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審決分類 |
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 訂正を認めない。無効とする(申立て一部成立) B24B 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認めない。無効とする(申立て一部成立) B24B |
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管理番号 | 1014990 |
審判番号 | 審判1998-35339 |
総通号数 | 11 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2000-11-24 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1998-07-23 |
確定日 | 2000-04-26 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2147993号実用新案「研磨用具」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第2147993号実用新案の明細書の請求項2に記載された考案についての登録を無効とする。 登録第2147993号実用新案の明細書の請求項1に記載された考案についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件実用新案登録第2147993号は、昭和63年5月12日に実用新案登録出願(実願昭63-62581号)され、平成7年11月15日に出願公告され、平成9年3月12日にその設定の登録がなされた。 その後、平成10年7月23日に、請求項1及び2に係る実用新案登録について、実用新案法第3条第1項及び同法第3条2項に違反して実用新案登録されたものであることを理由として無効審判が請求され、平成10年10月31日に明細書の訂正の請求がなされた。 当審において、この訂正の請求について、拒絶の理由を通知し、その指定期間内である平成11年9月22日に手続補正書が提出された。 II.当事者の主張 1.請求人の主張及び証拠方法 請求人は、本件「登録第2147993号実用新案登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めている。 そして、その理由として、次の2つの理由を挙げ、証拠方法として下記の甲第1乃至5号証を提出している。 (1) 無効理由の概要 無効理由1 本件請求項1に係る考案は、甲第1号証の1もしくは同号証の2に記載された考案であるか、又は、甲第1乃至4号証に記載された考案に基づき当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであって、本件請求項1に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第1項又は第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第37条第1項第1号により無効とすべきである。 無効理由2 本件請求項2に係る考案は、甲第2号証もしくは甲第5号証に記載された考案であるか、又は、甲第2号証及び甲第5号証に記載された考案に基づき当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであって、本件請求項2に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第1項又は第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第37条第1項第1号により無効とすべきである。 (2) 証拠方法 甲第1号証の1: 「板金塗装カタログ」第276頁、第277頁、昭和55年5月20日初版、ボデーショップレポート編集部編、株式会社ビーエスアール発行 参考資料として、「甲第1号証の1のスケッチ断面図」平成8年7月29日、有限会社大宮バブ作成 甲第1号証の2: 「板金塗装カタログNo.5」第329頁?第331頁、第333頁、昭和61年6月25日発行、ボデーショップレポート編集部編、株式会社ビーエスアール発行 甲第2号証: 実願昭61- 63340号(実開昭62-174864号)のマイクロフィルム 甲第3号証: 実願昭54- 52294号(実開昭55-151462号)のマイクロフィルム 甲第4号証: 実願昭60-177169号(実開昭62- 85358号)のマイクロフィルム 甲第5号証: 特開昭63-43606号公報 なお、平成11年7月5日の口頭審理により、審判請求書に添付された甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第4号証、甲第5号証及び甲第7号証を、それぞれ甲第1号証の1の参考資料、甲第1号証の2、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証と、呼称を変更している。 2.被請求人の主張 これに対し、被請求人は、本件審判の請求は成り立たない旨の審決を求めており、その理由の概要は、本件請求項1乃至2に係る考案は、実用新案法第3条第1項及び第2項のいずれの考案にも該当するものではないというにある。 III. 訂正請求書の補正の適否 1.補正の概要 被請求人は、平成10年10月31日付け訂正請求書に添付した訂正明細書を、平成11年9月22日付け手続補正書に添付した訂正明細書のとおり補正することを求めている。 上記手続補正書に添付した訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の記載は、次のとおりである。 「【請求項1】 モーター回転の研磨機の駆動軸に装着された、研磨紙を取付けられる面ファスナーを設けて平面状に形成させた研磨材取付面と研磨体取付面を備えた小径の主のパッドと、大径の副のパッドに研磨材を付けて成る研磨体とを、面ファスナーを介し結合できるようにしたその結合部に、回転の芯振れを防止するため前記主のパッド側に凹部を穿設する一方、前記副のパッド側に凸部を設け、該凸部が前記主のパッドの凹部に嵌合するようにしたことを特徴とする研磨用具。 【請求項2】 モーター回転の研磨機の駆動軸に装着された、研磨紙を取付けられる面ファスナーを設けて平面状に形成させた研磨材取付面と研磨体取付面を備えた小径の主のパッドと、大径の副のパッドに研磨材を付けて成る研磨体とを、面ファスナーを介し前記主のパッドと結合できるようにした前記研磨体の結合部に、回転の芯振れを防止するため前記主のパッドの径が嵌入する凹形の貼着面を設けたことを特徴とする研磨用具。」 2.訂正請求書の要旨の変更の有無 上記手続補正書に添付した訂正明細書と、上記訂正請求書に添付した訂正明細書とを対比すると、少なくとも、上記訂正請求書に添付した訂正明細書の請求項1乃至2における 「研磨紙を取付けられる面ファスナーのA面が設けられ、円形の外径と同一径とし平面状に形成させた研磨材もしくは研磨体取付け面に、これと同一径の円形の研磨紙を取付けたときにその研磨紙の周辺部で平面の立ち上がり際まで平面研磨ができるようにした小径の主のパッド」を、 上記手続補正書に添付した訂正明細書の請求項1乃至2においては、 「研磨紙を取付けられる面ファスナーを設けて平面状に形成させた研磨材取付面と研磨体取付面を備えた小径の主のパッド」 と補正している。 