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審決分類 |
審判 A47K |
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管理番号 | 1024981 |
審判番号 | 新実用審判1999-40014 |
総通号数 | 15 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2001-03-30 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1999-08-11 |
確定日 | 2000-06-14 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第3048155号実用新案「洗剤入りパフ」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第3048155号実用新案の明細書の請求項1?6に記載された考案についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第一 本件考案 本件実用新案登録第3048155号の請求項1ないし請求項6に係る考案(平成9年9月16日出願、平成10年2月18日設定登録)は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし請求項6に記載されたとおりの次のものと認める。 「【請求項1】 粉洗剤が収納された布袋と、この布袋内に収納され、粉洗剤および布袋を保形する弾性変形部材とを備えた洗剤入りパフ。 【請求項2】 上記弾性変形部材がスポンジである請求項1に記載の洗剤入りパフ。 【請求項3】 上記布袋の生地が絹糸からなる織布である請求項1または請求項2に記載の洗剤入りパフ。 【請求項4】 上記布袋は直径70?90mmの円形袋であり、上記弾性変形部材は、厚さ4?6mm、直径40?80mmの円板状のスポンジである請求項1?請求項3の内、いずれか1項に記載の洗剤入りパフ。 【請求項5】 絹糸からなる2枚の絹織布を、縫着部の一部に長さ30?60mmの洗剤充填口を設けて円形袋状に縫着した直径70?90mmの布袋と、 この布袋の洗剤充填口から袋内へ充填される粉洗剤と、 上記布袋に収納される厚さ4?6mm、直径40?80mmの円板状のスポンジ製の弾性変形部材とを備え、上記洗剤充填口は、上記粉洗剤および弾性変形部材を充填後、縫着される洗剤入りパフ。 【請求項6】 上記粉洗剤の成分中には、石けん素地60?80重量%と、タルク5?20重量%と、それぞれ0.1重量%以下のパパイヤ酵素および脱脂粉乳を含んでいる請求項5に記載の洗剤入りパフ。」 第二 請求人の主張 請求人は、甲第1?4号証を提出して、請求項1及び請求項3?6に係る考案は、甲第1?4号証記載の考案に基づいて、請求項2に係る考案は、甲第1?3号証記載の考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案し得たものであるから、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、本件実用新案登録は同法37条1項2号により、無効とすべきであると主張している。 すなわち、審判請求書及び弁駁書の記載、並びに平成12年2月2日に特許庁審判廷(福岡市「博多パークホテル」)において行われた口頭審理での主張によれば、以下のとおりとなる。 一 各甲号証記載事項 1 甲第1号証(特開平9-135784号公報) (1) 「本発明のパフは、絹生地の布袋と、この布袋の中に収容される洗剤とから構成される。」との記載がある(【0011】欄、同公報2頁2欄3?5行)。 (2) 「布袋は、たとえば洗顔用のパフである場合には、約5cm×約5cmの矩形の絹布の3辺を縫って1辺が開口した袋状とし、開口側から約30gの洗顔剤を充てんし、開口側の絹布を、たとえばひねって、或いは、糸でくくって綴じて、洗顔剤が外にこぼれないようにする。」との記載がある(【0012】欄、同2欄7?12行)。 (3) 「また、必要に応じて、布袋を長手方向に複数の部分に区画して洗剤が偏らないようにすることができる。」