ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 全部申し立て B60S |
---|---|
管理番号 | 1028355 |
異議申立番号 | 異議1999-73165 |
総通号数 | 16 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2001-04-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-08-17 |
確定日 | 2000-10-16 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 登録第2590581号「ワイパ駆動装置」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 登録第2590581号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。 |
理由 |
【1】手続の経緯 本件実用新案登録第2590581号は、平成4年5月11日に出願され、平成10年12月11日に設定登録されたものであって、その後、本杉元より登録異議の申立てがなされ、取消理由通知の指定期間内である平成12年7月17日付けで明細書について訂正請求がなされたものである。 【2】訂正の要旨 上記訂正請求は、願書に添付した明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであるが、その要旨は、次の訂正事項a?cのとおりのものと認める。 〈訂正事項a〉 願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の「モータにより回転されてワイパを駆動する駆動ギヤと、駆動ギヤに係合するクラッチ部材と、前記モータの電気回路を開閉するスイッチを構成している第1導電板および第2導電板と、第1導電板および第2導電板にそれぞれ摺接しながら相対回転する第1可動接点および第2可動接点と、絶縁材料が用いられて成形され前記第1導電板および第2導電板が前記クラッチ部材を回転自在に支承する支軸を中心として同心的に配されているハウジングとを備えており、前記第1可動接点および第2可動接点が前記クラッチ部材にこれと一体回転するように配設されているワイパ駆動装置において、前記第1導電板が円環状に形成されて前記支軸の周囲に近接して同軸に配されているとともに、前記第2導電板は前記第1導電板の外側に同軸に配されており、前記クラッチ部材は導電性部材によって形成されており、このクラッチ部材の前記第1導電板と対向する摺動面には前記第1可動接点が形成されて前記第1導電板に弾性力をもって摺接されており、また、このクラッチ部材の第1可動接点の径方向外側には前記第2可動接点が電気的に導通可能に配されて前記第2導電板に弾性力をもって摺接されていることを特徴とするワイパ駆動装置。」を、 「モータにより回転されてワイパを駆動する駆動ギヤと、駆動ギヤに係合するクラッチ部材と、前記モータの電気回路を開閉するスイッチを構成している第1導電板および第2導電板と、第1導電板および第2導電板にそれぞれ摺接しながら相対回転する第1可動接点および第2可動接点と、絶縁材料が用いられて成形され前記第1導電板および第2導電板が前記クラッチ部材を回転自在に支承する支軸を中心として同心的に配されているハウジングとを備えており、前記第1可動接点および第2可動接点が前記クラッチ部材にこれと一体回転するように配設されているワイパ駆動装置において、 前記第1導電板が円環状に形成されて前記支軸の周囲に近接して同軸に配されているとともに、前記第2導電板は切欠部に非導電部が形成された略C字形状に形成されて前記第1導電板の外側に同軸に配されており、前記クラッチ部材は導電性部材によって形成されており、このクラッチ部材の前記第1導電板と対向する摺動面には前記第1可動接点が形成されて前記第1導電板に弾性力をもって常時電気的に接続するように摺接されており、また、このクラッチ部材の第1可動接点の径方向外側には前記第2可動接点が前記第2導電板および前記非導電部に弾性力をもって常時摺接されており、前記第2可動接点が前記第2導電板に接触している時には前記スイッチが閉じ、前記第2可動接点が前記非導電部に接触している時には前記スイッチが開くように構成されていることを特徴とするワイパ駆動装置。」 と訂正する。 〈訂正事項b〉 願書に添付した明細書の段落【0013】の「【課題を解決するための手段】本考案に係るワイパ駆動装置は、モータにより回転されてワイパを駆動する駆動ギヤと、駆動ギヤに係合するクラッチ部材と、前記モータの電気回路を開閉するスイッチを構成している第1導電板および第2導電板と、第1導電板および第2導電板にそれぞれ摺接しながら相対回転する第1可動接点および第2可動接点と、絶縁材料が用いられて成形され前記第1導電板および第2導電板が前記クラッチ部材を回転自在に支承する支軸を中心として同心的に配されているハウジングとを備えており、前記第1可動接点および第2可動接点が前記クラッチ部材にこれと一体回転するように配設されているワイパ駆動装置において、前記第1導電板が円環状に形成されて前記支軸の周囲に近接して同軸に配されているとともに、前記第2導電板は前記第1導電板の外側に同軸に配されており、前記クラッチ部材は導電性部材によって形成されており、このクラッチ部材の前記第1導電板と対向する摺動面には前記第1可動接点が形成されて前記第1導電板に弾性力をもって摺接されており、また、このクラッチ部材の第1可動接点の径方向外側には前記第2可動接点が電気的に導通可能に配されて前記第2導電板に弾性力をもって摺接されていることを特徴とする。」を 「【課題を解決するための手段】本考案に係るワイパ駆動装置は、モータにより回転されてワイパを駆動する駆動ギヤと、駆動ギヤに係合するクラッチ部材と、前記モータの電気回路を開閉するスイッチを構成している第1導電板および第2導電板と、第1導電板および第2導電板にそれぞれ摺接しながら相対回転する第1可動接点および第2可動接点と、絶縁材料が用いられて成形され前記第1導電板および第2導電板が前記クラッチ部材を回転自在に支承する支軸を中心として同心的に配されているハウジングとを備えており、前記第1可動接点および第2可動接点が前記クラッチ部材にこれと一体回転するように配設されているワイパ駆動装置において、前記第1導電板が円環状に形成されて前記支軸の周囲に近接して同軸に配されているとともに、前記第2導電板は切欠部に非導電部が形成された略C字形状に形成されて前記第1導電板の外側に同軸に配されており、前記クラッチ部材は導電性部材によって形成されており、このクラッチ部材の前記第1導電板と対向する摺動面には前記第1可動接点が形成されて前記第1導電板に弾性力をもって常時電気的に接続するように摺接されており、また、このクラッチ部材の第1可動接点の径方向外側には前記第2可動接点が前記第2導電板および前記非導電部に弾性力をもって常時摺接されており、前記第2可動接点が前記第2導電板に接触している時には前記スイッチが閉じ、前記第2可動接点が前記非導電部に接触している時には前記スイッチが開くように構成されていることを特徴とする。」