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審決分類 |
審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 A01G 審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A01G 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A01G |
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管理番号 | 1032452 |
審判番号 | 審判1998-15248 |
総通号数 | 17 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2001-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1998-09-28 |
確定日 | 2001-01-22 |
事件の表示 | 平成5年実用新案登録願第30896号「混成芝生シート」拒絶査定に対する審判事件〔平成7年1月13日出願公開、実開平7-1728、平成7年11月22日出願公告、実公平7-50913、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の考案は、実用新案登録すべきものとする。 |
理由 |
一、手続の経緯、本願考案 本願は、平成5年6月10日に出願された実願平5-30896号の実用新案登録出願に係り、本願の考案は、平成12年11月20日付け手続補正により補正された実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし請求項3に記載された事項により特定された次のとおりのものである。 「【請求項1】切り芝(3)の根(10)が絡み合うエアー挿通空間(5)を有して立体的に形成された基台シート(1)と、パイル糸(6)を粗い編目(7)状に織成して構成された人工芝シート(2)との間に、切り芝(3)が挟装され、該切り芝(3)の発根した根や発芽した芽が前記基台シート(1)や人工芝シート(2)と絡み合うことによって、前記切り芝(3)が該基台シート(1)及び人工芝シート(2)と一体的に連結される構成にしてなることを特徴とする混成芝生シート。」(以下、「本願考案1」という。) 「【請求項2】基台シート(1)が、2層の基布(13),(13)間にパイル糸(14)を上下方向に折り返して形成されたものである請求項1記載の混成芝生シート。」(以下、「本願考案2」という。) 「【請求項3】基台シート(1)が、合成樹脂製繊維糸を3次元的に編目状に形成したものである請求項1記載の混成芝生シート。」(以下、「本願考案3」という。) 二、当審の拒絶理由 当審において平成12年9月8日付けで通知した拒絶の理由の概要は、次のとおりである。 [理由1]:本願考案は、その出願前日本国内において頒布された刊行物である特開平2-104216号公報(前審異議の申立における甲第1号証参照)(以下、「引用刊行物1」という)、及び同特開昭59-151813号公報(同甲第3号証参照)(以下、「引用刊行物2」という)にそれぞれ記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。 [理由2]:本件出願は、明細書及び図面の記載が、『実用新案登録請求の範囲の請求項1における「編目(5a)」の技術用語が、考案の詳細な説明の欄では、例えば段落【0022】の「網目5」、段落【0028】の「編み目5c」のようにも記載されていて、技術用語が統一して使用されていないので、請求項1に係る考案の構成が明確でなく、特定できない。』点で不備のため、実用新案法第5条第4項、第5項及び第6項に規定する要件を満たしていない。 三、[理由1]について 1.各引用刊行物に記載された考案 [引用刊行物1]:当審における拒絶の理由に引用した上記引用刊行物1には、芝の移植用巻ロール製品に関して、次の事項が記載されている。 「(1)切芝を分解引伸し、筋状のランナーを適当網目間隔のネット上に並べると共に、上面を更に紙やネットなどで被覆して一定巾寸法で長尺の巻ロールに作成し、これをゴルフ場や庭園などの地表面で延展したり、切断したりして行うことを特徴とする芝の移植方法。(2)切芝を分解引伸し、筋状のランナーを適当網目間隔のネット上に並べると共に、上面を更に紙やネットなどで被覆して一定巾寸法で且つ長尺に構成した巻ロール製品。」