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審決分類 審判 一部申し立て   B65H
審判 一部申し立て   B65H
管理番号 1028337
異議申立番号 異議1999-70668  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-02-08 
確定日 2000-08-30 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 登録第2577814号「プリンタの紙送り機構」の実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 登録第2577814号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.手続きの経緯
実用新案登録第2577814号は、平成1年8月28日に実用新案登録出願され、平成10年5月15日にその考案について設定登録がなされ、その後、その実用新案登録に対して異議申立人久米和子より実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年1月18日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否についての判断
2-1.訂正の内容
上記訂正請求における訂正の内容は、次のとおりである。
願書に添付された明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2に係る記載
「1) プラテンとこのプラテンに対向配置される印字ヘッドとを挟んで用紙の搬入側および搬出側にそれぞれ紙送りローラを回転自在に配設し、これら各紙送りローラにそれぞれ回転伝達機構を介して駆動モータを接続するとともに、前記搬出側紙送りローラを前記搬入側紙送りローラよりわずかに速い速度で回転駆動させるようにしてなるプリンタの紙送り機構において、前記搬出側紙送りローラの回転軸に対して回転の負荷となる摩擦力を常に付与する摩擦部材を該回転軸に配設したことを特徴とするプリンタの紙送り機構。
2) プラテンとこのプラテンに対向配置される印字ヘッドとを挟んで用紙の搬入側および搬出側にそれぞれ紙送りローラを回転自在に配設し、これら各紙送りローラにそれぞれ回転伝達ギヤを介して駆動モータを接続するとともに、前記搬出側紙送りローラを前記搬入側紙送りローラよりわずかに速い速度で回転駆動させるようにしてなるプリンタの紙送り機構において、前記搬出側紙送りローラへの回転伝達ギヤにバックラッシュ除去機構を設けたことを特徴とするプリンタの紙送り機構。」
を、
「1) プラテンとこのプラテンに対向配置される印字ヘッドとを挟んで用紙の搬入側および搬出側にそれぞれ紙送りローラを回転自在に配設し、これら各紙送りローラにそれぞれ回転伝達機構を介して駆動モータを接続するとともに、前記搬出側紙送りローラを前記搬入側紙送りローラよりわずかに速い速度で回転駆動させるようにしてなるプリンタの紙送り機構において、前記搬出側紙送りローラの回転軸をフレームの軸受に回転自在に保持させるとともに、この回転軸の前記フレームの外側に前記駆動モータの回転力が伝達される搬出側紙送り駆動ギヤを同軸状に固着し、前記フレームの外面と前記搬出側紙送り駆動ギヤとの間に前記回転軸に対して回転の負荷となる摩擦力を付与する摩擦部材を介設し、排出側紙送り駆動ギヤを前記摩擦部材を介して前記フレームに圧接させる方向に付勢させて前記回転軸に対して前記摩擦部材の摩擦力を常に付与する付勢ばねを配設したことを特徴とするプリンタの紙送り機構。
2) プラテンとこのプラテンに対向配置される印字ヘッドとを挟んで用紙の搬入側および搬出側にそれぞれ紙送りローラを回転自在に配設し、これら各紙送りローラにそれぞれ回転伝達ギヤを介して駆動モータを接続するとともに、前記搬出側紙送りローラを前記搬入側紙送りローラよりわずかに速い速度で回転駆動させるようにしてなるプリンタの紙送り機構において、前記搬出側紙送りローラへの回転伝達ギヤにバックラッシュ除去機構を設けたことを特徴とするプリンタの紙送り機構。」
と訂正する。
