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審決分類 審判 全部申し立て   E04H
管理番号 1025113
異議申立番号 異議1999-72073  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-03-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-05-26 
確定日 2000-08-16 
異議申立件数
事件の表示 登録第2590251号「面状構造物の取付構造」の実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2590251号の実用新案登録を取り消す。
理由 1.経緯
本件実用新案登録第2590251号は、平成4年10月30日に出願され(実願平4-81376号)、平成10年12月4日に実用新案登録され、平成11年5月26日に三協アルミニウム工業株式会社及び株式会社三昌より実用新案登録異議申立がされ、平成11年10月26日付の当審の取消理由通知に対してその指定期間内である平成12年1月17日付で実用新案権者より実用新案登録異議意見書とともに訂正請求書が提出され、これに対し平成12年3月23日付で当審において訂正拒絶理由通知がだされ、その指定期間内である平成12年6月5日付で実用新案権者より意見書とともに平成12年1月17日付の訂正請求書の訂正事項を補正する手続補正書が提出された。

2.平成12年6月5日付手続補正書について
上記手続補正書は、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、平成12年1月17日付の訂正請求書で訂正した実用新案登録請求の範囲の請求項1の
「間隔を隔てて設けられた複数本の支柱に固定された上部支持具と下部支持具とにより挟持された面状構造物における上記各支柱の下端部が、通路外壁などの壁体の上端面上に立設された支持体に嵌合されて保持されていると共に、上記壁体に固定された横架材に係止されるカバー体の開口が上記支持体に嵌められかつこのカバー体によって上記壁体の上端面と上記支持体の基端部とが覆い隠されていることを特徴とする面状構造物の取付構造。」を、
「間隔を隔てて設けられた複数本の支柱に固定された上部支持具と下部支持具とにより挟持された面状構造物における上記各支柱の下端部が、通路外壁などの壁体の上端面上に立設された支持体に嵌合されて保持されていると共に、上記壁体の上端面に間隔を隔てて取り付けられた複数の台座を介して固定された横架材に係止されるカバー体の開口が上記支持体に嵌められかつこのカバー体によって上記壁体の上端面と上記支持体の基端部とが覆い隠されていることを特徴とする面状構造物の取付構造。」と補正することを補正事項の一部とするものである。
しかしながら、上記のように実用新案登録請求の範囲を補正することは、訂正請求書における訂正事項の削除や軽微な瑕疵の補正にとどまらず、実用新案登録請求の範囲の訂正事項を変更するものであり、訂正請求書の要旨を変更するものである。
したがって、平成12年6月5日付手続補正書は、訂正請求書の要旨を変更するものであって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第2条で読み替えられる改正前の実用新案法第41条で準用する特許法第131条第2項の規定を満たさないから、適法なものとは認められない。

3.本件訂正考案について
3-1 上記のように平成12年6月5日付手続補正書は適法なものではないので、平成12年1月17日付の訂正請求書により訂正された実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された考案(以下、請求項1に記載された考案を本件訂正考案という。)について検討する。
3-2 本件訂正考案については、平成12年3月23日付で当審において訂正拒絶理由通知がだされ、その内容は下記のとおりである。

