しており、前記送りをかける回転方向に前記インバータモータM1によって回転駆動されるように構成されている。中空回転軸21は、上流側端部と下流側端部とに、スリーブ部30b、35bの蒸気取り込み/排出孔と符合する位置において周囲方向に複数に孔21a、21bを有している。スクレーパ40は、撹拌棒22への取り付け部と、掻き取った物に送りをかけるように傾斜した刃を有した掻き取り部とを有している。掻き取り部は、一方が摩耗した場合に他方が使用できるように2ケ所に形成されている。」

(9b)「【図2】



(8)甲第10号証の記載事項
甲第10号証には以下(10a)?(10b)の記載がある。
(10a)「【0017】
【実施例】以下に本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。図1において、1は、蒸発・乾燥工程と加熱工程と冷却工程を実行しうる円筒状容器である。容器1の中心部を長手方向に中空回転軸2が貫通している。…。
【0018】…また、中空回転軸2には支軸13を介して複数のスクレーパ14が取り付けられており、スクレーパ14は図示するように傾斜パドル状を呈しており、スクレーパ14は中空回転軸2に対してやや傾斜するように取り付けられている。

【0026】…以上の処理工程の間、中空回転軸2は一定の速度で連続して回転しているので、中空回転軸2に取り付けられたスクレーパ14(14aを含む)により容器1の内壁面に付着した副生塩を掻き取ることができる。また、スクレーパ14(14aを含む)は中空回転軸2に対してやや傾斜するように取り付けられており、図2の場合、中空回転軸2を紙面反対方向(矢示方向)に回転させれば、容器1から副生塩を排出するとき、副生塩が容器1の排出口19付近に集まるようになるので、副生塩の回収作業が容易になる。…」

(10b)「



(9)甲第11号証の記載事項及び甲第11号証に記載される発明
甲第11号証には以下(11a)?(11d)の記載がある。
(11a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 乾燥缶と、前記乾燥缶の外壁に配設され内部を流れる加熱用媒体によって前記乾燥缶を加熱する加熱用配管と、前記乾燥缶に連通し廃棄物を供給する廃棄物供給部と、前記乾燥缶内に配設され前記乾燥缶内を回転する羽根部と、前記乾燥缶と連通し廃棄物が乾燥されて発生する排ガスが排出される排ガス排出路と、を備えていることを特徴とする減圧乾燥装置。」

(11b)「【0030】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)…図1において、1は実施の形態1における廃棄物処理システム、2は焼酎粕等の廃棄物を貯留する廃棄物タンク、3は一端が廃棄物タンク2に接続された廃棄物供給路、4は廃棄物供給路3に配設された廃棄物供給ポンプ、5は廃棄物供給路3の他端が廃棄物供給部(後述する)に接続された減圧乾燥装置、6はヌカやフスマ等の添着材を貯留する添着材タンク、7は一端が添着材タンク6に接続され他端が減圧乾燥装置5の添着材供給部と接続する添着材供給路、8は減圧乾燥装置5の乾燥缶の外壁に配設された加熱用配管に接続し水蒸気や温水等の加熱媒体を加熱用配管に供給する加熱媒体供給路、9は加熱用配管から加熱媒体を流出する加熱媒体流出路、10は減圧乾燥装置5で廃棄物を乾燥した際に発生する排ガスを排出する排ガス排出路、11は排ガス排出路10に排ガス供給口が接続されたサイクロン、12はサイクロン11の上部旋回室及び/又は下部旋回室の側壁を冷却する旋回室冷却部に冷却水を供給するサイクロン冷却水供給路、13は旋回室冷却部から冷却水を流出するサイクロン冷却水流出路、14はサイクロン11の下部旋回室に接続されサイクロン11でガスと分離されたミスト等を排出するミスト排出管、15はミスト排出管14に接続して排出されたミスト等を貯留するミストタンク、16は一端がミストタンク15に他端が減圧乾燥装置5の乾燥缶に接続されミスト等を減圧乾燥装置5の乾燥缶に導入するミスト導入路である。
【0031】17はサイクロン11の上部旋回室に配設され排ガス中からミスト等が除去されたミスト除去ガスを排出するミスト除去ガス排出路、18はミスト除去ガス排出路17の他端部が排ガス流路に接続された熱交換器、19は熱交換器18の排ガス流路を冷却する冷却水流路に接続され冷却水を供給する熱交換器冷却水供給路、20は冷却水流路から冷却水を流出する熱交換器冷却水流出路、21は熱交換器冷却水供給路19及びサイクロン冷却水供給路12と接続する冷却水供給路、22は冷却水供給路21の所定部に配設され冷却水を圧送する冷却水ポンプ、23は冷却水供給路21と接続し大気との熱交換によって冷却水を冷却するクーリングタワー、24は一端がサイクロン冷却水流出路13及び熱交換器冷却水流出路20に接続し他端がクーリングタワー23と接続する冷却水還流路、25は熱交換器18で冷却されて凝縮された凝縮液を含む排ガスを流出する凝縮液流出路、26は凝縮液流出路25と接続し凝縮液(液体)と排ガス(気体)とを分離する1次気液分離タンク、27は一端が1次気液分離タンク26と接続し凝縮液と分離された気体を搬送する気体搬送路、28は気体搬送路27の所定部に配設され気体を搬送するとともに減圧乾燥装置5内、サイクロン11内、熱交換器18内を減圧する減圧機としての水封式の真空ポンプ、…31は上流側が2次気液分離タンク29の上部側と接続し2次気液分離タンク29で液体と分離された気体を2次気液分離タンク29の外部に排出する気体排出路である。
【0032】32は一端が1次気液分離タンク26に接続され1次気液分離タンク26内で気体と分離された液体(凝縮液)を搬送する排ガス凝縮液流路、33は排ガス凝縮液流路32の他端が接続し排ガスの凝縮液が導入される凝縮液処理槽、…35は一端が凝縮液処理槽33の上部側と接続し槽加熱装置34によって加熱された凝縮液処理槽33内の凝縮液から蒸発する蒸発ガスを凝縮液処理槽33から排出する蒸発ガス排出管である。…36は一端が凝縮液処理槽33の下部側と接続し他端がクーリングタワー23に接続し凝縮液処理槽33内に残留する排ガス凝縮液の残渣を凝縮液処理槽33から排出する残渣排出管、…39は加熱媒体排出路37の他端が接続され加熱媒体を加熱するボイラ等の媒体加熱装置であり、加熱された加熱媒体は加熱媒体供給路8を通って減圧乾燥装置5の乾燥缶を加熱する。…
【0033】図2、図3、図4において、5は減圧乾燥装置、50は上部に排ガス排出路10が接続され円筒状に形成された乾燥缶、…52は乾燥缶50の側部の中心に軸支されモータ等の回転駆動部(図示しない)に接続された羽根部の軸部、53は一端が軸部52に固着若しくは一体形成され所定間隔をあけて複数突設された羽根部の枝部、54は枝部53の他端に配設固定された撹拌羽根、54aは回転方向に対して略45°の角度に固定若しくは脱着自在に固着された撹拌羽根54の板状の内側羽根部、54bは内側羽根部54aの外側に内側羽根部54aと略直交する角度に固定若しくは脱着自在に固着された撹拌羽根54の板状の外側羽根部である。撹拌羽根54の回転によって、外側羽根部54bは廃棄物を処理物払出口50aの方向(図4(b)に示す払い出し方向)に移動するような角度に固定若しくは固着されており、内側羽根部54aは廃棄物を図4(b)に示す返流方向に移動するような角度に固定若しくは固着されている。撹拌55は軸部52を中心とした枝部53の対象位置に一端が軸部52に固設され所定間隔をあけて複数突設され他端に嵌合孔部を有する羽根部としての筒状の筒状枝部、56は筒状枝部54の嵌合孔部に一端が嵌入され摺動自在に固定された羽根部としての摺動部、57は摺動部56の他端に回転方向に対して略直交する角度に固定若しくは脱着自在に固着された破砕羽根、57aは横断面の曲率半径が乾燥缶50の内壁面の曲率半径より小さな略扇状に形成された破砕羽根57の当接部、57bは回転方向と略平行に当接部57aに複数形成された溝部、58は筒状枝部54の他端側に端部が固定され破砕羽根57を乾燥缶50の内壁面に押圧するように付勢するツルマキバネ等の弾性体である。