2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正は、願書に添付された明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された「前記搬出側紙送りローラの回転軸に対して回転の負荷となる摩擦力を常に付与する摩擦部材を該回転軸に配設した」を、「前記搬出側紙送りローラの回転軸をフレームの軸受に回転自在に保持させるとともに、この回転軸の前記フレームの外側に前記駆動モータの回転力が伝達される搬出側紙送り駆動ギヤを同軸状に固着し、前記フレームの外面と前記搬出側紙送り駆動ギヤとの間に前記回転軸に対して回転の負荷となる摩擦力を付与する摩擦部材を介設し、排出側紙送り駆動ギヤを前記摩擦部材を介して前記フレームに圧接させる方向に付勢させて前記回転軸に対して前記摩擦部材の摩擦力を常に付与する付勢ばねを配設した」と訂正するものである。
そこで、この点について検討するに、願書に添付された明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された「前記搬出側紙送りローラの回転軸に対して回転の負荷となる摩擦力を常に付与する摩擦部材を該回転軸に配設した」という構成は、本件の出願当初の明細書又は図面には記載されておらず、その後の補正により加入された事項であるばかりでなく、それ自体明確であるとはいえないけれども、願書に添付された明細書には、実施例として一実施例と他の実施例が記載されており、それぞれが、実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案の実施例と請求項2に係る考案の実施例に相当するものと認められ、上記一実施例に関して、「第2図に示すように、本実施例においては、前記搬出側紙送りローラ8の回転軸18は、プリンタのフレーム19に取付けられた軸受け20に回転自在に保持されるものであり、前記搬出側紙送りローラ8の回転軸18の中途部には、例えば、ワッシャ等のストッパ21が取付けられている。前記回転軸18の前記フレーム19の外側には、前記搬出側紙送り駆動ギヤ17が同軸状に固着されており、前記フレーム19の外面と前記搬出側紙送り駆動ギヤ17との間には、摩擦部材としてフェルト22が介設されている。さらに、前記軸受20と前記回転軸18のストッパ21との間には、搬出側紙送り駆動ギヤ17をフェルト22を介して前記フレーム19に圧接させる方向に付勢する付勢ばね23が配設されており、この付勢ばね23により排出側紙送り駆動ギヤ17をフェルト22に圧接させた場合に生じる摩擦力により、前記回転軸18,すなわち、前記搬出側紙送りローラ8に回転に対する負荷を与えて、前記搬出側紙送り駆動ローラ8に外力が加わった場合でも前記搬出側紙送りローラ8が容易に回転しないようになっている。」(願書に添付した明細書第11頁第14行?第12頁第15行)と記載されており、この記載に対応する考案の構成と解するのが相当と認められるから、上記訂正は、明瞭でない記載の釈明に該当するとともに、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当する。
そして、上記訂正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
2-3.独立登録要件
(1)訂正明細書の請求項1に係る考案
上記平成12年1月18日付け訂正請求により訂正された訂正明細書の請求項1に係る考案は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(2)刊行物記載の考案
上記取消理由通知に引用した特開昭62-257871号公報(以下「刊行物1」という。)には、記録紙の排出装置に関して、次のように記載されている。
a.「プリンタで印字された記録済シートを排出する排出装置において、前記シートの両面に接触して送り出す互いに上下の関係をもって配された排紙ローラのうち、前記シートの非印字面と接触する排紙ローラの周速を前記プリンタで送られる紙送り速度より速めるよう構成したことを特徴とする記録紙の排出装置。」(特許請求の範囲)
b.「下側ローラ6の周速はその外径と上記歯車の減速比によって決まるが、その周速をプラテン1と紙送りローラ15で送られる送り速度より速く設定する。」(第2頁左下欄第7行?第10行)
同特開昭63-258340号公報(以下「刊行物2」という。)には、シート体搬送機構について次のように記載されている。