との記載がある(同欄14?16行)。 (4) 「洗顔剤の成分は重量比で、石けん素地約70%、夕ルク約10%、…脱脂粉乳0.01%等である。」との記載がある(【0013】欄、同2欄18?20行)。 (5) 「まず、洗顔剤が収容された布袋を水又はぬるま湯で湿らせて、中の粉体がゼリー状になるまで十分に揉みほぐし、よく泡立てる。」との記載がある(【0018】欄、 同2欄37?39行)。 2 甲第2号証(特開平8-182632号公報) 「天蚕糸からなるニット地11(表装材)を…小袋13内に…スポンジ15(発泡体)が収納され、」が図1及び図2とともに記載されている(【0006】欄、同公報2頁1欄45?48行)。 3 甲第3号証(特開平8-84684号公報) 「石鹸のまわりにスポンジを取りまき石鹸が容易に飛び出ないようにし、更に、袋状の布等を覆いかぶせたもの。」が図2と共に記載されている(請求項1、同公報2頁1欄2?4行)。 4 甲第4号証(実願平4-82492号[実開平7-20976号]のCD- ROM) 「絹糸を用いて織った千代鹿の子織りのような特殊な凹凸形状を有する絹織物、絹編物、絹メッシュその他の絹製布地で編製した布袋と、この布袋中に収納した天然産の海綿と、この海綿を出入可能とした開口部とから成るパフ。」が図1及び図2と共に記載されている(請求項1、同公報2頁1欄2?6行)。 二 対比・判断 1 請求項1に係る考案 甲第1号証記載の考案と対比すると、布袋内に粉洗剤を収容する点で一致し、弾性変形部材を収納する点で相違する。なお、甲第1号証には、「粉洗剤」との明示はないが、「また、必要に応じて布袋を長手方向に複数の部分に区画して洗剤が偏らないようにすることができる。」(【0012】欄、同公報2頁2欄14?16行)、及び「まず、洗顔剤が収容された布袋を水又はぬるま湯で湿らせて、中の粉体がゼリー状になるまで十分に揉みほぐし、よく泡立てる。」(【0018】欄、同2欄37?39行)との各記載からすれば、甲第1号証には粉洗剤が実質的に記載されているものと認められる。 そして、布袋内に弾性変形部材(スポンジ)を収納し、布袋を保形する点は、甲第2?4号証に明文の記載はないが、布袋内に弾性変形部材(スポンジ)を収納する点の記載はあり、布袋内に弾性変形部材(スポンジ)を収納すれば、当然に得られる自明な作用効果にすぎない。 従って、甲第1号証記載の考案に、甲第2?4号証記載の公知技術を採用することは、当業者であればきわめて容易に推考できたことである。 そして請求項1の、「使用時に、布袋内に収納された付形用の部材が硬いなどの不快感もなく、かつ使用中、布袋内の粉洗剤が徐々に目減りしても、布袋は常時所定の大きさを保ち、この結果、使い勝手が良い。」(本件考案の明細書【0028】欄)という効果(布袋への形態付与、素材の柔軟性、中身が減った場合の形態保持)も、一定の形を保つ弾性変形部材自体の性質等より当然に得られることであるから、きわめて容易に予測できる程度のものにすぎない。 2 請求項2に係る考案 甲第1号証記載の考案と対比すると、布袋内に粉洗剤を収容する点で一致し、スポンジを収納する点で相違する。しかし、布袋内にスポンジを収納する点は、甲第2又は3号証に記載されている。従って、甲第1号証記載の考案に、甲第2又は3号証記載の公知技術を採用することは、当業者であればきわめて容易に推考できたことである。 そして請求項2の、「使い心地や泡立ちが良く、しかも弾性変形部材の低コスト化が図れる。」(同【0029】欄)という効果も、安価な多孔質のスポンジ自体より当然に得られることであるから、きわめて容易に予測できる程度のものにすぎない。 3 請求項3に係る考案 甲第1号証記載の考案と対比すると、絹生地の布袋内に粉洗剤を収容する点で一致し、弾性変形部材を収納する点で相違する。しかし、布袋内に弾性変形部材を収納する点は、甲第2?4号証に記載されている。尚、布袋を絹糸からなる織布とする点は、甲第4号証にも記載されている。したがって、甲第1号証記載の考案に、甲第2?4号証記載の公知技術を採用することは、当業者であればきわめて容易に推考できたことである。 そして請求項3の、「使用時にきめ細かな肌触りとなる。」(同【0030】欄)という効果も、感触のよい絹製の布袋自体より当然に得られることから、きわめて容易に予測できる程度のものにすぎない。 