と訂正する。 〈訂正事項c〉 願書に添付した明細書の段落【0053】の「第1導電板14」を「第1導電板24」と訂正する。 【3】訂正の適否 1.目的の適否、新規事項・拡張又は変更の存否 (1)訂正事項aについて 「切欠部に非導電部が形成された略C字形状に形成されて」とする点は、第2導電板の構成を限定するものであり、また、「常時電気的に接続するように」とする点は、第1可動接点の構成を限定するものであり、さらに、「第2可動接点が前記第2導電板および前記非導電部に弾性力をもって常時摺接されており、前記第2可動接点が前記第2導電板に接触している時には前記スイッチが閉じ、前記第2可動接点が前記非導電部に接触している時には前記スイッチが開くように構成」とする点は、第2可動接点と前記第2導電板および前記非導電部の関係を限定するものであるから、訂正事項aは、実用新案登録請求の範囲を減縮するものである。 そして、願書に添付した明細書の段落【0028】には、「外側に配された第2導電板25は略C字形状に形成されており、その切欠部は非導電部26を実質的に形成している。非導電部26の中央部には、導電板材によって略扇形状に形成された停止位置部片27が同心円に配設されている。」と記載され、また、段落【0023】には「可動接点片17と第1可動接点16とはクラッチ部材15自体を介して互いに電気的に接続された状態になっている。」と、段落【0027】には「内側に配された第1導電板24は円形形状に形成されており、この第1導電板24にはクラッチ部材15に膨出形成された第1可動可動接点16が、前述したように第1可動接点16自身およびウエーブワッシャ20の弾性力により常時押接するようになっている。」と記載され、さらに、段落【0029】に「第2導電板25、非導電部26および停止位置部片27の描く円軌道には、クラッチ部材15に突設された可動接点片17の第2可動接点18がその可動接点片17の弾性力によって常時押接するようになっている。」と、段落【0030】に「そして、これら第1導電板24、第2導電板25および停止位置部片27は、電源29、ワイパスイッチ30、モータ31等からなる電気回路において、図5に示されているように結線されることにより、モータの電気回路を開閉するスイッチ28を構成するようになっている。」と、段落【0040】に「ワイパスイッチ30が無作為にOFFされることにより、OFFされた時にワイパブレードが窓の途中に位置する場合、例えば、図5に想像線で示されているように、第1および第2可動接点16、18は第1および第2導電板24、25にそれぞれ接触している状態にある。これによって、電源29、モータ31、ワイパスイッチ30のOFF接点、第1導電板24、第1可動接点16、クラッチ部材15、可動接点片17、第2可動接点18、第2導電板25、アースと通電するため、モータ31は回転を持続することになる。」と、段落【0041】に「モータ31の回転継続に伴って、第2可動接点18が第2導電板25の非導電部26に達すると、第2可動接点18と第2導電板25との導通が切られるため、モータ31には通電しなくなることになる。」と記載されているから、訂正事項aは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものと認める。 また、訂正事項aは、願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲に記載した考案の「小型化を促進する」という目的の範囲内の構成の限定であるから、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 (2)訂正事項bについて 訂正事項aによる実用新案登録請求の範囲の訂正に伴って行う考案の詳細な説明の訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認める。 そして、訂正事項aと同様の理由により、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 (3)訂正事項cについて 誤記を訂正するものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 2.独立登録要件について (1)訂正明細書の請求項1に係る考案 訂正明細書の請求項1に係る考案は、訂正明細書及び図面の記載からみて、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。 「モータにより回転されてワイパを駆動する駆動ギヤと、駆動ギヤに係合するクラッチ部材と、前記モータの電気回路を開閉するスイッチを構成している第1導電板および第2導電板と、第1導電板および第2導電板にそれぞれ摺接しながら相対回転する第1可動接点および第2可動接点と、絶縁材料が用いられて成形され前記第1導電板および第2導電板が前記クラッチ部材を回転自在に支承する支軸を中心として同心的に配されているハウジングとを備えており、前記第1可動接点および第2可動接点が前記クラッチ部材にこれと一体回転するように配設されているワイパ駆動装置において、 前記第1導電板が円環状に形成されて前記支軸の周囲に近接して同軸に配されているとともに、前記第2導電板は切欠部に非導電部が形成された略C字形状に形成されて前記第1導電板の外側に同軸に配されており、前記クラッチ部材は導電性部材によって形成されており、このクラッチ部材の前記第1導電板と対向する摺動面には前記第1可動接点が形成されて前記第1導電板に弾性力をもって常時電気的に接続するように摺接されており、また、このクラッチ部材の第1可動接点の径方向外側には前記第2可動接点が前記第2導電板および前記非導電部に弾性力をもって常時摺接されており、前記第2可動接点が前記第2導電板に接触している時には前記スイッチが閉じ、前記第2可動接点が前記非導電部に接触している時には前記スイッチが開くように構成されていることを特徴とするワイパ駆動装置。」 (2)引用例 前記取り消し理由通知において引用した刊行物である実公昭4-11887号公報(以下、「刊行物1」という。)、実願昭46-45084号(実開昭48-442号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)、実願昭49-151584号(実開昭51-76648号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物3」という。)、特開昭54-18542号公報(以下、「刊行物4」という。)には、それぞれ、次の事項が記載されているものと認める。 