a.「夫々のローラ対を構成するローラはベアリング等を介して回転自在に支承されているため、特に、従動側の前記第2ローラが外部からの負荷変動等に影響され易い。例えば、被走査体がローラ対の間に臨入する際、並びに前記被走査体がこのローラ対から離脱する際に前記ローラ対には負荷変動が生じる。この場合、駆動側の第1ローラには回転駆動源が連結されているため、前記負荷変動に影響されることなく常に一定の回転速度を維持することが出来る。一方、従動側の第2ローラではベアリングを介して円滑に回転し得るよう構成されているため、前記のように負荷変動が生ずるとこの第2ローラに回転むらが惹起する虞がある。従って、第1および第2ローラを含む夫々のローラ対で副走査方向に搬送される被走査体が前記第2ローラの回転むらにより前記副走査方向に一定の速度で搬送されず、前記被走査体の画像読み取りまたは走査記録作業が不正確なものとなる懸念が指摘される。」(第3頁右上欄第17行?同頁左下欄第16行)
b.「第1ローラ対22と第2ローラ対24とが同期して回転駆動されるため、蓄積性蛍光体シートAは前記第1ローラ対22および第2ローラ対24に挟持されて矢印B方向に移送されると共に、読取部64の駆動作用下に走査読取作業が行われる。」(第5頁右上欄第13行?同第18行)
c.「第2の実施態様に係るシート体搬送機構82では、特に、従動ローラ44の回転軸44aに負荷手段として円板状のゴム部材84を軸着し、このゴム部材84をベアリング48に摺接している。
従って、このような構成において、第2図に示す回転駆動源38の駆動作用下にベルト52を介して第2プーリ50を回転させれば、この第2プーリ50を軸着した回転軸44aが所定方向に回転する。その際、第3図に示すように、回転軸44aと一体的に回転するゴム部材84がベアリング48に摺接しているため、前記回転軸44aには所定の回転負荷が付与されることになる。」(第6頁左上欄第12行?同右上欄第4行)
(3)対比、判断
訂正明細書の請求項1に係る考案と刊行物1に記載された考案を対比すると、刊行物1記載の考案における「紙送りローラ15」は訂正明細書の請求項1に係る考案における「搬入側紙送りローラ」に相当し、刊行物1記載の考案における「下側排紙ローラ6」は訂正明細書の請求項1に係る考案における「搬出側紙送りローラ」に相当するから、両者は「プラテンとこのプラテンに対向配置される印字ヘッドとを挟んで用紙の搬入側および搬出側にそれぞれ紙送りローラを回転自在に配設し、これら各紙送りローラにそれぞれ回転伝達機構を介して駆動モータを接続するとともに、前記搬出側紙送りローラを前記搬入側紙送りローラよりわずかに速い速度で回転駆動させるようにしてなるプリンタの紙送り機構」である点において一致し、次の点において相違するものと認められる。
イ.訂正明細書の請求項1に係る考案においては、搬出側紙送りローラの回転軸をフレームの軸受に回転自在に保持させるとともに、この回転軸の前記フレームの外側に前記駆動モータの回転力が伝達される搬出側紙送り駆動ギヤを同軸状に固着し、前記フレームの外面と前記搬出側紙送り駆動ギヤとの間に前記回転軸に対して回転の負荷となる摩擦力を付与する摩擦部材を介設し、排出側紙送り駆動ギヤを前記摩擦部材を介して前記フレームに圧接させる方向に付勢させて前記回転軸に対して前記摩擦部材の摩擦力を常に付与する付勢ばねを配設したのに対して、刊行物1に記載された考案においては回転軸に対して回転の負荷となる摩擦力を付与する摩擦部材に相当するものがない点。
そこで、この相違点について検討するに、刊行物2に記載されている、従動ローラ44の回転軸44aに負荷手段として軸着されている円板状のゴム部材84は、ベアリング48に摺接して回転軸44aに所定の回転負荷を付与し、従動ローラ44が外部からの負荷変動に影響されることなく常に一定の回転速度で回転できるようにしたものであるが、この従動ローラ44は回転駆動源38よりプーリとベルトにより駆動伝達されるものであり、訂正明細書の請求項1に係る考案におけるように、搬出側紙送り駆動ギアにより駆動されるものでもないし、従動側の第2ローラに負荷変動が生じるのは、このローラがベアリングを介して円滑に回転し得るように構成されているためであり、訂正明細書の請求項1に係る考案におけるようにギアのバックラッシュによるものではない。そして、外部からの負荷変動に影響されることなく常に一定の回転速度で回転できるようにするための構成も、ベアリング48にゴム部材84を摺接するもので、訂正明細書の請求項1に係る考案におけるものと明らかに相違する。
したがって、刊行物1に記載された考案に刊行物2に記載された考案を適用しても訂正明細書の請求項1に係る考案にはならず、訂正明細書の請求項1に係る考案は、刊行物1及び2に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものとすることはできない。
よって、訂正明細書の請求項1に係る考案は実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものである。