(5頁左下欄2行?11行の特許請求の範囲の記載) 「8は主としてスフ糸などで編成されたネット(凡そ9mmx9mm)或いは不織布シート(以下、ネットと言う)であって、」(2頁左上欄9行?11行) 「なお、本発明の実施に於いて使用するネット(目付をランダムにした不織布や紙などを含む)は、ゴルフ場のフエアウエイ(ラフを含む)では専らゴルフプレイ中にアイアンの引掛り原因とならないために一定期間経過すると腐朽する性質を有する素財のものを選ぶようにすると良いのであるが、傾斜地面その他などの場所では上記性質に何らこだわることを要しない。」(5頁右上欄8行?17行) [引用刊行物2]:当審における拒絶の理由に引用した上記引用刊行物2には、人造芝生板による緑化工法に関して、次の事項が記載されている。 「1)適宜間隔毎に穴を設けた耐腐蝕性基片の面に、耐腐蝕性基材からなる細条片を起毛状に装着せしめた人造芝生板を、該細条片の先端を残して土壌その他の被覆材により被覆せしめ、更に芝生種子あるいは芝生ランナーを被覆材に施用することを特徴とする人造芝生板による緑化工法。」(1頁左下欄5行?11行の特許請求の範囲の第1項) 「本発明に使用する人造芝生板につき説明すると、人造芝生板(1)の基片(2)となるものは適宜間隔毎に穴(4)を設けた耐水性、耐腐蝕性を有する合成樹脂製の布片あるいはフイルムであり、この基片の片面に合成樹脂製の細条片数本(3)を一体としたものを縫着、編着、接着等の方法により起毛状に細条片が移動したり抜け上がらないよう強固に装着したものである。この人造芝生板は、通常ロール巻きとなっており、これを整地した土壌面あるいはアスファルト面、コンクリート面に適宜長さに切断して敷設してゆき、敷設が完了したならば、その上からマサ土もしくは砂質土等の流動性の良い土壌又は砂を被覆材(5)として散布して細条片の先端を残すようにして被覆せしめるのである。」(2頁右上欄1行?15行) また、引用刊行物2の第1図には、適宜間隔毎に穴(4)が設けられた耐水性、耐腐蝕性を有する合成樹脂製の布片あるいはフイルムの基片の片面に、合成樹脂製の細条片数本(3)を一体としたものを縫着、編着、接着等の方法により起毛状に細条片が移動したり抜け上がらないよう強固に装着した基片(2)となるものからなる人造芝生板(1)の断面図の一部、が記載されている。 2.一致点・相違点及び判断 (1)本願考案1について 先ず、本願考案1について検討する。 上記引用刊行物1に記載の考案と本願考案1とを比較すると、引用刊行物1に記載の考案の「切芝1を分解引伸した筋状のランナー」「適当網目間隔」「スフ糸などで編成されたネット(凡そ9mmx9mm)8」が、本願考案1の「切り芝(3)の根(10)」「エアー挿通空間(5)」「基台シート(1)」にそれぞれ相当することは明らかである。 また、引用刊行物1に記載の考案の「上面を更に被覆する腐朽する性質を有しないネット」は、切芝1を分解引伸した筋状のランナーの上下を挟装するときの上側被覆材であるから、該「上面を更に被覆する腐朽する性質を有しないネット」が本願考案1の「人工芝シート(2)」からなる上側被覆材に相当することを斟酌すると、両者は「切り芝(3)の根(10)が絡み合うエアー挿通空間(5)を有する基台シート(1)と、上側被覆材との間に、切り芝(3)が挟装される構成にしてなる混成芝生シート」である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1]:本願考案1では、切り芝(3)の上面に敷設する上側被覆材を「パイル糸(6)を粗い編目(7)状に織成して構成された人工芝シート(2)」としているのに対し、引用刊行物1に記載の考案では、単に「腐朽する性質を有しないネット」としている点。 [相違点2]:本願考案1の基台シート(1)が「立体的に形成された」ものであるのに対し、引用刊行物1に記載の考案の「スフ糸などで編成されたネット(凡そ9mmx9mm)8」は、立体的に形成されているか否か不明である点。 [相違点3]:本願考案1では「該切り芝(3)の発根した根や発芽した芽が前記基台シート(1)や人工芝シート(2)と絡み合うことによって、前記切り芝(3)が該基台シート(1)及び上側被覆材と一体的に連結される構成」であるのに対し、引用刊行物1に記載の考案では、この点について何ら記載されていない点。 次に上記[相違点1]?[相違点3]について検討する。 