【0036】以上のように構成された実施の形態1における減圧乾燥装置及びそれを備えた廃棄物処理システムについて、以下その動作を説明する。まず、真空ポンプ28を駆動し、減圧乾燥装置5、サイクロン11、熱交換器18、1次気液分離タンク26を減圧状態にするとともに、加熱媒体ポンプ38を駆動するとともに媒体加熱装置39を加熱し、媒体加熱装置39で加熱された加熱媒体を加熱媒体供給路8、減圧乾燥装置5、加熱媒体流出路9、槽加熱装置34、加熱媒体排出路37に循環する。これにより、減圧乾燥装置5の乾燥缶50を廃棄物の種類に応じた1700?101325Paの減圧状態下で40?80℃の温度に保つ。このとき、乾燥缶50に配設された安全弁50bは、弁部50cで閉止されている。次いで、廃棄物タンク2に貯留された廃棄物を、廃棄物供給ポンプ4を駆動して廃棄物供給路3から減圧乾燥装置5の廃棄物供給部51を経て乾燥缶50内へ供給する。必要に応じて、添着材タンク6に貯留されたヌカ等の添着材を、添着材供給路7を経て添着材供給部51aから乾燥缶50内に供給する。乾燥缶50に供給された廃棄物は、軸部52の回転駆動により撹拌羽根54,破砕羽根57が回転し撹拌・破砕されるとともに減圧・加熱された乾燥缶50によって乾燥される。…破砕羽根57及び撹拌羽根54の回転により、廃棄物は剪断・撹拌を繰り返して乾燥されながら細かく破砕される。破砕され小型化された廃棄物は破砕羽根57によって乾燥缶50の内壁面に押し付けられ易くなるため、外側羽根部54bによって順次払い出し方向に移送され処理物払出口50aから取り出される。…
【0037】乾燥缶50内で廃棄物が乾燥処理されるのに伴って発生したアルコール類やクエン酸等が溶解したミスト、ミストに同伴された若しくは単独で浮遊する有機固形分等を含む排ガスは、排ガス排出路10から真空ポンプ28によってサイクロン11へ吸引される。サイクロン11の排ガス供給口63から上部旋回室60の接線方向に導入された排ガスに含まれるミスト等は排ガスの気流から分離される。旋回室冷却部64で冷却された下部旋回室61の内壁には結露が発生し、結露した水分がミスト等に付着しその粒径が大きくなり、ミスト等に働く遠心力と下降速度を大きくして排ガスの気流からミスト等が分離されてミスト排出管14の方向へ下降する。…排ガスに含まれるミスト等が除去されたミスト除去ガスは、ミスト除去ガス排出路17から熱交換器18の方向に吸引される。
【0038】熱交換器18の排ガス流路80に吸引された排ガス(ミスト除去ガス)は、排ガス流路80で断熱膨張されて凝縮し液化されるとともに冷却フィン86を有する内部冷却水流路85及び外部冷却水流路82によって冷却されて凝縮され凝縮液が生成される。凝縮液を含む排ガスは凝縮液排出路81から凝縮液流出路25を経て1次気液分離タンク26に吸引される。1次気液分離タンク26で気液分離された凝縮液(排ガス凝縮液)は、排ガス凝縮液流路32を流れて凝縮液処理槽33に貯留される。凝縮液処理槽33に貯留された排ガス凝縮液は、加熱媒体によって加熱される槽加熱装置34によって所定温度(本実施の形態においては40?80℃)に加熱され、加熱温度よりも沸点の低い物質(例えばエチルアルコール等)は蒸発して蒸発ガス排出管35から凝縮液処理槽33の外部に排出される。凝縮液処理槽33から蒸発せずに残留した残渣は、残渣排出管36を通ってクーリングタワー23へ供給される。また、1次気液分離タンク26で気液分離された気体は、気体搬送路27を通って2次気液分離タンク29に運ばれる。…液体導入路30や残渣排出管36からクーリングタワー23へ供給された液体は、クーリングタワー23で熱交換されて冷却され、封水供給路30bから真空ポンプ28のケーシング内に供給されて封水として利用されるとともに冷却水ポンプ22によって冷却水供給路21を流れ熱交換器18やサイクロン11の冷却水として用いられる。熱交換器18やサイクロン11の冷却水として用いられた液体は冷却水還流路24によってクーリングタワー23に運ばれ冷却される。…」

