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審決分類 |
審判 全部申し立て F01L 審判 全部申し立て F01L |
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管理番号 | 1006260 |
異議申立番号 | 異議1999-70669 |
総通号数 | 6 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2000-06-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-02-15 |
確定日 | 1999-11-15 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 実用新案登録第2578369号「バルブリフタ」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 実用新案登録第2578369号の実用新案登録を維持する。 |
理由 |
[1]手続の経緯 本件実用新案登録第2578369号考案は、平成4年2月4日に実用新案登録出願され、同10年5月22日に実用新案権の設定の登録がなされ、その後、同11年2月15日付でフジオーゼックス株式会社より実用新案登録異議の申立てがなされ、同11年7月30日に取消理由通知がなされ、その指定期間内である同11年9月28日に訂正請求がなされたものである。 [2]訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 実用新案登録権者は、訂正請求書において、本件実用新案登録明細書を実用新案登録請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的として下記の通りに訂正しようとするものである。 ▲1▼実用新案登録第2578369号公報第1ページ第1欄2行目(平成10年3月10日付け提出の手続補正書による手続補正後の【請求項1】の段落における1行目)に記載した「吸排気弁」を「OHC方式の吸排気弁」と訂正する。 ▲2▼実用新案登録第2578369号公報第1ページ第1欄5行目(平成10年3月10日付け提出の手続補正書による手続補正後の【請求項1】の段落における3行目から4行目にカ)けて)に記載した「嵌め合せた」を「交換可能に嵌め合わされる弾性変形可能な」と訂正する。 ▲3▼実用新案登録第2578369号公報第1ページ第1欄8行目から9行目にかけて(平成10年3月10日付け提出の手続補正書による手続補正後の【請求項1】の段落における5行目から6行目にカ)けて)記載した「前記吸排気弁の最大揚程時における前記シムの撓み時に該」を「前記アウタシムが最大に擁む前記吸排気弁の最大揚程時において、前記」と訂正する。 ▲4▼実用新案登録第2578369号公報第1ページ第1欄9行目(平成10年3月10日付け提出の手続補正書による手続補正後の【請求項1】の段落における6行目から7行目にかけて)に記載した「前記凹部との」を「前記凹部の底面との」と訂正する。 ▲5▼実用新案登録第2578369号公報第2ページ第3欄23行目(平成10年3月10日付け提出の手続補正書による手続補正後の段落番号【0007】の【課題を解決するための手段】の段落における1行目)に記載した「吸排気弁」を「OHC方式の吸排気弁」と訂正する。 ▲6▼実用新案登録第2578369号公報第2ページ第3欄26行目(平成10年3月10日付け提出の手続補正書による手続補正後の段落番号【0007】の【課題を解決するための手段】の段落における3行目)に記載した「嵌め合せた」を「交換可能に嵌め合わされる弾性変形可能な」と訂正する。 ▲7▼実用新案登録第2578369号公報第2ページ第3欄29行目から30行目にかけて(平成10年3月10日付け提出の手続補正書による手続補正後の段落番号【0007】の【課題を解決するための手段】の段落における5行目から6行目にかけて)記載した「前記吸排気弁の最大揚程時における前記シムの撓み時に該」を「前記アウタシムが最大に撓む前記吸排気弁の最大揚程時において、前記」と訂正する。 ▲8▼実用新案登録第2578369号公報第2ページ第3欄30行目(平成10年3月10日付け提出の手続補正書による手続補正後の段落番号【0007】の【課題を解決するための手段】の段落における6行目)に記載した「前記凹部との」を「前記凹部の底面との」と訂正する。 ▲9▼実用新案登録第2578369号公報第2ページ第3欄36行目(平成10年3月10日付け提出の手続補正書による手続補正後の段落番号【0008】の【作用】の段落における2行目)に記載した「弾性変形するが、」を「弾性変形するが、アウタシムが最大に撓む吸排気弁の最大揚程時であっても、」と訂正する。 ▲10▼実用新案登録第2578369号公報第2ページ第4欄48行目(平成10年3月10日付け提出の手続補正書による手続補正後の段落番号【0015】の【考案の効果】の段落における2行目)に記載した「嵌め合せた」を「交換可能に嵌め合わされる弾性変形可能な」と訂正する。 ▲11▼実用新案登録第2578369号公報第2ページ第4欄50行目(平成10年3月10日付け提出の手続補正書による手続補正後の段落番号【0015】の【考案の効果】の段落における3行目から4行目にかけて)に記載した「接触させ、」を「接触させ、アウタシムが最大に擁む吸排気弁の最大揚程時であっても、」と訂正する。 ▲12▼実用新案登録第2578369号公報第3ページ第5欄1行目(平成10年3月10日付け提出の手続補正書による手続補正後の段落番号【0015】の【考案の効果】の段落における4行目)に記載した「凹部との」を「凹部の底面との」と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無及び拡張・変更の存否 ▲1▼上記訂正事項の▲1▼については、本件考案における実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された動弁機構が「OHC方式」のものであって、シムを用いて駆動カムとの隙間調整を行うことを明確化したものである。 この訂正事項は、明細書の段落番号【0003】,【0006】および図面の図1に記載されていたものであるので、当該訂正事項は、願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、または変更するものでもない。 ▲2▼上記訂正事項の▲2▼については、本件考案における実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたアウタシムが隙間調整のために交換されるものであり、駆動カムによって弾性変形するものであることを明確化したものであり、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当する。 この訂正事項は、明細書の段落番号【0003】,【0008】,【0013】,【0014】および図面の図1に記載されていたものであるので、当該訂正事項は、願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、または変更するものでもない。 ▲3▼上記訂正事項の▲3▼については、本件考案における実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたアウタシムの撓みが吸排気弁の最大揚程時に最大に撓み、このような場合であってもアウタシムの下面と凹部の底面との間に中央部ですき間が保たれることを明確化したものであり、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当する。 この訂正事項は、明細書の段落番号【0014】および図面の図1に記載されていたものであるので、当該訂正事項は、願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、または変更するものでもない。 ▲4▼上記訂正事項の▲4▼については、本件考案における実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたすき間がアウタシムの下面と凹部の底面との間に形成されるものであることを明確化したものであり、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当する。 この訂正事項は、明細書の段落番号【0008】および図面の図1に記載されていたものであるので、当該訂正事項は、願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、または変更するものでもない。 ▲5▼上記訂正事項の▲5▼については、請求項1にかかわる訂正事項の▲1▼と考案の詳細な説明の記載との整合性を図って動弁機構を「OHC方式」に限定したものであり、明瞭でない記載の釈明に相当し、願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、または変更するものでもない。 ▲6▼上記訂正事項の▲6▼,▲10▼については、請求項1にかかわる訂正事項の▲2▼と考案の詳細な説明の記載との整合性を図ってアウタシムが隙間調整のために交換されるものであり、駆動カムによって弾性変形するものであることをそれぞれ明確化したものであり、明瞭でない記載の釈明に相当し、願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、または変更するものでもない。 ▲7▼訂正事項の▲7▼,▲9▼,▲11▼については、請求項1にかかわる訂正事項の▲3▼と考案の詳細な説明の記載との整合性を図ってアウタシムの撓みが吸排気弁の最大場程時に最大に撓み、このような場合であってもアウタシムの下面と凹部の底面との間に中央部ですき間が保たれることをそれぞれ明確化したものであり、明瞭でない記載の釈明に相当し、願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、または変更するものでもない。 ▲8▼訂正事項の▲8▼,▲12▼については、請求項1にかかわる訂正事項の▲4▼と考案の詳細な説明の記載との整合性を図ってすき間がアウタシムの下面と凹部の底面との間に形成されるものであることをそれぞれ明確化したものであり、明瞭でない記載の釈明に相当し、願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、または変更するものでもない。 (3)独立実用新案登録要件の判断 (訂正明細書の請求項1に係る考案) 訂正明細書の請求項1に係る考案は、訂正明細書の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。 「OHC方式の吸排気弁の動弁機構に組込まれ、駆動カムとの間に設けられるバルブリフタにおいて、 その冠面に周囲部から中央部に向けて深さが漸増する凹部を設け、該凹部に交換可能に嵌め合わされる弾性変形可能な円板状をなすアウタシムの下面周縁部を前記凹部の周囲部に支持させた状態で前記アウタシムの上面に前記駆動カムを接触させるようになし、前記アウタシムが最大に撓む前記吸排気弁の最大揚程時において、前記アウタシムの下面と前記凹部の底面との間に前記中央部ですき間が保たれるようにしたことを特徴とするバルブリフタ。」 (引用各刊行物及び甲各号証) これに対して、当審が通知した取消理由で引用した刊行物1(米国特許第3,704,696号明細書)、刊行物2(特開昭55-29090号公報)及び刊行物3(特開昭59-218315号公報)には、それぞれ下記の考案が記載されていると認める。 刊行物1 直動型オーバーヘッドカムシャフトバルブ装置、カム、燃焼室、カムシャフト、ボディ部材、流体保持室、圧力室、プランジャ、逆止め弁等からなるバルブリフタ。 図1は、本発明により構成され、オーバーヘッドカムエンジンのバルブを駆動させるために、直動型オーバーヘッドカムシャフトバルブ装置を用いた油圧式タペットを示す図である。図2は、図1の2-2線断面図であり、油圧式タペットの内部構造を示している。図3は、図2と同様の図であり、膨張した状態の圧力室を示している。 符号の説明 10タペット 12直動型オーバーヘッドカムシャフトバノレブ装置 14エンジン 16カム 20バルブ 22燃焼室 24カムシャフト 26上面 28基部 36前縁 38作動部 40後緑 42ボディ部材 44バルブスプリング 46中央室 48プランジャ 50スナップリング 54内側面 56環状面 58肩部 60流体保持室 64圧力室 66流路 68逆止め弁 70バルブ部材 72リテーナ 74逆止め弁用ばね 76肩部 78環状溝 80バルブシート 82孔 84開口部 86プランジャばね 88開口部 90表面 92通路 刊行物2 「タペット底体を弾性構造とする」(第2頁右上欄2行目?3行目)、「タペットを高弾性材料製とし、少くとも駆動カムがタペット底体上において走行する領域においてタペット底体と伝動面との間に、タペット底体の撓みを許容する中空室を形成する」(第2頁左上欄17行目?同頁右上欄1行目)、「平板状タペットは、重い軸1を有し、この軸1には、高弾性材料製のタペット底体2がその外周縁部のところで溶接されている。図持しないカムが当接する平板状タペット底体2の中央部と軸1との間において、この軸1の下端面に、中空室3を形成する欠球状の切欠が形成されている。」(第2頁右下欄7行目?13行目)、「タペット底体の固有周波数はタペット底体がカムによる非常に短いピーク圧力の作用の下に約1μm撓むように定める。」(第2頁右上欄10行目?14行目)及び「第1?3図の実施例ではタペット底体2、2a、2bの厚さは、中空室3の幅に従って1?4mmとし、第4図の実とする。