引用刊行物2に「適宜間隔毎に穴(4)が設けられた耐水性、耐腐蝕性を有する合成樹脂製の布片あるいはフイルムの基片の片面に、合成樹脂製の細条片数本(3)を一体としたものを縫着、編着、接着等の方法により起毛状に細条片が移動したり抜け上がらないよう強固に装着した基片(2)となるものからなる人造芝生板(1)」が記載されていることは、「三、の欄における「1.各引用刊行物に記載された考案」の項に前述したとおりである。 してみると、上記[相違点1]の本願考案1の「パイル糸(6)を粗い編目(7)状に織成して構成された人工芝シート(2)」に相当する上記「適宜間隔毎に穴(4)が設けられた耐水性、耐腐蝕性を有する合成樹脂製の布片あるいはフイルムの基片の片面に、合成樹脂製の細条片数本(3)を一体としたものを縫着、編着、接着等の方法により起毛状に細条片が移動したり抜け上がらないよう強固に装着した基片(2)となるものからなる人造芝生板(1)」が、引用例2に記載されているということができる。 しかしながら、引用刊行物2には、上記相違点2及び相違点3の構成については記載されていない。 そして、上記相違点2及び相違点3の構成は、当審における拒絶理由に引用した前記引用刊行物1及び引用刊行物2のみならず、原審での実用新案登録異議申立ての他の証拠として提出された甲第2号証(特開平4-207123号公報)及び甲第4号証(特開昭63-181931号公報)のいずれにも記載されていない。そして、本願考案1は、上記相違点2及び相違点3の構成を含む請求項1に特定された事項により、明細書に記載の格別の効果を奏するものと認められる。 したがって、本願考案1が、前記引用刊行物1及び引用刊行物2を含む先行技術文献に記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたもの、とすることはできない。 (2)本願考案2及び本願考案3について 本願考案2及び本願考案3のいずれも、それぞれ請求項1に係る考案を引用した請求項であり、したがって、本願考案2及び本願考案3は、請求項1に係る考案の下位概念の考案である。 而して、上記(1)に記載のとおり、請求項1に係る考案が引用刊行物1及び引用刊行物2に記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたもの、とすることができない以上、請求項1を引用する本願考案2及び本願考案3も、本願考案1と同じく、引用刊行物1及び引用刊行物2を含む先行技術文献に記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたもの、とすることはできない。 3.まとめ 以上のとおりであるから、本願考案1ないし本願考案3は、上記引用刊行物1及び引用刊行物2を含む先行技術文献に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることができない。 四、[理由2]について 本件の実用新案登録出願の願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲及び考案の詳細な説明の欄の記載を補正する平成12年11月20日付け手続補正により、実用新案登録請求の範囲の請求項1における「編目(5a)」が「編目(7)」に補正され、また、考案の詳細な説明の欄の段落【0022】の「網目5」、段落【0028】の「編み目5c」が、それぞれ「編目5a」「編目5c」に補正されたことにより、明細書全体を通して技術用語が統一された結果、本願の明細書の記載が実用新案法第5条第4?6項に規定する要件を満たすものとなり、実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案の構成が明確でなく、特定できないという当審が通知した拒絶の理由は解消された。 五、むすび 以上のとおり、この出願の請求項1に係る考案(本願考案1)ないし請求項3に係る考案(本願考案3)は、原査定の理由及び当審で通知した理由によっては拒絶すべきものとすることはできない。 そして、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2000-12-25 |
出願番号 | 実願平5-30896 |
審決分類 |
U
1
8・
531-
WY
(A01G)
U 1 8・ 534- WY (A01G) U 1 8・ 121- WY (A01G) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 坂田 誠 |
特許庁審判長 |
藤井 俊二 |
特許庁審判官 |
佐藤 昭喜 吉村 尚 |
考案の名称 | 混成芝生シート |
代理人 | 藤本 昇 |