4 請求項4に係る考案 甲第1号証記載の考案と対比すると、絹生地の布袋内に粉洗剤を収容する点で一致し、布袋を適宜大きさの円形とし、適宜厚さと大きさのスポンジを収納する点で相違する。しかし、布袋を適宜大きさの円形とし、適宜厚さと大きさのスポンジを収納する点は、甲第2又は3号証に記載されている。尚、布袋の生地を絹糸からなる織布とする点は、甲第4号証にも記載されている。従って、甲第1号証記載の考案に、甲第2?4号証記載の公知技術を採用することは、当業者であればきわめて容易に推考できたことである。 そして請求項4の、「握ったときの手のなじみ具合が良くなり、しかも使用時に自分の手に近い感じで使用できる。」(同【0031】欄)という効果も、布袋及びスポンジを適宜厚さと大きさとしたことで当然に得られることから、きわめて容易に予測できる程度のものにすぎない。 5 請求項5に係る考案 甲第1号証記載の考案と対比すると、絹生地の布袋内に粉洗剤を収容する点で一致し、布袋を適宜大きさの円形とし、適宜厚さと大きさのスポンジを収納する点、及び布袋に充填用の開口部を設ける点で相違する。 しかし、布袋を適宜大きさの円形とし、適宜厚さと大きさのスポンジを収納する点は、甲第2又は3号証に記載されている。又、充填用の開口部を設ける点は、甲第1号証(「布袋は、たとえば洗顔用のパフである場合には、約5cm×約5cmの矩形の絹布の3辺を縫って1辺が開口した袋状とし、開口側から約30gの洗顔剤を充てんし、開口側の絹布を、たとえばひねって、或いは、糸でくくって綴じて、洗顔剤が外にこぼれないようにする。」(【0012】欄、同2欄7?12行)及び甲第4号証に記載されている。従って、甲第1号証記載の考案に、甲第2?4号証記載の公知技術を採用することは、当業者であればきわめて容易に推考できたことである。 そして請求項5の「握り具合や使用感が良好であり、しかも使用時のきめの細かな布袋の肌触りが得られると同時に、製造しやすくもなる。」(同【0032】欄)という効果も、布袋等を適宜な厚さと大きさの形状として、充填用の開口部を設けることで当然に得られることから、きわめて容易に予測できる程度のものにすぎない。 6 請求項6に係る考案 甲第1号証記載の考案と対比すると、絹生地の布袋内に粉洗剤を収容する点、及び洗剤中に石けん、夕ルク、パパイヤ酵素及び脱脂粉乳を所定重量比で含む点で一致し、布袋を適宜大きさの円形とし、適宜厚さと大きさのスポンジを収納する点、及び布袋に充填用の開□部を設ける点で相違する。 しかし、布袋を適宜大きさの円形とし、適宜厚さと大きさのスポンジを収納する点は、甲第2又は3号証に記載されている。又、充填用の開□部を設ける点は、甲第1号証及び甲第4号証に記載されている。したがって、甲第1号証記載の考案に、甲第2?4号証記載の公知技術を採用することは、当業者であればきわめて容易に推考できたことである。 そして請求項6の、「粉洗剤の成分的に、使用時の泡立ちが良く、滑らかな感触で、老角質を十分に除去でき、しかも肌の潤いも保てる。」(同【0033】欄)という効果も、洗剤中に石けん、夕ルク等を含むことで当然に得られることから、きわめて容易に予測できる程度のものにすぎない。 第三 被請求人の主張 被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、答弁書の記載及び同口頭審理での主張によれば、以下のとおりとなる。 本件考案は、「布袋に粉洗剤と弾性変形部材とを同時に収納する」ことにより、主としてパフとしての使い勝手を高めたものである。単に公知の考案を組み合わせたもの以上の作用効果を奏するものである。 甲第2、3、4号証には、布袋内に弾性変形部材(スポンジ)を収納する点の記載はあるものの、布袋を保形するとの布袋への形態付与の点、及び中身が減った場合の形態保持についての記載はない。 特に、「使用中、布袋内の粉洗剤が徐々に目減りしても、布袋は常時所定の大きさを保ち、この結果、使い勝手が良い。」(本件考案の明細書【0028】欄)という効果について、甲第3号証のものは固形の石鹸をスポンジで包み、袋状の布等で覆ったものにすぎず、本件考案に係る洗剤入りパフとは直接の対象を異にし、しかも固形の石鹸と粉洗剤とは構成が相違し、作用効果も相違する。 