施例によるタペット底体2cの厚さは約19mm」(第3頁右上欄10行目?14行目) 刊行物3 「本発明は、往復動機関.特に往復動内燃機関の弁駆動装置のための平形タペットであって、軸と、駆動カムに向けられたカム走行面を有する、弾性度の高い材料から成るタペット底部分と、主として凹球面状に構成された、別の駆動部材と協働する伝達面とを有しており、タペット底部分と伝達面との間に、タペット底部分の弾性運動を許す中空室が設けられている形式のものに関する。」(第2頁左上欄8行目?16行目)、「カム走行面の摩滅をタペット底部分が常に確実に弾性的にたわむことによって減少させ、しかもタペットの軸方向に僅かな誤差がある場合、つまりタペットの軸線がカム軸の軸線に対する垂線からずれている場合に前記形式のタペットにおいて生じる上述したような欠点を回避することにある。」(第2頁左下欄1行目?7行目)及び「タペットの軸に中空室を成して支持されるタペット底部分の直径と厚さが、駆動カムによって負荷される時間中、この駆動カムから最も高い力が及ぼされる状態でタペツト底部分の弾性的なたわみ量がタペツト底部分のカム走行面の膨出度の値と完全に一致するように設計されている。」(第2頁右下欄14行目?20行目) また、異議申立人の提出した甲第2号証(イタリー国Forum lnt Nouv Techrol Automob(「フォーラム インターナショナル サールヌーヴェテクノロジーズ オートモビールズ」)1985Vol.2 P.335?355)及び甲第3号証(米国特許第4,662,324号明細書)には、それぞれ下記の考案が記載されていると認める。 甲第2号証 油圧式バルブタペット等を有するオーバーヘッドカムシャフトエンジン。図1は、オーバーヘッドカムシャフトエンジンの断面図である。図2は、オーバーヘッドカムシャフトエンジンにおけるSKF社の燃焼室用バルブタペットの写真である。図3は、バルブタペットの摩耗をベンチテストする際の写真である。図4は、「ルーブチェック」の行程を示す図である。図5は、カムとタペットの特性と作動パラメータを測定する測定装置の写真である。図6は、カムの種々の領域での油膜の厚さを示す図である。図7は、従来のワッシャと改良したワッシャの摩耗率を比較したグラフである。図8は、従来の材料と改良した材料の摩耗率を比較したグラフである。図9は、ホスフェートで被覆されたワッシャの摩耗段階と、カムシャフトの回転角度と油膜の厚さとの関係を示す図である。図10は、SKF社の油圧式バルブタペットが内燃機関に組み込まれた図である。図11は、油圧式バルブタペットの断面図である。図12は、動作中のタペットの動作特性を示すグラフである。図13は、SKF社の油圧式バルブタペットの拡大写真である。 甲第3号証 カム、カムシャフト、カップ状ボディ、調整パッド、第2のカップ状ボディ、環状溝、供給ダクト、膨張室、円錐状シート、円錐状ヘッド、シャフト等からなるタペット。図1は、本発明によるバルブを備える油圧式タペットの軸方向の部分断面図である。図2は、図1と同様な、軸方向の部分断面図であり、上昇した位置にある、本発明によるバルブを示している。符号の説明、1ヘッド 2円筒状シート 3タペット 4弁軸 5カム 6カムシャフト 7カップ状ボディ 8壁部 9調整パッド 10円筒状側壁 11第2のカップ状ボディ 12壁部 13円筒状側壁 14環状溝 15環状溝 16供給ダクト 17膨張室 18径方向孔 19円錐状シート 20貫通孔 21円錐状ヘッド 22シャフト (対比・判断) 訂正明細書の請求項1に係る考案と上記刊行物1乃至3に記載の考案とを対比すると、刊行物1乃至3に記載の考案は、訂正明細書の請求項1に係る考案を特定する事項である、「凹部に交換可能に嵌め合わされる弾性変形可能な円板状をなすアウタシムの下面周縁部を前記凹部の周囲部に支持させた状態で前記アウタシムの上面に駆動カムを接触させるようになし、前記アウタシムが最大に撓む吸排気弁の最大揚程時において、前記アウタシムの下面と前記凹部の底面との間に中央部ですき間が保たれるようにした」という事項を備えていない。 そして、訂正明細書の請求項1に係る考案は、上記事項を備えることにより、「アウタシムの下面周縁部と凹部の周囲部とが常に安定して接触した状態となり、従来のような衝撃音の発生を抑制することができる上、バルブリフタに無用な力が作用するのを緩和することができる」という明細書記載の顕著な効果を奏するものである。 したがって、訂正明細書の請求項1に係る考案は、刊行物1に記載された考案と同一であるとはいえず、そして、刊行物1乃至3に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたとすることもできない。 