(4)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、平成6年法律第116号附則第9条第2項の規定により準用される特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2?4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.実用新案登録異議申立てについて
(1)本件の請求項1に係る考案
本件の請求項1に係る考案(以下、「本件考案1」という。)は、上記のとおり訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(2)申立ての理由の概要
申立人久米和子は、申立ての理由の1として、本件出願当初の明細書・図面には「フレーム19の外面と前記搬出側紙送り駆動ギア17との間には、摩擦部材としてのフェルト22が介設されている」構成の記載はあるものの、「摩擦部材を回転軸に配設した」という構成の記載はなく、またこのことが自明の事項とも認められないから、実用新案登録請求の範囲の記載と考案の詳細な説明もしくは図面の記載と対応しないので、本件の請求項1に係る実用新案登録は、その明細書が実用新案法第5条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである旨主張し、また、申立ての理由2として、特開昭63-258340号公報を甲第1号証として提出し、本件考案1は、甲第1号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであるから、本件の請求項1に係る実用新案登録は取り消けされるべきものである旨主張している。
(3)判断
本件の請求項1に係る実用新案登録は、明細書の記載が上記訂正により明確となったから、実用新案法第5条第4項及び第5項に規定する要件を満たす実用新案登録出願に対してなされたものである。また、本件考案1は、上記2-3.(3)で示したように、取消理由通知で引用した刊行物1に記載された考案と刊行物2(申立人が甲第1号証として提出した刊行物と同一)に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることもできないものである。
(4)むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議の申立ての理由および証拠によっては、本件の請求項1に係る実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1に係る実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
プリンタの紙送り機構
(57)【実用新案登録請求の範囲】
1) プラテンとこのプラテンに対向配置される印字ヘッドとを挟んで用紙の搬入側および搬出側にそれぞれ紙送りローラを回転自在に配設し、これら各紙送りローラにそれぞれ回転伝達機構を介して駆動モータを接続するとともに、前記搬出側紙送りローラを前記搬入側紙送りローラよりわずかに速い速度で回転駆動させるようにしてなるプリンタの紙送り機構において、前記搬出側紙送りローラの回転軸をフレームの軸受に回転自在に保持させるとともに、この回転軸の前記フレームの外側に前記駆動モータの回転力が伝達される搬出側紙送り駆動ギアを同軸状に固着し、前記フレームの外面と前記搬出側紙送り駆動ギアとの間に前記回転軸に対して回転の負荷となる摩擦力を付与する摩擦部材を介設し、排出側紙送り駆動ギアを前記摩擦部材を介して前記フレームに圧接させる方向に付勢させて前記回転軸に対して前記摩擦部材の摩擦力を常に付与する付勢ばねを配設したことを特徴とするプリンタの紙送り機構。
2) プラテンとこのプラテンに対向配置される印字ヘッドとを挟んで用紙の搬入側および搬出側にそれぞれ紙送りローラを回転自在に配設し、これら各紙送りローラにそれぞれ回転伝達ギアを介して駆動モータを接続するとともに、前記搬出側紙送りローラを前記搬入側紙送りローラよりわずかに速い速度で回転駆動させるようにしてなるプリンタの紙送り機構において、前記搬出側紙送りローラヘの回転伝達ギアにバックラッシュ除去機構を設けたことを特徴とするプリンタの紙送り機構。
【考案の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本考案はプリンタの紙送り機構に係り、特にプラテンおよび印字ヘッドの搬入側および搬出側にそれぞれ紙送りローラを有し、印字部に対して用紙を直線的に搬送させるプリンタの紙送り機構に関する。
