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審決分類 |
審判 全部申し立て F16K |
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管理番号 | 1028341 |
異議申立番号 | 異議1999-71329 |
総通号数 | 16 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2001-04-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-04-07 |
確定日 | 2000-09-27 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 登録第2584046号「シンクタンクに設けた浄水器付湯水混合水栓」の実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 登録第2584046号の実用新案登録を維持する。 |
理由 |
【1】手続の経緯 本件実用新案登録第2584046号は、平成2年2月16日の実用新案登録出願である実願平2-14964号を原出願とする分割出願に係り、平成10年8月21日に設定登録されたものであって、その後、株式会社ケーブイケーから登録異議の申立てがなされ、平成11年12月14日付け取消理由の通知の指定期間内である平成12年3月14日付けで明細書について訂正請求がなされ、その後さらに、平成12年5月9日付け取消理由の通知の指定期間内である平成12年7月31日付けで、前記訂正請求が取り下げられ、改めて明細書について訂正請求がなされたものである。 【2】訂正の要旨 上記平成12年7月31日付け訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)は、願書に添付した明細書を訂正請求書に添付した全文訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであるが、その要旨は、次のA?Fのとおりのものと認める。 A.実用新案登録請求の範囲の請求項1の「湯水混合水栓本体の水通路に」を「湯水混合水栓本体の、前記水通路に連通した水通路室に」と訂正する。 B.実用新案登録請求の範囲の請求項1の「活性炭等」を「活性炭」と訂正する。 C.実用新案登録請求の範囲の請求項1の「湯水混合水栓本体より下方に延設して」を「湯水混合水栓本体より束状にまとめられて下方に延設して」と訂正する。 D.実用新案登録請求の範囲の請求項1の「浄水器を前記シンクタンクの格納室に設置し」を「浄水器を前記シンクタンクの格納室に設置して、前記浄水器の活性炭の吸着性能を湯水混合水栓の熱によって低下させないようにし」と訂正する。 E.考案の詳細な説明の段落【0032】と【0033】の記述を削除し、段落【0034】より【0043】までの段落番号を【0032】?【0041】に繰り上げる。 F.考案の詳細な説明の段落【0009】及び【0034】の「活性炭等」を「活性炭」と訂正する。 【3】訂正の適否 1.訂正の目的の適否 上記訂正A?Dは、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とし、上記訂正E及びFは、実用新案登録請求の範囲の訂正に伴って考案の詳細な説明の記載を整合させるものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。 2.新規事項の存否 (1)上記訂正事項Aについて 実用新案登録明細書の段落【0023】には、「この水通路室2aは水通路2に、湯通路室3aは湯通路3に、原水通路室4aは原水通路4にそれぞれ連通している。特に、浄水通路室5aは浄水通路5および吐水管路室7aにそれぞれ連通している。」との記載があり、又図2を参照すると、水通路2に連通した水通路室2aに、シングルレバ-14に比べ短寸の、本体Aから突設したハンドル23付きで、浄水吐水専用の止水弁Cを介して、原水通路4を分岐した点が示されているものと認められるから、訂正事項Aは、実用新案登録明細書に記載された事項の範囲内の訂正と認められる。 (2)上記訂正事項Bについて 上記訂正事項Bは、「活性炭等」を「活性炭」とするものであり、実用新案登録明細書に記載された事項の範囲内の訂正と認められる。 (3)上記訂正事項Cについて 実用新案登録明細書の段落【0024】には、「そして、これらの水通路2、湯通路3、原水通路4および浄水通路5は束状にまとめられて下方に延設されている。」との記載があり、訂正事項Cは、実用新案登録明細書に記載された事項の範囲内の訂正と認められる。 (4)上記訂正事項Dについて 実用新案登録明細書の段落【0005】に「その一つの理由に、従来、浄水器といえば、先ず活性炭を用いて塩素などを吸着するものであるが、この吸着性能は、いう迄もなく吸着現象が発熱反応であるので、温度の上昇と共に低下することとなり、湯水混合水栓と浄水器とを組合せることは好ましくない、と考えられていた。」と記載され、また、段落【0034】に「【考案の効果】本考案によれば、……湯水混合水栓をシンクタンクの天板に設け、浄水器をシンクタンクの下方の格納室に設けたので、湯水混合水栓から熱湯を長時間吐水しても、活性炭等からなる浄水器はこの熱の影響を全く受けない。ひいては、浄水器の品質を低下したり、破損することはない。」と記載されており、訂正事項Dは、実用新案登録明細書に記載された事項の範囲内の訂正と認められる。 (5)上記訂正事項E及びFについて、 記載事項の削除又は「活性炭等」を「活性炭」とするものであり、実用新案登録明細書に記載された事項の範囲内の訂正と認められる。 3.実用新案登録請求の範囲の拡張又は変更の存否 上記訂正事項A?Dは、実用新案登録請求の範囲を、実用新案登録の設定時の 「【請求項1】 水道管に連通した水通路と、湯沸器に連通した湯通路と、湯水混合水を放水する長寸の吐水管とを湯水混合水栓本体に一体的に備えた、可動ディスクと固定ディスクとで湯水を混合したり切換えたりするシングルレバー式湯水混合水栓をシンクタンクの天板に設け、前記湯水混合水栓本体の水通路に、前記シングルレバーに比べ短寸の、前記本体から突設したハンドル付きで、かつ、前記湯水混合水栓のシングルレバーによる吐水を閉じとして使用する浄水吐水専用の止水弁を介して、原水通路を分岐し、該原水通路を、活性炭等からなる浄水器の入口に連通し、該浄水器の出口に連通する浄水通路を前記吐水管に連通し、前記水通路、湯通路、原水通路および浄水通路をそれぞれ管路で4本のみに構成して、前記湯水混合水栓本体より下方に延設して、前記浄水器を前記シンクタンクの格納室に設置し、前記シングルレバーとハンドル2つのみで操作するようにし、前記湯水混合水栓本体に、該本体より小径の、外周を円形にした取付部を下向きに形成し、該取付部を天板に設けた孔に挿入すると共に、該取付部に天板を挟んで天板用締付ナットを螺合したことを特徴とするシンクタンクに設けた浄水器付湯水混合水栓。」