そして、この補正は、請求項1乃至2における、下記の補正事項を含んでいる。 補正事項1: 主のパッドとして、「面ファスナーのA面が設けられ」ている点を、削除すること。 補正事項2: 主のパッドの、「研磨材もしくは研磨体取付け面」を、「研磨材取付面と研磨体取付面」と補正すること。 上記補正事項1は、請求項に記載された構成要件を削除しているから、この補正事項1により、実用新案登録請求の範囲が、上記訂正請求書に添付した訂正明細書を基準明細書等として、実質的に拡張又は変更されるものとなり、これにより、上記手続補正書による訂正請求書の補正は、当該訂正請求書の要旨を変更するものとなる。 上記補正事項2について検討すると、訂正請求書に添付した訂正明細書においては、取付け面として「研磨材もしくは研磨体取付け面」と記載し、「もしくは」の語句、すなわち「あるいは」及び「または」と同じ意味を表す語句を使用しており、また、願書に添付した図面(以下「本件実用新案登録図面」という。)においても、主のパッドの面ファスナーは、研磨材もしくは研磨体を取付けるもので、研磨材と研磨体の両方を取付けることはできない。 そして、上記補正事項2の、主のパッドの「研磨材取付面と研磨体取付面」の点、すなわち、研磨材取付面と研磨体取付面の両方を備えることを特定する構成は、訂正請求書に添付した訂正明細書又は本件実用新案登録図面の記載から、直接かつ一義的に導き出されるものではないから、上記補正事項2は、新規事項を含むものであり、これにより、上記手続補正書による訂正請求書の補正は、当該訂正請求書の要旨を変更するものとなる。 なお、被請求人は、上記手続補正書において、「この訂正は、主のパットの取付け面に『研磨紙を取付けられる面ファスナーを設けて』として、研磨紙が取付けられることを明確にしたものであり、更に、該取付け面は、研磨材を取付ける『研磨材取付面』と研磨体を取付ける『研磨体取付面』の両方の機能を備えていることを明確にしたものであります。」と主張している。しかしながら、上記手続補正書に添付した訂正明細書の請求項1及び2の「研磨紙を取付けられる面ファスナーを設けて平面状に形成させた研磨材取付面と研磨体取付面を備えた小径の主のパッド」との記載からは、「研磨材取付面」と「研磨体取付面」の、両方の機能を備えたと解することはできず、むしろ、両方の取付面を備えていると解されるから、上記被請求人の主張は採用できない。 したがって、当該訂正請求書の補正は、その要旨を変更するものであるから、平成5年法律第26号附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされる旧実用新案法第41条において準用する特許法第131条第2項の規定に適合しない。 よって、当該訂正請求書の補正は認められない。 IV.訂正の適否 1.訂正の内容 被請求人は、実用新案登録請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明及び誤記の訂正を目的として、本件の願書に添付した明細書(以下「本件実用新案登録明細書」という。)を平成10年10月31日付けの訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを請求している。 (1) 訂正事項1 本件実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の記載 「【請求項1】モーター回転の駆動軸に装着され、研磨材もしくは研磨体取付け面を平面状に形成させた小径の主のパッドと、大径の副のパッドに研磨材を取付けた研磨体とを、面ファスナーを介し結合できるようにしたその結合部に、回転の芯振れを防止するため前記主のパッド側に凹部を穿設する一方、前記副のパッド側に凸部を設け、該凸部が前記主のパッドの凹部に嵌合するようにしたことを特徴とする研磨用具。 【請求項2】モーター回転の駆動軸に装着され、研磨材もしくは研磨体取付け面を平面状に形成させた小径の主のパッドと、大径の副のパッドに研磨材を取付けた研磨体とを、面ファスナーを介し前記主のパッドと結合できるようにした前記研磨体の結合部に、回転の芯振れを防止するため前記主のパッドの径が嵌入する凹形の貼着面を設けたことを特徴とする研磨用具。」 を、上記訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の記載 「【請求項1】 研磨機の駆動軸に装着された、研磨紙を取付けられる面ファスナーのA面が設けられ、円形の外径と同一径とし平面状に形成させた研磨材もしくは研磨体取付け面に、これと同一径の円形の研磨紙を取付けたときにその研磨紙の周辺部で平面の立ち上がり際まで平面研磨ができるようにした小径の主のパッドと、大径の副のパッドに研磨材を取付けた研磨体とを、面ファスナーを介し結合できるようにしたその結合部に、回転の芯振れを防止するため前記主のパッド側に凹部を穿設する一方、前記副のパッド側に凸部を設け、該凸部が前記主のパッドの凹部に嵌合するようにしたことを特徴とする研磨用具。 【請求項2】 研磨機の駆動軸に装着された、研磨紙を取付けられる面ファスナーのA面が設けられ、円形の外径と同一径とし平面状に形成させた研磨材もしくは研磨体取付け面に、これと同一径の円形の研磨紙を取付けたときにその研磨紙の周辺部で平面の立ち上がり際まで平面研磨ができるようにした小径の主のパッドと、大径の副のパッドに研磨材を取付けた研磨体とを、面ファスナーを介し前記主のパッドと結合できるようにした前記研磨体の結合部に、回転の芯振れを防止するため前記主のパッドの径が嵌入する凹形の貼着面を設けたことを特徴とする研磨用具。」 と訂正する。 訂正事項1の実質的訂正箇所は、以下のとおりである。 訂正事項1の1: 請求項1及び請求項2の「モーター回転の駆動軸に装着され、」を、「研磨機の駆動軸に装着された、」と訂正する。 訂正事項1の2: 請求項1及び請求項2の「研磨材もしくは研磨体取付け面を平面状に形成させた小径の主のパッドと、」を、「研磨紙を取付けられる面ファスナーのA面が設けられ、円形の外径と同一径とし平面状に形成させた研磨材もしくは研磨体取付け面に、これと同一径の円形の研磨紙を取付けたときにその研磨紙の周辺部で平面の立ち上がり際まで平面研磨ができるようにした小径の主のパッドと、」と訂正する。 (2) 訂正事項2 本件実用新案登録明細書の考案の効果の欄の最後の効果における「研磨材」を、「研磨体」と訂正する。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張変更の有無 そこで、上記の各訂正事項を検討する。 (1) 訂正事項1の1について 訂正事項1の1は、実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2の「モーター回転」の記載を削除することにより、実用新案登録請求の範囲に記載された構成要件の一部を削除するものであるから、実用新案登録請求の範囲の減縮にあたらず、また、明りょうでない記載の釈明又は誤記の訂正を目的とするものでもない。 (2) 訂正事項1の2について 訂正事項1の2は、実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2において、小径の主パッドの構成として、次に掲げる付加事項を付加するものである。 付加事項1: 研磨紙を取付けられる面ファスナーのA面が設けられる点。 付加事項2: 円形の外径と同一径とし、これと同一径の円形の研磨紙を取付けたときにその研磨紙の周辺部で平面の立ち上がり際まで平面研磨ができるようにした点。 上記付加事項1について検討する。 