〔従来の技術〕
一般に、プラテンおよびこのプラテンに対向するようにキャリッジに搭載された印字ヘッドの搬入側および搬出側にそれぞれ紙送りローラを配設し、これら各紙送りローラを回転駆動させることにより、所望の用紙を前記プラテンと印字ヘッドとの間に直線的に搬送させるプリンタの紙送り機構が多く用いられている。
第5図は従来のプリンタの紙送り機構を示したもので、平板状のプラテン1を配設し、このプラテン1の近傍には、キャリッジ2が前記プラテン1の長手方向(第5図紙面垂直方向)に沿って往復動自在に配設されている。このキャリッジ2の上面には、前記プラテン1に対向するように印字ヘッド3が搭載されており、前記キャリッジ2の上面には、前記プラテン1と印字ヘッド3との間に図示しないインクリボンを巻取りながら案内するリボンカセット4が装着されている。
また、前記プラテン1の上方には、用紙5を前記プラテン1と印字ヘッド3との間に搬送する搬入側紙送りローラ6が回転自在に配設されており、この搬入側紙送りローラ6には、前記用紙5を挟持するための搬入側補助ローラ7が圧接されている。前記プラテン1の下方には、印字後の用紙5を排出させる搬出側紙送りローラ8が回転自在に配設されており、この搬出側紙送りローラ8には、前記用紙5を挟持するための搬出側補助ローラ9が前記搬入側補助ローラ7の圧接力より強い圧接力で圧接されている。
また、前記搬出側紙送りローラ8および搬出側紙送りローラ8を回転駆動させるための駆動モータ10を配設し、この駆動モータ10の出力ピニオン11には、2段の搬入側伝達ギア12およびアイドルギア13を介して搬入側紙送りローラ6に固着された搬入側紙送り駆動ギア14に噛合されている。さらに、前記駆動モータ10の出力ピニオン11には、2段の搬出側伝達ギア15およびアイドルギア16を介して搬出側紙送りローラ8に固着された搬出側紙送り駆動ギア17に噛合されている。
前記従来の紙送り機構においては、前記駆動モータ10を駆動して各伝達ギア12,15およびアイドルギア13,16を介して搬入側紙送りローラ6および搬出側紙送りローラ8を回転駆動させ、前記搬入側紙送りローラ6と搬入側補助ローラ7との間に用紙5を挿入することにより、この用紙5を前記プラテン1と印字ヘッド3との間に搬送し、前記用紙5の下端部を前記搬出側紙送りローラ8と搬出側補助ローラ9との間に挿入させる。この状態で、前記キャリッジ2をプラテン1に沿って移動させるとともに、前記リボンカセット4のインクリボンを巻取りながら、前記印字ヘッド3を所望の印字信号に基づいて駆動させることにより、前記用紙5に所望の印字を行なうようになされている。この場合、用紙5の先端が搬出側紙送りローラ8と搬出側補助ローラ9へ達しない時には、搬入側紙送りローラ6および搬入側補助ローラ7によって用紙5を送りながら用紙先端部への印字が行なわれる。また、用紙5の後端が搬入側紙送りローラ6および搬入側補助ローラ7から外れた時には、搬出側紙送りローラ8および搬出側補助ローラ9によって用紙5を送りながら、用紙後端部への印字が行なわれる。
このとき、前記搬出側紙送りローラ8の方が搬入側紙送りローラ6よりも、わずかに速い速度で駆動するようにしているので、第6図に示すように、前記用紙5に対して、搬入側紙送りローラ6の引張力F1および搬出側紙送りローラ8の引張力F2がそれぞれ加えられており、前記搬入側紙送りローラ6と搬入側補助ローラ7との圧接力が弱いため、前記搬入側紙送りローラ6および搬入側補助ローラ7に対して用紙5がスリップして搬送されることになり、前記用紙5に対する前記引張力F1,F2は、前記用紙5の搬送に影響しない程度に互いに打ち消し合っている。これにより、前記用紙5には、一定の張力が加えられ、用紙5のたるみ等による印字品質の低下を防止することができるようになっている。
〔考案が解決しようとする課題〕
しかし、前記従来のプリンタの紙送り機構においては、前記搬出側紙送りローラ8を搬入側紙送りローラ6よりもわずかに速い速度で駆動させるようにしているので、前記用紙5の印字が進んで、前記用紙5の後端部が搬入側紙送りローラ6および搬入側補助ローラ7から外れた瞬間に、前記搬入側紙送りローラ6による引張力F1が0になり、前記搬出側紙送りローラ8の搬出側紙送り駆動ギア17のバックラッシュ分だけ前記搬出側紙送りローラ8が余分に回転してしまい、前記用紙5の搬送ピッチが乱れ、適正な印字を行なうことができず、印字品質の低下を招いてしまうという問題を有している。このことは、前記用紙5が厚紙の場合に特に顕著に現れるものである。
