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審決分類 審判    F04D
審判    F04D
管理番号 1369038
審判番号 無効2020-400001  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2020-04-02 
確定日 2020-11-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第3222543号実用新案「携帯型扇風機」の実用新案登録無効審判事件について,次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第3222543号の請求項1ないし4に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
実用新案登録第3222543号の請求項1?4に係る考案(以下,「本件考案」という。)についての出願は,令和元年5月27日に実用新案登録出願され,同年7月17日にその実用新案権の設定登録がされたものである。
これに対して,令和2年4月2日に請求人である深▲せん▼市几素科技有限公司により,本件考案の実用新案登録について実用新案登録無効審判の請求がされ,令和2年6月3日付けで請求書副本を送達するとともに期間を定めて答弁書提出の機会を与えたが,被請求人からは応答がなかった。
その後,令和2年9月7日付けで,被請求人及び請求人に対して,書面審理通知書を通知した。

第2 本件考案
本件考案の請求項1?4に係る考案(以下,請求項の番号に従って,「本件考案1」などという。)は,それぞれ,その実用新案登録請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
複数のブレードを有し,該各ブレードは,モーターの回転軸に固定された回転体の外端部に回動可能に軸着され,狭く閉じた状態で揃えることが可能であるファンを有する扇風機本体と,
該扇風機本体に対し回動可能に軸着されており,前記扇風機本体が入る開口部を有すると共に,所要の方向に回動させることにより前記扇風機本体を内部に収容可能である収容ケースとを備える
携帯型扇風機。
【請求項2】
前記回転体が所要長さの長円状で,前記回転軸は前記回転体の中心に固定され,前記ブレードは前記回転体の長手方向の両端部に取り付けられている
請求項1記載の携帯型扇風機。
【請求項3】
前記収容ケースの前記開口部の縁は,略全体が長手方向と平行な同一平面上にある
請求項1又は2記載の携帯型扇風機。
【請求項4】
前記扇風機本体の長手方向の一方の端部に照明用のライトが設けられている
請求項1,2又は3記載の携帯型扇風機。」

第3 請求人の主張
請求人は,実用新案登録第3222543号の実用新案登録請求の範囲の請求項1?4の各項に係る考案についての実用新案登録を無効にする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,証拠方法として次の甲第1号証?甲第6号証(以下,証拠の番号に従って「甲1」などという。)を提出している。
そして,請求人は,審判請求書の「7 (3)(3-1)」において,無効審判請求の根拠として,本件考案は,甲1(甲2)に示されるとおり,その出願前に外国において頒布された刊行物に記載された考案であるから,実用新案法第3条第1項第3号に該当し実用新案登録を受けることができないものであり,また,本件考案は,実用新案法第3条第1項第3号に該当するものでないとしても,甲1(甲2)に示される携帯型扇風機に基づいて,当業者がきわめて容易に考案することができたものであるから,実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり,その実用新案登録は同法第37条第1項第2号に該当し,無効とすべきである(以下,「無効理由1」という。)と主張する。
また,本件考案は,甲3(甲4,甲5)及び甲6に示されるとおり,その出願前に日本国内又は外国において(i)公然知られたもの,(ii)公然実施されていたもの,(iii)電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであるから,実用新案法第3条第1項第1号,同項第2号,又は同項第3号に該当し実用新案登録を受けることができないものであり,その実用新案登録は同法第37条第1項第2号に該当し,無効とすべきである(以下,「無効理由2」という。)と主張している。

<証拠方法>
甲1:中華人民共和国国家知識産権局が発行した意匠公報(CN 305094078 S)。
甲2:甲1の図面の一部を抜粋して作成した説明資料。
甲3:Amazon Services LLCのウェブサイトの記事を紙媒体に印刷したもの。<URL:https://www.amazon.com/OURRy-Desktop-personal-Operation-Compatibility/dp/B072PWLDK3/ref=as_li_ss_tl?keywords=14-22+Working+Hours+Rechargeable+Handheld+Fan&qid=1558784149&s=gateway&sr=8-3&linkCode=sl1&tag=cruicana-20&linkId=d7d6d00e350158a7a2ce3f5ac6607215&language=en_US>
甲4:甲3の写真の一部を抜粋して作成した説明資料。
甲5:甲3に示す商品販売ページ内で公開されている商品説明の動画。<URL:https://www.amazon.com/OURRy-Desktop-personal-Operation-Compatibility/dp/B072PWLDK3/ref=as_li_ss_tl?keywords=14-22+Working+Hours+Rechargeable+Handheld+Fan&qid=1558784149&s=gateway&sr=8-3&linkCode=sl1&tag=cruicana-20&linkId=d7d6d00e350158a7a2ce3f5ac6607215&language=en_US>
甲6:Multi-function Mini Fan(甲3に示す商品)の現物写真。