i)刊行物1 刊行物1には、ワイパ駆動装置に関する考案が記載されており、 イ)「モータ31の回転は回転軸32の両方のウオーム33,34から両方のウオームホイール37,38および中間ギヤ39,40を経由して駆動ギヤ12に伝達される。」(第4頁第8欄第8?11行)、 ロ)「クラッチ部材16の片側には従動側係合部18が、窓孔17に切り残された舌片19を下向きに屈曲されることにより突設されており、従動側係合部18は駆動ギヤ12が正回転するときにのみ、駆動ギヤ12の駆動側係合部13に係合するように構成されている」(第3頁第6欄第17?22行)、 ハ)「第1導電板24、第2導電板25および停止位置部片27は、電源29、ワイパスイッチ30、モータ31等からなる電気回路において、第4図に示されているように結線されることにより、モータの電気回路を開閉するスイッチ28を構成する」(第4頁第7欄第21?26行)、 ニ)「クラッチ部材16は駆動ギヤ12と共回りし、このクラッチ部材16に突設されている第1および第2接点20,21は、第1および第2導電板24,25に摺接しながら公転することになる。」(第4頁第8欄第25?29行)、 ホ)「クラッチ部材16は黄銅等のような導電性および適度な弾性を有する板材を用いて、平面形状が第2図に示されているような略滴形状に打抜き成形されている」(第3頁第6欄第4?8行)、 ヘ)「外側に記された第2導電板25は略C字形状に形成されており、(中略)第2導電板25、非導電部26および停止位置部片27の描く円軌道には、第2接点21がクラッチ部材16の弾性力によって常時押接するようになっている」(第4頁第7欄第12?20行)、 ト)「蓋体3の天井面には、合成樹脂等のような絶縁材料により略円形パネル形状に形成された絶縁基板23が支軸14の中心線と同心的に配されて、ビス22によるねじ止め等のような適当な手段によって固着されている。絶縁基板23の下面には第1導電板24と第2導電板25とが支軸14の中心線に対してそれぞれ同心円になるように配されて、植え込み成形等のような適当な手段により固着されている」(第3頁第6欄第44行?第4頁第7欄第8行)、 チ)「絶縁基板23の下面には第1導電板24と第2導電板25とが支軸14の中心線に対してそれぞれ同心円になるように記されて、植え込み成形等のような適当な手段により固着されている。内側に配された第1導電板24は円形形状に形成されており、(中略)外側に配された第2導電板25は略C字形状に形成されており」(第4頁第7欄第4?14行)、 リ)「クラッチ部材16には、導電性を有する材料を用いて形成された耐摩耗性チップからなる一対の第1接点20,20と第2接点21とがそれぞれ突設されており」(第3頁第6欄第23?26行) ヌ)「この第1導電板24には一対の第1接点20が前述したようにクラッチ部材16の弾性力により常時押接するようになっている」(第4頁第7欄第10?12行)、 ル)「例えば、接点はクラッチ部材にチップを固着して突設するに限らず、クラッチ部材の一部を突出または突出させずにそのまま導電板に摺接させて構成してもよい。」(第6頁第11欄第31行?第12欄第2行) 等の記載があり、これらの記載及び図面等を参照すると、刊行物1には、 “モータ31により回転されてワイパを駆動する駆動ギヤ12と、駆動ギヤに係合するクラッチ部材16と、前記モータの電気回路を開閉するスイッチを構成している第1導電板24および第2導電板25と、第1導電板および第2導電板にそれぞれ摺接しながら相対回転する第1可動接点20および第2可動接点21と、前記第1導電板および第2導電板が同心的に配されている絶縁基板23と、前記第1導電板および第2導電板が前記クラッチ部材を回転自在に支承する支軸を中心として同心的に配置されるように前記絶縁基板23をビス22止めしたハウジング1とを備えており、前記第1可動接点および第2可動接点が前記クラッチ部材にこれと一体回転するように配設されているワイパ駆動装置において、前記第1導電板が円環状に形成されて前記支軸の周囲に同軸に配されているとともに、前記第2導電板は切欠部に非導電部26が形成された略C字形状に形成されて前記第1導電板の外側に同軸に配されており、前記クラッチ部材は導電性部材によって形成されており、このクラッチ部材の前記第1導電板と対向する面には前記第1可動接点が形成されて前記第1導電板に弾性力をもって常時電気的に接続するように摺接されており、また、このクラッチ部材の第1可動接点の径方向外側には前記第2可動接点が前記第2導電板および前記非導電部に弾性力をもって常時摺接されており、前記第2可動接点が前記第2導電板に接触している時には前記スイッチが閉じ、前記第2可動接点が前記非導電部に接触している時には前記スイッチが開くように構成されているワイパ駆動装置.” が記載されているものと認める。 ii)刊行物2 可変抵抗器に関し、その第1図および第2図には、抵抗体基板4の中央部に、円環状に形成された接触板6bを調整軸1の円柱部lbに近接して同軸に配すると共に、該接触板6bの外側に抵抗体皮膜4cを同軸に配設する点が記載され、また、第3頁第18行?第4頁第6行には「7は基部7aが備えた旋回軸7bの先端に接点7cを有する揺動体で、基部中心の角孔7dを角軸2へ嵌合させた状態に於て、該基部が上記接触板6bに重ねられ、且つ先端の接点7cが前記した抵抗体皮膜4cへ圧接するようになっている。8は環体8aの内周数個所に内向きの爪8bを備えたストッパーで、摺動体の基部7aを軽く押圧するようにして角軸2へ嵌合されている」と記載されているものと認められる。 iii)刊行物3 可変抵抗器に関し、第2頁第9行?第3頁第2行には、「(5)は絶縁基板(1)上に配設された中間端子で、円形状の板部(5a)を有し、中心にははと目等の支持部(8)を挿通する孔が形成されている。(6)は1枚の弾性金属板より成る摺動子で、この摺動子の板部(6a)の一方側にはアーム(6b)が延長され、アーム(6b)には抵抗体(2)に弾接する突子(6g)が設けられ、また板部(6a)の中心には、支持部(8)用の挿通孔(7)があり、(中略)(6e)は板部(6a)の他端部より下方に180^(o )折り曲げられた折曲部で、その延長は第3図に示すような中心に孔(6h)を有する弾性環体(6f)となっている。」と記載されているものと認められる。 iv)刊行物4 ワイパなど洗浄装置用の駆動装置に関して、その第2頁右下欄第7?10行には、「駆動装置はほぼコップ状に形成されたプラスチック製のケーシング10を有しており、該ケーシング10は同様にプラスチック製のカバー11によって閉じられている。」と記載されているものと認められる。 (3)対比・判断 1.