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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) H01R
管理番号 1032470
審判番号 無効2000-35126  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-05-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-03-06 
確定日 2001-01-15 
事件の表示 上記当事者間の登録第2560143号実用新案「FPC接続用コネクタ」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第2560143号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯・本件考案
本件登録実用新案第2560143号に係る考案(平成3年7月10日出願、平成9年10月3日設定登録。以下、「本件考案」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「コンタクト装着用の突片が櫛歯状に多数形成されたベースインシュレータと、該ベースインシュレータに装着されて前記突片とともにFPC(フレキシブルプリント基板)の挿着凹部を形成する蓋片を備えたスライドインシュレータと、前記ベースインシュレータに挿着され且つ前記挿着凹部において前記FPCの上下面のうち一方の面に形成された導電パターン部に接続される複数のコンタクトと、前記ベースインシュレータの両側に装着されたコネクタ固定用のホールドダウンとから成り、前記コンタクトは、基部と該基部の一方から延在して前記FPCの導電パターン部と接続するための接点を中心側に向けて突出させて持つ接触部と前記基部の一方から延在して前記接触部と対向し、かつ前記接触部とは非対称のピン状の嵌合片と前記基部の他方から延在して前記ベースインシュレータより突出したコンタクト端子部とを有し、前記ベースインシュレータ及び前記スライドインシュレータはそれぞれ、両者の間の装着を係止するための係止部及び係止用突起を有し、前記FPCの前記導電パターン部がその上下のいずれにあるかで前記ベースインシュレータと前記スライドインシュレータの両方を係止したままで上下逆にして装着するようにしたことを特徴とするFPC接続用コネクタ。」

2.請求人の主張
これに対して、請求人は、甲第1号証乃至甲第4号証を提出し、以下の(理由1)乃至(理由4)により、本件登録実用新案は実用新案法第37条第1項第1号に該当し無効とされるべきである旨主張している。
(理由1)
本件考案は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された考案であって、実用新案法第3条第1項第3号の規定により実用新案登録を受けることができないものである。
(理由2)
本件考案は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案することができたものであって、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。
(理由3)
本件考案は、平成8年2月16日付けの手続補正書によって、その要旨を変更されたものであり、同日以前に公開された甲第4号証に記載された考案であって、実用新案法第3条第1項第3号の規定により実用新案登録を受けることができないものである。
(理由4)
本件考案は、その出願の日前の出願であって、その出願後に公開された甲第4号証に係る出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された考案と同一であって、実用新案法第3条の2の規定により実用新案登録を受けることができないものである。