第4 被請求人の主張
被請求人は,上記第1で述べたとおり,答弁書を提出しなかった。

第5 甲号証の記載及び引用考案
1 各甲号証の記載
(1)甲1及び甲2
甲1に照らして,甲2の記載内容は,対応する甲1の図面の一部を抜粋して拡大したものに参照番号を付与したものであることは明らかである。
甲1及び甲2には,以下の事項が記載されている(仮訳は当審で作成し,部材の参照番号は甲2に記載のものを用いた。)。
ア 甲1の5ページには,


(1.本意匠物品の名称:折り畳み扇風機。
2.本意匠物品の用途:扇風,照明のために使用される。)」
という記載がある。

イ 甲1の2ページ右側3段目の「▲▼^(*1)(設計1立体図)(甲2の図2を参照。以下,「甲2の図2」という。)」から,扇風機を折り畳んだ状態が看取できる。


ウ 甲1の2ページ右側4段目の「▲▼^(*2)(設計1開いた状態の参考斜視図1)(甲2の図3を参照。以下,「甲2の図3」という。)」から,ケース2が,扇風機本体1の端部に部材22で取り付けられ,前記扇風機本体1に対して約180°に広げられた状態が看取できる。
また,前記ケース2は,開口部21を有し,前記開口部21の縁は,略全体が前記ケース2の長手方向と平行な同一平面上にあることが看取できる。


エ 甲1の3ページ左側1段目の「▲▼^(*3)(設計1開いた状態の参考斜視図2)(甲2の図4を参照。以下,「甲2の図4」という。)」から,ケース2が,扇風機本体1の端部に部材22で取り付けられ,前記扇風機本体1に対して約90°に曲げられた状態が看取できる。


オ 甲2の図3及び甲2の図4から,扇風機本体1は,2つの部材183,184を有し,前記2つの部材183,184は互いに重なり合っていて,各部材183,184は,長円状の部材182の両端部に取り付けられていることが看取できる。

カ 甲1の4ページの「▲▼^(*4)(設計2開いた状態の参考斜視図1)(甲2の図5を参照。以下,「甲2の図5」という。)」及び「▲▼^(*5)(設計2開いた状態の参考斜視図2)(甲2の図6を参照。以下,「甲2の図6」という。)」から,設計2の扇風機は2つの部材を有し,前記2つの部材は,それぞれ,甲2の図5で示される重なった状態と甲2の図6で示される広がった状態をとることがわかる。


(2)甲3及び甲4
甲3に照らして,甲4の記載内容は,対応する甲3の図面の一部を抜粋して拡大したものに参照番号を付与したものであることは明らかである。
甲3及び甲4には,以下の事項が記載されている(仮訳は当審で作成し,部材の参照番号は甲4に記載のものを用いた。)。
ア 甲3の1ページ目の上部に「14-22 Working Hrs Handheld Pocket Fan with 2000 mAh Power Bank, Portable Battery Operated or USB Powered Folding Personal Fan, 2 Speeds, Rechargeable Quiet Mini Fan for Home, Office and Kitchen」と記載されており,甲3のウェブサイトは,「Handheld Pocket Fan(手持ち小型扇風機)」についてのものであることがわかる。

イ 甲3の1ページ目の写真(甲4の図1を参照。以下,「甲4の図1」という。)の左側に示されているように,製品のボディの下の部分に数字の「3」が印字されているのが看取できる。

ウ 甲4の図1及び甲3の3ページ目の下段左端の写真(甲4の図2を参照。以下,「甲4の図2」という。)から,手持ち小型扇風機の扇風機本体3は,2つのブレード383,384を有しており,甲4の図2から,前記2つのブレード383,384は,部材382の両端部に取り付けられていることが看取できる。そして,前記部材382は長手方向に所定の長さを有する長円状であることが看取できる。
また,前記2つのブレード383,384は,甲4の図1で示される互いに広がった状態と甲4の図2で示される閉じた状態をとることがわかる。
さらに,ケース4の開口部41の縁は,略全体が前記ケース4の長手方向と平行な同一平面上にあることが看取できる。