本考案はこれらの点に鑑みてなされたものであり、用紙の端部が搬入側紙送りローラから外れた場合でも、用紙の搬送ピッチを一定にして適正な印字を行なうことができ、印字品質を向上させることのできるプリンタの紙送り機構を提供することを目的とするものである。
〔課題を解決するための手段〕
前記目的を達成するため第1の考案は、プラテンとこのプラテンに対向配置される印字ヘッドとを挟んで用紙の搬入側および搬出側にそれぞれ紙送りローラを回転自在に配設し、これら各紙送りローラにそれぞれ回転伝達機構を介して駆動モータを接続するとともに、前記搬出側紙送りローラを前記搬入側紙送りローラよりわずかに速い速度で回転駆動させるようにしてなるプリンタの紙送り機構において、前記搬出側紙送りローラの回転軸をフレームの軸受に回転自在に保持させるとともに、この回転軸の前記フレームの外側に前記駆動モータの回転力が伝達される搬出側紙送り駆動ギアを同軸状に固着し、前記フレームの外面と前記搬出側紙送り駆動ギアとの間に前記回転軸に対して回転の負荷となる摩擦力を付与する摩擦部材を介設し、排出側紙送り駆動ギアを前記摩擦部材を介して前記フレームに圧接させる方向に付勢させて前記回転軸に対して前記摩擦部材の摩擦力を常に付与する付勢ばねを配設したことをその特徴とするものであり、さらに、第2の考案は、プラテンとこのプラテンに対向配置される印字ヘッドとを挟んで用紙の搬入側および搬出側にそれぞれ紙送りローラを回転自在に配設し、これら各紙送りローラにそれぞれ回転伝達ギアを介して駆動モータを接続するとともに、前記搬出側紙送りローラを前記搬入側紙送りローラよりわずかに速い速度で回転駆動させるようにしてなるプリンタの紙送り機構において、前記搬出側紙送りローラヘの回転伝達ギアにバックラッシュ除去機構を設けたことをその特徴とするものである。
〔作用〕
請求項第1項記載の本考案によれば、駆動モータを駆動し、回転伝達機構を介して搬出側紙送りローラを搬入側紙送りローラよりわずかに速い速度で回転させることにより、用紙に一定の張力を付与しながら、前記プラテンと印字ヘッドとの間に搬送するものである。そして、用紙の後端部が搬入側紙送りローラから外れた瞬間に、用紙に対する張力がなくなり、前記搬出側紙送りローラは、瞬間的に回転しようとするが、搬出側紙送りローラの回転部分に配設された摩擦部材の摩擦力により前記搬出側紙送りローラに負荷が加えられているので、前記搬出側紙送りローラが不必要に回転して用紙の搬送ピッチが変化することを確実に防止することができるものである。
また、請求項第2項の本考案によれば、搬出側紙送りローラヘの回転伝達ギアに、互いに周方向反対方向に付勢される2枚の薄肉ギアを接合して形成したようなバックラッシュ除去機構を設けているので、各薄肉ギアの歯が噛合されるギアに対してバックラッシュが除去された状態で噛合されることになり、前記用紙に対する張力がなくなった場合に、前記搬出側紙送りローラが不必要に回転することを確実に防止することができるものである。
〔実施例〕
以下、本考案の実施例を第1図から第4図を参照し、第5図および第6図と同一部分には同一符号を付して説明する。
第1図は本考案の一実施例を示したもので、平板状のプラテン1の近傍には、上面に印字ヘッド3が搭載されたキャリッジ2が前記プラテン1の長手方向(第1図紙面垂直方向)に沿って往復動自在に配設されており、このキャリッジ2の上面には、前記プラテン1と印字ヘッド3との間に図示しないインクリボンを案内するリボンカセット4が装着されている。
また、前記プラテン1の上方には、用紙5を前記プラテン1と印字ヘッド3との間に搬送する搬入側紙送りローラ6およびこの搬入側紙送りローラ6に圧接された搬入側補助ローラ7がそれぞれ回転自在に配設されており、前記プラテン1の下方には、印字後の用紙5を排出させる搬出側紙送りローラ8および前記搬入側補助ローラ7の圧接力より強い圧接力で圧接された搬出側補助ローラ9がそれぞれ回転自在に配設されている。
さらに、前記搬入側紙送りローラ6および搬出側紙送りローラ8にそれぞれ固着された搬入側紙送り駆動ギア14および搬出側紙送り駆動ギア17は、それぞれアイドルギア13,16および2段の搬入側伝達ギア12、搬出側伝達ギア15を介して駆動モータ10の出力ピニオン11に接続されている。そして、前記搬出側紙送りローラ8が前記搬入側紙送りローラ6よりもわずかに速い速度で回転駆動されるように、各ギア比が設定されている。