訂正明細書の請求項1に係る考案と上記刊行物1に記載された考案とを対比すると、 両者は、 モータにより回転されてワイパを駆動する駆動ギヤと、駆動ギヤに係合するクラッチ部材と、前記モータの電気回路を開閉するスイッチを構成している第1導電板および第2導電板と、第1導電板および第2導電板にそれぞれ摺接しながら相対回転する第1可動接点および第2可動接点と、絶縁材料が用いられて成形され前記第1導電板および第2導電板が前記クラッチ部材を回転自在に支承する支軸を中心として同心的に配されている部材を有するハウジングとを備えており、前記第1可動接点および第2可動接点が前記クラッチ部材にこれと一体回転するように配設されているワイパ駆動装置において、前記第1導電板が円環状に形成されて前記支軸の周囲に同軸に配されているとともに、前記第2導電板は切欠部に非導電部が形成された略C字形状に形成されて前記第1導電板の外側に同軸に配されており、前記クラッチ部材は導電性部材によって形成されており、このクラッチ部材の前記第1導電板と対向する面には前記第1可動接点が形成されて前記第1導電板に弾性力をもって常時電気的に接続するように摺接されており、また、このクラッチ部材の第1可動接点の径方向外側には前記第2可動接点が前記第2導電板および前記非導電部に弾性力をもって常時摺接されており、前記第2可動接点が前記第2導電板に接触している時には前記スイッチが閉じ、前記第2可動接点が前記非導電部に接触している時には前記スイッチが開くように構成されているワイパ駆動装置. である点において一致するものの、 上記刊行物1に記載された考案は、 前記第1導電板24および第2導電板25が配されている絶縁基板23はハウジング1にビス22によって固定されているものであり、前記絶縁基板23とクラッチ部材16を回転自在に支承する支軸14Aとの間には、空間が形成されていてインシュレータ16Aが配置されており、また、刊行物1の第1図に示される実施例のものは、クラッチ16を支承する支軸は駆動ギヤ12に形成されているから、本件訂正明細書の請求項1に係る考案の構成に欠くことができない事項である A.「絶縁材料が用いられて成形され前記第1導電板および第2導電板が前記クラッチ部材を回転自在に支承する支軸を中心として同心的に配されているハウジング」、 B.「前記第1導電板が円環状に形成されて前記支軸の周囲に近接して同軸に配されている」点、 C.「クラッチ部材の前記第1導電板と対向する摺動面には前記第1可動接点が形成され」る点 を備えていない。 そこで、刊行物4を検討すると、刊行物4には、ワイパ駆動装置のハウジング本体や蓋体の全体をプラスチックによって成形することが開示されているものの、刊行物4に記載されたものは、ワイパ駆動装置のハウジングをプラスチックとすることを予測させるにとどまり、ハウジングに、クラッチ部材を回転自在に支承する支軸、第1導電板および第2導電板を備え、前記第1導電板を円環状に形成して前記支軸の周囲に近接して同軸に配することを予測させるものではなく、また、刊行物2,3に記載されたものを検討しても、これら刊行物2,3に記載されたものは、可変抵抗器において、絶縁基板の表面に、摺動体又は摺動子が摺接する中間端子を、前記摺動体又は摺動子の揺動中心軸の周囲に近接して同軸に配した点が記載されているものの、刊行物2,3に記載されたものは、可変抵抗器に係るものであり、ワイパ駆動装置のハウジングとクラッチとの間で構成するスイッチへの適用を予測させるものではない。 したがって、刊行物2?4に記載されたものを検討しても、本件訂正明細書の請求項1に係る考案の構成に欠くことができない事項である 「『絶縁材料が用いられて成形され前記第1導電板および第2導電板が前記クラッチ部材を回転自在に支承する支軸を中心として同心的に配されているハウジング』を備え、『前記第1導電板が円環状に形成されて前記支軸の周囲に近接して同軸に配されている』」構成は、刊行物1?4のいずれにも記載されておらず、また、本件実用新案登録の出願前に周知の事項であったと認めることもできない。さらに、刊行物1?4に記載されたものから、当業者がきわめて容易に想到し得たものとすることもできない。 そして、本件訂正明細書の請求項1に係る考案は、上記構成により、「ハウジングの径方向寸法および厚さ方向(軸心方向)の寸法を減少させることができるため、ワイパ駆動装置全体を小型化することができ、また、部品点数および組付工数を減少することができるため、製造コストを低減させることができる。」等の明細書に記載された作用効果を期待し得るものと認められる。 なお、本件訂正明細書の請求項1に係る考案の上記構成C、即ち「クラッチ部材の前記第1導電板と対向する摺動面には前記第1可動接点が形成され」る点については、刊行物1に「例えば、接点はクラッチ部材にチップを固着して突設するに限らず、クラッチ部材の一部を突出または突出させずにそのまま導電板に摺接させて構成してもよい。」(第6頁第11欄第31行?第12欄第2行)等の記載もあるから、当業者がきわめて容易に想到し得る程度のものである。 したがって、本件訂正明細書の請求項1に係る考案は、上記刊行物1?4に記載されたものとも、これら刊行物1?4に記載されたものに基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものとすることもできない。そして、他に本件訂正明細書の請求項1に係る考案を出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものとする理由を発見しない。 3.むすび-訂正請求について 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 【4】登録異議申立てについて 1.本件請求項1に係る考案 本件請求項1に係る考案は、上記訂正が認められるから、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲に記載されたとおりのものと認める。 2.登録異議申立ての理由の概要及び証拠 登録異議申立人は、本件実用新案登録第2590581号の請求項1に係る考案は、本件実用新案登録の出願前に頒布された刊行物に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、その登録は取り消されるべきものである旨主張し、次の甲第1?4号証(上記刊行物1?4)を提出している。 ・甲第1号証:実公昭4-11887号公報(前記刊行物1)、 ・甲第2号証:実願昭46-45084号(実開昭48-442号)のマイクロフィルム(前記刊行物2)、 ・甲第3号証:実願昭49-151584号(実開昭51-76648号)のマイクロフィルム(前記刊行物3)、 ・甲第4号証:特開昭54-18542号公報(前記刊行物4) 3.甲各号証に記載された事項 甲第1?4号証には、それぞれ前記「【3】訂正の適否」の「2.独立登録要件について」の「(2)引用例」の「刊行物1」?「刊行物4」に記載したとおりのものが記載されているものと認める。 4.当審の判断 本件請求項1に係る考案は、前記「【3】訂正の適否」の「2.独立登録要件について」の「(3)対比・判断」において記載した理由と同様の理由により、甲第1?4号証に記載されたものに基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。 