エ 甲3の3ページ目の上段右端の写真(甲4の図4を参照。以下,「甲4の図4」という。)から,扇風機本体3には,モーター380が内蔵されており,前記モーター380の回転軸381が長円状の部材382と結合していることが看取できる。

オ 甲3の3ページ目の上段左端の写真(甲4の図3を参照。以下,「甲4の図3」という。)から,扇風機本体3の長手方向の一方の端部にライト37が設けられていることが看取できる。

カ 甲3の3ページ目の下段中央の写真の下には,小型扇風機のサイズが以下のように記載されている。
「Pocket Size(ポケットサイズ)
・Length : 1.4 inch(長さ:1.4インチ)
・Height : 4.7 inch(高さ:4.7インチ)
・Width : 1.4 inch(幅:1.4インチ)
・Weight : 4.4 ounces(重量:4.4オンス)」

キ 甲3の4ページ目の左下に「Item model number 8541833311(製品型番号 8541833311)」と記載されていることが看取できる。

ク 甲3の4ページ目の左下に「Date first listed on Amazon April 10,2019(Amazonへの最初の掲載日 2019年4月10日)」と記載されていることが看取できる。

(3)甲5
甲5の動画には,以下の事項が示されている。
ア 0:00?0:02
製品のボディの下の部分に数字の「3」が印字されているのが看取できる。

イ 0:03?0:04
扇風機本体が2つのブレードを有し,前記2つのブレードは,長円状の部材の両端部に取り付けられていることがわかる。

ウ 0:21?0:23
小型扇風機のサイズが以下のように記載されていることが看取できる。
「Pocket Size(ポケットサイズ)
・Length : 1.4 inch(長さ:1.4インチ)
・Height : 4.7 inch(高さ:4.7インチ)
・Width : 1.4 inch(幅:1.4インチ)
・Weight : 4.4 ounces(重量:4.4オンス)」

エ 0:24?0:27
扇風機本体がケースの内部に収容されており,前記ケースは,前記扇風機本体の端部に回動可能に軸着されており,前記ケースを,前記扇風機本体に対して,回動させることで前記扇風機本体を取り出すことが可能であることが看取できる。
また,前記ケースは,前記扇風機本体が入る開口部を有することが看取できる。
さらに,前記ケースの前記開口部の縁は,略全体が前記ケースの長手方向と平行な同一平面上にあることが看取できる。

オ 0:34?0:37
扇風機本体は2枚のブレードを有し,前記2枚のブレードは長円状の部材の両端部に揺動可能に固定されており,前記2枚のブレード及び前記長円状の部材からファンを構成していることが看取できる。
そして,前記長円状の部材が,その中心部で扇風機本体と回転可能に固定されており,前記長円状の部材が回転することで前記ファンが回転することが看取できる。
さらに,前記ファンが停止しているときには,前記2つのブレードは,狭く閉じた状態で揃えられた状態にあることが看取できる。

カ 0:45?0:50
「flashlight(懐中電灯)」と記載されており,扇風機本体の長手方向の一方の端部にライトが設けられていることが看取できる。

2 引用考案
(1)引用考案1?4について
ア 上記1の(1)イ?エから,ケース2は扇風機本体1に対して,部材22で回動可能に軸着され,前記ケース2を,甲2の図3の状態から甲2の図2の状態になるように,開口部21が扇風機本体1に向かい合う方向に回動させることで,前記扇風機本体1をケース2の内部に収容可能であることが理解できる。
また,前記扇風機本体1が前記ケース2の内部に収容可能であることから,前記開口部21は,前記扇風機本体1が入る大きさであることは明らかである。

イ 上記1の(1)アから,折り畳み扇風機は,照明のために使用されるので,照明用のライトが設けられていることが理解できる。

ウ そうすると,上記ア,イ,及び,上記1の(1)ア?カより,甲1には,以下の考案が記載されていると認められる。
引用考案1
「2つの部材183,184を有し,該各部材183,184は,長円状の部材182の両端部に取り付けられ,前記2つの部材183,184は互いに重なり合う扇風機本体1と,
該扇風機本体1に対し回動可能に軸着されており,前記扇風機本体1が入る開口部21を有すると共に,前記開口部21が前記扇風機本体1に向かい合う方向に回動させることにより前記扇風機本体1を内部に収容可能であるケース2とを備える折り畳み扇風機。」