また、訂正明細書の請求項1に係る考案と甲第2乃至3号証に記載の考案とを対比すると、甲第2乃至3号証記載の考案もまた、訂正明細書の請求項1に係る考案を特定する前記事項を備えていない。 したがって、訂正明細書の請求項1に係る考案は、甲第2または3号証に記載された考案と同一であるとはいえず、そして、甲第2乃至3号証及び刊行物1乃至3に記載された考案を組み合わせることにより、当業者がきわめて容易に考案することができたとすることもできない。 (4)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正請求は、平成6年法律第116号附則第9条第2項において準用する特許法第120条の4第2項及び第3項でさらに準用する同法第126条第2項乃至第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 [3]実用新案登録異議の申立てについての判断 (1)申立ての理由の概要 申立人フジオーゼツクス株式会社は、申立ての理由として大略以下のように主張している。 A:本件請求項1に係る考案は、甲第1号証(米国特許第3,704,696号明細書)または、甲第2号証(イタリー国Forum lnt Nouv Techrol Automob(「フォーラム インターナショナル サールヌーヴェ テクノロジーズ オートモビールズ」)1985Vol.2 P.335?355)または、甲第3号証(米国特許第4,662,324号明細書)にそれぞれ記載された考案と実質的に同一であり、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第1項の規定に違反してされたものであるから、取り消すべきである。 または、甲第1乃至3号証及び甲第4号証(特開昭55-29090号公報)または甲第5号証(特開昭59-218315号公報)に記載のものを組み合わせることにより、当業者がきわめて容易に考案することができたものであり、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消すべきである。 B:本件請求項1に係る考案は、「周囲部から中央部に向けて深さが漸増する凹部」との文章における「漸増する」の意味が常に漸増することを指称するのか、部分的に漸増する態様をも包含するのか不明瞭であり、当業者が容易に実施できる程度に記載されているとはいえない。したがって、本件実用新案登録は、実用新案法第5条第4項の規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、取り消すべきである。 (2)判断 Aについて 甲第1号証は、取消理由通知で示した刊行物1であるから、本件請求項1に係る考案は、前記[2](3)で示した理由により、甲第1号証に記載された考案と同一であるとはいえない。 また、甲第2号証または甲第3号証は、上記と同様に、前記[2](3)で示した理由により、本件請求項1に係る考案と、同一であるとはいえない。 したがって、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第1項の規定に違反してされたものであるとはいえない。 次に、甲第1号証、甲第4号証及び甲第5号証は、取消理由通知で示した刊行物1乃至3であるから、本件請求項1に係る考案は、前記[2](3)で示した理由により、それらからきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。 そして、甲第2乃至3号証と刊行物1乃至3に記載された考案とを組み合わせることにより、本件請求項1に係る考案とすることも、前記[2](3)で示した理由により、それらからきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。 したがって、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。 Bについて 本件請求項1に係る考案は、バルブリフタの冠面に周囲部から中央部に向けて深さが漸増する凹部を設けるものである。すなわち、バルブリフタの頂部にあたる冠面に設ける凹部の形状が、冠面周囲部から中央部の最低部まで、略すり鉢状に深さをだんだん増やしていくものであることは明らかである。つまり、凹部は、周囲部から常に漸増するものであり、途中から部分的に漸増することはあり得ない。 以上の理由により、本件実用新案登録は、実用新案法第5条第4項に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえない。 