から、 「【請求項1】水道管に連通した水通路と、湯沸器に連通した湯通路と、湯水混合水を放水する長寸の吐水管とを湯水混合水栓本体に一体的に備えた、可動ディスクと固定ディスクとで湯水を混合したり切換えたりするシングルレバ-式湯水混合水栓をシンクタンクの天板に設け、前記湯水混合水栓本体の、前記水通路に連通した水通路室に、前記シングルレバ-に比べ短寸の、前記本体から突設したハンドル付きで、かつ、前記湯水混合水栓のシングルレバ-による吐水を閉じとして使用する浄水吐水専用の止水弁を介して、原水通路を分岐し、該原水通路を、活性炭からなる浄水器の入口に連通し、該浄水器の出口に連通する浄水通路を前記吐水管に連通し、前記水通路、湯通路、原水通路および浄水通路をそれぞれ管路で4本のみに構成して、前記湯水混合水栓本体より束状にまとめられて下方に延設して、前記浄水器を前記シンクタンクの格納室に設置して、前記浄水器の活性炭の吸着性能を湯水混合水栓の熱によって低下させないようにし、前記シングルレバ-とハンドル2つのみで操作するようにし、前記湯水混合水栓本体に、該本体より小径の、外周を円形にした取付部を下向きに形成し、該取付部を天板に設けた孔に挿入すると共に、該取付部に天板を挟んで天板用締付ナットを螺合したことを特徴とするシンクタンクに設けた浄水器付湯水混合水栓。」と訂正するものであり、 「 熱湯によりもろに浄水器が加熱される」(実用新案登録明細書の【0006】参照)、「熱湯が、浄水器へ直行して逆流し、浄水器を損傷するおそれがある」(実用新案登録明細書の【0007】参照)、「大径化する」(実用新案登録明細書の【0008】参照)等を防止するという、本件実用新案登録の設定時の請求項1に係る考案の解決しようとする課題の範囲内における、実用新案登録請求の範囲の減縮であるから、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものとは認められない。 上記訂正事項E及びFは、実用新案登録請求の範囲の訂正に伴って考案の詳細な説明の記載を整合させるものであり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものとは認められない。 4.独立登録要件 (1)訂正明細書の考案 本件訂正請求書に添付した訂正明細書の請求項1に係る考案(以下「本件訂正明細書の考案」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】水道管に連通した水通路と、湯沸器に連通した湯通路と、湯水混合水を放水する長寸の吐水管とを湯水混合水栓本体に一体的に備えた、可動ディスクと固定ディスクとで湯水を混合したり切換えたりするシングルレバ-式湯水混合水栓をシンクタンクの天板に設け、前記湯水混合水栓本体の、前記水通路に連通した水通路室に、前記シングルレバ-に比べ短寸の、前記本体から突設したハンドル付きで、かつ、前記湯水混合水栓のシングルレバ-による吐水を閉じとして使用する浄水吐水専用の止水弁を介して、原水通路を分岐し、該原水通路を、活性炭からなる浄水器の入口に連通し、該浄水器の出口に連通する浄水通路を前記吐水管に連通し、前記水通路、湯通路、原水通路および浄水通路をそれぞれ管路で4本のみに構成して、前記湯水混合水栓本体より束状にまとめられて下方に延設して、前記浄水器を前記シンクタンクの格納室に設置して、前記浄水器の活性炭の吸着性能を湯水混合水栓の熱によって低下させないようにし、前記シングルレバ-とハンドル2つのみで操作するようにし、前記湯水混合水栓本体に、該本体より小径の、外周を円形にした取付部を下向きに形成し、該取付部を天板に設けた孔に挿入すると共に、該取付部に天板を挟んで天板用締付ナットを螺合したことを特徴とするシンクタンクに設けた浄水器付湯水混合水栓。」 (2)引用例 取消理由通知書又は特許異議申立書に引用された刊行物である次の刊行物1?11には、それぞれ、以下の(i)?(xi)に示した事項が記載されているものと認める。 (i)刊行物1[特開昭62-204818号公報(取消理由通知書に引用した刊行物1、登録異議申立書に引用した甲第1号証、「刊行物1」という。)] イ)「本発明は濾過器および湯水混合水栓を備えた給水濾過装置に関するものである。」(公報第1頁左下欄第17行乃至第18行。)の記載、 ロ)「図において、1は湯水混合水栓であり、冷水を供給する冷水管2と、温水を供給する温水管3が接続されている。4は湯水混合水栓1で混合された湯水を吐出する吐出管であり、蛇口5が接続されている。6は湯水混合水栓1に設けられた切換レバー取付部であり、この切換レバー取付部6に切換レバー7が設けられている。この切換レバー7を操作することにより、冷水管2から供給される冷水の量および温水管3から供給される温水の量を制御して、この湯水混合水栓1から吐出管4および蛇口5を介して吐出される湯水の温度および量を制御できる。もちろん、切換レバー7を操作することにより、湯水混合水栓1への冷水の供給を停し、かつ温水の供給を停止させることもできる。8は濾過器であり、第3図に示すような構成である。第3図において、濾過器本体9と蓋10により濾過器8の外装ケースが構成されている。濾過器本体9内には内部に濾材11が充填された濾過用カートリッジ12が収納されている。13は濾過器本体9に設けられた給水管であり、パイプ14を介して冷水管2に接続され、冷水管2内の冷水を濾過器本体9へ導く。15は給水開閉弁であり、レバー取付部16を介して設けられたレバー17を操作することにより開閉して、給水管13により導かれた冷水の濾過用カートリッジ12への供給を制御する。18は蓋10に設けられた濾過水流出管であり、吐出管4の接続部19に接続され、濾過用カートリッジ12により濾過された濾過水を吐出管4に供給する。上記構成において、レバー17の操作により給水開閉弁15を開くと、冷水管2内の冷水がパイプ14、給水管13給水開閉弁15を通って濾過用カートリッジ12内に供給され、残留塩素や、鉄錆等のにごりや、その他の臭い成分が除去され、濾過水流出管18、接続部19を通って吐出管4に導かれ、さらに蛇口5より吐出される。