【5】むすび 以上のとおりであるから、本件請求項1に係る実用新案登録は、登録異議申立人が主張する理由及び提出した証拠によっては取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1に係る実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【考案の名称】 ワイパ駆動装置 (57)【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】 モータにより回転されてワイパを駆動する駆動ギヤと、駆動ギヤに係合するクラッチ部材と、前記モータの電気回路を開閉するスイッチを構成している第1導電板および第2導電板と、第1導電板および第2導電板にそれぞれ摺接しながら相対回転する第1可動接点および第2可動接点と、絶縁材料が用いられて成形され前記第1導電板および第2導電板が前記クラッチ部材を回転自在に支承する支軸を中心として同心的に配されているハウジングとを備えており、前記第1可動接点および第2可動接点が前記クラッチ部材にこれと一体回転するように配設されているワイパ駆動装置において、 前記第1導電板が円環状に形成されて前記支軸の周囲に近接して同軸に配されているとともに、前記第2導電板は切欠部に非導電部が形成された略C字形状に形成されて前記第1導電板の外側に、同軸に配されており、前記クラッチ部材は導電性部材によって形成されており、このクラッチ部材の前記第1導電板と対向する摺動面には前記第1可動接点が形成されて前記第1導電板に弾性力をもって常時電気的に接続するように摺接されており、また、このクラッチ部材の第1可動接点の径方向外側には前記第2可動接点が前記第2導電板および前記非導電部に弾性力をもって常時摺接されており、前記第2可動接点が前記第2導電板に接触している時には前記スイッチが閉じ、前記第2可動接点が前記非導電部に接触している時には前記スイッチが開くように構成されていることを特徴とするワイパ駆動装置。 【考案の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本考案はワイパ駆動装置に関し、特に、ワイパの定位置停止装置の改良に係り、例えば、降雪地帯を走行することがある自動車等の車両に搭載されるワイパ駆動装置に利用して有効なものに関する。 【0002】 【従来の技術】 一般に、自動車等の車両に搭載されるワイパ駆動装置においては、安全運転を確保するため、手元スイッチが無作為に切られた場合であっても、ワイパブレードを窓の下隅まで移動させてから停止させるための自動定位置停止装置が、設けられている。 【0003】 従来のこの種の定位置停止装置は、一部に非導電部を有する導電板が駆動ギヤの端面に添着されており、この導電板と共にモータの電気回路を開閉するスイッチを構成する接点が、ハウジングに駆動ギヤの回転に伴って導電板を摺動するように配設されて構成されている。 【0004】 そして、手元スイッチが無作為に切られた場合、導電板と接点とにより定位置までの電気回路が形成される。その後、定位置において、導電板の非導電部によって主回路が遮断される。同時に、アーマチュア回路が短絡されて、電気ブレーキがかけられる。これらにより、ワイパモータが定位置に自動停止される。 【0005】 しかし、このような定位置停止装置を備えているワイパ駆動装置においては、窓の下辺に雪がかき寄せられた場合等のように、駆動ギヤに正回転と反対方向の外力が加わったときに、導電板と接点との間において導通と非導通とが繰り返されるチャタリング現象が発生するため、この部分の発熱による劣化や、耐久性の低下等を招くという問題点がある。 【0006】 そこで、本出願人はチャタリング現象を防止することができるワイパ駆動装置として、次のようなものを開発した(実開昭61-21657号公報、実開昭61-191960号公報、実開昭62-176068号公報および実開平2-41857号公報参照)。 【0007】 すなわち、このワイパ駆動装置には、クラッチ部材が駆動ギヤの付勢方向に共回りするように回転自在に設けられている。このクラッチ部材とハウジングとの間には、導電板および接点からなり、モータの電気回路を開閉するスイッチが介設されている。 【0008】 通常時には、クラッチ部材によって駆動ギヤの回転に伴って導電板と接点とが相対回転される。そして、駆動ギヤにこれを逆回転させようとする外力が加わった時には、クラッチ部材により駆動ギヤの逆回転に追従されずに、導電板と接点との相対的な後戻り現象が阻止される。 【0009】 【考案が解決しようとする課題】 しかし、従来のワイパ駆動装置においては、充分に小型化することができない。 【0010】 例えば、クラッチ部材にインシュレータが用いられており、このクラッチ部材がハウジングの支軸に回転自在に配されているため、その分、ハウジングの高さが高くなる。 【0011】 また、クラッチ板の周囲に導電板が同心的に配されているため、モータの電気回路が開閉するスイッチを構成するのにハウジングの径が大きくなるとともに、ハウジングの高さが高くなる。 【0012】 本考案の目的は、小型化を促進することができるワイパ駆動装置を提供することにある。 【0013】 【課題を解決するための手段】 本考案に係るワイパ駆動装置は、モータにより回転されてワイパを駆動する駆動ギヤと、駆動ギヤに係合するクラッチ部材と、前記モータの電気回路を開閉するスイッチを構成している第1導電板および第2導電板と、第1導電板および第2導電板にそれぞれ摺接しながら相対回転する第1可動接点および第2可動接点と、絶縁材料が用いられて成形され前記第1導電板および第2導電板が前記クラッチ部材を回転自在に支承する支軸を中心として同心的に配されているハウジングとを備えており、前記第1可動接点および第2可動接点が前記クラッチ部材にこれと一体回転するように配設されているワイパ駆動装置において、 前記第1導電板が円環状に形成されて前記支軸の周囲に近接して同軸に配されているとともに、前記第2導電板は切欠部に非導電部が形成された略C字形状に形成されて前記第1導電板の外側に同軸に配されており、前記クラッチ部材は導電性部材によって形成されており、このクラッチ部材の前記第1導電板と対向する摺動面には前記第1可動接点が形成されて前記第1導電板に弾性力をもって常時電気的に接続するように摺接されており、また、このクラッチ部材の第1可動接点の径方向外側には前記第2可動接点が前記第2導電板および前記非導電部に弾性力をもって常時摺接されており、前記第2可動接点が前記第2導電板に接触している時には前記スイッチが閉じ、前記第2可動接点が前記非導電部に接触している時には前記スイッチが開くように構成されていることを特徴とする。 【0014】 【作用】 前記した手段によれば、クラッチ部材がインシュレータではなく導電性部材により形成されているため、クラッチ部材のインシュレータの厚さの分だけハウジングの厚さを薄くすることができる。