本件実用新案登録明細書の考案の効果の欄には、「パッドを回転させたときには嵌合部が横ずれを防ぎ、ファスナーは毛足の長さ分取り付け面で横方向に撓むためちょうど螺子の如くA面がB面のパイル地に深く食い込み、結合力を増す。」と記載されているものの、この記載により、小径の主パッドに面ファスナーのA面が設けられる点が、直接かつ一義的に導き出されるものではない。 また、パッド側に面ファスナーが設けられた研磨用具において、仮に、パッド側に面ファスナーのA面を設けることが周知であったとしても、パッド側にはA面以外にもB面を設けることも可能であることから、小径の主パッドに面ファスナーのA面が設けられる点が、直接的かつ一義的に導き出されるものではない。 また、他に、小径の主パッドに面ファスナーのA面が設けられる点について、これを示唆する記載は、本件実用新案登録明細書又は本件実用新案登録図面(以下「本件実用新案登録明細書又は図面」という。)にはない。 したがって、付加事項1は、本件実用新案登録明細書又は図面に記載した事項以外の事項である。 次に付加事項2について検討する。 本件実用新案登録明細書には、「次に接着手段9へ、副のパッドと同サイズのディスクペーパ8を貼り重ね・・・(中略)・・・ディスクペーパ8をパッドから剥ぎ取り、切欠部12から周辺を切り離し、主のパッド2と同サイズの内側の小径ペーパ13で研磨をするものである。」(作用の欄)、「本考案のものも従来のパッドとして研磨紙等に兼用できるので」(考案の効果の欄)と記載されており、また、第1図には、切欠部12を有したディスクペーパ8が記載されているものの、これらの記載から、小径の主のパッドと同一径の研磨紙を用いて、研磨紙の周辺部で平面の立ち上がり際まで平面研磨することが、直接かつ一義的に導き出されるものではない。 また、他に、小径の主のパッドと同一径の研磨紙を用いて、研磨紙の周辺部で平面の立ち上がり際まで平面研磨する点について、これを示唆する記載は、本件実用新案登録明細書又は図面にはない。 したがって、付加事項2は、本件実用新案登録明細書又は図面に記載した事項以外の事項である。 よって、上記付加事項1及び2を、実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2に付加するものである、訂正事項1の2は、本件実用新案登録明細書又は図面記載した事項以外の事項を記載したものとなるから、願書に添付された明細書又は図面に記載した事項の範囲内でなされたものではない。 上記のことから、訂正事項2について検討するまでもなく、本件訂正請求は、平成5年法律第26号附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされ、同条第2項の規定により読み替えられる旧実用新案法第40条第2項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。 V.当審の判断 1.本件考案 前記「IV.訂正の適否」に記載したとおり、平成10年10月31日付け訂正請求が認められないことから、本件実用新案登録の請求項1及び2に係る考案(以下「本件考案1」及び「本件考案2」という。)は、本件実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2に記載された前記「IV.1.(1)」に示されるとおりの「研磨用具」と認める。 2.甲各号証の記載内容 (1) 甲第1号証 甲第1号証の1第276頁上から二段目には、「マジックバフ」との記載及びそのマジックバフに該当する写真の掲載、並びに、「マジックパッド(マジックバフ用)」との記載及びそのマジックパッドに該当する写真の掲載があり、また、同頁他の場所及び他の頁にも、バフ及びパッドの記載並びに該当する写真の掲載がある。 甲第1号証の1参考資料には、請求人が平成8年7月29日付けで説明用図面として作成したスケッチ断面図が記載されている。 甲第1号証の2第329頁の上から一段目右端には、「マジックバフ」との記載及びそのマジックバフに該当する写真の掲載が、また、同頁上から二段目左端には、「マジックパッド(マジックバフ用)」との記載及びそのマジックパッドに該当する写真の掲載があり、また、同頁他の場所及び他の頁にも、バフ、パッド、チェビオット及び電動ポリッシャーの記載並びに該当する写真の掲載がある。 ところで、甲第1号証の1又は同号証の2(平成11年7月13日付け提出の原本)の記載からでは、バフ側の凸部の有無及び凸部の形状、並びに、パッド側の凹部の有無及び凹部の形状が、いずれも明瞭ではないから、バフ側の凸部とパッド側の凹部とが、嵌合するかどうか、及び、回転の芯振れを防止するかどうかは、明らかではない。また、甲第1号証の1の参考資料には、請求人が、本件実用新案登録出願後である平成8年7月29日付けで、説明用図面として作成したスケッチ断面図が記載されているものの、このスケッチ断面図が、甲第1号証の1に記載された考案の断面と一致すると認めるに足る証拠は提出されていない。 上記の甲第1号証の1又は同号証の2において、マジックパッドがモーター回転の駆動軸に装着されること及びマジックパッドとマジックバフとが面ファスナーを介して結合されることは、いずれも技術常識からみて明らかであり、また、バフは研磨用具であるから、結局、甲第1号証の1又は同号証の2には、以下の考案が記載されていると認める。 モーター回転の駆動軸に装着され、バフ取付け面を形成させたパッドと、研磨材を取付けたバフとを、面ファスナーを介し結合できるようにした研磨用具。 (2) 甲第2号証 第7頁第1行?第9頁第2行には、 「 実施例 本考案の実施例は前記の通りの第1図及び第2、第3図のほかに第4、第5図で示す。第4図において、円形の取付板(23)の一方の面に毛体(24)を設けている。また、他の面には前記第1図の基板(11)がはまる案内板(25)の環を設けて、さらに、この案内板(25)からの中央部にベルベット式ファスナー(26)を設けている。 次に、第5図はこの使用例であり、基板(11)は取付板(23)の案内板(25)にはまるように互いにファスナー部で組合うわさっている。そして、取付軸(27)に回転動力を伝えて使用するものである。 また、この実施例のように取付板(23)と毛体(24)の間にはスポンジまたはゴム等の緩衝体(28)を設けてももよい。 次に、第6、第7図は本考案のさらに他の実施例であって、円盤状の基板(11)の一方の面にベルベット式ファスナー(12)を設けている。そして、この基板がはまる外周の案内板(29)の環を設けた蓋体(30)と、この蓋体(30)の中心部に内周の案内板(31)を設けて、その中心部は中空孔(32)となしている。また、この蓋体(30)には、その外周の案内板(29)を設けた方向の面にベルベット式ファスナー(33)を設けている。さらに、この中空孔(32)にはまる円柱形状のブラシ台(34)と、このブラシ台(34)の片面には毛体(35)を設けるとともに、他の面にはベルベット式ファスナー(36)を設けている。そして、これらはファスナー部で組合わさって使用されるものである。 以上の実施例の特徴は、基板(11)は各々の実施例のように共通して用いることができる。また、各実施例での組合わし方での取付け、取り外しはベルベット式ファスナーで行なえるので、非常に簡単となり、取付けのためのボルト類及びこのれの工具、あるいは、チャック及びチャック回し等を要しない。また、基板(11)への取付けはベルベット式ファスナー(12)で組合わさているが、基板(11)はそれぞれ案内板にはまっており、また、第7図のブラシ台(34)も蓋体(30)の内周の案内板(31)にはまっているので回転ぶれを起こすことはないし、また、使用中はファスナー部に押し圧力が加わっているので離脱することはない。」