従って、濾過器8には温水が流入しない。一方、蛇口5から湯水を吐出させる場合には、切換レバー7を操作することにより、湯水混合水栓1に冷水管2から冷水を導くとともに温水管3から温水を導き、湯水混合水栓1にて混合し、混合された湯水は吐出管4および蛇口5を通り、吐出される。」(公報第2頁右上欄第2行乃至右下欄第5行。)の記載、 ハ)さらに図面の第1図乃至第3図の記載等から、 刊行物1には、 「冷水管2と、温水管3と、湯水混合水栓1と、濾過器8とを備え、湯水混合水栓1は湯水混合水を放水する蛇口5及び湯水を混合する切換レバー7を備えるとともに、冷水管2を分岐して濾過器8の給水管13に連通し、また、レバー17によって開閉する給水開閉弁15を介して、該給水管13を濾過器8の濾過用カートリッジ12に連通し、該濾過用カートリッジ12から濾過水流出管18、吐出管4を経て蛇口5に連通し、切換レバー7とレバー17の2つのみで操作する濾過器及び湯水混合水栓を備えた給水濾過装置。」が記載されているものと認められる。 ここで、ニ)冷水管2は、通常の給水装置の場合、水道管である。 ホ)第1図から明らかなように、冷水管2と温水管3とは、別々の位置から湯水混合水栓1に接続されていることから、水と温水の混合は湯水混合水栓1内で行われる。すなわち、湯水混合水栓1の本体内には、冷水管2に連通した冷水用の水通路と、温水管3に連通した湯通路を有する。 ヘ)蛇口5は、第1図乃至第2図から明らかなように、長寸であり、また、湯水混合水栓1に接続されている、すなわち、湯水混合水栓1の本体に一体に形成されている。 ト)切換レバー7は、冷水と温水を湯水混合水栓で混合する1つのレバー、すなわち、シングルレバー式であり、また、この種の湯水混合水栓は、通常、冷水のみ、あるいは温水のみの吐出を可能とするものである、すなわち、湯水を混合したり切換えたりすることができるものである。 チ)第1図乃至第2図から明らかなように、切換レバー7の寸法に比べて、レバー17の寸法は短寸である。 ヌ)レバー17の操作により給水開閉弁15を開くと、冷水は濾過器8の濾過用カートリッジ12内に導かれる。すなわち、給水開閉弁15は冷水管2を分岐して濾過器8の濾過用カートリッジ12の入口につながる原水通路に導く、濾過水吐水のための専用の弁である。 以上の点から、刊行物1には、次の考案が、その図面とともに記載されているものと認められる。 「水道管に連通した水通路と、温水管3に連通した湯通路と、湯水混合水を放水する長寸の蛇口5とを湯水混合水栓1の本体に一体的に備えた湯水を混合したり切換えたりするシングルレバー式の切換レバー7を有する湯水混合水栓1と、切換レバー7に比べ短寸のレバー17付きで、かつ、濾過水吐水専用の給水開閉弁15を介して、冷水管2から、濾過器8の濾過用カートリッジ12の入口である原水通路を分岐し、該濾過器8の濾過用カートリッジ12の出口に連通する濾過水流出管18を前記蛇口5に連通し、切換レバー7とレバー17の2つのみで操作する濾過器及び湯水混合水栓を備えた給水濾過装置。」 (ii)刊行物2[実開昭61-114170号公報(取消理由通知書に引用した刊行物2、登録異議申立書に引用した甲第2号証、「刊行物2」という。)] 第1図及び第3図の記載等から、「シングルレバー式湯水混合水栓をシンクタンクの天板(符号2なる部材)に設けると共に、栓自体の構造を、可動ディスク(可動弁板B)と固定ディスク(固定弁板15)とを有するものとした構成」が記載されているものと認められる。 (iii)刊行物3[実開昭61-126157号公報(取消理由通知書に引用した刊行物3、登録異議申立書に引用した甲第3号証、「刊行物3」という。)] 第1図の記載等から、「シングルレバー式湯水混合水栓をシンクタンクの天板(取付面A)に設けると共に、栓自体の構造を、可動ディスク(符号13なる部材)と固定ディスク(符号16なる部材)とを有するものとした構成」が記載されているものと認められる。 (iv)刊行物4[実願昭61-160700号(実開昭63-66676号)のマイクロフィルム(取消理由通知書に引用した刊行物4、登録異議申立書に引用した甲第4号証、「刊行物4」という。)] イ)「前記本体1の下部周面の螺合部6はナット15を有して流し台又は洗面台の天板Cの取付孔22、22に取り付けるように構成し、前記水流路2及び湯流路3は前記本体1の弁室8に連通しており、該弁室8にはセラミックスの成型による固定板弁16及び同一素材による可動板弁17を重ね合わせて内装し、該可動板弁17は把手軸11を介してレバー18と連繋しており、該レバー18の操作によって前記可動板弁17と固定板弁16との弁開閉の対応関係を変化させることによって湯、水、又は混合水を吐出管19へ供給するようにして弁機能部Bを構成する。」(明細書第4頁第19行乃至第5頁第11行)の記載、 ロ)第1図、第2図の記載等から、 「シングルレバー式湯水混合水栓をシンタンクの天板(天板C)に設けると共に、栓自体の構造を、可動ディスク(可動板弁17)と固定ディスク(固定板弁16)とを有するものとした構成」が記載されているものと認められ、また、「本体よりも小径の取付部(螺合部6)を下向きに形成し、該取付部(螺合部6)に天板(天板C)を挟んで天板用取付ナット(ナット15)を螺合した構成」が記載されているものと認められる。 (v)刊行物5[実公昭51-26354号公報(取消理由通知書に引用した刊行物5、登録異議申立書に引用した甲第5号証、「刊行物5」という。)] 第1図乃至第4図の記載等から、「水栓本体(直長管1)に浄水用のハンドル(浄水ハンドル20)を突設すると共に、水栓本体の水通路(原水路4)に、浄水器の入口に連通する原水通路(浄水栓室6)を分岐して設けた構成」が記載されているものと認められる。 (vi)刊行物6[実公昭55-12631号公報(取消理由通知書に引用した刊行物6、登録異議申立書に引用した甲第6号証、「刊行物6」という。)] 第1図乃至第6図の記載等から、「水栓本体(弁本体1)に浄水用のハンドル(操作レバー28)を突設すると共に、水栓本体の水通路(導水口5)に、浄水器の入口に連通する原水通路(弁室3)を分岐して設けた構成」が記載されているものと認められる。 (vii)刊行物7[実願昭63-21563号(実開平1-124865号)のマイクロフィルム(取消理由通知書に引用した刊行物7、登録異議申立書に引用した甲第7号証、「刊行物7」という。)] 