また、クラッチ部材の第1導電板との対向面には第1可動接点が一体的に形成されているとともに、クラッチ部材と第1導電板とがその対向面で摺接されているため、クラッチ部材自体の摺動部に第1可動接点を兼用させることができる。さらに、内側の第1導電板が支軸に近接して配されているため、クラッチ部材に第1可動接点を兼用させることとあいまって内側の第1導電板およびその外側に配される第2導電板の径を小さくすることができる。以上により、ワイパ駆動装置におけるモータの電気回路を開閉するスイッチを構成するハウジングを大幅に小型化することができる。 【0015】 【実施例】 図1は本考案の一実施例であるワイパ駆動装置の要部を示す縦断面図、図2は分解斜視図、図3はハウジングを開けた状態を示す図1のIII-III線に沿う平面図、図4は同じく図1のIV-IV線に沿う平面図、図5は作用を説明するための模式図である。 【0016】 本実施例において、このワイパ駆動装置はハウジング1を備えており、ハウジング1はギヤボックスを形成している本体2の開口部に蓋体3を被せ着けられることにより密閉室を形成している。 【0017】 本体2の略中央部にはドライブシャフト4が回転自在に支承されており、このシャフト4と一体回転するリンク5の自由端には、ロッド7の一端がボールジョイント6を介して回転自在に結合され、ロッド7の他端はリンケージ8の自由端に回転自在に結合されている。 【0018】 リンケージ8の一端は自動車の窓枠における下方位置に回転自在に支承されたシャフト9に固着されており、シャフト9には自由端でワイパブレード11を保持しているワイパアーム10が一体回転するように支持されている。 【0019】 ハウジング1の室内におけるドライブシャフト4の端部には、硬質の合成樹脂により一体成形された駆動ギヤ12が一体回転するように嵌着されており、駆動ギヤ12の蓋体3側(以下、上側とする。)における端面の一部には駆動側係合部13が突設されている。 【0020】 蓋体3は硬質の合成樹脂等のような絶縁材料が用いられて大略三角形の皿形状に一体成形されている。この蓋体3の天井面には支軸14が一体的に突設されており、この支軸14はドライブシャフト4に軸芯合わせされて垂直方向下向きに突出されている。 【0021】 この支軸14にはクラッチ部材15が中央の軸孔15aを嵌合されて取り付けられている。さらに、支軸14にはウェーブワッシャ20、平ワッシャ21およびストッパリング22が順次嵌着されており、これらにより、クラッチ部材15は支軸14周りの蓋体3下面との間に位置決めされている。そして、この状態で、クラッチ部材15は支軸14に回転自在に支承された状態になっている。 【0022】 クラッチ部材15は銅等の導電性材料が用いられて、一端が閉じ短尺の円筒形状に一体成形されている。クラッチ部材15の閉塞壁における外周辺部には、第1可動接点16が軸心方向外側へ膨出形成されている。第1可動接点16は断面が半円形のリング形状に形成されており、第1可動接点16自体およびウエーブワッシャの弾性力によって、後記する導電板に適度な付勢力で押接するようになっている。 【0023】 クラッチ部材15には可動接点片17が一端を固定されて、一体回転するように取り付けられている。そして、この可動接点片17と第1可動接点16とはクラッチ部材15自体を介して互いに電気的に接続された状態になっている。 【0024】 可動接点片17は黄銅等のような導電性および適度な弾性を有する板材が用いられて、平面形状が矩形形状にそれぞれ打抜き成形されている。また、可動接点片17は厚さ方向に若干反るように屈曲されており、この反りは可動接点片17自身の弾性と協働することにより、この可動接点片17の自由端部に突設された第2可動接点18を後記する導電板に適度な付勢力で押接するようになっている。 【0025】 クラッチ部材15の開口側端辺には従動側係合部19が垂直方向下向きに駆動ギヤ12側へ突設されており、従動側係合部19は駆動ギヤ12が正回転するときにのみ、駆動ギヤ12の駆動側係合部13に係合するように構成されている。 【0026】 蓋体3の天井面には、第1導電板24と第2導電板25とが支軸14の中心線に対してそれぞれ同心円になるように配されて、植え込み成形等のような適当な手段により固着されている。 【0027】 内側に配された第1導電板24は円形形状に形成されており、この第1導電板24にはクラッチ部材15に膨出形成された第1可動可動接点16が、前述したように第1可動接点16自身およびウエーブワッシャ20の弾性力により常時押接するようになっている。 【0028】 外側に配された第2導電板25は略C字形状に形成されており、その切欠部は非導電部26を実質的に形成している。非導電部26の中央部には、導電板材によって略扇形状に形成された停止位置部片27が同心円に配設されている。 【0029】 第2導電板25、非導電部26および停止位置部片27の描く円軌道には、クラッチ部材15に突設された可動接点片17の第2可動接点18がその可動接点片17の弾性力によって常時押接するようになっている。 【0030】 そして、これら第1導電板24、第2導電板25および停止位置部片27は、電源29、ワイパスイッチ30、モータ31等からなる電気回路において、図5に示されているように結線されることにより、モータの電気回路を開閉するスイッチ28を構成するようになっている。 【0031】 他方、ハウジング1の片側にはモータ31が連設されており、モータ31の回転軸32は本体2を貫通してハウジング1内にドライブシャフト4の軸芯方向と直角になるように挿入されている。 【0032】 回転軸32の挿入部外周上には互いに反対向きのねじれを有する一対のウォーム(以下、右ねじれウォーム、左ねじれウォームということがある。)33、34がそれぞれ一体的に形成されており、両ウォーム33、34にそれぞれ対向する位置であって、回転軸32の互いに反対側の位置には、一対の支軸35、36がドライブシャフト4と平行にそれぞれ突設されている。 【0033】 両支軸35、36にはウォームホイール37、38が外嵌されて回転自在に支持されており、これらウォームホイール37、38は各ウォーム33、34にそれぞれ噛合されている。両ウォームホイール37、38には中間ギヤ39、40が軸芯合わせされて一体的にそれぞれ連設されており、両中間ギヤ39、40は駆動ギヤ12に噛合されている。 【0034】 次に作用を説明する。 (1)払拭作動 ワイパスイッチ30がONされると、電源29、ワイパスイッチ30のON接点、アースと通電するため、モータ31が回転する。 【0035】 モータ31の回転は回転軸32の両方のウォーム33、34から両方のウォームホイール37、38および中間ギヤ39、40を経由して駆動ギヤ12に伝達される。 【0036】 駆動ギヤ12が回転すると、この回転は、ドライブシャフト4のリンク5、ロッド7、リンケージ8、シャフト9によりワイパアーム10の往復回動に変換され、この往復回動によって、ワイパアーム10はワイパブレード11に払拭作動を行わせる。 