と記載されている。 また、第3図には、使用状態の断面図が、第5乃至7図には、毛体を使用した磨き具の斜視分解図及び断面図が、それぞれ記載されている。 ここで、甲第2号証には、第6、7図の実施例と第5図の実施例の2種の実施例があることから、以下では、それぞれの実施例に注目する。 ア.甲第2号証の第6、7図の実施例に関連して 第6、7図の実施例の基板(11)も、第3図の実施例の基板(11)と同様に、モーターの回転動力が減速装置部で適当な回転数で伝わる取付軸に取りつけられるものである。 また、甲第2号証の上記の記載において、特に、第6、7図の実施例に関連して、「第7図のブラシ台(34)も蓋体(30)の内周の案内板(31)にはまっているので回転ぶれを起こすことはない」(第8頁第19行?第9頁第1行)と記載されているから、この第6、7図の実施例においては、案内板(31)により、ブラシ台(34)と蓋体(30)との間で、回転の芯振れが防止される。 したがって、甲第2号証には、第6、7図の実施例に関連して、以下の考案が記載されていると認める。 モーターの回転動力が減速装置部で適当な回転数で伝わるようにした取付軸に装着され、ブラシ台取付け面を平面状に形成させた基板(11)とこれがはまっている蓋体(30)と、ブラシ台に毛体を取付けたものとを、ベルベット式ファスナーを介し結合できるようにしたその結合部に、回転の芯振れを防止するため蓋体(30)に案内板(31)を設け、ブラシ台の径全体が前記案内板に嵌合するようにした磨き具。 イ.甲第2号証の第5図の実施例に関連して 第5図の実施例の取付軸(27)も、第3図の実施例の取付軸と同様に、モーターの回転動力が減速装置部で適当な回転数で伝わるものであり、また、第5図の基板(11)のベルベット式ファスナーが設けられている面は、円環状で且つその環状部は平面である。 また、第5図の実施例においては、第6、7図の実施例と同様に、基板は案内板にはまっていることから、第5図の実施例においても、第6、7図の実施例と同様に、基板と案内板が設けられている取付板との間で、回転の芯振れが防止されることは明らかである。 したがって、甲第2号証には、第5図の実施例に関連して、以下の考案が記載されていると認める。 モーターの回転動力が減速装置部で適当な回転数で伝わるようにした取付軸(27)に装着され、毛体(24)を取付けた取付板(23)を取付ける面が円環状の平面を有した基板(11)と、取付板(23)に毛体(24)を取付けた取付板(23)とを、ベルベット式ファスナーを介し基板(11)と結合できるようにした毛体(24)を取付けた取付板(23)の結合部に、回転の芯振れを防止するため基板(11)の径が嵌入する案内板(25)の環とこの案内板(25)から中央部にベルベット式ファスナー(26)を設けた磨き具。 (3) 甲第3号証 実用新案登録請求の範囲には、 「回転基盤1の下面中心部に係合用凹窪部4を形成すると共にその内部にマグネット5を収装し、研摩盤6の上面中心部に上記凹窪部4内に突入させるための強磁性体製係合用突片7を固設し、更に、上記凹窪部4の開口面形状と係合用突片7の平面形状を両者が回転出来ない状態で係合するような形状と成した事を特徴とする研摩盤取付け装置。」と、 第2頁第11行?第3頁第12行には、 「在来の研摩盤の取付け方式として、締付け螺子に依存するものと、咬み合いテープ(商品名:マジックパック)に依存するもの等が存在するも、・・・・・・(中略)・・・後者にあっては、咬み合いテープは極めて高価なものであるにもかゝわらず消耗部品たる研摩盤にこれを取付けなければならないと云う不経済性及びコスト高性、並びに該咬み合いテープの即時係止性(係止させた状態で研摩盤の取付け位置を横方向にずらすことは全く出来ない)に基く研摩盤の同心的取付けの困難性等の弊害を生ずることを余儀なくされた。 本考案の研摩盤取付け装置は、研摩盤の取換えが瞬時に達成化されるばかりでなく、上述した如き各在来方式に於ける種々の弊害が全く一掃化されるように成したものである。」と、 第3頁第17行?第4頁第17行には、 「3は該基盤1の上面中心部に立設する回転軸であって、不図示の回転駆動機(例えば電動ポリシ)に連結するためのものである。 4は上記回転用基板1の下面中心部に形成した係合用凹窪部であって、その内部にはマグネット5が収装されている。 6は研摩盤であってその上面中心部には鉄の如き強磁性体に依って製した係合用突片7が固設されている。 又、該突片7は上記係合用凹窪部4内に突入の上マグネット5に吸着させることに依って、研摩盤6を回転用基盤1に対して連結させるためのものであり、従って、該突片7は凹窪部4に対し回転出来ない状態で係合するように構成されている。 尚、図示の実施例に於ては係合用突片7は平面正方形状を呈するものとし、係合用凹窪部4の開口面の形状を該突片7と合致する正方形状を呈するように構成してあるが、両者が回転出来ない状態で係合可能とするものであればこれ以外、例えば三角形、五角形、楕円形等任意な形状であっても可とする。」と、 第7頁第6行?14行には、 「本考案は係合用凹窪部4内に係合用突片7を突入させるだけで回転用基盤1に対する研摩盤6の正確なる同心的取付けが自動的に許容化されるばかりでなく、消耗部品たる研摩盤6がわには鉄板等製係合用突片7を取付けてあるにすぎないものであるから、頭記した在来の咬み合いテープを用いた取付け方式に於て生じた同心的取付けの困難性、及びコスト高性と云う問題は全く解消されることゝなる」と記載されている。 また、第1乃至6図には、実施例の図面が記載されている。 上記のことから、甲第3号証には、以下の考案が記載されていると認める。 回転駆動機の回転軸に装着され、研摩盤取付け面を平面状に形成させた回転用基盤と、研摩盤とを、結合できるようにしたその結合部に、同心的取付けが自動的に許容されるように回転用基盤側に凹窪部を形成すると共にその内部にマグネットを収装し、前記研摩盤側に強磁性体製係合用突片を設け、該突片が前記回転基盤の凹窪部に嵌合するようにしたもの。 (4) 甲第4号証 特許請求の範囲には、 「ディスクグラインダのスピンドル先端部に固定されるディスクの底面に装着可能なディスクグラインダ用研磨紙であって、一面に砥粒固着面を持ち他方の面に粘着剤塗布面をもつ研磨紙基体の中心孔に、U字型断面の開口縁を外向きにもち、上記スピンドル先端に形成された弾性凹条に嵌着可能なスナップリングをかしめ付けてなることを特徴とするディスクグラインダ用研磨紙。」と、 第4頁第6行?第5頁第8行には、 「研磨紙1が装着されるディスクグラインダ2は、概略L字型の把持部3下端面からモータドライブ可能なスピンドル4を突出させ、・・・(中略)・・・同研磨紙基体12の中央上方には、上記ディスク6の円錐台形凸部5と相互に斜面で係合可能な円錐台形凸部13が突出形成される。なお、円錐台形凸部13を除く環状の粘着剤塗布面11上は剥離自在な保護薄膜14で被われる。」と、 第5頁第19行?第6頁第11行には、 「以上のように構成された研磨紙1をディスクグラインダ2に装着するには、保護薄膜14を粘着剤塗布面11上から剥離した状態でスナップリング16をスピンドル4先端に挿入し、同スナップリング16の内周縁でスピンドル4先端部を軸心方向へたわませながら、そのスナップリング16を弾性凹条7に嵌合させ、その嵌合状態において研磨紙基体12の粘着剤塗布面11をディスク6底面に充分押し付けることによって研磨紙1をディスク6底面に粘着固定する。このとき、スナップリング16は、それが嵌合する弾性凹条7によってスピンドル4の円心方向に弾発力を受けるから、両者の嵌合状態は強固に保持される。」