第1図及び第2図の記載等から、「浄水器8(可搬容器1、la)をシンクタンクの格納室(天板Aの下方)に設置した構成」が記載されているものと認められる。 (viii)刊行物8[実公昭51-7981号公報(取消理由通知書に引用した刊行物8、登録異議申立書に引用した甲第8号証、「刊行物8」という。)] 第1図及び第2図の記載等から、「浄水器8(浄水器12)をシンクタンクの格納室(庫内13)に設置した構成」が記載されているものと認められる。 (ix)刊行物9[実願昭62-186770号(実開平1-93259号)のマイクロフィルム(取消理由通知書に引用した刊行物9、登録異議申立書に引用した甲第9号証、「刊行物9」という。)] イ)「該本体6の下部には円筒状部14が一体に形成され該円筒状部14をデッキ面2に形成した丸孔15に貫挿し下側から該円筒状部14に座金16、締付ナット17を螺着することにより該本体6を固着する。」(明細書第5頁第12行乃至第16行)の記載、 ロ)第2図、第3図の記載等から、 「本体よりも小径の取付部(円筒状部14)を下向きに形成し、該取付部(円筒状部14)に天板(デッキ面2)を挟んで天板用取付ナット(締付ナット17)を螺合した構成」が記載されているものと認められる。 (x)刊行物10[実願昭62-47671号(実開昭63-157296号)のマイクロフィルム(取消理由通知書に引用した刊行物10、「刊行物10」という。)] 「浄水器において活性炭を用いる点」が記載されているものと認められる。 (xi)刊行物11[実願昭59-155811号(実開昭61-139792号)のマイクロフィルム(取消理由通知書に引用した刊行物11、「刊行物11」という。)] 「浄水器において活性炭を用いる点」が記載されているものと認められる。 (3)対比 本件訂正明細書の考案と刊行物1に記載されたものとを対比すると、 (i) 刊行物1に記載された考案の「濾過用カートリッジ12」は、それ自体で水を浄化する機能をもつものであるから「浄水器」に相当し、 (ii)また、刊行物1に記載された考案の「蛇口5」、「切換レバ 7」、「レバー17」、「濾過水」、「給水開弁15」、「濾過水流出管18」、「濾過器および湯水混合水栓を備えた給水濾過装置」は、それぞれ、本件考案の「吐水管」、「シングルレバー」、「ハンドル」、「浄水」、「止水弁」、「浄水通路」、「浄水器付湯水混合水栓」に相当し、 (iii)本件考案と刊行物1に記載された考案とは「水道管に連通した水通路と、湯通路と、湯水混合水を放水する長寸の吐水管とを湯水混合水栓本体に一体的に備えた、湯水を混合したり切換えたりするシングルレバー式湯水混合水栓と、前記シングルレバーに比べ短寸のハンドル付きで、かつ、浄水吐水専用の止水弁を介して、原水通路を分岐し、該原水通路を、浄水器の入口に連通し、該浄水器の出口に連通する浄水通路を前記吐水管に連通した、シングルレバーとハンドルの2つのみで操作する浄水器付湯水混合水栓。」である点で一致し、 (iv)次の5点で相違しているものと認められる。 〈相違点A〉 本件訂正明細書の考案は、湯通路を「湯沸器に連通した湯通路」としているのに対し、刊行物1に記載された考案は、湯通路がどのようなものから湯の供給を受けるのか明りょうでない点. 〈相違点B〉 シングルレバー式湯水混合水栓を、本件訂正明細書の考案は、「可動ディスクと固定ディスクとで湯水を混合したり切換えたりする」ものとしたのに対して、刊行物1に記載された考案では、栓自体の構造が不明な点. 〈相違点C〉 本件訂正明細書の考案は、シングルレバー式湯水混合水栓の「水通路室に、前記シングルレバ-に比べ短寸の、前記本体から突設したハンドル付きで、かつ、前記湯水混合水栓のシングルレバ-による吐水を閉じとして使用する浄水吐水専用の止水弁を介して、原水通路を分岐し」たのに対して、刊行物1に記載された考案では、原水通路は冷水管2から直接分岐させ、また、本件考案のハンドルに相当するレバー17を、湯水混合水栓1に隣接する濾過器8に設けるものであり、さらに、本件考案の止水弁に相当する給水開閉弁15を「湯水混合水栓のシングルレバ-による吐水を閉じとして」使用するか否か明瞭でない点. 〈相違点D〉 本件訂正明細書の考案は、「シングルレバ-式湯水混合水栓をシンクタンクの天板に設け」、「原水通路を、活性炭からなる浄水器の入口に連通し、該浄水器の出口に連通する浄水通路を前記吐水管に連通し、前記水通路、湯通路、原水通路および浄水通路をそれぞれ管路で4本のみに構成して、前記湯水混合水栓本体より束状にまとめられて下方に延設して、前記浄水器を前記シンクタンクの格納室に設置して、前記浄水器の活性炭の吸着性能を湯水混合水栓の熱によって低下させないようにし」ているのに対して、刊行物1に記載された考案では、シングルレバ-式湯水混合水栓を壁面に設け、これに隣接する位置に浄水器を設けており、また、浄水器が活性炭からなるものか否か明瞭でない点. 〈相違点E〉 本件訂正明細書の考案は、シングルレバ-式湯水混合水栓を「前記湯水混合水栓本体に、該本体より小径の、外周を円形にした取付部を下向きに形成し、該取付部を天板に設けた孔に挿入すると共に、該取付部に天板を挟んで天板用締付ナットを螺合した」ものであるのに対して、刊行物1に記載された考案では、冷水管2及び温水管3によってシングルレバ-式湯水混合水栓を壁面に設けているものである点. (4)相違点についての判断 (i)相違点Aについて 湯水混合水栓において、湯水を湯沸器から取出すことは慣用手段であることから、刊行物1に記載された考案において、湯通路を「湯沸器に連通した湯通路」とすることに格別の困難性を有するものではない。 (ii)相違点Bについて シングルレバー式湯水混合水栓を、可動ディスクと固定ディスクとを有するものとすることは、本件実用新案登録の出願前周知の技術(例えば、刊行物2、刊行物3、刊行物4、刊行物9等参照。)であって、刊行物1に記載されたものも、シングルレバー式湯水混合水栓であることから、該刊行物1に記載されたシングルレバー式湯水混合水栓において、水栓自体を可動ディスクと固定ディスクとを有するものとすることに格別の困難性を有するものとは認められない。 (iii)相違点Cについて 浄水及び湯水を併用する水栓において、水栓本体の水通路に連通する水通路室に、水栓本体から突設したハンドル付きでかつ浄水吐出専用の止水弁を介して、浄水器の入口に連通する原水通路を分岐して設けることは、本件実用新案登録の出願前周知の技術である(刊行物5、刊行物6等参照。)