引用考案2
「引用考案1の折り畳み扇風機であって,
前記長円状の部材182は長手方向に所定の長さを有する長円状で,前記2つの部材183,184は前記長円状の部材182の長手方向の両端部に取り付けられている折り畳み扇風機。」

引用考案3
「引用考案1又は2の折り畳み扇風機であって,
前記ケース2の前記開口部21の縁は,略全体が長手方向と平行な同一平面上にある折り畳み扇風機。」

引用考案4
「引用考案1,2又は3の折り畳み扇風機であって,
照明用のライトが設けられている折り畳み扇風機。」

(2)引用考案5?8について
ア 上記1の(2)イ,カ,キ(3)ア,ウから,甲3のウェブサイトで紹介されている手持ち小型扇風機,及び,甲5で撮影されている手持ち小型扇風機は,ともに製品型番号が8541833311である同じ手持ち小型扇風機であることが理解できる。

イ 上記1の(2)クから甲3のウェブサイトで紹介されている手持ち小型扇風機のAmazonへの最初の掲載日は2019年4月10日であるから,かかる手持ち小型扇風機は,遅くとも,2019年4月10日には,その内容が公然知られる状況にあったということができ,甲3,甲5の手持ち小型扇風機は同じ製品型番号の手持ち小型扇風機であるから,甲3及び甲5の手持ち小型扇風機は,本件考案の出願前に公然知られる状況にあったことが理解できる。

ウ 上記1の(2)エ及び(3)オから,長円状の部材382は回転する部材であり,モーター380の回転軸381は,前記長円状の部材382の中心に固定されていることが理解できる。

エ 上記1の(2)ウ及び(3)オから,2つのブレード383,384は,長円状の部材382の両端部に回動可能に軸着されていることが理解できる。

オ 上記1の(3)エから,ケースを,開口部が扇風機本体に向かい合う方向に回動させることで,前記ケースの内部に前記扇風機本体を収容可能であることがわかる。
また,前記扇風機本体が前記ケースの内部に収容可能であることから,前記開口部は,前記扇風機本体が入る大きさであることは明らかである。

カ 上記1の(2)ウ及び(3)エから,ケースの開口部の縁は,略全体が前記ケースの長手方向と平行な同一平面上にあることがわかる。

キ そうすると,本件考案の出願前に以下の考案が公然知られる状況にあったといえる。
引用考案5
「2つのブレード383,384を有し,該各ブレード383,384は,モーター380の回転軸381に固定された長円状の部材382の両端部に回動可能に軸着され,狭く閉じた状態で揃えることが可能であるファンを有する扇風機本体3と,
該扇風機本体3に対し回動可能に軸着されており,前記扇風機本体3が入る開口部を有すると共に,前記開口部が前記扇風機本体3に向かう方向に回動させることにより前記扇風機本体3を内部に収容可能であるケースとを備える手持ち小型扇風機。」

引用考案6
「引用考案5の手持ち小型扇風機であって,
前記長円状の部材382は長手方向に所定の長さを有する長円状で,前記回転軸381は前記長円状の部材382の中心に固定され,前記ブレード383,384は前記長円状の部材382の両端部に取り付けられている手持ち小型扇風機。」