と、 第7頁第19行?第8頁15行には、 「また、本研磨紙1は、その構造上スナップリング16のかしめ付け位置が研磨紙基体12の中心孔15によって規定されるから、同基体12の外形に対して中心孔15の位置を同心にしておくという簡単な工程を経るだけで、スナップリング16は自ずから研磨紙基体12に対して同心状態になり、ディスクグラインダ2への装着状態において研磨紙1がスピンドル4に対して偏心回転することはなく、研磨作業の安定性を充分に保証することができる。したがって、単にスナップリング16をスピンドル4先端に挿入するという簡単な操作で常に研磨紙1をスピンドル4に対して同心状態に装着可能であるから、従来のように研磨紙をディスクに非同心状態で粘着固定した場合にその研磨紙をディスクからはがして固定位置の修正を行うときそれによって粘着力が極端に低下してしまうという事体を完全に回避することができる。」と記載されている。 また、第1?3図には実施例が示されている。 上記のことから、甲第4号証には、以下の考案が記載されていると認める。 モータードライブ可能なスピンドルに装着され、研磨紙基体取付け面を平面状に形成させたディスクと、一面に砥粒固着面をもつ研磨紙基体とを、粘着剤を介し固定するようにし、ディスク側に円錐台形凹部を設け、研磨紙側に円錐台形凸部を設け、該凸部が前記ディスクの凹部に相互に斜面で係合可能にしたもの。 (5) 甲第5号証 特許請求の範囲には、 「(1) 駆動モータにより軸心(16)の周りで回転するようにされた、所定直径の円形本体部(14)を含み、全体的に平坦な円形の共軸線関係の面と、該面上の第1の取付け部(21)を有するバックアップパッド(10)と自動心出し係合するバフ(12)において、 全体的に平坦で円形の中央部分(25)と、前記中央部分(25)の一方の側の面(27)から突出する、前記中央部分(25)と一体で、かつ共軸線関係の環状フランジ(26)であつて、前記バックアップパッド(10)の直径より極く僅かに大きい内径を有するフランジ(26)とを有する曲がりにくい弾性の裏打ち(25)と、 前記バックアップパッド(10)の取付け部分(21)と係合するようにされた、前記中央部分(25)の前記一方の側の面(27)上の第2の取付け部分(28)と、および 前記裏打ち(24)に中央部分(32)が係合し、末端部分が前記中央部分(25)および前記フランジ(26)に沿つて、前記一方の側の面(27)とは反対の前記裏打ち(24)の側から突出している多数のケバ(30)とを含むバフ。」と、 第3頁右下欄第15行?第4頁左上欄第18行には、 「また、バックアップパッド10は、裏打ちプレート39とは反対の側のフォーム製層31の表面に固定され、末端で全体的に半球形ヘッドを備えた、多数の突出した弾性ポリプロピレンステムを含む第1の弾性取付部分21を含む・・・(中略)・・・。 バフ12の全体的に円筒形のフランジ26は、取付け部分21と28とが係合する前にバックアップパッド10の縁部の面33が概ね完全にフランジ26内に受入れられるに十分な、裏打ち24の中央部分25上方の軸線方向高さを有する。このためバックアップパッド10の周りでのバフ12の適正な自動求心を保証する。・・・(中略)・・・ケバ30を、例えば磨くべき自動車の表面のような面等に対して回転させる。」と記載されている。 また、第1図には、相互に分離して示された、バックアップパッドとバフとの部分的に断面の側面図が、第2図には、第1図に示すバフの後面図がそれぞれ記載されている。 上記のことから、甲第5号証には、以下の考案が記載されていると認める。 駆動モーターに装着され、バフ取付け面を平面状に形成させたバックアップパッド(10)と、裏打ち(24)にケバ(30)を取付けたバフ(12)とを、バックアップパッド(10)の第1の取付け部分(21)とバフ(12)の第2の取付け部分(28)を介し前記バックアップパッド(10)と結合できるようにした前記バフ(12)の結合部に、前記バックアップパッド(10)の径が嵌入するフランジ(26)と第2の取付け部分(28)を設けたもの。 3.対比・判断 (1) 無効理由1について [対比] 本件考案1と甲第1乃至4号証に記載された考案とを対比する。 ア.本件考案1と甲第1号証に記載された考案との対比 本件考案1と、甲第1号証の1又は同号証の2に記載された考案とを対比する。 甲第1号証の1又は同号証の2に記載された考案の、「パッド」及び「バフ」が、それぞれ本件考案1の「主のパッド」及び、「副のパッド」或いは「研磨体」に相当する。 したがって、本件考案1と、甲第1号証の1又は同号証の2に記載された考案とは、 「モーター回転の駆動軸に装着され、研磨体取付け面を形成させた主のパッドと、副のパッドに研磨材を取付けた研磨体とを、面ファスナーを介し結合できるようにした研磨用具。」 である点で共通しており、少なくとも次の点で相違している。 相違点A: 本件考案1は、「回転の芯振れを防止するため前記主のパッド側に凹部を穿設する一方、前記副のパッド側に凸部を設け、該凸部が前記主のパッドの凹部に嵌合するようにした」構成を備えているのに対して、甲第1号証の1又は同号証の2に記載された考案は、該構成を備えているかどうか明らかではない点。 イ.本件考案1と甲第2号証に記載された考案との対比 本件考案1と、甲第2号証の第6、7図の実施例に関連して記載された考案とを対比すると、後者における、基板(11)とこれがはまっている蓋体(30)、ブラシ台(34)、毛体、ベルベット式ファスナー及び蓋体(30)の案内板(31)が、それぞれ前者における「主のパッド」、「副のパッド」、「研磨材」、「面ファスナー」及び「凹部」に相当する。 したがって、本件考案1と、甲第2号証の第6、7図の実施例に関連して記載された考案とは、 「モーター回転の駆動軸に装着され、研磨体取付け面を平面状に形成させた主ののパッドと、副のパッドに研磨材を取付けた研磨体とを、面ファスナーを介し結合できるようにしたその結合部に、回転の芯振れを防止するため前記主のパッド側に凹部を穿設するようにした研磨用具。」 である点で共通しており、少なくとも次の点で相違している。 相違点B: 主のパッドの凹部に嵌合するのは、本件考案1では、副のパッド側に設けた凸部であるのに対して、甲第2号証に記載された上記考案では、ブラシ台(副のパッド)の径全体である点。 ウ.本件考案1と甲第3号証に記載された考案との対比 本件考案1と、甲第3号証に記載された考案とを対比すると、甲第3号証に記載された考案の、回転用基板、研摩盤、係合用凹窪部及び強磁性体製係合用突片が、それぞれ本件考案1の「主のパッド」、「副のパッド」或いは「研磨体」、「凹部」及び「凸部」に相当し、また、甲第3号証に記載された考案においては、係合用凹窪部及び強磁性体製係合用突片により、回転の芯振れが防止されることは明らかである。 したがって、本件考案1と、甲第3号証に記載された考案とは、 「モーター回転の駆動軸に装着され、研磨体取付け面を平面状に形成させた主のパッドと、副のパッドに研磨材を取付けた研磨体とを、結合できるようにしたその結合部に、回転の芯振れを防止するため前記主のパッド側に凹部を穿設する一方、前記副のパッド側に凸部を設け、該凸部が前記主のパッドの凹部に嵌合するようにした研磨用具。」 である点で共通しており、少なくとも次の点で相違している。 相違点C: 主のパッドと副のパッドに研磨材を取付けた研磨体との結合を、本件考案1では、「面ファスナー」を介し結合しているのに対して、甲第3号証に記載された考案は、係合用凹窪部(凹部)内部のマグネットと、強磁性体製係合用突片(凸部)とにより結合している点。 エ.