【0037】 この払拭作動中、駆動側係合部13と従動側係合部19とが係合するため、クラッチ部材15は駆動ギヤ12と共回りし、このクラッチ部材15に一体回転するように取り付けられている第1可動接点16および第2可動接点18は、第1および第2導電板24、25に摺接しながら公転することになる。 【0038】 しかし、モータ31への通電はスイッチ28を迂回して行われているため、これら可動接点16、18および導電板24、25の相対摺動がモータ31の回転に影響を及ぼすことはない。 【0039】 (2)通常の定位置停止作動 ワイパスイッチ30がOFFされると、ワイパスイッチ30におけるON接点は開かれ、OFF接点が閉じられる。 【0040】 ワイパスイッチ30が無作為にOFFされることにより、OFFされた時にワイパブレードが窓の途中に位置する場合、例えば、図5に想像線で示されているように、第1および第2可動接点16、18は第1および第2導電板24、25にそれぞれ接触している状態にある。これによって、電源29、モータ31、ワイパスイッチ30のOFF接点、第1導電板24、第1可動接点16、クラッチ部材15、可動接点片17、第2可動接点18、第2導電板25、アースと通電するため、モータ31は回転を持続することになる。 【0041】 モータ31の回転継続に伴って、第2可動接点18が第2導電板25の非導電部26に達すると、第2可動接点18と第2導電板25との導通が切られるため、モータ31には通電しなくなることになる。 【0042】 モータ31、駆動ギヤ12等の回転系における惰性により、第2可動接点18が停止位置部片27まで移動してこれに接触すると、第2可動接点18、停止位置部片27、モータ31、ワイパスイッチ30のOFF接点、第1導電板24、第1可動接点16、クラッチ部材15、可動接点片17、第2可動接点18の閉回路が形成されるため、電気ブレーキが作用してモータ31は急停止されることになる。 【0043】 このようにしてモータ31が急停止された時、ワイパブレード11が窓の下隅における定位置に来るように、各構成部分の相関関係が設定されているため、ワイパスイッチ30が無作為にOFFされても、ワイパブレード11は定位置に常に停止されることになる。 【0044】 (3)異常時の停止作動 例えば、図5に示されているように、窓の下辺に雪41が溜ったために、ワイパブレード11に押し戻し力が作用したような場合、ワイパアーム10やロッド7等には破線矢印で示されているような外力Fが作用し、ドライブシャフト4にはリンク5を介して、実線矢印で示されている通常の回転方向Rと逆向きの回転力Pが作用することになる。 【0045】 仮に、従来例のように、第2導電板25または第2可動接点18が駆動ギヤ12と常に一体回転するように構成されている場合、駆動ギヤ12の正回転に伴って非導電部26まで相対移動した第2可動接点18は、ドライブシャフト4に加わる逆回転力Pにより駆動ギヤ12が逆回転されるため、相対的に元の方向に戻されて第2導電板25に再接触することになる。 【0046】 この再接触により、再通電してモータ31が再回転し、駆動ギヤ12が正方向Rに回転するため、第2可動接点18は非導電部26に再移動することになる。第2可動接点18が非導電部26に再移動すると、ドライブシャフト4に逆回転力Pが再び加わるため、第2可動接点18は第2導電板25に押し戻される。 【0047】 以降、この作動が繰り返されることにより、第2可動接点18と第2導電板25との間に導通と非導通を繰り返すチャタリング現象が発生されることになる。 【0048】 しかし、本実施例においては、駆動ギヤ12と第2可動接点18との間にクラッチ部材15が介設されているため、このようなチャタリング現象は防止される。 【0049】 すなわち、図5に示されているように、ワイパブレード11が窓の下辺まで移動されて雪41により押し戻し力を受けた時、第2可動接点18が第2導電板25を移動して非導電部26に達した場合、第2可動接点18と第2導電板25との間が電気的に開かれるため、モータ31には通電しなくなる。 【0050】 このとき、ドライブシャフト4に逆回転力Pが作用すると、このシャフト4に一体化されているため、駆動ギヤ12は逆向きに回転されることになる。しかし、駆動側係合部13と従動側係合部19とは駆動ギヤ12が逆回転する場合には係合を解除するように構成されているため、駆動ギヤ12が逆回転しても、クラッチ部材15は逆回転しないことになる。 【0051】 つまり、駆動ギヤ12だけが逆回転し、クラッチ部材15は取り残されることになるため、クラッチ部材15に一体回転するように取り付けられている可動接点片17の第2可動接点18は非導電部26との接触状態を維持することになる。これにより、モータ31への非通電状態が持続されるため、モータ31は停止し続けることになり、ワイパブレード11は窓の下隅に停止され続けることになる。 【0052】 本実施例によれば、クラッチ部材15がインシュレータではなく導電性部材によって構成されているとともに、クラッチ部材15に一方の可動接点16が一体的に形成されているため、第1導電板24を支軸14の周囲に近接して配置することができる。したがって、蓋体3、さらにハウジング1を小型化させることができるとともに、部品点数、組付工数を低減させることができる。 【0053】 クラッチ部材15自体に形成された第1可動接点16が第1導電板24と摺接するように構成されているため、クラッチ部材15がインシュレータによって形成されている場合よりも、その厚さの分だけ蓋体3の厚さを薄くすることができる。 【0054】 さらに、蓋体3が樹脂により一体成形されており、この蓋体3に各導電板24、25、27が一体的に植設されているため、蓋体3の厚さをより一層薄くすることができるとともに、部品点数、組付工数を低減させることができる。 【0055】 【考案の効果】 以上説明したように、本考案によれば、ハウジングの径方向寸法および厚さ方向(軸心方向)の寸法を減少させることができるため、ワイパ駆動装置全体を小型化することができ、また、部品点、数および組付工数を減少することができるため、製造コストを低減させることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本考案の一実施例であるワイパ駆動装置の要部を示す縦断面図である。 【図2】 分解斜視図である。 【図3】 ハウジングを開けた状態を示す図1のIII-III線に沿う平面図である。 【図4】 図1のIV-IV線に沿う平面図である。 【図5】 作用を説明するための模式図である。 【符号の説明】 1…ハウジング、2…本体、3…蓋体、4…ドライブシャフト、5…リンク、6…ボールジョイント、7…ロッド、8…リンケージ、9…シャフト、10…ワイパアーム、11…ワイパブレード、12…駆動ギヤ、13…駆動側係合部、14…支軸、15…クラッチ部材、15a…軸孔、16…第1可動接点、17…可動接点片、18…第2可動接点、19…従動側係合部、20…ウエーブワッシャ、21…平ワッシャ、22…ストッパリング、24…第1導電板、25…第2導電板、26…非導電部、27…停止位置部片、28…スイッチ、29…電源、30…ワイパスイッチ、31…モータ、32…回転軸、33、34…ウォーム、35、36…支軸、37、38…ウォームホイール、39、40…中間ギヤ、41…雪。 |