すなわち、本件考案は、 「1 使用時に、布袋内に収納された付形用の部材が硬いなどの不快感もなく、 かつ使用中、布袋内の粉洗剤が徐々に目減りしても、布袋は常時所定の大き さを保ち、この結果、使い勝手が良い。 2 使い心地や泡立ちが良く、しかも弾性変形部材の低コスト化が図れる。 3 使用時にきめ細かな肌触りとなる。 4 握ったときの手のなじみ具合が良くなり、しかも使用時に自分の手に近い 感じで使用できる。 5 握り具合や使用感が良好であり、しかも使用時のきめの細かな布袋の肌触 りが得られると同時に、製造しやすくもなる。 6 粉洗剤の成分的に、使用時の泡立ちが良く、滑らかな感触で、老角質を十 分に除去でき、しかも肌の潤いも保てる。」 との効果を有する(【0028】?【0033】参照) 請求人の主張には、根拠がない。 第四 当審における検討 一 甲各号証の記載事項 1 甲第1号証(特開平9-135784号公報) 甲第1号証には、 (1) 「絹生地の布袋と、この布袋の中に収容される洗剤とから構成されるパフ。」(実用新案登録請求の範囲、請求項1)、 (2) 「本発明のパフは、絹生地の布袋と、この布袋の中に収容される洗剤とから構成される。」(【0011】欄、同公報2頁2欄3?5行)、 (3) 「布袋は、たとえば洗顔用のパフである場合には、約5cm×約5cmの矩形の絹布の3辺を縫って1辺が開口した袋状とし、開口側から約30gの洗顔剤を充てんし、開口側の絹布を、たとえばひねって、或いは、糸でくくって綴じて、洗顔剤が外にこぼれないようにする。」(【0012】欄、同2欄7?12行)、 (4) 「また、必要に応じて、布袋を長手方向に複数の部分に区画して洗剤が偏らないようにすることができる。」(【0012】欄、同2欄14?16行)、 (5) 「洗顔剤の成分は重量比で、石けん素地約70%、夕ルク約10%、パパイヤ酵素0.04%、脱脂粉乳0.01%等である」(【0013】欄、同2欄18?20 行) (6) 「まず、洗顔剤が収容された布袋を水又はぬるま湯で湿らせて、中の粉体がゼリー状になるまで十分に揉みほぐし、よく泡立てる。」(【0018】欄、同2欄37?39行)、 の記載があり、これらの記載からみて、同号証には 「粉洗剤が収納された絹生地の布袋を備えた洗剤入りパフ」(以下、「甲第1号証に記載された考案1」と言う。)、 「2枚の絹布を、1辺が開口した袋状に縫った布袋と、この布袋の開口から袋内へ充填される粉洗剤と、上記開口は、上記粉洗剤を充填後、糸でくくって綴じられる洗剤入りパフ」(以下、「甲第1号証に記載された考案2」と言う。)及び、 「2枚の絹布を、1辺が開口した袋状に縫った布袋と、この布袋の開口から袋内へ充填される粉洗剤と、その粉洗剤の成分中には、石けん素地約70%と、タルク約10%と、パパイヤ酵素0.04%および脱脂粉乳0.01%を含んでおり、上記開口は、上記粉洗剤を充填後、糸でくくって綴じられる洗剤入りパフ」、(以下、「甲第1号証に記載された考案3」と言う。) が記載されているものと認められる。 2 甲第2号証(特開平8-182632号公報) 甲第2号証には、 (1) 「【請求項1】 表装材として山繭より採取した天蚕糸の布を用いたことを特徴とする人体用清浄具。 【請求項2】 表装材の内部に発泡体が収納されている請求項1に記載の人体用清浄具。 【請求項3】 表面用表装材として山繭より採取した天蚕糸の布を用い、裏面用表装材としてメッシュ地を用い、これらの間に発泡体が収納されていることを特徴とする人体用清浄具。」(特許請求の範囲請求項1?3)、 (2) 「天蚕糸からなるニット地11(表装材)を縫製した作った小袋13内にポリウレタンフオームからなるスポンジ15(発泡体)が収納され、」(【0006】欄、同公報2頁1欄45?48行) (3) 図1及び図2 の記載があり、これらの記載からみて、同号証には 「絹製の布からなる小袋と、この小袋内に収納されるスポンジとを備えた人体用清浄具」 が記載されていると認められる。 3 甲第3号証(特開平8-84684号公報) 甲第3号証には、図2と共に、「石鹸のまわりにスポンジを取りまき石鹸が容易に飛び出さないようにし、更に袋状の布等を覆いかぶせたもの。以上の如く構成された石鹸を内蔵したスポンジ。」