本件考案1と甲第4号証に記載された考案との対比 本件考案1と、甲第4号証に記載された考案とを対比すると、甲第4号証に記載された考案の、ディスク、研磨紙基体、円錐台形凹部及び円錐台形凸部が、それぞれ本件考案1の「主のパッド」、「副のパッド」或いは「研磨体」、「凹部」及び「凸部」に相当する。 ところで、甲第4号証には、芯合わせの際に、円錐台形凸部と円錐台形凹部とが、何らかの役割を果たすかどうかは明確な記載はない。 また、甲第4号証に記載された考案において、ディスクと研磨紙基体とを、同心状態にして偏芯回転の防止の作用をしているのは、研磨紙基体のスナップリング(16)をスピンドル(4)(本件考案1の駆動軸に相当)の外周の弾性凹条(7)に嵌合させることに依っている。甲第4号証に記載された考案においては、円錐台形凸部と円錐台形凹部とが相互に係合しているとしているものの、その係合している部分は斜面であるから、粘着剤がないとすれば、ディスクを回転させた場合には、遠心力により、円錐台形凸部が円錐台形凹部の斜面に沿って移動し、研磨紙基体がディスクから離間してしまうので、円錐台形凸部と円錐台形凹部とが、回転の芯振れを防止するものではない。 したがって、本件考案1と、甲第4号証に記載された考案とは、 「モーター回転の駆動軸に装着され、研磨体取付け面を平面状に形成させた主のパッドと、副のパッドに研磨材を取付けた研磨体とを、結合できるようにしたその結合部に、前記主のパッド側に凹部を穿設する一方、前記副のパッド側に凸部を設けた研磨用具。」 である点で共通しており、少なくとも次の点で相違している。 相違点D: 主のパッドと副のパッドに研磨材を取付けた研磨体との結合を、本件考案1では、「面ファスナー」を介し結合しているのに対して、甲第4号証に記載された考案は、粘着剤を介し結合している点。 相違点E: 主のパッド側の凹部と副のパッド側の凸部とが、本件考案1では、「回転の芯振れを防止するため」、「凸部が前記主のパッドの凹部に嵌合」しているのに対して、甲第4号証に記載された考案では、回転の芯振れを防止するものではなく、相互に斜面で係合可能としている点。 [判断] 次に、相違点A乃至Eについて検討する。 ア.本件考案1と甲第1号証に記載された考案との相違点Aについて 前記したように、甲第1号証に記載された考案は、相違点Aに係る構成を備えているかどうか明らかではない。また、相違点Aに係る構成が、甲第1号証の記載から示唆されるものでもない。なお、甲第1号証の1の参考資料は、証拠として採用するものではないが、該参考資料において、バフ側の凸部の立ち上がり部分及びバフパッドの凹部の立ち上がり部分は、いずれも垂直ではなく傾斜しているから、ディスクを回転させた場合には、遠心力により、凸部の傾斜部分が凹部の傾斜部分に沿って移動する方向の力、すなわちバフとバフパッドとを離間するように力が加わるので、凹部と凸部とが嵌合したとしても、回転の芯振れを防止する作用を奏するということはできない。 甲第2号証には、回転の芯振れを防止するために、主のパッド側の凹部に嵌合させる構成が記載されているものの、凹部に嵌合するのは、ブラシ台(副のパッド)の径全体であって、凸部ではない。したがって、相違点Aに係る構成が、甲第2号証に、記載又は示唆されているものではない。 甲第3号証には、回転の芯振れを防止するため主のパッド側に凹部を穿設する一方、副のパッド側に凸部を設け、該凸部が前記主のパッドの凹部に嵌合するようにした構成が記載されているものの、面ファスナーを介した結合部を備えるものにおいて、副のパッドの凸部が主のパッドの凹部に嵌合することにより回転の芯振れを防止させるというような、凹凸部と面ファスナーとを、補完的に機能させることに関しては、記載も示唆もない。 ところで、甲第3号証には、従来例として咬み合いテープ(面ファスナー)を用いたものについての記載がある。 しかしながら、甲第3号証第2頁下から1行?第3頁第12及び第7頁第6行?14行には、 「咬み合いテープは・・・(中略)・・・不経済性及びコスト高性、並びに該咬み合いテープの即時禁止性(係止させた状態で研摩盤の取付け位置を横方向にずらすことは全く出来ない)・・・(中略)・・・本考案の研摩盤取付け装置は、研摩盤の取換えが瞬時に達成化されるばかりでなく、上述した如き各在来方式における種々の弊害が全く一掃化されるように成したものである。」及び 「本考案は、係合用凹窪部4内に係合用突片7を突入させるだけで回転用基盤1に対する研摩盤6の正確なる同心的取付けが自動的に許容化されるばかりでなく、消耗部品たる研摩盤6がわには鉄板等製係合用突片7を取付けてあるにすぎないものであるから、前記した在来の咬み合いテープを用いた取付け方式に於て生じた同心的取付けの困難性、及びコスト高性と云う問題は全く解消されることとなる」 と記載されているように、甲第3号証では、従来の咬み合いテープによる方法を問題視しており、更に、第4頁第5行?10行に、 「該突片7は上記係合用凹窪部4内に突入の上マグネット5に吸着させることに依って、研摩盤6を回転用基板1に対して連結させるためのものであり、従って、該突片7は凹窪部4に対し回転出来ない状態で係合するように構成されている。」 と記載されているように、突片7は、凹窪部4内のマグネットに吸着させて連結させることを目的としたものであって、咬み合いテープ(面ファスナー)に代わるものとして示されている。 そして、甲第3号証に記載された考案に面ファスナーを適用すること、又は、甲第3号証に記載された考案と、面ファスナーを使用する考案とを組合せることは、咬み合いテープ(面ファスナー)のコスト高を解消することにはならないから、甲第3号証の上記の各記載に反するものとなる。 更には、研摩盤と回転用基板との取付は、何らか一つの手段を用いさえすればよいものであるから、甲第3号証に記載された考案がマグネットの使用を規定している以上、甲第3号証に記載された考案に面ファスナーを適用すること、又は、甲第3号証に記載された考案と、面ファスナーを使用する考案とを組合せることの、いずれの必要性もない。 また、甲第3号証の実用新案登録請求の範囲及び第4頁第5行?17行に、 「・・・更に、上記凹窪部4の開口面形状と係合用突片7の平面形状を両者が回転出来ない状態で係合するような形状と成したことを特徴とする研摩盤取付け装置。」及び 「該突片7は上記係合用凹窪部4内に突入の上マグネット5に吸着させることに依って、研摩盤6を回転用基板1に対して連結させるためのものであり、従って、該突片7は凹窪部4に対し回転出来ない状態で係合するように構成されている。 尚、図示の実施例に於ては係合用突片7は平面正方形状を呈するものとし、係合用凹窪部4の開口面の形状を該突片7と合致する正方形状を呈するように構成してあるが、両者が回転出来ない状態で係合可能とするものであればこれ以外、例えば三角形、五角形、楕円形等任意な形状であっても可とする。」 と記載されているように、甲第3号証に記載された考案の突片7は、平面正方形等の形状で、凹窪部4に対し回転できない状態で係合することから、仮に甲第3号証に記載された考案に面ファスナーを適用するか、或いは、甲第3号証に記載された考案と、面ファスナーを使用する考案とを組合せるとすれば、咬み合いテープ(面ファスナー)の撓みが生ずる余裕はなくなるので、本件実用新案登録明細書〔考案の効果〕の欄に記載の「ファスナーは毛足の長さ分取り付け面で横方向に撓むためちょうど螺子の如く、A面がB面のパイル時に深く食い込み、結合力を増す。」という効果を奏しなくなる。 これらのことは、甲第3号証に記載された考案に面ファスナーを適用するに際して、又は、甲第3号証に記載された考案と、面ファスナーを使用する考案とを組合せるに際して、いずれにおいても阻害要件となる。 