(11c)「



(11d)「



(ア)前記(11a)?(11d)によれば、甲第11号証には「減圧乾燥装置」が記載されており、当該「減圧乾燥装置」は、焼酎粕等の廃棄物を貯留する「廃棄物タンク」、一端が「廃棄物タンク」に接続された「廃棄物供給路」、「廃棄物供給路」に配設された「廃棄物供給ポンプ」、「廃棄物供給路」の他端が接続された「減圧乾燥装置」、「減圧乾燥装置」の乾燥缶の外壁に配設された加熱用配管に接続し水蒸気や温水等の加熱媒体を加熱用配管に供給する「加熱媒体供給路」、加熱用配管から加熱媒体を流出する「加熱媒体流出路」、「減圧乾燥装置」で廃棄物を乾燥した際に発生する排ガスを排出する「排ガス排出路」、「排ガス排出路」に接続された「サイクロン」、「サイクロン」の「上部旋回室」に配設され排ガス中からミスト等が除去されたミスト除去ガスを排出する「ミスト除去ガス排出路」、「ミスト除去ガス排出路」の他端部が「排ガス流路」に接続された「熱交換器」、「熱交換器」の「排ガス流路」を冷却する冷却水流路に接続され冷却水を供給する「熱交換器冷却水供給路」、冷却水流路から冷却水を流出する「熱交換器冷却水流出路」、「熱交換器冷却水供給路」と接続する「冷却水供給路」、「冷却水供給路」の所定部に配設され冷却水を圧送する「冷却水ポンプ」、「冷却水供給路」と接続し大気との熱交換によって冷却水を冷却する「クーリングタワー」、一端が「熱交換器冷却水流出路」に接続し他端が「クーリングタワー」と接続する「冷却水還流路」、「熱交換器」で冷却されて凝縮された凝縮液を含む排ガスを流出する「凝縮液流出路」、「凝縮液流出路」と接続し凝縮液(液体)と排ガス(気体)とを分離する「1次気液分離タンク」、一端が「1次気液分離タンク」と接続し凝縮液と分離された気体を搬送する「気体搬送路」、「気体搬送路」の所定部に配設され気体を搬送するとともに「減圧乾燥装置」内、「サイクロン」内、「熱交換器」内を減圧する減圧機としての水封式の「真空ポンプ」、一端が「1次気液分離タンク」に接続され「1次気液分離タンク」内で気体と分離された液体(凝縮液)を搬送する「排ガス凝縮液流路」、「排ガス凝縮液流路」の他端が接続し排ガスの凝縮液が導入される「凝縮液処理槽」、加熱媒体を加熱するボイラ等の「媒体加熱装置」、「減圧乾燥装置」において、上部に「排ガス排出路」が接続され円筒状に形成された「乾燥缶」、「乾燥缶」の側部の中心に軸支されモータ等の回転駆動部に接続された羽根部の「軸部」、一端が「軸部」に固着若しくは一体形成され所定間隔をあけて複数突設された羽根部の「枝部」、「枝部」の他端に配設固定された「撹拌羽根」、回転方向に対して略45°の角度に固定若しくは脱着自在に固着された「撹拌羽根」の板状の「内側羽根部」、「内側羽根部」の外側に「内側羽根部」と略直交する角度に固定若しくは脱着自在に固着された「撹拌羽根」の板状の「外側羽根部」、廃棄物が取り出される「処理物払出口」、「軸部」を中心とした「枝部」の対象位置に一端が「軸部」に固設され所定間隔をあけて複数突設され他端に嵌合孔部を有する羽根部としての筒状の「筒状枝部」、「筒状枝部」の嵌合孔部に一端が嵌入され摺動自在に固定された羽根部としての「摺動部」、「摺動部」の他端に回転方向に対して略直交する角度に固定若しくは脱着自在に固着された「破砕羽根」、横断面の曲率半径が「乾燥缶」の内壁面の曲率半径より小さな略扇状に形成された「破砕羽根」の「当接部」、回転方向と略平行に「当接部」に複数形成された「溝部」、「筒状枝部」の他端側に端部が固定され「破砕羽根」を「乾燥缶」の内壁面に押圧するように付勢するツルマキバネ等の「弾性体」を備えるものである。
そして、前記「減圧乾燥装置」は、まず、「真空ポンプ」を駆動し、「減圧乾燥装置」、「サイクロン」、「熱交換器」、「1次気液分離タンク」を減圧状態にするとともに、「媒体加熱装置」を加熱し、加熱された加熱媒体を「加熱媒体供給路」、「減圧乾燥装置」、「加熱媒体流出路」等に循環するものであり、これにより、「減圧乾燥装置」の「乾燥缶」を廃棄物の種類に応じた1700?101325Paの減圧状態下で40?80℃の温度に保つものであり、次いで、「廃棄物タンク」に貯留された廃棄物を、「廃棄物供給ポンプ」を駆動して「減圧缶」内へ供給すると、供給された廃棄物は、「軸部」の回転駆動により「撹拌羽根」、「破砕羽根」が回転し撹拌・破砕されるとともに減圧・加熱された「乾燥缶」によって乾燥され、「破砕羽根」及び「撹拌羽根」の回転により、廃棄物は剪断・撹拌を繰り返して乾燥されながら細かく破砕され、破砕され小型化された廃棄物は「破砕羽根」によって「乾燥缶」の内壁面に押し付けられ易くなるため、「外側羽根部」によって順次払い出し方向に移送され「処理物払出口」から取り出されるものであり、「乾燥缶」内で廃棄物が乾燥処理されるのに伴って発生したアルコール類やクエン酸等が溶解したミスト、ミストに同伴された若しくは単独で浮遊する有機固形分等を含む排ガスは、「排ガス排出路」から「真空ポンプ」によって「サイクロン」へ吸引され、「サイクロン」の「排ガス供給口」から「上部旋回室」の接線方向に導入された排ガスに含まれるミスト等は排ガスの気流から分離され、排ガスに含まれるミスト等が除去されたミスト除去ガスは、「熱交換器」の方向に吸引されるものである。
更に、「熱交換器」に吸引された排ガス(ミスト除去ガス)は、「排ガス流路」で断熱膨張されて凝縮し液化されるとともに冷却されて凝縮され凝縮液が生成され、凝縮液を含む排ガスは「1次気液分離タンク」に吸引されるものであり、「1次気液分離タンク」で気液分離された凝縮液(排ガス凝縮液)は「凝縮液処理槽」に貯留され、「凝縮液処理槽」に貯留された排ガス凝縮液は所定温度に加熱され、加熱温度よりも沸点の低い物質(例えばエチルアルコール等)は蒸発して「凝縮液処理槽」の外部に排出されるものであり、「凝縮液処理槽」から蒸発せずに残留した残渣は、「クーリングタワー」へ供給されるものである。
そして、「クーリングタワー」へ供給された液体は、「クーリングタワー」で熱交換されて冷却され、「真空ポンプ」のケーシング内に供給されて封水として利用されるとともに「冷却水ポンプ」によって「熱交換器」の冷却水として用いられ、「熱交換器」の冷却水として用いられた液体は「クーリングタワー」に運ばれ冷却されるものである。