引用考案7
「引用考案5又は6の手持ち小型扇風機であって,
前記ケースの前記開口部の縁は,略全体が長手方向と平行な同一平面上にある手持ち小型扇風機。」

引用考案8
「引用考案5,6又は7の手持ち小型扇風機であって,
前記扇風機本体3の長手方向の一方の端部にライト37が設けられている手持ち小型扇風機。」

第6 対比・判断
1 無効理由1について
(1)本件考案1について
本件考案1と引用考案1とを対比する。
引用考案1の「扇風機本体1」,「両端部」,「開口部21」,「前記開口部21が前記扇風機本体1に向かい合う方向」,「ケース2」,「折り畳み扇風機」は,その機能に照らして,それぞれ,本件考案1の「扇風機本体」,「外端部」,「開口部」,「所要の方向」,「収容ケース」,「携帯型扇風機」に相当する。
そして,引用考案1は扇風機であるので,通常,複数の羽(ブレード)を有することは明らかであり,甲1の設計2の扇風機に設けられる2つの部材が,互いに重なった状態と互いに広がった状態をとること(上記第5の1の(1)カ参照)を踏まえれば,引用考案1の「2つの部材183,184」は,本件考案1の「複数のブレード」に相当する。
また,引用考案1は扇風機であるので,羽(ブレード)を回転させる動力,すなわち,モーターを備えていることは明らかであるものの,モーターの動力が,前記羽(ブレード)にどのように伝達されているか(モーターの回転軸と前記羽(ブレード)がどのように取り付けられているか)は不明であるので,引用考案1の「該各部材183,184は,長円状の部材182の端部に取り付けられ」と,本件考案1の「該各ブレードは,モーターの回転軸に固定された回転体の外端部に回動可能に軸着され」は,「該各ブレードは,部材の外端部に取り付けられ」ている点で共通する。
さらに,引用考案1の「互いに重なり合う」はその態様に照らして,本件考案1の「狭く閉じた状態で揃えることが可能である」に相当し,引用考案1は,2つの部材183,184及び長円状の部材182で扇風機のファンを構成していることは明らかであるから,引用考案1の「互いに重なり合う扇風機本体1」は,本件考案1の「狭く閉じた状態で揃えることが可能であるファンを有する扇風機本体」に相当する。
そうすると,本件考案1と引用考案1は,以下の点で一致し,相違する。
(一致点1)
「複数のブレードを有し,該各ブレードは,部材の外端部に取り付けられ,狭く閉じた状態で揃えることが可能であるファンを有する扇風機本体と,
該扇風機本体に対し回動可能に軸着されており,前記扇風機本体が入る開口部を有すると共に,所要の方向に回動させることにより前記扇風機本体を内部に収容可能である収容ケースとを備える
携帯型扇風機。」

(相違点1)
ブレードが外端部に取り付けられる部材に関して,本件考案1は,「モーターの回転軸に固定された回転体」であるのに対し,引用考案1は,「長円状の部材182」であり,前記長円状の部材182は,モーターの回転軸に固定されているか不明である点。

(相違点2)
本件考案1は,各ブレードが,「回転体の外端部に回動可能に軸着され」ているのに対し,引用考案1は,2つの部材183,184が,長円状の部材182の両端部に取り付けられているものの,回動可能に軸着されているか不明である点。

そうすると,本件考案1と引用考案1とは,上記相違点1,2において相違する。
したがって,本件考案1は,引用考案1であるとはいえないから,実用新案法第3条第1項第3号に該当しない。

以下,上記相違点について検討する。
ア 相違点1について
甲1から,引用考案1の2つの部材183,184及び長円状の部材182からなるファンがどのような態様で回転するのかが明らかでなく,長円状の部材182が回転するかについても不明である。
また,甲1には,扇風機本体1のどこにモーターを配置しているのかが不明であり,その回転軸が長円状の部材182に固定されているのか否かについても不明である。
しかしながら,モーターの動力をファンに伝達する構成として,モーターの回転軸をファンと直接的に結合させる構成やモーターの回転軸とファンとの間に部材を介在させて間接的に結合させる構成などがあることは技術常識であり,これらの構成から最適なものを適宜設定することは当業者が通常行うことであって,モーターの回転軸をファンと直接結合させる構成をとることは,当業者がきわめて容易になし得たことである。
また,引用考案1は,長円状の部材182の両端部に2つの部材183,184が取り付けられている構成であることから,ファンが回転する際のバランス等を考慮すれば,長円状の部材182の中心部分を回転中心とすべきことは,当業者であれば,きわめて容易に理解し得ることである。
そうすると,引用考案1において,モーターの回転軸を長円状の部材182の中心に固定して部材182を回転体とすることは,当業者がきわめて容易になし得たことである。