したがって、たとえ甲第3号証に上記相違点Aに係る構成が記載されているとしても、面ファスナーを使用する甲第1号証に記載された考案に、甲第3号証に記載された考案を組み合わせることにより、上記相違点Aの構成とすることが、きわめて容易にできたものとすることは出来ない。 甲第4号証には、主のパッド側の凹部と副のパッド側の凸部とを相互に斜面で係合可能とする構成が記載されているものの、該構成は回転の芯振れを防止するものではない。したがって、相違点Aに係る構成が、甲第4号証の記載から示唆されるものではない。 一方、本件考案1は、上記相違点Aの構成を備えることにより、 「パッドに研磨材を装着するときにおいては、センターの位置決めが瞬時にできる。また、パッドを回転させたときには嵌合部が横ずれを防ぎ、ファスナーは毛足の長さ分取り付け面で横方向に撓むためちょうど螺子の如く、A面がB面のパイル時に深く食い込み、結合力を増す。したがって、ファスナーの使用面積を減らすことができ、製作が有利になりコストも下がる。なによりも脱落飛散がなく安全である。」(本件実用新案登録明細書〔考案の効果〕の欄)という効果を奏するものである。 上記のことから、本件考案1は、甲第1号証に記載された考案であるいうことはできず、また、甲第1号証に記載された考案から、或いは、甲第1号証に記載された考案に甲第2乃至4号証に記載された考案を組合せることにより、きわめて容易に考案できたものとすることもできない。 イ.本件考案1と甲第2号証に記載された考案との相違点Bについて この相違点に関連して、請求人は、ブラシ台34の上部は蓋体30の案内板31内にはめられるので凸部とみることができ、ブラシ台34に凹部にはめられる凸部が設けられている構成とみることができる旨を主張している(審判請求書第6頁第7行?11行)。しかしながら、ブラシ台は、その径全体が凹部に嵌合するものであって、凸部が嵌合するものではなく、且つ、ブラシ台(副のパッド)に凸部が設けられているものでもない。 また、請求人は、甲第2号証第5図の実施例に、副のパッドに相当する取付板(23)を基体より大径としたものが記載されているから、第6、7図の実施例でブラシ台の下部を大径にすることが示唆されている旨を主張している(審判請求書第6頁第11行?14行及び第11頁下から3行?下から1行)。しかしながら、第5図の実施例は、もともとが大径の取付板に案内板で凹部を形成し、これに基板をはめるものであって、取付板の下部を大径にするというものではないから、第6、7図の実施例のブラシ台下部を大径にすることが示唆されているということはできない。 また、請求人は、ブラシ台の凸部分がブラシ台外形と同一であって研磨面がその係合部より大きいか小さいかは単なる設計上の問題であり、互いに係合する凹部と凸部により芯合わせできるようにした技術思想において両者間に相違はない旨を主張している(審判請求書第11頁下から1行?第12頁第3行)。しかしながら、甲第2号証に記載された考案は、ブラシ台に凸部を設けるものではなく、ブラシ台の径全体が案内板(凹部)にはまっているものであるから、凹部と凸部により芯合わせするようにした技術思想ということはできない。また、大きい研磨面が必要であれば、ブラシ台の直径を大きくし、それに応じて、案内板、すなわちブラシ台の径全体が嵌合する凹部の直径を、大きくするのが自然であるから、研磨面を係合部より大きくすることが設計上の問題ということはできない。 したがって、甲第2号証に関する請求人の上記の各主張は、採用することは出来ない。 甲第1号証に記載された考案は、主のパッド側の凹部及び副のパッド側の凸部に係る構成を備えているかどうか明らかではないから、上記相違点Bに係る構成が、甲第1号証の記載から示唆されるものではない。 甲第3号証には、回転の芯振れを防止するため主のパッド側に凹部を穿設する一方、副のパッド側に凸部を設け、該凸部が前記主のパッドの凹部に嵌合するようにする構成が記載されている。しかしながら、前記相違点Aの検討で述べたように、甲第3号証に記載された考案と、面ファスナーを使用する考案とを組合せるに際して、阻害要件があることから、たとえ甲第3号証に上記相違点Bに係る構成が記載されているとしても、面ファスーを使用する甲第2号証に記載された考案に、甲第3号証に記載された考案を組合わせることにより、上記相違点Bの構成とすることが、きわめて容易にできたものとすることは出来ない。 甲第4号証には、主のパッド側の凹部と副のパッド側の凸部とを相互に斜面で係合可能とする構成が記載されているものの、該構成は回転の芯振れを防止するものではない。したがって、相違点Bに係る構成が、甲第4号証の記載から示唆されるものではない。 一方、本件考案1は、上記相違点Bの構成を備えることにより、本件実用新案登録明細書に記載の前記の効果を奏するものである。 上記のことから、本件考案1は、甲第2号証に記載された考案に、甲第1、3、4号証に記載された考案を組合せることにより、きわめて容易に考案できたものとすることはできない。 ウ.本件考案1と甲第3号証に記載された考案との相違点Cについて 甲第3号証には、凹部と凸部とにより回転の芯振れを防止することは記載されているものの、上記相違点Cの構成である面ファスナーにより結合できるようにした結合部を備えるものにおいて、副のパッドの凸部が主のパッドの凹部に嵌合することにより回転の芯振れを防止させるというような、凹凸部と面ファスナーとを、補完的に機能させることに関しては、記載も示唆もない。 ところで、甲第3号証には、従来例として咬み合いテープ(面ファスナー)を用いたものについての記載があり、また、甲第1、2号証には、主のパッドと副のパッドとを面ファスナーを介して結合すること、すなわち上記相違点Cの構成が記載されている。 しかしながら、前記相違点Aの検討で述べたように、甲第3号証に記載された考案に面ファスナーを適用するに際して、又は、甲第3号証に記載された考案と、面ファスナーを使用する考案とを組合せるに際して、いずれにおいても阻害要件があることから、甲第3号証に記載された考案に面ファスナーを適用することにより、又は、甲第3号証に記載された考案と、面ファスナーを使用する甲第1、2号証に記載された考案とを組合せることにより、上記相違点Cの構成とすることが、きわめて容易にできたものとすることは出来ない。 甲第4号証には、面ファスナーを介して結合することについて、記載も示唆もない。したがって、相違点Cに係る構成が、甲第4号証の記載から示唆されるものではない。 一方、本件考案1は、上記相違点Cの構成を備えることにより、本件実用新案登録明細書に記載の前記の効果を奏するものである。 上記のことから、本件考案1は、甲第3号証に記載された考案に、甲第1、2、4号証に記載された考案を組合せることにより、きわめて容易に考案できたものとすることはできない。 エ.本件考案1と甲第4号証に記載された考案との相違点D、Eについて 甲第1、2号証には、相違点Dの構成が、また、甲第3号証には相違点Eの構成が記載されている。 しかしながら、前記相違点Aの検討で述べたように、甲第3号証に記載された考案と、面ファスナーを使用する考案とを組合せるに際して、阻害要件があることから、甲第4号証に記載された考案に、面ファスナーを使用する甲第1、2号証に記載された考案と、甲第3号証に記載された考案とを組合せることにより、上記相違点D及びEの構成とすることが、きわめて容易にできたものとすることは出来ない。 一方、本件考案1は、上記相違点D、Eの構成を備えることにより、本件実用新案登録明細書に記載の前記の効果を奏するものである。 