(イ)前記(ア)によれば、甲第11号証には、
「焼酎粕等の廃棄物を貯留する廃棄物タンク、一端が廃棄物タンクに接続された廃棄物供給路、廃棄物供給路に配設された廃棄物供給ポンプ、廃棄物供給路の他端が接続された減圧乾燥装置、減圧乾燥装置の乾燥缶の外壁に配設された加熱用配管に接続し水蒸気や温水等の加熱媒体を加熱用配管に供給する加熱媒体供給路、加熱用配管から加熱媒体を流出する加熱媒体流出路、減圧乾燥装置で廃棄物を乾燥した際に発生する排ガスを排出する排ガス排出路、排ガス排出路に接続されたサイクロン、サイクロンの上部旋回室に配設され排ガス中からミスト等が除去されたミスト除去ガスを排出するミスト除去ガス排出路、ミスト除去ガス排出路の他端部が排ガス流路に接続された熱交換器、熱交換器の排ガス流路を冷却する冷却水流路に接続され冷却水を供給する熱交換器冷却水供給路、冷却水流路から冷却水を流出する熱交換器冷却水流出路、熱交換器冷却水供給路と接続する冷却水供給路、冷却水供給路の所定部に配設され冷却水を圧送する冷却水ポンプ、冷却水供給路と接続し大気との熱交換によって冷却水を冷却するクーリングタワー、一端が熱交換器冷却水流出路に接続し他端がクーリングタワーと接続する冷却水還流路、
熱交換器で冷却されて凝縮された凝縮液を含む排ガスを流出する凝縮液流出路、凝縮液流出路と接続し凝縮液(液体)と排ガス(気体)とを分離する1次気液分離タンク、一端が1次気液分離タンクと接続し凝縮液と分離された気体を搬送する気体搬送路、気体搬送路の所定部に配設され気体を搬送するとともに減圧乾燥装置内、サイクロン内、熱交換器内を減圧する減圧機としての水封式の真空ポンプ、一端が1次気液分離タンクに接続され1次気液分離タンク内で気体と分離された液体(凝縮液)を搬送する排ガス凝縮液流路、排ガス凝縮液流路の他端が接続し排ガスの凝縮液が導入される凝縮液処理槽、加熱媒体を加熱するボイラ等の媒体加熱装置、
減圧乾燥装置において、上部に排ガス排出路が接続され円筒状に形成された乾燥缶、乾燥缶の側部の中心に軸支されモータ等の回転駆動部に接続された羽根部の軸部、一端が軸部に固着若しくは一体形成され所定間隔をあけて複数突設された羽根部の枝部、枝部の他端に配設固定された撹拌羽根、回転方向に対して略45°の角度に固定若しくは脱着自在に固着された撹拌羽根の板状の内側羽根部、内側羽根部の外側に内側羽根部と略直交する角度に固定若しくは脱着自在に固着された撹拌羽根の板状の外側羽根部、廃棄物が取り出される処理物払出口、軸部を中心とした枝部の対象位置に一端が軸部に固設され所定間隔をあけて複数突設され他端に嵌合孔部を有する羽根部としての筒状の筒状枝部、筒状枝部の嵌合孔部に一端が嵌入され摺動自在に固定された羽根部としての摺動部、摺動部の他端に回転方向に対して略直交する角度に固定若しくは脱着自在に固着された破砕羽根、横断面の曲率半径が乾燥缶の内壁面の曲率半径より小さな略扇状に形成された破砕羽根の当接部、回転方向と略平行に当接部に複数形成された溝部、筒状枝部の他端側に端部が固定され破砕羽根を乾燥缶の内壁面に押圧するように付勢するツルマキバネ等の弾性体を備え、
真空ポンプを駆動し、減圧乾燥装置、サイクロン、熱交換器、1次気液分離タンクを減圧状態にするとともに、媒体加熱装置を加熱し、加熱された加熱媒体を加熱媒体供給路、減圧乾燥装置、加熱媒体流出路等に循環するものであり、これにより、減圧乾燥装置の乾燥缶を廃棄物の種類に応じた1700?101325Paの減圧状態下で40?80℃の温度に保ち、次いで、廃棄物タンクに貯留された廃棄物を、廃棄物供給ポンプを駆動して減圧缶内へ供給すると、供給された廃棄物は、軸部の回転駆動により撹拌羽根、破砕羽根が回転し撹拌・破砕されるとともに減圧・加熱された乾燥缶によって乾燥され、破砕羽根及び撹拌羽根の回転により、廃棄物は剪断・撹拌を繰り返して乾燥されながら細かく破砕され、破砕され小型化された廃棄物は破砕羽根によって乾燥缶の内壁面に押し付けられ易くなるため、外側羽根部によって順次払い出し方向に移送され処理物払出口から取り出されるものであり、 乾燥缶内で廃棄物が乾燥処理されるのに伴って発生したアルコール類やクエン酸等が溶解したミスト等を含む排ガスは、排ガス排出路から真空ポンプによってサイクロンへ吸引され、サイクロンの上部旋回室の接線方向に導入された排ガスに含まれるミスト等は排ガスの気流から分離され、排ガスに含まれるミスト等が除去されたミスト除去ガスは、熱交換器の方向に吸引されるものであり、
熱交換器に吸引された排ガス(ミスト除去ガス)は、排ガス流路で断熱膨張されて凝縮し液化されるとともに冷却されて凝縮され凝縮液が生成され、凝縮液を含む排ガスは1次気液分離タンクに吸引され、1次気液分離タンクで気液分離された凝縮液(排ガス凝縮液)は凝縮液処理槽に貯留され、凝縮液処理槽に貯留された排ガス凝縮液は所定温度に加熱され、加熱温度よりも沸点の低い物質(例えばエチルアルコール等)は蒸発して凝縮液処理槽の外部に排出され、凝縮液処理槽から蒸発せずに残留した残渣はクーリングタワーへ供給されるものであり、
クーリングタワーへ供給された液体は、クーリングタワーで熱交換されて冷却され、真空ポンプのケーシング内に供給されて封水として利用されるとともに冷却水ポンプによって熱交換器の冷却水として用いられ、熱交換器の冷却水として用いられた液体はクーリングタワーに運ばれ冷却される、減圧乾燥装置。」の考案(以下、「甲11考案」という。)が記載されているといえる。

2 対比・判断
(1)無効理由1について
(1-1)本件考案1について
ア 対比
(ア)本件考案1と甲2考案とを対比すると、甲2考案における、「処理排液を減圧加熱して水分を蒸発させる釜であって、釜は断熱した2重構造で、釜の外側から蒸気により間接加熱する蒸留釜」、「蒸留釜内に付設し、撹拌及び排出を兼ねた構造となっており、テフロン羽根をスプリングにより釜壁面に密着させることで、壁面への固着物の付着を防止し、熱伝達低下を防ぐ攪拌機」、「攪拌機モーター」、「蒸留釜より蒸発した水蒸気を冷却し液化するシェルアンドチューブ方式のコンデンサであって、内部に細いパイプを設け、その中を冷却水が流れ、外側に気化したガス(水蒸気)が接触・凝縮し液化するコンデンサ」、「蒸留系を真空にする為の水封式真空ポンプであり、吸込み口には、空気吸込みラインを設けバルブの開閉により真空度の調節を行う真空ポンプ」、「内部にフィルターが挿入してあり、共沸物(ミスト)を低減させ回収水の水質悪化を防止する機能があるミストキャッチャー」、「原水ポンプから送られてくる処理廃水を受けるタンクであり、フロートセンサにて液面管理・給液を行う計量タンク」、「減圧脱水乾燥装置【減】TWIN300」は、それぞれ、本件考案1における「廃棄物導入口と残渣排出口とが閉鎖されて内部を減圧状態で保持可能な蒸留釜の本体としての蒸留用容器」、「前記蒸留用容器の内部に前記廃棄物導入口から導入された廃棄物を該蒸留用容器の内部で攪拌翼が攪拌する廃棄物攪拌機構」、「前記廃棄物攪拌機構の攪拌翼が取り付けられた攪拌軸を駆動する駆動機構」、「前記蒸留釜の蒸留用容器の内部に前記導入された廃棄物から蒸発した気体を熱交換により液体に凝縮するコンデンサ」、「前記蒸留釜の蒸留用容器の内部の圧力を少なくとも減圧する水封式真空ポンプ」、「前記蒸留釜から排出されたミストを補足するミストキャッチャー」、「前記廃棄物導入口から導入する前記廃棄物の供給量を計量する第1の計量器」、「減圧脱水乾燥装置」に相当する。