また、他に本件実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【考案の名称】 バルブリフタ (57)【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】 OHC方式の吸排気弁の動弁機構に組込まれ、駆動カムとの間に設けられるバルブリフタにおいて、 その冠面に周囲部から中央部に向けて深さが漸増する凹部を設け、該凹部に交換可能に嵌め合わされる弾性変形可能な円板状をなすアウタシムの下面周縁部を前記凹部の周囲部に支持させた状態で前記アウタシムの上面に前記駆動カムを接触させるようになし、前記アウタシムが最大に撓む前記吸排気弁の最大揚程時において、前記アウタシムの下面と前記凹部の底面との間に前記中央部ですき間が保たれるようにしたことを特徴とするバルブリフタ。 【考案の詳細な説明】 【産業上の利用分野】 本考案は、バルブリフタに関し、詳しくは、エンジンの吸排気弁において、その直上からカムによって弁棒が直接駆動されるオーバヘッドカム(OHC)方式に用いられるバルブリフタに関する。 【従来の技術】 従来、この種のオーバヘッドカム方式による弁機構は追従性が良く、また、固有振動数が高くて高速用エンジンに適している等、性能的に優れた利点を有する反面バルブ間隙の調整が難しいという点があり、近年ではかかる問題に対して種々な対策および提案がなされている。 例えば、実開昭63-98408号公報に開示されているものは、OHC方式の弁機構を有する内燃機関のバルブリフタにおいて、これを軽合金製となしてその頂部にあたる冠面に凹部を形成し、この凹部に形状を合せた円板状のシムを遊嵌の形で嵌め合わすようにしている。すなわち、このシムの厚さを調整することにより弁の開閉時に不都合が生じないようにしたものである。 【考案が解決しようとする課題】 しかしながら、このような従来例にあっては、上記の凹部形成面とシムの嵌め合い面との加工精度に不一致や片寄り等の不具合が生じ易く、かかる場合には以下に説明するような不都合が生じる。 すなわち、バルブリフタ冠面に形成される凹部の加工精度についてその平坦仕上げが十分でなかったり傾きや中高の傾向があると、これに嵌合されるシムが凹部の底面から浮上がったり傾いたりして安定した嵌め合い状態に保たれない。そのために、カムの回転に伴ってこれと摺接するシムの摺接位置の移動に従って凹部内でシムに揺動、つまりばたつきが生じ、騒音の発生を引き起こす要因となる。 本考案の目的は、かかる従来の問題に着目し、その解決を図るべく、シムの安定したすわりが得られるようにしたOHC方式の弁機構に好適なバルブリフタを提供することにある。 【課題を解決するための手段】 かかる目的を達成し得る本考案のバルブリフタは、OHC方式の吸排気弁の動弁機構に組込まれ、駆動カムとの間に設けられるバルブリフタにおいて、その冠面に周囲部から中央部に向けて深さが漸増する凹部を設け、該凹部に交換可能に嵌め合わされる弾性変形可能な円板状をなすアウタシムの下面周縁部を前記凹部の周囲部に支持させた状態で前記アウタシムの上面に前記駆動カムを接触させるようになし、前記アウタシムが最大に擁む前記吸排気弁の最大揚程時において、前記アウタシムの下面と前記凹部の底面との間に前記中央部ですき間が保たれるようにしたことを特徴とするものである。 【作用】 本考案によると、駆動カムの回転に伴って駆動カムとアウタシムとの接触位置が変化すると共にアウタシムが凹部の底面との対向方向に弾性変形するが、アウタシムが最大に撓む吸排気弁の最大揚程時であっても、アウタシムの下面は凹部の底面との間に常に隙間が保たれており、アウタシムの下面周縁部とバルブリフタの冠面に設けた凹部の周囲部とが常に安定して接触した状態となる。このため、駆動カムによる押圧力は、アウタシムの下面周縁部から凹部の周囲部を介してバルブリフタに伝えられる。 【実施例】 以下に、図面を参照しつつ本考案の実施例を具体的に説明する。 図1は本考案の一実施例を示し、その(A)は弁機構での開弁時の状態を、また(B)は閉弁時の状態を示す。図1において、1は吸排気バルブ、1Aはそのステム、2はステム1Aのエンドにインナシム3を介して保持されるバルブリフタ、4はバルブリフタ2の冠面凹部2Aに嵌め合わされたシム(以下ではインナシム3と区別するためにアウタシムという)である。なお、バルブステム1Aはシリンダヘッド5に設けられたバルブガイド6に沿って摺動自在に保持されており、ステム1Aの頂部近傍にはスプリングリテーナ7が固定されていて、下部スプリングシート8とりテーナ7との間に保持されるバルブスプリング9の弾発力によってバルブリフタ2およびアウタシム4がカム10のカム面に向けて偏椅されている。 