訂正の要旨 |
〈訂正事項a〉 実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の「モータにより回転されてワイパを駆動する駆動ギヤと、駆動ギヤに係合するクラッチ部材と、前記モータの電気回路を開閉するスイッチを構成している第1導電板および第2導電板と、第1導電板および第2導電板にそれぞれ摺接しながら相対回転する第1可動接点および第2可動接点と、絶縁材料が用いられて成形され前記第1導電板および第2導電板が前記クラッチ部材を回転自在に支承する支軸を中心として同心的に配されているハウジングとを備えており、前記第1可動接点および第2可動接点が前記クラッチ部材にこれと一体回転するように配設されているワイパ駆動装置において、前記第1導電板が円環状に形成されて前記支軸の周囲に近接して同軸に配されているとともに、前記第2導電板は前記第1導電板の外側に同軸に配されており、前記クラッチ部材は導電性部材によって形成されており、このクラッチ部材の前記第1導電板と対向する摺動面には前記第1可動接点が形成されて前記第1導電板に弾性力をもって摺接されており、また、このクラッチ部材の第1可動接点の径方向外側には前記第2可動接点が電気的に導通可能に配されて前記第2導電板に弾性力をもって摺接されていることを特徴とするワイパ駆動装置。」を、 「モータにより回転されてワイパを駆動する駆動ギヤと、駆動ギヤに係合するクラッチ部材と、前記モータの電気回路を開閉するスイッチを構成している第1導電板および第2導電板と、第1導電板および第2導電板にそれぞれ摺接しながら相対回転する第1可動接点および第2可動接点と、絶縁材料が用いられて成形され前記第1導電板および第2導電板が前記クラッチ部材を回転自在に支承する支軸を中心として同心的に配されているハウジングとを備えており、前記第1可動接点および第2可動接点が前記クラッチ部材にこれと一体回転するように配設されているワイパ駆動装置において、 前記第1導電板が円環状に形成されて前記支軸の周囲に近接して同軸に配されているとともに、前記第2導電板は切欠部に非導電部が形成された略C字形状に形成されて前記第1導電板の外側に同軸に配されており、前記クラッチ部材は導電性部材によって形成されており、このクラッチ部材の前記第1導電板と対向する摺動面には前記第1可動接点が形成されて前記第1導電板に弾性力をもって常時電気的に接続するように摺接されており、また、このクラッチ部材の第1可動接点の径方向外側には前記第2可動接点が前記第2導電板および前記非導電部に弾性力をもって常時摺接されており、前記第2可動接点が前記第2導電板に接触している時には前記スイッチが閉じ、前記第2可動接点が前記非導電部に接触している時には前記スイッチが開くように構成されていることを特徴とするワイパ駆動装置。」 と訂正する。 〈訂正事項b〉 明瞭でない記載の釈明を目的として、願書に添付した明細書の段落【0013】「【課題を解決するための手段】本考案に係るワイパ駆動装置は、モータにより回転されてワイパを駆動する駆動ギヤと、駆動ギヤに係合するクラッチ部材と、前記モータの電気回路を開閉するスイッチを構成している第1導電板および第2導電板と、第1導電板および第2導電板にそれぞれ摺接しながら相対回転する第1可動接点および第2可動接点と、絶縁材料が用いられて成形され前記第1導電板および第2導電板が前記クラッチ部材を回転自在に支承する支軸を中心として同心的に配されているハウジングとを備えており、前記第1可動接点および第2可動接点が前記クラッチ部材にこれと一体回転するように配設されているワイパ駆動装置において、前記第1導電板が円環状に形成されて前記支軸の周囲に近接して同軸に配されているとともに、前記第2導電板は前記第1導電板の外側に同軸に配されており、前記クラッチ部材は導電性部材によって形成されており、このクラッチ部材の前記第1導電板と対向する摺動面には前記第1可動接点が形成されて前記第1導電板に弾性力をもって摺接されており、また、このクラッチ部材の第1可動接点の径方向外側には前記第2可動接点が電気的に導通可能に配されて前記第2導電板に弾性力をもって摺接されていることを特徴とする。」を 「【課題を解決するための手段】本考案に係るワイパ駆動装置は、モータにより回転されてワイパを駆動する駆動ギヤと、駆動ギヤに係合するクラッチ部材と、前記モータの電気回路を開閉するスイッチを構成している第1導電板および第2導電板と、第1導電板および第2導電板にそれぞれ摺接しながら相対回転する第1可動接点および第2可動接点と、絶縁材料が用いられて成形され前記第1導電板および第2導電板が前記クラッチ部材を回転自在に支承する支軸を中心として同心的に配されているハウジングとを備えており、前記第1可動接点および第2可動接点が前記クラッチ部材にこれと一体回転するように配設されているワイパ駆動装置において、前記第1導電板が円環状に形成されて前記支軸の周囲に近接して同軸に配されているとともに、前記第2導電板は切欠部に非導電部が形成された略C字形状に形成されて前記第1導電板の外側に同軸に配されており、前記クラッチ部材は導電性部材によって形成されており、このクラッチ部材の前記第1導電板と対向する摺動面には前記第1可動接点が形成されて前記第1導電板に弾性力をもって常時電気的に接続するように摺接されており、また、このクラッチ部材の第1可動接点の径方向外側には前記第2可動接点が前記第2導電板および前記非導電部に弾性力をもって常時摺接されており、前記第2可動接点が前記第2導電板に接触している時には前記スイッチが閉じ、前記第2可動接点が前記非導電部に接触している時には前記スイッチが開くように構成されていることを特徴とする。」と訂正する。 〈訂正事項c〉 誤記の訂正を目的として、願書に添付した明細書の段落【0053】の「第1導電板14」を「第1導電板24」と訂正する。 |
異議決定日 | 2000-09-25 |
出願番号 | 実願平4-38001 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
YA
(B60S)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 川向 和実 |
特許庁審判長 |
蓑輪 安夫 |
特許庁審判官 |
鈴木 法明 鈴木 久雄 |
登録日 | 1998-12-11 |
登録番号 | 実用新案登録第2590581号(U2590581) |
権利者 |
株式会社ミツバ 群馬県桐生市広沢町1丁目2681番地 |
考案の名称 | ワイパ駆動装置 |
代理人 | 梶原 辰也 |
代理人 | 梶原 辰也 |