(請求項1、同公報2頁1欄2?5行)の記載があり、これらの記載からみて、同号証には 「石鹸のまわりにスポンジを取りまき、更に袋状の布を覆いかぶせたもの」 が記載されていると認められる。 4 甲第4号証(実願平4-82492号[実開平7-20976号]のCD- ROM 甲第4号証には、図1及び図2と共に、「極細の絹糸を用いて織った千代鹿の子織りのような特殊な凹凸形状を有する絹織物、絹編物、絹メッシュその他の絹製布地で編製した布袋と、この布袋中に収納した天然産の海綿と、この海綿を出入可能とした開口部とから成るパフ。」(請求項1、同公報2頁1欄2?6行)との記載があり、これらの記載からみて、同号証には 「絹製布地からなる布袋と、この布袋内に収納される天然産の海綿とを備えたパフ」 が記載されていると認められる。 二 本件請求項1に係る考案と、甲各号証に記載されたものとの対比、検討 1 対比 本件請求項1に係る考案と甲第1号証に記載された考案1とを対比すると、両者は、「粉洗剤が収納された布袋を備えた洗剤入りパフ」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1 本件請求項1に係る考案においては、その布袋内に収納され、粉洗剤および布袋を保形する弾性変形部材とを備えているのに対し、甲第1号証に記載された考案1では、このような構成を有しない点。 2 相違点に対する検討 さきに検討したように、甲第2号証において、「絹製の布からなる小袋と、この小袋内に収納されるスポンジとを備えた人体用清浄具」が、甲第3号証において、「石鹸のまわりにスポンジを取りまき、更に袋状の布を覆いかぶせたもの」がそれぞれ記載され、布袋内に弾性変形部材を収納する点が開示されている。 本件考案の請求項1に係る考案は、甲第1号証に記載された考案1において、「布袋内に収納され、粉洗剤および布袋を保形する弾性変形部材とを備えた」ものに相当するが、甲第2号証において上記の構成が、甲第3号証において粉洗剤ではないが石けんとスポンジを同時に布袋内に設ける点が、それぞれ記載されており、そして、甲第1号証は顔や体を洗うためのパフに関するものであり、甲第2号証は人体用清浄具であり、甲第3号証は湯につけると泡の出るスポンジであり、何れも、本件考案の請求項1に係る考案における洗剤入りパフとは、技術的に関連性が強い点をも考慮すると、甲第1号証における洗剤入りパフにおいて、その布袋内に弾性変形部材を収納し、布袋内に粉洗剤と弾性変形部材とを備えるようなことは、特に両者の構成の組み合わせを阻害する要因もなく、格別の困難性を伴うことなく、きわめて容易になし得た程度のことである。 なお、甲第4号証において、「絹製布地からなる布袋と、この布袋内に収納される天然産の海綿とを備えたパフ」が記載され、布袋内に弾性変形部材を収納する点が開示されているが、この甲第4号証に記載のものも含めて、それらの弾性変形部材は、「中層のスポンジ25により石けんの泡立ちが良く」(甲第2号証【0008】)、「湯水につけるだけで泡が出る」(甲第3号証【0007】)、及び「吸水性に富み、天然産特有の起伏の大きさにより裏面側から絹製布地の凹凸をさらに強調する」(甲第4号証【0006】)と記載されているように、泡立ちを良くするため、あるいは表面側の凹凸を強調し洗浄作用を高めるためのものであり、何れにも、本件請求項1に係る考案の構成である「粉洗剤および布袋を保形する」弾性変形部材の点については、必ずしも明示の記載はされていない。さらに、本件考案の明細書によると、本件請求項1に係る考案は、この構成を備えることにより、「使用時に、布袋内に収納された付形用の部材が硬いなどの不快感もなく、かつ使用中、布袋内の粉洗剤が徐々に目減りしても、布袋は常時所定の大きさを保ち、この結果、使い勝手が良い。」(本件考案の明細書【0028】欄)との効果を奏するとの記載がある。 しかしながら、布袋への形態付与とか素材の柔軟性については、一定の形を保つ弾性変形部材自体の性質等より当然に得られることであり、中身が減った場合の形態保持については、甲第3号証に記載のものによれば、石けんが使用された結果小さくなったとしても、そのスポンジ(弾性変形部材)により常時所定の大きさに保つことが期待できるものであることを考慮すると、格別のものとはいえず、予測し得る程度のことである。 