また、本実施例ではバルブリフタ2本体をアルミニウム合金で形成すると共に、その表面にニッケル燐合金によるメッキコーティング(カニゼンー登録商標名)を施行して特に耐蝕性、耐摩耗性、等の向上を図るようにした。さらにまた、バルブリフタ2の冠面凹部2Aは図1の(A)に示されるようにその中心を最底部とする球面状の凹面に形成されており、この凹面とアウタシム4の底面との間に保たれる凹形空間11を利用してアウタシムの不安定な挙動を防止できる。なおここではアウタシム4には弾力性、耐摩耗性を持たせるために炭素鋼の惨炭処理を施したもの(JIS規格SCM415H)を使用した。 以下に図1の(A)および(B)に従って、上記実施例による弁機構の動作について説明する。 本例において、いまバルブ1が(A)に示すようなバルブシート12に接する閉成状態にあるときはカム10の円形部10Aがバルブリフタ2の冠面凹部2Aに嵌め込まれたアウタシム4の上面に軽く接触を保つように調整してある。そこで、この状態ではアウタシム4の周縁部が冠面凹部2Aの周隅部によって保持されることにより凹形空間11は図示のように残されたままに維持されることになり、仮にバルブシート12の摩耗その他の原因でステム1Aを介してアウタシム4にバルブ1を押し開けようとする力が作用しても空間11が緩衝し、アウタシム4が軽く撓むだけある。 ついで、(A)の状態からカム10の回転によりその凸面部10Bがアウタシム4を介してバルブリフタ2を押圧し、ばね9の弾発力に抗してバルブ1の開弁動作を行う(B)の状態に移行すると、アウタシム4がこのように中凹みの形で撓んでいく。そして、この場合(B)に示すような弁開度の最大の状態でもなお、アウタシム4の下面中央部と冠面凹部2Aの最底部との間に幾分の空間11が保留されるように設定しておくことにより、アウタシムに有害な挙動を行わせないように規制することができる。 【考案の効果】 本考案のバルブリフタによると、バルブリフタの冠面に周囲部から中央部に向けて深さが漸増する凹部を設け、該凹部に交換可能に嵌め合わされる弾性変形可能な円板状をなすアウタシムの下面周縁部を凹部の周囲部に支持させた状態でアウタシムの上面に駆動カムを接触させ、アウタシムが最大に撓む吸排気弁の最大揚程時であっても、アウタシムの下面と凹部の底面との間に常にすき間が保たれるようにしたので、アウタシムの下面周縁部と凹部の周囲部とが常に安定して接触した状態となり、従来のような衝撃音の発生を抑制することができる上、バルブリフタに無用な力が作用するのを緩和することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本考案バルブリフタの構成とその動作を閉弁状態(A)および開弁状態(B)で示す説明図である。 【符号の説明】 1 バルブ 1A (バルブ)ステム 2 バルブリフタ 2A 冠面凹部 3 インナシム 4 アウタシム 9 バルブスプリング 10 カム 10A 円形部 10B 凸面部 11 (凹形)空間 12 バルブシート |
訂正の要旨 |
実用新案登録第2578369号考案の明細書を、下記▲1▼?▲12▼のとおり訂正する。 ▲1▼実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として下記の通りに訂正する。 実用新案登録第2578369号公報第1ページ第1欄2行目(平成10年3月10日付け提出の手続補正書による手続補正後の【請求項1】の段落における1行目)に記載した「吸排気弁」を「OHC方式の吸排気弁」と訂正する。 ▲2▼実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として下記の通りに訂正する。 実用新案登録第2578369号公報第1ページ第1欄5行目(平成10年3月10日付け提出の手続補正書による手続補正後の【請求項1】の段落における3行目から4行目にかけて)に記載した「嵌め合せた」を「交換可能に嵌め合わされる弾性変形可能な」と訂正する。 ▲3▼実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として下記の通りに訂正する。 実用新案登録第2578369号公報第1ページ第1欄8行目から9行目にかけて(平成10年3月10日付け提出の手続補正書による手続補正後の【請求項1】の段落における5行目から6行目にかけて)記載した「前記吸排気弁の最大揚程時における前記シムの擁み時に該」を「前記アウタシムが最大に擁む前記吸排気弁の最大揚程時において、前記」と訂正する。 ▲4▼実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として下記の通りに訂正する。 実用新案登録第2578369号公報第1ページ第1欄9行目(平成10年3月10日付け提出の手続補正書による手続補正後の【請求項1】の段落における6行目から7行目にかけて)に記載した「前記凹部との」を「前記凹部の底面との」と訂正する。 ▲5▼考案の詳細な説明の欄を明瞭でない記載の釈明を目的として下記の通りに訂正する。 実用新案登録第2578369号公報第2ページ第3欄23行目(平成10年3月10日付け提出の手続補正書による手続補正後の段落番号【0007】の【課題を解決するための手段】の段落における1行目)に記載した「吸排気弁」を「OHC方式の吸排気弁」と訂正する。 ▲6▼考案の詳細な説明の欄を明瞭でない記載の釈明を目的として下記の通りに訂正する。 実用新案登録第2578369号公報第2ページ第3欄26行目(平成10年3月10日付け提出の手続補正書による手続補正後の段落番号【0007】の【課題を解決するための手段】の段落における3行目)に記載した「嵌め合せた」を「交換可能に嵌め合わされる弾性変形可能な」と訂正する。 ▲7▼考案の詳細な説明の欄を明瞭でない記載の釈明を目的として下記の通りに訂正する。 実用新案登録第2578369号公報第2ページ第3欄29行目から30行目にかけて(平成10年3月10日付け提出の手続補正書による手続補正後の段落番号【0007】の【課題を解決するための手段】の段落における5行目から6行目にかけて)記載した「前記吸排気弁の最大揚程時における前記シムの撓み時に該」を「前記アウタシムが最大に撓む前記吸排気弁の最大揚程時において、前記」と訂正する。 ▲8▼考案の詳細な説明の欄を明瞭でない記載の釈明を目的として下記の通りに訂正する。 実用新案登録第2578369号公報第2ページ第3欄30行目(平成10年3月10日付け提出の手続補正書による手続補正後の段落番号【0007】の【課題を解決するための手段】の段落における6行目)に記載した「前記凹部との」を「前記凹部の底面との」と訂正する。 ▲9▼考案の詳細な説明の欄を明瞭でない記載の釈明を目的として下記の通りに訂正する。 実用新案登録第2578369号公報第2ページ第3欄36行目(平成10年3月10日付け提出の手続補正書による手続補正後の段落番号【0008】の【作用】の段落における2行目)に記載した「弾性変形するが、」を「弾性変形するが、アウタシムが最大に僥む吸排気弁の最大揚程時であっても、」と訂正する。 ▲10▼考案の詳細な説明の欄を明瞭でない記載の釈明を目的として下記の通りに訂正する。 実用新案登録第2578369号公報第2ページ第4欄48行目(平成10年3月10日付け提出の手続補正書による手続補正後の段落番号【0015】の【考案の効果】の段落における2行目)に記載した「嵌め合せた」を「交換可能に嵌め合わされる弾性変形可能な」と訂正する。 ▲11▼考案の詳細な説明の欄を明瞭でない記載の釈明を目的として下記の通りに訂正する。 実用新案登録第2578369号公報第2ページ第4欄50行目(平成10年3月10日付け提出の手続補正書による手続補正後の段落番号【0015】の【考案の効果】の段落における3行目から4行目にかけて)に記載した「接触させ、」を「接触させ、アウタシムが最大に撓む吸排気弁の最大揚程時であっても、」と訂正する。 ▲12▼考案の詳細な説明の欄を明瞭でない記載の釈明を目的として下記の通りに訂正する。 実用新案登録第2578369号公報第3ページ第5欄1行目(平成10年3月10日付け提出の手続補正書による手続補正後の段落番号【0015】の【考案の効果】の段落における4行目)に記載した「凹部との」を「凹部の底面との」と訂正する。 |
異議決定日 | 1999-10-26 |
出願番号 | 実願平4-3734 |
審決分類 |
U
1
651・
113-
YA
(F01L)
U 1 651・ 121- YA (F01L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 飯塚 直樹 |
特許庁審判長 |
西野 健二 |
特許庁審判官 |
林 晴男 清田 栄章 |
登録日 | 1998-05-22 |
登録番号 | 実用登録第2578369号(U2578369) |
権利者 |
株式会社ユニシアジェックス 神奈川県厚木市恩名1370番地 |
考案の名称 | バルブリフタ |
代理人 | 阿部 和夫 |
代理人 | 中馬 典嗣 |
代理人 | 倉持 裕 |
代理人 | 阿部 和夫 |
代理人 | 竹沢 荘一 |
代理人 | 谷 義一 |
代理人 | 谷 義一 |