3.(理由2)について
以下、請求人の主張する(理由2)について検討する。
(1)甲第1号証
成立に争いのない甲第1号証(「コンポーネントプロダクトインフォメーション NO.-038」のカタログ 日本航空電子工業株式会社、1991年6月発行)には、FPC接続用コネクタに関するものであって、
a)第1頁の「■材料/仕上」の表の「構成部品」の欄に、
「コンタクト」、「ベースインシュレータ」、「スライドインシュレータ」、「ホールドダウン」と、
b)同頁の「■特長」の項に、
「●0.5mmピッチFPC用SMTタイプの超小型コネクタです。
●FPCの挿抜時に直接力がかからなく、作業性に優れたZIFタ
イプです。
●片面接触構造により、FPCの誤挿入を防止します。
●FPCとの接触面は、下面接触タイプと上面接触タイプの2種
類があり、多様な実装形態に対応いたします。
●半田付け時のコネクタの浮き上がりを防止すると共に、コネ
クタの基板上の保持力を強化するホールドダウンをインシュ
レータ両端に装備しています。」と、
それぞれ記載され、
c)また、第1頁及び第2頁の「下面接触タイプ」と称する図面には、接触面が下面に設けられたFPCに対して、コンタクト装着用の突片が櫛歯状に多数形成されたベースインシュレータと、該ベースインシュレータに装着されて前記突片とともにFPCの挿着凹部を形成する蓋片を備えたスライドインシュレータと、前記ベースインシュレータに挿着され且つ前記挿着凹部において前記FPCの下面に形成された接触面に接続される複数のコンタクトと、前記インシュレータの両側に装着されたコネクタ固定用のホールドダウンとから成り、前記コンタクトは、基部と該基部の一方から延在して前記FPCの接触面と接続するための接点を中心側に向けて突出させて持つ接触部と前記基部の一方から延在して前記接触部と対向し、かつ前記接触部とは非対称のピン状の嵌合片と前記基部の他方から且つ前記接触部近傍側から延在して前記ベースインシュレータより突出したコンタクト端子部とを有し、前記ベースインシュレータ及び前記スライドインシュレータはそれぞれ、両者の間の装着を係止するための係止部及び係止用突起を有し、前記コンタクト端子部側が下面となるように設置したFPC接続用コネクタが、
d)さらに、同両頁の「上面接触タイプ」と称する図面には、接触面が上面に設けられたFPCに対して、コンタクト装着用の突片が櫛歯状に多数形成されたベースインシュレータと、該ベースインシュレータに装着されて前記突片とともにFPCの挿着凹部を形成する蓋片を備えたスライドインシュレータと、前記ベースインシュレータに挿着され且つ前記挿着凹部において前記FPCの下面に形成された接触面に接続される複数のコンタクトと、前記インシュレータの両側に装着されたコネクタ固定用のホールドダウンとから成り、前記コンタクトは、基部と該基部の一方から延在して前記FPCの接触面と接続するための接点を中心側に向けて突出させて持つ接触部と前記基部の一方から延在して前記接触部と対向し、かつ前記接触部とは非対称のピン状の嵌合片と前記基部の他方から且つ前記嵌合片近傍側から延在して前記ベースインシュレータより突出したコンタクト端子部とを有し、前記ベースインシュレータ及び前記スライドインシュレータはそれぞれ、両者の間の装着を係止するための係止部及び係止用突起を有し、前記コンタクト端子部側が下面となるように設置したFPC接続用コネクタが、
それぞれ示されている。
(2)対比
本件考案と甲第1号証記載のものとを比較すると、甲第1号証記載のものにおける「接触面」が、本件考案における「導電パターン部」に相当している。
したがって、両者は、
「コンタクト装着用の突片が櫛歯状に多数形成されたベースインシュレータと、該ベースインシュレータに装着されて前記突片とともにFPC(フレキシブルプリント基板)の挿着凹部を形成する蓋片を備えたスライドインシュレータと、前記ベースインシュレータに挿着され且つ前記挿着凹部において前記FPCの上下面のうち一方の面に形成された導電パターン部に接続される複数のコンタクトと、インシュレータの両側に装着されたコネクタ固定用のホールドダウンとから成り、前記コンタクトは、基部と該基部の一方から延在して前記FPCの導電パターン部と接続するための接点を中心側に向けて突出させて持つ接触部と前記基部の一方から延在して前記接触部と対向し、かつ前記接触部とは非対称のピン状の嵌合片と前記基部の他方から延在して前記ベースインシュレータより突出したコンタクト端子部とを有し、前記ベースインシュレータ及び前記スライドインシュレータはそれぞれ、両者の間の装着を係止するための係止部及び係止用突起を有したFPC接続用コネクタ」
である点で一致し、
ア)ホールドダウンが装着されたインシュレータに関し、本件考案が、「ベースインシュレータ」としているのに対し、甲第1号証記載のものは、ベースインシュレータとスライドインシュレータの何れであるのか定かではない点(以下、「相違点1」という。)、
イ)本件考案が、「FPCの導電パターン部がその上下のいずれにあるかでベースインシュレータとスライドインシュレータの両方を係止したままで上下逆にして装着するようにした」ものであるのに対し、甲第1号証記載のものは、該装着態様について明確にされていない点(以下、「相違点2」という。)、
で相違する。
(3)判断
上記の相違点について検討する。
ア)相違点1について
甲第1号証記載のものにおいて、ホールドダウンが装着されたインシュレータとして、ベースインシュレータとスライドインシュレータの何れを選定するかは、当業者が必要に応じて適宜決定しうる設計的事項であり、その一方を選択したことにより何等格別の効果が生ずるものとも認められないから、ホールドダウンの装着対象を本件考案のようにベースインシュレータとすることも任意である。
イ)相違点2について
甲第1号証に図示された上面接触タイプと下面接触タイプの各コネクタを比較すると、両者は、コンタクトの形状が各接触タイプに応じて異なるが、ベースインシュレータとスライドインシュレータ及びそれ等の係止状態の形状構造は、各接触タイプに応じて上下逆向きに設置してあるものの実質的に同一のものが使用されていると認められる。
即ち、甲第1号証記載のものは、ベースインシュレータとスライドインシュレータの係止状態における形状構造が、上面接触タイプと下面接触タイプとで共通するものであって、FPCの種類に応じて、上下逆に設置すると共にコンタクトを入れ替えることにより、上面接触タイプ或いは下面接触タイプのコネクタに成りうるものと捉えられる。
そうすると、コネクタを構成する部材の内のベースインシュレータとスライドインシュレータのみに着目すれば、「FPCの導電パターン部がその上下のいずれにあるかでベースインシュレータとスライドインシュレータの両方を係止したままで上下逆にして装着するようにした」点は、甲第1号証記載のものにおいても実現可能なものとして、当業者であればきわめて容易に推測しうる程度の事項であり、甲第1号証記載のものをそのような装着態様とすることに格別の困難性は何等見出せない。
そして、本件考案の奏する効果は、上記甲第1号証に記載の技術的事項から予測しうる範囲のものにすぎない。
なお、被請求人は、甲第1号証には、コンタクトがFPCの下面に接触するタイプのコネクタと、コンタクトがFPCの上面に接触するタイプのコネクタとが記載されているが、本件考案の構成要件の「FPCの導電パターン部がその上下のいずれにあるかでベースインシュレータとスライドインシュレータの両方を係止したままで上下逆にして装着するようにした」点が記載又は示唆されているとはいうことができない旨の主張をしている。
しかしながら、一般に、複数種のタイプの製品間で部品の共通化を図ることは各種分野で普通に行われていることであるから、甲第1号証記載のコネクタも、上記両タイプのコネクタ同志でインシュレータの形状に差異が認められない以上、部品の共通化が図られているものであり、該両タイプに応じて係止状態にあるインシュレータを上下逆にして装着しうるものと解するのが妥当である。
以上のとおりであるので、本件考案は、甲第1号証に記載された考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。

4.むすび
したがって、請求人の主張するその余の理由及び証拠を検討するまでもなく、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第37条第1項の規定により、これを無効にすべきものとする。
また、審判費用については、実用新案法第41条の規定により準用する特許法第169条第2項の規定によりさらに準用する民事訴訟法第61条の規定を適用する。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-11-01 
結審通知日 2000-11-14 
審決日 2000-11-27 
出願番号 実願平3-61424 
審決分類 U 1 112・ 121- Z (H01R)
最終処分 成立    
前審関与審査官 青山 待子小川 謙  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 和泉 等
熊倉 強
登録日 1997-10-03 
登録番号 実用新案登録第2560143号(U2560143) 
考案の名称 FPC接続用コネクタ  
代理人 園田 吉隆  
代理人 池田 憲保  
代理人 小林 義教  
代理人 後藤 洋介  

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