ことから、刊行物1に記載された湯水混合水栓において、浄水吐出専用の止水弁を湯水混合水栓本体に設け、水通路に連通する水通路室に、前記浄水吐出専用の止水弁を介して、原水通路を分岐して設けたものとすることは、当業者にとって、格別の困難性を有するものとは認められない。 また、「湯水混合水栓のシングルレバ-による吐水を閉じとして」止水弁を使用することは、使用者の操作に依存することであり、刊行物1に記載されたものも同様の使用態様が可能であるから、実質上相違点とは認められない。 (iv)相違点Dについて 本件訂正明細書の考案の、「『シングルレバ-式湯水混合水栓をシンクタンクの天板に設け』、『原水通路を、活性炭からなる浄水器の入口に連通し、該浄水器の出口に連通する浄水通路を前記吐水管に連通し、前記水通路、湯通路、原水通路および浄水通路をそれぞれ管路で4本のみに構成して、前記湯水混合水栓本体より束状にまとめられて下方に延設して、前記浄水器を前記シンクタンクの格納室に設置して、前記浄水器の活性炭の吸着性能を湯水混合水栓の熱によって低下させないようにし』」た構成は、上記刊行物1?11のいずれにも記載されておらず、また、この構成が本件実用新案登録の出願前に周知のものであったとすることもできない。 そして、この構成により、「湯水混合水栓から熱湯を長時間吐水しても、活性炭からなる浄水器はこの熱の影響を全く受けない。ひいては、浄水器の品質を低下したり、破損することはない。」(段落【0034】)、「浄水器はシンクタンクの格納室に設けてあるので、浄水器へ高温の原水が逆流することはなく、……浄水器を損傷することがない。」(段落【0037】)等の作用効果を期待し得るものである。 さらに、上記刊行物1?11に記載されたものは、いずれも、シングルレバ-式湯水混合水栓と活性炭からなる浄水器とを、それぞれシンクタンクの天板と前記シンクタンクの格納室とに隔離して配置して、前記浄水器の活性炭の吸着性能を湯水混合水栓の熱によって低下させないようにすることを、予測させるものとは認められない。 したがって、この相違点Dにおける本件訂正明細書の考案の構成を当業者が極めて容易に推考し得たものとすることはできない。 (v)相違点Eについて シングルレバ-式湯水混合水栓を、湯水混合水栓本体に、該本体より小径の、外周を円形にした取付部を下向きに形成し、該取付部を天板に設けた孔に挿入すると共に、該取付部に天板を挟んで天板用締付ナットを螺合して、天板に取り付けることは、刊行物2、刊行物3、刊行物4、刊行物9等に記載されているように、本件実用新案登録の出願前に周知の事項と認められるから、この点に困難性は認められない。 (5)本件訂正明細書の考案の進歩性 以上のとおりであるから、本件訂正明細書の考案は、周知技術及び慣用技術を考慮しても、上記刊行物1?11に記載されたものに基づいて、当業者が極めて容易に考案をすることができたものとすることはできない。 また、他に、本件訂正明細書の考案は、出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである、とする理由を発見しない。 5.訂正請求について-むすび 上記1?4のとおりであるから、本件訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号。)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 【4】登録異議の申立てについて 1.本件登録実用新案 本件実用新案登録第2584046号考案は、本件訂正請求による訂正が認められるから、訂正請求書に添付した訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認める。 2.登録異議申立ての理由及び証拠 (1)登録異議申立人は、本件実用新案登録第2584046号考案は、本件実用新案登録の出願前に頒布された刊行物に記載されたもの及び慣用技術や周知技術に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、その登録は取り消されるべきものである旨主張し、前記刊行物1?9を甲第1?9号証として提出している。 (2)また、登録異議申立人は、参考資料として実願平2-14964号に係る審決の謄本を提出して、概略以下のように主張している。 本件は、実願平2-14964号に係る出願(以下、原出願という)に基づく分割出願である。ここで、原出願に係る考案の構成は、本件考案の構成要件「水道管に連通した水通路と、湯沸器に連通した湯通路と、湯水混合水を放水する長寸の吐水管とを湯水混合水栓本体に一体的に備えた、可動ディスクと固定ディスクとで湯水を混合したり切換えたりするシングルレバー式湯水混合水栓をシンクタンクの天板に設け、前記湯水混合水栓本体の水通路に、前記シングルレバーに比べ短寸の、前記本体から突設したハンドル付きで、かつ、前記湯水混合水栓のシングルレバーによる吐水を閉じとして使用する浄水吐水専用の止水弁を介して、原水通路を分岐し、該原水通路を、活性炭等からなる浄水器の入口に連通し、該浄水器の出口に連通する浄水通路を前記吐水管に連通し、前記水通路、湯通路、原水通路および浄水通路をそれぞれ管路で4本のみに構成して、前記湯水混合水栓本体より下方に延設して、前記浄水器を前記シンクタンクの格納室に設置し、前記シングルレバーとハンドル2つのみで操作するようにし」と同様であり(原出願に係る考案では「4本の管路を束状にまとめて湯水混合水栓本体の通路取付部に固着する」といった限定があるのに対し、本件考案の上記構成要件ではこの限定がない以外は全く同一)、この原出願は、拒絶査定不服の審判(平成5年審判第22199号)、審決取り消し訴訟(東京高裁平9行ケ第137号)を経て、既に拒絶査定が確定されたものである。その審決の内容は、添付の参考資料の通りであり、要するに、本書の甲第1?9号証を証拠として引用して、「各証拠に記載された発明及び考案に基づいて当業者にとってきわめて容易になし得たものである」とするものである。 この原出願の経緯を参酌すれば、本件考案の上記構成要件に何らの進歩性も有さないことは明白である。そして、本件考案は、このような進歩性を有さない原出願に係る考案(上記構成要件)に、周知技術であり慣用手段でもある構成要件「前記湯水混合水栓本体に、該本体より小径の、外周を円形にした取付部を下向きに形成し、該取付部を天板に設けた孔に挿入すると共に、該取付部に天板を挟んで天板用締付ナットを螺合した」を単に付加したものに過ぎないものである。以上からも、本件考案が、甲第1号証に記載されたものに、甲第2?9号証のとおりの周知技術を適用したものに過ぎないものであり、当業者にとって極めて容易になし得たものであることが理解される。 