(イ)また、本件考案1における「コンデンサから流出する液体成分の流量を計量する第2の計量器」についてみると、本件登録実用新案明細書の【0060】?【0061】には、以下の記載がある。
「【0060】
図4(a)に示すように、本考案に係る減圧脱水乾燥装置100は、実施の形態1?2の何れか1つの形態に係る特徴的な蒸留釜101と、…コンデンサ103から流出する液体成分の流出状態を観察するためのサイトグラス104と、…を備えている。…
【0061】
又、この実施の形態3では、減圧脱水乾燥装置100がサイトグラス104を備えているが、図4(b)に示すように、サイトグラス104に代えて、減圧脱水乾燥装置100に計量器109が設けられる場合もある。この場合、計量器109は、コンデンサ103と真空ポンプ105とを接続する配管における所定の位置に設けられる。そして、この計量器109は、コンデンサ103からバッファタンク106に向けて通流する液体成分の流量を計量する。このような、計量器108に加えて計量器109を更に備え、計量器109が液体成分の回収側に設けられる減圧脱水乾燥装置100の変形例において、計量器109は、減圧脱水乾燥装置における異常検知等の運転管理のために設けられている。」
そして、前記記載によれば、本件考案1における「第2の計量器」は、「コンデンサ」から流出する液体成分の流出状態を観察するための「サイトグラス」に代えて、「コンデンサ」と「真空ポンプ」とを接続する配管における所定の位置に設けられるものであり、「コンデンサ」から流出する液体成分のみの流量を計量するものと解するのが妥当である。
一方、甲2考案における「蒸留水計量タンク」は、「コンデンサにて凝縮した蒸留水を一旦受けて計量するタンクであり、液面センサにて液面管理・送水を行う」ものであり、「コンデンサ」から流出する液体成分のみの流量を計量するものにほかならないから、本件考案1における「第2の計量器」に相当する。
なお、請求人は、弁駁書の「(3)甲第2号証に関する合議体の暫定的な見解に対する請求人の意見」の10行?12行において、本件考案1の「第2の計量器」に相当するのは、甲2考案における「蒸留水計量タンク」とみるのが妥当、とする合議体の見解は正しいと考える旨を主張しており、この点に争いはない。
更に、甲2考案における「操作盤」は、本件考案1における「制御装置」に相当し、甲2考案において、「通常運転においては、一度、装置運転ボタンを押すと設定条件にて繰り返し運転を行い、停止する場合は装置停止ボタンを押すと処理中のバッチ運転終了後にサイクル停止」し、「異常が発生した場合、運転が停止すると共に、異常警報ブザーを鳴らしタッチパネル画面上に異常内容を表示するものであり、アラーム表示として、計量タンク上限」を表示することは、本件考案1において、「前記第1の計量器」「により異常の発生の有無を検知しながらバッチ連続運転を行うように制御する」ことに相当し、前記1(1)(2b)、(2h)によれば、甲2考案において、「前記蒸留釜の設置状態において、前記駆動機構の攪拌軸が水平方向に延在するように構成されている」ことが看取される。

(ウ)前記(ア)、(イ)によれば、本件考案1と甲2考案とは、
「廃棄物導入口と残渣排出口とが閉鎖されて内部を減圧状態で保持可能な蒸留釜の本体としての蒸留用容器と、
前記蒸留用容器の内部に前記廃棄物導入口から導入された廃棄物を該蒸留用容器の内部で攪拌翼が攪拌する廃棄物攪拌機構と、
前記廃棄物攪拌機構の攪拌翼が取り付けられた攪拌軸を駆動する駆動機構と、
前記蒸留釜の蒸留用容器の内部に前記導入された廃棄物から蒸発した気体を熱交換により液体に凝縮するコンデンサと、
前記蒸留釜の蒸留用容器の内部の圧力を少なくとも減圧する水封式真空ポンプと、
前記蒸留釜から排出されたミストを補足するミストキャッチャーと、
前記廃棄物導入口から導入する前記廃棄物の供給量を計量する第1の計量器と、
前記コンデンサから流出する液体成分の流量を計量する第2の計量器と、
前記第1の計量器により異常の発生の有無を検知しながらバッチ連続運転を行うように制御する制御装置と、
を備え、
前記蒸留釜の設置状態において、前記駆動機構の攪拌軸が水平方向に延在するように構成されている、減圧脱水乾燥装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:本件考案1は、「減圧脱水乾燥装置」が「蒸留釜の蒸留用容器の内部に導入された廃棄物を加熱する熱源」を備えるのに対して、甲2考案は「熱源」について記載されていない点。

相違点2:本件考案1は、「減圧脱水乾燥装置」が、「第1の計量器」に加えて「第2の計量器により異常の発生の有無を検知しながらバッチ連続運転を行うように制御する」、との特定事項を有するのに対して、甲2考案は、前記特定事項について記載されていない点。

イ 判断
事案に鑑み、前記ア(ウ)の相違点2から検討すると、甲2考案における「蒸留水計量タンク」が、本件考案1における「第2の計量器」に相当することは前記ア(イ)のとおりであって、前記1(1)(2e)?(2g)によれば、甲2考案における「第2の計量器」は、異常が発生した場合にアラーム表示されるものではないから、甲2考案における「制御装置」は、「第2の計量器により異常の発生の有無を検知しながらバッチ連続運転を行うように制御する」ものではない。
すると、本件考案1と甲2考案は、前記相違点2の点で実質的に相違するから、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件考案1が甲2考案と同一であるとはいえない。

(1-2)本件考案2?5について
本件考案2?5は、いずれも、直接的又は間接的に本件考案1を引用するものであって、本件考案2?5のいずれかと甲2考案とを対比した場合、いずれの場合であっても、少なくとも前記相違点2の点で相違する。
そうすると、前記(1-1)イに記載したのと同様の理由により、本件考案2?5が、甲2発明と同一であるとはいえない。

(1-3)小括
以上のとおりであるので、本件考案1?5は甲第2号証に記載された発明と同一であるとはいえない。
そして、甲第1号証の内容が真正であり、甲第2?3号証が証拠として成立し、かつその内容が真正であり、甲第12?14号証により、本件考案の優先日前に型番名を「【減】TWIN300」と称する減圧脱水乾燥装置が鳥取県産業技術センターに納入されたことが客観的に立証できるとしても、本件考案1?5は甲第2号証に記載された発明と同一であるとはいえないのであるから、これらの当否について判断するまでもなく、無効理由1は理由がない。

(2)無効理由2について
(2-1)本件考案1について
(ア)前記(1)(1-1)イによれば、前記相違点2は実質的な相違点であるので、更に前記相違点2の想到容易性について検討すると、甲第4?6、8?10号証をみても、「減圧脱水乾燥装置」において、「制御装置」を、「第2の計量器により異常の発生の有無を検知しながらバッチ連続運転を行うように制御する」ものとすることが記載も示唆もされているとはいえない。

(イ)ここで、請求人は、甲第4号証には、濃縮液の満杯を検知可能なセンサーや、各容器に設けられた複数の液面センサーなどを用いて、処理対象の液体に対する蒸発濃縮装置の運転を自動的に連続して行う連続運転が可能であることが記載されており、甲第2号証及び甲第4号証に示される考案は、いずれも、廃液等を蒸発して濃縮する装置、又は当該装置の機構に関するものであり、本件考案と技術分野を同一にするものであるから、本件考案は、甲第2号証に記載された制御盤によるバッチ処理の記載内容に基づいて当業者がきわめて容易に推考し得るものであり、また、甲第4号証に記載された構成を甲第2号証に記載された「減圧脱水乾燥装置」に適用することは、当業者がきわめて容易に推考し得るものであり、本件考案の効果も、甲第2号証及び甲第4号証の記載から予測できる効果以上のものではない旨を主張している(請求書24頁7行?13行、27頁1行?11行)。