上記のことから、本件考案1は、甲第4号証に記載された考案に、甲第1乃至3号証に記載された考案を組合せることにより、きわめて容易に考案できたものとすることはできない。 以上のことから、本件考案1が、甲第1号証の1もしくは同号証の2に記載された考案であるとも、甲第1乃至4号証に記載された考案に基づいてきわめて容易に考案をすることができたものとも認められないから、請求人の主張する無効理由1は、採用することができない。 (2) 無効理由2について ア.本件考案2と甲第2号証に記載された考案との対比・判断 甲第2号証の第5図の実施例において、基板(11)は取付板(23)より小径であり、また、取付板(23)は基板(11)より大径であることを考慮して、本件考案2と甲第2号証の第5図の実施例に関連して記載された考案とを対比すると、後者の「モーターの回転動力が減速装置部で適当な回転数で伝わるようにした取付軸」、「毛体(24)」、「毛体(24)を取付けた取付板(23)」、「基板(11)」、「取付板(23)」、「ベルベット式ファスナー」及び「磨き具」が、それぞれ前者の「モーター回転の駆動軸」、「研磨材」、「研磨体」、「小径の主のパッド」、「大径の副のパッド」、「面ファスナー」及び「研磨用具」に相当している。 また、甲第2号証に記載された上記考案の、取付板(23)の案内板(25)から中央部のベルベット式ファスナー(26)が設けられている部分は、案内板(25)があることにより、本件考案2と同様に、凹形の貼着面となっている。 ここで、本件考案2の「研磨材もしくは研磨体」との文言中の「もしくは」の語句は、「あるいは」及び「または」と同じ意味を表す語句であることを考慮に入れれば、本件考案2と甲第2号証に記載された上記考案とは、 「モーター回転の駆動軸に装着され、研磨体取付け面を平面状に形成させた小径の主のパッドと、大径の副のパッドに研磨材を取付けた研磨体とを、面ファスナーを介し前記主のパッドと結合できるようにした前記研磨体の結合部に、回転の芯振れを防止するため前記主のパッドの径が嵌入する凹形の貼着面を設けた研磨用具。」 である点で一致し、他に実質的な相違点はないといえる。 なお、被請求人は、平成10年10月31日付け答弁書において、「主のパッドには研磨体の他に研磨材をも取り付けることが出来、主のパッドをも研磨状況に応じて使用できるなど多目的に使用することができるが、甲第2号証にはこのような点について何等の記載も示唆もない。」と主張している。 しかしながら、本件考案2では、「研磨材もしくは研磨体取付け面」と記載し、「もしくは」の語句、すなわち「あるいは」及び「または」と同じ意味を表す語句を使用していることから、本件考案2に、主のパッドに研磨体の他に研磨材をも取り付けることが出来る旨の構成の限定、すなわち上記被請求人の主張の根拠となる構成の限定があるものではない。 また、たとえ上記被請求人の主張の根拠となる構成が限定されていたとしても、甲第2号証に記載された上記考案の基板(主のパッド)には、本件考案2の主のパットと同様に、ベルベット式ファスナー(面ファスナー)が取付けられているから、甲第2号証に記載された考案の基板(主のパッド)に、研磨材を取付けることもできるので、被請求人が主張する点が、実質的な相違点となるものではない。 イ.本件考案2と甲第5号証に記載された考案との対比・判断 甲第5号証に記載された考案において、バックアップパッド(10)は裏打ち(24)より小径であり、また、裏打ち(24)はバックアップパッド(10)より大径であることを考慮して、本件考案2と甲第5号証に記載された考案とを対比すると、甲第5号証に記載された考案の「駆動モーター」、「バフ取付け面」、「バックアップパッド(10)」、「裏打ち(24)」、「ケバ(30)」、「バフ(12)」、「バックアップパッド(10)の第1の取付け部分(21)とバフ(12)の第2の取付け部分(28)」及び「フランジ(26)と第2の取付け面(28)」が、それぞれ本件考案2の「モーター回転の駆動軸」、「研磨体取付け面」、「小径の主のパッド」、「大径の副のパッド」、「研磨材」、「研磨体」、「面ファスナー」及び「凹形の貼着面」に相当しており、更に、甲第5号証に記載された考案は、自動車の表面のような面を磨くものであるから、研磨用具に関するものといえる。 また、甲第5号証には、フランジ(26)が回転の芯振れを防止するかどうかに関して直接の記載はないものの、バックアップパッドの縁部の面(33)が、フランジ内に受け入れられるに十分な高さを有し、且つ、フランジの内径は、バックアップパッドの直径より極く僅かに大きいだけであるから、バックアップパッドとバフのフランジとの間で、回転の芯振れが防止されることは明らかである。 したがって、本件考案2と甲第5号証に記載された考案とは、 「モーター回転の駆動軸に装着され、研磨体取付け面を平面状に形成させた小径の主のパッドと、大径の副のパッドに研磨材を取付けた研磨体とを、面ファスナーを介し前記主のパッドと結合できるようにした前記研磨体の結合部に、回転の芯振れを防止するため前記主のパッドの径が嵌入する凹形の貼着面を設けた研磨用具。」 である点で一致し、他に実質的な相違点はないといえる。 なお、被請求人は、平成10年10月31日付け答弁書において、甲第5号証には、主のパッドは従来のパッドと同様に研磨紙等を兼用できるなどと云う多目的に使用する点について記載も示唆もない旨を主張している。 しかしながら、前述した様に、本件考案2に、上記被請求人の主張の根拠となる構成の限定があるものではない。 また、たとえ上記被請求人の主張の根拠となる構成が限定されていたとしても、甲第5号証に記載された考案のバックアップパッド(主のパッド)には、本件考案2の主のパットと同様に、多数の突出した弾性ポロプロピレンステムを含む第1の取付け部分21(面ファスナーに相当)が取付けられているから、甲第5号証に記載された考案のバックアップパッド(主のパッド)に、研磨紙を取付けることもできるので、被請求人が主張する点が、実質的な相違点となるものではない。 上記のことから、本件考案2は、甲第2号証もしくは甲第5号証に記載された考案であると認められるから、実用新案法第3条第1項の規定により実用新案登録を受けることができない。 VI.むすび 以上のとおり、本件考案1は、甲第1号証の1もしくは同号証の2に記載された考案であるとも、甲第1乃至4号証に記載された考案に基づいてきわめて容易に考案をすることができたものともすることができず、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件請求項1に係る実用新案登録を無効とすることはできない。 また、本件考案2は、甲第2号証もしくは甲第5号証に記載された考案であるから、本件請求項2に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第1項に該当し、無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2000-02-01 |
結審通知日 | 2000-02-15 |
審決日 | 2000-02-29 |
出願番号 | 実願昭63-62581 |
審決分類 |
U
1
112・
113-
ZE
(B24B)
U 1 112・ 121- ZE (B24B) |
最終処分 | 一部成立 |
前審関与審査官 | 高木 進 |
特許庁審判長 |
小池 正利 |
特許庁審判官 |
播 博 小関 峰夫 |
登録日 | 1997-03-12 |
登録番号 | 実用新案登録第2147993号(U2147993) |
考案の名称 | 研磨用具 |
代理人 | 筒井 大和 |
代理人 | 小塚 善高 |
代理人 | 鷹野 寧 |