3.当審の判断 (1)上記「【3】訂正の適否」の「4.独立登録要件」の「(4)相違点についての判断」において記載したように、登録異議申立人が提出した甲第1?9号証には、いずれも本件考案の「『シングルレバ-式湯水混合水栓をシンクタンクの天板に設け』、『原水通路を、活性炭からなる浄水器の入口に連通し、該浄水器の出口に連通する浄水通路を前記吐水管に連通し、前記水通路、湯通路、原水通路および浄水通路をそれぞれ管路で4本のみに構成して、前記湯水混合水栓本体より束状にまとめられて下方に延設して、前記浄水器を前記シンクタンクの格納室に設置して、前記浄水器の活性炭の吸着性能を湯水混合水栓の熱によって低下させないようにし』」た構成が記載されていない。そして、この構成は、上記「【3】訂正の適否」の「4.独立登録要件」の「(4)相違点についての判断」の「(iv)相違点Dについて」において記載した理由と同様の理由により、当業者が極めて容易に推考し得たものとすることはできない。 (2)また、本件考案は、訂正により、前記実願平2-14964号に係る出願(以下、原出願という)とは異なる新たな構成を備えることとなったものであるから、登録異議申立人の上記「2.登録異議申立ての理由及び証拠」の「(2)」の主張は、採用できない。 (3)したがって、本件考案は、甲第1?9号証に記載されたものに基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものとすることはできない。 【5】むすび 以上のとおりであるから、本件実用新案登録は、周知技術及び慣用技術を考慮しても、登録異議申立人が主張する理由及び提出する証拠によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【考案の名称】 シンクタンクに設けた浄水器付湯水混合水栓 (57)【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】水道管に連通した水通路と、湯沸器に連通した湯通路と、湯水混合水を放水する長寸の吐水管とを湯水混合水栓本体に一体的に備えた、可動ディスクと固定ディスクとで湯水を混合したり切換えたりするシングルレバ-式湯水混合水栓をシンクタンクの天板に設け、 前記湯水混合水栓本体の、前記水通路に連通した水通路室に、前記シングルレバ-に比べ短寸の、前記本体から突設したハンドル付きで、かつ、前記湯水混合水栓のシングルレバ-による吐水を閉じとして使用する浄水吐水専用の止水弁を介して、原水通路を分岐し、該原水通路を、活性炭からなる浄水器の入口に連通し、該浄水器の出口に連通する浄水通路を前記吐水管に連通し、前記水通路、湯 通路、原水通路および浄水通路をそれぞれ管路で4本のみに構成して、前記湯水混合水栓本体より束状にまとめられて下方に延設して、前記浄水器を前記シンクタンクの格納室に設置して、前記浄水器の活性炭の吸着性能を湯水混合水栓の熱によって低下させないようにし、前記シングルレバ-とハンドル2つのみで操作するようにし、前記湯水混合水栓本体に、該本体より小径の、外周を円形にした取付部を下向きに形成し、該取付部を天板に設けた孔に挿入すると共に、該取付部に天板を挟んで天板用締付ナットを螺合したことを特徴とするシンクタンクに設けた浄水器付湯水混合水栓。 【考案の詳細な説明】 【0001】 【考案の属する技術分野】 本考案は、シンクタンクに設けた浄水器付湯水混合水栓に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 周知のように昨今、上水道の水が増々汚染される一方、美味な水の追求が増す増々盛んになり、活性炭や紫外線照射などを用いた各種の浄水器が市販されるようになった。 【0003】 この浄水器の一種に、台所のシンクタンクの近傍に別置した別置き式浄水器を、蛇口に設けられた切換弁を介して連通し、この切換弁のところで、原水をそのまま放水したり、浄水器を回流してきた浄水を放水したりする装置が知られている。 【0004】 従来の湯水混合水栓においては、浄水器を回流させて浄水とし当該湯水混合水栓で再び吐水させることは困難とされている。 【0005】 その一つの理由に、従来、浄水器といえば、先ず活性炭を用いて塩素などを吸着するものであるが、この吸着性能は、いう迄もなく吸着現象が発熱反応であるので、温度の上昇と共に低下することとなり、湯水混合水栓と浄水器とを組合せることは好ましくない、と考えられていた。 【0006】 【考案が解決しようとする課題】 したがって、実公昭51-26354号公報で提示されているような浄水器付湯水混合水栓では、湯および水を別々の止水栓によって操作して混合水を作る湯水混合水栓本体に、浄水器を直接、載置したものであるから、熱湯によりもろに浄水器が加熱される、という問題があった。 【0007】 殊に、かかる浄水器付湯水混合水栓では、その蛇口にホ-ス等を接続して使用することも多いが、かかる場合、ホ-ス等の閉塞によって熱湯が、浄水器へ直行して逆流し、浄水器を損傷するおそれがある、という問題があった。 【0008】 一方、通常のシングルレバ-式湯水混合水栓の吐水管を、フレキシブルホ-スと、その先端に設けたシャワ-ヘッドとで構成し、そのフレキシブルホ-スの途中をシンクタンクの格納室に吊下させた構成のものが知られている(例えば、特公昭60-24251号公報、特開昭61-218874号公報、実開昭61-126157号公報参照)が、かかるシングルレバ-式湯水混合水栓にアンダ-シンク型浄水器を付設すると、水通路、湯通路およびフレキシブルホ-スの他に原水通路および浄水通路が増え、この部位が大径化する、という問題があった。 【0009】 【課題を解決するための手段】 そこで本考案は、これらの従来の問題を解決するために案出されたもので、その要旨とするところは、水道管に連通した水通路と、湯沸器に連通した湯通路と、湯水混合水を放水する長寸の吐水管とを湯水混合水栓本体に一体的に備えた、可動ディスクと固定ディスクとで湯水を混合したり切換えたりするシングルレバ-式湯水混合水栓をシンクタンクの天板に設け、前記湯水混合水栓本体の水通路に、前記シングルレバ-に比べ短寸の、前記本体から突設したハンドル付きで、かつ、前記湯水混合水栓のシングルレバ-による吐水を閉じとして使用する浄水吐水専用の止水弁を介して、原水通路を分岐し、該原水通路を、活性炭からなる浄水器の入口に連通し、該浄水器の出口に連通する浄水通路を前記吐水管に連通し、前記水通路、湯通路、原水通路および浄水通路をそれぞれ管路で4本のみに構成して、前記湯水混合水栓本体より下方に延設して、前記浄水器を前記シンクタンクの格納室に設置し、前記シングルレバ-とハンドル2つのみで操作するようにし、前記湯水混合水栓本体に、該本体より小径の、外周を円形にした取付部を下向きに形成し、該取付部を天板に設けた孔に挿入すると共に、該取付部に天板を挟んで天板用締付ナットを螺合したことを特徴とするシンクタンクに設けた浄水器付湯水混合水栓にある。 