したがって、本件請求項1に係る考案は、甲第1?3号証に記載されたものに基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。 三 本件請求項2に係る考案と、甲各号証に記載されたものとの対比、検討 1 対比 請求項2に係る考案は、請求項1に係る考案を引用し、請求項1に係る考案における弾性変形部材にさらに限定を加えたものである。 本件請求項2に係る考案と甲第1号証に記載された考案1とを対比すると、両者は、「粉洗剤が収納された布袋を備えた洗剤入りパフ」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点2 本件請求項2に係る考案においては、その布袋内に収納され、粉洗剤および布袋を保形するスポンジとを備えているのに対し、甲第1号証に記載された考案1では、このような構成を有しない点。 2 相違点に対する検討 さきに検討したように、甲第2号証において、「絹製の布からなる小袋と、この小袋内に収納されるスポンジとを備えた人体用清浄具」が、甲第3号証において、「石鹸のまわりにスポンジを取りまき、更に袋状の布を覆いかぶせたもの」がそれぞれ記載され、布袋内にスポンジを収納する点が開示されている。 本件考案の請求項2に係る考案は、甲第1号証に記載された考案1において、「布袋内に収納され、粉洗剤および布袋を保形するスポンジとを備えた」ものに相当するが、甲第2号証において上記の構成が、甲第3号証において粉洗剤ではないが石けんとスポンジを同時に布袋内に設ける点が、それぞれ記載されており、そして、甲第1号証は顔や体を洗うためのパフに関するものであり、甲第2号証は人体用清浄具であり、甲第3号証は湯につけると泡の出るスポンジであり、何れも、本件考案の請求項2に係る考案における洗剤入りパフとは、技術的に関連性が強い点をも考慮すると、甲第1号証における洗剤入りパフにおいて、その布袋内にスポンジを収納し、布袋内に粉洗剤とスポンジとを備えるようなことは、特に両者の構成の組み合わせを阻害する要因もなく、格別の困難性を伴うことなく、きわめて容易になし得た程度のことである。 なお、それらのスポンジは、「中層のスポンジ25により石けんの泡立ちが良く」(甲第2号証【0008】)、「湯水につけるだけで泡が出る」(甲第3号証【0007】)と記載されているように、泡立ちを良くするためのものであり、何れにも、本件請求項2に係る考案の構成である「粉洗剤および布袋を保形する」スポンジの点については、必ずしも明示の記載はされていない。さらに、本件考案の明細書によると、本件請求項1に係る考案は、この構成を備えることにより、「使用時に、布袋内に収納された付形用の部材が硬いなどの不快感もなく、かつ使用中、布袋内の粉洗剤が徐々に目減りしても、布袋は常時所定の大きさを保ち、この結果、使い勝手が良い。」(本件考案の明細書【0028】欄)、さらに「使い心地や泡立ちが良く、しかも弾性変形部材の低コスト化が図れる。」(同【0029】欄)との効果を奏するとの記載がある。 しかしながら、布袋への形態付与、素材の柔軟性、さらには低コスト化については、一定の形を保つスポンジ自体の性質等より当然に得られることであり、中身が減った場合の形態保持については、甲第3号証に記載のものによれば、石けんが使用された結果小さくなったとしても、そのスポンジにより常時所定の大きさに保つことが期待できるものであることを考慮すると、予測し得る程度のことである。 したがって、本件請求項2に係る考案は、甲第1?3号証に記載されたものに基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。 四 本件請求項3に係る考案と、甲各号証に記載されたものとの対比、検討 1 対比 請求項3に係る考案は、請求項1又は2に係る考案を引用し、請求項1又は2に係る考案における布袋の生地にさらに限定を加えたものである。 本件請求項3に係る考案と甲第1号証に記載された考案1とを対比すると、両者は、「粉洗剤が収納された絹糸からなる織布である生地の布袋を備えた洗剤入りパフ」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点3-1 請求項1を引用した、本件請求項3に係る考案においては、その布袋内に収納され、粉洗剤および布袋を保形する弾性変形部材とを備えているのに対し、甲第1号証に記載された考案1では、このような構成を有しない点。 