(ウ)そこで検討すると、前記1(2)(4a)?(4c)によれば、甲第4号証には「ヒートポンプ方式蒸発濃縮装置」が記載されており、具体的には、前記「ヒートポンプ方式蒸発濃縮装置」は、減圧に耐える2つの加熱蒸発部としての蒸発濃縮カラム1A,1B内に、それぞれ例えば定着液の廃液と現像液の廃液とに分割した写真処理廃液を注入して貯め、該蒸発濃縮カラム1A,1Bの上部の冷却凝縮部の凝縮カラム5には、減圧手段としてのアスピレーター7をそれぞれ接続して、該凝縮カラム5内を前記蒸発濃縮カラム1A,1Bと共に減圧するようにしたものであり、前記蒸発濃縮カラム1A,1B内には、加熱手段としてヒートポンプの放熱部2A,2Bを設け、該放熱部2A,2Bにより減圧下での加熱蒸発を繰り返し、効率よく急速に濃縮化を行うものである。
また、該凝縮力ラム5には蒸発した水蒸気の冷却手段としてヒートポンプの吸熱部8Bとそれによって回収される凝縮水の案内溝及び水受け8Eを設ける一方、上記の蒸発濃縮を繰り返して、高濃度に固形化した成分はこの蒸発濃縮カラム1A,1Bの下部に設けた濃縮物回収容器61A,61B,61Cで受け取り回収するものであり、蒸発濃縮カラム1A,1Bの上部に連通して設けた前記凝縮カラム5の冷却手段としてのヒートポンプの吸熱部8Bにより、下部の前記濃縮カラムより上がってきた蒸発蒸気を捕らえて冷却凝縮して、水滴として回収するようにしたものであり、水蒸気は冷却手段としての吸熱部8Bの表面に触れて凝縮し、水滴となって、アスピレーター7を通過して水回収容器9に集められ、水回収容器9からオーバーフローした水はパイプ36によって別の水槽に送られて、この凝縮液はそのまま、又は必要に応じて2次処理を行い、再利用又は下水に排水されるものである。
そして、蒸発濃縮カラム1A,1B内に注入貯留する処理廃液は、例えば定着液の廃液と現像液の廃液とに分割された給液ストックタンクから、途中の密閉容器31A,31B及び洗浄塔17,18を経て配管された配管中の電磁弁32A,32B,32C,32Dを適時開閉制御して給送されるものであり、加熱蒸発部の蒸発濃縮カラム1Aの下部には自動開閉弁56A,56Bが設けられ、その下部にその容積が少なくとも2倍以上ある濃縮物回収容器61A,61Bが設けられ、どちらか一方に定着廃液の濃縮物が交互に取り出され、また、蒸発濃縮カラム1Bの下部には自動開閉弁56Cが設けられ、その下部にその容積が少なくとも2倍以上、好ましくは10倍以上ある例えばドラム缶61Cが設けられ現像廃液の濃縮物が取り出されるのであるが、濃縮物回収容器61A,61B,61Cには濃縮物の満杯を検出する満杯検出センサーLC5がそれぞれ設けられていて、運転開始より蒸発濃縮カラム1A,1B内の濃縮液の濃縮と濃縮物の回収容器への排出を何回も自動的に繰り返し、前記センサーLC5が、満杯を検知することにより自動的に停止するようにしてあるものであり、また、対象とする液体である定着廃液と現像廃液とをそれぞれ供給する配管の途中に液面センサーLC1及びLC2を有する密閉容器31A,31Bが設けられていて、その密閉容器31A,31Bのそれぞれ上側と下側には、自動開閉弁32A,32B,32C,32Dが配管33A,33B,33C,33Dを介して接続され、途中洗浄塔17,18を経て蒸発濃縮カラム1A,1Bへの液体の供給は、上下に配管された前記自動開閉弁のどちらかを開いて行えるようにしたものであり、これにより、廃液タンクに液面センサーを設けなくても廃液タンクの空検出を可能にすることができ、各種の既設廃液タンクをそのままで使用し、個々に専用に液面センサーを設けることが不要となり、設置が容易となるものである。
更に、加熱蒸発部の蒸発濃縮カラム1A,1Bに液面センサーLC3,LC4を設け、これの検出値により、蒸発濃縮カラム1A,1Bへの液供給を制御するが、通常は上記密閉容器の下側の自動開閉弁32B,32Dを開くことで液供給を行うが、液が正常に供給されてないことが判断されると自動開閉弁32B又は32Dの異常を表示するか、又は、アラームで知らせるようにしたもので、場合によっては上方の自動開閉弁32A又は32Cを開いて処理させるようにするものである。

(エ)前記(ウ)によれば、甲第4号証に記載される「ヒートポンプ方式蒸発濃縮装置」は、「減圧脱水乾燥装置」といえるものであって、甲第4号証の「蒸発濃縮カラム」及び「凝縮力ラム」は、それぞれ、「廃棄物導入口と残渣排出口とが閉鎖されて内部を減圧状態で保持可能な蒸留釜の本体としての蒸留用容器」及び「前記蒸留釜の蒸留用容器の内部に前記導入された廃棄物から蒸発した気体を熱交換により液体に凝縮するコンデンサ」といえ、甲第4号証には、「廃棄物導入口と残渣排出口とが閉鎖されて内部を減圧状態で保持可能な蒸留釜の本体としての蒸留用容器」及び「前記蒸留釜の蒸留用容器の内部に前記導入された廃棄物から蒸発した気体を熱交換により液体に凝縮するコンデンサ」を備えた「減圧脱水乾燥装置」が開示されているといえる。
ところが、甲第4号証の「減圧脱水乾燥装置」においては、「コンデンサ」の冷却手段としてのヒートポンプの吸熱部により、「蒸留用容器」より上がってきた蒸発蒸気を捕らえて冷却凝縮して、水滴となった水は、アスピレーターを通過して水回収容器に集められ、水回収容器からオーバーフローした水はパイプによって別の水槽に送られて、この凝縮液はそのまま、又は必要に応じて2次処理を行い、再利用又は下水に排水されるのであって、甲第4号証の「減圧脱水乾燥装置」は、「コンデンサ」から流出する液体成分のみの流量を計量する「計量器」、すなわち本件考案1における「第2の計量器」を有するものではない。
そして、「第2の計量器」を有しない「減圧脱水乾燥装置」において「第2の計量器により異常の発生の有無を検知しながらバッチ連続運転を行うように制御する制御装置」を設けることは、そもそも想定されない。

(オ)してみれば、甲第4号証に、「廃棄物導入口と残渣排出口とが閉鎖されて内部を減圧状態で保持可能な蒸留釜の本体としての蒸留用容器」及び「前記蒸留釜の蒸留用容器の内部に前記導入された廃棄物から蒸発した気体を熱交換により液体に凝縮するコンデンサ」を備えた「減圧脱水乾燥装置」が開示され、更に、当該「減圧脱水乾燥装置」において、濃縮物回収容器に濃縮物の満杯を検出する満杯検出センサーが設けられ、蒸発濃縮カラムに液面センサーが設けられ、対象とする液体である定着廃液と現像廃液とをそれぞれ供給する配管の途中に液面センサーを有する密閉容器が設けられて、これらセンサーに基づいて異常を表示する制御が行われているとしても、甲第4号証の「減圧脱水乾燥装置」においては、「コンデンサから流出する液体成分の流量を計量する」「第2の計量器により異常の発生の有無を検知しながらバッチ連続運転を行うように制御する制御装置」を設けることは、そもそも想定されないのであるから、甲2考案において、「減圧脱水乾燥装置」を、「第2の計量器により異常の発生の有無を検知しながらバッチ連続運転を行うように制御する制御装置」を備えるものとして、前記相違点2に係る本件考案1の特定事項を有するものとすることを、甲第4号証の記載事項に基づいて当業者がきわめて容易になし得るとはいえない。
したがって、請求人の前記(イ)の主張は採用できない。