「1.平成12年1月17日に請求人(実用新案権者)が行った、願書に添付した明細書の訂正の請求(以下、本件訂正請求という)は、実用新案登録請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、訂正請求書の「6.請求の理由」の「(2)訂正の内容」に記載したとおりである。
このうち請求項1についての訂正の内容は次のとおりである。
「(a)請求項1を次のとおり訂正する。
【請求項1】間隔を隔てて設けられた複数本の支柱に固定された上部支持具と下部支持具とにより挟持された面状構造物における上記各支柱の下端部が、通路外壁などの壁体の上端面上に立設された支持体に嵌合されて保持されていると共に、上記壁体に固定された横架材に係止されるカバー体の開口が上記支持体に嵌められかつこのカバー体によって上記壁体の上端面と上記支持体の基端部とが覆い隠されていることを特徴とする面状構造物の取付構造。」
2.本件訂正請求の適否について
本件登録実用新案は、平成4年10月30日の出願に係り、平成10年12月4日に登録されたものであり、本件訂正請求は、平成6年法律第116号付則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成5年法律第26号付則第4条で読み替える旧実用新案法第40条第2項に基づく訂正の請求であることから、旧実用新案法第40条第2項ただし書きの要件と、平成5年法律第26号付則第4条で読み替える旧実用新案法第40条第5項で準用する同法第39条第2項から第4項の要件を満たすことを要するので、まず、上記の請求項1に係る訂正について検討する。
(1)旧実用新案法第40条第2項ただし書きの要件(目的)について
請求項1の訂正は、面状構造物について、「間隔を隔てて設けられた複数本の支柱を具備する面状構造物」という記載を、「間隔を隔てて設けられた複数本の支柱に固定された上部支持具と下部支持具とにより挟持された面状構造物」に訂正するものであり、面状構造物の当該構成は願書に添付した明細書及び図面に記載された事項であって、また、実用新案登録請求の範囲を減縮することを目的とするものと認められる。
(2)旧実用新案法第39条第2項の要件(実用新案登録請求の範囲を拡張、変更するものであってはならない)について
上記の請求項1の訂正は、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものとも認められない。
(3)旧実用新案法第39条第3項の要件(いわゆる独立実用新案登録要件)について
訂正後の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された考案(以下、本件訂正考案という)が、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものであるか否かを検討する。
(3-1)本件出願前に頒布されたと認められる刊行物1(異議申立書において証拠として提出された甲第1号証:実願昭59-151172号(実開昭61-67327号)のマイクロフィルム)には、手摺用支柱の支持構造に関し、異議申立書3頁21行ないし4頁9行に記載されたとおりの事項が記載されていると認められる。
(3-2)刊行物1に記載された「パラペット」、「支持杆」及び「笠木」は、本件訂正考案の「壁体」、「支持体」及び「カバー体」にそれぞれ相当し、また、本件訂正考案において、構成要件の一部である「横架材」は、複数の物に横方向に掛け渡され、その上部にカバー体が係止されるような材料を意味すると考えられることから、本件訂正考案と刊行物1に記載されたものとは、間隔を隔てて設けられた複数本の支柱に固定された構造物における上記各支柱の下端部が、通路外壁などの壁体の上端面上に立設された支持体に嵌合されて保持されていると共に、上記壁体に固定された物に係止されるカバー体の開口が上記支持体に嵌められかつこのカバー体によって上記壁体の上端面と上記支持体の基端部とが覆い隠されていることを特徴とする構造物の取付構造において一致し、次の点で相違していると認められる。
相違点1:本件訂正考案の支柱には、支柱に固定された上部支持具と下部支持具とにより挟持された面状構造物が取り付けられているのに対し、刊行物1に記載されたものの支柱には手摺が取り付けられているものの面状構造物は取り付けられていない点。
相違点2:本件訂正考案のカバー体は、横架材に係止されているのに対し、刊行物1に記載されたものは、笠木(本件訂正考案のカバー体に相当)が笠木受具に係止されている点。
(3-3)相違点1について
本件訂正考案のように、支柱に固定された上部支持具と下部支持具とにより面状構造物を挟持して取り付けるようにすることは、例えば、実願昭56-53779号(実開昭57-167159号)のマイクロフィルムや、実願昭63-76013号(実開平2-2923号)のマイクロフィルムにも記載されているように、面状構造物を取り付けるに当たり本件訂正考案の出願前に周知の技術的事項にすぎず、刊行物1に記載された手摺に換えて、該周知の面状構造物とすることは当業者がきわめて容易に想到できたことである。
(3-4)相違点2について
カバー体である笠木を係止して取り付けるに当たり、本件訂正考案の相違点2のように、複数の部材に横方向に掛け渡された材料を用い、その上部にカバー体を係止させて取り付けるようにすることは、例えば特開昭52-58223号公報(特に第6図に関して、公報2頁右下欄8行ないし3頁左上欄5行には、左右の支柱カバー5、5の上に横架した上枠10が取り付けられ、該上枠10上に笠木17を取り付ることが記載されており、該上枠10及び笠木17が本件訂正考案の横架材及びカバー体に相当する)にも記載されているように周知の技術的事項であって、このような周知の技術的事項を、刊行物1に記載されたものの笠木受具に適用して本件訂正考案の相違点2に係る構成とすることは、当業者がきわめて容易に想到できたことである。
(3-5)したがって、本件訂正考案は、実用新案法第3条2項の規定に該当するので、出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである。
3.まとめ
以上のように、本件訂正請求による請求項1の訂正は、平成5年法律第26号付則第4条で読み替える旧実用新案法第40条第5項で準用する同法第39条第3項のいわゆる独立実用新案登録要件を満たさないものであるから、他の訂正の内容について検討するまでもなく、本件訂正請求は適法な請求とは認められない。」
3-3 そして、上記の訂正拒絶理由通知における判断は適正なものであって、平成12年1月17日付でなされた訂正請求は、適法なものとは認められない。