相違点3-2 請求項2を引用した、本件請求項3に係る考案においては、その布袋内に収納され、粉洗剤および布袋を保形するスポンジとを備えているのに対し、甲第1号証に記載された考案1では、このような構成を有しない点。 2 相違点に対する検討 相違点3-1については、さきに「二 2」で検討したとおりであり、又、相違点3-2については、さきに「三 2」で検討したとおりであり、結局、本件請求項3に係る考案は、甲第1?3号証に記載されたものに基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。 五 本件請求項4に係る考案と、甲各号証に記載されたものとの対比、検討 1 対比 請求項4に係る考案は、請求項1?3の内いずれか1項に係る考案を引用し、請求項1?3の内いずれか1項に係る考案における構成の一部にさらに限定を加えたものである。 本件請求項4に係る考案と甲第1号証に記載された考案1とを対比すると、両者は、「粉洗剤が収納された布袋を備えた洗剤入りパフ」(請求項1又2を引用したものに対して)、又は「粉洗剤が収納された絹糸からなる織布である生地の布袋を備えた洗剤入りパフ」(請求項3を引用したものに対して)である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点4-1 請求項1?3の内いずれか1項を引用した、本件請求項4に係る各考案においては、その布袋内に収納され、粉洗剤および布袋を保形するスポンジとを備えているのに対し、甲第1号証に記載された考案1では、このような構成を有しない点。 相違点4-2 相違点4-1に関連して、請求項1?3の内いずれか1項を引用した、本件請求項4に係る各考案においては、布袋は直径70?90mmの円形袋であり、上記スポンジは、厚さ4?6mm、直径40?80mmの円板状のスポンジであるのに対し、甲第1号証に記載された考案1では、このような構成を有しない点。 2 相違点に対する検討 相違点4-2を検討すると、布袋の形状及び大きさを限定したり、スポンジの形状、厚さ及び大きさを限定するようなことは、この種の洗剤入りパフにおいて、手で持った場合の扱い良さ等の観点からすれば、当業者が試行錯誤的に求められる設計的事項に過ぎず、このようなことは当業者が必要に応じてきわめて容易になし得た程度のことである。 相違点4-1については、さきに「三 2」で検討したとおりである。 そして、全体として、本件考案の請求項4に係る考案における効果の点においても、甲第1?3号証に記載された事項から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別なものとはいえない。 結局、本件請求項4に係る考案は、甲第1?3号証に記載されたものに基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。 六 本件請求項5に係る考案と、甲各号証に記載されたものとの対比、検討 1 対比 本件請求項5に係る考案と甲第1号証に記載された考案2とを対比すると、両者は、「絹糸からなる2枚の絹織布を、縫着部の一部に洗剤充填口を設けて袋状に縫着した布袋と、この布袋の洗剤充填口から袋内へ充填される粉洗剤と、上記洗剤充填口は、上記粉洗剤を充填後、縫着される洗剤入りパフ」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点5-1 本件請求項5に係る考案においては、粉洗剤と、その布袋に収納されるスポンジ製の弾性変形部材とを備えているのに対し、甲第1号証に記載された考案2では、粉洗剤だけを備えている点。 相違点5-2 相違点5-1に関連して、本件請求項5に係る考案においては、長さ30?60mmの洗剤充填口を設けて円形袋状に縫着した直径70?90mmの布袋であり、厚さ4?6mm、直径40?80mmの円板状のスポンジ製の弾性変形部材であるのに対し、甲第1号証に記載された考案2では、このような構成を有しない点。 