(カ)更に、請求人は、甲第2号証には、前記1(1)(2c)の「バッファータンク」の説明欄に、「その為、最初の立上げ時や、保守作業等でタンク内の水を抜いた場合など、必ず運転前にタンク内へ水の補充を行って下さい。」との記載があるが、運転開始後は、外部から水の補給が行われることなく、加熱によって蒸留釜の温度が徐々に上昇して、「コンデンサ」で蒸留された水(回収水)が生じると、その回収水が「コンデンサ」から排出されて、「蒸留水計量タンク」を経て「バッファータンク」に流入することになり、運転前及び運転中の「バッファータンク」の水位は「フロートセンサ」によって検知可能であるため、運転後に「蒸留水計量タンク」から「バッファータンク」に流入した回収水の量は、運転前の水位と運転後の水位から検知することができ、また、運転前の水位を検知していなくても、運転開始後の液面の水位の変化量を検知することにより、運転後に「蒸留水計量タンク」から「バッファータンク」に流入した回収水の量を検知することができるから、「バッファータンク」及び「フロートセンサ」によっても、運転前に「バッファータンク」内に補充した水の量と分けて流入水の量を計量することは可能である旨を主張している(弁駁書「(3)甲第2号証に関する合議体の暫定的な見解に対する請求人の意見」の13行?27行)。

(キ)ところが、甲第2号証には、「バッファータンク」及び「フロートセンサ」において、運転前に「バッファータンク」内に補充した水の量と回収水の量を分けて計量することは記載も示唆もされていない。
また、前記(2c)によれば、「バッファータンク」は、真空ポンプ起動時に必要な液封を確保するためのものであり、そのような「バッファータンク」において、蒸留した回収水を一旦、受ける機能があるとしても、運転前に補充した水の量と回収水の量を分けて計量する必要はないことは明らかである。
更に、甲2考案においては、運転開始後、「コンデンサ」で凝縮された回収水の量は「第2の計量器」において計量されるから、「バッファータンク」において、再度、運転前に補充した水の量と回収水の量を分けて計量する理由も存在しない。
そうすると、甲2考案において、「バッファータンク」及び「フロートセンサ」によって、運転前に補充した水の量と回収水の量を分けて計量することはそもそも想定されないから、請求人の前記(カ)の主張は採用できない。

(ク)前記(ア)、(エ)、(オ)、(キ)によれば、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件考案1を、甲第2号証に記載された考案及び甲第4?6、8?10号証の記載事項に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたとはいえない。

(2-2)本件考案2?5について
本件考案2?5のいずれかと甲2考案とを対比した場合、いずれの場合であっても、少なくとも前記相違点2の点で相違することは、前記(1)(1-2)に記載のとおりである。
そうすると、前記(2-1)(ア)、(エ)、(オ)、(キ)に記載したのと同様の理由により、本件考案2?5を、甲第2号証に記載された考案及び甲第4?6、8?10号証の記載事項に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたとはいえない。

(2-3)小括
以上のとおりであるので、本件考案1?5を、甲第2号証に記載された考案及び甲第4?6、8?10号証の記載事項に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたとはいえない。
そして、甲第1号証の内容が真正であり、甲第2?3号証が証拠として成立し、かつその内容が真正であり、甲第12?14号証により、本件考案の優先日前に型番名を「【減】TWIN300」と称する減圧脱水乾燥装置が鳥取県産業技術センターに納入されたことが客観的に立証できるとしても、本件考案1?5を、甲第2号証に記載された考案及び甲第4?6、8?10号証の記載事項に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたとはいえないのであるから、これらの当否について判断するまでもなく、無効理由2は理由がない。

(3)無効理由3について
(3-1)本件考案1について
ア 対比
(ア)本件考案1と甲7考案とを対比すると、甲7考案における、「廃液を投入し、二重釜となったジャケット部にスチームを投入し、間接加熱を行うものであり」、「減圧されているため、通常40℃?50℃位で廃液に含まれる水が蒸発する」「蒸留釜」、「廃液の撹拌および残渣の排出の機構を備えた攪拌機」、「冷却水の循環しているコンデンサ」、「蒸留釜内」を減圧する「真空ポンプ」、「ミストとして飛沫同伴する異物を低減させ」る「フィルター」、「計量タンク」、「回収水計量槽」、「減圧脱水乾燥装置」は、それぞれ、本件考案1における「廃棄物導入口と残渣排出口とが閉鎖されて内部を減圧状態で保持可能な蒸留釜の本体としての蒸留用容器」、「前記蒸留用容器の内部に前記廃棄物導入口から導入された廃棄物を該蒸留用容器の内部で攪拌翼が攪拌する廃棄物攪拌機構」、「前記蒸留釜の蒸留用容器の内部に前記導入された廃棄物から蒸発した気体を熱交換により液体に凝縮するコンデンサ」、「前記蒸留釜の蒸留用容器の内部の圧力を少なくとも減圧する」「真空ポンプ」、「前記蒸留釜から排出されたミストを補足するミストキャッチャー」、「廃棄物導入口から導入する廃棄物の供給量を計量する第1の計量器」、「コンデンサから流出する液体成分の流量を計量する第2の計量器」、「減圧脱水乾燥装置」に相当する。
また、前記1(5)(7b)によれば、甲7考案において、「前記蒸留釜の設置状態において、前記駆動機構の攪拌軸が水平方向に延在するように構成されている」ことが看取される。

(イ)前記(ア)によれば、本件考案1と甲7考案とは、
「廃棄物導入口と残渣排出口とが閉鎖されて内部を減圧状態で保持可能な蒸留釜の本体としての蒸留用容器と、
前記蒸留用容器の内部に前記廃棄物導入口から導入された廃棄物を該蒸留用容器の内部で攪拌翼が攪拌する廃棄物攪拌機構と、
前記蒸留釜の蒸留用容器の内部に前記導入された廃棄物から蒸発した気体を熱交換により液体に凝縮するコンデンサと、
前記蒸留釜の蒸留用容器の内部の圧力を少なくとも減圧する真空ポンプと、
前記蒸留釜から排出されたミストを補足するミストキャッチャーと、
前記廃棄物導入口から導入する廃棄物の供給量を計量する第1の計量器と、
前記コンデンサから流出する液体成分の流量を計量する第2の計量器と、
を備え、
前記蒸留釜の設置状態において、前記駆動機構の攪拌軸が水平方向に延在するように構成されている、減圧脱水乾燥装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点3:本件考案1は、「減圧脱水乾燥装置」が「廃棄物攪拌機構の攪拌翼が取り付けられた攪拌軸を駆動する駆動機構」を備えるのに対して、甲7考案は「駆動機構」について記載されていない点。

相違点4:本件考案1は、「減圧脱水乾燥装置」が「蒸留釜の蒸留用容器の内部に導入された廃棄物を加熱する熱源」を備えるのに対して、甲7考案は「熱源」について記載されていない点。

相違点5:本件考案1は、「減圧脱水乾燥装置」の「真空ポンプ」が「水封式真空ポンプ」であるのに対して、甲7考案は「真空ポンプ」が「水封式真空ポンプ」であることが記載されていない点。

相違点6:本件考案1は、「減圧脱水乾燥装置」が「第1の計量器及び第2の計量器により異常の発生の有無を検知しながらバッチ連続運転を行うように制御する制御装置」を備えるのに対して、甲7考案は、前記「制御装置」を備えない点。