【0010】 【考案の実施の形態】 本考案を添付図面に示す実施の形態例により詳細に述べる。 【0011】 図1は本考案の実施の形態例の概念図、図2は図1の要部詳細断面図、図3は図2の1?1断面図、図4は図2の2?2断面図、図5は図2の3?3断面図、図6は図2の4?4断面図である(但し、1?1等は図中のロ-マ数字を表している)。 【0012】 本考案の実施の形態例の概要を述べる。Aはダ-スネック型の吐水管1を備えた混合水栓本体で、例えばシンクタンクの天板に取付けられており、この混合水栓本体Aにはシングルレバ-式混合水栓Bと止水栓Cとを、それぞれの軸を略同軸水平状に対向させて装着している。 【0013】 この混合水栓本体Aの下方には、水道管に連通する水通路2、湯沸器(不図示)に連通する湯通路3、および、例えばシンクタンクの格納室に設置された別置き式浄水器Dの入口に連通する原水通路4、更には、この浄水器Dの出口に連通する浄水通路5が管路で構成されてそれぞれ延設されている。 【0014】 したがって、止水栓Cと浄水器Dとは原水通路4で連通され、吐水管1と浄水器Dとは浄水通路5で連通されているので、浄水を放水する場合には、混合水栓Bを閉の位置にして、止水栓Cを開にすれば、水道水は水通路2→止水栓C→原水通路4→浄水器D→浄水通路5→吐水管1より放水する。 【0015】 そして、止水栓Cを閉にした後、混合水栓Bを水(最低温度)の位置で開にして若干時間、吐水管1内の浄水を排出しておけば、浄水器Dと吐水管1の基部との間の浄水は吐水管1中の原水で密閉できる。 【0016】 その結果、特に浄水通路5の多くの残留浄水の汚染は防止できる。また、混合水または水道水をそのまま放水する場合には、止水栓Cを閉として混合水栓Bを所定の混合位置にして開にすれば、つまり、通常の混合水栓Bの操作をすれば、混合水または水道水は混合水栓Bから吐水管1へ導入され放水する。 【0017】 次に、各部分を詳細に述べれば、混合水栓本体Aは次のように構成されている。 【0018】 すなわち、図2中、右方には混合水栓Bを装着する混合水栓用筒部6が形成され、上方には吐水管1を回動自在に装着する吐水管用筒部7が形成され、左方には止水栓Cを装着する止水栓取付部8が形成され、更に、下方には管体からなる水通路2、湯通路3、原水通路4および浄水通路5を、その下側に装着する通路取付部9が一体形成されている。そして、この混合水栓本体Aは青銅製鋳物で一体的に製作されている。 【0019】 この混合栓用筒部6には垂直状の底壁10が形成されており、この底壁10には通常の湯水混合水栓のように、水、湯および混合水の各連通孔10a,10b,10cが開口しており、これらの連通孔10に合せて後述のカ-トリッジ15が隣接されている。 【0020】 この底壁10の上下中央には水平状の隔壁11が延設されて混合水栓本体Aを上下方向に略2分割しており、この隔壁11の下面略中央には、互いに直交した2つの垂直状隔壁12,12aが形成され、混合水栓本体Aの下方を4分割している。 【0021】 したがって、この隔壁11によって混合水栓本体Aの上側には吐水管路室7aが形成される。しかも、この吐水管路室7aは前記吐水管用筒部7の空間を形成することになる。 【0022】 また、混合水栓本体Aの下側には垂直状隔壁12によって水通路室2aと湯通路室3aとが形成され、垂直状隔壁12aによって原水通路4aと浄水通路5aとが形成されている。 【0023】 この水通路室2aは水通路2に、湯通路室3aは湯通路3に、原水通路室4aは原水通路4にそれぞれ連通している。特に、浄水通路室5aは浄水通路5および吐水管路室7aにそれぞれ連通している。 【0024】 そして、これらの水通路2、湯通路3、原水通路4および浄水通路5は束状にまとめられて下方に延設されている。 【0025】 また、前記水通路室2aは、底壁10の水連通孔10aと止水栓Cの開閉孔13とにそれぞれ連通しており、この開閉孔13は前記垂直状隔壁12aの上端側で開口している。 【0026】 次に、混合水栓Bは次のように構成されている。 【0027】 すなわち、この混合水栓Bは通常のシングルレバ-14を備えたものであるが、このシングルレバ-14によってカ-トリッジケ-ス15に収納された可動ディスク16を固定ディスク17に対し摺動させるようになっている。このカ-トリッジケ-ス15は底壁10に対し保護カバ-18により押圧されている。この保護カバ-18は前記混合水栓用筒部6に螺着している。 【0028】 次に、止水栓Cは次のように構成されている。 【0029】 すなわち、この止水栓Cは通常の化粧カバ-19付単水栓であって、前記開閉孔13をケレップ20で開閉するようにし水通路室2aを1次側とし、原水通路室4aを2次側としている。 【0030】 このケレップ20が取付けられたネジ軸21の他端にはセレ-ション22が刻設されて、このセレ-ション22を介して前記化粧カバ-19が嵌合しており、この化粧カバ-19にハンドル23が固着されている。 【0031】 したがって、ハンドル23を回動すれば、ネジ軸21が螺進退し、これによりケレップ20が移動し開閉孔13を開閉するようになっている。 【0032】 【考案の効果】 本考案によれば、 ▲1▼湯水混合水栓をシンクタンクの天板に設け、浄水器をシンクタンクの下方の格納室に設けたので、湯水混合水栓から熱湯を長時間吐水しても、活性炭からなる浄水器はこの熱の影響を全く受けない。ひいては、浄水器の品質を低下したり、破損することはない。 【0033】 ▲2▼湯水混合水栓をシンクタンクの天板に設けてシングルレバ-に構成し、また、前記シングルレバ-に比べ短寸のハンドル付止水栓を湯水混合水栓本体に設けたので、簡素化して場所をとらず、ひいては、シンクタンクの近傍の見映えがよく、しかも、湯水混合水栓用シングルレバ-と止水栓用ハンドルの2つのみであるので、操作が楽となり、浄水器に対する操作ミスを防ぐことができる。 