また、第2図に示すように、本実施例においては、前記搬出側紙送りローラ8の回転軸18は、プリンタのフレーム19に取付けられた軸受20に回転自在に保持されるものであり、前記搬出側紙送りローラ8の回転軸18の中途部には、例えば、ワッシャ等のストッパ21が取付けられている。前記回転軸18の前記フレーム19の外側には、前記搬出側紙送り駆動ギア17が同軸状に固着されており、前記フレーム19の外面と前記搬出側紙送り駆動ギア17との間には、摩擦部材としてのフェルト22が介設されている。さらに、前記軸受20と前記回転軸18のストッパ21との間には、排出側紙送り駆動ギア17をフェルト22を介して前記フレーム19に圧接させる方向に付勢する付勢ばね23が配設されており、この付勢ばね23により排出側紙送り駆動ギア17をフェルト22に圧接させた場合に生じる摩擦力により、前記回転軸18、すなわち、前記搬出側紙送りローラ8に回転に対する負荷を与えて、前記搬出側紙送り駆動ローラ8に外力が加わった場合でも前記搬出側紙送りローラ8が容易に回転しないようになっている。
次に、本実施例の作用について説明する。
本実施例においては、前記駆動モータ10を駆動して各伝達ギア12,15およびアイドルギア13,16を介して搬入側紙送りローラ6および搬出側紙送りローラ8を回転駆動させることにより、前記用紙5を前記プラテン1と印字ヘッド3との間に搬送する。この状態で、前記キャリッジ2をプラテン1に沿って移動させるとともに、前記リボンカセット4のインクリボンを巻取りながら、前記印字ヘッド3を所望の印字信号に基づいて駆動させることにより、前記用紙5に所望の印字を行なうようになされている。このとき、前記搬入側紙送りローラ6と搬出側紙送りローラ8との回転速度が異なっているので、前記用紙5には、一定の張力が加えられ、用紙5のたるみ等による印字品質の低下を防止するようになっている。
また、用紙5の搬送が進んで、用紙5の後端部が搬入側紙送りローラ6および搬入側補助ローラ7から外れた瞬間に、前記用紙5に対する張力がなくなるので、前記搬出側紙送りローラ8は、搬出側紙送り駆動ギア17のバックラッシュ分回転しようとするが、本実施例においては、前記フェルト22の摩擦力により前記搬出側紙送りローラ8に負荷が加えられているので、前記搬出側紙送りローラ8が不必要に回転することがなく、用紙5の搬送ピッチが変化することを確実に防止することができる。
したがって、本実施例においては、用紙5が搬入側紙送りローラ6から外れた場合に、前記搬出側紙送りローラ8の不必要な回転を防止することができるので、用紙5の搬送ピッチが乱れることがなく、適正に印字を行なうことができ、印字品質を著しく向上させることができる。
また、第3図および第4図は本考案の他の実施例のバックラッシュ除去機構を示したもので、例えば搬出側紙送り駆動ギア17を2枚の同径の薄肉ギア24a,24bを同軸状にして接合することにより形成し、これら各薄肉ギア24a,24bの互いに対向する面のそれぞれ対応する位置には、円弧状のばね収容溝25,25が形成されている。これら各ばね収容溝25,25の互いに反対方向端部には、係止突起26,26がそれぞれ形成されており、前記ばね収容溝25の内部には、両端部が前記各係止突起26に係止され、収縮する方向に付勢されるばね27が収容されている。そして、この状態で、各薄肉ギア24a,24bを接合させることにより、搬出側紙送りギア17が形成されるものであり、各薄肉ギア24a,24bは、前記ばね27の付勢力により互いに周方向の逆方向に付勢されるようになっている。
本実施例においては、前記構成の搬出側紙送りギア17をアイドルギア16に噛合させることにより、各薄肉ギア24a,24bの歯が前記アイドルギア16の歯を互いに逆方向から挟持することになるので、前記搬出側紙送り駆動ギア17は、アイドルギア16に対してバックラッシュが除去された状態で噛合されることになる。そのため、用紙が搬入側紙送りローラ6から外れて、前記用紙に対する張力がなくなった場合に、前記搬出側紙送り駆動ギア17にバックラッシュがないので、前記搬出側紙送りローラ8が不必要に回転することを確実に防止することができる。
したがって、本実施例においても前記実施例と同様に、用紙の搬送ピッチが乱れることがなく、適正に印字を行なうことができ、印字品質を著しく向上させることが可能となる。
なお、本考案は前記実施例に限定されるものではなく、必要に応じて種々変更することができるものである。
〔考案の効果〕