イ 相違点2について
通常,扇風機のファンにおいて,回転時のバランス等を考慮して,複数のブレードを互いに離れた状態で配置することは技術常識である。
そして,上記1の(1)カより,甲1の設計2では,2つの部材(ブレード)が,互いに重なった状態と広がった状態をとることがわかる。
そうすると,引用考案1において,上記設計2の2つの部材(ブレード)が互いに重なった状態と広がった状態をとることを参酌して,2つの部材183,184(ブレード)が互いに重なった状態と広がった状態をとるようにすることは,当業者であれば,きわめて容易に想到し得たことである。
そして,上記2つの状態を実現するための具体的な構成として,2つの部材183,184(ブレード)を長円状の部材182の端部に回動可能に軸着させることは,技術の具体化に伴う設計的事項であって,当業者がきわめて容易になし得たことである。

ウ 本件考案1の奏する作用効果をみても,引用考案1及び甲1に記載された事項から予測される範囲内のものであって,格別顕著なものでもない。

エ 以上のとおりであるから,引用考案1において,上記相違点に係る本件考案1の構成を備えるようにすることは当業者がきわめて容易になし得たことである。
したがって,本件考案1は,引用考案1及び甲1に記載された事項に基いて,当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから,実用新案法第3条第2項の規定により,実用新案登録を受けることができない。

(2)本件考案2について
本件考案2と引用考案2とを対比する。
引用考案2の「所定の長さを有する長円状」は,本件考案2の「所要長さの長円状」に相当するので,引用考案2の「前記長円状の部材182は長手方向に所定の長さを有する長円状で」と,本件考案2の「前記回転体が所要長さの長円状で」は,「前記部材が所要長さの長円状で」ある点で共通する。
また,引用考案2の「前記2つの部材183,184は前記長円状の部材182の長手方向の両端部に取り付けられている」と,本願考案2の「前記ブレードは前記回転体の長手方向の両端部に取り付けられている」は,「前記ブレードは前記部材の長手方向の両端部に取り付けられている」点で共通する。
そうすると,両者は,上記一致点1に加えて,以下の点で一致し,上記相違点1,2に加えて,以下の点で相違する。
(一致点2)
「前記部材が所要長さの長円状で,前記ブレードは前記部材の長手方向の両端部に取り付けられている」点。

(相違点3)
本件考案2は,回転軸は回転体の中心に固定されているのに対し,引用考案2は,回転軸を備えているか明らかでなく,前記回転軸は長円状の部材182の中心に固定されているか不明である点。

そうすると,本件考案2と引用考案2とは,上記相違点1?3において相違する。
したがって,本件考案2は,引用考案2であるとはいえないから,実用新案法第3条第1項第3号に該当しない。

以下,上記相違点について検討する。
相違点1,2については,上記(1)ア,イにおいて検討したとおりである。
相違点3については,上記(1)アにおいて,実質的に検討済みであり,引用考案2において,上記相違点1?3に係る本件考案2の構成を備えるようにすることは当業者がきわめて容易になし得たことである。
したがって,本件考案2は,引用考案2及び甲1に記載された事項に基いて,当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから,実用新案法第3条第2項の規定により,実用新案登録を受けることができない。

(3)本件考案3について
本件考案3と引用考案3とを対比すると,上記一致点1,2に加えて,以下の点で一致し,上記相違点1?3において相違する。
(一致点3)
「前記収容ケースの前記開口部の縁は,略全体が長手方向と平行な同一平面上にある」点。

そうすると,本件考案3と引用考案3とは,上記相違点1?3において相違する。
したがって,本件考案3は,引用考案3であるとはいえないから,実用新案法第3条第1項第3号に該当しない。
上記(1)ア,イ及び(2)において検討したように,引用考案3において,上記相違点1?3に係る本件考案3の構成を備えるようにすることは当業者がきわめて容易になし得たことである。
したがって,本件考案3は,引用考案3及び甲1に記載された事項に基いて,当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから,実用新案法第3条第2項の規定により,実用新案登録を受けることができない。

(4)本件考案4について
本件考案4と引用考案4とを対比すると,両者は上記一致点1?3に加えて,以下の点で一致し,上記相違点1?3に加えて,以下の点で相違する。
(一致点4)
「照明用のライトが設けられている」点。

(相違点4)
照明用のライトが設けられる位置について,本件考案4は,「扇風機本体の長手方向の一方の端部」であるのに対し,引用考案4は不明である点。

そうすると,本件考案4と引用考案4とは,上記相違点1?4において相違する。
したがって,本件考案4は,引用考案4であるとはいえないから,実用新案法第3条第1項第3号に該当しない。