【0034】 すなわち、本来、湯水混合水栓の操作レバ-と止水栓のハンドルとを共に湯水混合水栓本体に設け、同一の吐水管から通常の水(原水)と浄水とを吐水させると、温度差なく両者の水の区別が困難で操作ミスを生じやすいが、本考案では、止水栓が湯水混合水栓のシングルレバ-による吐水を閉にしたときに別個に使用する浄水専用であり、かつ、シングルレバ-とハンドルとの2つが長短異別の操作体であるため、浄水の吐水に操作ミスが生じない。その結果、浄水によって洗いものして浄水器の寿命を縮めることもなく、また、飲料、炊飯水等にも好都合となる。 【0035】 ▲3▼湯水混合水栓は可動および固定ディスクをもつシングルレバ-式混合水栓であるので、吐水量の多いケレップ型止水栓と違い、吐水管の吐水に水圧異常上昇がなく、しかも、浄水器はシンクタンクの格納室に設けてあるので、浄水器へ高温の原水が逆流することはなく、ひいては、前記▲1▼と相俟って浄水器を損傷することがない。 【0036】 すなわち、一般のケレップ型止水栓を用いた2バルブ型湯水混合水栓では、水道水の圧力の高低によって急激な流量増加の特性を有しており、例えば、水または湯を全開状態で、しかも、他所の水栓と同時使用のとき他所の水栓を急閉すると、吐水管に水圧異常上昇が発生し勝となるが、かかる現象があれば、浄水器の浄水出口側に背圧として、この水圧異常上昇が影響し、元止め式であるにも拘らず、例えば合成樹脂製の浄水器を耐圧容器にしなければならず、しかも、浄水器は多孔中空糸膜で構成されているから、その中空糸膜を変形させ、総じて浄水器を損傷することとなる。 【0037】 しかし、本考案では、湯水混合水栓を可動および固定ディスクをもつシングルレバ-式のもので構成したので、急激な流量増加が抑制され、かつ、最大流量を抑制される特性を有しているので、本来、前記のような吐水管の吐水に水圧異常上昇は可及的に抑制され、勿論、熱湯の伝熱や対流による影響もないので、前記▲1▼と相俟って浄水器を損傷することがない。 【0038】 ▲4▼湯水混合水栓の操作時において、ホ-ス等を接続した吐水管から原水を吐水中、ホ-スの先端を絞ったりして吐水圧が異常に高くなっても、浄水器はシンクタンクの格納室に、いわゆる別置式に、浄水器を下方とするU字形に離れて設けてあり、かつ、止水弁を介して原水通路を分岐し、封水状態にしているので、前掲の実公昭51-26354号公報記載のように、浄水器へ高圧の原水、または汚水が逆流するおそれはなく、しかも、ケレップ型止水栓に比べ、浄水器の損傷を可及的に回避できる。 【0039】 ▲5▼本来、湯水混合水栓は比較的広い設置ペ-スを必要とするが、シングルレバ-式とし、しかも、この湯水混合水栓に浄水器を直接設けず、シンクタンクの格納室に設けたので、湯水混合水栓の近傍にスペ-ス的ゆとりを残すことができる。殊に、浄水器不使用時(例えば、冬期等)に好都合となる。 【0040】 ▲6▼水通路、湯通路、原水通路および浄水通路の各管路を、湯水混合水栓本体に固着して下方の格納室に延設しているので、前記▲2▼の見映えが良いばかりでなく、浄水器を設置して尚更、狭くなったシンクタンクの格納室で4本の管路の各先端側のみを接続取付け工事をすればよいこととなり、ひいては、湯水混合水栓のシンクタンクヘの取付工事が容易となる。 【0041】 ▲7▼フレキシブルホ-スを挿通しないことから、取付部が湯水混合水栓本体より小径化でき、この小径の取付部を下向きに形成し、該取付部の外周を円形として、天板に設けた孔に挿入し、天板を挟んで天板用締付ナットを螺合したので、湯水混合水栓本体を、挟んだ天板のストッパ-とし、殊に、ストッパ-面を拡大して、天板用締付ナットで締付けるので、湯水混合水栓本体が天板に強固に立設でき、特に、シングルレバ-とハンドルの2つのものを手荒く操作可能にしても、浄水器付のシングルレバ-式湯水混合水栓をシンクタンクの天板にガタ付かず強固に取付けることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本考案の実施の形態例の概念図である。 【図2】 図1の要部詳細断面図である。 【図3】 図2の1?1断面図である。 【図4】 図2の2?2断面図である。 【図5】 図2の3?3断面図である。 【図6】 図2の4?4断面図である。 【符号の説明】 1…吐水管、2…水通路、2a…水通路室、3…湯通路、3a…湯通路室、4…原水通路、4a…原水通路室、5…浄水通路、5a…浄水通路室、9…通路取付部、14…シングルレバ-、16…可動ディスク、17…固定ディスク、23…ハンドル、A…混合水栓本体、B…混合水栓、C…止水栓、D…浄水器 |
訂正の要旨 |
1.実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、次のA?Dの訂正を行う。 A.実用新案登録請求の範囲の請求項1の「湯水混合水栓本体の水通路に」を「湯水混合水栓本体の、前記水通路に連通した水通路室に」と訂正する。 B.実用新案登録請求の範囲の請求項1の「活性炭等」を「活性炭」と訂正する。 C.実用新案登録請求の範囲の請求項1の「湯水混合水栓本体より下方に延設して」を「湯水混合水栓本体より束状にまとめられて下方に延設して」と訂正する。 D.実用新案登録請求の範囲の請求項1の「浄水器を前記シンクタンクの格納室に設置し」を「浄水器を前記シンクタンクの格納室に設置して、前記浄水器の活性炭の吸着性能を湯水混合水栓の熱によって低下させないようにし」と訂正する。 2.明瞭でない記載の釈明を目的として、次のE,Fの訂正を行う。、 E.考案の詳細な説明の段落【0032】と【0033】の記述を削除し、段落【0034】より【0043】までの段落番号を【0032】?【0041】に繰り上げる。 F.考案の詳細な説明の段落【0009】及び【0034】の「活性炭等」を「活性炭」と訂正する。 |
異議決定日 | 2000-09-08 |
出願番号 | 実願平8-10434 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
YA
(F16K)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 浅野 長彦、阿部 寛 |
特許庁審判長 |
蓑輪 安夫 |
特許庁審判官 |
鈴木 法明 鈴木 久雄 |
登録日 | 1998-08-21 |
登録番号 | 実用新案登録第2584046号(U2584046) |
権利者 |
ヤンマー産業株式会社 兵庫県尼崎市西高洲町16番44号 |
考案の名称 | シンクタンクに設けた浄水器付湯水混合水栓 |
代理人 | 岡部 吉彦 |
代理人 | 岡部 吉彦 |