4.本件考案について
4-1 上記のように平成12年1月17日付訂正請求書は適法なものではないので、実用新案登録時の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された考案(以下、請求項1に記載された考案を本件考案という。)について検討する。
4-2 本件考案の認定
本件考案は次のとおりである。
「間隔を隔てて設けられた複数本の支柱を具備する面状構造物における上記各支柱の下端部が、通路外壁などの壁体の上端面上に立設された支持体に嵌合されて保持されていると共に、上記壁体に固定された横架材に係止されるカバー体の開口が上記支持体に嵌められかつこのカバー体によって上記壁体の上端面と上記支持体の基端部とが覆い隠されていることを特徴とする面状構造物の取付構造。」
4-3 本件考案については、平成11年10月26日付の取消理由通知書において、実用新案法第3条第2項に該当し実用新案登録を受けることができない旨通知しており、その理由は上記訂正拒絶理由通知書における理由と相違点1に関する記載を除いて同じである。
上記取消理由通知書において、相違点1に関しては次のように記載している。
「相違点1:本件考案の支柱は面状構造物を取り付けるものであるのに対し、刊行物1に記載されたものの支柱は手摺を取り付けるようになっている点。」、「(2)相違点1について 本件考案のように支柱に面状構造物を取り付けるようにすることは、本件考案出願前周知の事項にすぎず、この点に技術的意義があるとは考えられない。」。
そして、訂正拒絶理由通知書で例示したように、支柱に面状構造物を取り付けるようにすることは、例えば実願昭56-53779号(実開昭57-167159号)のマイクロフィルムや、実願昭63-76013号(実開平2-2923号)のマイクロフィルムにも記載されているように、本件考案の出願前に周知の技術的事項にすぎず、刊行物1に記載された手摺に換えて、該周知の面状構造物とすることは当業者がきわめて容易に想到できたことであって、この点に技術的意義があるとは考えられないとした判断は適正であるから、本件考案は、実用新案法第3条第2項に該当し、本件実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものである。

5.まとめ
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
異議決定日 2000-06-26 
出願番号 実願平4-81376 
審決分類 U 1 651・ 121- ZB (E04H)
最終処分 取消    
前審関与審査官 新井 夕起子  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 小野 忠悦
宮崎 恭
登録日 1998-12-04 
登録番号 実用新案登録第2590251号(U2590251) 
権利者 タキロン株式会社
大阪府大阪市中央区安土町2丁目3番13号
考案の名称 面状構造物の取付構造  
代理人 土井 育郎  
代理人 土井 育郎  

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