以下,上記相違点について検討する。
相違点1?3については,上記(1)ア,イ及び(2)において検討したとおりである。
相違点4について検討すると,照明用のライトを,その使用状況等を想定し,最適な位置に設けることは,当業者が通常行うことであり,その位置として,扇風機本体の長手方向の一方の端部とすることに格別の困難性は認められない。
してみれば,引用考案4において,上記相違点1?4に係る本件考案4の構成を備えるようにすることは当業者がきわめて容易になし得たことである。
したがって,本件考案4は,引用考案4及び甲1に記載された事項に基いて,当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから,実用新案法第3条第2項の規定により,実用新案登録を受けることができない。

2 無効理由2について
(1)本件考案1について
本件考案1と引用考案5とを対比する。
引用考案5の「2つのブレード383,384」,「該各ブレード383,384」,「モーター380」,「回転軸381」,「長円状の部材382」,「ファン」,「扇風機本体3」,「開口部」,「前記開口部が前記扇風機本体3に向かう方向」,「ケース」,「手持ち小型扇風機」は,その機能に照らして,それぞれ,本件考案1の「複数のブレード」,「該各ブレード」,「モーター」,「回転軸」,「回転体」,「ファン」,「扇風機本体」,「開口部」,「所要の方向」,「収容ケース」,「携帯型扇風機」に相当する。
そうすると,本件考案1と引用考案5とは,以下の点で一致し,相違点はない。
(一致点1)
「複数のブレードを有し,該各ブレードは,モーターの回転軸に固定された回転体の外端部に回動可能に軸着され,狭く閉じた状態で揃えることが可能であるファンを有する扇風機本体と,
該扇風機本体に対し回動可能に軸着されており,前記扇風機本体が入る開口部を有すると共に,所要の方向に回動させることにより前記扇風機本体を内部に収容可能である収容ケースとを備える
携帯型扇風機。」
したがって,本件考案1は,引用考案5であるから,実用新案法第3条第1項第1号に該当し,実用新案登録を受けることができない。

(2)本件考案2について
本件考案2と引用考案6とを対比すると,引用考案6の「長手方向に所定の長さを有する長円状」は,本件考案2の「所要長さの長円状」に相当する。
そうすると,両者は,上記一致点1に加えて,以下の点で一致し,相違点はない。
(一致点2)
「前記回転体が所要長さの長円状で,前記回転軸は前記回転体の中心に固定され,前記ブレードは前記回転体の長手方向の両端部に取り付けられている」点。
したがって,本件考案2は,引用考案6であるから,実用新案法第3条第1項第1号に該当し,実用新案登録を受けることができない。

(3)本件考案3について
本件考案3と引用考案7とを対比すると,両者は上記一致点1,2に加えて,以下の点で一致し,相違点はない。
(一致点3)
「前記収容ケースの前記開口部の縁は,略全体が長手方向と平行な同一平面上にある」点。
したがって,本件考案3は,引用考案7であるから,実用新案法第3条第1項第1号に該当し,実用新案登録を受けることができない。

(4)本件考案4について
本件考案4と引用考案8とを対比すると,両者は上記一致点1?3に加えて,以下の点で一致し,相違点はない。
(一致点4)
「前記扇風機本体の長手方向の一方の端部に照明用のライトが設けられている」点。
したがって,本件考案4は,引用考案8であるから,実用新案法第3条第1項第1号に該当し,実用新案登録を受けることができない。

第7 むすび
以上のとおり,本件考案1?4は,実用新案法第3条第1項の規定,又は,同条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであるから,本件考案1?4についての実用新案登録は,実用新案法第37条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。
審判に関する費用については,実用新案法第41条の規定が準用する特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2020-09-30 
結審通知日 2020-10-05 
審決日 2020-10-19 
出願番号 実願2019-1875(U2019-1875) 
審決分類 U 1 114・ 111- Z (F04D)
U 1 114・ 121- Z (F04D)
最終処分 成立  
特許庁審判長 柿崎 拓
特許庁審判官 山本 健晴
佐々木 芳枝
登録日 2019-07-17 
登録番号 実用新案登録第3222543号(U3222543) 
考案の名称 携帯型扇風機  
代理人 森田 靖之  
代理人 有吉 修一朗  
代理人 筒井 宣圭  
代理人 特許業務法人コスモス国際特許商標事務所  
代理人 遠藤 聡子  
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