イ 判断
(ア)事案に鑑み、前記ア(イ)の相違点6から検討すると、前記相違点6は、甲7考案が本件考案1の「第2の計量器により異常の発生の有無を検知しながらバッチ連続運転を行うように制御する制御装置」を備えないことを含む点で、前記(1)(1-1)ア(ウ)の相違点2と同様であり、前記(2)(2-1)(ク)に記載したのと同様の理由により、甲7考案において、「減圧脱水乾燥装置」を、「第1の計量器及び第2の計量器により異常の発生の有無を検知しながらバッチ連続運転を行うように制御する制御装置」を備えるものとして、前記相違点6に係る本件考案1の特定事項を有するものとすることを、甲第4?6、8?10号証の記載事項に基づいて当業者がきわめて容易になし得るとはいえない。

(イ)したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件考案1を、甲第7号証に記載された考案及び甲第4?6、8?10号証の記載事項に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたとはいえない。

(3-2)本件考案2?5について
本件考案2?5は、いずれも、直接的又は間接的に本件考案1を引用するものであって、本件考案2?5のいずれかと甲7考案とを対比した場合、いずれの場合であっても、少なくとも前記(3-1)ア(イ)の相違点6の点で相違する。
そうすると、前記(3-1)イ(イ)に記載したのと同様の理由により、本件考案2?5を、甲第7号証に記載された考案及び甲第4?6、8?10号証の記載事項に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたとはいえない。

(3-3)小括
以上のとおりであるので、本件考案1?5を、甲第7号証に記載された考案及び甲第4?6、8?10号証の記載事項に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたとはいえないから、無効理由3は理由がない。

(4)無効理由4について
(4-1)本件考案1について
ア 対比
(ア)本件考案1と甲11考案とを対比すると、甲11考案における「乾燥缶」、「媒体加熱装置」、「熱交換器」、「真空ポンプ」、「サイクロン」は、それぞれ、本件考案1における「廃棄物導入口と残渣排出口とが閉鎖されて内部を減圧状態で保持可能な蒸留釜の本体としての蒸留用容器」、「蒸留釜の蒸留用容器の内部に導入された廃棄物を加熱する熱源」、「蒸留釜の蒸留用容器の内部に前記導入された廃棄物から蒸発した気体を熱交換により液体に凝縮するコンデンサ」、「蒸留釜の蒸留用容器の内部の圧力を少なくとも減圧する水封式真空ポンプ」、「蒸留釜から排出されたミストを補足するミストキャッチャー」に相当する。
また、甲11考案における、「軸部」、「枝部」、「撹拌羽根」等を有する「羽根部」は、本件考案1における「蒸留用容器の内部に廃棄物導入口から導入された廃棄物を該蒸留用容器の内部で攪拌翼が攪拌する廃棄物攪拌機構」に相当し、甲11考案における「回転駆動部」は、本件考案1における「廃棄物攪拌機構の攪拌翼が取り付けられた攪拌軸を駆動する駆動機構」に相当し、前記1(9)(11d)によれば、甲11考案において、「前記蒸留釜の設置状態において、前記駆動機構の攪拌軸が水平方向に延在するように構成されている」ことが看取される。

(イ)前記(ア)によれば、本件考案1と甲11考案とは、
「廃棄物導入口と残渣排出口とが閉鎖されて内部を減圧状態で保持可能な蒸留釜の本体としての蒸留用容器と、
前記蒸留用容器の内部に前記廃棄物導入口から導入された廃棄物を該蒸留用容器の内部で攪拌翼が攪拌する廃棄物攪拌機構と、
前記廃棄物攪拌機構の攪拌翼が取り付けられた攪拌軸を駆動する駆動機構と、
前記蒸留釜の蒸留用容器の内部に前記導入された廃棄物を加熱する熱源と、
前記蒸留釜の蒸留用容器の内部に前記導入された廃棄物から蒸発した気体を熱交換により液体に凝縮するコンデンサと、
前記蒸留釜の蒸留用容器の内部の圧力を少なくとも減圧する水封式真空ポンプと、
前記蒸留釜から排出されたミストを補足するミストキャッチャーと、
を備え、
前記蒸留釜の設置状態において、前記駆動機構の攪拌軸が水平方向に延在するように構成されている、減圧脱水乾燥装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点7:本件考案1は、「減圧脱水乾燥装置」が、「廃棄物導入口から導入する廃棄物の供給量を計量する第1の計量器と、コンデンサから流出する液体成分の流量を計量する第2の計量器と、前記第1の計量器及び前記第2の計量器により異常の発生の有無を検知しながらバッチ連続運転を行うように制御する制御装置」を備えるのに対して、甲11考案は、前記「第1の計量器」、「第2の計量器」及び「第1の計量器及び第2の計量器により異常の発生の有無を検知しながらバッチ連続運転を行うように制御する制御装置」を備えない点。

イ 判断
(ア)以下、前記ア(イ)の相違点7について検討すると、前記相違点7は、甲11考案が本件考案1の「第2の計量器により異常の発生の有無を検知しながらバッチ連続運転を行うように制御する制御装置」を備えないことを含む点で、前記(1)(1-1)ア(ウ)の相違点2と同様であり、前記(2)(2-1)(ク)に記載したのと同様の理由により、甲11考案において、「減圧脱水乾燥装置」を、「廃棄物導入口から導入する廃棄物の供給量を計量する第1の計量器と、コンデンサから流出する液体成分の流量を計量する第2の計量器と、前記第1の計量器及び前記第2の計量器により異常の発生の有無を検知しながらバッチ連続運転を行うように制御する制御装置」を備えるものとして、前記相違点7に係る本件考案1の特定事項を有するものとすることを、甲第4?6、8?10号証の記載事項に基づいて当業者がきわめて容易になし得るとはいえない。

(イ)したがって、本件考案1を、甲第11号証に記載された考案及び甲第4?6、8?10号証の記載事項に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたとはいえない。

(4-2)本件考案2?5について
本件考案2?5は、いずれも、直接的又は間接的に本件考案1を引用するものであって、本件考案2?5のいずれかと甲7考案とを対比した場合、いずれの場合であっても、少なくとも前記(4-1)ア(イ)の相違点7の点で相違する。
そうすると、前記(4-1)イ(ア)、(イ)に記載したのと同様の理由により、本件考案2?5を、甲第11号証に記載された考案及び甲第4?6、8?10号証の記載事項に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたとはいえない。

(4-3)小括
以上のとおりであるので、本件考案1?5を、甲第11号証に記載された考案及び甲第4?6、8?10号証の記載事項に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたとはいえないから、無効理由4は理由がない。

第6 むすび
以上のとおり、本件考案1?5は、請求人の主張する無効理由及び証拠方法によっては無効とすることはできないから、本件考案1?5についての審判の請求は成り立たない。
審判費用については、実用新案法41条の規定で準用する特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人の負担とする。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2020-08-19 
結審通知日 2020-08-26 
審決日 2020-09-24 
出願番号 実願2011-159(U2011-159) 
審決分類 U 1 114・ 112- Y (C02F)
U 1 114・ 111- Y (C02F)
U 1 114・ 121- Y (C02F)
最終処分 不成立    
特許庁審判長 菊地 則義
特許庁審判官 金 公彦
馳平 憲一
登録日 2011-03-02 
登録番号 実用新案登録第3166876号(U3166876) 
考案の名称 減圧脱水乾燥装置  
代理人 岩崎 浩平  
代理人 小澤 壯夫  
代理人 黒田 清行  
代理人 華山 浩伸  

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