相違点5-3 相違点5-1及び5-2に関連して、本件請求項5に係る考案においては、洗剤充填口は、粉洗剤および弾性変形部材を充填後、縫着されるのに対し、甲第1号証に記載された考案2では、弾性変形部材を有しないことから、洗剤充填口は、粉洗剤を充填後、縫着される点。 2 相違点に対する検討 相違点5-1について検討すると、甲第2号証において、「絹製の布からなる小袋と、この小袋内に収納されるスポンジとを備えた人体用清浄具」が、甲第3号証において、「石鹸のまわりにスポンジを取りまき、更に袋状の布を覆いかぶせたもの」がそれぞれ記載され、布袋内にスポンジを収納する点が開示されており、そして、甲第1号証は顔や体を洗うためのパフに関するものであり、甲第2号証は人体用清浄具であり、甲第3号証は湯につけると泡の出るスポンジであり、何れも、本件考案の請求項5に係る考案における洗剤入りパフとは、技術的に関連性が強い点をも考慮すると、甲第1号証における洗剤入りパフにおいて、その布袋内に粉洗剤とスポンジ製の弾性変形部材とを備えるようなことは、特に両者の構成の組み合わせを阻害する要因もなく、格別の困難性を伴うことなく、きわめて容易になし得た程度のことである。 相違点5-2について検討すると、その布袋の形状、大きさ、及びその洗剤充填口の長さを限定したり、スポンジの形状、厚さ及び大きさを限定するようなことは、この種の洗剤入りパフにおいて、手で持った場合の扱い良さ等の観点からすれば、当業者が試行錯誤的に求められる設計的事項に過ぎず、このようなことは当業者が必要に応じてきわめて容易になし得た程度のことである。 又、相違点5-3について検討すると、布袋内に粉洗剤とスポンジ製の弾性変形部材とを備える構成とするならば、その洗剤充填口は、粉洗剤および弾性変形部材を充填後、縫着される構成を採用することは、当業者であればきわめて容易に想到し得た程度のことである。 そして、全体として、本件考案の請求項5に係る考案における効果の点においても、甲第1?3号証に記載された事項から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別なものとはいえない。 結局、本件請求項5に係る考案は、甲第1?3号証に記載されたものに基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。 七 本件請求項6に係る考案と、甲各号証に記載されたものとの対比、検討 請求項6に係る考案は、請求項5に係る考案を引用し、請求項5に係る考案における粉洗剤の成分についてさらに限定を加えたものである。 本件請求項6に係る考案と甲第1号証に記載された考案3とを対比すると、両者は、「絹糸からなる2枚の絹織布を、縫着部の一部に洗剤充填口を設けて袋状に縫着した布袋と、この布袋の洗剤充填口から袋内へ充填される粉洗剤と、その粉洗剤の成分中には、石けん素地60?80重量%と、タルク5?20重量%と、それぞれ0.1重量%以下のパパイヤ酵素および脱脂粉乳を含んでおり、上記洗剤充填口は、上記粉洗剤を充填後、縫着される洗剤入りパフ」である点で一致し、さきに検討した相違点5-1?相違点5-3において相違する。 これらの相違点に対する検討は、さきの「六 2」のとおりである。 結局、本件請求項6に係る考案は、甲第1?3号証に記載されたものに基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。 第五 むすび 以上のとおりであるから、本件請求項1ないし請求項6に係る考案の実用新案登録は、実用新案法37条1項2号により、無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2000-03-16 |
結審通知日 | 2000-03-31 |
審決日 | 2000-04-11 |
出願番号 | 実願平9-8796 |
審決分類 |
U
1
111・
121-
Z
(A47K)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
幸長 保次郎 |
特許庁審判官 |
宮崎 恭 小野 忠悦 |
登録日 | 1998-02-18 |
登録番号 | 実用新案登録第3048155号(U3048155) |
考案の名称 | 洗剤入りパフ |
代理人 | 衞藤 彰 |
代理人 | 安倍 逸郎 |