以上述べたように本考案に係るプリンタの紙送り機構は、搬出側紙送りローラ部分に配設された摩擦部材あるいはバックラッシュ除去機構により、用紙に対する張力がなくなった場合に、前記搬出側紙送りローラが不必要に回転することを確実に防止することができる。その結果、用紙の搬送ピッチが乱れることがなく、適正に印字を行なうことができ、印字品質を著しく向上させることができる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
第1図は本考案の一実施例を示す概略構成図、第2図は第1図の搬出側紙送りローラの一部の断面図、第3図および第4図は本考案の他の実施例を示したもので、第3図は搬出側紙送りローラの分解斜視図、第4図は搬出側紙送りローラの斜視図、第5図は従来の紙送り機構を示す概略構成図、第6図は第5図の用紙に加わる引張力を示す説明図である。
1…プラテン、2…キャリッジ、3…印字ヘッド、5…用紙、6…搬入側紙送りローラ、7…搬入側補助ローラ、8…搬出側紙送りローラ、9…搬出側補助ローラ、10…駆動モータ、17…搬出側紙送り駆動ギア、18…回転軸、19…,20…軸受、22…フェルト、24…薄肉ギア。
訂正の要旨 願書に添付された明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2に係る記載
「1) プラテンとこのプラテンに対向配置される印字ヘッドとを挟んで用紙の搬入側および搬出側にそれぞれ紙送りローラを回転自在に配設し、これら各紙送りローラにそれぞれ回転伝達機構を介して駆動モータを接続するとともに、前記搬出側紙送りローラを前記搬入側紙送りローラよりわずかに速い速度で回転駆動させるようにしてなるプリンタの紙送り機構において、前記搬出側紙送りローラの回転軸に対して回転の負荷となる摩擦力を常に付与する摩擦部材を該回転軸に配設したことを特徴とするプリンタの紙送り機構。
2) プラテンとこのプラテンに対向配置される印字ヘッドとを挟んで用紙の搬入側および搬出側にそれぞれ紙送りローラを回転自在に配設し、これら各紙送りローラにそれぞれ回転伝達ギヤを介して駆動モータを接続するとともに、前記搬出側紙送りローラを前記搬入側紙送りローラよりわずかに速い速度で回転駆動させるようにしてなるプリンタの紙送り機構において、前記搬出側紙送りローラヘの回転伝達ギヤにバックラッシュ除去機構を設けたことを特徴とするプリンタの紙送り機構。」
を、
「1) プラテンとこのプラテンに対向配置される印字ヘッドとを挟んで用紙の搬入側および搬出側にそれぞれ紙送りローラを回転自在に配設し、これら各紙送りローラにそれぞれ回転伝達機構を介して駆動モータを接続するとともに、前記搬出側紙送りローラを前記搬入側紙送りローラよりわずかに速い速度で回転駆動させるようにしてなるプリンタの紙送り機構において、前記搬出側紙送りローラの回転軸をフレームの軸受に回転自在に保持させるとともに、この回転軸の前記フレームの外側に前記駆動モータの回転力が伝達される搬出側紙送り駆動ギヤを同軸状に固着し、前記フレームの外面と前記搬出側紙送り駆動ギヤとの間に前記回転軸に対して回転の負荷となる摩擦力を付与する摩擦部材を介設し、排出側紙送り駆動ギヤを前記摩擦部材を介して前記フレームに圧接させる方向に付勢させて前記回転軸に対して前記摩擦部材の摩擦力を常に付与する付勢ばねを配設したことを特徴とするプリンタの紙送り機構。
2) プラテンとこのプラテンに対向配置される印字ヘッドとを挟んで用紙の搬入側および搬出側にそれぞれ紙送りローラを回転自在に配設し、これら各紙送りローラにそれぞれ回転伝達ギヤを介して駆動モータを接続するとともに、前記搬出側紙送りローラを前記搬入側紙送りローラよりわずかに速い速度で回転駆動させるようにしてなるプリンタの紙送り機構において、前記搬出側紙送りローラヘの回転伝達ギヤにバックラッシュ除去機構を設けたことを特徴とするプリンタの紙送り機構。」
と訂正する。
異議決定日 2000-08-09 
出願番号 実願平1-100262 
審決分類 U 1 652・ 534- YA (B65H)
U 1 652・ 121- YA (B65H)
最終処分 維持    
前審関与審査官 中島 昭浩  
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 祖山 忠彦
西村 綾子
登録日 1998-05-15 
登録番号 実用新案登録第2577814号(U2577814) 
権利者 アルプス電気株式会社
東京都大田区雪谷大塚町1番7号
考案の名称 プリンタの紙送り機構  
代理人 中尾 俊輔  
代理人 中尾 俊輔  
代理人 伊藤 高英  
代理人 伊藤 高英  

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